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- 【銀魂】腐小説おきば
- 日時: 2014/03/25 23:22
- 名前: もるたん (ID: T8WGJY2W)
銀魂の腐小説おきばです。
オリキャラも出ます。
長州寄りの話が多くなるかと思います。。。
- Re: 【銀魂】腐小説おきば ( No.18 )
- 日時: 2014/04/09 21:24
- 名前: もるたん (ID: T8WGJY2W)
キラリと落ちた流れ星を綺麗だと思った。キラキラと空を飛ぶ流星群に憧れた。それが、この星への侵略の始まりとは知らずに——。
「彼らは暴力で我が国を蹂躙する侵略者だけれど、優れた技術で私達に革新をもたらす師でもある。私達は仲間なのだけれど、内向きな思考は仲間の粗探しに終始してしまいがちだ」
松陽は、まだ漢字も満足に覚えていないガキ共へ向けて
「私達は、私達をより幸せに豊かにしていく為に、積極的に外と交わらなければならない」
自分でも小難しい、と思ったらしく、
「つまり、何にでも興味を持ちなさいって事だよ」
少し照れたように纏めて、本来の授業に入った。
松陽はよく空を見上げていた。他の大人逹が忌々しげに睨み付けるそれを、松陽は寧ろ眩しげに見つめる。
“敵じゃないのか”と問えば、“きちんとお互いを学べば敵ではなかったかもしれない”と答えた。
「知らないこと、知らないことに気付かないこと、知らないまま決めてしまうことが一番恐ろしい」
この国は知ろうとする事にとてもとても不自由で、それが自分には些か窮屈だったのだと、そう言っていたのは松塾が閉鎖され江戸へ送られようとする頃だろうか。
「知ろうとしている間に失ってしまったものもあるけれど…」
江戸に着いてから聞いたこの言葉は、松陽のたった一つの恋の話だったらしい。
船から見下ろす江戸の街はとても華やかで美しい。初めて船に乗った時は、感動を隠すのに苦労した。食事と酒を共に食らえば節度もへったくれも無くなるのは、天人だろうと人だろうと変わりなかった。約束事をこと細かに紙に書く習慣には閉口したが、結果が大抵紙通り過も不足も無い点は面白いと思った。天人との付き合いは性に合っていた様で、攘夷攘夷と叫んでいた頃より大分すっきり考えられるようになった。
それで、松陽がもし願い叶って船に乗っていたらどうだったろうかと考えて、
(——。)
苦笑した。
(あの人には、こういうのは似合わねえな)
きっと船に酔い人に酔い食い物に酔って、三日で根を上げるに違いない。
松陽の命日は、誰も墓参りをしない。故郷のも江戸のも松塾生が作ったものだが、皆敢えてそれを忘れたように振る舞う。偲んでしまえば怒りが薄れてしまうような、悼んでしまえば記憶が曖昧になってしまうような、そうした恐怖もあったのだろう。怒りも思い出も消化できてしまったら、あの戦は耐えられなかったに違いない。
「成し遂げたら、きちんと報告しに来よう」
久坂の台詞に従う気持ちがあった訳ではないが、晋助も命日など構う暇は無かった。構う暇がいくらかできた今も、やはり詣でる気持ちは無い。
「そう言えば、今日は松陽師父の命日ではないですか」
武市の言葉はどれもおもねるような響きがあり、人の神経を逆撫でする。
「武市先輩のししょーじゃないっすから師父って呼ぶなっすよ。汚らわしい」
来島が武市にする応酬は小憎らしくて微笑ましい。
「命日…ふむ。命日命日メイニチOh!OhOhエイオー☆…良い歌い出しでござる」
河上は大抵会話には入らないが、人間関係は気に入ってるらしい。
「ダメだよ。故人はちゃんと悼まなくっちゃ。化けて出るよ」
一番まともじゃ無い奴がまともな事を言いやがった。
「…約束の時間には早くねえか」
大海賊を率いる小柄な少年を仰ぎ見て言うと、
「晋助と約束がある日は時間なんか待ってられないのさ」
ニコニコと嘯く神威を応接室に案内させて、
「来島ぁ!」
晋助は呼び掛けた。
「酒用意しとけ!梅小八っつーやつだ!!」
あの人が好きだった酒をあの人が行きたかった星へ連れて行くぐらいなら、してやっても良いかと思った。
- Re: 【銀魂】腐小説おきば ( No.19 )
- 日時: 2014/04/10 21:45
- 名前: もるたん (ID: T8WGJY2W)
初めて見たときは、世の中には綺麗な子どもがいるものだと驚いた。黒く輝く瞳と漆黒色の髪と絹のような肌と小さく赤い唇、細いが弱々しい印象は無く、ほぼ無表情なのに常に微笑んでいるような印象を与える。
(これが“菩薩様”って奴か——)
と、銀時は魂が半分天国にいる心持ちだった。大人に促されて挨拶し、暗黙の期待に応えて手を差し出した。
「俺、カニ釣り出来るとこ知ってるぜ」
遊んでやる、という意図は伝わり、小太郎も手を伸ばした。
握った手は予想に反して熱かった。
(そうなんだよなあ、ヅラは、体温高ェんだよなあ)
触れ合う温もりを感じながら、銀時は沁々と思う。小太郎は様々なギャップにまみれた男だが、このギャップが一番キュンと来る。特に冬の隙間風ピューピューの部屋だと離れられなくなる。大の男二人がくっつき合うこっ恥ずかしさに耐えられなくて、結局ヤることヤってしまう。エッチすると、恥ずかしいカンジが治まるのが不思議だ。
(なんだろうなあ、このキレイな手)
馬鹿みたいな握力を持つその手は、柔らかくは無いが肌目が細かくするすると滑る。長い親指が好きで、セックスしない間はその親指をずっと舐めていたいと思う。やると喜ぶからしないけど。
(尻がまた、そそるんだよなあ)
尻は他に比べて温度が低い。それを叩いて叩いて真っ赤にするのがもう堪らないのだ。また、ここがやけに敏感なのも良くて、敏感なのをひどく恥じているのも可愛げがある。
(目は、なあ…。…嫌いだけど)
小太郎の目は黒過ぎて嫌いだ。こちらの感情を全て吸引されるような気がするし、声音や手振りで分かる小太郎の感情が、目を見た途端分からなくなる。何度潰してやりたい衝動に駆られたことか知れない。けれどその度に思い止まったのは、松陽が好きだったからだろうか。松陽は、小太郎のほぼ全てを憎んでいたけれど、この瞳だけは愛していた。
(——あ。)
無意識に尻を触っていたらしい。銀時の腕の中で、小太郎がもぞもぞと動き出す。
「わりィ」
手を背中へ移すと、小太郎の瞳が、ゆっくりと銀時に向けられた。
——あの、何を考えているのか分からないような、——闇の中でキラキラと輝く、——吸い込まれそうな、…
「——お前さあ、なんで先生に嫌われてたの」
うっかり問えば、瞳が大きく見開かれて、
「先生は俺を嫌っていたのか?!」
「……」
——思い出した。姿形はともかく、本性はこういう奴だった。
銀時は息を吐き、
「お前やっぱ早く死ね」
小太郎を蹴り飛ばした。
- Re: 【銀魂】腐小説おきば ( No.20 )
- 日時: 2014/04/15 22:11
- 名前: もるたん (ID: ZlHu.kjO)
※性描写あります
佑子、と言う名の娘がいる。赤ん坊の頃はニコニコ——と言うよりニヤニヤとよく笑うのが面白かった。長じてからはクスリともしない冷めた女になってしまったが、童の時はワガママで好奇心旺盛で快活な、それはそれは可愛い子どもだった。「大きくなったら蔵兄のお嫁になります」と言われて、自分が嫁になる立場だとは言えなかった。大人達が面白がって“蔵兄”は“蔵姉”だと教えてやらなかったのも問題だったのだが——。
その、佑子が、大坂にやって来た。
「——その、綺麗になったねえ」
一年振りか、…もっとか。元々整った顔立ちだったが、ぐんと色っぽくなった。
「幾つになったの」
「二十歳になりました。もう嫁き遅れです」
「……」
二十代も半分過ぎてしまった蔵七の立場はどうなるのだろう。
「親が縁組を進めております。医家だそうです」
佑子の父親も医者なので、順当な相手、と言うことになるだろうか。
「私より年下で、放蕩が過ぎる為に早く身を固めさせよう、と言う話です」
「へえ…」
年下と言うことは、10代である。10代のやんちゃ盛りに親の組んだ縁談では、佑子が苦労するだろうと思った。
「もう、相手の方にはお会いしたの」
「いいえ」
佑子は短く首を振ってから、
「大坂にいらっしゃるとの事なので、顔を見に来たのです」
「…ここに?」
「洪庵塾に留学中に遊ぶ事を覚えたそうで。近場の岡場所に居続けだとか」
「……」
洪庵塾は、主に天人の医療技術を学ぶために開設された私塾である。併設されている医院は在来医療で治らなかった病が治ると評判で、この一派でもコッソリ通っている者がいる。確かに、ここからすぐ近くにあった。
(けれど、…)
塾生の殆どが質素な身なりで、放蕩だの岡場所に居続けだのできるようには見えなかった。
(10代で洪庵門下なら、相当な秀才だろうし…)
「洪庵塾を直接訪ねてみた方が良いんじゃない。何かの間違いかも知れないし…」
「とっくに破門されております」
憤慨したように言う。
(…そりゃそうか)
生涯を共にする男がそれでは、心中憤りが渦巻いているに違いない。
「じゃあ、店を当たるしかないか。店の名前は知っている?今誰か使える人間を…」
す、と、手首を掴まれた。刃のような眼差しで蔵七を見つめる。
「恥でございます。蔵兄様なればこそ、こうしてお話できたのです」
「……」
冷たい掌と冷たい目が蔵七の動きを封じ、
「お店は、分かります。女一人では入り難い故、蔵兄様に付き添って頂きたいのです」
硬質な声音が思考を乱す。
「お願い致します」
泣く——と思った瞬間、蔵七は頷いていた。
家を出た後の佑子は饒舌で、街のいろいろな物に興味を示し、だんだんと幼い頃に戻っていく様だった。半ば強引に甘味屋で昼飯を食わされ、半ば強制的に話題の白たこ焼きに並ばされ、半ば無理矢理執事喫茶に入店し、息も絶え絶えな頃合いに日が暮れた。
「…そ、そろそろ、婿殿の所へ…」
あんな化粧臭い男の集団は初めてで、変な酔い方をしている。
「蔵兄様」
それ以上は言葉を継がず、無言で指差された方を見る。
「……あそこは、」
「今、そこを、女性の方と入っていくところを見ました」
「誰…」
「甚平です。写真と同じお姿でした」
「……」
そこは、所謂、出合い茶屋である。
(えーと、今は、ブティホとか言うんだっけ…)
俊介が得意そうに話していたのを思い出す。要するに男と女が数時間部屋を借りてチョメチョメする所だ。
「…そこは、」
「私、見たのです」
鋭く遮った後、口元を引き結び蔵七を見詰める。
(——ああ。)
最近の佑子の顔つきだ。
「分かった」
蔵七は佑子の頭をぽんと叩き、手を握る。微かに震える細い指先を弄びながら、佑子の幸せを願った。
キスする。キスする。キス、キス、キス。佑子は真っ赤になって恥じらい、顔を隠す。顔を隠されれば首筋に口付け、イヤイヤをされれば太股に口付け、足裏に舌を這わせ、するすると服を脱がせる。若い娘の硬質な肌は瑞々しい臭いを放ち、蔵七は脇の臭いを目一杯吸い込む。
「蔵兄様…」
震える両手を包むように握り、
「佑子」
そっと囁く。
視線が合う。
口付ける。
涙を嘗めとり、
「舌、出して」
おずおずと開いた口に唾液を垂らす。
「舌、出して」
もう一度言えば、赤い舌がゆらゆらと歯の間を蠢く。舌先をちろと舐めれば、カタツムリみたいに引っ込んでしまう。
「舌、出して」
佑子ができる精一杯の開口に深く深く噛みつき、逃げ惑う舌に絡みつき、自分の口中に引き込みながら、少し、性器に触れるとびくんと体が強ばった。
「止める?」
問えば、再び顔を隠してふるふると振る。
「じゃあイヤイヤしないで」
微量の怒気を混ぜる。
「足、開いて」
体温を少しずつ冷めさせていく。
「顔、見せて」
少々荒っぽく両手を掴み、いないいない…
「ばあ♪」
笑って、口付けて、抱き締めて、
「いっぱい愛し合おう」
蔵七の最高級の甘い声を、
「やっぱダメーーーー!!!!!」
完全否定されたのは、何ヵ月ぶりだろう……——暗転。
「まあ、アレですよね。姐さんは所詮狒々爺ですから(笑)」
暗雲漂い誰も近づかない蔵七に、俊介だけは機嫌良く茶を入れ軽口を叩き、
「自分がモテるとか勘違いです、勘違い(大笑)」
緑茶の香ばしい匂いとは裏腹に、
「それが分かっただけ良かったじゃないですか」
腹黒い笑顔は世のため人のためにならぬので、
「やっぱり姐さんは孤独が似合いますよ。ヨっ、毒女!」
「ちぇすとー!!!!」
——1週間ほど成敗され続けたと言う。
- Re: 【銀魂】腐小説おきば ( No.21 )
- 日時: 2014/04/16 22:26
- 名前: もるたん (ID: T8WGJY2W)
青い目の兎がいる、と聞いて、そりゃいるだろう、と思った。兎は皆青い目じゃなかったっけ?
「ウサギは大抵赤い目でさ。ガキでも知ってますぜ」
前半の台詞にそうか、と思ってから、後半の台詞にムカついた。
「ウサギはウサギでも草食って喜んでる方じゃありません。血を浴びて喜んでる方でさ」
「夜兎か」
国を無くした幻の種族は、
「万事屋の小娘に友達でもできたか」
何故かこの国によく出没する。
「あんなクソガキの話なんぞしちゃいません。もっと悪い奴で」
「……」
二日酔いの頭にも、漸く仕事の話らしいと理解できて、十四郎はまず煙草に火を着けた。
「本題はなんだ」
「本題に入らせてくれなかったのは土方さんですがね。まあいいや」
腹に留めておけば丸く収まる憎まれ口をきちんと吐いてから、総悟は尻を降ろした。
「何でもすげえ別嬪で、夜な夜な男共を誘惑するとか」
「夜鷹は、ウチの管轄じゃねえだろう」
「夜鷹じゃなくて通り魔ですよ。まあ、正々堂々勝負するんですが。自分に勝ったらお前の言う事はなんでも聞く、自分が勝ったらお前のハラワタもらい受ける——そんな風に誘うそうで」
「辻斬りか」
「だから通り魔…まあどっちでも良いや。この1週間で5人死んでます」
「ほぼ毎日じゃねえか」
「5人目までは毎日だったんでさ。6人目に仕損じて、昨晩はお休みです」
「証人がいるのか」
だったら話が早ェ、と、煙草を吸い込む。
「本当悪運が強ェお人で、今朝方、目を覚ましたそうです」
(——。)
「そんな怖い顔しないでくだせえ。局長命令でさ」
煙草を、揉み消し、
「——どこだ」
腹に力を込めて、ようやっと静かに問う。
いつもの病院ですよと、総悟は平静と変わらぬ口調で答えた。
まだ意識が戻って数時間なら面会謝絶かも知れない面会謝絶なら警察権力使うまでだと勢いこんで行けば、一番五月蝿い病室であっさりと銀時を見つけた。
「さっさと退院して良いですよ。と言うか今すぐ退院して下さい」
「せめておやつは出そーよ。と言うかイチゴパフェと抹茶パフェと栗パフェを今すぐ出してくれませんか」
「そんなミラクルなメニュー、ファミレスでも出ねーわ!季節感台無しじゃねーか!!」
「くぉらヤブ医者!折角銀時が生死の淵から戻ってきたんだ!それを祝ってやる気はないのかい!!」
「ひッ…う、うちは生死をさ迷う為の場所なんだ!元気な患者は嫌いなんだよ!!」
(へえ)
…て、ブ○ックジャッ○の意外な本音に関心してる場合じゃなくて、
「おい」
十四郎は騒がしい面々を睨み回し、
「事情聴取だ。テメーら全員席外してもらおーか」
と、同室の患者も含めて全員追い出した。
夜兎だったのかと問えば「さあ」と答え、身長体格容姿はどうだったかと問えば「分からね」と答え、何か気が付いたことはと問えば「知らね」と答える。殺してやろーかという気持ちを抑えて、男か女かぐらいは分かるだろと言うと、短く「女」と返ってきた。何か隠してやがる、と、ピンときた。
一先ず、煙草をくわえる。火は、思い止まった。
息だけを吐く。
「身長は150〜160cm、体格は細身、中性的な顔立ちで瞳が青い、剛力、身軽、武器は仕込み杖、ただし剣筋は荒く我流。出没が夜中って事もあって、夜兎ではないかと言われている」
「……」
ふいと、銀時は視線を逸らした。
「目撃者がいるんだ。そりゃそうだよな。あんな真夜中に一人で歩く用事なんざそうそう無いだろ。殺されたのが偶然じゃないなら、呼び出されたと考えるのが順当だ。夫の不自然な様子を見て、密かに後を付けさせた烈女がいるのさ」
銀時はぼんやりと天井を見ている。
「心当たりは?」
最後の問いにも、銀時の答えは
「さあな」
だった。
銀時には謎が多すぎる。普段は感じないその闇を垣間見た時、土方は激しく嫌悪を抱く。締め上げて悪事を全て吐かせたくなる。ただ、——拷問でも自白剤でも、あの男は闇を告白したりしないだろう。
(虚しいだけだなクソヤロー)
イライラに任せて煙草を踏み潰していると、
「土方さん、すげえや。機密事項をよくあんなに喋れますね」
望遠鏡を覗き込みながら総悟が話し掛けてきた。昼間の銀時との会話を、病室を追い出された誰かから聞いたらしい。
「事件解決の布石だろうが。ちゃんと野郎を見張ってろ」
「またまた〜、そんな冷静じゃなかったクセにぃ〜。解決しなかったら懲戒処分にしてもらいますぜ☆」
「近藤さんがテメエの言うこと真に受けるかよ」
「知らないんですか、土方さん。俺ァとっつぁんの覚えめでたいんですぜ」
「とっつぁんって…」
松平か、と続けようとしたが、
「チッ。出てきた」
総悟が忌々しげに舌打ちをし、十四郎は薄明るい病院の非常用玄関を見た。総悟とは別の理由で、十四郎も小さく舌打った。
「やっと会えた」
と、ソレは言う。
「何十年振りかな」
ソレは嬉しそうに言う。
「幸せそうだね、ギン」
「そうでもないけどね」
銀時の声がした。普段とあまり変わらない気がする。
ソレはクスクスと笑い、
「僕よりは幸せだろう?その為に僕を裏切ったんだから」
「そうだっけ」
「君は、僕に、済まないとか思わないのかい」
「…まあ、無事で何よりと思うよ」
銀時の声に乱れはない。
「無事じゃない!」
「そいつは失礼」
「君の所為じゃないか!!」
「時代が悪かったんじゃないかな」
対してソレがだんだんと平静を失っていくのが分かる。
「お前らが悪いんだろ?!お前らが、僕をこんな体にしたんだからッ」
クク、と、笑い声がした。
「何を笑うッ!!」
「成長しないなあ、と思ってさ」
銀時の方が先に刀を抜いた。
「どんなに必死で訴えようが聞き入れられなかったじゃねえか。自分の生き方通したけりゃ頭使え、と、俺は何度も教えた筈だぜ」
「…だから、こうやって復讐している」
すう、と、ソレの激情が冷めたのが分かる。変わりに殺気が充満し、
「下らねえ事に頭使ったもんだとは思うけどよ、お涙頂戴よりは——」
たん、と、ソレが跳んだ。がつ、と音がして、銀時の木刀が飛ぶ。ソレが地面間近まで体を低くし、銀時に体当たりして馬乗りになり、
「君のそのムカつく喋り方ともお別れ——…!?」
舞い飛んだ木刀が落下して、ソレを串刺した。
「——お涙頂戴よりは、良いんじゃね」
「——ッ…ッッ」
喉を貫かれたソレは言葉を発する事も許されず、ぐらりと、地面に倒れ、
「ッッ…」
一つ…二つ…もがき、…動かなくなった。
銀時は、立ち上がり、腹の傷が開いたのだろう、よろよろと歩いた後、——倒れた。
1週間後、呼び出されたファミレスに行けば、銀時の前には3種類の特大パフェが並び、その前に普通サイズのマヨネーズパフェが置かれていて、「何だ」と問えば、「口止め」と答えて、悪戯っぽく笑った。
- Re: 【銀魂】腐小説おきば ( No.22 )
- 日時: 2014/04/21 23:00
- 名前: もるたん (ID: T8WGJY2W)
総悟はほぼ毎日夜回りに出る。夜回りと言っても、誰も同伴しないし決まった時間にも出ないし制服も着ない。ただ行きがけや道すがらや帰ってきてから誰かに問われると、「夜回り」だの「夜間警ら」だのと答えるだけである。つまりは、単なる散歩だ。始めのうち言葉通りに受け取って偉いだの制服を着ろだの煩かった連中も、最近はアレコレ言わなくなった。総悟は適当な時間にぶらりと外へ出る。
今日は——曇天である。比較的早い時間に出たので、表通りはまだ騒がしく、知り合いに会うのも面倒なので街外れの川っぺりを歩く事にした。
秋も終わりに近づいていて、日暮れ後の川沿いは冷たい風が身に染みる。たまにすれ違う人は皆俯き加減の早足で、のんびり歩く酔狂は総悟くらいしかいない。
(……。)
もとい。もう一人居た。この寒いのに、釣竿垂らして居眠りしている男が——。
「アンタに釣りの趣味があるなんざ知りませんでした」
パチン、と鼻提灯が割れて、男が目を開ける。——否、目は、先程からずっと開きっぱなしだったのだが。
「やや。真撰組の…」
「沖田です。自己紹介しますかィ」
「知っているさ。総悟くんだろう」
「そのサブイボもんの呼び方は勘弁して下せえ」
ぶるっと身震いして見せると、男は笑った。
「旨い魚程夜動き回ると聞いてな。試しに来たのさ」
それは海魚ではないのか、と思ったが、そこは突っ込まず
「お一人ですかい」
いつもの白オバケが見えない。
「アレは寒いのが苦手なんだ」
桂は傍らに置いてあった瓢箪から酒を一杯注いでぐい飲み、それから総悟に見せた。
「総悟くんは飲めたんだったか」
無言で頷くと、川水で濯いだ椀をくれ、並々と酒を注いだ。
「ちょうど暇だった。話し相手をしてくれ」
「…敵ですぜ」
「皆には内緒にしておこう」
「……」
総悟はちょっと考えたが上手い返しが浮かばず、そのまま腰を降ろした。
波打つ酒を少し溢しながら口に含む。
(辛…)
もう一口含むと、なんだか体が熱くなってきた。
「唐辛子入りなんだ」
桂が種明かしするように笑う。
浮きは、変わらずゆらゆらと漂っている。
「総悟くんとは、たまに、こうして会うなあ」
驚いて桂を見ると、桂は浮きから目を離さず、
「幾つだっけ」
問われて、
「補導される年じゃありません」
「君に補導される中高学生は、さぞ不服だろうな」
「——俺達ゃ、そういう仕事はしないんで」
——からかわれてる。——のが、さして嫌に感じない。
「…知ってたんですかい」
“夜回り”の際、総悟は度々桂を見掛けている。最初のうちはどうにか捕まえようかと思案したが、何度目かの時に、どうせこちらは一人で分が悪いし放っとこうと決めて以来、捕まえる気は起こらない。桂に限らず、最近、制服を着ていない時間は攘夷も警察も関係なく一人の“沖田総悟”として世の中を見るようになった。そして、単なる“沖田総悟”は、この男がそれほど嫌いではない。
「君は目立つ」
「目立…たないでしょう」
意外と言うか、不服と言うか…桂や万事屋一派や近藤土方に比べたらひっそりと生きてる方だと思う。
「夜の街で、随分危険な一人歩きだなあと思ってよく見ると総悟くんで、なら心配いらないかと思う——事が、何回かあったよ」
「それは、俺がガキだという意味ですかい」
「この汚い街には勿体無い可愛らしいガキだという意味さ」
「——」
気色悪い、と言う前に、「実態はさておき…」と残念そうに続けられて、苦笑してしまった。
「まあ、万が一ということもあるから、気を付けるに越したことはない」
「“万が一”があった方がアンタには都合が良かないですか」
憎まれ口に、
「立場を別にすれば、総悟くんは好青年だと思っている」
直球で返されて、暗闇でなかったら赤面だっただろう。
「素直で仕事熱心だ」
自己評価と真逆を言われ、いたたまれなくなって酒を飲んだらますます顔面が熱くなり、
「…誉めても、宗旨変えはしませんぜ」
「そう決め付ける事もあるまい。まだ若いのだから迷いも心変わりもあるだろう」
チクり、と、痛いところを突かれた。
「…アンタ方も、若い時は迷ったんで?」
「否」
短く、切り捨てるように否定した後、
「今の方が、いろいろと迷っている」
黙って桂を見遣ると、
「この年になってやっと自分の頭で考えるようになった気がするな。…が、この年になるといろいろ身動きも取りづらい」
桂は苦笑し、出された掌に椀を返すと半分以上残っていた酒を一息で飲み干し、釣竿を川から引き揚げた。
「冷えてきた。帰ろうか」
桂は立ち上がり、大きく伸びをする。総悟も立ち上がり掛けたが、思い止まった。
「俺は、——時間をずらしやす」
警察と手配犯である。
「そうか」
桂は意図を組んでいるのかいないのか、くるくると釣糸を巻いて瓢箪も腰に付けると、
「じゃあ、また」
惚れ惚れするような男前な笑みを総悟に向けて、去っていった。土手を上りきった所で一度手を振って、あとは、急いでいる風でもないのにあっと言う間に見えなくなった。
姿が見えなくなった後、総悟も帰ろうかと立ち上がったら
(——??)
寒さの為か酔いの為か、ぐるんと景色が回って
(あ——)
と思う間もなく、とすんと暗闇に落ちた。
目を覚ますと、見知らぬ天井と見知った顔(特徴無さ過ぎて忘れかけていたが)がぼんやりと見えて、山崎は水を差し出しつつ
「あんまり無茶な夜遊びしないで下さいよ。副長が心配します」
全てを知った風な口調で言われて、イラッとした。