BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
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- 【銀魂】腐小説おきば
- 日時: 2014/03/25 23:22
- 名前: もるたん (ID: T8WGJY2W)
銀魂の腐小説おきばです。
オリキャラも出ます。
長州寄りの話が多くなるかと思います。。。
- Re: 【銀魂】腐小説おきば ( No.28 )
- 日時: 2014/05/09 22:05
- 名前: もるたん (ID: T8WGJY2W)
蔵七は、どちらかと言うとお通よりさっちゃん派で、けれどもダントツはむっちゃんだ。神楽は年齢的に圏外としているがイザとなったら理性を保つ自信はあまり無くて、妙や九兵衛は可愛いなあとは思うけど少し遠い存在な感じがする。月詠日輪は——年増は、趣味じゃない。否、むっちゃんなら年上でも良い。おばあちゃんになっても良い。そのクールな物腰と少しハスキーなボイスが堪らない。そんな人間に私はなりたい。否否成りたくない生りたくない。そう言う事じゃなくて、あの鉄面皮の下に隠されているであろう乙女心とか変態な趣味とか妄想するとドキドキすると言うか剥がしたくって辱しめたくって堪らないと言うか、溜まっていくと言うか、妄想が暴走して爆発5秒前と言うか…。
それなのに。嗚呼そーれーなーのーにっ!!
「最近むっちゃん見ないねえ。体の具合が悪いのかな?」
「どちらかと言うと、姐さんの頭の具合が悪いんだと思いますよ」
俊介はにっこり笑って答える。
- Re: 【銀魂】腐小説おきば ( No.29 )
- 日時: 2014/05/13 21:16
- 名前: もるたん (ID: T8WGJY2W)
洗濯機の影に隠れるようにして、それは転がっていた。今の時代、別に女でも男でも装けて不思議では無いが、女の物だろうと銀時は思った。攘夷の連中では無いだろうし仕事相手では無いだろうし同僚だろうが仕事相手だろうかこの家で“寝れ”ばふと落としてしまう事もあるだろうが、これは、
「なんつーか、わざと置きました、みたいな臭いがしたんだよね」
単に小太郎と“寝る”事が目的の奴は、あんな面倒な事しないだろう。
「ああいうのって、ヅラの前では物分かりの良いフリしといて頭ン中では独占欲ドロドロ、みたいな奴がするもんだろ」
そう言うと、
「銀さんみたいな?」
鏡の中の女は微笑った。
「俺はあんなまどるっこしいヤり方はご免だね。ヤるなら力づくよ」
鏡に向かって、銀時は力瘤を作って見せた。
「そういう力が無い女の仕業だって?」
鏡の中で、女の顔がだんだんと白くなっていく。真っ白に塗れていくその顔は温かみが感じられず、つい先刻喉を鳴らして銀時を呑み込んだ熱い生き物とは別モノだ。
「…と、ゆうか、」
銀時は鏡から目を逸らす。
「ヅラの“心”が欲しいって事だろ」
銀時自身は、ずっとずっと昔に求めて、諦めた。
「ヅラはさあ、無理なんだよ。壊れちゃってんの、そこら辺」
そこら辺を壊しちゃった一因は銀時にもあるので、責めたりは出来ないのだけれど。
(…まあ、泣いてもすがってもダメなものはダメってヤツで…)
以前そんなフレーズを何かの歌で聞いたなあ、と思っていたら、
「妾は、そうは思わないけどねえ」
女の声に視線を戻すと、女の唇に毒々しい紅が引かれ、女はにやりと妖笑う。
「銀さんから聞く限りじゃ、少し鈍い所や常識外れな所はあるんだろうけれど愛だの恋だのが全く分からないって感じじゃあ無いよ。単にズレてるだけさ」
上げていた髪を下ろし、梳かしはじめる。
「お互いズレちまったまま大人になったのが敗因さね」
大量の髪の毛を器用に頭上で巻いて、スプレーを掛けると
「敗因って…」
「そのヅラって人、銀さんに恋愛感情無いと思うよ」
生け花みたいに固まる。何度見てもこの工程は不思議だ。
「……」
で、今なんて言ったんだっけこの女。
「銀さんの片想いなのよ。ずっと」
「……」
なんで、こんな、何度か寝ただけの女にそんなことを断言されなきゃならないのだ。
「怒った?」
女は鏡台から離れ、衣装掛けから真っ赤いドレスを出し、羞恥のカケラも無くガウンを脱ぐ。何度見ても薄桃色が美しい女の肌に見惚れて、一瞬沸いた悪感情もすぐに霧散し、銀時はドレスのファスナーを上げるついでに女の項に口付けた。
「ありがとう」
女はにっこり笑って銀時から離れ、再び鏡台へと向かう。
宝石箱のネックレスを付け、同じ箱から小さいイヤリングを取り出し——
「銀さん、これ」
銀時に向けて振ってみせたそれは、
「——あ、れ——」
イヤリングではなく、
「それ…」
一昨日小太郎の家で見た赤いピアスで、
「——え…??」
「この前、銀さんの服に付けといたのよ。まさかそういう風に転ぶとは思わなかったけれど、まあ、これで良かったのかも知れないわね」
そう言って、派手な化粧と派手な髪型と派手な服には全く似合わない小さな赤いピアスを右耳に付ける。
女は勝手に納得しているが、銀時は疑問符でいっぱいだ。
「ど——」
——ゆこと???
「ふふ。」
初めて、女は銀時から目を逸らしたが、すぐに戻し、
「妾は物分かりの良い女じゃなくて独占欲ドロドロの方の女って事」
「——…」
「それでも良ければ、これ、」
と言ってピアスに触れ、
「返しに来て」
女の表情は少し不幸そうでとてもとても欲情を誘ったけれど、銀時は、やっぱり、その細い体を抱きしめる事はできなかった。
- Re: 【銀魂】腐小説おきば ( No.30 )
- 日時: 2014/05/16 21:43
- 名前: もるたん (ID: T8WGJY2W)
十四郎には、夢がある。
朝日が部屋の中を明るくし、意識が表層に昇ってくるのを感じながら、自分の体にぴたりとくっつく温もりを感じる。右腕には愛する人の小さな頭。眩しさに眩まないよう、ゆっくりと目を明ける。十四郎の覚醒を察したのか偶然なのか、愛する人は十四郎の腕の中で小さく伸びをし、それから胸元に隠れていた顔を上げ二人は目が合いどちらともなく
「おはよう…」
まだ寝ぼけた様な顔で、愛する人は十四郎にキスをする。
「——って、違えェェェ!!!」
なんだコレなんだコレなんだコレ!???
「総悟ォォォ!?!?」
布団からあたふたと逃げ出て部屋の隅で震えている十四郎に対して、総悟はのんびりと布団の上に胡座を書き、欠伸する。
「なんでぇ、土方さんの夢を叶えてやったってのに」
欠伸混じりに言われても有り難みが無い。
(——じゃなくて!)
「服…お前、服…はっ俺!?…着てる。じゃあなんでお前…」
欠伸が終わると、総悟は大分普段の雰囲気が戻って来、極悪な顔付きで口の端を上げ
「土方さんがヤったんじゃないですかィ。服も体もボロボロでさ」
何をォォォォォォ???!!
——これが、午前6時02分。
現在、午前8時12分、
「いや、そんな事懺悔されても。俺別に許すとか許さないとか無いよ。まあそのカノジョ、えーと総悟くんだっけ?彼女との貞潔を守りたいからもう別れてくれってんなら、せめてもう一発ヤらしてほしいけど。おねいさーん、白玉サンデー追加で」
24時間ファミレスのデナーズにて、
「俺、別に責任取って結婚しろとか言わねえんで。土方さんの良い様にして下さい。そこのメスブタ、冷麺持ってきな」
十四郎、総悟、銀時、
「はっはっは。トシはモテモテだな。羨ましいぞコノぉ〜。あ、ボクの日替わり和風膳、まだですかね」
——近藤勲?
「何で近藤さんが居るんだよ!?」
「俺は総悟の保護者代わりだからな。はっはっは」
年頃のガキが色恋沙汰に親同伴で来るかよっ。
「土方さん、近藤さんを責めねえで下せえ。最近志村の姉さんに殴られすらしなくなって元気が無かったもんで、つい連れて来ちまったんでさ」
そんな理由で誘ったの?
「はっはっは。そうなんだ。総悟から面白いものが見られるってな」
そんな理由で付いて来たの?!
「いやー、なんかボクお邪魔かな。白玉サンデーお替わりしようかと思ったんだけど、止めにして帰った方が良いかな」
「違う違う違う邪魔なのはこっちッ」
「あ、そうなの?じゃあ白玉サンデー追加で」
「はっはっは。遠慮するな万事屋。俺達の仲じゃ——あ、その日替わり和風膳ボクの……………」
「近藤さん、俺の冷麺で我慢して下せえ。オイそこの下僕、マルゲリぃタピザ持ってこい」
…なんか、こう、
「お前らちょっとメシから離れてくれねえかな?!」
「……」
「……」
「……」
3人は、ピタリと動きを止めて、数秒間十四郎を見つめた後、
「おねいさーん、マヨネーズ!」
「おい家畜、灰皿が無えぞ」
「あ、取り分け用の皿いただけませんか?10枚くらい」
「ちがぁぁぁぁう!!!」
こんなに話の通じない子逹だったっけ?それとも化学反応的な何かなの?原子爆発的な何かなの?
運ばれて来たマヨネーズを握りらされても煙草をくわえさせても皿に白玉(蜜もソフトクリームも付いてない)と冷麺とピザ(30分の1)を置かれても怖い顔で固まったままの十四郎に、
「…ちっ。しょーがねえなあ」
銀時は頭を掻き掻き立ち上がり、のったらした足取りでテーブルを離れた。
(何を、…)
してくれるのかと思いきや、——数分後、
「はい、銀さんスペシャルミックス」
「ドリンクバーかよ!」
しかもなんか色変におい変味——は、
「何だコレうまッ」
「だろ?銀さんなんて本気出せばこんなもんだよ。ねえ総悟くん?」
すると総悟が滑らかな手つきでピザとマヨネーズをもみの木の如くデコレートしリンゴをあしらい頂点に白玉を乗せ最後に懐から取り出したバーナーで炙る。
「ミラノ風ブッシュドノエルでさ」
それはミラノに失礼なのでは…と心配しつつ、一口、頂くと
「う——っっまっ!良い香り!俺熱いマヨネーズは邪道だと思ってたけど美味いわ!」
マヨネーズの新しい扉が開いた、と感動してたら近藤が、今来たばかりの和風膳の納豆をめちゃくちゃにかき混ぜるかき混ぜるかき混ぜるかき混ぜるかき混ぜるかき混ぜるかき混ぜるかき混ぜるかき混ぜるかき混ぜるかき混ぜるかき混ぜるかき混ぜるかき混ぜるかき混ぜるかき混ぜるかき混ぜる…
「はい☆トッシー(≧ω≦)b」
「炭化してるじゃねーかッ!!!」
どんだけ摩擦熱だ!
「あ、そっか。お妙さんのアレは掻き混ぜ過ぎか!すぐに伝えてやらねば!お妙さーーーん!!!」
勲退場。
(本気で何しに来たんだあの人は…)
「あ、妙で思い出した。レンタルビデオ返さないと。つーかその前にもう一回見ないと」
銀時退場。
(妙とどう関係あるんだよ?!てか白玉何個食ったんだよ!!)
「じゃ、土方さん。俺仕事なんで」
総悟退場。
(——て、俺も仕事だろーが!)
店を出かけて、気付いて伝票を取って会計台に出すと、某ファストフード並の全開スマイルの女店員が、聞き取りやすい爽やかな声で
「2,007,535円です」
に、にひゃく万?!
「はい。絨毯と天井とテーブルとソファ、あとジュースサーバーの修理代その他諸々が2,000,000円で、ご飲食代が7,535円です」
店員に示された方を見渡すと、ガタガタ震え続けているドリンクバーとそこだけ真っ黒いテーブルとそのテーブルの周りには至る所に納豆の黒い粒、粒、粒…が、
(めり込んでるの!??)
「何アレェェェェ??!!!」
女店員はあくまで笑顔・敬語・真心を崩さず、朝に相応しい爽やかで瑞々しい声で
「領収書、真撰組で切りますか?」
可愛らしく小首を傾げてそう言った。
- Re: 【銀魂】腐小説おきば ( No.31 )
- 日時: 2014/05/30 20:53
- 名前: もるたん (ID: ZlHu.kjO)
昨晩遅く、笹木某の死がひっそりと伝えられた。
笹木は小太郎と同じ部隊にいた五歳上の男で、攘夷戦の折受けた傷が元で右手足が思うように動かなくなり、戦線を退いた。何事にも前向きで単純明快で怖いもの知らずでお節介な笹木は、事ある毎に小太郎を心配し、時に励まし時に叱り時に悪い遊びも教えてくる、よき先輩であった。
江戸に来てから彼も江戸にいる事を知り二度程訪ねたが、両度共妻女しか居らず妻女は曖昧に頭を下げるのみだった。歓迎されない雰囲気を感じて、以来、小太郎から彼を訪ねる事はしていない。昨晩届けられた妻女からの手紙には攘夷戦以降人が変わったようになってしまい滅多に家には帰って来なかった事と、酔った挙げ句の刃傷沙汰で苦しみながら死んだ旨が細い字で書かれ、最後に
「苦しんだ割に死顔は安らかで、やっとあの頃のあの人が帰って来たように思われます」
と結んであった。
午前中に急ぎの用件は片付けて、午後、小太郎はエリザベスに断りを言って家を出た。
笹木の家へ行こうかとも考えたが、あの妻女はそれを望んでいないような気がして止めた。贔屓の店で酒と鰻の蒲焼きと山菜の握り飯を買い、東海道をいくらか上り脇道へと入り1時間程緩やかな坂道を上ると裏烏山が見える。山と言っても1時間歩けば頂上に着いてしまう小さなもので、鹿も猪もおらず木々の手入れをする者もなく使い途も無いが、ただただ烏が多かった。烏は警戒心が強く、すぐ人を襲う為、この山に近づく者は殆どいないと、最初にこの山を目にした時に近在の者から聞いた。
小太郎は道から外れて山の外周を半分近く周り、か細い獣道に踏み入る。直ぐに獣道すら無くなり、生い茂る草木を最小限掻き分け頭の中で大きく弧を描きそれと重なる様に道なき道を進む。八分目くらいの位置に、抉れたような窪みがあり、窪みの底が六畳程の平地になっている。数秒、窪みの縁に黙して立った後、刀を腰から脱いで左手に持ち、小太郎はひらりと舞い降りた。ぐるりと歩きながら平地に散らばる木の葉や腐った木の実やなにがしかの糞を軽く足で払い、粗方きれいになったところで地面に胡座をかき刀を置き、掌大の平たい石を3つ積み上げ持って来た酒と鰻と握り飯を供えて手を合わせる。
数分とも数十分とも取れる時間、目を瞑り両手を合わせ黙祷を続け——近くで、烏が鳴いた時、目を開いた。——視界の端に、男の足があった。
「誰かへの祈りでござるか」
男の声が頭上から降って来るが、威圧的な雰囲気は無い。寧ろ男にしては随分と柔らかい声をしている。
「桂小太郎殿とお見受けする」
そして、古風な物言いである。
「人斬りと呼ばれている仁にしては、狂気がまるで感じられないな」
小太郎は男に聞こえるであろう最小限の音声で応える。
“人斬り”にしろ“警察”にしろ“兵士”にしろ、殺しが生活の一部になっている者は必ず狂気が臭う。男の存在も男の素性も知っていながらここまで連れてきて刀を手放したのは、この男の“無狂気”に興味を持ったからなのかも知れない。
「あらぬ噂を立てられて困っている。拙者は音楽と平和を何よりも大事にしている」
飄々と戯れごとを言う。不思議な男だ、と、小太郎は口元だけで笑った。
刀を帯して立つと、男は足音もさせずに一歩下がった。別に警戒した訳ではなく、会話をするには少々近すぎた為であろう。
「用件は何かな、河上万斉殿」
「用件と呼べる程のものは無いでござる。強いて言えば“誰かへの祈りでござるか”」
先程同じ台詞を聞いた事を思い出す。
「——そうだな」
「誰への」
「…何故、それを聞く」
真意が分からぬ男に笹木の名は出したくなかった。やっと心穏やかに喪に服しているだろう妻女を、“攘夷”に巻き込みたくはない。
「今朝方神田で夫婦の死体が見つかった。医者の所見だと妻が眠っている夫を刺し殺し、自らも命を経った無理心中だと」
「……」
「夫を殺した後、妻が死ぬまでに2〜3時間の時差があるのが不思議だと」
笹木の事なのだろう。そして、空白の“2〜3時間”の間に小太郎へ手紙が届けられた。
「…貴様は、幕府の狗もやっているのか」
「真逆。幕府の狗はその夫でござる。元々は攘夷志士だったが、捕縛され、狗に成って釈放された…」
そうか成る程——と、心中あの妻女の顔と昔の笹木の顔を思い出す。
「その“狗”が、俺と繋がりがあるのではないかと?」
「別にそのような事はどうでも良いでござる。貴殿の様子から、今朝の事件を思い出したまでの事」
本当につまらなそうにそう言ってから、
「拙者が知りたいのは桂小太郎という男」
きらり、と、サングラスの奥の瞳が光ったような気がした。街中で万斉の気配を察してから今までで——初めての、殺気である。
「桂小太郎の奏でる音——」
半歩右足を引いて、背負っているものに手を伸ばす。
(隠し刀か——)
思い、小太郎も柄に手を伸ばしかけ、気付いた。
(ここは——)
烏の山である——。
「ギャッ」
と、万斉に飛びかかった烏が斬られ、小太郎は別の烏を避けながら酒鰻飯を取り突進してきた切っ先に徳利が突き割られ一瞬後、烏がそこへ群がる。万斉の刀が数羽の烏を傷つけながら小太郎の羽織を斬り小太郎は一息に窪みを抜け出した。烏の敵意が膨らみ数十羽が窪みの底へと直下降していく。
(まずいな…)
小太郎は抜刀した小太刀を万斉目掛けて投げつけ一方で握り飯を真上に放り投げ
「万斉!!」
腹から発した声に、殺気が一瞬静止する。
頭上で烏が握り飯を掴んで通り過ぎ、続けて鰻の包みを放り上げ
「ふんッッッ」
気合い一閃、大刀を納め来た道を全速力で戻り始める。数瞬後に万斉の気配と——木々の間に響き渡る烏の羽ばたきが迫る——地面を踏む度に地草に足首を捕まれるような心持ちになり、いくらか息が切れ始め辿り着け無いかと冷や汗を感じた頃ようやっと、——微かな日の光が見えて小太郎は転がるように飛び出した。
数秒後、万斉も飛び出し今にも襲いかかろうとした烏に刃を向けるのを足払いで転がし烏は万斉のヘッドホンを掠め取って山へ帰っていく。山は暫くざわめき、その後すう、と静かになった。
「……」
「……」
小太郎が息を吐くのと同時に、万斉も息を吐き、
「いや参った。ちゃ乱九モデルのヘッドホンを取られてしまったでござる」
最初と変わらず狂気も殺気もまるで無い声で言ったので、小太郎は思わず笑ってしまう。
「俺も昼飯を取られた。楽しみにしていたのだがな」
手を差し出すと、素直に引っ張り上げられて、
「ふむ。それなら良いものがある」
と言って取り出したのは、食べ物ではなく——
「お通ちゃんのニューシングル『とうちゃん食っても腹はふくれねえ』。本来ならば抽選だが、これは当確握手券付きでござる」
益々の空腹を感じるパッケージだが、
「遠慮無く貰っておこう」
党内の若い連中の内、誰か喜ぶ者がいるに違いない。
「まあ、お互い怪我が無くて良かった。では、これで…」
お通のCDを受け取り離れかけた手首を
「…?」
万斉が、掴んだ
「……」
——まま、無言なので、
「何か?」
仕切り直したいのか仕切り直しならば受けようかかわそうか受けるならば場所を変えようか——まで、思考したところで
「晋助に、何か、伝言は…」
全く考え及ばなかった提案に、暫く、黙考した後、
「そうだな…」
小太郎は苦笑しつつ、
「部下の教育はしっかりとするように、伝えてくれ」
応えると、意表を突かれた顔付きで手を離したので、小太郎は黙礼だけして万斉から離れた。
背後で、遠く、烏が鳴くのを聞きながら、小太郎は笹木の言葉を思い出している。
「お前はさあ、頑固だから、死ぬまできっとそんな生き方を曲げねえと思うんだけれども、お前以外の人間がお前のように生きられないのを赦さなくちゃいけないよ」
笹木も晋助も辰馬や銀時も、当時とは違う生き方を選択していて小太郎の敵になったり味方になったり疎遠になったり死んでしまったりしているけれど、
「それでも、仲間は、仲間だから」
やっぱりどれも皆仲間なんだと、小太郎は思う。
「いつまでも繋がっているんだよ」
背後に烏が物哀しく鳴くのを聞きながら、捨てきれなかった言葉はいつか伝えられるだろうかと、小太郎は思う。
- Re: 【銀魂】腐小説おきば ( No.32 )
- 日時: 2014/06/07 21:25
- 名前: もるたん (ID: T8WGJY2W)
「………」
「………」
『………ばぶー』
「じゃ、そゆことで」
「待てィ」
「やだなあ坂田さん、私もう仕事行かなきゃ」
「社会の役に立たない行いを“仕事”とは言わねえんだよバカ七」
「あはははは…」
その言葉そっくりそのままお返ししたい。
「…ちゃんと役に立つヤツですよ。今回は」
「他人に役立つ前に他人に迷惑掛けないようにするのが大人だろーが根暗女」
「あはははは…」
どうしたんだ今日はエラく発言がまともだ。
「ご迷惑は重々承知しております坂田さん。けれども私、もう万事屋さんしか頼るお方がいなくて…」
「こんな時だけ下手に出てもムカつくだけなんだよ。テメエの尻はテメエで拭けや」
「…そこで言うと、その、拭かなきゃいけない当のご本人がこんな感じで…」
「つべこべ五月蝿えよ。とっとと持って帰れコレ」
「無理ですよこんなの!そちらには女手もありますし!!どうか!可愛がってやって下さい!」
「テメエだって女だろーが!」
「無理無理無理私母性本能無いんです!可愛いとか似合わないんです!!」
「似合う似合わないの問題じゃ………あ。」
「………?」
「女手って、神楽の事?」
「…まあ、神楽さんだったり妙さんだったり…」
「そうか。神楽かあ…」
「…?」
「ふーん…」
「…さ、坂田さん…?」
「…神楽はさあ、確かに可愛いモノ好きだし世話好きだし面倒見も良いんだよね。ああ見えて」
「それは良かっ…」
「たださあ、…」
「……は…?」
「…………」
「…さか……」
「神楽さあ、昔可愛がってた兎がいて、ある晩一緒に寝たんだと」
「……はあ…」
「で、なんか夢を見たんだと。朝には忘れてるけど、ちょっとムカつく夢ね」
「…ええ…」
「夢から覚めると、その兎は神楽の胸の中でかっちんこっちんになってたんだって」
「………………………………」
「だからウチは定春レベルじゃないと飼っちゃいけない事になってるんだけどさ……まあ、お前とは古い付き合いだし困ってるのも哀れだしそんなにそんなに頼むんなら引き取るけどさ……」
「……で、…」
「最悪、兎と同じ末路を辿ったとしても、」
「…で、」
「後悔は、しないよね?」
「出直してきますううううう!!!!!」
赤ん坊を抱えて脱兎の如く逃げ出した蔵七と、外階段でかち合ったらしい新八が、リビングに入って銀時に何があったのかと問えば、銀時はニヤニヤ笑って
「ふっふっふ。俺はね、どんな姿しててもヅラかどうか見破れるんだよ。クスクスクス」
「………………………………」
新八は黙って万事屋を後にした。