社会問題小説・評論板

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

冷たい手
日時: 2009/01/27 19:28
名前: 蒼嵐 (ID: FCLyGM6a)

クリックどうも有難う御座います^^*

シリアス・ダークからやって参りました
蒼嵐そらと云う者です。

社会問題系で書くのは初めてですが、
頑張りたいと思います!

若くして母になってしまった
ひとりの少女をえがこうと思います。


*登場人物*

新井 優華
(あらい ゆうか)

※話が進むにつれて増えてゆきます

Re: 冷たい手 ( No.73 )
日時: 2010/03/29 18:05
名前: 蒼嵐 (ID: QT5fUcT9)


ひとしきり騒いだ。
笑いが絶えなかった。
それは確かに楽しいと感じられる時間で、
ずっと続けばいいのに、なんて、
考えるべきではないことを考えてしまった。

「優華、起きて。公園着いたよ」

運転席の麻倉透が私を揺り起こす。

「……優華?」

私の両手のなかに冷たい左手。

「……帰りたくない」
「こんなに夜遅いのに?」
「いつもだし」

どうしてこんなにも強情になるのか、自分でもわからなかった。
ただ、この冷たい手を離したくなかった。

「んー、また来ればいいじゃん。愛緒も優華のこと気に入ったみたいだし」

空いている右手で私の髪をすく。
私は首を横に振る。

「やだ」
「言うこときかない子は嫌いだな」

その手と同じくらい冷たい声だった。
麻倉透は私の手を振り払う。
外に出て、車の前を通って助手席側のドアを開けた。
そして私の腕を掴んで車の外に引きずり出した。

「ちょ……痛っ」

言い終わるより先に私の呼吸を奪う麻倉透の唇。
深かった。長かった。乱暴だった。
頭がおかしくなりそうな感覚。
それに解放されたかと思うと、突然突き飛ばされた。
その場に尻もちをついて、きっと睨み上げた麻倉透の表情は
今までに見たこともない余裕のない表情だった。

「……お願いだから帰ってくれないかな?」

指が綺麗な手で顔を覆う麻倉透。
そしてまた、言葉をつなぐ。

「あまり入れ込まないでくれ。困るんだ。お前みたいな援交女、俺は嫌いだ。つけあがるんじゃない。近づかないでくれ。鬱陶しい」

口調を変えて話す麻倉透の言葉の後半は、
ほとんど耳に入ってこなかった。
馬鹿みたいに涙が出た。

「お前に声かけたのだってほんの気まぐれだし、本当は愛緒の所にも連れて行きたくなかった。取り返しのつかなくなる前にさっさとお前の前から消えればよかった」

信じられないという気持ちだけ、とめどなくあふれてくる涙。
全部、嘘?
笑ってくれたことも、笑わせてくれたことも?
助けてくれたのだって、海に連れて行ってくれたのだってただの気まぐれ?
麻倉透にとって私は何だったんだろう。
暇つぶし?オモチャ?ゲーム?

「もう、俺は優華の前には現れないよ」

去ってゆく背中。
かすんでいる後姿。
まるで何もなかったかのように。
幻のように消えてゆく。
私はただ小さな子供のように、涙を流すことしかできなかった。

「お?カノジョなんか見たことあんね」

後ろから声が聞こえる。
振り向くと男が一人。

「何何?カレシに振られたのかぁ?」

この男見たことある。

「俺についてこいよー。イイコトいっぱい教えてやるぜ?」

いつか私を襲った三人組のうちの一人だった。

「…………」

私はスクールバッグをたぐり寄せ、中から万札を掴み、男に差し出した。

「……私を独りにしないでよ」

そうこなくちゃ、という風に、男は唇をゆがめる。

「今日は素直じゃん。かーわいーい」

男に支えられて私は立ち上がった。

 

Re: 冷たい手 ( No.74 )
日時: 2010/04/02 09:32
名前: 菜野 (ID: SW6tVdsd)

た…たいへんだぁ…
こ…ここに…天才がいますっ!!!
あ…はじめまして、菜野ですっ!!
更新楽しみです☆

Re: 冷たい手 ( No.75 )
日時: 2010/04/08 19:23
名前: 蒼嵐 (ID: GA2wUosQ)

 
→菜野さん

はじめまして^^*
読んでいただいてありがとうございます!
天才だなんて恐れ多いです><
まだまだ未熟者なのです><
更新がんばります!
 

Re: 冷たい手 ( No.76 )
日時: 2010/04/08 19:42
名前: 蒼嵐 (ID: GA2wUosQ)


男はショウゴと言うらしい。
それ以外は自らについて何も語らなかった。
私は今、ショウゴの運転するバイクの後ろで
どこに連れて行かれるのかもわからないまま
耳元で風を切る音を聞いていた。

これから向かう先には、
きっと他二人の男も待っているんだろう。
この間のことを根に持って起るだろうか。
それともショウゴの様に楽観的に受け入れるだろうか。
どっちでもよかった。
どうせ私はまた汚れるんだ。
汚れたものが汚れたって何も変わらない。
だったら真っ黒になろう。
最低になれば楽になれる。
そしたら誰も寄り付かないでしょう?
「離れたくない」なんて絵空事、
描く猶予もなくなるでしょう?

バイクは徐々に速度を落とし、
ゆるやかな弧を描いて夜の街へ進んでゆく。
 

Re: 冷たい手 ( No.77 )
日時: 2010/04/08 21:08
名前: 蒼嵐 (ID: GA2wUosQ)
プロフ: http://www.kakiko.cc/novel/novel4/index.cgi?mode


「ショウゴおせぇよ。何してたんだ?」

案の定、この間の二人の男もいた。

派手な音楽が大音量で響く。
踊る者もいれば、
酒におぼれる者もいる。
二人が座っていたのは二階の個室。
空いたグラスと煙草の吸殻がテーブルの上を埋めている。

「わりー。そこの自販機マルボロきれててさ」

ショウゴはかはは、と男たちに笑う。
私はそんなショウゴの背中の後ろで立っている。

「そんなことより、見ろよ。拾いモン」

ショウゴは左に一歩ずれた。
しばらくぶりに、男たちの前に姿をさらした。

「おいっ、そいつこないだのやつじゃね?」
「まじかよ、お前なんで一緒なんだよ?」

男たちは唾を飛ばしながらショウゴに詰め寄る。

「かはは。俺の魅力でイチコロよー」

後ろからがばっと抱きついてくるショウゴ。
開けまくった耳のピアスが肌について冷たかった。
私はそれを振り払った。

「何が魅力だアホ」
「嫌われてんじゃん、ショウゴー」
「愛情の裏返しってやつだよなっ、優華」
「へー、優華っていうんだ。オレ、タイガ」
「おれ、ジュン。よろしくねー、優華ちゃん」

剃り込みを入れた坊主頭がタイガ。
背の高い金髪がジュン。
そして、顔中にピアスを開けているのがショウゴ。

「じゃ、さっそく、ホテルでも行っちゃいますか」

三人は私に視線を向け、にやりと唇を歪めた。
 


Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19



小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


作家プロフィールURL (登録はこちら


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大 7000 文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。