二次創作小説(紙ほか)
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- 自己満足で書く
- 日時: 2017/03/19 00:00
- 名前: ぜんざい (ID: KEu3oUUg)
どうもおはこんばんにちはぜんざいです。
ここではぜんざいが自己満足で二次創作やら歌い手様やら夢やら書き殴って行きます。感想コメント大歓迎です。
ぜんざいは基本自己満足で書くだけですので、不快に思われたらすみません。荒らし様等は潔くUターンしてください。
アドバイス、コメント大歓迎です、画面の前で小躍りします。なつきます。
しょっぱなからこんなにぐだぐだでどうしようもないぜんざいですが暖かく見守っていただければ幸いです。
では。☆(∀´)ゝシ
- Re: 自己満足で書く ( No.39 )
- 日時: 2017/11/17 00:39
- 名前: マメツキ (ID: 3EyrfEu6)
また新しいの。
現代→妖はじ。記憶なしなのでただのお話。相手は神酒先生。原作一年前から開始。
設定。
煙管 いおり(キセル イオリ)
大煙管という狸の妖怪。しかし基本人型。普段から力持ちで身体能力もわりと高めだが、煙管を吸うともっとパワーが増す。煙管でなくとも電子煙草のビタシグでも可。最近の大煙管は水蒸気でも煙なら吸えれば何でもオッケー。
弐年参組。狸という繋がりで豆狸の狸塚 豆吉をよく抱っこしてる。神酒先生と交際中。絶対秘密。紳士。
関西弁。ワインレッドのカチューシャと黒ぶち眼鏡。クラス一巨乳らしい。黒髪赤目。髪は肩上ぐらいでちょっと外にはねている。一人称こっち。クールで凛々しい顔つき。どちらかというと女子人気のが高め。身長は169cm。
**
高校一年の秋。こっち、煙管いおりは妖怪学担当でこっちのクラス担任の神酒先生と交際を始めた。絶対バレてたらあかん、そう、禁断のなんとか、っちゅーやつ。しかし学園長は知ってらっしゃる。百鬼学園のトップが知ってんならアウトだろ、なんてことはない。あの人むしろ容認しはったからな。相手が学生のうちは健全なお付き合いをとか言ってのけたからな。要するに世間体が問題ってだけで。
ことの発端は今年の春、高校に入学してから一ヶ月した頃やった。切っ掛けなんて意外と些細なもんで、昼休みにただ先生が恐らく我がクラスと隣のクラスの妖怪学の提出物であろう大量のノートを運んでいたので、ちょいとばかし手伝っただけ。やって弐クラス分は流石に重そうやと思ったし、神酒先生も「ホンマ助かったわー、流石に弐クラス分は重かってん」とちょっと疲れたように笑っとったし。
「いやー、君みたいな子ぉもあのクラスに居ったんやね、気ぃつかんかったわ」
『……まあ、ウチのクラスはなんやばか騒ぎが好きなやつが集められたみたいな感じですやん。まぁこっち影そんなに濃くないんで、そう思うんもしゃーないです』
職員室までの道を二人ならんで歩きながらそんな話をして、職員室に着いたから先生に半分持っていたノートを渡して『じゃ』と一礼した。ら、神酒先生がニコニコ笑って棒付き飴をくれた。お礼だそう。人差し指を口に当てて「内緒やでー」と小声で言ったときに、こっちはわかりましたとへらりと笑ってその場を後にする。この時からこっちは『神酒先生』を『神酒さん』と呼ぶようになった。
帰り道を辿って教室に入ると、佐野や豆が声を掛けてきた。
「いおちゃんおかえりー! どこ言ってたのー?」
「煙管おかえり」
『ん、ただいま。ちょっと外で神酒さんの手伝いしてきた』
「うわこの子えらい」
佐野の席の前の椅子を借りて腰を下ろすと、豆がすとんと膝に乗ってきたので抱き抱えてからポテチを取り出して三人で摘まむ。そして三人でちょっと顔をしかめて手を伸ばすのをやめた。お前らそんな目で見るんじゃない。お前らも納得して買うたんやんけ。
しばらくすると秋雨や泥田、狢、入道、国子ちゃんが菓子に目をつけてやって来た。
「何でお前ら三人揃って似たような顔してんの?」
「すげえ顔してんぞお前ら」
「お、それ新発売のうす塩コンソメわさびキャラメルゆずチョコブラックペッパービーフ味じゃねえか」
「あぁ、あのこれでもかってぐらい色々詰め込んだ味の想像がつかないアレ」
「あ、私もCMで見たことあるよ」
五人に進めると手を伸ばしてはぱりぱりと食べて顔をしかめた。特に食い意地張って口に大量に放り込んだ秋雨と狢は他三人よりひどい顔をしている。食い意地張るからや、おばか。国子ちゃんは比較的小さめのチップスを食べたからダメージは少ないみたいだ。要するにくそ不味い。
「げええええ! なんっだこの味!」
「うっ、言葉が見つからないよぉ……」
「なんて言えば良いんだよこの味は……掴みどころ無さすぎんだろ」
「にゃーっ、誰かっ! 水っ! 水ちょうだいっ!」
「全ての味が均等に混ざり合い良いところを打ち消し絶妙な具合にくそ不味いから吐きそうだぜ……ゥエッ」
『猫又とのっぺらぼうは最早自業自得感が酷い』
「もー、二人とも食い意地張るから〜」
「お前じゃん豆……」
『佐野ちゃんシッ!』
ってな感じで、後半ほとんどいらない部分しかなかった訳やが、個人的ファーストコンタクトはこんなもんや。
そこからなんやかんやあって個人的接触をする機会も多く、お互いいつの間にか惹かれ合ってめでたくくっついたって言う。
浮気の心配はしてません。やって神酒先生あれやもん、女性苦手やし。年上は完全に駄目で生徒にも表面には出さんけどわりと驚いてる時が多いから。五人のお姉さんが原因なんだと。
- Re: 自己満足で書く ( No.40 )
- 日時: 2017/11/14 00:38
- 名前: マメツキ (ID: QhO8q6Nx)
捏造有り。
一年の冬のとある夜、こっちは煙をワープ代わりにしたり半身を煙にして飛んだりすることができるのでビタシグをくわえて神酒さんの部屋の前にワープした。この時間帯に誰もいないのは調査済みやで、神酒さんが。
神酒先生から渡された合鍵を差し込みがちゃりと戸を開けて中に入ると、手慣れた手つきでサッとドアを静かに閉めて鍵を掛け直し、靴を脱いで揃えた。
初めて部屋に入った時はゴミ屋敷と化していて驚いたが、こっちが必死に片付けをしてから定期的にやって来ているので問題はない。
ゴミが散らかってないかとか諸々を点検。そうこうしているうちに、部屋に炬燵を出して座椅子に腰掛けぬくぬくしている神酒さんににこにこ手招きして呼ばれた。
『なんすか』
「いおりちゃん、外寒かったやろー、こっちおいで」
と言ってもワープしてきたのでそこまで寒いと言う訳じゃないが、久々の炬燵である。いそいそとそちらに向かって腰を屈めるとぐいっと腕を引っ張って炬燵に引きずり込まれ、神酒さんに後ろから抱き抱えられる。これははずい。でもえらいぬくい。
「ほらぁ、指先も体も冷たいやん」
『そらわりと薄着やからやろ。……神酒さんこれめっちゃはずいんやけど』
この人ホンマに女性苦手なんか、とか考えながら反論するとええやんええやんとにへらと笑われた。流石女顔、可愛え。
そもそも前全開に着た着物一枚にはんてん羽織って炬燵ってどういうこっちゃ。もっと厚着せい。まぁ半袖Tシャツにジャージ一枚に短パンな格好のこっちが言うことと違う思うんやけど。
とりあえず肺内の水蒸気を吐き出すと神酒さんが「今回やけにフルーティやけど、これなんの匂いなん?」と不思議そうに背後で首をかしげた気配がした。
『……学園長にもらったんやけど……なんやっけ、……マンゴー? やったかな』
「うわ季節外れやな……真冬に常夏やん……。え、あのジジごほんっ……学園長にもろたん?」
『おん、定期的にいろんな種類のリキッドが入ったん部屋に届けられるん』
咳払いとか可愛いなこの人。
『っちゅうかジジイって……もしかして神酒さん学生時代にやんちゃしとったん?』
くるりと自分の体を反転させて神酒さんに向き合うと、目を逸らされて言葉を濁された。あ、やんちゃしとったんや。不良や。
必死に話題を逸らそうとするこの人に微かに笑みを浮かべて次の言葉を待っていると、ふと気が付いたように彼がこちらを見た。
「思ったんやけど、」
『どないしたん神酒さん』
「おん、それやいおりちゃん!」
いつまで神酒さん呼びなん、二人の時はそれやめてや、と頬を膨らませた神酒さんが可愛すぎてなんやどないしよう。殺す気かこの酒呑童子は。
っちゅうか、かなり今更過ぎて、最早神酒さんで定着してるから今から呼び方変えるとなると大変やで。そういった馬を伝えると神酒さんは問題無いと笑った。
「神酒さんて言うたびにキス一回やからな」
『え』
「『え』てなに……いや『え』てなに」
いやそれ自体嫌な訳じゃなくむしろ嬉しいのだが神酒さんと呼ばない自信が無い。
それを抗議するとただにこにこ笑うだけやからなお怖い。
『これは無理やって神酒さん……』
「はい一回目〜」
ぽろっと出たそれにすら目敏く気付いた彼に溜め息を吐くがどうせすぐ終わるとたかをくくる。たかくくっちゃいけなかった。
一回がくそ長い。濃厚と言うかなんと言うかなんやこの人。腰がくがくなんだが。息継ぎぐらいさせろ。
「神酒さん言うたびに苦しい思いするで〜、ほれほれ、はよ」
『凜太郎さん』
「……不意打ちやめてや」
『言えいうたやんけ』
なんだこの人。言え言うたから呼んだのに顔押さえてうつむきおった。可愛すぎか。
- Re: 自己満足で書く ( No.41 )
- 日時: 2017/11/17 01:03
- 名前: マメツキ (ID: 3EyrfEu6)
弐年次生に上がりました。元々勉強は頭が悪い訳じゃなかったからな。そもそも入試も進級試験もないとかどないなっとるねんここ。
担任は凜太郎さんではなくなり、新たにやって来たただの変態おっと口が滑った人間の国語教師やった。凜太郎さんがよかった。全然よかった。
佐野ちゃんが勢いでネクタイパンイチにしたときは可哀想に、とか思ったけど賄賂疑惑でオマケに中身がセーラーカタログって。セーラー服が趣味ってどないなっとるねん。月イチでそのカタログの中からお好きなセーラーが学園長からもらえるんやて。変態や。
オマケに凜太郎さんから聞いたことだが、安倍晴明の子孫で神社の次男坊で退魔の力を持つとかそんな設定いらんねん!
ちなみに。晴明先生は退魔の力のせいで教師から腫れ物を扱うような待遇で凜太郎さんか秦中先生ぐらいしか話してくれへんから生徒には隠したがっているらしい。ごめん学園長から名ばかりの許可もらって凜太郎さんに聞いた。ホンマすまん。
『っちゅうか凜太郎さん聞いてやー。うちの担任可笑しい。今日来た安倍先生絶対可笑しい』
「ああ〜、やっぱりそうなんや……」
凜太郎さん宅にて。既に炬燵は仕舞われており、普通のコーヒーテーブルに上半身を倒しながらそうぼやくと凜太郎さんから「確かに教師には向いてへん性格しとるもんな」とキセル吸いながらそんなことヘラっと抜かしてる場合違うねん凜太郎さん。
『……安倍先生、とんでもない変態なんやで。教師にあるまじき変態なんや』
「えっ」
『最初の佐野ちゃんに厄病神の妖術でネクタイパンイチになったことはしゃーないで、佐野ちゃんが悪いねん。でもな、鑑賞用でセーラー服が大好きってどういうことなん、白飯五杯はいけるってなんなん。どんな趣味しとるんや安倍先生……!』
「うわぁ、あかんわうちのいおりにめっちゃ悪影響やん」
『アンタはオカンか』
ぽんぽんとリズム良いテンポでおりなされる漫才は気にせず、うわーと項垂れていると凜太郎さんが「先謝っとくわ、てへぺろ」とかお茶目に握りこぶしで額をコツンと小突いた。いきなりどないしたん。
「安倍先生……ボクの隣の部屋や☆」
『……え?』
「挨拶してきたで☆」
『先言えコルァ』
いや別に安倍先生嫌いなわけやないんやけど、初対面からあんな惨事を見せ付けられたら近寄りがたいというかなんというか。佐野ちゃんと豆はよくやるわー。
ああ、そう言えば明日には泥たんが帰ってくるんやっけ。
- Re: 自己満足で書く ( No.42 )
- 日時: 2017/11/29 23:38
- 名前: マメツキ (ID: 2UEcXbEH)
朝、学校に登校すると、泥田が帰ってきていた。「ねえちゃんはすっげー綺麗だったよ……但し新郎ブッコロス」とか物騒なこと言ってるが途中で抜け出してハワイ満喫してきたお前が何を言うか。ちゃっかり泥田にトーテムポールのお土産頼んでた豆を見てこっちもなにかしら頼めばよかったかなとは思うけど。
泥田はほっといて、彼の幼馴染みである紅ちゃんは今日も来てないのかと彼女の席にちらりと視線をやったあと、自席にドサリと鞄を置いた。
「おはよー煙管ぅー」
『おん、おはよう富士』
「最近暑くなってきやがったよなー、夜は扇風機と15c°に設定したクーラーガンガンじゃねーと俺もう寝れねーわ」
『……なぁ富士、まだ春やで?』
「はん、雪女舐めんじゃねぇよ」
隣の席にて。セーラー服に身を包み、長い髪をシュシュでゆるふわに結った美人な彼は富士冬也、『雪女』と言う妖怪である。なんか人を凍らせれる位の冷気を口から吹くらしい。以前お前男なんだから雪男じゃね? と言うと雪男はUMAだろうが馬鹿と口悪く返答された。ちなみに趣味は女装である。めちゃくちゃ似合ってます。
将来的に凜太郎さんを誘って二人で女装カフェ開きたいようだ。凜太郎さんの女装とか誰得やねん私得やん。確かに似合いそうやけども。頑張れ神酒先生。
「死ねオラァ!!!」
「何が君をそうさせた!」
背後にて泥田と晴明の叫び声が聞こえて振り返ると次のモーションに移っていた泥田が豆のトーテムポールで晴明をぶん殴っていた。仮にも教師を殴るなよ泥たん……。晴明も晴明で「ぎゃん!」じゃねーよ。
佐野ちゃん曰く。
「泥田の姉ちゃん人間と結婚したらしくてさ。シスコンな泥田がそのせいで『人間嫌い』になったんだけど、「もう人間ってワードが禁句だわ、マカダミアチョコぶつけてトーテムポールで殴ってやりたい」っつった瞬間晴明入ってきて人間ってバラした」
『なるへそな』
「泥たんのお姉ね、一族総出で妖怪ってこと隠して結婚したんだよ!」
『へそなるな』
それにしても泥田の荒れようは異常な気がするんだがアイツ頭大丈夫か?
- Re: 自己満足で書く ( No.43 )
- 日時: 2018/02/13 01:01
- 名前: マメツキ (ID: K2KJKAm9)
IS短編。
天才美術男子な男主『隠岐 蒼真』と束さんの話。中学生のときの話的な。
**
隠岐 蒼真。この中学校及び日本ひいては世界でも認められる絵の才能を持った男子生徒である。幼い頃から鉛筆、筆、ペン、タッチペンを握り続け、芸術を紙面や画面に書き連ねていた。
ただ、この男。素行は良いとは決して言えなかった。中学校に来ることは来るが授業に出ることは滅多になく、基本は隠岐の為に造られた専用美術室に籠っているか外をぶらつくかなど神出鬼没。ついでに言えば容姿も良い。跳ねた短い黒髪に吊った深紅の鋭い瞳、整った顔のパーツ。180cm程の長身。利き腕である右手右腕や制服、頬等には絵の具を引っ付けている。そして乱暴な口調。それで頭は悪くない、だから将来性も高く少し悪な男に見えるのだから女子人気はかなり高い。この中学の女子よもや女性教師すら虜と化し、他校にもちらほら好意を寄せる女子が居る程には高い。男から嫉妬の対象であることは間違いないのだ。嫉妬に駈られた男からの暴力的行為に比例して喧嘩も強くなる。嘲るような表情がちょっとえろくて良いんだとぶん殴られた男子共は明らかに何かに目覚めていた。
しかし彼自身回りには一切興味がなかった。というよりは持てなかった。何もかもがセピアまたはモノクロに見えて、唯一色を持つのは自身が描いた絵のみ。正直言ってこの男、絵以外のことなどどうでもよかった。
彼がここまで拗れたのは、両親にある。当時3歳の蒼真が鉛筆を持って紙に滑らせると拙くも素晴らしい絵が出来た。たまたま美術に携わる仕事をしていた父がそれを使うとたちまち金が懐に入ってきて、両親は味をしめた。
ことあるごとに幼い息子に絵を書かせては潤う財布。いつしか二階建ての一軒家だった家は豪邸となり、両親は富豪となる。両親はそれまで息子に注いでいた愛情を忘れてひとつのシステムとして見るようになったのだ。要するに、金を生み出す生物くらいにしか捉えなくなった。
当初の蒼真はまだまだ幼く、大好きな絵を誉めてもらえることが嬉しいばかりに絵を書いて描いて。そして5歳にして悟ったのだった。両親は自分を人扱いしていないことに。
既に故人の両親の次は、その遺産を目当てにした遠縁だった。とりあえず遺産相続とかが面倒だった当時12歳の蒼真は家と家のもの以外を全て渡した。がめつい親戚共は家まで要求するためにちらちらと蒼真を見ていたがかっことして譲らない姿勢の蒼真に折れたのだった。そして現在、仕送り無しでも豪勢に暮らせている蒼真を見て親戚たちは今現在『蒼真』を欲しがっている。
そういう大人ばかり過ごしてきた蒼真が他人に興味をなくしたのは至極当たり前のことだった。
なら絵を描くことをやめてしまえば良いだろうと思うが、蒼真にはそれは出来なかった。溢れる創作意欲とアイディアを絵に書く以外の方法で大概に排出する術を持ち合わせていなかったのである。無尽蔵に湧き出る創作意欲。気がつけば日がな一日べしゃべしゃと絵の具をキャンパスに塗りたくっているのだから。
彼はキャンパスに、感情を吐き出しては評価されて気づいてもらえないのだ。例え苦痛だろうと哀愁だろうと酷い悲しみだろうと、見る人にとってそれらは優しさ、快楽、幸福等に変えられてしまう。
理解者は居なかった。
そんな彼に転機が訪れたのは中三の冬だ。
「……」
『……』
公園でたまたま会っただけ。それなのに、どうしようもなく惹かれた。強烈に、鮮烈に。
いつも通り授業に出ず、今日は快晴だから公園でも行って描こうと相変わらず頬やワイシャツに絵の具を飛び散らせたまま用具を抱えて公園を訪れた矢先の出来事だった。
互いに目が合った瞬間、背筋を何かが這ったのだ。お互いに。熱く、溶けそうな程の、訳のわからない気持ちにさいなまれる。
そして気付く、お互いが似た目をしたことに。雰囲気が今までの人生を語っていた。
方や地球で二つとない最高の頭脳を持つ女、篠ノ之束。
方や地球で二つとない最高の絵の才能を持つ男、隠岐蒼真。
今まで誰も理解者が居なかった者同士の迎合。
打ち解けるのは早かった。まるで傷の舐め合いのようだとお互い思ったことだろう。
時にベンチで談笑し、蒼真が束を描いては彼女が喜んでそれを頂戴する。時に買い物に出掛けて、今時の子供らしく楽しげに笑みを浮かべ、ファストフードにかぶりつく。時に束が恋人のように蒼真に抱き付いては蒼真が彼女は細い背中に腕を回す。
端から見ればただの恋人だった。
「そーくん、そーくんはどうして絵を描くの?」
高校生に上がりたてのあるとき、束がその端正な顔に美しい笑みを張り付けて蒼真に問い掛ける。彼女程の天才だ、きっと先の先の先の先まで読み通して何を言うかぐらい簡単に予想がつくだろう。
しかし、蒼真は敢えてそれにちゃんと返答した。
『俺が俺であるためだ。絵を描くことは基礎代謝とおんなじ様なもんで、息するのと同等だからだ。人の体に血が巡るように普通のことだからだ。心臓が動くことと同じぐらいには俺にとって普通のことだ。俺の生存理由の二つのうちの一つだ。絵を描かない俺は俺じゃない、違うか』
「んーん、違わないよ。絵を描かないそーくんはそーくんだけど束さんの知るそーくんじゃない」
『そういうことだ』
「じゃあ二つのうちのもうひとつは?」
にへ、とした笑みを見せる束に目をしばたく蒼真は『お前なら分かってると思ってた』と呟く。束はそれにニコニコにへにへ幸福の極みと言うように笑みを見せて「私は言質を求めちゃう天才なんだよ!」と大きな胸を張る。言外に分かってると言ってるようなもんだった。
『もうひとつは束だよ、絵とお前が俺の存在意義で生に執着する理由だ』
「もー! そーくん大好き!」
ある意味相思相愛な二人の関係は女尊男卑の世の中が始まったそのあとでも続いている。

