複雑・ファジー小説

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六花は雪とともに【完結☆ 挿絵更新】
日時: 2012/01/20 21:56
名前: 火矢 八重 (ID: kGzKtlhP)

こんにちわ、こんばんわ、そしておはようございます。
毎度お騒がせの火矢 八重でございます。
さて、前置きをブッ飛ばして、注意事項へ行きましょう。

・荒らし・中傷は今すぐお帰り下さい。
・この小説は未熟者の中坊が書いております。「こんなのは嫌だ」と思った人は、戻るのボタンを押した方が災いを防げるかと思います。
・時代小説ですがファンタジーです。妖バリでます。
・荒らしはお断りですが、アドバイス・コメントはおk!反対意見(?)や物語の矛盾点、誤字の知らせなどもどんどんください!


さて、題名の「六花とは何ぞ?」と思っている方も多いと思います。六花と言うのは雪の結晶が六角形であることを「六花(りっか、ろっか)」と呼ぶそうです。




ちなみに、題名は思いつかなかったので他の人に協力を求めましたw
協力してくれた心やさしい方々↓

・サリー様・将軍様 ・葉紋様 ・ゆいむ様 ・黎様 ・27助様

この題名は27助様のアイディアを(ちょっといじって)使わせて頂きました。皆さまお忙しい中、有難うございました!
また、キャラクターの名前を考えてくれたサンマ様、誤字の訂正をしてくれた私のばあ様も、有難うございました!

それでは、始まります!
                                                      書き始め 11月6日

        ◆            ◆

お客様

志保様 『*イナイレ*【トリップ】失い過ぎた少女】など (二次小説の方でお世話になっていますwとても優しく突っ込みが素晴らしい方ですw)

27助様 (この小説の恩人さまです。素敵な題名有難うございました!)

シンデレラ人形様 『ドール・ヒーロー』 (コメントが可愛らしい方ですw勿論、小説も!)

ヒトデナシ様 『もしも俺が…』 (恩人さまその弐です。感動出来るお話と、それでいて重くならない、素敵なギャグや笑いを作れる方です。ヘタレな私を励ましてくれますbとても尊敬していますw)

ガリュ様 『氷翼少女』など (とても成長が早い(と言っては少し失礼ですが)、パワフルな方ですwファジーの処女作時代からの知り合いですw)

美羽様 『私たちのキズナ』 (可愛らしい学生のお話を書いています。一生懸命なお方ですw)

リオン様 『†萩宮学園 戦乱白書†』など (恩人さまその参です。素敵な題名有難うございました!) 

王翔様 『姫は大使で侍で。』 (沢山の物語を書いている、とても凄いお方です!処女作からとてもよくして頂いて、絵も頂いてしまいましたwとってもかわいい絵と、素敵なキャラを書く人ですw)
 
なっちゃん様 『素直の大切さ・すれ違い』 (とても一生懸命で面白いお方ですw学生の恋愛を書いています)

46鷺様 『存在証明裏表』 (妖モノが好きと言う、気が合いそうな方です♪小説は何時も楽しみにしておりますb)

水月様 『光の堕天使 〜聖なる力を持つ堕天使の物語』 (主人公ルエたんがメッチャ可愛いです!!とても優しくしてくれる方です^^)

白月様 『黒ウサギ×銀色蝶々』 (絵も頂いちゃいました!!目がとてもキュートですw白月様が書いたお話、とても面白いです!!時々このスレで個性的な主要キャラクターが雑談したりしています^^)

千様 『終日』 (とても怖い大樹が出てきますwまだまだ始まったばかりですが、話がとても樹になる、じゃなかった気になります!!)

檜原武甲様 『罪とDesert Eagle』 (オリキャラでお世話になった方ですw感謝感謝)

フェイト様 (優しくさせて頂いていますw)

陽様 『姫と魔物』 (面白い方ですよ♪休息気分な白龍と雪乃の絵も描いて下さいました!!)

フレイア様 (最近知り合ったばかりですが、とても優しいです♪)

刹那様 『あやかしの花嫁』(鑑定と何とコメントまで頂いちゃいました♪ 本当に感謝し尽くせません)

             ◆        ◆

鑑定してくださったかた

凜様 ステッドラ—様 初音カノン様 刹那様

             ◆       ◆

絵を描いて下さった方

王翔様 

神村様 (何時もお世話になっていますwとても可愛らしい絵を描いて下さる方です♪)

うさ様 (可愛らしい芙蓉の絵を描いて下さいました!!)

白月様

陽様

狐灯様 (格好良い白龍を書いて下さいました!!)
             ◆             
登場人物>>1 用語解説>>2  

第一部後書き>>43 番外編後書き>>68>>176  第二部後書き>>129 第三部後書き>>278 new!


—————————————————————————

◆第一部◆

序章 昔話のハジマリ>>3

第一章 優しい雪女>>6-7 挿絵>>8
 
第二章 春の女神>>13-15 挿絵>>16  

第三章 名を呼ぶもの>>27-29 挿絵>>30

第四章 似た者同士、違う所>>33-34 挿絵>>35

第五章 雪女の恋>>39-41 挿絵>>42


番外編

その壱 妖と人と水神様と>>49-51 挿絵>>105

その弐 交差するモノ>>64-67 挿絵>>253

その参 流るるままに>>145-150

その肆 六花とともに>>167-168


◆第二部◆

第六章 沢山のカケラ その壱>>76-78 挿絵>>79

第七章 沢山のカケラ その弐>>100-101 挿絵>>102

第八章 沢山のカケラ その参>>113-114 挿絵>>115
→小話 繋がる絆>>127


◆第三部◆

第九章 蛮勇と勇気の違い>>202-203 挿絵>>204

第十章 明かされた生い立ち その壱>>220-221 挿絵>>222

第十一章 明かされた生い立ち その弐>>240-242 挿絵>>243
→小話 『君を忘れない』>>246

第十二章 春の女神と雪女>>249-250

第十三章 最後の六花>>259-263 挿絵>>289 new!


最終章 明日への物語>>273
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

【参照100突破感謝会】>>31
【参照200突破感謝会】>>52
【参照300突破感謝会】>>72
【参照400突破感謝会】>>95
【参照500突破感謝会】>>121
【参照600突破感謝会】>>138
【参照700突破感謝会】>>155
【参照800突破感謝会〜双六大会〜】>>164
【参照900突破感謝会〜以下略〜】>>173
【参照1000突破感謝会〜以下略〜】>>187
【参照1100突破感謝会〜以下略〜】>>207
【参照1200突破感謝会〜以下略〜】>>216
【参照1300突破感謝会〜以下略〜】>>226
【参照1500突破感謝会〜以下略〜】>>255
【参照1600突破感謝会〜以下略〜】>>277

Re: 六花は雪とともに【アンケ実施中・第十一章更新!!】 ( No.246 )
日時: 2011/12/27 21:08
名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: geHdv8JL)

小話 『君を忘れない』


『……ねえ、姉さん』

 不安そうな顔で、彼は聞いた。

『なあに? 紫苑』

『僕達、ずっと一緒に居られるかな……?』

 ——なんだ、そんなこと。
 私は聞いてほっとし、明るく答えた。

『当たり前でしょ!! 姉弟なんだから!!』

 その言葉を聞いて、彼は少しだけ表情が明るくなった。


 私は、何も判っていなかったから笑っていた。
 彼は、全て判っていたから不安な表情を浮かべていた。

 あの日から——私たちはすれ違っていたのかもしれない。
 そして——。


                            ◆


 帝である紫苑が自決し、強硬派が芙蓉たちの手によって葬られたその三日後、私は再び王室を訪ねることになった。
 あの日燃えた王室は、中庭すらも燃え、残っていたのは松の木だけだった。
 そう。あの防空壕の跡の隣にあった、松だ。


「ここは……燃えなかったんだね」


 そう独りで呟いて、私は防空壕の中を覗くようにしゃがみ込む。


「……良かった。ここは思い出が多い穴だから……といっても、忘れているのが多いけど」


 忘れたのは、何故だろう。
 忘れたかったから? ここに居る生活を忘れたかったから?
 だから、いつの間にか忘れてしまったのだろうか。


「……私は、『忘れる』という行為は、悪ではないと思う」


 誰に伝えるわけでもなく、自分に言い聞かせるように言った。


「誰だって忘れたいことはあって。辛いこと、悲しいことは忘れていいとおもう。……それが例え、罪をおかしたとしても」


 そう。自分のしたことに恥じて、反省したならば……もう、充分苦しんだのだから、忘れてもいいと思う。
 けど……忘れたくない思い出が、沢山ある。楽しかった事、嬉しかった事を、忘れたくないんだ。


「……どうすればいいのかな、私は」


 忘れたいのだろうか。
 忘れたくないのだろうか。
 そんな想いが、頭を駆け巡る。

 サアアア……と、風が雪乃の頬に触れた。冷たい風が吹く。
 ふと足跡を見ると、焦げた土の上に、鮮やかな紫色の花が生えていた。


「紫苑……」


 季節外れの紫苑の花だった。淡い紫色の花は、黒の上だととても鮮やかに見える。
 どうして、こんな所に生えているのだろう。私は恐る恐る紫苑の花を手にし、目の前に持ってきた。
 その時、何処からもなく、声が聞こえたのだ。


『——雪乃は忘れても、僕はずっと君のことを忘れないよ』


 ——弟の声だった。
 私は驚いて、周りを見渡す。けれど、誰の姿も見えない。燃えた中庭には、私一人しかいなかった。けれど、確かにあれは弟の声だった。


 弟は——紫苑の花に転生したのだろうか。自分と同じ名を持つ花に。
 そして——私に伝える為に、こんな所に花を咲かせてくれたのだろうか。私を『忘れない』と伝える為に。


「——紫苑。私は貴方の事、絶対忘れない」


 私はまた呟いた。今度は、弟に伝える為に。


 私は、紫苑のことだけは忘れない。
 同じ血を引く、弟のことを。

 君のことを、ずっと忘れない。

 だって、そうすれば、貴方は私の心の中で生きていけるから。
 だから、忘れないよ。

 紫苑の花に向けて、私はそっと微笑んだ。





Re: 六花は雪とともに【アンケ実施中・小話更新!!】 ( No.247 )
日時: 2011/12/28 11:57
名前: ヒトデナシ ◆QonowfcQtQ (ID: j553wc0m)




    ぬあああぁぁあぁーーーーーーーー!!!!!!!! (うるせぇww)


      感動だ・・・・泣けたぜチキショー!!!
   そして紫苑と雪乃にはやはり何らかの関係はあったんですね・・・。


   今回の話は、私自身いろいろ考えさせられる話でしたね。
  『忘れる』という行為は悪ではない・・・・。確かにその通りですね。
  忘れてしまえば、苦しみからは逃れられるのですからね。

  ですが、雪乃は『忘れない』道を選んだ。これは誰もができることではありません。
  紫苑のためにも、この険しい道を選んだ雪乃は凄いと思います。純粋に尊敬しました。ええ。


    おっと、長くなってしまいました。失礼しました。
  そろそろラストスパートでしょうか・・・。私は最後まで見届けますよ。執筆ファイトです!!




Re: 六花は雪とともに【アンケ実施中・小話更新!!】 ( No.248 )
日時: 2011/12/28 17:40
名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: geHdv8JL)

ヒトデナシさん!!

も〜幾つ寝ると〜お正月〜

はい、こんばんは。しょっぱらからふざけてる八重ですw

紫苑と雪乃は双子だったんですよね(泣) 双子の話って結構悲しい話が多い……。

…ええ。私もそう思います。
忘れることが『悪』ではありません。例え、悪いことしても反省して恥じるのなら、忘れてもいいのだと思います。
ですが、雪乃は『忘れない』道を選んだ。苦しい思い出もあったけれど、楽しい思い出もあった。だから忘れないで居た。それはとても凄いことだと思います。
ちなみに、ご存知かと思いますが、紫苑の花言葉は『君を忘れず』らしいですw(題名はそこから取りましたw)

おっと、長話をしてしまいました。
ラストパートです。次回の話から雪乃が究極の選択を迫られます。
どんなラストになるか、楽しみにしてくださいw
更新頑張ります!! ヒトデナシさんは風邪ひいてはダメですよ!!!

Re: 六花は雪とともに【アンケ実施中・小話更新!!】 ( No.249 )
日時: 2011/12/29 17:19
名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: geHdv8JL)

第十二章 春の女神と雪女

 紫苑が自決して、七つの夜が過ぎた朝。


「雪乃、このままだと貴方は立春とともに溶けるわ」


 いきなり、佐保姫から伝えられたのは、『余命宣言』。
 それは、あまりにも唐突だった。


                        ◆


「私が……溶けて消える?」


 外に出た途端、いきなり伝えられた雪乃は、思わず思考停止した。


「……まさか、この話をする羽目になるとはね。ずっと、貴方のおじい様から止められていたのに……」

「……どうゆうことですか? というか、佐保姫様とおじい様知り合いだったのですか?」

「ええ。……実はと言うと、恋仲だったわ」


 あまりの唐突な証言に、雪乃は声を失った。


「でも、貴方のおじい様と私はいろいろ事情があって結ばれることはなかった。けれど私と彼は良く話したわ。
 ……雪乃。貴方のおじい様はね、二代前の帝の双子の弟だったのよ」


(おじい様が、紫苑の二代前の帝の弟……?) 


 疑問だらけだった。けれど、一つだけ腑に落ちるところがある。
——ということは、私の……。

「つまり、貴方とはれっきとした血のつながりがあったワケ。貴方が遠くの山に捨てられた時も、自分の生い立ちと重ねての行動だったようね。
 初めから話すわ。せっかくだから、私の社で話しましょう」


 佐保姫は何処か嬉しそうな顔で言った。


                               ◆


 佐保姫の社はとても広かった。——恐らく、異界なのだろう。桃の花や梅の花が咲き誇り、それでいて雪乃は熱くはなかった。
 佐保姫と雪乃は座ると、佐保姫はポツリポツリと話しだした。


「……あの人もね、貴方と同じく精霊を見ることが出来た。どうやら、双子として生まれた王家のモノは、帝にはならない方が精霊を見る力を授かるようね。貴方が『精霊』を見る力があることも、彼から聞いたわ」


 その言葉を聞いて、雪乃は一つずつ疑問か解けて来た。
 佐保姫は祖父から聞いていたのだ。だから、雪乃に精霊を見る力があることも知っていた。雪乃は誰にも話していないのに、佐保姫が知っていたのは、そういうことだったのだ。
 だが、もう一つ謎が生まれた。


「では……何故、帝にはなれない片方は忌子として間引きされたのでしょう? 『精霊』を見る者は、心清らかなものではないと見えないと、貴族の伝説で知りました。——そして、双子の片方が『災い』を持って生まれることも伝説で知りました。
 神は清らかなものとして崇められています。ですが、帝となる者は何故視えないのでしょう? そして、何故『災い』を持つ子として生まれるものが、清らかなものにしか視えない精霊を視ることが出来るのでしょう?」


双子の片方は『災い』を持つ子として生まれる、と大人たちに教わった。しかし、『災い』を持つ子が清らかな心を持つ者しか見られない『精霊』を視ることが出来ると言う。
 一方帝は清らかな『神』であるのに、『精霊』を視ることが出来ない。これだと矛盾してしまうではないか。


Re: 六花は雪とともに【アンケ実施中・小話更新!!】 ( No.250 )
日時: 2011/12/29 17:20
名前: 火矢 八重 ◆USIWdhRmqk (ID: geHdv8JL)

「当たり前よ。——帝は、『神』では無いもの」


 あっさりと、佐保姫は答えた。


「帝は単に権力を『象徴』しているだけ。清らかなでも神でも何でもない。……逆に、闇から生まれたもの。貴方が『陽』として表すなら帝で在った紫苑は『陰』。
 『陰』にとって『陽』は『陰』の存在を消すものとしか無い。だから、先代のモノは『陽』として生まれる双子の片方を恐れ、間引きしたのでしょうね。妖の存在が、消されないように」


 雪乃はもう全く判らなかった。
 正直言って、頭の中が破裂しそうだった。今まで信じていた物が、実は嘘っぱちの情報。いきなりの事に頭が合わせてくれるはずがない。
 そんな雪乃の様子に、見かねた佐保姫は言った。


「……実を言うと、私も良く解らない。何故貴方が『陰』から生まれた妖なのに『陽』の力を授かったのか。でも……それが災いして、貴方は寿命を削ることになった」

「……どういうことですか?」


 雪乃は恐る恐る聞いた。
 勿論、聞いても判る筈がない。けれど、聞かずにはいられなかった。


「……貴方の祖父はね、確かに大往生で無くなった。けれど、それはあの山を一度も降りなかったから。あの山は、『陰』の結界が張ってあるからね。……でも貴方は、もう何遍もあの山を降りたでしょう? そのせいで、『陽』の力が大きくなったの。……その為、その体は耐えきれず三日後の立春の日に……」

「『溶けてしまう』……そういうことですか?」


 雪乃の言葉に、佐保姫はコクン、と頷いた。
 結局、聞いてもほとんど判らなかった。けれど、一つだけ判ったことがある。
 ——立春で自分の命が消えてしまうと言う事。それだけは判った。


「……彼は、『その日まで雪乃の好きな道を選ばせてくれ』って、私に頼んだ。だから、貴方が好きな道を選んだ時、背中を押そうと決めた。
 でも、貴方が立春を過ぎても貴方が死なない方法を見つけたの」


「え……そんな方法が?」


 雪乃が思わず訊ねると、佐保姫は嬉しそうにコクン、と頷いた。


「貴方が——帝を継げばいい」


 その途端、雪乃は頭が真っ白になった。
 雪乃の様子に気づかず、佐保姫は玩具を見つけた子供のようにはしゃぎながら言った。


「貴方が継げば、『陰』の力が強まって、『陽』の力が収まる。——その代わり、『陽』の力を抑えるには一生山を降りないことが条件だけれど。でも、それさえ我慢すれば生きていけるのよ!」

(——私が、帝を継ぐ……)


 そんな言葉が、脳裏をぐるぐると渦巻きのように回る。
 確かに、生きて行くなら良いかもしれない。生きながらえるならいいのかもしれない。
 しかし、雪乃はそれが良い方法とは思えなかった。
 紫苑のことがあった。紫苑が自決まで追い込んだ王族を、正しい道に歩ませる器量は、雪乃には無いと思った。自分の為に家でした雪乃には、その資格がない。
 『帝』を継ぐというのは、頂点に立つと言う事。頂点に立つと言う事は、妖たちの願いや希望を叶えなければならない。

 理由はもう一つある。——『帝』を継げば、生きていても皆に逢えなくなる。ナデシコや芙蓉、杏羅に一生逢えなくなるのだ。
 ナデシコと芙蓉とはもう話せない。川男と一緒に釣りに行けない。——何より、杏羅の傍にいられないことが一番辛かった。
 逢えないと言う事は——『死んでいる』のと同じ事。自分を押し殺すような生き方は、どうしても雪乃には納得がいかなかった。
 だから。


「——私は、帝を継ぎません」


 そう言い放った時、佐保姫の目が大きく開かれた。


「私は、最後まで自分の望み通りに生きます。——そして、春が来たと同時に、お暇を戴きましょう」


 そう言って、雪乃は佐保姫に背中を向け、立ち去った。
 後ろで、物凄い剣幕で佐保姫は叫んだ。


「待って!! 貴方の命は貴方だけのものじゃないのよ!? 貴方が死ねば、皆が悲しむ!!! 私だって悲しむ!!!」


 泣き叫び、張り裂けそうな声。しかし、雪乃は足を進めた。


「貴方が死ねば、私はどうなるの!? また一人ぼっち!!! お願い、考え直して!!! 私を置いて行かないで!!」


 その声は偉大なる神の声ではなく——一人ぼっちになるのが怖い、少女の声。
 けれど雪乃は耳を塞ぎ足を進める。

 耳を塞いでいるせいか、佐保姫が何を言っているのかは分からない。けれど、叫んでいることは判る。それぐらい必死な訴えだった。
 けれど、雪乃は自分の信念を曲げることはしなかった。

 ——自分の命が僅かというのなら。その僅かまで、自分の望み通りに生きよう。
それが誰かの反感を買うとしても、私は自分が納得した道を選ぶ。
 それが自分なりの『幸せ』と想う事が出来るから——。


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