社会問題小説・評論板
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- 冷たい手
- 日時: 2009/01/27 19:28
- 名前: 蒼嵐 (ID: FCLyGM6a)
クリックどうも有難う御座います^^*
シリアス・ダークからやって参りました
蒼嵐と云う者です。
社会問題系で書くのは初めてですが、
頑張りたいと思います!
若くして母になってしまった
ひとりの少女をえがこうと思います。
*登場人物*
新井 優華
(あらい ゆうか)
※話が進むにつれて増えてゆきます
- Re: 冷たい手 ( No.78 )
- 日時: 2010/04/17 20:53
- 名前: 蒼嵐 (ID: GA2wUosQ)
- プロフ: http://www.kakiko.cc/novel/novel4/index.cgi?mode
あれから数時間たった今、
私は安っぽいホテルの安っぽいベッドの上で、
飽きられた人形のようにぐたりと横たわっていた。
隣には裸のショウゴが眠っている。
タイガとジュンはもういなかった。
私はゆっくりと軋む体を起こす。
三人は無茶苦茶で乱暴な野獣の様だった。
底なしに行為を繰り返した。
そこに、もちろん愛はない。
そもそも愛のある行為を私は知らないんだけど。
シーツの擦れる音が耳を掠る。
振り向くとショウゴが目を覚ましていた。
彼は体を起こしたかと思うと、
私の髪を鷲掴んで自分のほうを向かせ、
噛み付くように口づけた。
そしてまた、堕ちてゆく。
- Re: 冷たい手 ( No.79 )
- 日時: 2010/04/17 21:08
- 名前: 蒼嵐 (ID: GA2wUosQ)
- プロフ: http://www.kakiko.cc/novel/novel4/index.cgi?mode
おとうさん。
おとうさん、どこへいくの?
おかあさんのところ?
え?ちがうの?
……だれ?このおじさん。
やさしいひと?
ドーナツくれる?
うん?ゆうかがたべるんじゃないよ?
おかあさんにあげるの。
ゆうかのおかあさんドーナツすきなの。
あれ?おとうさんどこいくの?ゆうかもいくよ。
なんで?なんでつれてってくれないの?
このおじさんについていくの?
やだよ。ゆうかもおとうさんといっしょにいく。
まって!まって、おとうさん!
やっ……、はなしておじさん!
おとうさん!おとうさん!
やだよぉ!
ああ、そうか。
ショウゴは似てるんだ、あの男に。
自分勝手で愛のないあの男に。
金欲しさに私を売った。
世の中は、最低に厳しくなかった。
私に吹く風は、無情にも冷たかった。
- Re: 冷たい手 ( No.80 )
- 日時: 2010/04/24 18:25
- 名前: 蒼嵐 (ID: 7GPkHSud)
- プロフ: http://www.kakiko.cc/novel/novel4/index.cgi?mode
朝になって、
ショウゴはやっと服を着た。
そして私のスクールバッグからあるだけの万札を取り出し、
「ここの金は払っておくからよ」
と言って、
かははと笑い出ていった。
私はベッドの上で黙ってその背中を見送った。
体中が痛い。
シャワーから流れる湯が温かかった。
そこここにつけられた夜の傷跡が赤い。
とても見せられたものじゃないけど、
どうでもよかった。
いまさら自分の体なんて大事じゃない。
シャワーを終えて制服を着て、
金の分だけ重さを失くしたスクールバッグを抱えて、
足早にホテルを出た。
- Re: 冷たい手 ( No.81 )
- 日時: 2010/07/05 21:14
- 名前: 蒼嵐 (ID: YVEEUR14)
ふらふらと明るくなった夜の街を歩く私に行先はなく、
夜とは打って変わって活気のない街がよく似合っていると思う。
何より「独りになりたくない」という感情が勝る今、私はどこへ行こう。
どこへ行けば救われるだろう。
ふと、愛緒さんの顔が浮かんだ。
彼女なら救ってくれそうな気がする。
また一緒に笑ってくれる気がする。
でも同時に麻倉透のあの顔が浮かぶんだ。
余裕のなさそうで、鬱陶しそうに私を見たあの顔。
虚しくなった。だから頭の中からかき消した。
麻倉透も、愛緒さんも一緒に。
私はふと思い出した。
しばらく行かなかった、
あの場所に行こうと思った。
- Re: 冷たい手 ( No.82 )
- 日時: 2010/07/05 21:38
- 名前: 蒼嵐 (ID: YVEEUR14)
——えっ、嘘。なんで来てるの?
——あんなやついたっけ?
——あの子援交してるらしいよー。
——なんかやばいかも。近づきたくない感じ。
教室に入った瞬間これだ。
私は全部無視して隅の机にスクールバッグを置く。
だいたい予想はついていた。
何か月ぶりかの学校だ。
こう言われるのも無理もない。
やがてチャイムが鳴って噂話もそこそこに
急いで席につく生徒たち。
担任と思しき中年男性が大股で歩いて教壇に出席簿を置いた。
私には気づいてないみたい。
適当に号令を済まして、担任は出席簿を開いた。
「青井ー。天野ー。井川ー…」
当然のごとくスルーされた新井の姓。
「せんせぇー、新井さんきてまーす」
名前も知らない女子生徒がだるっこそうに言った。
不意に目が合った私と担任。
が、担任は「悪かったな」と戸惑ったように言って
すぐに私から視線を外した。
私は机に突っ伏した。
再開された点呼は遠くに聞こえるようだった。
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