二次創作小説(紙ほか)
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- とある神鳴流剣士の転生譚
- 日時: 2018/01/05 01:28
- 名前: マメツキ (ID: 6A538sbk)
どうもこんにちはこんばんはおはようございます。はじめまして、マメツキです。
このお話はネギま!のオリジナル男主が色々と転生して行く微傍観系小説です。
書く遅さにつき亀更新です。
とりあえず、これは違うだろ、駄作かよとか思われましても生暖かい目で見守ってやってください。
尚、マメツキの自己満足の為に書き走っていきますのでご容赦ください。
マメツキは感想等には泣きついて狂喜乱舞します。
捏造てんこ盛りです許せる方のみどうぞ初見さんいらっしゃいです。
以上、わりとウェルカムなマメツキでした。
設定。
小原 錺(こはら かざり)
麻帆良学園男子高等学校に所属する明日菜達の三つ上な高校三年生。神鳴流につき関西人。
剣道部にして保健委員。
特徴として赤目でつり気味の鋭い眼光と揺れる一本のアホ毛。右目下の小さな泣きボクロがチャームポイント。
ネギま!の例に漏れず美形と言うかイケメン。
クールで落ち着き払っているが、実は現代からの転生者なので精神年齢は既に三十路越え。今更女子中学生ごときにきゃあきゃあ言う(精神)年齢でもない。故に麻帆良の御意見番としても活躍。
故に『麻帆良の御意見番』と若干の男子高校生に与えられるべきではない二つ名が存在する。
麻帆良の男子生徒でも人気の高いイケメンであり、フェロモンがすごいエロイケメン枠。ラッキースケベは発動する前に元を断つ紳士。捏造設定により男子高等部の制服は中等部の持ち上がり。
野太刀『霧雨』を所持。竹刀袋に常備。タカミチの居合い拳の元となった元祖居合い抜きの名手。実力は青山鶴子と同程度。宗家青山家の分家の次期当主でもあるかなりハイスペックな元一般人。
アルビレオとは何か通じ合うものがあるのか仲良くしている。なんか重力剣貰ったんやけどどないしよう。これ本来近衛刀太が持たなあかんやつちがうん、とか思ってたけど刀太くん主体の話はパラレルワールドの話やから大丈夫なんか良かった、とか言いながらちゃっかり重力剣(黒棒)をアルから贈呈された。基本的に黒棒は使わない所謂宝の持ち腐れ。
赤っけのある黒髪に柘榴色の瞳。身長は185cm、体重は平均。
なんやかんやで巻き込まれた原作完結後。
ではどうぞ!
- Re: とある神鳴流剣士の転生譚 ( No.32 )
- 日時: 2018/02/04 23:49
- 名前: マメツキ (ID: KT01wHai)
まぁとりあえず、第一陣は去った。水溜まりに変化していた敵の忍びにお母さんが鎖でバラバラにされたときは本気で驚いたけど、残骸を見たあと変わり身だと理解してほっとした。それから続けてナルトさんに攻撃しようとした敵に飛び出そうとするサスケさんを手で制してから、短刀をすらりと抜く。
短刀二振りを逆手に握り、体を回転させ勢いつけてぱりんと断てば、残るのは何てことないただの紐遊びのように垂れ下がる鎖のみ。
それでもまだ攻撃を続けようとした敵はタズナさんめがけて飛び出した。まぁこれもサクラさんが庇ったりそのサクラさんをサスケさんが庇ったり、そのサスケさんを初撃を回避していたお母さんが助けて、なんてこともあった。わぁややこしい。
私が驚いたのはナルトさんが意外にも動けなかったことぐらいだ。だって、火影目指すならサスケさんぐらいやらないと……。
「とりあえずカカリとサスケよくやった、サクラもネ」
そう言ってからタズナさんを見たお母さんの目は何を考えているか分からなかったけど、まぁ。依頼内容が違うんだから、仕方ない。
襲ってきたのは霧隠れの中忍。いかなる犠牲を払ってでも戦い続けることで有名な人たちだ。その戦い続ける精神は見上げたものがあるけれど、犠牲を払ってでもって言うのは少し気に入らない。まぁ、気持ちで左右されることでもないから仕方ないと言えば仕方ないんだろうけど。
依頼内容が違う任務は私たちの任務外だし、毒の塗られた武器で傷を負ったナルトさん。そしてサクラさんのまだ私たちには早いと言う言葉に、悩んだ母がなんかナルトさんの傷口を見て思いきり挑発した。案の定やってやるよと乗るよねそりゃ。傷口開くのは頂けないけど。
まぁそういわれて引くようなやつは居ないよ、とへにゃりと苦笑いして、アイコンタクトしてきたお母さんにこくこくと頷いた。
タズナさんはどうやら海運会社の大富豪、ガトーに命を狙われているらしい。ガトーと言えば、ガトーカンパニーと言う大手会社のお金持ちだったはず。聞くところによると、表向きは海運会社らしいが、裏では麻薬や禁製品、果ては企業や里ののっとりまでしているらしい。なんて悪どい。それらに全て金で雇ったギャングや忍を使っているようだ。うわ。
流石の私もドン引きしてしまい、ぎゅうとお母さんのインナーの裾を握る。
続きとして、一年前にそんな彼が波の国に目をつけたらしい。金と暴力で入り込んで、海上交通・運搬を牛耳ってしまったらしい。牛耳る、つまり利益や富を全て物にすると言うことだ。なるほど、タズナさんが今関わっている橋の建設が完成してしまうと交通を止めた意味が無くなる、そういうわけか。そしてそのせいで金がない。Cランクでもわりとギリギリ。
同情で気を引いたタズナさんに対し、了承しつつ、まさに最悪の依頼人だと呟いたお母さんに引っ付いてふむふむと納得していると、ナルトさんに「なんでお前カカシ先生に引っ付いてんだ?」と問われた。
ハッとして慌てて掴んでいた服を離して、あまりの恥ずかしさに「おっとと」と呟くお母さんの後ろに隠れる。
やってしまった。ついいつもの癖で。考え事してるときはお父さんかお母さんに引っ付く癖どうにかせねば。
「ふっ」
「可愛いー。上忍だとしてもやっぱりまだ8歳なのね、カカリちゃん」
わ、笑われたー! うわああ、恥ずかしい! 恥ずかしい!
ぐいぐいと後ろに隠れようとして、「こらこら」と軽く宥めてくるお母さんにほっとするけど、やっぱりまだ恥ずかしい。
「カカリちゃんとカカシ先生、親子みたいね」
その言葉にハッとして、まさか言ってないのとお母さんを見上げると、ふいと全力で顔を逸らされた。思わずジト目になる。そりゃサスケさんやタズナさん、ナルトさんが不思議そうな視線寄越してくるよ!
じろじろと見上げていると、耐えられなくなったのか、お母さんはぽふぽふと頭を叩いた。
「……お母さん?」
「ごめんってカカリ……」
許さん。言外に目でそういってやると、「ごめんってー」とわしゃわしゃ撫でられた。途端、サクラさんから「……お母さん?」と唖然としたような問い掛けをもらう。
そちらに目をやると、全員が全員、何かしらのリアクションを構えていた。
私悪くない、黙ってたお母さんが悪い。
次の瞬間響くだろう叫び声にそっと耳を塞いだ。
- Re: とある神鳴流剣士の転生譚 ( No.33 )
- 日時: 2018/03/03 02:46
- 名前: マメツキ (ID: 7ZppaU5d)
『斬岩剣!』
ぐばんと言うどこか抜けた音の後、ドガシャァと響く轟音と共に地面を抉って穴が開く。敵の忍二人はあまりの恐怖に意識を失っていた。しめた。ついでとばかりに先程鞘に納めたばかりの霧雨の柄に手を置いてひゅひゅんと居合い抜きを放つ。音もなく首がずれ落ちたその返り血をわざと撒き散らしながら身を隠した。
現在Aランクの単独任務中である。一週間ほど前から任務に出ている嫁と娘が居ないのを好都合とばかりにここのところ俺は任務をカツカツに詰められて居るのだ。くそっ、三代目のじじいのやろう人手が足りんからってコキ使ってくれよってからに。確かに少年期は仕事人間のワーカホリックやった気がしないでもないが今はちげえぞ。しかしまあ、現在俺にたいして五代目の話が出ているのも事実。五代目は多分綱手様になるんやろうとは思っとるけどな。
剣速が速すぎて血糊すらも付かなかった腰に下がる俺の愛刀に微かに口元に笑みを浮かべて、背中に吊るしてある黒棒を抜く。UQホルダーのカリンのように携えて居るととらえてもらえると幸いだ。
それにしても、任務のくせになんでこんなに派手にやっとんだと思われる奴も居るだろう。馬鹿野郎それが狙いだ。
騒動で駆け付けるように出てきたネズミを叩き潰す。これが一番手っ取り早い任務の片付け方だ。大半が『過激』だの『熾烈』だの『残虐』だの陰口叩いてくれちゃってるがそれも大半が俺の強さや知名度に嫉妬した奴等ばかりだから気にすることはない。
……しかし、まあ、過激なのは自分でも自覚はしている。でも相手に苦しみを与えず事切れさせて居るのだから関係無いだろと考える俺はずいぶんと前世に寄ったもんだ。もう前世より一年も長く生きてるしな。今までの亭年を考えるともうすぐ死にそうやな……。
まぁ今世は大切な存在が二人も居る。早々に死ぬようなヘマはしないし死んだって絶対戻ってきてやる。比喩だ、覚悟の強さの現れだから幽霊とか言うな。ホントに居るんだぞ幽霊(さよを見てるので確信している)
爆発のような轟音を聞いてのこのこと現れたお馬鹿なネズミに5トンの重さにして投摘し、腹に刺さり内蔵を突き破って貫通したそれはその先に居た敵にもぶっ刺さり、数本の木をなぎ倒したあと、大木に刺さって釣り下げられている。張り付けのようだと感じながらそこまで駆けて、黒棒を引き抜いて振り返り苦無を振り下ろしていた敵の一太刀を受けた。久々に黒棒を振り回して爽快感が半端ではない。霧雨にはないずっしりとした重みと、それを振るえてしまう軽さと、アルからの頂き物だと言うことが俺が生きていると実感させてくれる。
例えば初めて自分で作って持った家族と言うものを幸せに思ったとき。例えばへにゃ、と微笑むカカリを抱き上げたとき。意外と甘えたな最愛であるカカシを抱いたとき、一緒に居るとき。任務終わりに友人たちと生きていることを喜ぶとき。両親が立派になったとただ泣きしたあのとき。簪が「兄さん」と笑って呼んでくれるとき。……同じ班の人たちの墓参りをして線香の匂いを嗅いだとき。
俺はああ俺は生きているんだなと再確認するのだ。
襲い掛かる無数の敵をばっさばっさと切り捨てて、最後の一人を手刀を打って気を失わせる。持ち帰って暗部の特別上忍であるイビキに渡せば解決。
頬から滴る返り血に不快感を覚えながら肩の袖でぐいと拭った。
『……帰ろ』
言っておくが、俺は本当にただの平凡な男だったのだ。現代に生まれたときは武術なんてさらさらやったことなんて無くて、ネギまの世界に転生して、原作読んでて良かったと安堵しながら死にたくない一心で言い付けられたメニューをこなした。妖も斬った。裏切り者も斬った。お嬢の膨大な魔力を狙って来た数々の関西呪術協会の奴等を叩っ斬った。
人を殺したのはいつだったろうか。確かまだ6か7の時だったような気がする。依頼の護衛にまだ幼い俺が選ばれて、依頼人にうさんくさげな目を見せられた仕事だった。行きしなは何もなく、帰りしなに依頼人を襲ってきた敵を瞬殺したのだ。文字通り、殺したのだ。前世がこんなに危険なものとほど遠い平和に過ごしていただけに、当時小学生に上がるか上がらないかぐらいの俺は酷く葛藤したような気がする。斬っても斬ってもどうとも思わなくなったのはいつだったか。一年も経たなかった気がする。そして、何かが欠落したのだ。
今世も似たようなものだ。でもひとつ違った。カカシだ。アイツはずっとそばに居た。居てくれたのだ。だから俺は欠落した何かを取り戻せたような気がする。しかし、別にタカミチのようにだから人を愛する資格など無いなんて馬鹿なことは言わないが、俺の手は赤黒く染まっているのに変わりはない。
最初の俺が見たら、今の俺を怖がるのだろうか。平気で人を手にかける俺を。殺人者と罵るだろうか。
敵の忍引き渡しの為に里に入ってからは火影邸を目指していた俺だが、途中、簪が駆け寄ってきた。ほんわか微笑むコイツの雰囲気は母さんそっくりでくすりと笑みが漏れる。カカリの柔らかい雰囲気も母さんからの遺伝だろうか。カカシも俺もあんなオーラは出さないもんなあ。あれかな、カカリはサクモさんと母さんを足して2で割ったみたいな。有りうる。
ぽふぽふと俺より遥かにしたにある頭を撫でた。
「兄さん! また今度修行つけてください!」
『ん、分かった。ほら、任務やろ。行け』
「いってきます!」
『いてら』
ひらひらと遠ざかる背中に手を振って、こちらを驚いたように凝視している簪のチームメイトに微かに微笑む。
そうして俺は火影本邸を再び目指したのである。
数日後、傷を負って波の国の任務から帰ってきたカカシとカカリにお説教するのは最早必然のようだった。
- Re: とある神鳴流剣士の転生譚 ( No.34 )
- 日時: 2018/03/04 02:16
- 名前: マメツキ (ID: 7ZppaU5d)
カカリside
波の国の護衛任務も終わり、帰路を辿る。途中、襲撃してきた白と再不斬は亡くなった。お母さんの手に心臓を貫かれた白はずっと己を再不斬の道具だと言っていたが、最終的にはナルト兄ちゃんの問い詰めで道具だと思ってないことが判明して、裏切ったガトーを殺してしまったのだ。ガトーに雇われていたチンピラが町を襲おうとしたが正直依頼主いないんだから帰ったら良いのにとあきれるも、結局は見かけ倒し。数に圧倒されて逃げていった。
とは言え、私たちも傷が浅い訳ではない。お母さんなんてチャクラ切れで重傷だし、サスケ兄ちゃんは仮死状態になっていたし、私も腹を浅いとはいえあの首切り包丁で裂かれている。流石は忍刀七人衆と言ったところだろうか。ただ、お父さんよりずっと格下だとなんとなく感じとったのは間違いない。忍刀七人衆の七人にも恐らく勝ると言われているお父さんだ。再不斬は私の短刀二振りを見て少し目を見開いていたし「その刀…」と呟いていたので一度父の姿を見たことがあったのだろう。私の短刀『時雨』『五月雨』は父の刀『霧雨』、ひいては簪兄ちゃんの『霧咲』と兄弟刀で、格好がよく似ている。この野太刀のような色合いに赤い紐の刀を私は自分含め四振り以外に見たことがないから多分そう言うことだ。
それにしてもお父さんの関係無いところでお父さんの実力をはっきりと見せつけられた気がする。まだまだ差が開いている、何年かかるかわからない実力の差が。お父さんの背中に追い付くどころかまだ見えてすら居ないらしい。いや流石お父さん凄く格好いいと思うけど、なんと言うか、複雑。
そこら辺に転がる石を蹴り飛ばして溜め息を吐いた。
「「はあ」」
溜め息はお母さんと重なって、ナルト兄ちゃんが「二人ともどうしたんだってばよ?」と問い掛けてくる。
ナルト兄ちゃん、サスケ兄ちゃん、サクラ姉。この任務の間に呼び名を許可してもらったのだ。ナルト兄ちゃんとサクラ姉は喜んでいたし、サスケ兄ちゃんも仏頂面ながら満更でも無さそうだったのでよしとしよう。
なにはともあれ。私の溜め息はお父さんに追い付く道程が驚くほど遠いことを実感させられたからであり、恐らくお母さんの溜め息とは違うものだろう。
不思議そうに見上げると、一同の視線がお母さんに集中した。
「まぁ……帰りたくないなあって」
「え、なんでなの? カカシ先生」
首をかしげたサクラ姉を一瞥したあと視線をうつむかせてもう一度溜め息を吐いたお母さんはポツリと呟く。
「いやね……? デカイ怪我したし、あの人に怒られるなって…」
あの人。その言葉が指す人物を思い浮かべる前に顔がサッと青ざめていくのが分かる。ずーんとした雰囲気を纏わせていた理由はこれか。はし、とお母さんの服の裾を掴んだ私も多分そんな雰囲気だろう。
「あの人って、もしかしてカカシ先生の旦那さん!?」とサクラ姉がきゃあ、と頬を紅潮させた。ナルト兄ちゃんとサスケ兄ちゃんは面白くなさそうだ。きっと家族の話だからだろうか。二人の過去は知っている。四代目とその妻で人柱力だった人の波風、もというずまきさんと、兄が一族惨殺したとこのうちはさん。ナルト兄ちゃんに関しては四代目の子だとバラしては周囲がヤバいだろうと思うので伏せている。二人とも結局は家族が居ないので、きっと面白くないのだ。ナルト兄ちゃんに至っては、きちんと自分のために叱ってくれる親と言うものが居ないのだから。
ぐ、と裾を握る力を込めると、サクラ姉の一言にうん、と頷いたお母さんは言った。
「だから、お前らも一緒に叱られてね」
「えっ?」
「なっ」
「はぁ!?」
「え、お母さん!?」
「あの人が叱るのは結局俺たちの為だから、最後は笑って全員でどこか食べに連れてってくれるよ」
笑って言ってのけたお母さんにサクラ姉は「う、嘘でしょ!?」と困惑し、サスケ兄ちゃんは「なんで俺まで」と唇を尖らせ、ナルト兄ちゃんは「しゃーねーなー!」と頬をひきつらせながらも笑っている。大方ナルト兄ちゃんは食べ物につられたか、もしくは……。
考えるのはやめた。これから悩まなければならないのは。
「とりあえず、拳骨一発は覚悟しとかないとね……」
「あれやだぁ……割れるもん、いつか頭割れちゃうよぉ……」
お父さんの鉄拳制裁だ。あれほど痛いと思ったことは任務で怪我をしたときでもない。きっとこの先ずっとないはずだ。
目を遠くさせるお母さんの横で涙目でそっと頭を押さえる私たちを見て、三人の顔色はさっと変わっていく。
**
結局里についたのは夕暮れだった。朝から出発して昼に到着、半日かあ。お母さんが火影室に報告に行っている間私たち四人は上忍待機室で待つように言いつけられ、ソファに並んで暗い雰囲気を漂わせている。
私まで暗い顔をしているからだろうか、ほとんどの上忍たちは同情した目で苦笑いだった。あの人達知ってるもんね、お父さんの鉄拳制裁。きっとされたことあるんだ、絶対そうだ。じゃなきゃ震える手で頭を押さえてる人の説明がつかないもん。
「お待たせ、じゃあ俺の家行こうか。あの人今日はオフみたいだし、きっと家にいるよ……」
上忍待機室に駆け込んできたお母さんは最初は笑顔だったものの、だんだんと暗いものへと変わっていく。
お母さんを先頭にぞろぞろと歩いて、家につく。サクラ姉が大きいと呟いた。まぁ大きい方だろうか。
お母さんが玄関を開けて「……ただいま」と呟いた瞬間。
「うわっ!? ちょっと錺!? 大丈夫!?」
と慌てたようにお母さんが駆け込んでいく。なんだなんだとナルト兄ちゃん達と覗き込めば、お父さんが玄関で靴も脱がずにうつ伏せに倒れていた。背中に黒棒、腰に霧雨が下がっているから任務から帰った直後だったんだろう。
「キャー! お、お父さん!」
私も慌てて駆け寄ると、目を覚ましていたお父さんが「あ、おかえり……」と少しぼうっとしたように呟く。
「……錺、いつ帰ったの」
『多分昨日の朝や。玄関鍵閉めてから記憶全くない』
「何日寝てなかったの」
『あー……一週間か、そこら?』
「またか!」
すっかりピンピンしたように立ち上がったお父さんにお母さんが「前みたいに玄関閉まったら寝オチを何日もとか、もうやめてよね!」と怒鳴る。すまんと一言謝ったお父さんは昔こういうことがよくあったらしい。私知ってる、そういう人のことワーカホリックって言うんでしょ。
『で、カカリと一緒に居るんは第七班か』
「あっ、はい! 春野サクラです!」
「うずまきナルトだってばよ!」
「……うちはサスケ」
『……俺は小原錺、よろしくな』
ナルト兄ちゃん達に気が付いたお父さんは自己紹介をしてから家に招きあげて、私たちと揃って正座をさせた。何が始まるのかと不思議に思う雰囲気の三人には悪いが、私とお母さんは心を無にした。もうやだそうしないと耐えられない。
ごんごんごんごんごん。軽い音のわりに重たく、五連続で続いた拳骨に全員が頭を抱えて、お父さんのお説教を聞く。まあたしかに気を抜いていた場面もあったかもしれないけど。
一通り叱りつけたお父さんは溜め息を吐いて、集まる五つの視線に仕方なさそうに微かに微笑んだ。
『とりあえず、反省しとるみたいやからまあエエわ。飯行くで』
気を持ち直したナルト兄ちゃんの「一楽がいい!」と言う反応に頭を撫でて『俺もしばらく行っとらんし……せやな、一楽行くか』と微笑んだお父さんはやっぱりかっこよかった。
- Re: とある神鳴流剣士の転生譚 ( No.35 )
- 日時: 2018/03/09 00:46
- 名前: マメツキ (ID: HvU.NnC2)
木ノ葉崩し。
先日の中忍試験の時に風影に成り済まして襲撃してきた大蛇丸が起こした大きな事件だ。そのせいで三代目……そして俺の両親が亡くなった。二人とも一応元忍、しかも上忍で父さんが三代目と関わりを持っていたようで、救援に行った際に二人ともそのままやられてしまったようだ。
簪は当然、前々世と前世を持つ俺すらもショックを受けたが、俺はクシナさんに言われたいつも胸に留めている『亡くなった人の分まで生きる』と言う言葉があったからそこまでだったのだが、問題は簪だと思っていた。思っていたのだけれども。
……なんか、自分で整理をつけて「父さんと母さんの分まで強くなります、兄さんを抜かすぐらい強くなります」と宣言してくれやがった。まだまだ抜かさせへん、そうやすやすと俺の経験を抜かされてたまるか。人生二回分やぞ。それに俺も成長しとるんや、もう27やけど。
しかしまあ俺があれだけ葛藤して仕事に逃げた案件をこうもあっさりと……ナルト世代だからなのか次世代だからなのか、どちらとも取れるが最近の子供ホンマ強い。怖い。
タイミング悪く、そして間に合わなかった俺はそれを悔やみ、原作知識あっても修正力には抗えへんのかとちょっと落胆した。この世界で産んでくれた両親は当然として、三代目なんてお祖父ちゃんみたいな存在に思っていたのだ。
俺は今回全く役に立たなかった。一度は大蛇丸と相対したものの「ほんっと憎たらしいくらいの攻撃力ね、錺」と苦々しい顔をされて逃げられた。驚異として見られるのは良いのだが、戦えなけりゃ意味がないからなあ。
はぁと溜め息を吐きながら白衣を揺らして大怪我を負った嫁と娘の病室に向かう。
カカシは暁のイタチと交戦。写輪眼による精神的な攻撃でダウン。カカリは左腕をばっきばきにされつつも大蛇丸に応戦して斬岩剣で腹に傷を付けて来たらしい。頬に切り傷もあった。
今は俺が治療して寝かせている。疲労困憊でぐっすりだ。
「錺上忍! 重傷者運ばれてきてます!」
「錺上忍、ロック・リーの健診を!」
「重傷者来ます!」
「うちはサスケの方にも来てください!」
『わかった、すぐ行くわ。一分待ってくれ』
「お早く!」
現在里は人手不足だ。ただ、それを外に知られるわけにはいかない。他里に攻め込まれる可能性が存在するからだ。最大の攻撃力を持つうちが崩れれば勢力図は大きく変わるだろう。仕事も今以上に増えるはず。砂が木ノ葉に落ち度があるから協力してもらえるのが救いか。
ホンマ勢力関係とか面倒やわあ、と隈になっているであろう目の下を擦って瞬動で二人の部屋を目指した。
窓から飛び出し、壁をたたんと蹴って、とある部屋の窓の縁に足を引っ掻ける。鍵は開いているようだ。からりと戸を開けるとまたか、という目をしたカカシとカカリがベッドの上にいた。
「ほんと、心臓に悪いからやめてよ」
『すまん、忙しぃてな。一分後に重傷者とそのあとロック・リーとうちはサスケを診なあかん』
「分刻み?」
『分刻みや』
目に隈が出来てる、とカカリに言われて苦笑いを返し、手に持っていたクリップボードに鉛筆を走らせて回診をさっさと済ませる。
『ほなな! もうじき落ち着く思うから』
「過労死とかやめてね」
「頑張って、お父さん」
確信。この子らは天使や。
- Re: とある神鳴流剣士の転生譚 ( No.36 )
- 日時: 2018/03/10 02:10
- 名前: マメツキ (ID: HvU.NnC2)
うちはサスケの里抜けとナルトの旅立ち。前者はやっぱりか、という落胆と、後者は頑張れよって感想を抱いた。サスケもナルトも俺が剣聖だってこと知らんのやろうなあ。だって何度か診察したから医療忍者くらいにしか思われてない気がする。
とは言え、ここまで来るとそろそろ俺も動かねばなるまい。二部に関しては暗躍しまくるつもりでいる。表立つつもりでもいる。
それよりも。
自来也様が帰ってきたと思ったらナルトを連れ出して綱手様を連れて帰ってきたことにあぁあったなこんなことといつ見ても若々しい綱手師匠に「私がいない間よくやったよ!」と胸に頭を抱え込まれながら目を遠くした記憶はまだ新しい。いつものベストのせいでわかりづらいけど多分もうカカシのが大きいな、うん。とりあえず「師匠離してください」と諦めながら言うとカカリに絶望したような目で見られた。「おか、おかーさーん!」と叫んだカカリは盛大に誤解したようだ。違う誤解や! しかしカカシにも殴られた。腑に落ちない。
ナルトが旅立って二ヶ月程。脱いだ白衣を腕に引っ掻けて綱手様の修行部屋に顔を覗かせる。と、ちょうど綱手様とサクラが休憩を取っていた。タイミングがいい。
「えっ、錺さん?」
「おっ、今日からかい」
『はい』
目をしばたかせるサクラとカラカラ笑う綱手様に苦笑いを浮かべて『やっと俺の担当していた患者全員が退院しまして』と報告し、久々に着たベストを揺らす。本当に久しぶりやわ……。
「えっ……と、錺さんと綱手様はどういう?」
「あたしの一番弟子! あんたの兄弟子さ! 出来が良くてねえ!」
『光栄っす』
そうだったんですね! と微笑むサクラの頭を撫でて綱手様に向き直る。本題だ。
『本日より通常任務に戻ります。あと何日か休み下さい。俺全然寝てへんです死ぬ』
「はいはい、わかったよ。歴代の木ノ葉で一番の戦闘力を持つアンタに倒れられるとこちらも困るからね。でも、任務は『木ノ葉の剣帝』と『剣聖』の名が廃らないようにきちんとこなしなよ!」
『うぃっす』
腰に下がる霧崎の鈴をちりんと鳴らして部屋を出る。数秒後「えええええ!?」と言う大きなサクラの怒声が聞こえたのは仕方ないと思う。言うてへんもん。
くくくの喉を震わせて笑ってから、トンと軽やかな音を立てて俺はその場から姿を消した。
▽
向かったのはカカシとカカリの待つ自宅の大きな庭だ。今日俺達家族は五代目の配慮で全員休みなのである。ホントいいことしてくれるあの人。
そしてカカリが手に持っているのは見覚えのある巻物。そう、あのエヴァのスクロールだ。
俺が10年に一度開けるとして、カカリはカウントに入らない。そもそも呼び出せるかわからないが、俺には不思議とカカリはちゃんと呼び出す確信があった。
今日はその試しとエヴァが出てきたときの説明をすることになっている。そもそも俺はカカリにスクロールを渡すつもりは無かったのだが、今は亡き父さんが簪に試させていたらしく、その話をカカリが簪本人から聞いたらしい。今のところ呼び出せたのはまだ俺一人だ。簪は出来なかったようである。こればっかりは仕方ない。
ふくれっつらで病室のベッドに居たときはおたふく風邪かと思ったものの、カカリは私もやりたいと……まぁ、そう言うことだ。
『なら、とりあえず出てくるのは怖いのとちゃうから安心しいな。一応カカシとも面識はあるからそこは心配せんでええよ』
「うん。ねえ、お父さんが最後に呼んだのはいつ?」
『んー……10歳そこらやった気ぃするわ』