二次創作小説(紙ほか)

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

フェアリーテイル〜爆発の滅竜魔導士〜
日時: 2020/08/16 01:31
名前: AF (ID: YrQV5zvB)

X791年
【序章編episode.1〜episode.26】
——天狼島帰還後、平穏を取り戻したフェアリーテイルに、一人の少年が訪れる。少年の兄の捜索依頼を機に突如フェアリーテイルの命を狙う刺客達が現れ始める。

【闇の目編episode.27〜episode.48】
殺戮ギルド『闇の目』——少年の兄捜索依頼を機に現れた刺客達の正体はそのギルドに配属されていたのを知る。遂に闇の目は眼を開きエクシードを捕獲。殺しのプロと悪名高いギルドへ乗り込むフェアリーテイルの生死は如何に。

X???年
【エージェント・オブ・ミラー編episode.???】

初めましてAFです。
よくネット小説を読んだり、アドバイスを頂きながら文章の試行錯誤をしております。
コメントくださった皆様ありがとうごさいます!
2012/12/24 参照1000超、みんな、ありがとう!
2016/12/07 閲覧11111達成!ありがとう!

Re: フェアリーテイル〜爆発の滅竜魔導士〜 ( No.78 )
日時: 2016/11/08 18:25
名前: AF (ID: L3qeerbj)

episode.40



 ナツとウェンディは異次元城の西エリア、二階から崩れている瓦礫を足掛かりに息を切らしながら駆け上がる。ナックが待機していた埃と崩れたレンガまみれの空き部屋を抜け、T字の人が横に五十人程並んでやっとぎゅうぎゅうに詰まる程の廊下に出る。城自体規格外な国家レベルの大きさのため、これが普通の廊下の大きさなのだろうと二人はある程度進み、辺りを見回しながら理解して立ち止まる。
「ちくしょう、ハッピー達がどこにいるかわかんねぇ!」
 ナツは肩を縮めて膝に手を付けて息を整える。ウェンディはナツの背中をさすりながら目を閉じていた。
「あの……ナツさん、何か聞こえませんか?」
「確かに、金属を叩いてる音が聞こえる」
微かに震える振動を足元で捉え、真下を見て確信する。
「ハッピー?」
 相棒の名前を微かな声を息混じりに発すると、感覚なのか逆走するナツを見て急いで追いかける。
「もしかして?」
「ああ、王をぶっ飛ばすのは後だ。 下の方で聞こえる! 待ってろハッピー」
 二人は急いで空き部屋から下へと崩れた瓦礫を駆け下った。

 南エリアは嵐が過ぎ去ったように静まり返っていった。
「私の演奏を邪魔したな!」
 ミュージは右肩から左腰まで大きく切られた傷口を、予備の魔導指揮棒でさすると、傷がみるみる塞いでいく。気持ちよさそうに微笑み、深呼吸をした。
「んー、良い気持ちだ非常に癒される。」
 エルザとグレイはその異常で予想外な光景に目を大きく開くも瞬時に理解する。エルザは一つ前に出て下唇を噛む。
「なるほど、音楽というのは敵になると相当厄介なものなのだな……」
 膝立ちから立ち上がり、膝に付いた埃をゆっくり払い余裕を見せつける。
「そう、癒されたければ音楽の力で傷を癒す。 つまり、暴れたくなっても音楽の力で覚醒させればいい」
 シルクハットを投げ捨て、タキシードを上半身だけ脱ぎほとんど皮と骨だけ——と言えば過言なのだが——の体をさらけ出す。
「人前で裸になるのか」
「お前が言うな」
 グレイがミュージにツコッミを入れるも、いつの間にか上半身裸のグレイがミュージにツッコまれる。少し微妙な間が空いたが、咳ばらいをして魔導指揮棒を両手で握り、目を大きく見開く。
 突風と共に強力な魔力が二人を襲う。
「魔力の流れが変わった! 接近に備えろグレイ!」
 エルザの掛け声に被さるようにミュージの唸り声が轟く。
「ぐぐぐうううるるるあああ!」
 ほとんど皮と骨の体から一気に筋肉が膨れ、皮膚が紫色をベースに所々赤いラインが入り禍々しく変色、二メートルあった身長が二倍になり、両肩から白い角のようなものが剥き出しになる。
「待たせたな、私は敵の得意分野で勝つのが好きなんだぜ。 だから、接近戦で精神と共に木っ端微塵にしてやる!」
 先ほどの品性が無くなり低音が響く獣のような声に、少し二人の顔が強張るも魔力を高めることに集中する。
 接近しようと足を踏み込んだ矢先に地面から爆発が起きる。
 ミュージとの間から上がる、煙の中から少女のような柔らかい声が聞こえる。
「あらら、良い戦いしてくれたけどもう終わりかしら?」
 痺れを切らしたエルザが煙を斬撃の風で払うと、二人は息を飲み首を伸ばした。
 白いロングヘヤーに黒いゴシック服の少女、その見た目から反した両手が竜の様な黒い巨腕だけでも驚くことだが、その手先に握りしめられている無数の傷から血が流れているルーシィとジュビアに衝撃を受けた。
「ルーシィ! ジュビア! テメェやりやがったな!」
 怒号、両手に氷剣を持ち地面を蹴り少女一直線に突撃するが、それはすぐにエルザの声で掻き消された。

 体がなぜか横に突き飛ばされる。切り払われた右側の煙が死角になってしまい禍々しい巨体にやっと気づく、丁度盾になるようそばいたエルザが金に輝く指揮棒の太いところで腹部を勢いそのまま突かれ、目に留まらない速さで後ろの城壁にめり込まれていった。

「あ……あ、エルザー!」
 グレイは後ろを振りむき、自分の感情に任せた行動で取り返しのつかない状況に膝をつく。ミュージは左斜上から囁いた。
「今度はお前が膝をついたな。 お前が感情に身を任せたばかりに」
「ふふふ! 残念だったねあなた。 ついでにこれもあげる」
 追い打ちをかけるように、痛みに顔を歪めてるルーシィとジュビアを見て顔を伏せる。
「俺が感情に身を任せた結果か……」
 ミュージは無言で魔導指揮棒を振り下ろす。
 グレイはそれを無言で素早く左側に置いてある氷剣を拾い、甲高く金属がぶつかるような音が、教会のようなホールの部屋に響く。
「なに! どこから湧いたのだ! その力!」
 グレイは溜まってた笑いを小さく噴き出す。
「俺らの目的はてめぇら殺戮ギルドをぶっ潰すこと……今の状況がぶっ潰すことに向いてるのなら、俺はなにも間違っちゃいねぇ! そして仲間がやられて怒る感情が湧かない人間はいねぇんだよ!」
 大声と共に体を横に受け流し、魔導指揮棒が地面に付くと威力の衝撃でミュージから一直線に地面が抉れ、廊下が見える。
「ふーん」
 後ろで見ていた少女は、既に腕を元に戻していた透き通る程キレイな手で髪をかき上げながら、横にいるグレイを睨み付けた。

Re: フェアリーテイル〜爆発の滅竜魔導士〜 ( No.79 )
日時: 2016/12/07 16:12
名前: AF (ID: L3qeerbj)

episode.41



 グレイの息を切らした声が、顔が真上に向くほどの大樹が横倒しになって丁度収まりそうなホールに響く。
この状況を突破するにはどうしたらいい?目的もないままあいつらに挑むのは即却下だ。
 左膝を付いたグレイは右膝に手を置きその反動ですくっと立ち上がる。自分の後ろに倒れているのは手前からルーシィ、ジュビア、エルザ。彼女らの戦闘で傷付いた体を見るたび自分の体のように心や体が痛む。
 まずは、エルザ達が動けなければ勝機見えなそうだな……、さっきまで同じ状況下だったミュージはなぜ完治した? そうだあいつが右手で握りしめている魔導指揮棒だ。あれさえ奪えば良い。
 グレイは俯き気味だった顔を上げた瞬間、小さくそして丸く空間が歪み、それは徐々に大きくなり本能的にこちらに向かっていることを、認識した。
「てめっ」
 咄嗟に暴言を吐きそうになったがそんな暇はなく左側に体をそらした。後ろにあった純白の大木のような柱は、その攻撃受けたため穴が開き貫通していたが、その位置を見て少し後ずさりする。
「おぉっと悪いな、決断の心音が聞こえたものでな」
 魔導指揮棒は持ち手に向かって太くなっているだが、その持ち手の側面の穴から煙が出ているのを見て、グレイは顔を引きつらせたまま笑い声を出す。
「ったく、悪趣味な攻撃だぜ。俺が避けてなかったら心臓部だけぶっ飛んでたじゃねぇか!」
 歯を食いしばりグレイは氷の造形魔法の構えを取る。右の掌を上に向け左の拳をそれに乗せて。
「氷雪砲(アイスキャノン)!」
 叫ぶも何もしてこないグレイを見て、ミュージはクスッと小馬鹿に笑う。
「小馬鹿にしやがったな……?」
 黒いゴシック服の白のロングヘアーの少女は一瞬息を飲み、声を出す。
「後ろよ! ミュージ!」
「馬鹿はてめぇだ!」
「わかっている」
 ミュージは視界の端で捉え、体の方向を後ろへ向きバックステップする。青白い氷塊が魔法で固められていたはずの床を貫き煙を巻き上げる。
 その煙で周囲をある程度撹乱させたのを認識したグレイは一心不乱に後ろ向きのミュージの右腕を斬り飛ばそうと、氷の二刀を構えて走り出す。
「撹乱させようと無駄だ!」
「氷魔剣(アイスブリンガー)!」
視界にも止まらない速さで右腕をクロス字に斬りつけようとするも、予想以上の分厚い筋肉に阻まれてしまい、ミュージは振り向き直した勢いで左爪をグレイの背中に簡単に食い込ませてしまう。
「ふんっ、後ろにもう一人の貴様を氷で造りそこから砲台を撃ち込ませたと……。そんな戦術で勝てるとでも思ったか!」
 背中へ突き刺した爪をさらに食い込ませ、グレイは背中や口から血を吹き流す。ミュージも完全に向き直ってしまい完全に捕まってしまう。
「そこがお前らの限界だ……氷錠(アイスロック)!」
一つの氷剣は手錠に高速で変形、ミュージをロックする。
 「お前の慎重な性格が自分を傷つけることになるぜ」
 右手に持っていた氷剣をミュージのみぞおち部にありったけの力を込めて突き刺し、その氷剣を足蹴にダメージで力の抜けた右手から魔導指揮棒を奪い取る。
「やっぱり傷が癒えてくぜ……」
 魔導指揮棒の先端に緑色の光が豆電球のように弱弱しく光っていた。それを当てると不思議と体の傷が治り始めた。
 急いで、倒れていた三人の仲間を魔導指揮棒を当てることで復活させることに成功した。
「返えしやがれ! 虫けらが!」
 みぞおちから氷剣を抜き取るもその傷口からボロボロと氷が流れ出す。
 こちらへ大きな重低音の足音を響かせながらこちらへ向かってくる。
「開け! 金牛宮の扉タウロス!」
「モォー! ルーシィさんのボディになんてことしやがる!」
 牛の精霊のタウロスは怪力に身を任せ、すれ違いざまに斧でみぞおちを斬りつける。これには、痛みで声にならない喘ぎをもらす。魔導指揮棒を所持したグレイへ足元がおぼつかずも向かう。
「よくも仲間に酷い目に合わせたわね! 水流斬破(ウォータースライサー)」
 風を切り裂く水の斬撃が腹部へ叩き込まれ、ミュージは血を吐き出す。みるみると体が元の細身へと変わるがまだグレイの方へ向かう。
 グレイは創り出した氷剣を構える、エルザは妖刀紅桜を構える。間髪入れず同時にクロス字に切り裂いた。
 ミュージは歩みを止めグレイとエルザの間に倒れた。
「これが……生と死の狭間か……何も思い浮かばぬ、私は一体どこから生まれたのだ……いつの間にか現れたのだ。それを探す旅は終わり……」
 ミュージはそのまま動かなくなったが、身体が上下に微かに動いていたので気絶した模様だ。
 
「さて、お次はお嬢さんだな……」
グレイの言葉にエルザは眼を瞑りかぶりを振る。
「少女とは思わない方が良いぞ、あの容姿でも立派な殺し屋だ」
ルーシィはよそ見していたのだが、たまたまグレイの攻撃に開いた魔法で固められている床の穴を見て大きく目を開く。
「あっ良いこと思いついちゃったかも」
 ルーシィは仲間を手招きしてこそこそ話をする。
「なかなか来るものがありますね」
「そ、それは言わないでー」
 ジュビアのツッコミに苦笑いするルーシィ。
「だが決まれば確実かもしれんいくら変形しようと敵わんな」
エルザは即同意し、グレイもそれに続き頷く。決心がついたように少女を見る。
「やっと終わったのね、私の名前はマーダル。それ以外分からないの……でも、殺っつけたくなっちゃった貴方達を」 

Re: フェアリーテイル〜爆発の滅竜魔導士〜 ( No.80 )
日時: 2016/12/26 11:09
名前: AF (ID: WV.OFo7v)

episode.42


 【フィオーレ王国】
 イシュガルの大陸に位置し、ギルドの数はイシュガル全体で約500。王はトーマ・E・フィオーレ。人口1700万人。主な産業は酪農・園芸農業。X622年、永世中立国に認められた。飲酒は15歳以上から認められる。領内にある街は草や花の名前から付けられている。
 フィオーレ王国の首都であるクロッカスの小さな公園のベンチにムニスルは腰を掛けていた。
 北と中央は例の屍を全て排除した。そっちはどうだ
 ムニスルは眼をつむり、念話テレパシーを行う。すると、残りの四覇の念話が聞こえてきた。
 こっちは西エリア。全員ぶった切ってやったぜ!
 こちらは南エリア。屍は全て消しました。
 東エリア。異常なしじゃよ。
ムニスルは眼を開き立ち上がるも念話を続ける。
 たった今、千里眼で見る限り被害者はゼロだ。引き続き隠密状態で警ら。何かこの王国に入って来たら即刻向かえ。

 異次元城の南エリアのホールでは、睨み合いが続いていた。
 マーダルは髪をかき上げるそぶりを見せた瞬間、エルザは叫んだ。
「伏せろ!」
「ひぃっ!」
 ルーシィは情けない声をあげ素早く屈み、少し遅れて三人も屈む。一瞬目に映る程だが、弾丸のような空間の歪みが頭上を通過するのを全員確認した。安堵のためか少し息を吐く一行だが、その刹那後ろから耳を貫くような爆音が聞こえた。
「これを避けるのね……」
「それじゃあ、あたしとジュビアはペアだから"下の階"へ行くわ」
 ルーシィとジュビアは破壊された扉とも言えない出口を掻い潜る。
「どこいくのかしら」
 いつの間にか右手に逆手で持っていた、光り輝く剣をルーシィめがけて突き刺そうとするが、エルザの妖刀紅桜によってつばぜり合いをする形になった。
「"今の"てめぇの相手は俺らだ!アイスメイク牢獄(プリズン)!」
 檻がマーダルを捕まえた。
「それがマーダル、貴様の未来の姿だ」
 エルザは剣先をマーダルに向けて睨み付ける。
「ふふふ、そうね早速本気になろうかしら」
 両手の親指の指輪が輝き始める。
「その指輪で武器を出しやがったのか!」
 くっそ……このまま檻から出られたら時間が稼げねぇ……。
「アイスメイク槍騎兵(ランス)!」
 無数の氷の槍が檻の中にいるマーダルを貫こうとするが、高速で変形した竜の両腕に弾かれる。そして、竜の右手から衝撃波を放つといとも簡単に破られる。
「はぁ!」
 背中から竜の翼を生やし、姿が認識できない程の速さで飛び立つと思いきやエルザの背後に立っていた。
「何!」
 衝撃で前へ吹き飛ばされるも、後ろ向きで紅桜でガードしていたため、ダメージはない。前へ迫る壁を足蹴にして反動で振り変える。いつの間に接近していたマーダルに臆せず振り下ろす。
「やるわね!」
 竜の左腕で防ぐと魔力の衝突の影響なのか、体が持っていかれそうな突風が吹き荒れる。グレイは半開きにして状況を確認してエルザが無事なことに安堵。しかし、右手の人差し指の指輪から、人差し指を包む魔法機関銃が現れる。竜の手のため、大きさは少女マーダルの胴体サイズ、リーチが十分広がる。
 間髪入れず、人差し指の魔法機関銃を放つとエルザは眼を丸くして、すぐさま下へ潜り込み回避をする。
 ドドドドドドドドという小気味の良いリズムと同時に壁が崩れる音がして少しエルザの顔が青ざめるも、避け続ける。
「あはははは! どう? 一発でも当たるとどんなに魔力で体をコーティングしても確実に吹き飛ぶよ? ホントだよ? 試したことあるもん!」
 グレイは相手の狂気に吐き気を覚えながらも、丁度弾丸が来た瞬間氷の盾でガードするも豆腐のように弾け飛び、すぐにグレイも走って避ける。
 あの威力……なんて練度だ……。このまま走り回っても体力が減る。とにかくあいつに近づいて魔法機関銃を叩っ切る!
 エルザもグレイの考えて同じだったのか、少しずつだがマーダルに近づいている。
「アイスメイク飛爪(ひそう)……」
 爪の付いた氷の鎖を造り出す、もちろんマーダルに認識されないように、身体で死角を作り、距離を詰める。
 エルザは斬撃波を飛ばすも竜の左腕で弾き、魔法機関銃をエルザに向ける。グレイに絶好のチャンスが到来した。飛爪を魔法機関銃の魔力を吸引するための穴に引っ掛け、そのままマーダルにのしかかる。
「悪いな」
 氷剣をその穴に突き刺した瞬間爆発が発生、グレイは黒煙に抱かれるように壁へ叩きつけられる。
 微かな意識の中、床を見ると水が少し溢れてきているのを見つける。
「最後の仕事だ……アイスメイク砲撃キャノン
 水が溢れている所と重なるように複数の氷の砲台が天井に張り付くよう造る。それを見たエルザはマーダルをそこへ誘導するように、紅桜で弾かれながらも押し込む。そして、氷の砲撃が一斉に始まり、雨のようにマーダルとその真下の強力な魔力で塗り固められた床へ降らす。
「くっ! 何? この水?」
「お前の負けだぜマーダル」
 エルザとグレイは後ろを振り向き、出口へ飛び去るとやがて床が崩れ始める。マーダルは氷の強力な砲撃で手も足も出せず、待ち構えていた"下の階"の大部屋を包むほどの渦に包みこまれる。
「ここは私のエリア……あなたを絶対に逃がさない」
 渦の中、水になったジュビアはマーダルを睨み付ける。隣の壁がひび割れ始めたのを確認すると、水がジュビアの体へ吸い込まれ、急いで上の出口へ飛び去る。
「ウィーア—! オレっちの一生分の砂だぜ!」
 隣の壁から、想像を絶するような砂の津波にマーダルはダメージと恐怖で怯み、包み込まれて目の前が真っ暗に染まった。
 私は……ここで……。
「ありがとう! スコーピオン!」
「良いってことよ!」
 
 しばらく、静寂が訪れマーダルを倒すことに成功したと確信して、グレイ達と合流した。
「やるじゃないか、ルーシィ!」
「私って意外とこういうの向いてるかも」
 ルーシィのお気楽さに笑いつつ、互いの健闘を讃えあった。

 ——異次元城地下部
 ナツとウェンディはハッピー達を見つけ檻を破壊した。
「よくやったな! お前ら!」
「檻を叩いた音でこちらへ知らせるなんて、凄いです!」
 リリーとスカイは笑いあった。その瞬間隣の壁から爆発音が聞こえ、カマオカが壁にめり込まれていた。
「おう、サラマンダーじゃねぇか!」
「良かった! 無事だったんですね!」
 ダイトとガジルがカマオカを吹き飛ばしがら登場する絵はさまになっていて、ウェンディは眼を輝かせていた。
「へっ、俺の方が早かったな!」
「うるせぇ! けどありがと……っつーか……」
「んー? 聞こえなかったぞ」
 ナツは意地悪そうに耳を傾けて、ガジルに近づいた。そんな穏やかな流れを断ち切るように、鉄球がこちらへめがけて飛んでくる。それを無言でダイトは飛び蹴りで打ち砕く。
「取り敢えず倒しましょうか!」
 ダイトの気合の一声で、滅竜魔導士ドラゴンスレイヤー四人は一斉に構えをとる。

Re: フェアリーテイル〜爆発の滅竜魔導士〜 ( No.81 )
日時: 2017/02/02 14:39
名前: AF (ID: WV.OFo7v)

episode.43



 赤髪のカマオカはいつもの人をあざ笑うかのようなヘラヘラ顔とは違い、眉間にしわを寄せて右腕から人1人分の鉄の刃輪を複数も飛ばし始めた。
「滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)の力見せてやるぜ!」
 ナツの掛け声で4人は刃輪を避けつつ打撃で弾き、距離を詰め始める。
「愚かな子たちねー」
 カマオカは呆れたような今にも眠りそうなくたびれた顔を見せつけ、身体から飛ばされる刃輪はカマオカの存在を消費。この場から居なくなってしまう。
「だからここに監禁したのですか……ハッピーさん達を。 この地下フロアは鉄製! ここは奴にとっての領域です!」
 ダイトは微かな震え声で叫び、それに続き4人同時に消えたカマオカを探すため、隈なく嗅覚を、視覚を、聴覚を最大限に使用した。誰も居ない天井まで推測30メートルありそうな鉄の檻、まばらに設置されている鉄の樽、そんなものに少し目を盗られながらも警戒を怠らなかった。
「ごめんなさい……」
 ダイトは数分にも及ぶ静寂に気でも触れてしまったのか、右隣に居たガジルの頬を、右フックで殴り付け乾いた音が響いた。
「ぐはっ」
 ガジルの殴られた頬が灰色に染まり始め、そこから眼球が見え始めたところからは早く、カマオカの身体全体が現れた。
「そこかオカマ!」
 何故かオカマと見抜いたナツは、足からジェット噴射代わりに炎を吹き、カマオカの顔全体に満遍なく拳の弾幕を浴びせ、炎に雷を纏わせ速度アップして吹き飛ぶ相手の距離から離れないよう付く。両拳でハンマーのような形を作ると雷炎は膨れ上がり、それをありったけをぶつけた。辺りが真っ白になるくらいな爆発が発生する。
 雷を纏った天井まで登る煙幕から小型の鉄槍を、地面に着地したナツの左肩に、貫通はさせず食い込むように飛ばした。
「ナツさん!」
「無駄だウェンディ! カマオカは1ミリもダメージは喰らってねぇ……いや、そのダメージは俺たちに来る」
 ガジルは倒れていた体を立て直して口を拭い、冷や汗をかきながらウェンディに告げた。その後ガジルは口から血が噴き出る。
「きゃっ! ダイト君の攻撃で?」
「ちげぇ!違う! カマオカにやられたんだ……お前らと会う前に腹をブスッ……とな」
 ガジルは服をめくり、血に濡れた複数ある丸い刺し傷を見せる。
「うわっ!」
 ナツの苦しむ声で注意がナツに向く。
 左肩に刺さった小さな槍は変形、鉄のツルはナツに向いた刃を揃えて絡みつき、身動きが取れなくなってしまい、少し食い込んでいるのか刃から血がにじみ出る。
「オーホッホッホ! 私に攻撃は通用しないわ、私は鉄……叩かれればその響きを魔法威力に変えるカウンター"体質"よ。 ホレッ」 
 カマオカは悪戯に鉄の刃に拘束されているナツを指一本で押し倒す。
「ぐあーっ!」
 背中から倒れたためその刃は冷たく肉に食い込む。
「あら、なかなか頑丈な筋肉ね」
 ——恐らく、ナツさんとウェンディさんは僕たちと会う前に誰かと戦いすでに疲労困憊しているだろう。 鉄を多く備えているガジルさんはカマオカとの相性は最悪。 ここで動けるの僕だけ……。
「ふぅ……いつまで殺人趣向野郎に怯えているつもりだ"俺"は」
 ダイトの魔力の流れが変化したのを感じ取り、カマオカは注意を向けて目を細める。
 ——何かしら、私この魔力の流れと似たのを知っている気がするわ
「……遊びたくなったのねぇ」
 ダイトは無言でカマオカの認知速度が追い付かない程に接近、腹部に拳で突こうとする。チャンスで視界が心が少し晴れたのも束の間、暗雲が襲い掛かる。
 ダイトの拳をカマオカは手で止めた。
 ——なぜ、この子は姑息な手を使わずに殴り始めたのかしら?
「もう気づきそうだな。 あんたはさっき"体質"って言ったな? 魔法でもなく"体質"って言ったな!」
「まさか! ……ってでもそれ貴方達が勝てる要因じゃないわね」
 カマオカは右拳から無数の太い針を生成、それでダイトの腹部を殴り続ける。そんな状況でも冷静に話を始める。
「能力を見抜いてる貴方は慢心してガジルさんの中身から暗殺しようとした。でもガジルさんの頬を殴った時、爆破紋章はガジルさんではなく貴方に付けた。」
「え?」
 殴るのを止めたカマオカはダイトの腹部から右拳を引き抜き、距離を取ろうと軽くバックステップしようとした時。額から紋章が浮かび上がった。
「俺の爆破は強力だ。鋼鉄をも砕く。——爆竜の紋破」
 地面が響く轟音は城を包み地下エリアを崩壊させ、3キロにも及びそうな城は大きく地面へめり込んだ。
 4人は全員無事に瓦礫に押し潰されずに生き残り、地下が沈下してしまったため1階だったところが地下のようになり、崩れてしまっていても微かに見覚えのある場所に少しながらナツ、ウェンディ、ガジルは安堵した。
「まだ! 終わらないわ!」
「あぁ覚えているよ」
 3人と少し離れたダイトとカマオカは睨み合いが続いていたが、ダイトは後ろへ——ナツ達の方へ振り向く。
「死ね! クソガキ!」
「きゃああああああ」
 カマオカの両手には空間が歪むほどの黒紫の煙に見える巨大な魔力の集合体を、ダイトに浴びせようとする場面にウェンディは見ていられず、叫んで顔を伏せる。
「気付いたんだ、俺の爆薬は魔力ということ、それは相手の魔力を利用しても違いがないということ!」
 カウンター体質によって放った魔力の集合体は、口を出来るだけ広げられ"喰われる"。さすがのカマオカもこの状況に戦意喪失し後ずさりする。
「ごちそうさまでした。——爆竜の千華」
 ダイトの金色の炎に輝く拳はカマオカの身体を凹ませ、攻撃力の高さを物語らせる。間も開かず、華のように同時爆発を起こしその衝撃、威力によって異次元城は下から盛り上げるように徐々に砕け、細かくなった煉瓦は焼き尽くされた。

 しばらく砦のど真ん中で口を開いたクレーターから、離れるようにフェアリーテイルのメンバーは砦出入り口へと集合した。
「これで王はどうなったんだろうな……」
 ナツは勝利に喜ばず肝心のマスターを探すため、更地になった空間に目を凝らしていた。
「もしかしたら、今の爆発ごと吹っ飛んじゃったんじゃないのー?」
 冗談を言うハッピーに歯を見せて笑うナツ。それぞれのエクシードを慰め、少しながら平和な時が訪れた。
「……ん?行けないぞ!」
 砦の出入り口は扉もなく通り抜けは簡単なのだが見えない壁が阻むことにグレイは気づく。
 異変に気付き始めると、四角の青白い結晶が辺りを包み、それは認識する空間を削り取っていった。しばらく真っ白になると薄っすらと草原——闇の目のアジト出入り口だった洞窟から出た景色が見え始める。
 
 フェアリーテイルに笑顔は戻ってこなかった。周辺の草木は焼き尽くされ、遠くには街があるのだろうか、そこだけ大きく赤みがかった空が映され、動物の声や優しく撫ぜる風も存在していなかった。

Re: フェアリーテイル〜爆発の滅竜魔導士〜 ( No.82 )
日時: 2017/02/15 15:53
名前: AF (ID: WV.OFo7v)

episode.44



 イシュガル大陸最北近辺、アッチャイオ王国。フィオーレ王国程巨大な国ではないが、建築・鉄道・造船に用いられる鋼材を生産する鉄鋼業国家として名高い国である。ギルド数は200。鉄鋼業が盛んなため、鎧を纏う騎士団が多数おり、その防衛力は一度も敵の城への侵入を許していない程である。
 しかし、それが現在火の海に包まれ、人々がバタバタと地面へ伏せてしまう。家は跡形も無く破壊され、騎士団員は血を鎧に付けながら座り込んでしまっていた。

 アッチャイオ王国の北門の柱に、涙を流しながら笑っているのか、泣いているのかも分からない声を出している。
「……よくも我が家族を」
 下からフェアリーテイルのナツが、その青いローブを纏った青年をすぐに発見した。
「いやがった! そこに!」
「あいつがマスター……Dr.サファンニ」
 ダイトはその悪名高い名前を静かに口にすると、サファンニはこちらへ呼ばれたかのようにこちらへ振り向くと、赤い魔力を放出する。その目に見える魔力は赤き雷に姿を変えて、サファンニの背中へ翼として機能。フェアリーテイルの前に静かに立ちふさがった。
「どうだい? 我が家族を倒した気分は……。 実のところ彼らは我々の実験台なのさ。 とても生きたいという願望が強くてね、希望に溢れていたよ」
 サファンニの手前にいたナツは唐突な告白に一歩後ろへ下がり、グレイが口を開く。
「何しやがったあいつらに……。 マーダルの奴言ってたぞ"殺す事しか記憶にない"ってよ!」
 マーダルの言葉を聞いたサファンニは少し顔が明るくなり、言葉のスピードが少し早まる。
「ああ、アレね! 実のところ実験内容の詳細は言えないんだけど、記憶を削ってしまう事と引き換えに寿命を伸長させたんだ! だから殺害欲求というのはそれの副作用となってしまうんだよね……。それぞれ個体値は違っていてその欲求にすぐに慣れて理性を保つものや、その欲求によって振り回されてしまうものもいるんだ。 楽しかったねぇ!」
 目を覆って高らかに声を上げるその頬にナツの鉄拳が弾丸のように撃ち込まれ、燃え盛り崩れ去った家へと弾き飛ばす。
「わりぃお前ら……手は出さないでくれ」
 ナツは一定の低音で今にも怒りのマグマが噴き出しそうな、そんな静かな怒りが辺りを包む。
「ああ良いぜ。 俺らがやったらアイツどうなるかわかんねぇ」
 グレイは少し折れたタバコをポケットから取り出すとそこらの火にかざして吸う。

 ナツはうつ伏せに倒れこんだサファンニのローブのフードを掴みこちらへ向かせ、炎と雷を纏った拳で顔面へ叩き付ける。しかし、衝撃波でナツは大きく後ろへ後退してしまい、燃え盛る柱に激突する。
「くっ——雷炎竜の咆哮!」
「何っ」
 城壁を越す巨大な雷炎の渦はサファンニを包み込み、遠くの山を吹き飛ばした。
 立ち昇る黒煙から声がしたのはすぐ後だった。
「カマオカの魔法域とエドラスに存在する魔導兵器の存在する空間を私の魔法域へ!」
 エメラルド色の光が煙を遠くへ吹き飛ばす。
「さぁ甦れ! ドロマ・アニム零!」

 その名前を聞き、一同は息を飲んだ。エルザはそれを知らないダイトに説明をする。
「『ドロマ・アニム』それはエドラスの言葉で「竜騎士」。滅竜魔法以外の魔法攻撃を無効化する対魔戦用魔水晶で全身を覆われている。凶悪な魔導兵器だ……それに、ヤツの魔力で強化されれば……」
 頭上に浮かぶ一人分入りそうな緑色の光の粒子がサファンニを包み込み、地面から白銀の巨大な手が生え、やがて足の先まで大地から生まれる様にそこに立ち、恐怖でフェアリーテイルは足が動かずにいた。
「竜閃・零」
 辺りに鳴り響く声で、技を叫ぶと一瞬のフラッシュの後全員の付近に赤い光の針が刺さりそこから爆発の波が押し寄せ無慈悲に吹き飛ばす。
 吹き飛ばされたダイトの脇腹を間髪入れず、長く鋭い赤い剣で突き刺す。
「ぐっ」
「おっと貴様は爆発ぐらいではダメージは入らんだろう! これで消えろ! 竜閃波・零」
 ドロマ・アニム零の赤剣が強く輝き、巨大な光線を零距離で浴びせ、後ろの闇の目のアジトごと吹き飛ばすと大地を轟音と共に揺らした。
 飛び掛かり噛り付こうとするガジルを精密な裏拳でゴム玉のように弾き城壁へめり込ませる。続くナツもドロマ・アニム零のキックで天高く突き上げられ、口から放たれる針山拡散弾を避けるが傷だらけになり血に抱かれて崩壊した大きな建物に煙を巻き上げて落ちた。
 内蔵されたサファンニは大きく笑うが、モニターに水が掛かった所を見て笑止。すぐに操作に移る。
 ジュビアは周りを飛び、注意を向けて仲間を守ろうとする。
「私は水……あなたの攻撃は無効化」
「なるほど、だがこちらは無効化を無効化! 水の持つ領域に干渉可能! つまり貴様はダメージを受けてもらう」
 ドロマ・アニム零は手をかざすとジュビアの体が赤く輝き始め、血が噴き出て徐々に元の姿へ戻る。そして、俊敏な動きでキックを貰うと、1キロ先の崩落した城へと送り出された。
「見えているぞ!」
 天輪の鎧に換装したエルザの飛ばされた無数の剣とグレイの氷のキャノンが一斉に眼前を襲うが、天高くジャンプして操作の効かないキャノンは彼方へ飛び消火の役目しか果たせず、操作の効く無数の剣は正確で精密な剣捌きによって叩き落とされる。
 赤き雷の翼を生やして更なるスピードを手に入れたドロマ・アニム零は瞬きの間にグレイとエルザの後ろへ回り込み、赤剣が装着されていない右のラッシュによって、鈍い音を響かせながらあちこちに体へのダメージが入り、同時に火の海へ飛んだ。
「残りは、3匹と1人だな……消えてもらおうこの最高傑作の前にぃ!」
 ドロマ・アニム零の左手からの波動で、ウェンディとリリーはハッピーとシャルルを庇うように前に立つも、満遍なく爆発を起こし倒れる。
「任務完了。 あっけなかったな妖精の尻尾フェアリーテイルもそれに敗れた悪魔の心臓グリモア・ハートも」
 白銀に輝く火の海に囲まれる竜騎士は、幻想的な美しさと無機質な不気味さを誇っていた。


Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18



小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


作家プロフィールURL (登録はこちら


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大 7000 文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。