二次創作小説(紙ほか)

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とある神鳴流剣士の転生譚
日時: 2018/01/05 01:28
名前: マメツキ (ID: 6A538sbk)


 どうもこんにちはこんばんはおはようございます。はじめまして、マメツキです。
 このお話はネギま!のオリジナル男主が色々と転生して行く微傍観系小説です。
 書く遅さにつき亀更新です。
 とりあえず、これは違うだろ、駄作かよとか思われましても生暖かい目で見守ってやってください。
 尚、マメツキの自己満足の為に書き走っていきますのでご容赦ください。
 マメツキは感想等には泣きついて狂喜乱舞します。
 捏造てんこ盛りです許せる方のみどうぞ初見さんいらっしゃいです。
 以上、わりとウェルカムなマメツキでした。

 設定。
 小原 錺(こはら かざり)
 麻帆良学園男子高等学校に所属する明日菜達の三つ上な高校三年生。神鳴流につき関西人。
 剣道部にして保健委員。
 特徴として赤目でつり気味の鋭い眼光と揺れる一本のアホ毛。右目下の小さな泣きボクロがチャームポイント。
 ネギま!の例に漏れず美形と言うかイケメン。
 クールで落ち着き払っているが、実は現代からの転生者なので精神年齢は既に三十路越え。今更女子中学生ごときにきゃあきゃあ言う(精神)年齢でもない。故に麻帆良の御意見番としても活躍。
故に『麻帆良の御意見番』と若干の男子高校生に与えられるべきではない二つ名が存在する。
 麻帆良の男子生徒でも人気の高いイケメンであり、フェロモンがすごいエロイケメン枠。ラッキースケベは発動する前に元を断つ紳士。捏造設定により男子高等部の制服は中等部の持ち上がり。
 野太刀『霧雨』を所持。竹刀袋に常備。タカミチの居合い拳の元となった元祖居合い抜きの名手。実力は青山鶴子と同程度。宗家青山家の分家の次期当主でもあるかなりハイスペックな元一般人。
 アルビレオとは何か通じ合うものがあるのか仲良くしている。なんか重力剣貰ったんやけどどないしよう。これ本来近衛刀太が持たなあかんやつちがうん、とか思ってたけど刀太くん主体の話はパラレルワールドの話やから大丈夫なんか良かった、とか言いながらちゃっかり重力剣(黒棒)をアルから贈呈された。基本的に黒棒は使わない所謂宝の持ち腐れ。
 赤っけのある黒髪に柘榴色の瞳。身長は185cm、体重は平均。
 なんやかんやで巻き込まれた原作完結後。


ではどうぞ!

Re: とある神鳴流剣士の転生譚 ( No.42 )
日時: 2018/03/20 00:58
名前: マメツキ (ID: fVY/oVEd)



 女子中等部の校舎にある学園長室への廊下をかつかつと歩く。本日より京都からこちらの麻帆良にやって来たのだ。いやしかし如何せん女子からの「なんで女子校に男子が居んの」と言う視線と悲鳴がうるさかった。なんで悲鳴上がったんや……。
 そもそもなんで学園長室が女子中等部の校舎にあるねん。行きづらいわ。
 背中の竹刀袋に収まる霧雨の鈴がちりんちりんと音を響かせるのを唯一の癒しとして扉をノックした。
 京都を離れる時は大変だった。刹那が麻帆良に行ってしまったため、このかがめっちゃゴネたのだ。



「いややぁ! お兄様までうちのこと置いてかんといてえ! ぐすっ」
『いや、お嬢、頼むんで言うこと聞いてください……困るから泣かんといて……』
「いやや! 行かんといて! ここ居って!」
『ちょ、お嬢首絞ま、お、おさ、長ぁあ! くっ、詠春様ああああ! ぐえっ』



 とまあこんな風に。最後は長、詠春様に救出していただいた。流石に10歳の女の子、しかも義妹を投げ飛ばす訳にも行かない、助かった。

 扉の奥から返ってくる「入りなさい」と言う声に扉を開けて室内に入る。背後で物々しくがちゃんと扉がしまった。



『本日よりお世話になります、京都神鳴流の小原錺です』
「そう堅くならんで良い。このかの義兄ならワシの孫にも当たるんじゃからなあ。麻帆良学園学園長の近衛じゃ、これからよろしくの」



 『夜の魔物討伐を含むパトロール』の件もきちんと説明してもらい、学園長の側に控えていた葛葉刀子が俺を男子中等部へと案内することとなった。どうやら担任らしく、一応身内と言うことになるのですごくやり易い。内心女子の方に放り込まれるんではなかろうなと義祖父を睨んだものの、メリットもないしこれが普通かと安堵の息を吐いた。
 ずれた鞄を肩にかけ直してカツカツとヒールを鳴らす葛葉先生の後をついていく。なんと言うか、麻帆良の内装は中世のヨーロッパっぽいと言うかなんと言うか。まぁ日本じゃないよな。
 スゲー漫画通りやん、とか思っていたら、急に葛葉先生が喋り出した。びっくりした……。



「……貴方が、お嬢様の義兄になられた錺さんでよろしいのですね」



 あ、嫌な予感。『そうですけど』と返答すると、ぐるんと方向転換し俺へと向き直って前のめりな彼女にぱしっと両手を取られ、思わずのけぞる。
 目を見開いたのも束の間。あぁまたかとちょっと呆れた。



「お噂はかねがね聞いています! 居合抜きの名手であり歴代神鳴流最強と謡われた青山宗家の鶴子様を5歳で完封した『剣聖』の小原錺さん!」
『……さいですか』



 ああもうこの人もめんどくさい部類の人か。わかりきったパターンだ。



「よろしければご指導ご鞭撻お願いします!」
『断る』



 どうしてまだ13の俺に教えを請うんだ、神鳴流の奴等は。今日から中学生やのに、まったくもって理解不能だ。
 突如として敬語が外れた俺に目をぱちくりさせた葛葉先生は「な、なぜです?」と首をかしげる。美人です。



『神鳴流として話すなら敬語は無駄や。俺は一生弟子は取らんし、まだ13の俺に大の大人が教えを請うな、自分で鍛練しろ鬱陶しい』



 ぱん、と掴まれた手を払い除けて『先生、はよ教室行きましょ』とこれ以上必要の無いことを喋るなの意を込めて睨みつけながら催促した。
 美人は目の保養だが、教えるとなれば話は別だ。弟子は取らない。理由は教えるのがめんどくさいからだ、見て盗め。



 高校一年生の春、図書館に入り浸っていた俺は偶然仲良くなった気の合う友人、アル。俺はアイツの住処によく出入りしている。初回で招かれた時には扉を守護していた樹龍を睨んだらあっさり引いてくれた。ありがとう。そのあとにアルからの招待状を見せるとすんなり通してくれたのだから賢い。頭を撫でたらなつかれた。かわいい。ドラゴンマジかわいい。


Re: とある神鳴流剣士の転生譚 ( No.43 )
日時: 2018/03/20 02:41
名前: マメツキ (ID: fVY/oVEd)



 完全なる世界の残党たちとの決着をつけた俺たち白き翼、その一番の功労者であるネギとなんか知らんが引っ張りだこの俺は神楽坂や雪広、那波を引き連れて魔法世界各国を回っていた。ネギの魔法世界を救うプラン、宇宙エレベーター建設のプロデュースに俺も渋々付き合いながらもこれは多分10年単位のすげえプロジェクトになるんじゃと思ったりしなくもない。いやまあ原作じゃそんな感じやったけど。
 ネギが海外出張の為授業に出られず、その後釜として着任してきた二人目子供先生フェイトバーサスネギパーティの恋愛的ごたごたがあったものの、俺たちは仕事の都合も合わせて体育祭を見て回っていた。
 多分今年の女子の部は中等部3-Aに決まりか。俺のクラス? 知らん。最近顔出せてへん。
 学校指定の半袖にジャージの上着を羽織り、下は男子用膝丈ズボンを着用している俺は、まぁ100m走にのみ出場してきた。めっちゃ学園長には念を押されてたから瞬動も気も使ってない純粋な身体能力勝負だ。まぁ当然一位取ったけど。
 世界樹前に差し掛かったとき、毎年恒例の教師借り物競争のターゲットに今年一番注目を浴びたネギくんのそれが終わったようだ。お疲れ様。朝倉ノリノリか。



【そしてそしてぇ! 今年から生徒借り物競争なるものが導入されましたー! 記念すべき第一回目のターゲットはー……この方!】


 ドラムロールうめえなアイツ。
 すげえいい笑顔の朝倉が手をかざしたところにその人物の普段の写真がディスプレイに映し出される。金かけてんなと楽観視したのも束の間、そこに映っているのはブレザーを半脱ぎでちょうどネクタイに手を掛けている俺だった。そう、原作にはない展開だ。正直もうなにしたらいいかわからん。助けて。



【麻帆良の誇るエロイケメンであり、剣聖と名高い我らが御意見番! 小原 錺さん高校三年生! ちなみに写真は盗撮ですありがとうございました!】
【ち、ちなみに、生徒借り物競争の優勝報酬は食券1000枚ですー! 錺さんは捕まらないように逃げてくださいねー! ペナルティがありますのでー!】



 なんてこった。逃げねば、と駆け出した途端後ろから「待てそこの御意見番ー!」と大勢が借り物の紙を持って追いかけてきやがった。あ、これ本気で逃げなあかんやつや。あかんやつ。



「先輩ジャージの上着貸してくださーい!」
「おとなしく半袖寄越せ御意見番!」
「パンツを渡してください小原くん!」



 それ俺全裸になるやつ。それ俺全裸になるやつ。ネギくんの時でやったネタやろ!
 そう思いながらも屋根の上を瞬動で全力疾走していると弾丸が飛んできたので霧雨で切り伏せる。走りながらそちらを見ると龍宮がそこにはいた。アイツはこれには参加しないと踏んでいたのにちくしょう。
 すると、足にしゅるるとリボンが巻き付き、足を取られてスッ転ぶ。その拍子で屋根から落ちた。いってえ。
 リボンを切り飛ばして方向を見ると、そこには佐々木と明石、大河内、和泉の運動部カルテットが。うわーうわーうわー!



「先輩発見! ゆーな、『気』無効化弾発車!」
「任せて!」



 飛んできた明石の弾を斬り伏せて瞬動でその場を離脱する。死ぬ、死んでまう。
 世界樹広場に帰ってきたら、そこには仁王立ちした雪広が。うそん。



「今日こそ因縁に決着をつけてやりますわ!」
『因縁とかないやろが!』



 ばばんとつきだされた彼女の手にある紙には『唇』とはっきり書かれていた。唖然として固まるとじわじわ赤くなっていく雪広の顔にさらに呆ける。



『……は?』
「3-Aは全員これですわ! 何がなんでも誰かが狙いにいきますので!」
『ネギはどうした!!?』
「いざ尋常に!」



 待てと言う暇もなくいつのまに覚えていたのか瞬動で距離を詰めてきた彼女の突きをパンっと払って小太郎のように風圧が発生するほどの掌抵あげ打ちを見舞う。それでも空中で虚空瞬動なんてしてくるからさあ。
 思わず刹那が麻帆良武闘会で神楽坂に見せたあの三回転ぐらいするやつやっちゃったよ。気を失った雪広には悪いがちょっと俺本気出さしてもらうから、そのつもりで。



Re: とある神鳴流剣士の転生譚 ( No.44 )
日時: 2018/03/21 01:43
名前: マメツキ (ID: kIggbAFi)



 そのままたったかたーと駆けたところで残り時間はあと五分、おお、楽でいい。だが俺はペナルティの度合いで捕まってやってもいいとは思っている。だって食券1000枚、使い方を考えれば某焼き肉店に半月ほど通える。魅力的すぎて俺はおごってもらいたい。しかし、その続きで俺が捕まったときのペナルティが開示された。



【御意見番が捕まったときのペナルティは……コチラ!】
【てれれてってれー! 『性別逆転薬』ー!】
【聞いての通り性別を真逆に反転させるトンデモな代物! 効果は一日で、ペナルティはこれを使用しての一日コスプレです!】
【信頼と実績の医学部と開発部の合作ですのでご安心を!】



 絶対に負けられない戦いとなった。なんやそれ泣くわ。絶対寮から出んわ。布団籠るわそれ。
 負けられない。
 次にやって来たのはこのかと刹那だった。のほほんとした笑みのこのかと頬を赤らめた刹那の手にはそれぞれ「おにーさまとキス」「神鳴流最強と接吻」と書かれている。幼い頃から知っている義妹とその幼馴染みとそう言うのはちょっと……年下は犯罪臭がすると言いますか。あれ、この世界じゃ俺20歳上の人じゃないとダメなパターン? 嫌すぎる。でもちょっと年上でも子供に見えるからなあ。
 ちょっとした危機感を感じて霧雨の柄に手を掛けた。



「さぁおにーさま!」
「い、いきます!」
『来んでエエ!』



 チャッと簡易魔法杖を構えたこのかと夕凪に手を添えた刹那に緊張感が一気に高まっていく。ホント洒落にならんのやけど。
 腰を屈めて構えた俺が少しあとずさった瞬間ドンッと飛び出してきた刹那からの斬岩剣をこちらも同じ技で迎え撃ち、そのまま鋭い金属音と風圧を撒き散らしながら撃ち合いを続ける。
 流して受けて反撃して流して。一応怪我はさせないように手加減はしているから安心しろ。
 しかし息が切れて来ましたな刹那よ。まあ俺は一切その場から動いてないから無駄な体力使っとらんのやけどね。



「く、流石です師匠!」
『弟子を取った覚えはないわ!』



 怒鳴り返したあと、右手で下から上へと切り上げてそのまま霧雨を上に勢いよく投げた。そのまま視線が上へ釣られていった刹那の野太刀を持つ腕をバシンと弾いて握力が緩くなったそこを蹴りあげればあっけなく吹き飛ぶ夕凪。そのまましまったと言う顔の刹那の鳩尾に思いきり肘鉄を食らわせた。



「あ¨ぐっ!」



 ひゅん。このかの横をそんな効果音で勢いよく横切って刹那はそのすぐ後ろの壁を大破しながら激突した。晴れた煙からは気を失っている彼女の姿が見てとれた。



「せ、せっちゃああああん!」



 駆け寄るこのかにちょっと罪悪感を感じつつ「やーん、おにーさま大人げない! もうちょっと手加減してー!」と言われて『一割ぐらいまで手加減しとりますって』と悪態をつく。



『でもまあちょっと今回のペナルティは俺の沽券に関わることなんで、いくらお嬢でも手加減しませんから』
「うっ。こ、こーさん! 降参やー! もー!」
『とか言いつつ?』
「今や楓、夏美ちゃん!」



 え、何この子怖い。降参言うた次の瞬間手のひら返しよった。こっわ。直ぐ様頭上から村上と長瀬が現れてああこれあれかと納得する。
 村上のアーティファクトは確か存在感を極限まで薄くするやつや、目の前に居っても気付かん程に。触ったらアウトやけど。手を繋げば何人でも影を薄くすることが可能な約200年程世にでなかった超レアアーティファクト。そして楓はどこでもワープできちゃう布。この二つを合わせれば俺に気付かれずに捕獲することも可能で、初見は絶対捕まるやつ。



『まあでもタネが割れたら驚異やないな』



 手のひらをこのかにかざしてくるんと回す。次の瞬間には俺とこのかの立ち位置は入れ代わり、「このか殿!?」「うぎゃ!」「むぐっ」と言う声が聞こえた。
 『イレカエ』。かの人魚の肉を食った不死者『宍戸甚兵衛』の持つ特殊能力だ。どうして俺がこの能力を使えるのかって言うと。
 階段から現れた早乙女がゴーレムを出現させながら俺の手の中のものを指差して叫ぶ。



「あー! その懐中時計……! 先輩アーティファクト使ってんじゃん! 大人げない! 先輩大人げない!」
『大人げない言うな。多勢に無勢やしゃーないやろ』



 こら楽でエエわーと早乙女と俺の位置を入れ換え、そばにいた宮崎と綾瀬の意識を刈り取る。



「あっ! のどか! ゆえ!」
『宮崎が敵に回ると厄介すぎるからな、ここらで対処させてもらったで。流石に俺も読心術にたいしての防御は出来んし』



 とりあえず、そのあとの結果は俺がペナルティを受けずに済んだとだけ言っておこう。



Re: とある神鳴流剣士の転生譚 ( No.45 )
日時: 2018/03/22 00:35
名前: マメツキ (ID: kIggbAFi)



 本日バレンタインデー。乙女が闘志を燃やす聖戦が今始まろうとしている。
 クリスマスは深夜の見回り中にこんな時間までどんちゃんしていた3-Aに見つかりパーティに引きずり込まれた。その時鳴滝双子の持っていた動物を見てあぁコイツらがあの魔法世界王子ツインズと頭を撫でたのは記憶に新しい。
 大晦日は任務のため関西呪術協会本部に呼び戻されてそこから京都を経由して九州に行ってきた。酒呑童子。三大妖怪の一角を担うそれがまだまだ収まりを見せない関西呪術協会過激派の手により復活させられ、その処理を俺一人が任されたのだ。一人で寂しく始末した。もうさ、年末年始は休もう? 休みがほしい。あとさ、俺の姿が見えた瞬間「剣聖いいいい!?」「これはいくらなんでもあんまりだ!」「世界最強が出てこなくても!」と訳のわからん悲鳴をあげられ戸惑ったのは内緒だ。うん。多分俺が出てくるならネギくんの方がマシかもな。ネギ? ネギとは任務に出る前に「一度本気で手合わせお願いします」と世界最強とも言えそうな存在として戦いを挑まれたから完封しましたが何か? 次の日にはそっちの界隈で俺こそ世界最強と言われてしまった。だからネギのが可愛く見えるのさ。
 ともあれ2/14。俺たち高校三年生にはバレンタインに現を抜かす暇はない。だって、受験……あるやん? 中学生は受験しなくてもエスカレーターで上がれるからさあ。良いけどさあ。大学までエスカレーターやけどさあ。
 エスカレーター式とは行っても大学は流石に受験はしなきゃならない。ここ成績でランク訳される厳しいとこやから。あぶれるのがないのは嬉しいけどな……一目でああこいつ成績低いんや、ってなるやん? これほど悲しいことはないでまったくもう。
 理系がまったく出来ませんが何か? いや、平均では多分出来る方やと思うよ? でも文系が全部90点以上を取り続けた用紙見たあとに理系見てみ? 50〜60点て。点数差のせいで風邪引くわ。英語? 英語は魔法世界行かなあかんねんからできて当たり前やろ。あれ?
 というか。俺は別に高校卒業したあとは関西呪術協会に就職してもよかってんけど、義父であり関西呪術協会の長である詠春様に大学は出ときなさいて言われたからなあ。
 あー勉強のし過ぎで頭おかしくなっとる、と白のマフラーを口元まで引き上げる。絶対鼻赤いわー、息吐いたら真っ白やし。マジで寒い。はよ寮帰ろ。
 きょろ、と周囲に誰も居ないのを確認してから意気揚々と瞬動で屋根の上へ飛ぼうとしたとき「あ、錺さん!」とボーイソプラノに呼び止められた。あくそ。
 とりあえず未遂だからよし。振り向けば春の場所な葱が杖を背負ってぱたぱた駆けてきていた。春の場所な葱てまんまネギ・スプリングフィールドくんのことやないですかやだー。



『……ネギ先生』
「錺さんぐらいの人にそう呼称されるのは……ネギで良いですよ! それより、早くクウネルさんの所に行かないと!」
『……アルんとこ?』
「あれっ、知らないんですか?」



 目をぱちくりと見開いたネギに俺もちょっとだけぽかんとする。え、アル?



「今日はクウネルさんが3-Aを隠れ家に招待してくれてるんですよ! 何ででしょうね?」
『……ナンデッスカネー』



 ネギくん、それあれやん。バレンタインのあれやそれですやん。原作では語られなかったあの。しかも先日その誘いを本人から受けて嫌な予感したから受験生を理由に断ったやつやーん。
 うわー、アルの野郎狙ってやがる。楽しむつもりだ、ホントいい性格してるぜ……。「?」と急に目を遠くさせた俺に首をかしげたネギくんにげふんげふんとわざとらしく咳をして口を開いた。
 楽しそうではあるけど、俺、受験生なんやで?



『……俺それ一回断っとるし、受験生なんで』
「あ、そうでしたね! そうでしたね……」



 そんな寂しそうな目でちらちら見られても行かへんぞ、行かへんからな。俺の意思は堅いんやぞ。



「今日はフランスから取り寄せたケーキがあるとか……」
『別に今日ぐらい息抜きしてもエエよな』



 意思の弱いこと弱いこと。



Re: とある神鳴流剣士の転生譚 ( No.46 )
日時: 2018/03/22 23:28
名前: マメツキ (ID: kIggbAFi)


とうとうやって来た卒業式の三週間前。
 そう、本日、神楽坂明日菜は百年の眠りにつくのだ。そして俺はちょうどいい手駒として神楽坂を護衛している。
 原作で描写はなかったが、こんな大掛かりなプロジェクト、必ず神楽坂は狙われるに決まっている。にも関わらず無事と言うかそんな恐怖を味わわずに楽しげに過ごしていた。それはひとえに護衛があってこそだ。その立場が俺になっただけのこと。
 ちょっと微妙な気持ちになりつつも、これまで狙ってきた雑魚にアホやなあと思っていた。今日はとても大事な日とあって学園結界はいつもの三倍の厳重さとなっている。長谷川と茶々丸のお陰だろう。あいつらマジ凄腕ハッカー。
 現在教室で神楽坂がネギとタカミチから卒業証書を貰い、雪広に連れていかれたところだ。俺はそれにネギとタカミチにすら気付かれないように気配を消して後をついていく。

 彼女たちが訪れた丘の上の木下がよく見えるかつ遠い位置の木の枝から様子を観察した。それと同時に霧雨をいつでも抜けるようにしておく。二人がスコップでタイムカプセルを地面から掘り出す間、万が一敵さんが襲ってきたりでもしたら大変だからなあ。
 そのあとはまあ、敵も襲ってこず。言うだけ野暮と言うものだ。

 屋上への階段をかつかつと靴の底をならしながら上がり、扉を開けると神楽坂以外が俺を待っていて、テオドラ皇女に手招きされ彼女の隣へと収まった。え、なぜに。
 護衛対象の神楽坂は口をあんぐり開けている。



「な、なんでここに先輩が?!」
「そりゃあ明日菜さん、錺さんはこのプロジェクトの御意見番でも有りますし、それに、明日菜さんをついさっきまで護衛してくれていたんですよ」
「うそっ!? 私全然気付かなかったわよ!?」
『プロなめんといて下さいよ、ひいさん』



 無表情でサムズアップするとムカつく! と怒鳴られた。なぜに。ひいさんと敬語が嫌らしい。要するに外せと。流石にそれは無理や……。
 そして親友たちと抱き合い、別れの言葉を告げている。
 100年。それは一介の女子中学生には途方もない時間だ。目覚めると自分だけが置いていかれている、実際にそんな境遇に陥る。友人も大半がこの世に居ない。せめて、せめてもなんだけれど。この世界線がハッピーエンドであるように……。



『……いってらっしゃい』



 彼女の頭を撫でたってバチは当たらないはずだ。
 くしゃりと彼女の頭を撫でると、じわじわと神楽坂の目に涙の結界が張られていく。あーもー。
 ぐしゃぐしゃと頭を撫でたあと、告げた。



『笑ってけ神楽坂。お前は絶対ここに帰ってくる、すぐにでもや。きっと帰ってこれるから、泣いてもエエから、笑え。』
「……っはい、!」



 皇女の「もう、いいかな」という言葉に是を示した神楽坂は空へと浮かぶ。泣きながら笑って、「またね」と。彼女の友人三名とネギが顔をぐちゃぐちゃにしながら泣いて泣いて彼女の名前をそれぞれ口にした。このかの絶叫は流石に堪える。でも。

 俺にはどうしてもこの世界線が、彼女が帰ってくる世界だと思えて仕方がなくて。
 飛びたっていった空を腕を組んだまま、確信を持った瞳で見上げる。

 彼女は絶対に帰ってくる。

 俺は微笑んだ。



「た、ただいまー」



 ほら。



「あ、アスナさ……」
「アスナ! アスナァ!」
「アスナさんっ!」
「アスナさん……!」



 泣きながら、超鈴音と未来のエヴァを引き連れた彼女へ駆け出した四人を見て目を細めて、俺を視界に入れた神楽坂に口を開いた。



『おかえり、神楽坂』




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