複雑・ファジー小説

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この世界で
日時: 2011/09/12 00:00
名前: きなこうどん (ID: QGQgEihT)

初めまして。「きなこうどん」という者です。
小説をネット上で書くのは初めてのことなので、多少矛盾があるかもしれないです。でも、多くの方に読んでいただけると幸いです。
よろしくお願いします。


この物語は、ある家族の物語です。
この世界のどこかに、こんな家族が存在しているのではないでしょうか。
どうぞ、最後までお楽しみください。

Re: この世界で ( No.34 )
日時: 2011/09/30 17:39
名前: ファルシナ ◆OjcrLFo6Is (ID: IhKpDlGJ)

みかちゃん死んじゃうの・・・?
いやーーーー!
悲しいけど更新待っています。
ホント、文才ありますね!

Re: この世界で ( No.35 )
日時: 2011/09/30 18:58
名前: ☆MOMO★ (ID: vp2qGUNh)


頑張ってください!!

Re: この世界で ( No.36 )
日時: 2011/09/30 20:22
名前: きなこうどん (ID: QGQgEihT)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode


 2000年 冬


——どうしたらいいですか?

ぼくは、杉田さんに聞いた。

「そりゃあ、おめえ……」

さすがの杉田さんでも言葉に詰まった。

「そりゃあ、おめえ……」

またその言葉を繰り返した。

みかが死んで、一カ月が過ぎる。みかがどうして死んだのか、当時のぼくには少しだけ理解しがたかった。今でも、交通事故なんて、信じられない。

……もう、それはいいや。

どうして、いなくなったのかなんて、もうどうでもいいんだよ。

ぼくはさすがにまいって、杉田さんにどうしたらいいか聞いた。

「ねえ、杉田さんはどうしました? 息子さんがなくなったとき」

ぼくはトラックに揺られながら、言った。仕事なんか、ない。あてもなく、ぼくらはトラックを動かしている。初めて、ゆうたがトラックに乗った。今は助手席に乗る僕の腕の中だ。揺られた心地よさに眠ってしまっている。

「泣いたぞ」

いやにはっきりした声で杉田さんは返した。

「泣いたさ。一生分な」

杉田さんはそれだけ言って、ハンドルを動かすことだけに集中した。今でも、その時のことを思い出すと、思わず泣いてしまうのだ、といつか話してくれた。だから、今も、耐えているんだろう。

一生分と言いながらも、まだ傷は癒えない。

Re: この世界で ( No.37 )
日時: 2011/09/30 21:14
名前: きなこうどん (ID: QGQgEihT)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode


「泣いたか?」

隣りから、優しい声が聞こえた。ぼくは薄笑いした。

「泣きませんでした」

ぼくにはそう答えることが簡単すぎた。杉田さんは黙った。ぼくの答えが意外だったのか、それとも……。

沈黙が続いた。

トラックは意味のない道を意味もなく走り続ける。暗くなりかけた、空に太陽が傾いていて、美しい。ぼくはみかと知り合ってから、これほど綺麗な物を見たことがあっただろうか。

誰も話すことのない車内はぼくにとっては心地よかった。ずっと、このままでいたかった。永遠に。みかと一緒にいたい。



「このままいなくなりたいです……」



ぼくは意味ないような言葉を言ったような気がした。でも、心の中にはこの言葉が占領している。

杉田さんはその瞬間体を硬直させた。今のぼくには人間のいくら小さな変化でもわかるような気がした。

「死にたいです……」

ぼくは完全に抑える力がなくなっていた。何でも、言える気がしていた。笑えた。ぼくはいっそのこと壊れてしまいたかった。

「ていうか、すぐに死ねますよね? このハンドルを動かせばすぐにでも!」

ぼくは杉田さんの腕をつかんだ。杉田さんは身を震わせた。かまわずに力を込めて握った。

「早く! 逝かせてください! 早く!」

ぼくは怒鳴った。ゆうたはその声に驚いて泣き出した。車内はさっきとは全く逆の雰囲気に押しつぶされた。杉田さんはまだまっすぐに車を操縦している。

ぼくは、じっと杉田さんを睨んだ。

「早く!」

ぼくは泣きたい思いだった。

「早く! はや——」

「いいかげんにしろよ!」

急ブレーキを踏んだ杉さんはこちらを睨み返してきた。ぼくは正気に戻る感覚に襲われた。睨んだ目をふいっとそらした。

——杉田さんはもう、何も言わなかった。

ぼくは声のやり場がもうどこにもないような気がした。つかんだ腕も、もう今は役立たずの棒だ。

「あああっああああああああーーー!!」

ぼくはなんだかやりきれなくなって、吠えた。

大丈夫、トラックはもう、山の中に入っていた。

「ああああーー!!!! ああああああーーー!!!」

ぼくは夢中で吠えた。空の方向を向いて。でも、実際、そこに広がっているのは空ではなく、地味な色をした天井だった。

でも、どれだけ吠えても、肝心の涙は枯れていた。ぼくの湿っぽい声だけが車内に響く。

——みかはこんな所にはいない。もっと遠くへと行ってしまった。









みか、聞こえていますか? もう、泣いてなんか、いませんよね?

だって君は——


娘と同じ所へと旅立ってしまったんですから。

Re: この世界で ( No.38 )
日時: 2011/10/01 15:06
名前: ファルシナ ◆OjcrLFo6Is (ID: q.GNWgNw)

更新楽しみにしてますね。


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