二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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白昼夢見聞録
日時: 2011/06/25 10:13
名前: PIPI (ID: 42M2RXjr)

 はじめまして、PIPIです。

 初投稿なのでへたくそですが、よろしくお願いします。

【登 場 人 物】

 安斎 千尋 Anzai Chihiro
  高1の女の子。高い妖力を持っている。

 外谷場 宗司 Toyaba Souji
  エクソシスト「アシェラ」の一員。千尋の町の担当エクソシスト。

 久住 隼人 Kusumi Hayato
  千尋のクラスメイト。物静か。

 植木 春子 Ueki Haruko
  千尋のクラスメイト。人見知りが激しい。

 陣内 連太郎 Jinnai Rentaro
  町一番の不良少年。かなりの横暴。

 ギルベルト・ウォーカー
  エクソシスト教団「アシェラ」元帥。

 カティア・クロムウェル
  エクソシスト教団「アシェラ」7番隊隊長。

 セレヴィ・オルレイン
  犯罪組織「キメラ」リーダー。  

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Re: 白昼夢見聞録 ( No.5 )
日時: 2011/06/25 12:24
名前: PIPI (ID: 42M2RXjr)

「大丈夫か?」

 唖然としている千尋をよそに、外谷場が近寄ってきた。そんな外谷場の顔の前にバットの先端を突き出す。

「あんた、なんなの?」

「俺?だからさっき、外谷場宗司って名乗ったろ?」

「そうじゃなくて」

 強めの語調でいたら、参ったといわんばかりに外谷場は両手を上げて肩をすくめた。

「分かった分かった。エクソシスト教団「アシェラ」の一員だ」

「・・・何それ?」

「んー、エクソシストがたくさんいる、まぁ、集団みたいなもん。その集団の一員。エクソシストっていうのは、さっきみたいな悪魔を祓う魔力を兼ね備えた人間のことだ」

「・・・じゃあ、あたしもエクソシストな訳?」

「いや」

 以外にも外谷場があっさりと否定するので驚く。

「お前の持っているのは、魔力じゃなくて妖力だ」

「・・・はぁ?」

「魔力と妖力は違う」

 いつの間にか、外谷場が真面目な表情になっているのに気づく。

「魔力は、悪魔を祓うことができる。だが、妖力は違う。妖力は悪魔と同じ力を持つ。だから、悪魔を祓うことはできないが、壊すことはできる。言っちまえば、共食いみたいなもんだ」

「・・・その、妖力っていうのを私が持っているってこと?」

「めちゃくちゃな。妖力のいいところは、悪魔の力を自分の意志で取り入れることができるところだ。体を一部、悪魔みたいにできるってことだ」

「そんなの嫌だっての」

「実際、そういうやつらがいるんだって」

 外谷場は、人差し指をピン、とたてた。

「『キメラ』って言って、悪魔の力を取り入れることによってパワーアップする集団」

「それもエクソシストなの?」

「元、な。もともと妖力が高かったから、とか強くなりたい、とか暴れたい、とかそんな理由でキメラに入っちまう。キメラは、犯罪集団だ。ただ、悪魔を自分の体に取り入れることだけを考え、力を増幅させる危険な集団だ」

 へぇ、と相槌を打った。そして、気づいた。ああ、そうか。

「じゃあ、その素質のある私を、殺しに来たわけか」

 だからなんだ。千尋は心の中で、そう呟いた。

Re: 白昼夢見聞録 ( No.6 )
日時: 2011/06/30 19:11
名前: PIPI (ID: Uvcwa5h/)

 殺しに来たのか。

 これでようやく合点がつく。この男がここにいる意味が。

「いや、そうじゃない」

 しかし、外谷場はあっさりと否定した。

「なぜならお前には、悪魔の力を取り込む素質がないからだ」

「・・・意味わかんない」

「普通はな。妖力っていうのは持っていれば悪魔が近づき、それを意識的に取り込むことができる。が、お前はどういうわけか、悪魔を寄せ付けることはできても、取り込むことはできない」

 ここで、外谷場は千尋の唯一の武器であるバットを指さした。

「これは、俺の推測にすぎないが・・・そのバット、誰からもらった?」

 横目でバットを見る千尋。その瞳は、まるで蔑むような、悲しそうな、懐かしいような感情が交えていた。

「・・・このバットは、あたしが買ったの。お札は・・・あの人の引き出しにあったから、つけたの」

「・・・あの人?」

 ブォッ

 千尋は勢いよくバットを振り上げて外谷場に攻撃する。

 しかし、外谷場はその動きを寸前で見切り、ギリギリのところで交わした。

「あんたには、関係ないでしょ」

「・・・ま、そりゃそうだ。お前の事情は知ったことない。俺の推測が正しいかどうか、確かめたかっただけだが、それにも特に意味はないしな」

「へぇ。随分と知ったような口調ね。じゃあ、その推測、言ってみてよ」

 千尋は、今までの化け物を殺す覚悟で、外谷場を見ていた。それくらい、外谷場には自分の何かを知られているようで、許せなかった。自分以上に何かを知っている外谷場に、苛立ちを感じていた。

「あの人って—————お前の父親だろ?」

「・・・・・」

 外谷場の推測に、千尋は答えない。目を閉じた。息を深く吸い込む。周りの静けさを耳から体に叩き込む。

 ゆっくりと目を開ける。

「だったら、?」

 外谷場がにやりと笑った。

「肌身離さず持ってろ、とでも言われたんだろ?親父さんによ」

 だから、何?

 千尋の頭の中には、その言葉だけが渦巻いていた。

「・・・だから?」

「その札は、悪魔避けの札だからな。何年も持っているうちに、お前は悪魔を取り入れることができない体になったんだろう」

「だから・・・だからなんだっていうの!?」

 ドォオオオン

 まるで、周りの空間が避けるような地響き。しかし、その地響きは力聞こえるようなものではなく。

 四方八方から聞こえてきた。

「何—————?」

「・・・!!クソッ・・・」

 地鳴り。地鳴り。地鳴り。

 後ろを振り向くと、さっきよりもかなりでかい、悪魔がいた。馬のような顔が3つあり、手には10本の指と爪が生えている。

「上級悪魔か・・・。さっきの妖力の放出でおびき出されちまったな」

「妖力の放出って・・・」

 先ほどの怒りを込めた叫び。千尋に思い浮かぶのはそれしかなかった。千尋自身、あそこまで大声を出したのは、久方ぶりだった。

「逃げろ、千尋!さっきの悪魔とは比べ物にならないくらい、こいつは強い。俺が足止めしといてやるから、逃げろ」

「は?なんで、あんたがそんなこと————」

 ドスッ・・・悪魔の口から放出された衝撃波。それは確かに先ほどの悪魔とは比べ物にならないくらいの威力があった。一瞬で、このビルをのみこんだ。

「ゲホッゲホッ・・・ち・・ちょっと、あんた!聞いてんの!?」

 早くなり、血の気が引いてくる感触を覚えながら、叫ぶ。

「・・・!!」

 そこにいたのはやはり、いつも通りヘラリとした表情の外谷場だった。

 ただ、血だらけという点を除いて。

Re: 白昼夢見聞録 ( No.7 )
日時: 2011/07/01 19:37
名前: PIPI (ID: Uvcwa5h/)

「なん・・・で・・・」

 ただ、呆然と立ち尽くす千尋。目の前の男が何のつもりで自分を逃がそうとするのか理解できない。それ以前に、どうしてこの男はそこまでするのだろうか。

「はやく・・・!はやく逃げろ!大丈夫だ、じきに援軍も来る。そうすりゃ、もう大丈夫だ。だから、行け」

「・・・っ!」

 かなりの深手の傷を負っているはずなのに、男は勢い良く地面を蹴って悪魔に立ち向かう。

「我、魔力を与え、汝、代償として天災を悪魔へ」

 なにやら、呪文のようなものを唱えだした。

「天界ノ鎖!!」

 すると、突然悪魔の頭上が光りだして、光りだしたところから無数の槍と悪魔を縛り付ける鎖が現れた。それにあらがう悪魔。

 しかし結果は、あっけなく悪魔の力の勝利で、術は無効となってしまった。

 外谷場も力尽きたのか、フラフラと壁に寄りかかり、そこを悪魔に思いきり殴られ、吹き飛ばされてしまった。

「何やってんのよ、あんた!」

「っ千尋!?はやく、逃げろ!」

 外谷場はありったけの声を腹の底から出して、叫ぶ。

「お前が今までどんな悪魔とやりあってきたかは知らないが、こいつはもう無理だ!っ・・・お前なんかいても、何の役にも立ちはしない、だから、逃げろっ・・!!」



「うるさい!!!!!」



 また、千尋はありったけの声を出した。

 こんな大声で怒鳴ったのは何年ぶりだろう。

「あんた、あたしのこと何も知らないくせに、何指図してんのよ。ばっかじゃないの?あたしが誰かの言うことを素直に聞くタマだと思った?」

 千尋は、バットを握りしめて悪魔の前に立ちふさぐ。

「ば・・・ちひ・・・」

「あたし、援軍とかそういうのに頼るつもりもないし、どうせそんなもん、来ないんでしょ?だったら余計、あたしが何とかするしかないじゃない」

「・・・・」

 何を言っても無駄だな。外谷場はあきらめたように、ため息をついた。

Re: 白昼夢見聞録 ( No.8 )
日時: 2011/07/02 15:36
名前: PIPI (ID: Uvcwa5h/)

「確かに、俺がこのままでも二人仲良くやられそうだなぁ」

「そんなの、まっぴらごめん」

「そうだな・・・。じゃ、ちょっと協力してもらおうか」

 外谷場の言葉にいぶかしげに振り向く。
 
 その瞬間—————。

 千尋の息が止まった。

 それを止めたのが、外谷場の唇だと気付くのに数秒かかった。

「—————!?」

 そっと、千尋の顔から離れる外谷場。

「・・・・あんた、何してんの?」

「アラ?もっと面白いリアクションを期待していたのになんか、・・・ショックだな」

 いつものヘラリとした表情で肩を竦める外谷場。

 と、次の瞬間いきなり体が軽くなった感覚に陥った。

「魔法のおまじないだ。・・・気分はどうだ?」

「あんた、何したのっ・・・?」

「妖力を持つお前は、魔力を持つ俺の血を体内に取り入れることによって、契約されることになる」

「契約・・・?」

「まあ、簡単に言うとあれだ。今まで抑えてきた妖力を、存分に発揮できるってことだ」

 妖力を存分に発揮できる。その意味がようやく分かった。力はあふれるように、鼓動はどんどん早くなっていく。

 目の前の悪魔を見る。

 なんだか、ちっとも怖くない。不思議なことに、何とかなるような気がした。

Re: 白昼夢見聞録 ( No.9 )
日時: 2011/07/02 15:46
名前: PIPI (ID: Uvcwa5h/)

 バットを強く握り、一歩一歩、悪魔に近づいていく。

 悪魔が口に光らしきものをためている。衝撃波だ。

 ボゥッ

「・・・!!」

 千尋は、それをバットひとつで受け止めた。あまりにも信じがたい光景に、外谷場も驚く。

「よくも、あたしの領域でめちゃくちゃしてくれたわね・・・」

 悪魔も、千尋の行動に驚いたのか、後ずさっている。

「死んで詫びろ!!!」

 そのまま高くジャンプをした。常人ならありえない跳躍力で。そしてバットを振り上げる。ありったけの力が込められた。

 ドガッ・・・・

 たった一撃。

 そのたった一撃はとても鋭く、そして重い一撃だった。

 悪魔は、脳天に直接くらって倒れこむ。

「頑丈な悪魔だ。さすが上級悪魔ってとこだな。こんな一撃くらっても祓えないとは」

 外谷場がフラフラになりながら、近づいてきた。

「ま・・・あとは、この強い妖力に感づいたアシェラの一員が来てくれるだろう・・・っと」

 ふらり、と千尋が地面に倒れこむ。
 
 ギリギリのところで、外谷場が千尋の体をつかんだ。

「驚いたな・・・あれだけの妖力を一気に使っちまったのか・・・」

 外谷場は、千尋の顔を覗き込む。どうやら、千尋は眠っているようだった。

「本当に、参っちまうなぁ。・・・顔も性格も、あいつにそっくりだ」


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