二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- 白昼夢見聞録
- 日時: 2011/06/25 10:13
- 名前: PIPI (ID: 42M2RXjr)
はじめまして、PIPIです。
初投稿なのでへたくそですが、よろしくお願いします。
【登 場 人 物】
安斎 千尋 Anzai Chihiro
高1の女の子。高い妖力を持っている。
外谷場 宗司 Toyaba Souji
エクソシスト「アシェラ」の一員。千尋の町の担当エクソシスト。
久住 隼人 Kusumi Hayato
千尋のクラスメイト。物静か。
植木 春子 Ueki Haruko
千尋のクラスメイト。人見知りが激しい。
陣内 連太郎 Jinnai Rentaro
町一番の不良少年。かなりの横暴。
ギルベルト・ウォーカー
エクソシスト教団「アシェラ」元帥。
カティア・クロムウェル
エクソシスト教団「アシェラ」7番隊隊長。
セレヴィ・オルレイン
犯罪組織「キメラ」リーダー。
- Re: 白昼夢見聞録 ( No.10 )
- 日時: 2011/07/02 16:12
- 名前: PIPI (ID: Uvcwa5h/)
顔は、おぼろげに思い出すことができる。母親の顔だ。
父親の顔は、もう思い出せない。いや、もしかしたら会ったことがないのかもしれない。
一番心に残っている母親の顔。
あの時の母親の顔は
—————泣いていた。
「・・・これは、違法契約だ」
「でも、しょうがないだろォ?そんなこと言うんだったら、もっと早く来てくれよなー」
「何を言おうが、違法は違法だ。キメラと同等の行いだぞ」
目を開けて、最初に目に入ってきた景色は、少し薄汚れた天井。そして、ベットに枕。病室のようだ。
そして、耳に入ってきたのは、外谷場と誰かの喧騒の声。
「お、目が覚めたか?」
「・・・何やってんの?」
「お前は、いっつもソレだな。ワンパターンすぎるぜ?」
「話をそらすな、宗司。とりあえず、本部に来い。それから処罰は決める」
「なんだよソレ。処罰前提の話かよ」
ヘラリといつもの調子で話す外谷場。
その外谷場の話し相手はすぐ隣にいた。
桃色の長い髪の毛を後ろに縛った、金瞳の女性だ。きりっとした顔立ちは、彼女の性格を物語っている。
「違法契約者のお前に、このことを反論できる立場はない。いい加減にしないと、強制連行に移るぞ」
「だぁー、怖いなァ。これだから、色気の無い女ってのは嫌なんだよ」
「違法契約って・・・」
『妖力を持つお前は、魔力を持つ俺の血を体内に取り入れることによって、契約されることになる』
外谷場の言葉を思い出す。つまり、思い当たるのはそれしかないということだ。
「もしかして、あのキスしたヤツ?」
「キッ・・・キスだと!?お前、いったい何をやらかした!?」
「え?あ?ああ、誤解誤解、誤解だって。契約するときにちょっとやっただけだって。・・・つか、千尋。そーゆーことは公言しちゃダメだって」
「はぁ?なんで。だってあんた、してきたじゃん。・・・てか、違法なの?」
いまいち話が分からない千尋は、だんだんイライラしてくるのを感じた。
「違法だ。基本的に、妖力を持つ者との契約は、本部の許可なしでは禁止されている」
「なんで」
「それが掟だからだ」
意味わかんない、とそっぽを向くと、外谷場が説明してくれた。
「魔力を持つ者は、悪魔を自分の力に取り入れることはできないが、契約を交わして自分の使い魔にすることはできる。契約をすることによって、悪魔は魔力を持つ人間の力を借りて、力を増幅し、パワーアップできるんだ」
だから、あの時あんなにも力があふれてきたのか、と納得する。
「だが、その方法は悪魔と共闘しているという見方が多く、批判を受けた。だから、本部認定の悪魔じゃなきゃ、契約できなくなっている」
「あたし、悪魔じゃないんだけど」
「妖力を持っているだろう。それが、悪魔の証だ」
女の言葉にむっとする千尋。
「あたしは、悪魔じゃない。悪魔呼ばわりすんな」
「じゃあ、人間とでもいうのか?それほどの妖力を持っていて、人間とは不気味なものだ」
「違う」
千尋は、いきなりベットの上に立ち上がった。
「あたしは、安斎千尋だ。それ以外の何者でもない」
- Re: 白昼夢見聞録 ( No.11 )
- 日時: 2011/07/02 16:29
- 名前: PIPI (ID: Uvcwa5h/)
「・・・フン。くだらん。興ざめだ。また来る。その時は覚悟しておけ」
「はいはい。ごくろーさんしたぁ」
ヒラヒラと手を振る外谷場。
そんな外谷場の横で、へたりと座り込む千尋。
「どうした?エネルギー切れ?」
「・・・うっさい」
千尋の力ない反応に、外谷場はため息をついた。
「あいつは、カティア・クロムウェル、て言って、アシェラの7番隊隊長なんだ。きっつい性格だろ?ああ、お前は人のこと言えないか」
「・・・興味ない」
千尋は自分の手のひらを見る。包帯が巻かれていた。包帯の下を見ると、焼けただれたような、火傷の跡がついていた。
「あのあと、あいつが来てさ。悪魔をやっつけてくれたんだよ。まあ、誰かさんのご活躍のおかげで、簡単に終わったけどな」
「・・・あんた、これからどうするの?」
「・・・ん?」
「・・・本部とかに行くんじゃないの?」
「ああ、それか」
外谷場は表情を変えずに、千尋の頭をわしづかむように手を置く。
「俺は、本部が嫌いでねぇ。いろいろとめんどくさいんだよ。それに、お前と契約しちまった以上、俺はお前のそばにいないとな」
「・・・はぁ?」
「お前はこれから、いろんな悪魔・・・いや、キメラにも狙われるだろう。そうなったら、誰がお前を助けられる?」
「あんたの力なくても、ちゃんとやれてたじゃん」
「あれは、俺が近くにいないとお前の力は発揮できないんだよ。残念でしたー」
いつまでもふざけた口調の外谷場にイラつき始める千尋。
「つーことで、俺は本部に行くつもりもないんで、よろしく。しばらくは、お前のテリトリーって言ったっけ?あそこで世話になるな」
「・・・もう勝手にしろ・・・って、はぁ!?」
それは聞いてない!と、勢いよく頭を上げる千尋。
この反応を待っていました、と言わんばかりに、外谷場はにんまりと笑った。
「ちょっと、何よソレ!」
「いいだろ、どうせお前一人だし。寂しいだろ?」
「余計なお世話だ、馬鹿!ぶっとばすぞ!」
「あのー、静かにしてもらえませんか?」
扉から入ってきた医者に仲裁されて、いったん落ち着きを取り戻す千尋。
「・・・急展開すぎるっての・・・」
「いやー、俺は急展開の鏡みたいなもんだから」
「意味わかんないんだけど」
「分かってもらおうとしてねーし」
もうやだ、こいつ。
そういって、千尋はまた毛布にくるまった。
- Re: 白昼夢見聞録 ( No.12 )
- 日時: 2011/07/03 20:21
- 名前: PIPI (ID: Uvcwa5h/)
2,ココロに住む悪魔
「なぁ、お前学校は行かないわけ?」
さっきからこの調子でしつこく千尋に話しかける外谷場。それに苛立ちを感じ、こめかみをぴくぴくさせる千尋。
「だから、行かないって言ってんでしょ。ていうか、あんたには関係ないじゃん」
「いや、でも、お前セーラー服着てるし。それに、今できることはやっておいたほうがいいぜ?」
「だから、あんたには関係ない」
「なんだ?そんなに俺と一緒にいたいのか?」
にやにや聞く外谷場に対して、ついに千尋はブチ切れて、椅子を蹴り飛ばす。そして、つかつかと早歩きでタンスらしきものからスクールバックをとりだした。
「あ、行く気になった?」
「あんたと一緒にいるよりは、ミジンコ一匹分、学校にいるほうがマシだから」
「ミジンコって、お前笑えねーって」
そう言いながら笑ってるじゃんか、と心の中で呟く千尋。
「ま、学生は学校に行くのが当たり前だからなぁ」
「あたしが今度ここに帰ってくるときは、消えててよね」
そう吐き捨てると、バットを剣道の竹刀を入れる袋に詰めて、早歩きで出て行った。
千尋は、今年で16歳になる。
高校一年生。ミステリアスな雰囲気に包まれた千尋は、まだ一度も高校に入っていなかった。
千尋が学校に行かなくなったのは、中学二年の夏。
そのころから、急激に悪魔と出会う回数が増えていった。今思えば、あれは自分の妖力が高まっているサインだったのかもしれない。
そして、千尋が学校へ行かなくなった直接の理由—————。
「おい、あれって、安斎千尋じゃね?」「ほ、ホントだ・・・」「マジかよ」「俺、アイツに殴られたんだよな」「なんで今頃くんの」「てかレベル高くね?」「バカ、美人だけど中身は鬼だぜ?」「それでも、俺は告ろうかな」「うっわ、態度悪」「調子のってるよ」
教室に入ると、早速クラスメイトの心ない声が耳に飛び込んできた。
特に千尋は気にしなかった。取るに足りないことだったし、こうなることは予期できた。
外谷場といるほうが自分にとって、不快感を与えられる。
そう思うことによって、自分のぐちゃぐちゃな感情を抑え込んだ。
なのに
「ちーちゃん、久しぶりー」
話しかけてきたヤツがいた。
「え・・・植木・・・春子・・・?」
「もー、フルネームはやめてよー。それにしても、本当に久しぶりだよね。あ、背伸びた?」
植木春子。
千尋が学校へ行きたくないもっともな原因だ。
- Re: 白昼夢見聞録 ( No.13 )
- 日時: 2011/07/03 20:39
- 名前: PIPI (ID: Uvcwa5h/)
「ちーちゃん!?」「てか、植木と話してる」「ちーちゃんってなんだよ!」「俺も今度ちーちゃんって呼んでみようかな」「バカ、殴られるって」「なんで植木が?」「意味不ー」「マジ、謎くない!?」
「・・・なんで、あんたがここにいんのよ・・・」
「え?だって、あたしもちーちゃんと同じクラスだからさ」
「・・・え」
植木は、とびっきりの笑顔で言った。
「よろしくね、ちーちゃん」
ガタ
「・・・?ちーちゃ・・・」
「・・・帰る」
「え!?」
そういって、足早に帰る支度を始める千尋。
「ち、ちーちゃん・・・?」
ガタン!
勢いよく扉を閉めて、走るように去って行った。
「で、なんでここにいるわけ?」
「いや、まず俺の質問に答えろよ」
「消えろ」
帰ってくると、やはり外谷場はぼろぼろのソファーの上で寝転がっていた。
「お前、学校がものの30分で終了すると思ってんの?さすがに俺はそこまで常識ないわけじゃないぜ?」
「だから、あんたには関係ないでしょ」
「あー、じゃあ、聞くけど、そこの後ろの学生さんはどなた?」
「ッ!?」
驚いて振り返る千尋。
そこにいたのは、植木春子だった。
「あ・・・えっと、ごめん、後つけてきちゃって・・・。でも、いままでずっと音信不通で会いに行けなかったし・・・。心配で・・・」
植木はおずおずと口を開いた。
千尋はしばし、植木を凝視した。どうすればいいのか、自分でもわからない。
今までであったら、誰とも構わずバットで殴り追い返してやった。
だけど、植木は—————。
「あー、もしかして、千尋のオトモダチ?」
「え・・・あ、はい。植木春子です。・・・えっと、あの・・・」
「ああ、俺は外谷場っていうんだ。外谷場宗司。よろしく」
「なんで、あんたは馴れ馴れしくしてんの」
ようやく口を開いた千尋に、顔を輝かせる植木。
「それにしても、ちーちゃん、大丈夫?」
「・・・・・は?」
「いきなり帰っちゃうから、具合でも悪いんじゃないの?」
にこにこしながら返してくる植木。
「・・・別に。ていうか、用がないんだったら帰ってよ」
千尋は冷たく言い返した。しかし、いつもの言い返し方とは違う、何か温度差のようなものがあった。
「・・・あ・・・あのね、ちーちゃん・・・。私・・・私、本当に、あのこと、気にしてないから・・・」
「ッ!!・・・・帰って・・・」
「私、ちーちゃんが理由もなくあんなことするような人じゃないって、分かっているから!だから・・・だから、ちーちゃんが気に病む必要は・・・」
「帰ってよ!・・・放っといて・・・」
「・・・ちー・・・ちゃん・・・」
- Re: 白昼夢見聞録 ( No.14 )
- 日時: 2011/07/04 18:13
- 名前: PIPI (ID: Uvcwa5h/)
中学2年生の夏。
千尋を大きく変えた季節だった。
「ねぇ。きもだめし、行かない?」
クラスメイトの男子と女子に誘われた。ごく、普通の、当たり前の情景だった。
「えー?きもだめしは怖いなぁ・・・」
植木がそういう性格だというのは、みんな知っていた。つまり、男子の狙いは千尋だった。
「くっだらない。あたし、パス」
当時、千尋は植木と一番仲が良く、休み時間もよく二人で過ごしていた。その反面、クラスメイトとのかかわりはそこまで深いわけでもなく、植木が唯一の友達だった。
「あ、もしかして、安斎さん怖いのヤダ?」
女子は面白がって、千尋をからかい始めた。
学校一美女と噂され、そのうえ植木以外のクラスメイトにはあまり心を開かない性格だったから、千尋は女子にとって、嫉妬の的だった。
だから、ここぞとばかりに、女子は千尋の弱みを握ろうと、挑発的にきもだめしに誘った。
「別に怖いのなんて、どうでもいいし。それに、きもだめしなんて行くのがめんどくさい」
実際に、このころから悪魔が見え始めていた千尋にとって、肝試しなど、普段見ている悪魔と比べれば、どうってこともない。
「うわー、そんな、ごまかさなくてもいいのにー」
「もしかして、無理して強がってるの?」
こういう時の女子は怖い。それは男子もわかっていることだったから誰も口出しできなかった。
女子の一方的な挑発に、ついに耐え切れなくなった千尋は、勢いよく肝試しに行くことになってしまった。
「じゃ、じゃあ、ちーちゃんが行くなら・・・」
そして、植木もおずおずという羽目になった。
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