二次創作小説(紙ほか)
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- とある神鳴流剣士の転生譚
- 日時: 2018/01/05 01:28
- 名前: マメツキ (ID: 6A538sbk)
どうもこんにちはこんばんはおはようございます。はじめまして、マメツキです。
このお話はネギま!のオリジナル男主が色々と転生して行く微傍観系小説です。
書く遅さにつき亀更新です。
とりあえず、これは違うだろ、駄作かよとか思われましても生暖かい目で見守ってやってください。
尚、マメツキの自己満足の為に書き走っていきますのでご容赦ください。
マメツキは感想等には泣きついて狂喜乱舞します。
捏造てんこ盛りです許せる方のみどうぞ初見さんいらっしゃいです。
以上、わりとウェルカムなマメツキでした。
設定。
小原 錺(こはら かざり)
麻帆良学園男子高等学校に所属する明日菜達の三つ上な高校三年生。神鳴流につき関西人。
剣道部にして保健委員。
特徴として赤目でつり気味の鋭い眼光と揺れる一本のアホ毛。右目下の小さな泣きボクロがチャームポイント。
ネギま!の例に漏れず美形と言うかイケメン。
クールで落ち着き払っているが、実は現代からの転生者なので精神年齢は既に三十路越え。今更女子中学生ごときにきゃあきゃあ言う(精神)年齢でもない。故に麻帆良の御意見番としても活躍。
故に『麻帆良の御意見番』と若干の男子高校生に与えられるべきではない二つ名が存在する。
麻帆良の男子生徒でも人気の高いイケメンであり、フェロモンがすごいエロイケメン枠。ラッキースケベは発動する前に元を断つ紳士。捏造設定により男子高等部の制服は中等部の持ち上がり。
野太刀『霧雨』を所持。竹刀袋に常備。タカミチの居合い拳の元となった元祖居合い抜きの名手。実力は青山鶴子と同程度。宗家青山家の分家の次期当主でもあるかなりハイスペックな元一般人。
アルビレオとは何か通じ合うものがあるのか仲良くしている。なんか重力剣貰ったんやけどどないしよう。これ本来近衛刀太が持たなあかんやつちがうん、とか思ってたけど刀太くん主体の話はパラレルワールドの話やから大丈夫なんか良かった、とか言いながらちゃっかり重力剣(黒棒)をアルから贈呈された。基本的に黒棒は使わない所謂宝の持ち腐れ。
赤っけのある黒髪に柘榴色の瞳。身長は185cm、体重は平均。
なんやかんやで巻き込まれた原作完結後。
ではどうぞ!
- Re: とある神鳴流剣士の転生譚 ( No.16 )
- 日時: 2018/01/14 02:24
- 名前: マメツキ (ID: 3CxPuX6G)
それから三年。
オビト達二人が中忍になって、俺が11で上忍になり色んな人に祝われたその一年後、カカシも上忍へと昇格した。俺のカカシの上忍祝いはアメジストのパワーストーンのついた片耳ピアスである。紅とリンに引きずられて訪れた雑貨屋で偶然見つけたものだ。
そしてカカシが上忍になり隊長として行った初任務。俺は焦る気持ちを持ちながら、ミナト先生とのツーマンセル行動を任された。しばらくしてから途端に大きくなった嫌な予感に先生の目の前で慣れた気配のする方へ駆け出す。到着したときには既にオビトは岩の下で、カカシが上からリンに手を伸ばしているところだった。止まらずに駆け出した俺の気配に気付いたカカシは、既に左目にオビトの写輪眼を移植しており、少し泣きそうで胸が痛む。周囲を見渡すと敵はまだいない。
「下に、下にオビトが……! 錺……この岩、割れる……!?」
『……あかん、無理や! 使えるには使えるけど、下のオビトとリンが潰れる!』
大きな力を持っていてもどうしようもならないことがあると改めて実感した瞬間だった。自ずと悲痛な表情になっていくのに気付いた俺は岩をかけ上ってカカシの隣に到着する。途端に感じた複数の気配に背後を見れば敵が集まってきていた。
オビトが右半身を潰され、左目を閉じた状態で「錺か?」と問い掛けてきたので『せやでオビト』と頷く。真剣な顔つきになったオビトは「聞け錺、カカシも」と口を開いた。
「……リンを頼むぞ」
その瞬間岩がズズズと中のリンごと潰そうと動き出す。外の敵か、と視線を鋭くして「ああ、わかった」『……任せろ』と、カカシと共にリンに手を伸ばす。
そこから最後までオビトの名前を呼んでいたリンだったが、カカシがオビトはリンが好きだったことを暴露し、ぽろぽろと彼女が泣き出す。下毘た笑みを浮かべる敵の上忍に今回は黒棒を抜き、構えた。隣でカカシが構えた気配がしたものの、体力切れか倒れてしまう。ああもう無理しよってからにコイツは、とリンに想い人を任せた。
オビトの一件で前と違い、仲間とチームワークに重きを置くようになったカカシは、リンを守るとオビトの約束を生涯果たすつもりのようだ。そんな気構えから起こった先の事件。任務中、霧隠れの忍にリンがさらわれ、三尾を体内に封印された彼女を助け出した俺たちは殺してくれと頼むリンに、カカシが拒否を示して方法はあるはずだと強い目線で訴えたので、俺はそっとリンとカカシから目を逸らした。
そし霧隠れの忍との交戦。俺が敵に霧雨を振り抜き、突き技をしようとした時だった。ざくりと、思ったよりも近くにあった誰かの体にぴたりと硬直する。
「……え」
『……リン、』
錺、カカシ、と名前を呼んだ仲間の体から霧雨を抜き去り、ショックで倒れそうになる俺を駆け寄ってきたカカシに支えられた。目の前でリンがゆっくりと倒れていく。横目で見たカカシの写輪眼は泣きながらだんだん万華鏡へと変化していった。ぼたりぼたりと俺の目からも雫が落ちて、ああ、もう。カカシが気を失ったそのすぐあとで俺の意識は途切れている。
**
オビトが死に、リンが死に。俺はというと一年が経った今でも罪悪感にさいなまれていた。13の今では里でも三本指に入るだろうと言われるほどの医療忍者になれているけど、あのときでなければ意味はなかった。きっと責めるだろうと思っていたカカシには「ごめん、錺、ごめん」とあのあと病室できつく抱き付かれながら泣かれて酷く戸惑った記憶がある。
俺も一応は忍ということで、表面上はなんら変わりのない日々を過ごしながら四代目火影となったミナト先生の手伝いをしている。よく先生と一緒に徹夜したりな。暗部に入ったカカシは忙しいだろうに暇を縫っては変わりのないように過ごしている俺に何も言わず変わりないように側に居てくれているから本当に出来た女の子だと思う。サクモさん、あなたの娘は本当に綺麗になりました。
現在13歳。もう上忍も板についてきた頃、カカシは紅と一緒にいるところをよく見るようになった。リンと紅と三人で見かけていたのに寂しくなったなと考えてはリンを殺してしまったのは俺なのになあと頭を抱える日々だ。
どうしてリンは俺に殺されたのだろうか。多分あの子はカカシが自分を殺しては壊れると感じとっていたのだろう。だから俺か。なんとも俺に厳しい奴だ。本当によくわかってくれている。本当、よくわかってる聡明な子だった。
前世じゃ仕事柄、敵も切り捨て、時には裏切り行為を行っていた仲の良い味方すら斬ってもそれはそれ、これはこれと割り切れていたのに。やはり精神が肉体に引っ張られているのだろうか。なんとも厄介な。
「……ざり、錺、錺!」
『っ!』
先生が心配そうに俺の顔を覗き込んでいた。ハッとして、そうだ、今は火影の書類の手伝いをしていたのだと気を持ち直す。
「大丈夫? ……ごめん、やっぱり無理させ過ぎたかも」
『や、大丈夫です先生』
「仕事中は先生じゃなくて四代目か火影って呼んでよ。っていうか全然大丈夫じゃないだろ、目の下の隈がかなり濃くなってるよ。何日も徹夜させちゃってごめんね……」
『いや、先生もやろ』
やはりこの人は優しい。俺がそう返すと「新任の火影に回す量の仕事じゃないよなこれ!」とちょっとヤケになられた。それは俺も同意です先生。三代目、手伝っとくれよ。
がちゃりと火影室にやって来たカカシを見て先生は口を開いた。
「お疲れ様、カカシ」
「お疲れ様です」
「ちょうどいいから帰ろうとしない働きすぎの家に錺引きずって行ってやって。カカシももう今日は休んでいいからね」
「……分かりました」
頷いたカカシに腕を引かれ、とりあえず礼をしてから火影室を後にする。振り払えない程俺は疲れてるのか、気付かなかった。
「……ちょっと根詰めすぎじゃない?」
『いや……こんくらいが丁度エエ』
「倒れたりしないでよ、俺が心配するから」
カカシに腕を引っ張られながらつく帰路はいつぶりか。お互い忙しかったしなあと急に懐かしくなる。
この道のりはかつての帰り道ではなく、上忍寮へと向かう短い道なのだが。いつまでも本家に居座って迷惑を掛けるつもりはなかったので、と言うか両親や女中の方々にこんな情けない面は見せられないから、あのリンを殺してしまった事件のあとから寮に移った。
「……ホント、過労死とかしないでね」
『……善処したる』
「善処じゃ困るの」
善処するって、大抵はやらないって意味なんだから。とむくれるカカシにくつりと笑みが漏れる。ああもう。
『もお俺、お前が生き甲斐になりそうや』
「……俺のこと置いていかないなら、別にそれでも良いよ」
どいつもこいつも優しすぎる。
- Re: とある神鳴流剣士の転生譚 ( No.17 )
- 日時: 2018/01/14 14:06
- 名前: マメツキ (ID: 3CxPuX6G)
いよいよ来年は九尾襲撃に伴い、ミナト先生とクシナさんが死亡、そしてナルト誕生かぁと10月10日を差すカレンダーをしみじみと眺める。
先日の帰宅からミナト先生に何かを言い付けられたのか、時々と言うか定期的に俺を引きずってでも俺の自宅に連れて帰るになったカカシ。ついでとばかりに俺の家に上がり込んでは飯の準備をし出すから最初は何事かと慌てたものだ。
まぁそれもこれも二回目の時、家の玄関先ににつくと途端倒れるように寝た俺のせいだろうが。朝カカシに起こされて朝飯が準備されていたのを見たときの驚きに今後勝るものなどないと思った。
今日も今日とて昨晩倒れた俺はずず、と朝飯の味噌汁をすすっている。本当にもうちょっと情けなくなってきた。
目の前のカカシはもぐもぐと同じようにご飯を食べながら「まだ13歳なのに疲労困憊で倒れるってどういうこと」と昨日とほとんど変わらない台詞を叩き付けてくる。本当に彼女には感謝の言葉しか出てこない。胸も少しずつ出てきて女性らしい体つきになってきているカカシを拘束しているに変わりないと言うのに、文句ひとつも垂らさずに忙しいだろう暗部の任務もこなして通常運転とは。もしかして自由な時間がほとんど無いのではなかろうか。色々やりたいこともあるだろうに。
それでも『もう来なくて大丈夫やで』と言えないのは俺が心の支えにしているからなのか。
女々しい。ちょっと最近情けなさすぎやで俺。
「……どしたの」
『や……俺、最近ホンマ情けないわと思って』
「……別に、そんなことないと思うケド」
頑張ってフォローを入れてくれるカカシに余計情けない気持ちになりながら、『ありがとうな』と苦笑いした。
「ちょっと里の見回りしてきてくれない? そのまま休憩してくれてもいいから」
唐突に。
俺が火影室でバインダーを抱えながら書類の確認をしていると、ミナト先生にそう言われた。時計を見ると丁度昼休憩の時間で、まぁそう言うのも仕方ないかと納得はする。納得はするが……。
『……この書類の山の期限いつ迄や、四代目』
「え、いや、その……」
『いつまでや?』
「……今日までです」
『……せやったら尚更とっとと終わらせなあかんでしょ。ミナト先生、アンタ何日家に帰っとらんのですか』
「う……」
しょぼくれる先生に溜め息を吐いて、いやまあ確かに、と肩の力を抜いた。先生もずっとぶっ続けはキツいだろう。俺もキツい。
『しゃーない。気分転換に休憩しますか……』
「…じゃ。外回り、頼んだよ」
『はい。ついでに外で飯食うて来ます』
「ん! いってらっしゃい!」
いつでも笑顔なミナト先生に見送られて火影室を後にする。外に出て、食べ歩きが出来るような軽食を購入して商店街の方から回ろう。
どうしてか丁度よく売っていたフランクフルトをもぐもぐ食べ進め、最後の一口をぽいと口を放り込んだ時、横から「あら、錺」と声を掛けられた。
ぱっとそちらを見るとにこにこと笑顔のクシナさんが居て、手招きされたため竹串をゴミ箱にダストシュートしてから彼女に寄っていく。
『こんにちは、クシナさん』
「久しぶりってばねー」
にこにこのクシナさんは「最近大丈夫?」と気にかけてくれた。それに笑みを張り付けて『大丈夫です』と取り繕うが、若干ムッとした彼女に俺は手を引かれて近くの甘味屋へと引きずり込まれる。
いきなりの行動に俺はちょっと唖然だ。なにせみんなこうすると触れないようにしてくれていたから、こうして強引に引っ張っていった人は彼女が初めてである。
こういう強引タイプはネギま! には腐るほどおったけど、こっちじゃあんまり見いひんなと古い記憶を取り出しているうちに注文を勝手に済ませたクシナさんにポンといきなり頭を叩かれた。
「あのね錺。リンのこと、まだ引きずってるのはみんなわかってんのよ。確かに結果論で殺してしまったのは錺だけど、カカシに聞いたらリンが飛び込んだそうじゃない」
リンはきっと覚悟して飛び込んだのよ、と運ばれていたぜんざいを口にする。
リンの覚悟はよく分かっているつもりだ。親友として、カカシに殺されたかっただろうに、壊れると確信していたから俺の突きに飛び込んだ。カカシが殺すくらいなら俺が殺すつもりだったし筋書き通りと言えば通りなのだが、誤算としては俺のメンタルが肉体年齢に引っ張られて弱くなっていたことだ。
「アンタがいつまでも引きずってると、リンの覚悟が無駄になるわよ」
『……無駄に』
それはあかん。と顔をあげた俺は『どないしたらエエですかね』とクシナさんに問い掛ける。
「アンタは難しく考えすぎなの」
ぽんと出されたその言葉にキョトンとして彼女を見つめれば、「アンタはごちゃごちゃ余計な事を考えてるのよ」呆れたように溜め息を吐かれた。
「私だってミナトだって、仲間を手にかけたことぐらいあるわ。それでも今こうして過ごしているのは、死んだ人たちとの時間を無駄にしないように足掻いてるのよ」
『……』
「私たちは一人じゃないし、アンタには頼れる人がたくさんいる。だったら、死んでしまった事実をきちんと受け入れて、死んだ人たちの分まで精一杯生きるの。そうじゃないと、失礼だもの」
雷を頭から受けたような衝撃だ。
顔つきが明らかに変わった俺に対して満足そうにクシナさんは頷いてから美味しそうに笑顔でぜんざいを頬張り始めた。
なんと言うか、救われたと言うか、憑き物が落ちたと言うか。妙に心のどこかがすっきりしている。
「カカシに言うことちゃんと言ってあげなさい。待たせ過ぎるとふらっとどっか行っちゃうわよ」
『う¨……』
**
カカシに連れられて夜遅くに帰宅する。案の定と言うか、あのあと死に物狂いだった。今日はミナト先生が火影になって一番忙しかった日ではないだろうか。恐らく。
先生はすっきりした顔をして戻ってきた俺に対して嬉しそうな笑みを浮かべて迎え入れてくれた。なにかあったのかと聞かれたのでクシナさんとちょっと話してきましたと返答した。多分帰ったらクシナさんに聞くんだろうな。
俺が気絶するように寝る直前、玄関先についても倒れない俺を不思議そうに見つめているカカシに必死で睡魔を押し退けながら一言。
『……ありがとう』
クシナさん、最初はこれくらいで勘弁してください。
- Re: とある神鳴流剣士の転生譚 ( No.18 )
- 日時: 2018/01/14 23:09
- 名前: マメツキ (ID: 3CxPuX6G)
カカシside
錺が苦笑いでも張り付けた笑みでもない、最近見なくなった本来の笑顔を微かに浮かべたあの夜から、錺は前の、いつもの錺に戻っていた。
それを察知したライドウやアスマ、ガイ等に早速絡まれていたが、相変わらずの錺のその対応に見ていてストンと何かが当てはまった気がする。
ああ、いつもの錺だ。
ほっとして膝から崩れたのは記憶に新しい。自分でも膝から崩れたことに理解が出来ず、側に居た紅やアンコに『立てない、助けて』と助けを求めるなんてことしたのは初めてじゃなかっただろうか。
周りのみんなも錺がもとに戻った様子を見て心なしかほっとしていたし、わりと気にかけられていたのだなと安心した。
対して俺は元に戻った錺から普段より幾分も優しい対応を受けてどぎまぎしまくっている。忍として情けないことに、寝不足のせいで階段から落ちそうになったときは支えてくれたし、書類とか手伝ってくれて四代目の手伝いをしているからかかなり済ませるのが早いし、夜が遅くなると自発的に今度は俺を引きずって家に帰り出すし。挙げ句合鍵を渡される始末。正直嬉しくて俺的に困っている。まぁ根詰めなくなったのは素直に喜ばしい。
理由としては、以前より女の子として見られることが多くなったのもあるだろうか。
元通りになった錺は色気と言うかフェロモンというかなんと言うかそんなものがかもし出されてて心臓に悪い。アイツよくよく考えると性質がわるすぎだ。
目の隈も消えて見に見えて健康になってきた目の前の錺を見つめて、視線に気付いたコイツが『ん?』と箸を片手に見つめ返してくる。そういうのを見てやっぱり好きだなあとふいと錺から目を逸らしながら再確認した。
『カカシ』
「何?」
『好きや』
「……、ん!?」
**
「…え…ぅ、……は?」と目の前で真っ赤になって口をぱくぱくしているカカシを見てちょっとしてやったりな気持ちがあるのだが、自分でもなんでこんな飯食ってるときにそんなこと言うとるんやと言う自覚はある。
先程の、カカシが照れ臭そうに視線を逸らしたのを見て不意を突いて出た言葉だ。俺自身言おうとして言ったことじゃないが、結果オーライ。
ネギの千雨への告白シーンを雪広に引っ張られて見たからか、俺も告白するならあれぐらいの覚悟がいるのかもしれないと思っていたが、案外ぽんと言えたもんだ。
気にせずぱくぱくと料理を食べていると、「ちょ、ちょっと!」と机をダンと叩かれた。がしゃりと揺れる食器からとりあえず味噌汁とお茶の入ったコップを避難させる。なんちゅー危ないことするんやこの子は。
「ま、待って待ってどういうこと、もう一回言って、いや待って」
『……』
「なんか言ってよ!」
『待て言うたやんけ……どっちやねん』
言葉の綾に決まってんでしょうが! と真っ赤になって憤慨するカカシが俺にはもう可愛く見えて仕方ない。
何笑ってんの! と立ち上がって怒りを露にするカカシを見上げながらもう一度『好きや』と口を開いた。ちょっと羞恥で泣きそうなカカシは机を支えに大きく溜め息を吐きながらしゃがんでいく。おーい、大丈夫かカカシー。
「……ホントなんなの錺。俺のこと殺す気なの? なんなの?」
『……一応、俺に殺す気は全くないぞ。禁句持ち出すなや』
とうとう訳のわからないことを口走り出したカカシに仕方なく席を立って、机のしたで膝を抱えながら小さく丸まって座っている彼女の側へとしゃがみこむ。ダンゴムシを想像した俺は別に悪くないはずだ。
なんと言うか、これは嫌がられとるんか。どうなんやこれ。
『……カカシー?』
ぽふぽふとさらさらしていて柔らかい髪を優しく叩くように撫でながら様子を伺うが、反応はない。耳が真っ赤やから一応照れてくれてはいるのか。
ちょっと埒があかない、と立ち上がろうとすると、腰にガクンと衝撃が走り、尻餅をつくように座り込む。なんだなんだと見てみれば腹辺りにカカシが抱きついていた。何事や!?
ぎゅううとむしろエビ反りを掛けにきているのか、腰がミシミシ言い出してヤバイ。暗部の腕力ヤバイ。
流石に死ぬ、と彼女の肩に手を置いた。
『カカ、』
「……俺も、」
「好きだよ、」と顔を俺の胸板に押し付けながら返ってきたカカシに思わず頬が緩んで、肩に置いていた手を背中に回す。存外ほっとした俺がいることに気付いて息を吐いた。
『……っ、はー。フラれたらどないしようか思ったわ』
「……フラないよ」
錺なんだから、といつか聞いた台詞に、あぁ、カカシだなあと実感した。
- Re: とある神鳴流剣士の転生譚 ( No.19 )
- 日時: 2018/01/17 00:14
- 名前: マメツキ (ID: 3CxPuX6G)
つい先日、四代目火影の相談役というかなんというか、そんな立場に任命された。以前からほとんど似たようなことをしていたが、それはただのお手伝いだったので正式に、的な。
ミナト先生はちょっと教え子で周り固めすぎじゃないかね。暗部のカカシも一部からあまりよく思われてはいないみたいだし、俺も30代40代くらいの上忍たちにキツく見られたりするときもある。
それを先生に相談すると。
「錺の場合、精神年齢で言ったらその上忍たちより歳上なんだから大丈夫大丈夫。なんなら俺より歳は上だろ?」
『せやけど! ……いや先生それ俺の最高機密や!』
へらっと笑いながら告げる先生に周囲の気配が無いことを確認して書類をべしー、と地面に叩き付ける。ああっ、書類が! とちょっと疲れた顔で叫ぶ先生は多分自業自得ってやつだ。ぁ、これ拾うのに労力かかる……。
先生は書類を拾い終えた俺ににっこり微笑んだ。
「カカシは……何かあってもお前が意地でも守るでしょ?」
『……まぁ、そうですけど』
「なら良し」
『雑や』
この人雑やぁ、と書類を小脇に頭を抱える。
もちろんカカシは意地でも守るつもりだ。なんせ俺の人生初の恋人である。最愛である。守らない選択肢はない。あの日に付き合い始めた俺達は表面上変わりなく過ごしている。が。二人で居るときちょっと雰囲気が柔らかくなると紅に言われた。マジか。
この件はこれ以上この人に言っても無駄だと悟り、『じゃあこれ追加っすわ。俺上がりなんで』と地面に置いていた認証待ちの書類をどすっと机に置く。机に乗って俺の肩ぐらいまで積み上げられたそれに先生は頬をぴくぴくとひきつらせ、「……これ全部?」と指差しながらすがるように俺を見た。
うむ。
『あと追加で三十枚あるんやけど、先生』
「……錺手伝って!」
『お疲れ様でしたー』
「錺、錺ー!」
翌日。結局引き留められて家に帰らず貫徹した俺は目の下に隈を作ったミナト先生に「待機室で休んでおいで……」と言われて朝、上忍待機室のソファに座って腕を組んで項垂れていた。なんかもう、眠い。すごく眠たい。昨日晩から何も食べておらず、腹が減っているのだが、なんせ今は食欲より睡眠欲が圧倒的強さで勝ってしまっている。
どうしよう、眠い。途方もなく眠い。
「錺おは……え、なに。どしたの、隈出来てる」
『……眠い』
「……徹夜?」
ふあ、とあくびをしながらやって来たカカシにこくりと頷いた次の瞬間には流れるようにうつ向いてぐうと寝息を漏らしていた。せっかく朝イチでカカシに会えたと言うに、残念だ。すご、く。
「……おやすみー、」
そんなカカシの声が聞こえた気がする。
**
カカシside
目の前で体を揺らしながらうつ向いている錺を見てあぁこれは完全に寝たなと揺れる体に吊られてゆっくりと左右に動くアホ毛を指で弾く。
大方四代目に巻き込まれたとかそんなもんだろう。四代目も錺に関しては無茶苦茶だからなあ。
相談役に任命されてからのコイツは落ち込んでいた時期より忙しそうに見える。なのに以前より疲れが溜まってないと見えるのはどういうことか。効率が良いのかな、この人頭いいし。
隣に座って辺りを見ると、やはりまだ人が出てきていないのを実感する。シンとした上忍待機室はいつもわりと人がいるせいか狭く感じるけど、人がいないとこんなに広いのか。
きょろ、と視線だけ周囲へ動かして、不安定な錺の体を自分の太ももに寝かせた。所謂膝枕である。跳ねた髪がリンと同じくらいの短さのズボンを履いているから素肌に当たってくすぐったいが、すやすや寝ている錺の寝顔が見れるから別にそう悪いものでもない。
『もうちょっとさ、休んでもいいともうんだよね、お前は。子供にしては働きすぎ』
うん、絶対そう。と赤っぽい黒髪を指で鋤いた。
- Re: とある神鳴流剣士の転生譚 ( No.20 )
- 日時: 2018/01/17 00:56
- 名前: マメツキ (ID: 3CxPuX6G)
現在、俺たち若い忍たちは年上の上忍達の結界の中である。言わずもがな、九尾襲来だ。既に里の入り口は壊滅状態に陥っている。
当初、ガイてカカシ含む三人で会話をしていたのだが、突如として空気が冷えたその後、ひとつ吠えただけで地面を抉った砲哮にあぁそう言えば今日は10月10日だったと唇を噛み締めた。
この程度の結界なら霧雨で弐の太刀か黒棒の最重量投摘で敗れる。
俺とてあまり原作崩壊になるようなことはしたくない。したくないのだが、俺にも情と言うものがあるのだ。俺だって人間、情ぐらい沸く。この10年間ずっと成長を見てきてくれた担当上忍であるミナト先生に、立ち直らせてくれたクシナさんに。俺は二人に返しきれないほどの恩と親しみがあるのだ。
蜃気楼のように周囲を歪ませるほどの剣気をみなぎらせ、背中に吊ってある黒棒を鞘から引き抜こうと手をかけ今にも飛び出そうとしたとき。
「錺」
ぽそりと。小さな呟きとともに袖を控えめに引っ張られた。ぱっと剣気を引っ込め振り返ると、カカシが俺の服の袖を小さくつまんでいたのだ。
そのカカシの顔にはありありと「
何する気なの。ここにいて。俺を一人にしないで」と言わんばかりの表情が浮かべられていて。ぱっと周りを見れば「何する気だ」と心配そうに同期達が俺を見つめている。俺の行動が何やら不安になったらしい。
存外同期に心配されていたんだと自己評価を改め直し、袖をつまむカカシの手をほどいてから優しく握り、周りに告げた。
『……心配すんなや。俺は大人しくここに居るから』
言い付けは守るで。と弱々しく微笑んだ。
馬鹿か俺は。先程紅が上忍に反論して「次世代を担う」云々を言われて渋々引いていたと言うのに。俺より精神年齢がしたの子が耐え忍んでいる。
耐え忍ぶ者こそ忍者だ。俺がそんな行動を取ればその名が廃る。とは言え、不安で不安で仕方がないのはいつになっても変わらない。
『……ありがとう、カカシ』
歯止めを掛けてくれた最愛に感謝の言葉を述べて彼女の肩に額を押し付けた。
**
ミナト先生及び四代目火影波風ミナト、うずまきクシナが応戦の末戦死した。彼らのお陰で九尾は封印されて現在は里の復興へ力を入れている。
あの戦火の中、ナルトが無事誕生日したらしい。無事らしいと言うのは確証を得ている訳ではなく。四代目が亡くなり、自動的に前任の三代目が火影の座につき、その三代目火影が最高機密として厳重に封印された部屋で保護しているからだ。姓も波風ではなくうずまきになるとのこと。
一度でいいから恩師の一人息子をこの手で抱き上げてみたかったものだが、それも叶わないらしい。
後に木の葉を襲った九尾を体に抱える忌み子として敬遠される罪無き存在だと知っていても、無力な俺にはどうすることもできない。ナルトが自分でなんとかするしかないのか。あぁ、もう。
現在、俺は変わらず四代目の相談役に引き続き、三代目の補佐をさせてもらっている。カカシも同じく引き続き暗部所属だ。俺は一応三代目にのみカカシが暗部を止めたら補佐役を勝手ながら降りさせていただくと告げている。身勝手な申し出ながら三代目は笑顔で了承してくださった。うーん頭が上がらない。
そして、カカシが大事な任務と俺以外では時間に余計にルーズになった。朝から墓参りに行っては姿を見せるのがいつも遅い。
そんな日々ももう一年。俺は16になった。三代目の認証待ち書類を抱えてふとカカシは今日は任務が無かったよなと墓参りに行っている様子が目に浮かぶ。
窓から外を見れば時刻は夕方だが、曇天が激しく地面へと雨粒を叩き付けていてまさか、と嫌な予感が胸を掠める。
アイツ、こんな土砂降りでも墓前でつったっとるんやなかろうな。
書類を一度地面に置き、三代目に『カカシの様子を見てきます。多分すぐ戻るんで』と告げて、了解が貰えたので傘を一本鷲掴み、瞬身で先生の墓前へ。一応オビトとリンのとこ見たけど居なかったから、きっと先生のところだ。
まぁ、案の定と言うか。普通に居ますよね、そりゃ。
雨に降られてずぶ濡れの濡れネズミになったカカシが。
『カカシ!』
「……あ、え、錺?」
ばしゃばしゃと駆け寄ってカカシの頬に手をやるとうひゃあ冷たい。慌てて彼女を横抱きにして俺の自宅へと放り入れた。正直こんな扱いを恋人にしてしまって申し訳ないと思うが雨の中傘もささずにいたカカシも悪い。
風呂を直ぐ様沸かしてから、箪笥からワイシャツとズボンを取り出してカカシに押し付ける。
『カカシ! とりあえずお前体冷えとるから風呂入れ! 上がったら部屋で好きに過ごしとってエエから! 戻ってくるまでちゃんとおりや!』
服を受け取って唖然としているカカシに「え、どこいくの」と問われ『書類まだ残っとるねん、光速で終わらしてくるから』と最後に風呂入っとけよと念を押して家を出る。
書類は残り二、三枚。三十分でできりゃあいいほう。直ぐに終わらせよう。火影室に駆け込んで周囲に若干引かれながらバリバリとペンを動かし書類を提出し上がらせてもらう。うーん30分ちょい。
とりあえず家に帰らねば。