複雑・ファジー小説
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- 私は罪悪感に殺される 完結しました
- 日時: 2011/04/06 23:13
- 名前: 千咲 ◆864fRH2jyw (ID: lPEuaJT1)
こんにちはonこんばんは。
この小説は以前社会問題系で書いていた、花言葉の約束の続編として書くつもりです。
前の話を知らない人でも楽しめるようにしていこうと思ってます。
ちなみにこの小説は、この前まで社会問題系で書いていましたが内容が明るくなってきたので、こちらのジャンルに移動させていただきます。
内容と題名が少し合ってないような気がしたので変えさせていただきます。
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【目次】
>>1 プロローグ
>>2 一章「ガラスの海で、溺れたい」
- Re: 私の居場所は作らない。 ( No.6 )
- 日時: 2011/02/27 20:29
- 名前: 千咲 ◆864fRH2jyw (ID: N1KBaRht)
>>さっちー☆さん
初めまして。タイトルは結構悩んでつけたので、そういってもらえると嬉しいです。
さっちー☆さんも小説書いてるんですね。今度時間があれば読んでみます。
- Re: 私の居場所は作らない。 ( No.7 )
- 日時: 2011/02/27 21:56
- 名前: 千咲 ◆864fRH2jyw (ID: N1KBaRht)
「じゃあ、また中休みにね」
宮本桜はそう言って手を離し、無邪気に笑って去ってゆく。
今まで会った人とはどこか違う雰囲気を放っていた宮本桜を、私は変な人だと思った。それだけしか、感じなかった。
教室内を見渡してみると、宮本桜はもう席に着き、何もなかったかのように本を読んでいる。
——そして宮本桜が去る瞬間を引き金としたように、その後すぐに私の周りは人で埋め尽くされた。
「ねぇねぇ、どこの小学校から転校して来たのー?」
「誕生日はいつ? 好きなモノとか趣味は?」
「勉強得意?」
「中休みに校内案内してあげよっか?」
……など、聞き取れないほどの言葉が耳に響く。返答する事も出来ずに戸惑っていても、助け舟は来ない。
だから、自分で言う事にした。
「一気に言われると聞こえない」
って。
さすがにいきなりうるさい、と言うのは嫌われそうなので止めておいた。でも、一応聞こえないというのは伝わったみたいで、すぐに教室が沈黙に包まれる。
「じゃあ、うちが言う! どこの学校から来たの?」
沈黙を破った1人の女子は、選手宣誓でもするように右手を挙げて教室を越えて廊下まで響きそうな声で発言する。
「桜丘、小学校」
途切れ途切れに答えて私が恥ずかしがるように俯く(演技)と、丁度チャイムが鳴った。
「あ、じゃあねー」
「またねー」
とか言いながら、クラスメートは席に着いていく。
何故かは分からないけれど、ガタンと椅子を引く音とチャイムの音が、耳にこびりついて離れない。
そして、宮本桜のあの声も。
- Re: 私の居場所は作らない。 ( No.8 )
- 日時: 2011/02/28 15:24
- 名前: 千咲 ◆864fRH2jyw (ID: XgYduqEk)
二時間目は算数。ちなみに一時間目は国語だった。
小学校の授業は、大体一時間目国語、二時間目算数がお決まりである。理由は聞いたことあるけれど、ずっと前に忘れてしまった。
「で、こことここを計算するの。だから、答えがこう。質問なければ次行くよ」
淡々と話しながら、授業を進める担任の丸井先生。私は黒板に書かれる文字を書き写し、授業を聞き、ノートを取るという3つの行動を同時に継続する。一時間目は聞き流して適当にノートを取っただけだったけど算数は苦手なんでちゃんとやんないと。ずっと学校も休んでたし。まぁ、塾行ってるからその辺は大丈夫だけどね。
心の中で呟き、時計を見てみると授業は半分を超えていて、あと10分で終わりだった。私はノートを鉛筆の文字で埋める手を止め、窓を見てみる。やっぱり空は、暗いまま。灰色の雲で埋め尽くされ、太陽の日差しは全く地上に届いていなかった。
「はい、次のページ行くよ」
丸井先生の声を聞き、私は教科書のページをめくる。大分前から転校は決まってたから教科書は調達済みである。
窓を見るのを止め、私はまたノートに黒板の文字を書き写し始める。
「じゃあ、ここの①と②宿題ね。明日、ノート持ってくる事。じゃあ終わるよ」
丸井先生はチョークを置き、日直の笹島とかいう人を見つめる。
「気をつけ」
「はい」
「これで、二時間目の学習を終わります」
「終わりまーす」
終わりの挨拶を引き金として、クラスメート達は立ち上がる。
さぁ、今のうちに逃げよう。
- Re: 私の居場所は作らない。 ( No.9 )
- 日時: 2011/02/28 19:40
- 名前: 千咲 ◆864fRH2jyw (ID: XgYduqEk)
転入生に質問攻めが付き物という事は前から知ってはいた。知ってはいても、実際に体験するとなるとかなり困ることが、さっきの休み時間で理解できた。それに私は、冬休み一ヶ月前くらいという何とも中途半端な時期に転入してきたから、余計人が集まるだろう。
それは、人付き合いが苦手な私には嫌過ぎてたまらない。
だから、イスをしまって教室のドアを開けて、校内のどっか目立たない所に逃げようとした。
——だけど、呆気なく逃亡は失敗に、終わった。
「チャイム鳴るまで教室からは出ないルール」
ぐいっと手を強く掴み、聞き覚えのある声で話しかける人物。
驚いて顔を上げると、宮本、桜だった。
「……少しお久しぶり、だね」
返事も出来ずに宮本桜を見ていると、3秒後にチャイムの音が響き渡った。
「あー、チャイム鳴っちゃったね。でもまぁいいや、行こ」
私の手を掴んだまま、宮本桜は足音を響かせて教室を出る。
……いや、まだイエスもノーも言ってないんですけど。
「手、離して?」
微妙に引きずられながら宮本桜の後を歩く。
今はとりあえず1人にして、よりも手を離して、の方を優先する。
何故なら宮本桜が、手に跡が残りそうなくらい強く手を握り締めてくるから。
「大人しくしてあたしと話してくれるなら良いよ」
私の手を強く握り締めてすたすた歩く宮本桜は、こう返答した。
尋常じゃない程の手の痛みに負けそうです。
「わ、分かった、だから離して」
……結局痛みに耐え切れず、負けました。
「それでいいんだよ」
少し前に見たあの無邪気な笑顔を見せ、宮本桜は私の手を引っ張り、どこかへと走り出す。
「あの、手」
余計痛くなりました。っていうか離して。
「後で離すって言った筈だけど?」
「言われてない!」
そして教室前の廊下を走り抜けて、階段を降りて、ようやく宮本桜の手は離された。
「さーて、話そうか」
まだ消えない手の痛みを消そうと、腕をぶんぶん振り回しながら私は答える。
「な、何を?」
「神崎サンの事がもっと知りたくて、ね。色々と聞こうと思ってさ」
人指し指をくるくると時計回りに回しながら、宮本桜は笑った。
- Re: 私の居場所は作らない。 ( No.10 )
- 日時: 2011/02/28 21:36
- 名前: 千咲 ◆864fRH2jyw (ID: XgYduqEk)
「例えば、夢とか、ね」
指を回すのを止め、笑ったまま宮本桜は言う。
「今の所、夢は特にない」
夢、か。
考えたことは星の数ほどあるけど、特に何も思いつかなかった。
小さい時はおはなやさんになるーとかかんごふさんになるーとか言ってたけどね。
「そっか。あたしはね、夢ってワケじゃないけど」
別に聞いてないんですけど、というツッコミは心の中でしておいた。
多分言ったらなんでやねんと笑いながら殴られるはず。
ていうか、続きはまだですか。
「ガラスの海に、溺れてみたいなぁ」
躊躇ったように少し黙ってから、宮本桜は意味が分からないさっきの続きを喋る。
「……で、理由はなんですか」
よく分からんが、一応聞いておく。
「こんな窓のガラスの破片で埋もれた世界でね、眠るように溺れたい」
つまりはあれですか。厨二病ってやつですか。
……って言ったら、笑顔で殴られるな。
「変だよね」
無邪気に笑って、宮本桜は私に問いかける。
「いや、変って言うより、そんなとこで寝る……じゃなくて溺れたら死ぬよ?」
身体中にガラスの刃が突き刺さってグロテスクな事になりそう。
夢、ないなぁ。私。
「んー、そだね。あたしは別にいつ死んでもいいよー」
幼稚園児みたいな口調で話す宮本桜。
「今死んでも、別に文句はないよ」
「それは同意するよ」
別に未練もないしね。
「そっか。あたしは早く死にたい派。神崎サンは?」
「……私は、なんだろーね?」
少し間を開けて返答し、私は腕を組んで考え込む。
死にたい? 生きたい?
苗字が難読苗字の方が自分の苗字をパソコンで変換するくらい、哲学みたいな事を考えるのは面倒だと思う。
だけど、何となく考えてみたくなった。
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