BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

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【銀魂】腐小説おきば
日時: 2014/03/25 23:22
名前: もるたん (ID: T8WGJY2W)

銀魂の腐小説おきばです。

オリキャラも出ます。

長州寄りの話が多くなるかと思います。。。

Re: 【銀魂】腐小説おきば ( No.23 )
日時: 2014/04/25 21:11
名前: もるたん (ID: T8WGJY2W)

「綺麗なお顔ね」
 と、女が言う。確かに女の顔は醜かった。
「たくさん愛されて、いい気なものよね」
 と、女は言う。其れについては言われる度に違和感を覚える。
「愛することの意味なんか少しも分かってないクセに」
 此れは図星なので苦笑するしかない。
「貴方が赦せない貴方が赦せない貴方が赦せない!!!」
 松陽もこういう気持ちだったのかなと、ぼんやりと思いながら、小太郎は刀を抜いた。
「俺で——良いのか」
 好きな男にとりすがって泣いて、その結果殺し殺される事になったとしても、女としてはそちらの方が幸福なのではないかと思ったのだが、
「あの人は、私の涙なんかきっとすぐ忘れてしまうもの。でも、貴方は、忘れないでしょう?あの人に抱かれる度にきっと私を思い出すわ」
 男の——と言うより、“愛を知らない者の”浅はかさだったらしい。
 女は、小さな刀を両手で構えた。それから、何の緊張もなく、とつとつと、軽やかに、小太郎の懐へ向かって来るので、一瞬抱きしめてやっても良いのかと思ったが、
「ダメよ」
 女の声で我に帰り、焦点が合ったすぐ眼前に刃が迫り、
“すう——”
 と、何の手応えもなく女は斬られた。
 最後に見止めた女の涙は錯覚か本物か——今はもう、分からないけれど、
「…何考えてんの?」
「……女の事、ッ…!」
「イイ気なもんだねえ、お前は」
 謀らずも同じ台詞を言われたわけだがむしろこれはこの男の口癖があの女に写ったのかとも思われて、
「アッ…ゥア、アッ…」
 男の熱い塊を感じながら、小太郎は女の涙ばかり考えていた。

Re: 【銀魂】腐小説おきば ( No.24 )
日時: 2014/04/26 23:26
名前: もるたん (ID: T8WGJY2W)

※性描写あります


 風俗には、たまに、行く。トーシローくんはトーシローくんでまあ良いんだけど、そうじゃなくて女の子においしそうに舐めてもらいたいなあ、と思う時があるわけで、亜美ちゃんはぽっちゃり巨乳の吸引力抜群、唇が厚く舌も分厚い愛すべき女の子だ。
 で、久し振りにパチンコに勝ったのを、亜美ちゃんにお祝いしてもらおうと新八神楽の目を盗んではるばるやってきた。
「やー、銀さんゴメン。亜美ちゃん今日お休みなんだ。田舎の親父さんが危篤とかなんとか」
 顔馴染みの客引きは全く悪びれずに頭を掻いた。
「なんだよ何回死にかけるんだよその親父。どうせまたどっかの馬鹿男に引っ掛かってるんだろ。そんなんより銀さんのがずっと良いチ○コ持ってるよォ」
「あっはっは。まあ、入り口で立ち話もナンだからさ、楽しんでってよ。ね?あゆみちゃんなんかどう?ほら、顔も似てるでしょ?」
「顔じゃ無くてさ〜、写真じゃ見えないところなんだよな〜」
「良い娘だよ〜人気あるよ〜」
 背中を押すようにして個室に連れて行かれて、
「アンタがそう言う娘大抵売れ残…」
 最後まで言う前に雑に戸を閉められた。
 ここまでは、良くあるパターンで、口では文句言いつつもやっぱり少しワクワクしながらベッドに座る。
(あゆみちゃん、ねえ…)
 この店の子の良し悪しは五分五分だ。残念な子が来る確率も高いが、今日は結構勝ったのでダメならまた来ればいいや、とも思う。一瞬新八メガネの怒り顔が浮かんだが、ノックも無しに開けられた戸に吹き飛ばされた。
「よォ」
 あゆみちゃん(?)は、見覚えのある顔でドS気味に笑った。

 おかしいなあおかしいなあと思いながら、銀時は晋助のご子息を頬張っている。晋助は銀時のくるくる頭を弄びながら、壁(と言うより衝立だ)に耳をそばだてている。ご子息のてっぺんから出る塩飴はアミノ酸でも入ってるんじゃないかと思うくらいクセになる。
(——て、だから、そうじゃなくて、)
 ご息女も味わいたくて堪らないのをぎりぎりで抑えながら、項を撫でられて銀時は首を竦めた。
 隣の部屋にちょっかい出したい奴がいるのだとか——たまたま銀時が店に入るのを見掛けたのだとか——あゆみちゃんはネンネ中だとか——銀時にはどうでも良いことばかりで、「そんならどうぞご自由に使って」って言って金で話つけて出直してくれば良かったのだ。どうせ亜美ちゃんじゃないんだし。けれどもなんかもう気持ちが準備できちゃったしお店来るの久しぶりだしこの男に会うのも久し振りだし突然だし敵なんだか旧友なんだか微妙だし——で、些かおかしくなった。銀時が「部屋に居るならする事やってよ」と言うと「テメエで遊んでたら本星に逃げられちまうだろーが」と馬鹿にした様に言われ、「じゃあどうすんだコノヤロー」と返したら「好きにしてな」と興味無い感じに応えられて、ムッとした。壁(じゃなくて単なるパネルだ)に頭を凭せかけて仕事してます風な顔つきで、口元だけで「どうぞご自由に」と言われて、プツンした。
 下半身に潜りこんでご子息を口に含むとすぐ、晋助の手が頭に乗せられた。父親と違ってデカブツの息子が口中いっぱいにそそりタって懐かしいんだけれどもちょっとタンマ苦しいし一旦離れよう、と思ったのに頭をがっちり抑えられて身動きできな——くなって、やっと、——嵌められた、と、思った。昔良くヤられてた手法だ。
(俺って馬鹿なの?馬鹿なの?馬鹿なの???)
 自問しつつ、この、完全に主導権を握られてる感じとじゅるじゅる出てくる水溶液が美味しくて止められない。晋助の手が耳を擽るのも堪らない。
 こうなるともう場所とか立場とかどうでも良くなって早く褒められて早くあの気持ち悪いミルクも無理矢理飲ましてほしくてそしたらご褒美いっぱい欲しい。否、ずっと楽しんでいたい。否否、早くシゴいてほしいツッこんでほしい。もっとジラして、もっとイジめて、もっとアソんで——。
 必死になっていたらカミノケ引っ掴まれて押し倒されて凶悪な瞳で見つめられて噛み付くみたいにキスされて、
「一人で楽しむなよ」
 硬いチ○コが触れあって胸がドキンと高鳴った所へ——
「ごめーん、銀さん、なんかあゆみちゃんトイレで寝てたってー」
 冒頭の客引きがノックもせずに戸を開けて、
「……」
 固まる客引き。
「……」
 固まる銀さん。
「あらら残念」
 ちっっっとも残念そうじゃない元凶。
“どどーん”
 轟音と土煙が蔓延し、壁(もう壁でいいや)の向こうで男女がギャーギャー喚き騒ぐ中、
「晋助」
 短いが良く通る声はテレビで聞いたことがあるような無いような…
(……。)
 とか考えてる場合では無く、既に晋助の姿は無いし、無念はそっと胸にしまって、この後確実にやって来るであろうトウシロウくんの事を考えなくてはならない。
(考えるも何も…)
 取り敢えず、銀時は尻を捲ってその場を後にした。

 ——翌日万事屋にやって来た十四郎と、布団被ってガクブルしてた銀時がどうなったかは、新八も神楽も決して口外しなかったと言う。

Re: 【銀魂】腐小説おきば ( No.25 )
日時: 2014/04/29 23:06
名前: もるたん (ID: T8WGJY2W)

 例えば、銀時が外部ストレージにぼこぼこ過去を突っ込んでいくとしたら、辰馬は揮発性メモリばっかり乗せてるコンピュータで、晋助は超圧縮技術で空き容量を確保するタイプ。じゃあ小太郎は——?
(スマホorタブレット、って感じじゃあないし…)
 蔵七が、そんな下らない事について真剣に唸っていたら、
「絶対下らない事考えてるクセに真面目な顔しないで下さい」
 先程から忙しなくあっちへこっちへ動き回っている俊介が、毒だけ吐いてまたどこかへ行ってしまった。
(なんで人の真後ろ通るんだ…)
 忙しいアピールで、「手伝うことある?」を期待しているのだろうが、そうは問屋が卸さない。
 戻って来た時、かちりと目が合った。
「俊介」
「……」
 無言でスルーしようとしたので、足首を掴んだ——ら、すっ転んだ——のへ、
「まあ、ちょっと一休みして行きなさいって。そうせかせか生きてると思わぬ所で怪我するよ」
「…今、まさしく、怪我しました…」
 鼻の頭を摘まんでいる姿は、なかなか可愛い。
「ほら〜言わんこっちゃ無い〜〜。お茶あるよ。飲む?」
 恨めしそうに睨んでも怖くないし頷いてくれなきゃ手を放さないゾ、とにっこり笑顔に込める。
「……」
「……」
 俊介はいつもの半べそ顔になり、
「…頂きます…」
 涙声で降参した。

 少し悪い気がしたので、古い茶葉は捨てて新茶を入れてあげた。お茶受けはテンポウの和最中だ。食べる直前に餡を挟むよう別々になっているのだが、蔵七は専ら皮ばかり食べている。俊介は何か言いたそうに暫く蔵七と最中を見比べていたが、ため息を一つして、器用に餡を挟んで完成版最中を噛んだ。
「あ、美味しいですね、これ」
「そうでしょうそうでしょう。テンポウは今の店主になってからかなり味が上達して、大奥でも密かに取り寄せてるとか。海豚星の姫君がこの店の店主にべた惚れだとか」
「……海豚星の姫君はもう60歳近かったような…」
「あら〜、年の差恋愛?!憧れるぅ〜」
「まあ、望みの薄さなら小蔵姐さんも負けてな」
「わー!もうこんな時間!??準備は終わったのかなっ?!」
「……粗方、終わりましたけど…」
「よっし!バッチグー(゜∇^d)」
「姐さん、キャラが…」
 俊介は続く言葉を茶で呑み込んで、
「…真面目な話、あと1時間程で準備が終わります。部屋内のチェックは僕が大体やったのですが、明日の行程表は姐さんの承認を得たいです。沿道に危険が無いか等は明日早朝に確認します。姐さん、出迎えは…」
「私は行くなと言われているよ」
 今回は完全裏方だ。
「今回は……そうですよね」
 亡命してくるヤンゴトナイ様の為に、周布は美少年を掻き集めた。中には出自が怪しい輩もいるらしいが、まあ、見た目は確かに壮観だ。
「桂さんは」
「明朝9時着」
 先方たっての希望なので、無理矢理時間を作ってやっと半日確保した。その分昨日今日に作業をぎっしり詰め込んでおり、監督ザベスからなんとか予定通り進捗していると今朝報告を受けた。
「建白書の方は…」
「ま、なんとか、間に合うかなー…」
 遠い目をする。
「じゃあ、まあ、いろいろ順調って事で…」
 ずずっと茶を啜り、俊介が立ち上がりかけた時、
「む、村田さん!!」
 階下からばたばたばたと慌てて上ってくる足音に、いつも通り嫌な予感がして、
「か、桂さんが、」
 俊介と目を見合せ、
「烏賊星の皇子の結婚式にて、ただ今スピーチしております…ッ」
(…………)
「ヌコ生で放送されてまして、本物かと問い合わせが多数…周布さんが早急な確認をと…」
 襖越しに聞こえる声が、だんだん泣き声になってくる。
「……どうしましょう」
(…………)
 蔵七は心の中で“こんなのは慣れっここんなのは慣れっここんなのは慣れっこ…”と10回唱えてから、
「すぐに周布さんの所へ行きますので、その間にWiFiルータとパソコンとお金を用意しておいて下さい」
 何故か敬語で答えてしまった蔵七を、俊介は似非念仏唱えて拝んだ。


桂小太郎と掛けまして
バーチャルマシンと解く
その心は——
雲の上の存在です
...orz

Re: 【銀魂】腐小説おきば ( No.26 )
日時: 2014/05/01 22:45
名前: もるたん (ID: T8WGJY2W)

※最終回妄想です。


—前編—

 神威がした唯一兄らしい事と言えば、両親が喧嘩してる最中に外に連れ出してご飯を食べさせてくれた事だろうか。今ならばどこから調達した金なのかと疑問に思うところだが、当時は喧嘩にかまけて子どもに飯も出さない両親よりよっぽど頼もしく見えた。
(兄ちゃんらしい思い出ってより、兄ちゃんとの唯一の思い出アル)
 物心着いた時には既に、父親も兄もほとんど家にいなかった。神楽が一通り家の中の事が出来るようになると母親も度々外泊していたので、神楽はあのカビ臭い一間にいつも一人でいた。
(…今も、変わらないアルな)
 年頃の娘がいるにも関わらず、養父はしょっちゅう夜遊びに出る。定春がいるじゃないかとか志村の家に行けばいいじゃないかとか、そういう事でなく、神楽にとっては銀時が一番の家族で、家族なのに家の中よりも外とばかり関わっている事が悲しかった。友達はいっぱい出来たし(親友もできた)、同僚も悪い奴じゃないし(キモ眼鏡だけど)、街の人間関係も気に入ってるし(お登瀬はたまに五月蝿いけど)、毎日楽しい。でもそういうことじゃない所で、誰かに文句を言いたかった。皆こんなに優しくて自分を気にかけてくれてご飯くれたり叱ってくれたりするのに、どうして1番大事な所から目を逸らすのだと聞きたかった。
(銀ちゃんが、いないって事が、)
 どれだけ寂しい事なのか、どうして皆気付いてくれないのだろう。どうして誰も銀時に注意してくれないのだろう。
 それが腹立たしくて、親切にされても素直にありがとうと思えない自分がいる。そんな自分もまた、自分らしくなくて腹立たしい。
 最近、神楽はあまり万事屋に帰らなくなった。
(アネゴやソヨやエリザベスと遊んでる方がよっぽど健全ネ)
 読み書きや算数や世界史を教えてもらうのが面白い、というのもある。夜兎の歴史やリーマンの年収をネットで調べるのも面白い。そして何より、人と食べるご飯は美味しかった。今日銀時が帰ってくるか否かと鬱々と夕飯時を待つより、確実に美味しいご飯が食べられた。
 けれども…。
「神楽ちゃんも、もうお姉さんねえ」
 一昨日、妙に言われた。
「神楽ちゃん、綺麗になったよね」
 昨日、そよに言われた。
「リーダー、そろそろ年頃ですし、男所帯に一人で長居するのはちょっと…」
 先程エリザベスに言われて、カッとして出てきた。これ以上知り合いに話し掛けられたら暴れてしまいそうなので、なるべく人相悪くして足早に万事屋に帰ってくると、
「やっと帰ってきたか不良娘」
 こういう時に限って銀時が出迎えて、居間から良い匂いが漂ってくる。
「…鍋アルか」
 怒りと空腹とが天秤の上で僅かに空腹に傾きかけた時、
「やあ、神楽。久し振り」
 神威がひょっこり顔を出し、
「なんでバカ兄貴がいるアルか!!」
 叫んで、外へ飛び出したのに、
「ちょ、ちょ、ちょっと〜、兄ちゃんなんか悪い事した?なんか嫌われるような事した?」
 数分で追いつかれてしまった。
「……。」
 神楽は無言で睨み付ける。
「お前が最近銀時と上手くいってないって聞いて様子見に来たんだよ?」
 怒りが鎮まらないまま、誰から聞いたんだソレ、とも思う。
「お前もいろいろ年頃だし、他人には言えない悩みも出てくるだろ?生理とか処女とか」
 何でこの男は生理だの処女だのをさらっと言えるのか不可解で不快だ。
「まあ銀時に万が一は無いと思うけど、突然メガネ君の子ども出来たとかなったらさ、親父この星潰しちゃうよ」
 この星は潰させない、と思ったら良いのか、あんな眼鏡モヤシと子作りなんかするか、と思ったら良いのか逡巡している間に、
「だから、そろそろ潮時かと思って」
 ——“潮時”?
「親父と行くか俺と行くか、それは神楽が選べば良いよ。まあ順当なのは親父かな。でも俺となら飯には困らないよ。お前に見合う男もいっぱいいるし」
(“潮時”…)
 呆然と、神楽はもう一度繰り返す。
「何年か前に同じような事して親父追い返されたんだろ?」
 けれども今は違うだろうと、神威の目は言っている。
「ま、ここで決めろとは言わないさ。銀時とよく話し合って決めな」
 そう言うと、神威は闇に消えてしまった。
 視界の下端では昨日と変わらず、街がチカチカと輝いている。

Re: 【銀魂】腐小説おきば ( No.27 )
日時: 2014/05/01 23:01
名前: もるたん (ID: T8WGJY2W)

※最終回妄想です。


—後編—

(銀ちゃんは、私の事、邪魔だったアルな…)
 左目から、ぽつり。
(銀ちゃんにはちゃんと恋人がいるし…)
 右目から、ぽつり。
(私が居なければ家でしっぽり出来たアル…)
 ぽつり、
(私が在なければ、もっとお金を稼いでもっと自由にお金を使えるアル…)
 ぽつりぽつりぽつり…
(私、銀ちゃんのお荷物…)
 ぽたぽたぽたぽたぽたぽたぽたぽた…
(銀ちゃんに嫌われた…)
 涙が溢れて、夜風が冷たくて、呼吸が上手くできなくて、
(私、銀ちゃんの傍にもっともっと居たかった…)
 ゥゥゥ、と、変な風に喉が鳴る。
(銀ちゃん…)
 ゥゥゥ、ゥゥゥ、ゥゥゥ、
(銀ちゃん銀ちゃん銀ちゃん)
 ゥゥゥゥゥゥゥゥゥ
「ぅわーん銀ちゃんー!!銀ちゃん銀ちゃん銀ちゃんー!!!」
「はいよ」
「銀ちゃん銀ちゃん銀ちゃん銀ちゃんのバ————ふぇ?」
 振り返ると、
「今バカって言おうとしたろ」
 懐かしい懐かしい死んだ魚のような目をした銀時が、耳くそほじくりながら立っている。
「銀ちゃん…」
 本物——だよね——?
「何か不満があるんなら言ってみな。パンツ一緒に洗いたくないとか腋臭いとか、お父さんなんでも聞くよ」
「銀ちゃん…」
 銀ちゃんはパンツ汚くないし腋臭くないしキモくもない、と神楽は心中で反論する。
「最近太ってきたとか天パで誤魔化してるけど生え際後退してきたとかションベンの切れが悪いとか、言っても怒らないよ」
 太ってきたとも禿げてきたとも思うけどあんな生活してれば当然だし、小便の切れは知ったことじゃない。
「…なんか、黙ってられると辛いんですけど。アレですか。お父さんとは話したくもないって奴ですか」
 話したくないわけ
「ない…」
「そうだよね。お父さんキモい的なアレだよね」
 銀時は額に手を当てて俯く。少し、本気で、傷ついている。
「銀ちゃんキモくないアル!」
 キモいのはパピーね!!は、声には出さず、
「銀ちゃんパピーとは違うアル!銀ちゃんは銀ちゃんネ!!マダオでも変態でも廃人でも、銀ちゃんは…」
(銀ちゃんは…)
 神楽の——何?
「……。」
 突然黙った神楽を、銀時が不安そうに見上げ、
「…神楽?」
(銀ちゃんは、私の、………。)
「えーと、…」
 神楽は、にっこりと銀時に笑いかけた。
「銀ちゃんは私の兄貴みたいなものアル。私、銀ちゃんのこと大好きヨ」
 嘘半分本音半分。
「私、万事屋出るアル」
 覚悟がすとんと胸に収まり、
「パピーにも兄貴にも付いていかないヨ。私は私の足でちゃんと世界を見てくるネ」
 跳び跳ねたい程体が軽い。
「銀ちゃん、今までありがとう」
 こんなに素直に感謝を伝えられた事があっただろうか。
「銀ちゃん、またね」
 こんなに誇らしい別れがあっただろうか。
「銀ちゃん、大好き…」
 ふわり、と涙が滲んで、神楽は電波塔から飛び降りる。
(銀ちゃん、バイバイ…)
 ——そうして神楽は、万事屋から旅立った。

 程なくして定春も姿を消し、新八も進路を決めて万事屋に来なくなり、万事屋はまた銀時一人になって時々妙が掃除しに来る。何度目かの掃除の時、妙が錆びかけたヘアピンを見つけ、
「銀さん、これ…」
「んあ?」
 銀時は鼻くその付いた手でヘアピンを取って、
「…——ああ。」
 ふわりと笑った。
「神棚にでも飾っといて。勝手に捨てると怒られるから」
「…はい」
 以来、彼女は掃除に来ると必ず神棚をじっと拝んでいる。

 いつか、また…。
 今度は、…。


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