複雑・ファジー小説

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この世界で
日時: 2011/09/12 00:00
名前: きなこうどん (ID: QGQgEihT)

初めまして。「きなこうどん」という者です。
小説をネット上で書くのは初めてのことなので、多少矛盾があるかもしれないです。でも、多くの方に読んでいただけると幸いです。
よろしくお願いします。


この物語は、ある家族の物語です。
この世界のどこかに、こんな家族が存在しているのではないでしょうか。
どうぞ、最後までお楽しみください。

Re: この世界で ( No.4 )
日時: 2011/09/15 00:16
名前: ファルシナ ◆OjcrLFo6Is (ID: SDxUVldQ)

面白かったです。わたしもまだ始めたばかりです。(昨日)
よかったら見に来てね。私の駄作を・・・

Re: この世界で ( No.5 )
日時: 2011/09/15 00:17
名前: きなこうどん (ID: QGQgEihT)

母のことは中学生……いや、小学生の頃から苦手、というか嫌いだった。

ぼくには弟が一人いた。

ぼくと違って小さい頃から習い事を週にいくつもこなし、元々才能もあった。隙間の時間を自分で作って自分のしたいことをしていたし、もちろん習い事も難なくやりこなしていた。ときどき、不満を言うものの、自分で決めたんだから、と続ける意思を示した。弟は負けず嫌いでもあった。

Re: この世界で ( No.6 )
日時: 2011/09/15 00:20
名前: きなこうどん (ID: QGQgEihT)

ファルシナさん、返信ありがとうございます。

あなたの作品も読ませてもらいます。

これからもぜひわたしの作品を読んでくださいね。

本当にありがとうございました。

Re: この世界で ( No.7 )
日時: 2011/09/16 06:01
名前: きなこうどん (ID: QGQgEihT)


ぼくが、高校の入試を目前にしても、実際弟の方が忙しかったんじゃないか、と今でもよく思う。

ぼくが学校から帰ってきても、塾に行くときも、テレビを見ていても、弟はボールを触ったり、そろばんを電卓代わりにしたり、筋肉トレーニングをしたりしていた。

精神的にも鍛えられた弟はその何年か後に自転車で通える頭の良い公立高校に入った。一方、ぼくは電車で通うしかない私立高校に通っていた。

母は忙しい弟の世話をすることが多く、ぼくにかまってくれる時間は少なかった。母はぼくに愛情を注いでいてくれていたかもしれない。でも、小学生のぼくはそんな母が苦手になり、嫌いになり、そしてその印象が変わらぬまま大人になってしまった。

ぼくはどこで道を誤ってしまったのだろう。それが未だにわからない。


Re: この世界で ( No.8 )
日時: 2011/09/16 20:51
名前: きなこうどん (ID: QGQgEihT)

「お金がかかるから、おかあさん、働かなきゃいけないのよ」

一度だけ、母に言われたことがあった。弟が受験モードに切り替え、習い事を休むようになったとき、ぼくは高校生ながらに母にかまってほしい、と思った。それは小さい頃の交流が少なかったからかもしれない。

「お金がかかるから、おかあさん、働かなきゃいけないのよ」

だから、母が前髪を掻きあげて家計簿をつけながら、ぼくの顔も見ずにそう言った言葉が今もずっと心に残っている。

母にとっては本当に「それだけ」の意味だったかもしれない。でも、ぼくにはわかっていた。

『高山さんのとこ、私立だって』

『あら、そうなの? あのうち、一年前くらいに離婚しちゃったんでしょ? 経済的にも苦しいわね』

同級生の母親たちにささやかれていることをぼくは知っている。母も、きっと、知っている。

ぼくは、疫病神だったんだと思う。

自分でも笑ってしまう。

ぼくは残念ながら何も、何一つさえ持っていなかった。弟のように何でもこなせる体力も、忙しい日々をやりくりするアイデアも、忍耐力も、根性もない。

困り果てて、疲れ果てた母に対してとる態度も粗末なもので、結局そのときは何も言えなかった。そんな自分にも笑ってしまう。全く、馬鹿な奴……。ぼくも、母も。

そこからは、母との仲は下り坂だった。母は何も話してはくれなかった。ぼくも話しかけようとは思わなかった。弟が細くぼくたちの中をかろうじて結んでいたが、所詮それだけだった。

ぼくは母をますます嫌いになり、家にいたくなくなり、それがストレスで精神が不安定になった。

やがて学校にもいかなくなった。

——家にいたくないのに、学校にも行きたくない。

そんな矛盾の中で、ぼくはうつらうつらしながら、呼吸だけはしっかりしていた。その間にも、弟はますます男らしい体つきになり、声も変わり、彼女もできたようだった。弟はいつの間にか兄をよそにどんどん走り去ってしまった。

ぼくは正式に学校を退学し、本当に生きている意味も見失ってしまった。ただ、寝たり、食べたり、ときどき湯につかったりして季節をめぐり、やがて一年を過ごした。

ぬるい湯に一人で浸っていると、死ぬことばかりを考えた。

定時に出かけて行く弟の背中を眺めると、学校に行っていた頃の自分を思い出した。




ぼくはついにだめになった。


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