二次創作小説(紙ほか)

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【夢小説 伊月俊】黒子のバスケ 誠凛高校バスケ部。
日時: 2016/03/14 23:03
名前: すず (ID: e.PQsiId)

黒子のバスケで夢小説です。

誠凛高校中心です。というか、伊月俊がメインです。



どうぞ、読んでください。


きゅんきゅんする恋愛小説が書きたい!!!!!!

Re: 【夢小説 伊月俊】黒子のバスケ 誠凛高校バスケ部。 ( No.28 )
日時: 2016/04/11 19:22
名前: すず (ID: e.PQsiId)
プロフ: 第一章

「帰ってくるって言ってくれれば、迎えに行ったのに」
「……そうね、でも、言えなかった」
「頭の中には、あった?」
 二人のスカートが、屋上に吹く強い風で揺れた。
「……なかった」
 リコちゃんの瞳が大きく揺れた気がした。
「リコちゃんには会いたいけど、リコちゃんに会うとバスケットボールを思い出すから、会いたくなかったの」
風にあおられた髪を押さえながらリコちゃんは静かに問うた。
「もうバスケットボールは嫌い?」
「……うん、嫌い」
 バッシュのスキール音、バスケットボールをつく音、シュートゴールのネットが揺れる音、汗の臭い——全部、全部。
 思い出したくない光景を振り払うために、ぎゅっと目を瞑った。しかし、目を瞑ると何故か一昨日の男子高校生のシュート練習が脳裏に蘇った。流れるような黒髪、何年もバスケをやっている者の、洗礼されたシュートフォームだった。しかし彼は3Pシューターではないだろう。
「嫌いなのに、昨日伊月くんのシュート練習を見ていたの?」
 目を開けるとそこには、先ほどまでの、悲しみをたたえた彼女のようすはなく、鋭い光を宿した瞳が私を貫いていた。ついさっきまでずっと感じていた視線。私はこの瞳を知っている。
まるで悪い夢から覚めても、まだ夢の中にいるような感覚だった。
「凛音がバスケットボールをやりたくないのはわかってる。百も承知なの。だけど、凛音はきっとまだ」
 私は、その言葉の先を言わせまいと、絞り出すような声で遮った。
「どうしてそのことを知っているの」
「昨日の夜、伊月くんから聞いたわ。今ね、男子バスケットボール部のカントクをしているの。彼が副キャプテンなのよ」
 男子バスケットボール部のカントク……?
 今、私は史上最強に間抜けな顔をしているだろう。別に、日本から数年離れていたからというわけではないが、理解するのに数秒程時間がかかった。影虎さんではなく、リコちゃんが? 一昨日会ったことがもう知られていることも、そして彼が副キャプテンであるということも、すべて吹き飛ばす程の威力だった。
「リコちゃんがバスケットボールのカントク? 影虎さんじゃなくて?」
「パパは、もうそんなことしないわ」
「お父さんの意思を継いで、やっているのね」
 風で流れる髪を耳にかけながら、リコちゃんは小さく頷いた。
 まあ、あの人のことなら単に駄々をこねてやりたくないだけなのかもしれないけど……リコちゃんならカントクになることは出来るだろう。そして、選手を鍛え上げることも、まとめあげることも出来るはずだ。
 しかし、もう私には関係のない話だ。
 ということは、この先の展開なら読める。きっとリコちゃんはこう言うだろう。
「時間がないから単刀直入に言うわ」
誠凛高校バスケ部を——。
「一度だけでいいから見て欲しいの」
「無理よ」

Re: 【夢小説 伊月俊】黒子のバスケ 誠凛高校バスケ部。 ( No.33 )
日時: 2016/04/26 19:08
名前: ナッツ ◆5kukDeSLBM (ID: 5SQt.OF5)

凛音ちゃんのバスケシーンとっても良かったです♪その場の雰囲気が伝わってきて読みやすかったです!

続き楽しみに待ってまーす♪

Re: 【夢小説 伊月俊】黒子のバスケ 誠凛高校バスケ部。 ( No.34 )
日時: 2016/05/05 15:09
名前: すず (ID: RvrChBm6)
プロフ: 第一章

 展開が読めるということは、数秒前には、事前に答えが用意出来る。いや、数秒前なんかじゃない。私はあの時からもうバスケには関わらないと決めたのだ。
 リコちゃんの唇が噛みしめられるのを、ぼおっと眺める。
 痛そうだと思った。ただそれだけだった。
「凛音がそういうことは予想出来たわ、だけど、急に部に入れって言ってるんじゃないの。プロの目線として、一度だけでいいから見て、アドバイスが欲しいの。彼らのために」
「何度言っても同じよ。それに私はプロじゃないわ」
 プロになれなかった、ただの凡人よ。
 これからどんなに一生懸命あなたが口説いて来たって、私は絶対に同じ答えを出す。
 その時。
「おーい! お前ら、屋上で何をやっているんだー!」
 開いている扉から、竹刀を持った体育教師らしき人物の怒鳴り声が聞こえた。どうやら、見つかってしまったようだ。
 私はリコちゃんに背中を向けて静かに歩き出す。
「ウィンターカップが控えてるの! もうすぐなのよ!」
 叫び声に似た、悲痛な声が背中に届く。だが、何度言っても同じだ。
「ごめんね、リコちゃん」
 振り返ると、リコちゃんの目に水っぽいものが溜まっているのが見えたような気がした。
「私はもうバスケットボールを見たくもないし、触りたくもないのよ」









「あれー? 凛音、どこ行ってたのー?」
 教室に帰ると、肩までかかるポニーテールを揺らしながらみなまちが問うた。
 彼女は、陸上部に所属しており、昨日の集団の一番後ろの層で、どうしてここに来たのかを尋ねてきたあの女子である。
「いやー、ちょっと呼び出されちゃって。昔からの友達にね」
 一番前に陣取っていた女子たちは、早速他の話題に興味が移ったのか、既に誰一人として話しかけて来る者はおらず、城壁は跡形もなかった。しかし、どうやら昨日で、私がここのクラスにいることは二年生中に広まってしまったらしい。物珍しそうに遠くの方から見て来る生徒が後を絶たない。
「昔からの友達? 凛音ちゃん、友達なんていたの?」
 私の前の席、水泳部のマネージャーであるきたは、おっとりとした柔らかい口調で言った。
「中学生から知ってる。相田リコちゃん」
「相田リコって、確かD組のバスケットボール部のカントク、だっけ? 真理紗」
「うんそうだよ。なんか時々プール貸してくれって言いに来てるもん。バスケットの練習でプール使うなんておかしな話だけど」
「え? まじ? それってどういう風に使うの?」
「なんかプールの中でスクワットとかするらしいよ。水の中だから関節への負担も少ないし、いいみたい」
 でも、おかしい。確かリコちゃんは影虎さんのスポーツジムがあるから別にプールなんて、水泳部から許可を得なくてもいいだろうに。まあ、リコちゃんならやりかねないが。
「っていうか、凛音ちゃんって中学校からもうアメリカに住んでたんでしょう? そしたら、相田さんもアメリカに住んでたことあるのかな?」
 真理紗が二時間目の地学の教科書を出しながら聞いてきた。
「いつ頃から友達になったのか覚えてないや」
「昔、小学校が同じだったとか?」
 代わりに由希が自信満々に答える。早々にこの会話を切り上げたい私は、またもや適当に相槌を打ち、今日の食堂のメニューの話へと切り替えた。私の悪い癖だ。二人もどうやら触れて欲しくない話題であると悟ったようで、話を合わせてくれた。
 その悪い癖に今回、少しばかり言い訳をするのであれば、重要な確認作業が必要だったから、曖昧になってしまったのだ。
二人と喋っている間も、教室の前から三列目、一番左端、窓際の席にいる男友達と楽しそうに喋っている、伊月という男を私は目の端に捉え続けていた。今日の朝から、何もアクションがないとはいえ、警戒を怠ることはなかった。また私の気が緩んだその一瞬をついてくるに違いない。
「ねえ、凛音。もう学校には慣れた?」
 由希が立っている私を見上げるようにして聞く。
「そんな、昨日今日で急に慣れないよ。でも、由希と真理紗が最後まで話しかけてくれて嬉しかった」
「昨日の女子が群がっているのは凄かったよね。ここはまだ新設校だから生徒数が少なくて、噂はすぐに広まりやすいし、何よりみんな刺激求めてるからさ。帰国子女が現れた! ってなったら友達になる、ならないは置いといて喋りたがるんだよ」
「そうそう! 由希ちゃんはまだ遠い層にいたけど、私なんて喋りかけられなかったよーみんな背がでかいし」
「真理紗が小さすぎるのー! 身長何センチ?」
「百四十九センチ」
「はいちいさーい!」
「もううるさいなー!」
 二人がくすくすとじゃれあい、私も釣られて笑っていると始業のチャイムが鳴った。席を離れる由希に軽く手を振り、ようやく空いた自分の席に座ると、彼も同様に自分の席に座った。がたがたと周りの生徒も慌ただしく自分の席に座り、先生が号令を促す。
 その時、前の席の真理紗が手紙を回してきた。
 ルーズリーフからちぎった、歪な形の紙に、くまさんが描かれている。吹き出しで、「あの先生、寝てるの見つかると怒鳴られるから気をつけろ!」と書かれていた。
 思わずクスリと笑ってしまうと、前の席の真理紗も少しだけ顔をこちらに向け、笑ったような気がした。 
すぐさま裏面に返事を書こうと筆箱からシャープペンシルを取りだす。しかし、彼の足元——私の右隣にシャープペンシルが転がり落ちてしまった。
まずい、と思った時にはもう遅かった。
彼はすぐに、そのことに気づき、私を一瞥した。それで一瞬、彼の足元まで拾うのを躊躇してしまい、彼が先にシャープペンシルを拾ってしまった。
一昨日と同じだ。彼は常に私の一歩先を行動する。
別に慌てていたわけではないし、焦っていたわけではないし、もちろんわざとでもない。普通に筆箱からシャープペンシルを取り出そうとしただけなのに、落としてしまった。その間、一瞬の出来事だった。
私が拾いたかったのに……いや、彼が拾った方が、時間的にも効率的にもいいと頭では理解している。きっと私だって彼がバスケットボール部員の伊月俊でなければ、そうお願いをしただろう。しかし、ことはそう単純ではない。
 彼は私のシャープペンシルを差し出すと、軽く微笑んだ。
 どこにでも売っている、何の変哲もない桜色のシャープペンシルが私の前に差し出される。
「はい、どうぞ」
「どうも、ありがとう」
 私は彼の目を見て、受け取ることが出来なかった。瞬間、彼の口元が自然と私の耳元に寄った。

Re: 【夢小説 伊月俊】黒子のバスケ 誠凛高校バスケ部。 ( No.35 )
日時: 2016/05/05 15:09
名前: すず (ID: RvrChBm6)
プロフ: 第一章

「まだ諦めてないから」
 決意のこもった強い口調だった。
 彼がさりげなく耳元に口を寄せたように、私も何食わぬ顔でシャープペンシルを受け取り、真理紗からの落書きの返事を書こうとシャープペンシルを構える。
何を書こう。私もくまさんに対抗してくまさんを書こうか。
——まだ諦めてないから。
いや、それではオウム返しで芸がないからやめておこうか。
まだ諦めてないから。
彼の声が聞こえる。
どうしてそんなことを、簡単に言うのだろう。それくらい本気であるということなのだろうか。そんなことを言われたって、私はただ困るだけなのに、何も気持ちは変わらないのに。
いくら、続きを考えようと頭を捻っても彼の声が頭の中で響き、返事を書くことが出来ない。ここでシャープペンシルを置いて、口に手を当てたり、顔を覆ったりしてはいけない。平静を装い、さも紙切れに何かを書こうとしている私を演じなければならない。反応してしまえば——彼の思う壺だ。そうは思いながらも、脳内再生は続いてしまう。
伊月俊——油断も隙もない。
またこの前と同じような、見事な不意打ちを食らってしまい、彼に悟られないよう小さくため息を吐いた。












「はーい、じゃあ何かやりたい球技ありますか?」
 クラスの体育委員の女子が、ホワイトボードを背に体育座りのみんなの前に立つ。そこには、「屋内で出来る球技」と書かれてあり、既にバレーボールの意見が出されていた。
 六時間目——体育の時間。本来であれば、先生が授業を行うのだが、今日は出張でいないらしく、自習内容は「みんなで一時間、何でもいいから球技をすること」だった。
「凛音ちゃん何がいい?」
 私の右隣で肩にもたれかかっている真理紗が聞いた。茶色くてほわほわとした綿毛のような柔らかい髪が肌にすれてとてもくすぐったい。
「私は、なんでもいいよ」
「はい! じゃあ、バスケットボールがいい!」
 由希が私の左隣で勢いよく手を上げ、二十数名の女子全員の視線を一人占めする。
「よっしゃあ! 久しぶりの球技で腕がなる!」
 楽しそうに腕をぶんぶんと振り回し、ガッツポーズをとる由希。
「バレーもいいけど、やっぱここはバスケットでしょう!」
「んじゃあ、二つ目はバスケットね? 他に案は?」
 そう言いながら体育委員はホワイトボードに二個目のバスケットボールを丁寧な字で書きこんでいった。
 私の今、一番したくないスポーツが体育の授業で行われるかもしれない——考えれば至極当然のことだ。日本の体育の授業の中で、バスケットボールが選ばれることはそんなに不思議ではない。だから、心構えをしておくべきだったのだ。バスケットボールを触ることになっても……私の心も体も大丈夫なように。
 でも、まあバスケットボールにならないよう、票を他の子と一緒に操作をすれば、きっと大丈夫だろう。みんなそんなにバスケットをやりたいわけでもなさそうだ。
「ねえ、隣の男子もバスケットやるみたいだよ?」

Re: 【夢小説 伊月俊】黒子のバスケ 誠凛高校バスケ部。 ( No.36 )
日時: 2016/05/05 15:10
名前: すず (ID: RvrChBm6)
プロフ: 第一章

 真理紗が後ろに首を捻りながら、小声で言うとつられて私も首を捻った。確かに、男子の方はもう五対五のミニゲームをやっていた。きっと人数が多いから、早くミニゲームをしないと全員が回らないのだろう。
 その中で、やはりと言ったところか、一際目立っている男子がいた。
釣られた目線をすぐにホワイトボードに戻すつもりだったのに、彼がインサイドでペネレイトをしてレイアップを決めたその最後まで見てしまった。
 さすがはIH東京都決勝リーグまで上がっただけのことはある。基本がしっかりしているし、何より——今、あのゲームの流れを作っているのは間違いなく彼だ。そういや、彼のポジションは一体何なのだろうか、先ほどから彼は一人である程度何でもこなしてしまっている。体育の授業の一環なので、自分が多くのことをカバーしないと回らない部分も出てくるからだろう。彼の本来のポジションを見極めるのは困難だ。
「ねえ、凛音ちゃんって伊月くんのことよく見てるよね」
 私の顔の真横で、真理紗が耳元で囁くように言い、にやりと笑った。私は「急に何よ」と思わず顔をそらす。
「だって、一昨日辺りからずっと伊月くんのこと見てるよね? なんでそんなに見てるの?」
「言っとくけど、真理紗が思っているようなことは一つもないからね」
「えー!? もしかして気になってるの? って言おうとしたのにー」
「大外れ」
 ぷうと頬を膨らまし、すねる真理紗。
「んじゃあ、何なの? また旧友?」
「まあそんなところかな」
「絶対そうじゃないでしょ。適当に返事したでしょ」
 更に頬を膨らます真理紗。
「凛音ちゃんって結構返事、誤魔化してるよね。別に……言いたくないことならいいんだけど、でも言いたくなったら言ってよね、気になるんだし」
 真理紗は私の肩によりかかるのをやめ、自分の膝小僧にまた拗ねるように顔を埋めた。
 江北真理紗——少し天然で、自分のことしか興味がない子なのかと思っていたがどうやら間違いだったようだ。
「ありがとう、真理紗。ちゃんと言うから、待ってて」
 顔を伏せていて、どんな表情をしているかわからなかったけど、小さく頷いたような気がした。
 しかし、
「それじゃあ、バスケットボールで異議ないですか?」
「異議なし!」
 私が女子の会話に混ざる頃には、もう既にホワイトボードに書かれてあるバスケットボールの文字に、大きく黒ペンで丸が囲まれてしまっていた。
 票操作をする前に、決まってしまっていた——。
「では、準備体操してストレッチして、シュート練習とドリブル練習やって、最後の二十分だけミニゲームします!」


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