複雑・ファジー小説
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- 俺だけゾンビにならないんだが
- 日時: 2013/08/20 22:05
- 名前: 沈井夜明 ◆ZaPThvelKA (ID: 7NLSkyti)
ゾンビ物です。
残酷な表現が苦手な方はお気をつけください。
荒らしや誹謗中傷などはちょっと止めてください。
誤字脱字を見つけましたら、教えていただけるとありがたいです。
不定期更新、急に更新止まるかも。
中編くらいを想像しています。
目次
第一話「俺だけゾンビにならいんだが」>>1>>3>>5>>6
第二話「血肉内蔵脳漿の中を進め」>>8>>10>>13>>14>>15
第三話「こびりつく悲鳴」>>16>>18>>21>>25>>27>>30>>32>>35>>36
第四話「ゾンビよりも疲れる対人関係」>>37
- Re: 俺だけゾンビにならないんだが ( No.8 )
- 日時: 2013/08/04 21:12
- 名前: 沈井夜明 ◆ZaPThvelKA (ID: 7NLSkyti)
俺の通う学校は山の上にある。登校時はいつも長い坂を上がってことなければならない。
それ故、降りた下にある町の様子がよく分かる。
まさに映画通りと言うべきか。至る所から火の手が上がり、どす黒い煙が立ち上っている。車が何台も建物に突っ込んだり、横転したりしているから、それが原因だろうか。
学校の周辺にはもう車は通っていないが、遠くの方でクラクションの音が引っ切り無しにしているから、現在避難中なのだろう。
幸いと言っていいのか、ここから見える範囲ではそこまでの数のゾンビはいない。恐らく避難した人達に付いていったのだろう。しかし油断は出来ない。中が見えない建物の中には、学校と同じようにゾンビが大量に蠢いているかもしれない。
自転車の移動速度ならばゾンビに追いつかれる事は無いだろうが、油断しないように進もう。
学校の坂道を自転車で下っていく。途中、何体ものゾンビに遭遇したが軽く躱している。
学校の制服を着たゾンビや私服を着たゾンビ。色々な種類の人間がゾンビになっている。
それにしても、一体どこからゾンビは湧いて出てきたんだ? 掲示板で見たところ、世界で同時に発生しているようだ。定番な所でいうと、新種のウイルスとか宇宙から降ってきた隕石が原因とか、かな。後は地獄の店員がいっぱいになって、死者が蘇ってきてるとか。
馬鹿馬鹿しいな。前の二つはとにかくとして、最後のはちょっと無い。
こうやって思考を働かせても、視界から入ってくる情報はしっかりと脳に届いてしまう。
「…………」
へし折られた道路標識。夥しい量の血の跡が残る道路。横転した自動車。その時に即死してゾンビにならなかったのだろう、車の中で潰れている男性の死体。昼だと言うのに車の通りが無い。点滅する信号が酷く虚しい。人気は殆ど無く、変わりにゾンビがよろよろと歩きまわる。
見知った風景が、もう修復が効かない程に破壊されている。
学校の中の惨状を見ただけでは、俺はまだ現状を完璧に認識していたとは言えなかったようだ。
この風景を見て、ようやく俺は日常が壊されたのだと思い知った。
「助けてぇ!」
坂を下りきった所で、女性の悲鳴。
逃げ出した学校の生徒だろうか。制服を着た女が、ゾンビに引き倒されていた。彼女は手足を振り回し、必死に抵抗するが、ゾンビの腕力は凄まじい。抵抗虚しく、その喉仏に喰らいつかれてしまった。彼女は絶叫し、更に激しく手足を振るが、もう手遅れだ。ゾンビに噛まれた者はゾンビになる。……俺はなってないけど。
彼女の悲鳴を聞きつけたゾンビがヨロヨロと彼女の方に集まっていく。すぐ近くにあった民家の庭からも、血だらけの老人がヨロヨロと姿を現した。白濁した双眸で彼女の方を見ると、低い呻き声を上げながら歩き始める。
彼女の悲鳴を聞きつけてやってきたのはゾンビだけでは無かった。隠れていたのか、近くのクリーニング屋から二人の男性がバットを手に現れた。「大丈夫か!」などと叫びながら、ゾンビをバットで殴り倒して彼女の救助に向かう。
酸っぱい物が腹から喉に迫り上がってくるのを抑え、俺は彼らに背を向けて自転車を漕ぎ始めた。今の俺には誰かを助けようだなんてとても思えない。実際に肉を食い千切られているんだ。既に傷は殆ど治っているとはいえ、あの恐怖と苦痛はそう忘れられる物ではない。
そういえば、折れたかもしれない右手の感覚は大分治っている。驚異的な治癒速度だ。若干ぎこちない物の、もう普通に使用出来る。
俺はグーパーグーパと動きを確認し、小さく溜息を吐く。
さて。
血に塗れた下校の始まりだ。
- Re: 俺だけゾンビにならないんだが ( No.9 )
- 日時: 2013/08/05 13:28
- 名前: 沈井夜明 ◆ZaPThvelKA (ID: sNU/fhM0)
>>7
コメントありがとうございます
主人公と他の人との遭遇もいずれ書こうと思います
いえいえそんなことはないと思いますw
- Re: 俺だけゾンビにならないんだが ( No.10 )
- 日時: 2013/08/05 21:31
- 名前: 沈井夜明 ◆ZaPThvelKA (ID: 7NLSkyti)
「まずは一つ目の目標地点だな」
自転車を漕ぐこと二十分。俺は一つ目の目標地点である薬局に辿り着いていた。
ここで来る途中、それなりの数のゾンビを見た。ゾンビに腕を噛まれたと思われる男性が、腕を抑えながら俺に助けを求めてきたが、無視して自転車を漕いだ。何人か生きている人間と遭遇もしたが、それも無視した。正直一人でいるのはかなり心細かったが、遭遇した人間の殆どがギャーギャーと叫んで錯乱していたのだ。そんな彼らと行動を共にするのは危険が高すぎる。
こんな状況でも誰かを助けようと思う人はいるみたいだが、俺はそうじゃない。途中で車に乗った女性二人組を見掛けたが、彼女たちもそうだった。自転車で走る俺を車窓から見つめながらも、声を掛けること無く去っていった。まあこんな状況では当然だ。
と、頭の中で理解はしているが、襲われている人間の絶叫や苦痛に歪んだ表情を見ているとそんな簡単には言えない。あの時俺を見捨てた二人組も、しょうがないとは思っていても一言言ってやりたいと思ってしまう。まあ、俺が二人組の立場だったら見捨てたけどさ。
「さて」
薬局の前で自転車に降りる。盗まれると行けないので自転車の鍵は抜いておく。もしもの時、すぐ逃げれないのはキツイが、盗まれるよりはマシだろう。
窓の外から中を確認する。見ただけでも三匹ぐらいのゾンビがいやがる。しかし食料を調達出来る機会だ。今後はこういう機会も少なくなっていくだろう。今のうちに食料を確保しなければいけない。
ゴクリの唾を飲み込み、店内へ足を踏み入れる。
自動ドアが開く音にドキリとしたが、幸いにもゾンビは反応しなかった。
入り口にあった大きめのカゴを二つ手に取り、俺はゆっくりと進んでいく。
場違いに思えるお気楽な歌が流れる店内の中、俺は何から取れば良いのか悩んでいた。うーん……人間が生きるために必要な物として、まずは水だよな……。
棚の間をゆっくり進み、店の奥にある飲料水コーナーへ向かう。途中、この店の店員と思われるゾンビとすれ違ってドキリとしたが、気付かれる事は無かった。
並んでいる飲料を物色する。
天然水、コーラー、サイダー、メロンサイダー、オレンジジュース、アップルジュース、牛乳。
まずは天然水の1リットルの物を三本、500ミリリットルの物を四本。後コーラの1リットルを二本、オレンジジュース500ミリリットルの物を二本確保。
これだけでも結構な数だ。このカゴの大きさでは、自転車のカゴに一つ無理やり乗せる事は出来るだろうが、もう一つは手持ちになりそうだな……。
順調に選ばなければ。しかしまだ水道は動いている筈。家に辿り着いたら、水道水を集めておかなければ。
それから食べ物コーナーの方へ向かう。生物は腐りやすいからな……。乾パンとかそういうのを優先しよう。
客と思われるゾンビの隣をゆっくり通りぬけ、乾パンや缶詰が並べられている棚へ向かう。
まずは乾パンの缶を四つカゴに入れる。大分カゴが重くなってきたな。
カゴを下に下ろし、沢山はいるように並べる。
「……っぁ」
そんな俺を見下ろす様にして、棚の間からゾンビが現れた。ゆらりゆらりと振り子のように頭を振りながら、俺の方に近付いてくる。俺は小さく声を漏らし、その場で動きを止める。
ゾンビはそんな俺を数秒見つめたかと思うと、視線を外し、またゆらゆらと揺れながらどこかへ行った。驚かせんじゃねえよ……。
それから静かにカゴの整理をした後、小さめの缶を何個か入れる事にする。
選ぶのは美味しそうな奴だ。
焼き鳥塩味、焼き鳥タレ味、カレーチキン、ささみフレーク、鯖味噌、後マンゴー、バナナのドライフルーツも手に取る。
缶はひとつひとつが小さくて、沢山入れることが出来た。ドライフルーツは結構大きな袋なので、二つまで。
一つ目のカゴはあと少しでいっぱいだ。あんま入れすぎて中身を落とすとか洒落にならんしな。
ゆっくり店内を移動し、日持ちしそうな物をカゴに入れていく。
もうカゴが一杯だ。
「…………」
しかし結構な重量の筈なのに、カゴが非常に軽く感じる。俺ここまで筋力無かった筈なんだけどな……。
まあいい……。
次は医療品か。
- Re: 俺だけゾンビにならないんだが ( No.11 )
- 日時: 2013/08/05 21:52
- 名前: 羽海 ◆Yre4tHIyxI (ID: d1Bequrp)
いつも更新楽しみにしてます(*´ω`*)
この調子で執筆頑張って下さい+*
- Re: 俺だけゾンビにならないんだが ( No.12 )
- 日時: 2013/08/06 13:44
- 名前: 沈井夜明 ◆ZaPThvelKA (ID: 7NLSkyti)
>>11
コメントありがとうございます。
そう言ってもらえると執筆する励みになります。
頑張ります
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