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【銀魂】腐小説おきば
日時: 2014/03/25 23:22
名前: もるたん (ID: T8WGJY2W)

銀魂の腐小説おきばです。

オリキャラも出ます。

長州寄りの話が多くなるかと思います。。。

Re: 【銀魂】腐小説おきば ( No.1 )
日時: 2014/03/25 23:23
名前: もるたん (ID: T8WGJY2W)

 小夜、という女子がいた。塾で一番の美人と評判で、塾で二番目に頭が良かった記憶がある。15だか6だかの時に郷の豪商に嫁ぎ、銀時が出奔する時に腹がでかくなっていた。今は、3児の母だと言う。攘夷だ戦だとは無関係に、小夜は商家の若女将としてあくせく働き、ようやっと暇ができたから、江戸見物に来たのと笑った。目尻に刻まれた皺は、まだ20代とは思えない程深く、一方で平和の証のようにも見えた。
「でも、ここで、銀時さんに会えるとは思わなかったわ」
 強引に連れ込まれた子洒落た喫茶店で、小夜はアイスコーヒーを口にした。昔は男も女も皆関わりなく、“銀時”だの“小夜”だのと呼び合っていたのが、10年経つと“銀時さん”になるのかと、銀時は内心、関心している。こちらはどう呼んだら良いものやら…と、ぼんやり悩む。
「祖母が亡くなってね、他に身寄りが無いものだから、私が遺骨を受け取りにきたのよ」
 ついでだから江戸観光でもしておいでと旦那に言ってもらったのだそうだ。
「あの人、一人じゃなんにも出来ないのよ。だから1週間分の着る服と、3日分のご飯と、残り4日分はお義母さんに頼んで、下の子の世話はお姉ちゃん逹がやってくれるの」
 女の子はやっぱり良いわねと言われるが、銀時の家ではどちらかと言うと“男の子”の方がなんでもやってくれてありがたい。——ので、銀時は曖昧に頷く。
 小夜の亭主は小夜より30も年上で、当時、小夜の家は貧乏を窮めていた為に、亭主方の熱望により成った婚礼を“身売り”だと噂する者が多くいた。小夜の両親は小夜が嫁して程なく姿を消してしまい、天涯孤独(実際には当時はまだ“祖母”が生きていたわけだが)となった。皆が憐れむ中でも、胸を張って生きる小夜と、小夜の嫁ぎ先は、人心が落ち着かない世の中にあって、次第に尊敬を集めるようになった。
「…小太郎さんは元気?」
 些か唐突な話運びが、
(……。)
 却って小夜の気持ちを表していて、
「——え?」
 銀時はとぼけた。
「小太郎さんよ。銀時さん逹が“ヅラ”って呼んでた——」
 ほんのり上気した頬に、
「ああ」
 銀時はニヤリと笑う。
 当時、小夜と小太郎が学級委員みたいな役回りで、男子だの女子だのを意識し始めた教室で比較的よく二人は一緒にいた。小夜が小太郎を好きとか小太郎が小夜にコクったとかでからかわれていても、二人はあまり相手にせず、たまに一緒に帰っているのも銀時は見ている。当時銀時は“ヅラは誰も好きにならない”と固く信じていたので、小夜の片想いに小太郎が付き合ってやっているのだろうと、勝手にそう理解していた。
「呼ぼうか?」
「い、…いわよ。小太郎さんだって忙しいでしょうし」
「まあ、頼まれても出来ないけどね」
 連絡先知らねーし。
「……」
 一瞬目が点になってから、銀時から目を逸らし、幾分いじけた表情を作って
「…あっそ」
 アイスコーヒーを含む。大きなガラス窓から往来を見つめ、
「同じ江戸にいても、会わないものなのね」
 多くの人が行き交う姿に感じ入った様子で、
「私、小太郎さんが江戸に行ったのは、貴方に会うためなんだと思ってた」
 あてが外れた、と言いたげにため息を吐く。
「銀時さん、今幸せそうだから、小太郎さんの気持ちを受け止めたんだと思ったんだけどな」
 小夜の視線が銀時に戻り、
「せっかく私が身を引いたのに——」
 いたずらっぽく、笑う彼女は、
「彼は、いつまで経っても思いきりが悪いのね」
 世の中の母親がよく持つ、強さと無知と優しさとで、男をくるむような笑顔で、
「銀時さん、いつか、もし、小太郎さんと再び会う日が来たら、今度こそきっと小太郎さんは覚悟を決めて貴方の前に立つ筈だから、どうか、きちんと話を聞いてあげてね」
 私、銀時さんのことずっと好きだったから、銀時さんにも小太郎さんにも幸せになって欲しいの。と、押し付けがましい独り善がりな願いを悪びれることなく言う女は、男が決して敵わないしなやかさを持っている。
「——小夜、」
 再会後初めて、銀時は女の名を呼んだ。
「ヅラは、俺と一緒に生きていく事は出来ないと、」
 銀時は初めて、女と視線を合わせた。
「だから死ぬのは俺に任せると、——」
 初めて、女の無神経を嘲笑った。
「——お前の言う“幸せ”は、ヅラが俺に殺される時なんだけど、」
 女は、初めて、“違う世界”を垣間見た恐怖を感じているようだった。
「その時、俺は幸せを噛みしめながらお前の台詞を思い出すよ」
 ガタンッ——と、大きな音に、他の客が振り返り、
「小夜、」
「ひッ…!」
 もう1度呼んだ、銀時の声をひどく怖れ、女は走りだす。扉の開閉に合わせて鈴の音が店内に響き、周りの視線が扉と銀時を交互に見、——銀時は店内をひと眺めして、頼んだっきり一切手をつけていなかったアイスコーヒーに砂糖を3袋入れ一気に飲む。
(甘…)
 口の端を伝うコーヒーを拭い、銀時は席を立った。

Re: 【銀魂】腐小説おきば ( No.2 )
日時: 2014/03/25 23:59
名前: もるたん (ID: T8WGJY2W)

 天人を斬る事に抵抗を感じ始めた頃——小さな勝利を重ねながらも大局では負け続け、自分達の戦う意義を見失い掛けた頃——小太郎だけが迷いのない真っ直ぐな剣を振い戦い続け、真っ直ぐな思考で戦略を練っていた。

 辰馬が、戦線から退く事を告げられた時、銀時の本音の1割くらいに、
(——先越された)
 と言う思いがあって、それで自分が戦いに嫌気が差していると、ようやっと気づいた。だから、銀時は“最後の大敗”の後、仲間の元に戻らなかった。あの時気付かなければ、今も、死にたいような気持ちで重い刀を振り回し続けていたかも知れない——。

 辰馬の晴れやかな宣言に幾分ささくれた気持ちで、その夜、銀時は小太郎の元を訪れた。
「——まだ寝ていなかったのか」
 小太郎はその日夜番だったので、就寝があと2時間程先だった。銀時は当番で無い為、本来ならば寝ていなくてはならない。
「辰馬がヤめるってよ」
 咎めるような視線を無視して、勝手に話始める。
 小太郎の黒い瞳は闇夜でこそ光を帯びて、他人を惑わす。いくら注意してやっても理解できない様子が、とても腹立たしい。
「人を斬っても未来が無いってさ」
 本当はもうちょっと違うニュアンスだったかも知れないけれど、概ね外れてもいない筈だ。
「今回の幕府の方針発表で、おんなじような事言ってる奴が結構いるな」
 今まで“天人vs攘夷志士”の構図が主で、応援しない代わりに取締りにも積極的に関わらず、どっちにも阿る様な態度を取っていた幕府が昨日、突然“過激派掃討”を決定した。テレビだのラジオだのが一斉に報じたその情報に、幕府の思惑通り“過激派浪士”達は衝撃を受けた。傷ついても疲れても腹が減っても“侵略者を倒す”と言う大義にぎりぎり支えられて戦っていた兵士逹が、裏切られた思いと同国人を斬るかも(斬られるかも)知れない恐怖とで、剣を捨てようかという話がそこかしこで囁かれていた。
「高杉なんかは、それ見たことかみたいな態度取ってるけどね」
 松塾門下は、そもそもの発端が松陽の処刑であるので、その判決を下した幕府連中を快く思っていない者が多く、今回の発表でも動揺するどころか師の仇を討てると発奮する者までいた。
(——ただ、コイツは、以前と変わらない…)
「“私”を捨てぬから、そうなる」
 低く、暗く、呟く。小太郎の声は静かに鼓膜を震わせ、この声を聞くといつも、脊椎と恥骨がむず痒くなる。
「我々には大義がある。他人に理解されぬからと言って捨て去るのならば、もともと我が身可愛さに剣を振っていたのだろう」
 “捨私”は、小太郎のもっとも好きな言葉で、小太郎のもっとも尊敬する男が授けた呪いである。
 銀時は、この言葉を聞くと斬り刻みたくなるので、
「テメエと禅問答する気は無ェよ」
 夜露に濡れた草っ腹に尻を降ろした。銀時に言わせれば、“大義”なんてのはそれぞれが勝手に思い描く、“理想の未来”の、一番耳触りが良い部分だけを大袈裟に強調したものに過ぎない。それがこの集団では——と言うか、数年前までの世間では——“攘夷”=天人に侵略されない事=天人を追い出す事=天人を殺戮する事、だったのだ。
「世間の目が変われば、言葉の響きも変わってくるってもんよ。それが浮世って奴さァね」
 いつだったか忘れたが、大分昔に死んでしまった仲間が、酒の席でそんなことを熱く語っていた。
「たった10年前、攘夷なんて言葉は新奇で気味が悪くて、凡人共は近付きたがらなかったんだぜ。それが今や立派な大義だ。攘夷っつーだけで金持ち共がお布施よろしく金を寄越して来るんだ」
 奴は、発想も顔つきも下世話で下品だった為、死体が見つかった時には仲間に殺されたのではないかとも噂されたが、今振り返れば結構先見の明があったのではなかろうか。
「俺達凡人にとっちゃ、私利私欲も大義も同列なんでございますよ」
 尻がじわりと濡れてきて気味悪い。くしゃみが出そうなのを堪えて、
「…お前は、さ、味方がいなくなって、味方が敵になって、お前一人立ち向かう——嬲りものにされて膾切りにされて嘲笑われて——それでも、テメエは、“無私”なのかよ」
 感情が無いのか、感情を殺すのか、感情を大義で包むのか、なんだかよく分らないがそれは、何処か死人めいていて、
「いつまで経ってもムシムシムシムシと、」
 ぷちりと、細長い草が切れ、掌に切れ端が付く。
「死人の言葉に囚われやがって、テメエは、」
 つん、と、草の臭いが鼻をつく。
「死んでから後悔しても知らねーからな」
 なんだソレ——と、言ってて自分で情けない。これじゃあまるで、喧嘩で母ちゃんデベソ的な負け惜しみを言うガキである。
 草の切れ端を叩き落として、また、ぷつりと草を切る。青臭い臭いは、とても不愉快だった。
「——銀時、」
 銀時の台詞が終わるのを待っていたかのように、小太郎が口を開いた。
 銀時は、訳も無く睨みつけるが、
「最近、戦が終わる毎に、貴様は一瞬疲れた表情を見せるな」
 責めているでも憐れんでいるのでも無い口調で、
「肩の力を抜くように大きく息を吐いて、視線を落とし、歩足を緩める」
 闇夜に相応しい静かな声を、
「ちらと後ろを見、敵影が無い事を確認してから、ようやっと俺を見る」
 小太郎は紡ぐ。
 月夜を背にした小太郎の顔は、よく見えなかったけれど、
「そうして少し、貴様は笑うんだ」
 付き合いの長さのお蔭で、どんな表情か鮮明に分かる。
「俺の心は、それで満たされる」
 鮮明に、分かってしまう。
「後悔などせぬさ」
 ざわ、と、風が青臭い臭いを吹き飛ばし、雲が月を覆い隠し、銀時は小太郎の足を払った。
「貴様…っ」
 小太郎が刀に手を掛ける直前に銀時は尻を上げて、切先を寸前で避けた。
「じゃあな、ヅラ」
 と言う銀時も、
「早く寝ろ、馬鹿者」
 と言う小太郎も、心の中に10年前を描いていて、素直になり損ねた自分達を苦笑している。
(けれども、後悔はしてない——か…)
 ならばきっと、10年後も、後悔はしていないんだろう。
「人生なんて、後悔だらけだって言うけどねえ、よくよく見れば愛しい過去ばっかりなんだよ。だから、俺は、こんなクソみたいな人生だったけど、後悔はしねぇんだ。クソ人生万歳だ」
 戦場で片腕を無くし出血が止まらないにも関わらず、いつまでも口数の減らないその男が煩わしくなって、銀時は、男の首を刎ねた。
(ああ、そうか——)
 あの男を殺したのは銀時だった。
 ふう、と、息を吐く。息を吸う。生臭い草の香りに顔をしかめて、それから、銀時は一つくしゃみをした。


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