複雑・ファジー小説

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時雨の刀【完結しました!】
日時: 2012/04/16 16:33
名前: Sky  ◆M7x9jXIufw (ID: 5fqeGTW2)

嗚呼、此処は何処だろう?
“私”という名の存在は【自分の意志】を持たない、持てない。
“私”という名の存在は貴方に【命令】されなきゃ動けない。

「おい、お前お茶を汲め」
「分かりました、御主人様」
「おい、お前服を脱げ」
「分かりました、御主人様」

“御主人様”が言った通りに体を動かす“私”という名の存在
感情を持たない。
けれどーーーー。

「おいっ!大丈夫か!」

現れた男の人達に手を引かれ、“私”という名の存在は“時雨”という名の存在に移り変わって行った。


私は見つけたーーーー“存在する”という事を。



時雨の刀

Re: 時雨の刀 第一部 ( No.16 )
日時: 2011/11/17 19:54
名前: Sky  ◆M7x9jXIufw (ID: qTh1yy9a)

「私はこの国からすれば他の国の者です」
「まぁ…それは、そうだろうな…お前みたいな容姿の奴見た事ねェし」

水色に近い銀髪、そして人形の様に青白い肌。
人間というより、確かにその少女は天使よりも美しく尚地獄の連獄者の様に生きる事を失った美しくも哀れ過ぎる少女だった。
少女の一つ一つの丁寧な口ぶりからは声がかなり幼すぎた。
しかしそれを言い終わった後、少女はピタリと喋るのを止めた。
その少女は未だに命令に背けない。

「おい、藤堂」
「!…土方さん」

釣目で綺麗な黒髪の男が障子の襖を開けて入って来た。
呼ぶのは藤堂の名前、それに答えるかの様に相手の名を呼ぶ藤堂。
彼は新選組鬼の副長と呼ばれる土方歳三であった。

「おい女、ついて来い」
「それは、命令ですか?」
「嗚呼命令だ」

土方がそういうとすくっと立ち上がり、それに促されて藤堂も立ち上がる土方は少女が立つのを見て後ろを向いて歩いて行った。
藤堂と少女もそれに付いて行く。
藤堂がちらりと少女の足下を見ると、痛々しくも残る無数の痣らしき物と鎖や縄で繋がれた場所の痕がくっきり浮かび上がっている。
それを見て顔を険しくする藤堂。
それは、この少女を何としてでも救ってやりたかったからであった。
命令の忠実さから幼少期から恐らく「命令」を聞いていたのだろう、そう考えた。
藤堂の考えは、新選組の少女救出に携わり藤堂から少女の事を聞いた隊士達の殆どが思っている事でも有った。

「近藤さん、女を連れて来たぞ」
「お、良い時だトシ」
「うぃーす」

襖を開ける土方は誰かと話しをしてさっと入って行く、藤堂に促されて部屋に入る少女それを追うかの様に入る藤堂。
そこには、新選組の隊士達がずらりと座り少女を見つめる。それに動揺もせずに促された所へ座る少女、勿論何も話さずに。

「それでは!今回の志士事件に関連していた少女をどうするか意見を聞きたい」

近藤が真剣な眼差しで声を上げた。
言葉を聞いて一番最初に発言したのは土方だった。

「普通は殺すのが一番じゃねぇか?」
「それじゃあ可哀想だろ!!」
「僕も…藤堂君と同じ意見」
「しっかし、何処でこーんな別国のべっぴんさんを手に入れたんだか」
「だよなー原田、俺もそれ思った」
「いや…まずこの少女をどうするかだ」

土方の発言を否定する藤堂、それに賛同する松原。それとは違い少女の魅力の話しをする原田と永倉、それを止める様に話す近藤。
すると今まであまり口を開かなかった人物が大騒ぎの中、口を開いた。

「俺は、この娘を此処で預かった方が良いと思うよ?」
「総司、何故だ?」
「この娘を殺しても惜しい、かと言ってまた外に放れば男に捕まるデショ?それにこの娘はまだ二十も満たない、そういう事を考えると俺達がこの娘を此処で過ごさせて本当の“人間”にした方が良いと思うよ?」
「総司!それを言っては「近藤さん、貴方も解ってる筈ですよね?この娘がどんな扱いを受けて来たか、その扱いは“人”では無く“物”として、今そこに居る娘はただの“物”になってる」

右手に煙管を持ち煙を吐く好青年、沖田総司が提案を述べた。
それに重ねる様に斉藤が言葉を述べる。

「確かに、それは正しき判断と思うが総司…預かると言ってもこの少女どうするんだ?」
「隊士の中に入れる」
「はぁ!?何言ってるんだ総司!彼女は女だぞ!!」
「女でもこの子は僕達には持っていない物を持っている…平助」
「んぁ?」
「この娘、構えが違ったって言ってたでしょ?」
「あ…嗚呼」

驚くべき沖田の提案、その事に反対する近藤に沖田は微かな思いが有った。

「それはこの娘が暮らしてた国の構え、今それを僕達が取り入れれば志士にはこの娘の牙は止められない」

Re: 時雨の刀 第一部 ( No.17 )
日時: 2011/11/23 21:16
名前: Sky  ◆M7x9jXIufw (ID: qTh1yy9a)

藤堂から聞いた少女の異様な構え方、そして彼女の容姿…。
沖田が思うに、それは他の国の構え方だと感じ少女を隊に入れれば志士に匹敵する力を持つと考えたのである。

「俺、その意見に賛成だ」
「僕も」
「俺も!!だってこんな良い娘が居たら屯所が盛り上がるぜ?」
「おう!」

その意見に対して賛成と言わんばかりに組長達が次々と手を挙げて行く。
土方と近藤も顔を見合わせてため息を付き

「よし!じゃあこの子は新選組女隊士として任命しよう」
「只、特訓に対する容赦はしねぇぞ?」
「………」

何も言わない少女に近藤が立ち上がり少女の肩に大きな手を置いて、少女に告げた。

「もう此処からは君の好きなように生きなさい、此処が君の家で俺達皆が君の家族で同士で戦友だ」
「What is home and family?」(家と家族って何?)
「え…?」
「But I should not have a meaning of life, why?」(私には生きる意味が無いはずなのに、何故?)

少女は近藤に英語で問う、それは本心を悟られぬ様にする為だが勉強熱心の斉藤には少女の言っている言葉が分かっていた。
下唇を噛み締めながらも、英語で話し続ける少女に近藤は対応に狼狽えたが気にせずにどんどん異国語を話して行く。

「I was sold to parents, but only gave me the way that people live so my thing ... but it was hard」(私は親に売られた、だからあの人達が私を生きるだけの道を与えてくれたもの…それは辛かったものだけれど)
「What you guys are helping us reach out to me?」(貴方達は私に救いの手を差し伸べてくれるのですか?)

斎藤が立ち上がり、近藤の耳元で翻訳をしてやると近藤は悲しそうな表情を浮かべたが、少女の手を掴み

「勿論だ、君は俺を父…隊士達を兄弟と慕ってくれても構わないよ…君は俺の大事な友人兼娘で仲間だ」
「Really?」(本当?)
「嗚呼」
「Thank you……ありがとう」

涙をこぼしながら、近藤にすがりより英語と日本語で「ありがとう」と言う。
しかし、少女の心の傷は深く抉られている。
そう簡単に抜けるものでは無かったーー。
でも、少女は誓った。

「I've been living my life is over now, so God, I thank you for my life and try again」(私が今まで生きて来た人生は終わりました、だから神様、もう一度やり直す人生を私にくれてありがとう)


Re: 時雨の刀 ( No.18 )
日時: 2011/12/29 14:40
名前: Sky  ◆M7x9jXIufw (ID: qTh1yy9a)

少女が涙をこぼす中、近藤が紙と筆を持って来て

「君が此処に住むというのなら此処に君の名前を書かなきゃな」

と言って隊士書を手渡すが、少女は首を捻り頭の中で必死に何かを考えていた。

“名前”

少女にはこの国にふさわしい名前を持ち合わせていない、本名は男達がそう呼んでいたのだからそうであると判断出来るのだが

「すみません…私の名前は西洋風なので、新たに名を付けて頂けませんか?」
「……それは構わないが、本名は教えてくれないか?」
「Diana=Asper」(ディアナ=アルペル)
「でぃ…??」
「本名を教えたので…早く名付けて頂けると嬉しいのですが……」
「えっ…えーと」
「時雨でどう?時の雨を象徴する少女は、月からの伝言者と言うしね」

悩んでいる近藤に小耳を挟んだのは沖田、それに「さっすが総司!」と乗る気を出した藤堂や「おうっ!良い意味じゃねぇか、確かに時の流れを象徴させる顔をしてやがるし」と原田が乗った。
「俺はコユキとか…」という永倉に「それは…犬の名前と同じでしょ?」とツッコむ松原、「あの白わんこはいいが、コイツは人間だ」と厳しい目で見る土方とそれを見守る斉藤が居た。
なにやらざわざわしていると、近藤が総司の意見に提案して命名書+隊士書に「時雨」と書き込んだ。

こうして、捕われた少女は消え“時雨”と姿を変えたーー。



【第一部】 名を無くした少女と新選組 
『ニ話』 全てを無くした少女の名はーー終幕ー

Re: 時雨の刀 ( No.19 )
日時: 2011/12/20 21:12
名前: Sky  ◆M7x9jXIufw (ID: qTh1yy9a)

【第一部】 名を無くした少女と新選組 
  『三話』 桜時雨の舞


「ちょっと、あの子でしょ…?いきなり新選組に入隊した子って…」
「嗚呼、“望月 時雨”さんだっけ…?」
「そうそう、女の子なのにしかも十代!良く入れたわねー、異国人で」

時雨が町を歩くと、すれ違う人達が振り返って時雨をまじまじと見つめる。
“望月 時雨”
満月を意味する望月を苗字に取って、時雨は新選組に転がり込み刀で洋風の構えをする剣術を磨き、早一ヶ月ーー。
髪の毛は腰の辺りで切り揃え、表情も少し変わっていた時雨が居た。
今は隊士として、江戸を巡回中。
同じ隊士で、直ぐに時雨の気持ちを悟れる藤堂が時雨の巡回時に同じになったーー。
ごくたまに替わる事が有るのだが、時雨は新選組の中でちゃくちゃくと“人間”に近づいて来たが、それも又一歩のみ。

「今日、何か変わった事がありそうか?」
「………命令として受け取ります、有りません」
「そうか」
「今日の江戸は“平和”という言葉が似合うと思います」

あの迎えられた日の後に、また時雨は無表情無頓着無関心の命令重視少女に戻ってしまった。
頬の筋肉は戻りにくい程に固まり、同年代らしき少女達からも

「ねー、またあの子いるわね…」
「ちょっと無表情で嫌だよね…まさに雪女?」
「でもあの沖田さんと仲いいらしいよ?」
「本当!?許せないわね…」

忌み嫌われていた。
それでも、ただ顔を変えずに歩く時雨は悲しそうな顔はしなかったが

「時雨ちゃんこれ飴よ、私沢山貰ったからあげるわね」
「…有り難うございます」
「あー、ずりィ!!清香!俺にも!!」
「時雨ちゃんから貰いなさい、平助」

年上の「門脇 清香」。
江戸の中で団子屋を開いている父の手伝いをしている二十代前半の女の人で新選組と良く出会う美人さん。
時雨をまるで、妹の様に愛でているお姉さん的な存在感を持つ方だった。

「あれ…?藤堂??」
「総司…何で此処に居るんだよ」
「総司さん…お仕事抜け出し…ですか?」
「うーん、まぁね…一服したかったし」

団子屋の奥で、団子を食べながら煙管を持って煙を吐く沖田が居たーー。
どうやら仕事を抜け出して、此処で一服していた様だったが

「おい、総司」
「あれー?斉藤君…??」

直ぐに見つかったようだ。

Re: 時雨の刀 ( No.20 )
日時: 2011/12/22 17:59
名前: 雪姫 (ID: jJ9F5GeG)



Skyさん!小説見に来ました!!
なんか、私の好きなタイトルなので見に来たら、これは新選組の小説なんですね!
まだ、全話読んでませんが(すいません
凄く面白いです(~o~) ゆっくりですが、全話ちゃんと読みますからね!!
更新頑張ってください^^


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