二次創作小説(紙ほか)
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- とある神鳴流剣士の転生譚
- 日時: 2018/01/05 01:28
- 名前: マメツキ (ID: 6A538sbk)
どうもこんにちはこんばんはおはようございます。はじめまして、マメツキです。
このお話はネギま!のオリジナル男主が色々と転生して行く微傍観系小説です。
書く遅さにつき亀更新です。
とりあえず、これは違うだろ、駄作かよとか思われましても生暖かい目で見守ってやってください。
尚、マメツキの自己満足の為に書き走っていきますのでご容赦ください。
マメツキは感想等には泣きついて狂喜乱舞します。
捏造てんこ盛りです許せる方のみどうぞ初見さんいらっしゃいです。
以上、わりとウェルカムなマメツキでした。
設定。
小原 錺(こはら かざり)
麻帆良学園男子高等学校に所属する明日菜達の三つ上な高校三年生。神鳴流につき関西人。
剣道部にして保健委員。
特徴として赤目でつり気味の鋭い眼光と揺れる一本のアホ毛。右目下の小さな泣きボクロがチャームポイント。
ネギま!の例に漏れず美形と言うかイケメン。
クールで落ち着き払っているが、実は現代からの転生者なので精神年齢は既に三十路越え。今更女子中学生ごときにきゃあきゃあ言う(精神)年齢でもない。故に麻帆良の御意見番としても活躍。
故に『麻帆良の御意見番』と若干の男子高校生に与えられるべきではない二つ名が存在する。
麻帆良の男子生徒でも人気の高いイケメンであり、フェロモンがすごいエロイケメン枠。ラッキースケベは発動する前に元を断つ紳士。捏造設定により男子高等部の制服は中等部の持ち上がり。
野太刀『霧雨』を所持。竹刀袋に常備。タカミチの居合い拳の元となった元祖居合い抜きの名手。実力は青山鶴子と同程度。宗家青山家の分家の次期当主でもあるかなりハイスペックな元一般人。
アルビレオとは何か通じ合うものがあるのか仲良くしている。なんか重力剣貰ったんやけどどないしよう。これ本来近衛刀太が持たなあかんやつちがうん、とか思ってたけど刀太くん主体の話はパラレルワールドの話やから大丈夫なんか良かった、とか言いながらちゃっかり重力剣(黒棒)をアルから贈呈された。基本的に黒棒は使わない所謂宝の持ち腐れ。
赤っけのある黒髪に柘榴色の瞳。身長は185cm、体重は平均。
なんやかんやで巻き込まれた原作完結後。
ではどうぞ!
- Re: とある神鳴流剣士の転生譚 ( No.21 )
- 日時: 2018/01/18 00:44
- 名前: マメツキ (ID: 2UEcXbEH)
バタバタと慌ただしく帰宅し、玄関を開けると丁度風呂上がりらしいカカシが頭にタオルを乗っけて素顔を晒して廊下にいた。
「おかえり」
『…た、ただいま……ぁ!?』
さしもの俺は辛うじて返事をしてからピシリと玄関を閉めた状態で硬直した。
上がりたてほこほこかよ。上気して赤くなった頬とか湯上がりの潤んだ目とか、なんかもうエロ可愛い。ありがとうございます。
問題にすべきはその服装だ。なぜワイシャツ一枚。確かにまあ俺が同期より身長が高いのはよく理解しているのでぶかぶかになるだろうとは思っていた。現に腕の裾は捲られている。ここまでは別に良い。しかしなぜズボンを履いていない。見えるからやめなさい。
端的に言おう。カカシはここ二年で急激に成長した。確かに身長も数センチ伸びて150後半にはなっているだろうが、俺が言ってるのはたわわに育ったその胸のことだ。他人より大きく一般のサイズを大きく人並み外れたソレがシャツを押し上げて最早裾は彼女の足の付け根を辛うじて隠している程度になっている。胸と密着した服の部分から確認できる薄い肌色を見るに、上付けてねえコイツ。
はっきり言おう。女性の裸体など前世で嫌と言うほど不本意ながら見慣れてしまっている。主にネギのせいだ。そんなのを見て興奮なんてするわけがないのだが。しかし。カカシは別である。なんせ恋人だ、ちょっと俺の鋼の理性がはち切れそうで怖いですカカシさん。
パッと視線を逸らしてうつ向き、手のひらで両目の瞼を押さえる。直視は難しいぞコレ。
『……カカシさん、はよ下履いてくださいや』
「なんで敬語なのお前……。下着がびしょ濡れだったし、錺のサイズじゃ明らかにでかかったからやめた」
『要するにワイシャツ以外何も身に着けとらんのですね……』
「うん」
うんじゃねーよ。即答やめろよ。うわちょっとこっち来んといてやめてうわあああああああ。
ばふ、と仕事終わりの俺に抱きついてきたカカシに再び体が硬直する。俺基本的にベストの前全開にしてワイシャツ着とるから。ほぼ直やから。ダイレクトに柔らかいの伝わっとるから。うおおやめろカカシ。体は大事にしろ! やめろ、やめるんだっ!
脳内でとんだ茶番を繰り広げ、しかし表面では相変わらず先程から凍った表情筋。
『……カカシ』
「なーに?」
『……わざとなんかお前』
ぎりぎり動く首を動かし、カカシを見下ろす。対して抱きついたままのカカシは俺を見上げた。頭が無くなって現れたのが俺に押し付けられて形が柔らかく変形している胸である。咄嗟に視線を逸らした。うーん、多分カカシ以外にやられたら絶対零度の視線を容赦なくぶつけとるわ俺。
俺のさっきの問いに答えるべく口を開けたカカシの口内から覗くしたが真っ赤で艶かしく思えてってああああああなんだどうした俺煩悩滅殺しろ頑張れ俺ファイトだ俺大丈夫か俺。
「ん、わざと」
『……お前、タチ悪過ぎやろ』
観念するように溜め息を吐き、『わかったわかった』とまだ湿り気のある銀髪を撫でて、幸せを噛み締めるように微笑むカカシにキスをしてから抱え込むように抱き締める。
お互い16になり、前々からそういう雰囲気は出てきていた。と言うか、カカシが望んでいたと言うかなんと言うかほにゃらら。俺はまだ流石に早いだろと罪悪感にまみれながらスルーさせていただいていたのだが、何せ今回は直接的すぎる。参った参った。俺の負けや。俺の今までの我慢はいったい。人はこれを無駄と言うのだ。悲しきかな。
現在、俺の腕のなかに居るのは俺の唯一であり最愛である。
『……あー、辛い。辛いわー』
「俺の勝ち」
『俺の勝ち、やないわ。もー』
再びもー、と溜め息を漏らす。その溜め息にすら期待の混じる眼差しと恍惚とした表情を浮かべて俺にすりよるカカシにここは流石にアカン、と彼女を横抱きに抱えあげ、軽々とした歩幅で寝室へ向かい、扉をパタンと閉めた。
尚。上忍寮は忍の家と言うこともあり、その機密性とプライベートを守るため完全防音だ。
翌朝、腰が痛いと嘆くカカシに自業自得やと微笑み、正式に合鍵を渡して服装を整える。18まで待つつもりやったんやけど、まぁ仕方ないか。これから遠慮せんでエエんやし、としれっとしながらカカシの今回の出来事に感謝した。
火影室に向かいながら、確かに彼女は今日休みだったので、ならば愛しのカカシは未だにベッドの上で寝転んでいるかと苦笑を漏らした。正直に言おう、激しくやり過ぎた。しかしまあカカシも準備が良かったものだ、お兄さん安心やで。
火影室に入室すると、入室早々に一週間ほどかかる護衛任務を言い渡されたのがこの俺だ。
喜びが微妙に減った気がするんや……。一週間……。
- Re: とある神鳴流剣士の転生譚 ( No.22 )
- 日時: 2018/01/20 00:37
- 名前: マメツキ (ID: 2UEcXbEH)
三代目から言い渡された一週間程の護衛任務に里と、と言うかカカシと離れなければならない焦燥感にうちひしがれていた俺だが、流石にAランク任務なので真面目にやる。もちろんAランクに限らずSでもBでもCでも真面目にこなします。Dはもう多分やらん。
俺より経歴の短い年上の男性上忍一人と、女性中忍が二人に隊長が俺なフォーマンセルで挑むこの任務。最初からめんどくさいことになりそうだ。
「錺! そっちだ!」
『……』
護衛中に襲ってきた敵の忍は音速に近い速さで一太刀を食らわせ、綺麗な切断面を見せながらどしゃりと地面に沈んだ。なんとちゅう呆気ないもんか。最近敵が弱すぎてお話にならんのやけど。もうちょっと頑張って俺の経験値の礎になってくれや……来るべき時にこんなレベルやったら格好つかんし。特に第四次忍界大戦とか。あれはあかんやつや。
現在女性二人には護衛対象に引っ付いていてもらい、俺達上忍が敵を叩きのめしている。後ろで形だけ苦無を構えて戦闘は俺に任せきりな彼はどうやら上忍になって初めてAランク任務を任せられた様子。本当になんでこんなのが上忍やってんだとため息を吐きたくなった。これならまだ後ろの女性二人の方が見込みあるぞ。まったく。
そんなくだらないことを考えていたら敵一人が土遁の印を結ぶ動きをしたので、瞬動で上へ逃げるように回避すると、控えていた敵のもう一人がチャンスとばかりに俺を狙って火遁の印を結んでいく。最適解だな、俺じゃなければ。
錺! と声を荒げる名ばかりの上忍にこれぐらいでどうしたと虚空を蹴って逆に敵へと突っ込んだ。
「宙を蹴って……!? まさか、コイツが剣聖か!」
「はぁ!?」
おい待てなんだその剣聖ってのは。初耳だぞコルァ。退避だ! と引き返していくボロボロな敵忍者に逃がすかと唇をぺろりと舐めてから繰り出したのは居合い抜き無音拳ならぬ無音剣。最高時速は雷速180km/秒だ。剣速と威力だけならネギを遥か後方の彼方に置き去りにしてしまえる、世に言う不可避の剣閃とか言うやつである。なんて厨二臭いやつや。
しかし便利なのもまた事実。前世に感卦法があっただろう、タカミチくんと神楽坂が主な使用例の高等技術。雑念を払って魔力と気を均等に練らねば成功しないあの。
俺はチャクラを魔力に見立てて気と融合させてそれをやってみたのだが、意外にも成功してしまった。なんだそりゃ……。
とまぁ、俺が術式兵装も使わずに180km/秒を出せるのはコレがタネだ。感卦法便利過ぎる。前世じゃ必要無さすぎて使ってなかったが、この世界で大いに役立ってくれる予感しかしない。多分この世じゃ俺しか出来ない神業芸当だ。真似することは最早不可能である。だって気なんて血継限界だし、もしうちの身内でも均等に練るなんてとんでもない才能持ってなきゃ出来ないし。そもそも口外するつもりなどないから当然だ。
情けなく散っていく敵忍者を容赦なく切り捨ててから刀についた血糊をひゅんと振り払ってちん、と鞘に納める。赤い紐の先端に釣りつけられた鈴がちりんとひとつ鳴った。本当に、霧雨はいい刀だと思う。一生の相棒だぜ。これ言っててサムイわ。
『殲滅は終わった。周囲に敵の気配無し。一旦依頼主んとこ戻るで』
「……」
俺が命令することにちょっと不満そうな上忍にコイツ馬鹿かと視線を投げ付けて瞬身でその場を去る、なんて大人げない真似はしない。流石にチームワーク大事だっつってんのに置いていく訳にも行かないのだ。めんどくせっ。
木の上を軽やかに移動しながら後ろで「俺より年下の癖に」「なんでアイツが隊長」とかぶつぶつ聞こえる上忍のそれに内心『年関係無いやろ』『経歴がお前の三倍以上のベテランやからやぺーぺーが』など多少口汚くなりながらも無言で駆け抜ける。
指定した場所に戻ると女性中忍二人がぴしっと背筋を正して「おかえりなさい」「お疲れ様です」と主に俺に声を掛けながら背後に元気そうな護衛対象を控えさせていた。
俺にしか言われなかった労りの言葉に腹を立てたのか「なんでコイツばっかりんなこと言ってんだ」と上忍が拗ねた。
「あんたねー、錺くん見なさいよ! キレーなあんたと違ってちゃんと仕事して返り血浴びてんのよ!」
「あんたって昔っからそうよね。労られたいならちゃんと働きなさいよ」
ごもっとも。たじろぐ上忍から少し離れた背後から彼女たちに見えるようにサムズアップするとにこりと笑みを返された。いい人だ。
どうやらこの三人、同じ班で行動していた元メンバーらしい。なんと言う上忍の方のハーレム感だ。別に羨ましくはないが。前世でそのめんどくささを合間見てきた俺はカカシ一人で充分。最早ハーレムなど彼女に勝てやしないのだ。
- Re: とある神鳴流剣士の転生譚 ( No.24 )
- 日時: 2018/01/22 00:41
- 名前: マメツキ (ID: 2UEcXbEH)
「おはよ」
『おはよお……』
寝室から出てリビングに入るとカカシが朝食をテーブルに並べていた。まだ眠気の残る俺は洗面所に向かってばしゃばしゃと顔を洗って歯を磨く。……あれ、俺仕事着のまま寝たんだっけ。
リビングに戻ったところではて、と立ち止まった。少し不思議そうな顔をしたカカシを直立不動で見つめて、口を開く。
『……カカシ?』
「? 俺だけど。……いきなりどしたの」
『? ん?』
昨日カカシに会ったっけか?
戸惑いながら首をかしげるカカシに俺も首をかしげる。
確か、一週間の任務をあの男性上忍のせいでストレス溜めながら無事終えて、三代目に報告し終えて、上忍待機室でアスマと紅と会話して。そして家に帰った筈だ。多分。
……え、カカシ?
『……カカシ、お前いつ家来とったん?』
「……えっ!? お、覚えてないの?」
片手で額を押さえながら必死に思い出そうとするがダメだ、玄関開けたところで記憶がない。
カカシは俺の背中を押して席に着かせてから「玄関開けたとたん倒れたみたいヨ」と言った。……え?
『……倒れた?』
「そ。俺もリビングに居てあぁ錺帰ってきたなって思ったけど、突然どさって音聞こえたから慌てて見に行ったら」
倒れてた。と 言われて頭を抱える。一番倒れちゃいけない医療忍者が倒れてどうする。マジで。わりと本気でダメだ。俺ダメ医療忍者……。いや基本前線で刀振るってるけどさ……。僥恃っていうかなんかそんなのがさ……。駄目だまだ寝起きでふわっふわしたとこしか言えない。あかん。
額に片手をやった体勢のまま大きく溜め息を吐いた。ら、カカシがくすくす笑った。可愛い。
なんと言うか、本当にご無沙汰な気がする。たかが一週間、されど一週間。
『で、カカシが俺を運んでくれたんか』
「ん。やっぱり体格差あるから影分身使って三人で運んだけど」
俺超情けない。情けない男になったなあもう……。ショックのあまり少し掠れた声で『ありがとう』と告げるとぴくりと体を揺らしたカカシが「シたい」と言い出した。
……え。どうした。一体何があった。
ぱっと顔をあげて机を挟んで対面にいるカカシを見ると、体を揺らしながら無言の圧力を掛けて急かしてくる。……ヤバいぞ。理性の準備が必要だ。おい! 鋼の理性! 久々の出番だ! 出動を急げ! 早く! はやくっ!
『待て待て、ホンマ待ってくれ』
「むり。はやく」
がたり椅子から立ち上がって俺の側まで来たカカシが膝に乗り上げてくる。腰が当たったのか朝食が並んだ机ががたりと大きく揺れた。汁物が、汁物があああ!
一体何がスイッチやったんやカカシさん。こんな朝っぱらからどうしたんやマジで待ってお願い盛らんといて。
『お前任務は』
「緊急召集さえなければなーいよ」
タイミング良すぎる。神はカカシに味方したと言うのか。
ちなみに言うと俺もない。四代目相談役の時、長期間の任務後にすら新しく厳しくて長い任務をしようとするから、一週間以上の任務のあとは一日休むことが特例で義務付けられてしまっている。もちろん三代目も俺にたいしてはそうしてくれやがっている。仕事人間になんてことを。死ねと申すかこのやろう存分に休ませてください。
そしてカカシもそれを知っているのだ。もはや当然。となるともう逃げ道は残されちゃいない。うわ前門のなんちゃら後門のなんちゃらってやつじゃないか。つらみ。
偶然か計算してか、この場合どちらともつかない。が、多分計算しての確率が高めだ、俺としては。俺の太ももに乗っているカカシを呆れたように見上げると上気したのか頬を赤く染めてへらっと笑うからエロ可愛い。可愛さ余って憎さがもう無くなってエロさが100倍か。なんだコイツ可愛いえろい。
……一週間はご無沙汰やったか。頑張ったよな俺。ストレスガンガン溜めながら廻りに当たり散らさず必死で耐えて我慢したしな俺。うん。
『……よし』
「、!」
高低差のある体勢から倒れないよう俺の肩に置いていたカカシの手を思いきり引き寄せた。
そのあとはカカシが半日動けなかった訳だが。うん、まあ、正直やり過ぎたごめん。
**
「……」
『なに?』
そんなこともあったなぁとリビングのソファで駄弁る。俺から言うと本当にむちゃくちゃするよねと隣に座っていたカカシが漏らした。そんな気はするが、誘われたら自制が効かなくなってるだけだ、他意はない。多分、きっと、恐らくは。
ああいうことがあって早二年。俺達も18になり、付き合い始めて既に4年経つ。しかし、未だカカシに冷めることはない。多分一生ない。だって可愛いし。多分言ったら殴られるから言わないが、超絶可愛いから。
『ああ、そういうたら。最近アスマと紅付き合い始めたらしいで』
「え!」
マジで? ホントに!? と若干嬉しそうなカカシを不思議に思ってからあぁコイツ紅と仲良かったもんなと納得する。何度か紅と二人、時々アンコも混ぜて出掛けてる様子を見てるから何度か相談に乗ったりしてるんだろう。
やっとかー、とほわほわと笑うカカシに俺もつられてへらりと笑って、脳裏にリンがよぎる。
リンが生きていたのなら、こうしてリンとカカシと紅とで話を弾ませていたのだろうか。
一瞬苦笑いしてifの話はするなと自分を戒めてから左の薬指を見た。
気づいたカカシが己の左の薬指で電気に照らされて鈍く輝くそれを見つめる。
『……ありがとお』
「……なにいきなり。ありがとうの台詞は俺のじゃないの?」
『なんでやねん』
いやまあ確かにそうかも知れないけど。偉そうなカカシの頭を軽くはたいた。ぶすくれるカカシに笑みがこぼれる。
挨拶回りは済ませた。
父さんと母さんはどうやら俺に女の影が見えないからと勝手に許嫁を用意しかけていたみたいだが、杞憂に終わってほっとしていた。この早とちりめ。そして少なからず年が14離れた弟がいたことには驚いた。元気だな両親。14だぞ14。4つならまだ分かるが14て。今4歳かよ。今いつの間に、っていうかまあ俺が家を離れてるからだろうがな。つまり現在進行形だ。弟というより息子の感覚に近い。そりゃあ14も離れりゃそうなるか。
三代目には笑って「18か。早くないか」と言われた。余計なお世話だバカヤローコノヤロー。いいんだよ別に早くて。どうせこの先9年か10年後にはどたばたするんだから。第四次忍界大戦とかな。
親しい同期とかにも触れ回ると盛大に祝辞を述べられた。はやいはやい気が早い。
一応、サクモさんには俺が一人で伝えに行った。あのとき貴方が任せると仰った意味がよく分かりました。貴方は俺の一生の憧れです。ホント悪い虫がつかないようにとか全然勘違いしてたわ俺。
『……はー、自分で家族作るとか初やわ』
「……前の世界じゃ独身で亭年?」
『ん』
「じゃあ俺が最初だ」
『今後も出てくるみたいな言い方すんな。このあともお前だけや』
「……俺だけ」
- Re: とある神鳴流剣士の転生譚 ( No.25 )
- 日時: 2018/01/25 00:12
- 名前: マメツキ (ID: xzgxaqDS)
「久しぶり兄さんっ!」
『お、簪、久しぶりやな』
久々に訪れた実家にて。アホみたいにでかい日本家屋の中庭にて、竹刀を規則正しいリズムで振るっていた我が弟『小原 簪(こはら かんざし)』が元気にぱたぱたと俺の足元に駆けてくる。それをよっこらと抱き上げてわしゃわしゃと髪をかき混ぜた。俺に似た髪色に二本のアホ毛をひょこひょこ揺らす様は幼く可愛らしい。目の色は俺の紅色に青を混ぜたような薄い紫、所謂藤色をしている。俺と違って若干タレ目だ、泣きホクロもない。俺の鋭い雰囲気も、似ていない。小原一族特有とも言える関西弁は木ノ葉に移る以前のものなので、簪は標準語を話す。ずいぶんと似ないもんだなと地面に下ろして唯一俺と一緒の髪色を撫でた。
「カカシ義姉さんもお久しぶりです」
俺の隣にいたカカシにも愛想よく笑みを浮かべた簪をカカシは「久しぶりだねえ」とマスク越しでもわかるほど朗らかに微笑む。それにへにゃ、と笑う簪を見たカカシが一言。
「やっぱり簪は誰かさん違って雰囲気が柔らかいねぇ、かーわいー」
ちら、と俺を見てそう言ったカカシから目を逸らす。自覚しとるわ、俺のガキの頃の雰囲気が殺気そのものやったことぐらい。……ちゅーか、殺気が雰囲気か? 今はそんなこともないが。…ないよな?
「兄さんは昔、どんな雰囲気だったんですか?」
「んー、錺? 錺はねぇ、殺気が雰囲気みたいなとこあったネ。お前本当に子供かよって言う」
『……やめろカカシ! あんときの俺はそんなん知らんかったんやから! みんななんで俺避けるんやろとは思とったけど!』
「ほらね。子供の頃はずいぶん可哀想な子だったよ」
「兄さん……」
『二人ともそんな目ェで俺んこと見んといてくれる?』
嫁と弟の哀れなものを見る視線に耐えかねて額を右手で押さえた。
それからやって来た父と母は俺が覚えている記憶からずいぶんと老いた気がする。数年ほど家に全く帰らんかったからなあ……。挨拶としてカカシが両親に頭を下げたところを二人が慌てて頭をあげるように言うのは何度見ても面白い。
とは言え、俺が今日実家に戻ってきたのは簪に渡すものが有るからだ。
『簪、おいで』
「ん? なあに兄さん」
俺を見上げた簪に弟の視線までしゃがみ、手を出せと催促する。両親とカカシは微笑ましげにこの光景を眺めていた。
腰に帯刀している霧雨、その隣に並んで下がる幾らか小さい刀を手にして少し驚いた顔をしている簪に手渡す。赤い紐がくくられた鍔のない野太刀の脇差だ。ネタバレすると逸品物である。
「兄さん?」
『アカデミーの入学祝いや。脇差【霧咲】、気を込めやすい鋼で出来とるから』
簪にしっかりと握らせると嬉しそうに笑って「ありがとう、兄さん」と小さい体にはまだ大きい脇差を抱きしめる。少々物騒かとも思ったが喜んでもらえて幸いだ。俺のように家宝でなくとも、こうして大切にしてくれるのなら。言ってしまえば、恐らく霧咲は霧雨より切れ味が良いのではなかろうか。うむむ。
言い忘れたが簪は今年からアカデミー生になる。年はナルトたちのひとつ上、日向の本家よりもその才能に恵まれた分家のネジやロック・リー、テンテンなどと同級生なわけだ。
めでたく籍を入れて挙式を済まし、家族になった俺たちだが、まだまだ問題は山積み。ちょっと多いぞ。
まず、カカシが暗部を抜けることになった。三代目が名字が変わるのと共に上忍に戻れと任を解いたのである。正直俺もいつ暗部を抜けるのかと考えていたところで、祝辞と共にこれだ。正直感謝した。本当に気遣いの出来る御人やわあの人。それに伴い俺も相談役を解任された。元々俺は四代目の相談役だったこともあるし、三代目の相談役なんて大層な立場をなんと惰性でやらせてもらってると言うとんでもなく失礼な立場にいたわけで。正直他の忍連中のやっかみが減ることに直結するので助かる。カカシも俺も引き継ぎとか色々あるからバタバタしてるが。
第二に。俺のことだ。家督は見ての通り、簪が継ぐことになったのだが、日向、うちはに継ぐ大きな一族で当然分家もいる。幼い四歳の血継限界発現したての将来性に期待するしかないただ努力家な弟と、自分で言うのもなんだが歴代小原家の中でも突出した才能を持つ、現時点の木ノ葉隠れの里で一番の戦闘力と剣の腕を持つ俺。どちらに支持層が傾くかなど正直分かりきっている。しばらく家権がゴチャゴチャするだろう。俺とカカシの結婚に反対するやつまでいたのだ。俺を盾にふんぞり返って威張り散らして血気盛んなバカも信じたくないが存在する、そういうやつらにとっても、重役の権力的にも俺が一番都合がいいに違いない。もちろん、俺はそんなやつらにみすみす従うつもりは毛頭ない。現当主の父も俺に賛同派だ、ほぼ確定で簪が家督を継いでくれるだろうが、あまりプレッシャーは掛けたくないので俺含む両親共に継いでも継がなくても自由にして構わないと常々思っていた。それに俺は、努力家は天才に負けるとも劣らないと信じている。いずれは俺を負かすほど強くなっていると期待したいな。
第三に。……まあ、これが多分一番でかい。……家族が増える。要するにカカシが懐妊したのである。それを知ったときは本当に泣くかと思ったが、感動にびっくりしてカカシが腰を抜かすものだから涙はひゅっと引っ込んだ。暗部を抜けたあとで本当によかった。これはまだ三代目には伝えていない事実なのでまたあとで報告に伺うとしよう。実家に訪れた第二の理由とも言える。
「簪と歳が近くなるねえ、四つ……五つ違うかな?」
『五つやな』
「兄さん……おれ、兄になるんですか?」
『……俺の子ってことやからお前の甥っ子か姪っ子やけど、歳的にはそうなるな』
「……わぁ」
早く生まれてきてね、とまだまだ変わりのないカカシの腹を見つめて無邪気に笑う簪が我が弟ながら可愛すぎてつらい。カカシも似たような反応してるからきっと思うことは一緒だろう。どないしよう、俺ブラコンなりそう。
- Re: とある神鳴流剣士の転生譚 ( No.26 )
- 日時: 2018/01/26 00:53
- 名前: マメツキ (ID: xzgxaqDS)
上忍待機室にて。『剣聖』『木ノ葉の剣帝』と言う勇名をほしいままにする剣豪、もとい小原錺より、同期のメンバーにめちゃくちゃ大事な報告があるんやと言われ、ここを訪れていた。人数は少ないがずいぶんな顔触れである。
小原 錺。上記でも示した通り、剣聖、木ノ葉の剣帝と本人が知らぬ間に付けられていた勇名をとる。剣士の多い霧隠れの里の出でもないと言うのにとてつもない剣才に溢れ、神鳴流と言う我流で若くして剣士の頂点に立った男。武闘派に分類される歴代小原家の中で最も強いと称されている。
幼少期当初は殺気が雰囲気だったらしいが今はナリを潜めており、その代わりと言うように18の今は色気のある存在となっていた。
一言で表すなら誠実。そして冷静な性格をしている。話してみると見た目を良い意味で裏切って案外話しやすく、気のいい性格をしていた。少々素が冷酷なところもあるが。
光に当てると深紅に輝く黒い髪。つり目の紅色の瞳に右目の下の泣きぼくろが花を添える。要するにかなりルックスの整った男だ。一本のアホ毛がチャームポイントと可愛らしく言ってみるがチャームポイントなんてただの特徴に過ぎない。
そして御家は日向、うちは、千手程ではないものの大きな一族であり、本家の長男である。
女子からモテそうな性格、容姿、家柄と三拍子揃っていながらもあまりそういう噂がなかったのは、ひとえにはたけカカシの存在にあった。独り占めと言うのは言い方が悪いが、ほぼそんな感じでいつも一緒だったからである。カカシも整った容姿をしているだろう、マスクに素顔が隠れて恐らく錺含むミナト班以外は見たことがないから断言出来ないが。要するにお似合いで、成績ツートップがずっと一緒に行動している、まぁそれだけで周りの女子への抑止力になったわけだ。
そんな彼が結婚したのは先月の始めだったか。18の若さで結婚したのは本当に純粋な好意からだとアスマは聞いている。それは錺という男がただただはたけカカシに対して誠実なだけだ。そんなわけで家督をまだ4歳の弟に譲った錺。
そんな男からの大事な報告。同期たちが気にならない訳がない。しかし、ガイに関しては任務でここ三日ほど里を離れているためこの場には居ない。
「錺の大事な報告ってなんだろうな」
「さぁ……?」
アスマの問い掛けに首をかしげた紅。その後ろで缶のお汁粉を手にしているアンコは「もしかしたら子供が出来たのかも知んないわよー?」と呑気に呟く。その一言でさわさわしていた一帯がシン、と音を無くした。視線は一心にアンコへ注がれている。その中で平然とお汁粉をすするアンコは恐らく将来大物になる予感がする。
「……子供は、なくねぇか?」
「そ、そうよ……錺は冷静を絵に書いたような男なのよ? それに、カカシもまだ18だし……」
ぽつりと呟いたライドウにシズネがこくこくと同意する。まぁ確かに。とからからと笑ったアスマの雰囲気がゆっくりと周囲へ伝染しそんなわけないかと皆が思い始めた頃。
錺がカカシを連れて待機室へ現れた。
『……はやない?』
「お前が報告なんて滅多にねえからな、みんな気になってしかたねぇんだよ」
あっけらかんと告げたアスマに『そか』と頷いた錺は紅、アンコ等になんの報告か聞かれて「錺が今から話すから」とたしなめているカカシを見た。
それに気付いたライドウが「結婚で住む家が上忍寮から移るとかか?」と笑いながら問い掛けてくるのを錺は『まぁそれもあるんやけど、』と言葉を濁して苦笑する。
アスマとライドウはおや? と首をひねった。いつもはちゃんと内容を整理してから話す錺にしては言い詰まるなんてずいぶん珍しいな、と。
錺はカカシと一度視線を交わしてから照れ臭そうに微笑んで告げた。
『カカシが懐妊した』
衝撃と驚愕と沈黙。
へにゃ、と頬を緩めて嬉しそうに笑う錺など初めて見た同期たちだが、もちろんそこに驚きを示しているのではない。
先程有り得ないと笑ってのけた予想が事実として本人たちから告げられたのだ。
「……マジなの?」
「マジかな……」
紅の問い掛けに恥ずかしそうに、けれども錺と同じように嬉しそうに表情を崩したカカシに同期が戦慄する。まさか、本当なのか。もちろん、嘘など必要なとき以外つかない錺が言うのだから間違いはないのだろうが、なんと言うか。信じられなかった。
「嘘だろ!?」
「マジか! なんか衝撃しかねぇけどおめでとう!」
「カカシ! よかったね!」
「か、懐妊…てことは…妊娠よね!? わあああ!」
一気に騒がしくなった上忍待機室の一角へなんだなんだと集まった年上の上忍たちがその事実を知りその騒がしさは伝染していった。