BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

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【銀魂】腐小説おきば
日時: 2014/03/25 23:22
名前: もるたん (ID: T8WGJY2W)

銀魂の腐小説おきばです。

オリキャラも出ます。

長州寄りの話が多くなるかと思います。。。

Re: 【銀魂】腐小説おきば ( No.33 )
日時: 2014/06/08 22:26
名前: もるたん (ID: T8WGJY2W)

※性描写あります


(1)
 一昨日、妙に通算5001回目のアッパーカットをくらった勲は、ようやく自身の恋の無謀さに気付いたらしい。普段前向きなだけが取り柄の勲だが、いざ負のループに入ると抜け出し方を知らないらしく悪循環に悪循環を重ねどんどんどんどん沈んで行く。そしてそれに比例して、屯所内もどんどんどんどん重暗くなっていく。隊員もどんどんどんどん鬱になっていき………
「もう耐えられないんです!もう無理!もうダメ!!助けて下さい旦那ァ〜〜〜(泣)」
 泣いてすがりつく山崎退に、
「あのさあ、そういうのはさあ、本人同士で解決した方が良いんじゃね」
 耳糞ほじりながら面倒くさい気持ちを全面に出して坂田銀時は応える。
「姐さんには丁ッッ重に断られてます」
「…じゃあ、ゴリラの方を真人間にするしかなくね」
「出来ればとっっくにそうしてますッ!」
「じゃあ諦めるしかないね」
「旦那ぁぁぁぁぁ」
「ぐぇぇぇ!??」
 ——と、銀時と退の不毛な会話とは無関係に、退持参のホールケーキを食べていた神楽が、短く一言、
「銀ちゃん、引き受けるヨロシ」
「神楽ちゃん……」
 退がぱっと手を放し
「げほごほっぐほがほっ」
 銀時は暫く噎せこんだ後、
「ゴリラの矯正なんてウチの仕事じゃねーだろ…って、神楽お前っ…俺のケーキぃぃぃぃ!!!!」

(2)
「まあ、そーゆーワケで、銀時が貴様をここに連れて来たと言うわけだ」
「……はあ」
「貴様が腑抜けようと寿退社しようとどちらでも良いのだがな。客として金を払う分には精一杯もてなすから安心して良い」
「……はあ」
「酒食事って気分でもなさそうだな」
「……はあ」
「なら、ちゃっちゃとやるか」
「…はあ………はあ!??」
 桂に襟首掴まれ放り投げられなんか変に赤い室内の赤い布団の上に転がされて、ようやっと——妙に最後に殴られて以来初めて——勲は意思のある声を出した。
「ちょ…っ、アンタ、桂…!?」
「桂じゃない桂子だ」
「え?別人?」
 確かに女の格好しているし違和感無いし声はちょっとハスキーだがそれはそれでオツと言うかなんと言うか…
「否」
 ばさっと豪快に脱げばそれは引き締まった男の体で、勲の服にも手を掛けられて咄嗟に我が身を守る。
「ちょちょちょ??意味分かんないんだけど?!何で俺ここに???」
「だから言ったろう。貴様を元気にする為に銀時が連れて来たのだ」
「その前にここドコ!?」
「売春宿だな。だから正体は知られない方が良いぞ」
「って言うかアンタはなんでここに?!」
「ウチの人間がFXで大損してな。暫くここで働く事になった」
 軽っ!何その軽い感じ!!
「お、おおお俺でも男抱く趣味は無…」
 女の子とももう何年もやらせていただいてないけど(泣)
「そうだろうな」
 ふわり、と、桂が微笑む。
「え……」
 抜き打ちの笑顔に、服を脱がされまいと力んでいた拳が緩むと
「だから——」
 がばっと全開ついでに両手を布団に縫い付け、
「貴様は身を委ねれば良い」
 ぶちゅううううっと口付けられて、
(な、な、なあああああァァァァァ!!!??)
 最早声も出せない。

「ちょっちょっちょっとアンタ!ほほほ本気!?」
「本気だ」
 勲は桂に向けて尻を突き出すような案配になっている。
「アンタ猫だろ!?」
「誤解だな」
 勲の尻の方から、桂が応える。
「お、おおお俺今日風呂入ってない…」
「奇遇だ。俺も入ってない」
 いやそこは入っとこうよ!と、心で叫ぶ。
「あ、俺今日腹壊してた!下痢ピーピー!!」
「それは懐かしい」
「え゛…ひッ!」
 冷たいモノが、尻に触れる。
「今はこういう便利なモノがあるんだな」
 桂は関心したように言いながら冷たくてヌルヌルするものを勲の尻に垂らして行く。布団に這いつくばって尻だけ桂の眼前に差し出すようにしているので、そのヌルヌルは背中にも縮こまっているアレにも流れて来て、
「貴様、アレだな。小便漏らしてるみたいだぞ」
 言葉攻めとか出来るの!?とか、ツッこんでる場合ではなく、逃れる術を必死で考えているがどこにどう力を入れても頭を上げられないし足も蹴り出せない。どこをどう抑えられてこんな格好になっているのかも、未だ判然としない。勲は今、生まれて初めて恐怖を感じている。
「あ、ああああの、桂さん、ぼぼぼ僕、心に決めたひとが…」
「その女に振られて生きる気力も無くなったからこうして生まれ変わりに来たのじゃないか」
「ちが…ぁうッ!」
 なんか刺さった!(刺さった??)
「一本道も悪くないが、いろんな道を知ってる男もなかなか魅力的だと思うぞ」
「こんな道…ィイッ?!」
 なんか蠢いてる!(蠢く???)
「ふふん。意外と良い顔付きじゃないか」
「な…っひ、あッ、…」
 分かった分かった分かった何されてるか分かった分かりたくなかったちょっとタンマタンマタンマ…
「タ、っあ…あ、ぅうん…」
 嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
「い、ぃいッ…あッ…」
 嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
「はっはっは。そんな姿して貴様、感度良好ではないか」
 いっそ殺してええええ!!!
“——ペロリ”
 と、頬に温かみを感じた後、ふわりと甘い匂いを嗅いで、自分の涙を桂が舐め取った事に気付いた。桂の指は、勲の中で、寸分も動かず静止している。
「——止めた方が、良いかな」
 耳元で囁かれた声は心地好く勲の全身を駆け巡り、勲は何故か火照ってしまう。
「——…そ、れ…」
 桂が覆い被さってきて、初めて分かる。
「欲情してる…?」
 太股に当たる桂のソレが固く、大きく、温かい。
「俺に…」
 ちぅ、と、桂は勲の首筋を吸う。
「そうだな」
 桂は勲の項の髪に鼻を擦り付け、
「貴様は、なかなか——」
 すん、と鼻を啜り
「かわい——」
 突如、
「局長うぅぅぅぅぅ!!!」
「近藤さーん!」
 白煙が室内に充満し、廊下から退の声と屋外から総悟の声がして、ダダンッと襖が開けられる。
 覆い被さっていた桂子は既に勲から離れ、
「無粋な奴らだな。部下の教育はもう少し厳しくした方が良いぞ」
「局長うぅぅぅぅぅ!!!」
 退が勲に飛びつこうとするのを、
「ちょちょちょ退くん落ち着いてよォ。あーもう良いトコだったのに〜」
 銀時が羽交い絞めて止め、
「近藤殿、続きがしたければ銀時に言ってくれ。じゃ、アデュー」
 窓辺でカッコ良く人差し指と中指を額にあててすたっと夜空に飛び立った。遠くで、
「かぁつらあああああぁぁぁ!!!」
 と、何かが爆発した音が聞こえるが、勲にとっては最初から最後まで
「????????????????」
 ——な、夜だった。

(3)
 ——で、1週間後。
「もう耐えられないんです!もう無理!もうダメ!!助けて下さい旦那ァ〜〜〜(泣)」
 泣いてすがりつく退に、
「いやいや良かったじゃない元気になって良かったじゃない仕事に真面目に取り組むようになって良かったじゃない」
 耳糞ほじくりながら銀時は少しずつ出口へと後退していく。
「何で桂なんだ何で頬染めるんだアンタ何て事してくれたんだアアアア!」
「はっはっは……」
 銀時は退を丁寧に立ち上がらせて服を軽くはたき、
「まあ、アレだよ」
 真面目くさった表情で退の肩にぽんと手を置いて——
「ソコの人達全員ヅラの毒牙にかかれば良いんじゃね?」
「テロかああああ!!!」
 ——頭えて退が絶叫した時には、銀時の姿はもう無かった。

Re: 【銀魂】腐小説おきば ( No.34 )
日時: 2014/06/19 21:31
名前: もるたん (ID: T8WGJY2W)

 昔、惚れた女に、月詠は少し似ている。細身の体とか、感情をなるべく出さないようにするところとか、でも意外と分かりやすいところとか、それらが全て愛しいところとか、とてもよく似ている。決定的に違うのは、昔の女は自分を不幸だと思っていて、あの女は自分をそれほど不幸だとは思っていないところだろうか…。昔の女は常に薄暗い印象があるけれど、あの女は柔らかく明るい。
「お前さあ、子ども作れば。良いお母さんになると思うよ」
 久しぶりに飯をたらふく食って些か眠い。銀時は微睡み半分、そう声を掛けた。
「……」
 激しく照れるかと思ったらそうでは無くて、
「子どもは、一人ではできんせん。誰がわっちの夫になりんすか」
 真面目な顔付きで返されて、心中、慌てる。
「…まあ、いっぱいいるんじゃない。キズモノだろうと年増だろうと、お前はいい女だよ」
 ぴくり、と片眉が動くが、ここでも冷静さを失わず、
「今更男にちやほやされたいとは思わぬ。わっちが出会いたいのは、生涯をかけて共に家族を守るまことの伴侶のみ」
 月詠の目付きが、とても居心地悪い。
「ふーん」
 銀時はこれ以上会話を続ける気にならず、ごろりと月詠に背を向けて、目を瞑った。
 暫くして、ぽつりと
「おんしは、どうなのじゃ」
 そう言ったのが聞こえたが、銀時は答えなかった。

 早朝の川っぺりをぶらぶら歩いていると、50m程離れた所で、泳いでいる女がいた。見たことのある色素の薄い髪は、朝日を乱反射する川面の中でゆらゆらと輝いている。天女が水浴びしてるみたいだと感心していたら、ようやっと女が銀時に気付いたらしい。
 銀時が小さく手を上げると、女は川から上がり、裸体のまま銀時の元へやってきた。
「よう、さっちゃん。こんなとこで会うなんて珍しいな」
 銀時が羽織を脱いで渡すと、するりと身に纏う。成る程天女の羽衣は羽衣がすごいのじゃなくて天女がすごいのかと、昔話の一場面を思い起こす。
「銀さんの声を真似たってダメよ。銀さん今女の所にいるの知ってるんだから」
 にこりと、微笑む。そういえば眼鏡をしていないが、一体誰と勘違いしてるのか…。
「よく知ってんね、お前」
「知ってるわ。女のとこ行く日も男のとこ行く日もちゃんと記録してあるもの。お陰で予想まで出来るようになったのよ」
「……すごいね」
 改めて、恐ろしい女だと思う。今も、視力がほとんど無い割に銀時と歩調を合わせて危なげない。これだけ能力が高くて美人で、何故銀時なのだろうと我ながら首を捻りたくなる。
(——否、)
 もう一人、
(今、こいつが、誰かと勘違いしてる奴…)
 そいつも、きっと、あやめにとって大切な奴に違いない。
「お前さあ、銀さん銀さん言うのいい加減止めれば?もういい年でしょ?結婚とか子どもとか、考える時期じゃね?」
 あやめが一瞬、殺気の隠った視線を銀時に向けたので、さすがにバレたかと冷や汗かいたが、
「私、子どもなんていらないわ」
「……そ…」
「銀さんの子どもなら抱きたいしお母さんって呼ばれるのも悪くないかなと思うけど、自分の子どもは欲しくないの。自分の血を分けたモノが自分の死後も存在するなんて、ゾッとするじゃない」
「……う…?」
 バレた訳では無いらしい。
(て言うか、)
「なんつーか、不毛だね」
 あやめの恋は、成就しても成就しなくても彼女に幸福をもたらさない。と言うか、彼女の生き方そのものが、幸せになる事を否定している気がする。
 そんな事を考えていたら、あやめが立ち止まった。
「——ふふっ」
 あやめは、妖艶に笑う。
「銀さんには、私くらいの女じゃないとダメなのよ」
 ふわり、とあやめの体が浮いて、彼女の姿が消える。
「子どもが出来たら教えてね。貰いに行くわ」
 何処からか声が届いて、その後、彼女の気配は無くなった。

 万事屋に帰ると、妙が掃除機を掛けていた。新八も神楽も居ない時、たまに、彼女はこうして掃除だの洗濯だのをやりに来る。問答無用にモノを捨てるし勝手に銀時の寝室片付けるし色褪せするものとかも構わず洗濯してしまうので、感謝した事は無いけれど、足の裏が汚れない床とかふかふかの布団とか新調された下着類とかは有り難い。料理の腕は核兵器的だがその他は完璧な主婦だ。銀時が一番気兼ねしない女でもある。
「新八と神楽は?」
 挨拶もせずに問うと、
「久しぶりの仕事だと言って出掛けていきましたよ。銀さんは行かなくて良いんですか」
 テレビの後ろの配線がごちゃごちゃした所を掃除機の柄を短く持ってもぞもぞとやっている。
「んー。聞いてねえなあ。あいつら勝手に引き受けたんじゃね」
 銀時に向けられた尻は丸々として健康そうだ。
「新ちゃんも神楽ちゃんもまだまだ子どもなんですから、あんまり危険な所へ行かせないで下さいね」
 掃除機の電源を切り、妙が頭を上げた。
「終わった?」
「ええ」
 銀時が掃除機を片付けて居間に戻ってくると、今度は雑巾片手に動き回っている。銀時は居間の入口に留まって、
「あいつら、どこへ行くか言ってた?」
「確か西郷さんの紹介って言ってましたけど…」
 それなら急いで追いつかなくても大丈夫か、と思う。西郷なら子ども相手に無茶な仕事は言うまい。ただ、ここにこのまま突っ立っていても仕方ないから、
(パチンコにでも…)
「銀さん」
「俺ちょっと出掛け…え?」
「神楽ちゃんの事なんですけど、」
 ソファを拭きながら、
「ウチで引き取ろうかと思うのですけれど、どう思われます」
 寸分もこちらを見ないで言っているが、本気らしい。
「どうって…」
「やっぱり血の繋がらない男性と二人暮らしって言うのは、いろいろと困ると思うんです。これから大事な事も経験していくでしょうし」
 生理とかセックスとかか。
「銀さんは…お世辞にもお手本とは言えないでしょう?もちろん素敵なところもたくさんあるのですけれど…」
 フォローされた。
「昼間はもちろん、こちらへ通って、でも最低限読み書き算数は教えてあげたいし、本当の姉妹になれたらって…」
 その感情は姉って言うより母だろ、とツッこむ代わりに、
「そんならさあ、」
 銀時は耳糞ほじくりながら、
「お前が嫁に来れば良いんじゃね?」
 どうせ神楽承知しなかっただろ、と続けると、初めて、妙は銀時を見た。丸く見開かれた瞳は、彼女を少し幼く見せる。
「銀さん——」
 小さな口元は慎ましやかで愛らしい。
「私、——」
 ほんのり赤らんだ頬に手を添えて、
「勲くんと結婚する事になりましたの」
 心から幸せそうに結婚宣言…——え?
「改めて考えてみると、あんなに殴っても突き刺しても死なない人ってそう居ないのではないかしらって、」
 アレはもう人じゃないからね。
「私には、ああいう(サンドバックになるような)人が必要じゃないかなって、」
 今サンドバックつった?
「勲くん、真撰組の子達連れて神谷道場の再興に協力してくれるって、」
 それが目的か。
「だから、道場が再興して勲くんと無事離婚したら、銀さんの元へ来ますね」
 ——え゛。
「それまでに生命保険、入っておいて下さいね」
「…………」
 銀時は静かにそっと戸を閉めて、全速力で逃げ出した。

Re: 【銀魂】腐小説おきば ( No.35 )
日時: 2014/06/26 22:51
名前: もるたん (ID: LOHzKbu7)

—前編—

「それが…」
 と、困ったように、退はこめかみを掻いた。
 現場に来て、退のその仕草の意味を理解して、十四郎は盛大に舌打ちをする。渋谷の端の水田の、稲が青々と繁るすぐ脇で、畦と稲に挟まるようにして、ソレは転がっていた。死んでいるかと一瞬期待したが生きていて、健康的な鼾が聞こえてくる。ソレのすぐ側に退の部下が2名いて、少し離れた畦の入り口に通報者であろう百姓姿の者達が10名程固まっていた。
「手を出して良いものか、判断がつきかねまして…」
 あまりにも無防備過ぎる姿と、若い連中にとってはほぼ伝説となっている剣の腕と、百姓共の目と、近年の真撰組の評判と攘夷派連中の評判を天秤に掛けた結果、内々で十四郎を呼び出す、という結論に至った彼らは、十四郎の姿を認めるとあからさまに安堵の表情を浮かべた。
(侍が、そうマヌケな面を晒すな)
 そういう気持ちも、先程の舌打ちには隠っている。
「何でこんなトコで寝てんだ」
 苛ついたままの口調で問うても、隊士共は首を竦めて答えようとしない。睨み付けそうになるのを堪えて、一つ、息を吸ってから、
「怪我をしている様子は?」
 幾らか声を和らげて、彼らの中で一番年嵩の(けれども顔付きはまだ子ども子どもしている)少年に聞くと、
「怪我——は、無いようです。酒の臭いもしません。その他、薬物の臭いも——」
 だんだんと声が小さくなるのは気に食わないが、退の部下としてそれなりに有能らしい事は分かった。鼻が良いらしい。
「至って健康ってか」
 んなワケねーだろ馬鹿野郎!と、相手が退であれば怒鳴りつけている。怪我も酒もヤクもやって無い奴が田んぼの中で寝ンねしてこんだけ騒いでンのに起きねーワケ無いだろ。
(——否、だから、か…)
 だからこそ、内々に十四郎が呼ばれたのだ。これがこの男の異常なのか平常なのか分からない、と言うことが、今一番の問題なのである。
 十四郎はもう一度小さく舌打ちし、
「退がってな」
 言って、退士達が百姓と十四郎の中間くらいまで離れてから、しゃがみ、銃口を(訓練以外で使った事が無いが)眉間に向ける。
「三つだけ数える」
 反応は無い。
「イチ…」
 反応は無い。
「ニ…」
 反応は無い。
「サン…」
 反応は無い。
“ポン”
 と、舌打ちのような音がして泥が跳ね、——男がゆっくりと目を開いた。
「今の役人は消音装置など使うのか」
 弾道は狙い通り男の頬骨を霞めたが、そうで無くても(あのまま眉間に向けて撃ったとしても)、顔面に穴を開けたまま、この男は穏やかに目を開けるのだろう。そんな妄想を、つい、してしまう。
「煩いと近所迷惑になるんでね」
「そうか」
 男は楽しげに笑う。
「取り敢えず、善良な市民の邪魔になるから——」
 十四郎は立ち上がり、
“ポンポンポンポン”
 適当に足に四つ撃ち込んで、
「おい!」
 背後にいる隊士に向けて、
「近くの病院にぶちこんどけ。後で聴取に行く」
 言われても、すぐには動けない彼らを一睨みして十四郎はその場から離れた。

Re: 【銀魂】腐小説おきば ( No.36 )
日時: 2014/06/27 23:07
名前: もるたん (ID: pOz8vLGm)

—後編—

「いや、それでどうしてここなの」
 銀時は心底面倒くさそうに耳穴に手をやり、小指についた耳垢を吹き飛ばした。
「直にここへ来るだろ」
「なんで」
「勘だよ」
「はんッ」
 銀時は小馬鹿にしたような薄ら笑いを浮かべ、
「刑事ドラマの見すぎじゃねえの」
「毎週同じ時間にドラマ見れる程暇じゃねーんだよ。テメエと同レベルで考えんな」
「じゃあ本気で勘とか言ってんの?キモ〜」
「テメエこそ本気で勘っつったこと信じてんのかよ。馬鹿め」
「だったらなんでここ来てんだよ仕事しろ税金泥棒」
「テメエにゃ分からねえ論理的推理だよテメエこそ働け社会のダニ」
「働いてます〜今日も依頼があるんです〜」
「家賃払って家族にまともなモン食わせて従業員にきちんと給料払って始めて働いてる事になるんだよ」
「新八はアレだからね。弟子見習い的なアレだから」
「そう言って不法就労させてる輩が増えてんだよ。労監に通報すっぞコラ」
「権力を笠に着て脅す人って最低〜〜」
「俺は役人共は嫌…」
「そろそろ良いかなご両人」
「……」
「……」
 音もなく現れた件の男に、銀時は盛大に嫌そうな顔をし、十四郎は嫌味ったらしく口の端を上げた。
「ほら見ろ。俺の勘は当たるじゃねえか」
 女性が見たらドン引きしそうなドヤ顔には構わず、
「土方がここに留まっていてくれて良かった。ついでに銀時にも頼めるしな」
 一人で納得している小太郎は、
「おお。そうだそうだ忘れぬ内に回収せねば。総務が煩いからな」
 ぺり、と十四郎の胸近くにくっついていた小さなシールを取り外し、懐に仕舞う——寸前、
「ちょちょちょ。何だソレ?」
 急いで手首を掴み、黒いシールを取り上げる。
「何って——発信器だが」
 当たり前の様に返され、
「うわー小っさ!これオモチャ?ちょっと握ったら壊れちゃうじゃん」
 後ろから銀時が取り上げ、
「馬鹿め。それは大蛇谷星の最新鋭電波発信器で干渉も反射もせず半径1kmまで通信できるという…」
「あ、壊れちゃった」
「貴様今めっちゃ力入れたじゃん!!」
 イチャイチャ始めたので、十四郎は拳銃を取り出し彼らの足元へ向けて
“パンパンパン”
「——で、のこのこと現れたからには死ぬ気があるんだろうなあ」
 三白眼が八白眼くらいになってる。
「一階のクソババア共に当たってねえかな…」
「これ以上人体に穴を開けたくは無いな…」
 銃口を小太郎の胸元に向け、
「遺言なら聞くぜ。三つ数え…」
「暫くの間、匿ってもらいたい」
「……。」
 一呼吸置いてから、
「“遺言なら”、聞くぜ。イチ…」
「正確には俺自身は匿わなくて良い。俺が真撰組の監視下にあって身動きが取れぬ、という事にしておいて欲しい」
 視界の下隅で、小太郎の足下に血溜まりができている。
「…それが“遺言”でいいかい。ニ…」
「礼ならば心配するな。『真撰組を呪うアプリ』が結構儲かってる」
 一瞬哀れんで損した。
「後でテメエの組織皆殺しにしてやるよ。サ…」
「前払いなら引き受ける」
 いつの間にか銀時が傍らに立ち、
「でも3日間までね。お前んとこいろいろと煩い奴多いから」
 拳銃を抑え、
「あと俺のツレを巻き込むな。絡むな。誘惑するな。次やったらホントに処刑させるからな」
 肩を抱かれて「はいい?」と思う間も無く、
「相分かった。土方殿、迷惑を掛けて済まなかった」
 小太郎に頭を下げられちんぷんかんぷんのまま、
「じゃ、代金の小切手、コレだから。ヨロピコ〜〜」
 小太郎はふつりと消え失せた。
 数秒後、ひらり、ひらりと舞い落ちる紙が一枚——拾い上げると、
『大肉球展ーin 貘針滅星—』
「………………………………………………何だソレ!!???」
 ようやっとツッコめた時には、銀時と小切手も消え失せていた。

Re: 【銀魂】腐小説おきば ( No.37 )
日時: 2014/06/28 20:55
名前: もるたん (ID: pOz8vLGm)

 深闇の公園で彼女だけが儚く輝く姿があまりにも美しくて、九兵衛は暫く、用事を忘れていた。
(お妙ちゃんは、とてもとても可愛いけれど——)
 この人はとても美しい。背筋がぞくぞくし、鼓動が速まり、股間が熱くなる。——まだ、そこには何も、無いのだけれど…。
「あら。貴女は、えーと…」
 彼女——あやめ——は、冷たい空気を纏ったまま、冷たい視線を九兵衛に向けた。
「九兵衛と言います」
 名乗るのは初めてかも知れない、と思いながら、浅く会釈した。
「ああ。“玉ナシ九ちゃん”」
 彼女は冷たい空気を消さぬまま、うっすらと笑う。
「…何故、それを——」
 幼い頃の渾名である。
「子どもの頃何度か遊んであげたのよ。覚えていない?」
「……」
 覚えてはいない。が、あり得る、とは思う。彼女が元お庭番ならば、柳生とは切っても切れない間柄だった筈だ。
(彼らだけが、一方的に切られてしまったわけだけれど…)
 裏を無くしてしまえば、表も自立は難しい。早晩、柳生の家も潰れるだろうと、九兵衛は考えている。
「最近も、何度かお会いしましたよ」
「“会って”ないわ。たまたま同じ場所に“居た”だけ。貴女、銀さんの事が好きなの?」
 とんでもない事を聞かれた、と思い、九兵衛は首を振る。
「ぼ、僕は妙ちゃんが好きなんです!あんな下種な男はとても…!!」
 あやめの好きな人を罵るような事を言ってしまって良いのか、と、一瞬惑う。が、あやめはまったく表情を変えないまま、
「でも、妙は、そのゲス野郎の事が好きでしょ?」
「…えっ!?…ちがっ」
「貴女も、妙と一緒なら、“ゲス野郎”とエッチするのも吝かじゃないでしょ?」
「なっ……っっっ???」
 話が突拍子無い、と思うのは、
(僕が非常識なのか???)
 あまりにも真面目に素面に問われて、目眩がしてきた。
 あやめは交感神経が暴走気味の九兵衛を覗きこむように見つめて、
「私、銀さんの子どもが欲しいの」
「????」
「銀さんの子どもに“お母さん”って呼ばれたいの」
「……??」
「でも、私、自分の子どもだと愛せる気がしないわ。自分の子どもが銀さんの事“パパ”って呼んだら嫉妬の嵐よ」
 そこは“お父さん”じゃ無いのか?
「だから、誰か、銀さんの子ども産んでくれないかしら?」
 ・・・・。
「九ちゃんが私の願い叶えてくれたら、九ちゃんにイイコト教えてあげるわ」
「…い、イイコト…?」
「ふふっ」
 あやめは少女の様ににっこり微笑んで、九兵衛の耳に赤い唇を近付け小さな小さな声で
「——玉も竿も無くても、女を悦ばせる方法」
 ——九兵衛の股間が、じゅく、と熱くなる。


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