複雑・ファジー小説
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- 十字星座の戦士※お知らせ
- 日時: 2014/02/03 23:07
- 名前: Ⅷ ◆O.bUH3mC.E (ID: mL1C6Q.W)
〜prologue〜 【決まった未来、変えられる未来】
……声が、聞こえる。
その声は、これが初めてではない、過去、何度も何度も、同じタイミングで現れて、同じ言葉を残していく。
———目覚めよ
と。
声は、何かを促しているようだが、その意味までは、理解することができない。
何もない空間、闇に包まれた、不安を司る、そんな場所に誘われ、その声の主は、現れる。
夢と言われている空間。それは、本人意識ははっきりとしないものだが、この空間では、それにとらわれていない。体を動かしている感覚もあれば、聞こえる声を、『声』だと認識できるぐらい、意識もはっきりとしている。しかし、そこが夢だというということも、なぜだかわかってしまう。そんな場所。
いや……夢、ということにしなければ、この事象の説明がつかないから、かってにそう思っているだけで、本当はもっと別物の可能性もあるのだが。
その声は、いつも同じことを繰り返すだけ。声の主は、三度目の呼びかけで、その姿を表すということは、過去この空間にきているため、はっきりとわかっている。
———目覚めるのだ
目覚めよ……その意味は、まるでわからない。だけども、その声には、どこか焦るような響きが有り、自然と自身の心が不安に駆られるのを感じる。その時必ず、自分はこういうのだ
……どう言う意味だ
と。
意識もしっかりとしている、体の自由もきく、だが、この声は、自分の意識しないうちに、勝手に発せられる。
このことにも、もう慣れた。
けども、その声は、その言葉を無視して、さらに言葉を紡ぐ。
———十字星座の光よ
その瞬間、闇に包まれた空間に、ひとつの光が生まれる。
手のひらサイズに収まりそうなほどの光は、十字架のような形をしていて、それが、まばゆいばかりの光を放つ。
それが、声の正体。
そうだという証拠もなければ、声が自身の正体を明かしたわけでもない、しかし、なぜだか……俺には、わかってしまう。
声に、その光の正体に従うべきだと、俺の体は勝手に進みだし、その光に手を伸ばそうとする。
いくら抗っても、いくら意識がはっきりとしていても、勝手に体は動きだし、やがてその光に手が届く。
———世界はやがて、終焉を迎える。
俺の手に包まれた十字架は、さらに声を発する。脳に直接語りかけてくるかのように。
———おまえの力が、おまえに託された力が、必要だ
その瞬間に、手のひらに包まり、光をかすかに漏らしていただけの十字架が、闇を照らさんばかりに、強烈に光りだす。
……そして、闇が払われた、その先には……荒れ退んだ世界が広がっていた。
世界の中心には、人の形をした、なにかが立っている、その周りには……無数の人が、積み重ねられるようにして……死んでいた。
その世界は異様だった、その空間は異常だった。世界の中心に、一体の人の形をしたなにかが立ち……その周りには、誰ひとりとして、生きている者はいなかった。
人の形をしたなにかは笑っている。甲高い、悲鳴のような声をあげて、周りに積み重ねられるようにして、死んでいる人間を、蹴り飛ばし、また笑う。
あるものは、心臓を貫かれていた。あるものは、首がなくなっていた。またあるものは、人の形すら、していなかった。
無数に転がる死体、死体……笑う、人の形をしたなにか。
空は紅く染まり、人々が住んでいたであろう街は、背景の中、炎に包まれている。
ここで、俺が思わず、つぶやく
……なんなんだ……これは……
この世界が、現実でないことを、俺は知っている。こんな大量殺人、街の一つが炎上してしまうようなことが起きれば、当然、知らされているはずだからだ。
けれど……俺の脳のどこか……俺の心のどこかで、これは「現実ではない」と、「起こり得るはずがない」と、楽観視はできず……再び聞こえる声に、問う。
———因果律を捻じ曲げ、やがてすべてを滅ぼす『狂神』が、生まれる
……これは、絶対に、起こることなのか?
声は答えない。
……絶対に起こるはずが、ないよな?
そう、俺が言ったとき……背景に広がる世界の中で……、人の形をしたなにかに、挑む人の姿が、目に映る。
それは、肩までかかる、元は白であったであろう髪を、赤い血で染めた、15、6歳の少年だった。
少年は、武器をとり、人のかたちしたなにかに挑む。しかし、人のかたちをしたなにかは、その少年を笑いながら……
殺す
心臓を、手で一突き。人の力とは思えない力で貫き……少年を蹴り飛ばす。
その時、吹き飛ばされた少年の顔……それは、何度この世界に来ても、何度違うと思っても、覆ることはない……
そう……その少年の顔は……姿は、間違いなく……
俺自身、そのものだった———
その光景が流れた後、笑い声とともに、その世界は、崩れ去る。ガラスが砕け散ると同じときのように、音をたてて、その世界に終幕を下す。
これが……夢の終わりの合図。
その合図が現れた時、俺は、ただただ、問う
……あれは、なんなんだ
……こんなことが、起きるはずないよな?
……あの「人」は、なんだ?
……どうして、俺があそこにいる?
その質問に、十字架は答えない。
やがて、世界が終わりを告げる———
その時……十字架は……決まってこう、囁く
———破滅を止めたければ……目覚めるのだ……十字星座の光の戦士よ
———————————————————————————————————
はじめまして、Ⅷという者です。ゆっくり小説を書いていきたいと思いますのでよろしくお願いします。
※お知らせ
(現在進行形で、3話を執筆(入力)中のため、更新が追いついてしまった際には、しばらくの間更新を停止し、ある程度まで進めたところで再び更新させます)
(メインキャラクターの顔のイメージ画up予定)
prologue >>0
一章【正義の影、悪の希望】
1話 【Peace(平和)】
>>2 >>3 >>4 >>5
>>8 >>11 >>12 >>13
>>14 >>15 >>16 >>17
>>20 >>21 >>22 >>23
2話 【Lie(嘘)】
>>24 >>25 >>26 >>27
>>28 >>29
3話 【Collapse(崩壊)】
>>30 >>31 >>32 >>33
>>34 >>35 >>36 >>37
>>39 >>40 >>41 >>42
>>43
4話 【Warrior of the cross constellation(十字星座の戦士)】
(3話終わり次第)
キャラクターイメージイラスト(>>38)
キャラクター設定
主人公
リヒト・タキオン
性別/男
年齢/16歳
身長/170
体重/60
十字星座の光の戦士
戦闘職業『白迅剣士』
初期使用武器『片刃直剣/ロングブレード』
性格/物事に対して、つまらなさそうに見つめ、人との交流をあまり好まない。だが、一部の人間、昔馴染みの人たちとは、仲が良い。昔はあまりひねくれた性格ではなかったのだが、『夢』を見るようになり始めてから、性格がゆがみ始める。光というよりも、闇のような心を持つ少年
ヒロイン
シエル・グランツ
性別/女
年齢/16歳
身長/150
体重/41
?
戦闘職業『黒迅剣士』
初期使用武器『細剣/ルビアス・レイピア』
性格 リヒトの幼馴染であり、おせっかいな性格。リヒトが戦闘職業を始めるのをきっかけに、誰かを守るという責任感とともに、自身も戦闘職業を始める。とても責任感が強く、仲間を大切にしている。口数が少なく、いつも眠たげにボーっとしているのが特徴の、優しい心を持つ少女
メインキャラクター (今現在の暫定的な設定)(物語のネタバレになる要素は?と表記する)
フラム・ヴァルカン
性別/男
年齢17歳
身長/174
体重/67
?
戦闘職業『炎明騎士』
初期使用武器『片手大剣・フレイムタン』
性格 同じく、リヒトの幼馴染。熱い心を持ち、人のため世のために活躍したがる、目立ちたがり屋。性格もお気楽で、軽い。しかし、人を守るため、大切な人を自らの手で守るべく、戦闘職業を始める。炎のように暖かい心をもつ少年
??
性別/女
年齢/??歳
身長/??
体重/??
?
戦闘職業『??』
初期使用武器『??』
性格/?
レイ・タキオン
性別/女
年齢/15歳
身長/148
体重/40
タキオンの継承者
戦闘職業『白迅剣士』
初期使用武器『長剣・タキオン』
性格/ 弱気で、いつも兄であるリヒトの後ろに隠れている、内気なタイプ。しかし、困っている人を放っておけない、心にやさしさと、儚さを宿した少女。
1000年前の戦争により、英雄『タキオン』が使ったといわれている、『長剣・タキオン』に認められし少女。
ルイン・?
性別/男
年齢/??歳
身長/??
体重/??
??
戦闘職業『??』
初期使用武器『??』『??』
性格/?
??
性別/??
年齢/??歳
身長/??
体/??
??
戦闘職業『??』
初期使用武器『??』
性格/?
バウゼン・クラトス
性別/男
年齢/??歳
身長??
体重??
??
戦闘職業『アポカリプス』
初期使用武器『??』
性格/?
- Re: 十字星座の戦士※一時的更新速度上昇 ( No.23 )
- 日時: 2014/01/18 16:58
- 名前: Ⅷ ◆O.bUH3mC.E (ID: fZ73J0jw)
……
…………
………………
「『十字星座の戦士』の力は、まだ開放していない、か」
「はい……あのガキどもはまだ、なんの力ももっていません」
目の前のモニターに写った、赤いローブをまとい、フードを目深にかぶっている男に、恭しく頭を垂れながら、白いローブの男はいう。
モニターに写った男は、それを満足そうに聞くと、顔を歪ませて、ニヤリ、と歪な笑みをうかべる。
「本当にそいつらがあの英雄の力をもっているかなんてしらないが……もしも、もっていたとして、それが覚醒してたらさすがに、俺様じゃぁ役不足かもしれねぇからなぁ……」
「大丈夫ですよ……仮にもしも———様の力がやつらに劣っていたとしても……」
「あぁ?お前、俺様を馬鹿にしているのか?」
「い、いえ……そんなことは」
「……ちっ……まあいい。たしかに上層部も、その仮にもってときのために、やつを別で動かしてるんだ、文句はいわねぇよ」
赤いローブの男が忌々しげに舌打ちする。だが
「しっかしすげぇよなぁ、上層部の連中も……やつが裏切ったときのため、んで、やつらが力を開放していたときのためにって、何億とかけてつくった『こいつ』を俺に預けちまうんだからよぉ……相当厄介なんだろうなぁ、やつらが敵に回ると……」
そういいながら、男は眼前に、黒い、手のひらサイズの箱をもってくる。その箱の表面には、紫の線で魔法陣が描かれていて、それだけではなにをするものかはわからないが、相当すごいものなのだろうと白いローブの男は納得し、最終確認に移る。
「それで……———様、ベルケンドの住人の避難などはいかがいたしましょう」
その問いに、赤いローブの男がまた、口を割き、笑う。さもおかしそうに。狂ったように笑う。
「いいやぁ?殺すよぉ?上層部もそれがお望みみたいだしなぁ……」
「やはり、壊滅の方向で話が通りましたか」
「最初からそのつもりだったみてぇだけどなぁ……なにせ俺様を含む『キメラ』の兵士と……『天魔』で編成された部隊なんて、普通ありえねぇ」
「それは随分と大掛かりですね……では、到着予定の明日の深夜、入口でカムフラージュの魔法をかけ、作戦開始時刻の正午の時間まで、支部でご休息をおとりください」
「わかったわかった……本当はすぐにでも殺してやりたいが……『天魔』は夜だと力をまったく発揮できないらしいからなぁ……」
赤いローブの男が残念そうにそう言うが、次の瞬間には、また、不気味な笑顔が、顔に張り付いていた。
「レジスタンスに動きはあったかぁ?」
「いえ……レジスタンスのネズミどもはまだ動きを見せていません」
「そうか……だがこの騒動できっとやつらも動く。……十年前の戦いみてぇに大掛かりな戦いになりそうだなぁ……ヒッハハハ!!」
赤いローブの男は大笑いし、目の前にはいない、誰かに言うかのように、叫び声をあげる。狂気に染まり、ただただ殺戮を楽しむかのように、叫ぶ。
「さあ!!存分に『今』を楽しみやがれ!!平和で腐ったお前らの顔を、俺様が捻じ曲げるその時までなぁ!!ヒヒッ!!ヒハハハハハハ!!」
立ち上がった赤いローブの男、モニターにうつるのは、その男が着ているローブの胴の部分……そこには、正義を象徴する、この世界のルールを制定し、秩序を守る、正義の組織……『機関』の証である……十字架が、描かれていた。
- Re: 十字星座の戦士 ( No.24 )
- 日時: 2014/01/19 23:41
- 名前: Ⅷ ◆O.bUH3mC.E (ID: fZ73J0jw)
2話【Lie(嘘)】
「1000前の古代大戦、神魔戦争っていわれてる、戦争をしってるか?」
外はいまだ、太陽が登っていて、沈み始めてからそれなりの時間がたったころ、フラムの家で昼飯をごちそうになったあと、リビングで四人でくつろいでいるときに、この家の持ち主のヴァルカン家の長男、フラム・ヴァルカンが、突然なにを思ったのか、そんなことをつぶやく。
俺は、フラムの部屋から勝手にとってきた、剣大全集という、この世界のありとあらゆる、オーダーメイドを含めない、剣が乗っている本を閉じ、フラムのほうに顔をむける。
「どうした?突然」
レイとシエルも、会話をやめて、フラムのほうを向く。フラムは、その手になにかの本を持っていて、あるページが開かれている。俺の位置からだとどんな本かはわかるが……その名のとおり、神魔戦争、と書かれた本だった。
「しってるもなにも、お伽話でよくきいてたし、戦闘職業に入る前に教官もその話をしていたはずだよ」
シエルがフラムにたいしてそういうと、チッチッチ、とフラムはいやしい笑顔で指をふる。
「たしかにそうだ。俺たちはほんのがきのころからお伽話として、その話を聞かされ、さらに教官からは、魔物がこの世界にはびこる原因となったその戦いの発端、集結をよくきかされていた、けど、その話には抜けている部分が、いくつかあるんだ」
「へえ」
フラムが本から今得た知識だったが、それには少し興味がひかれた。
神魔戦争、俺たちがよくきかされていた話では、魔界の、中央の王が人間界を占領するために、魔界の東西南北を支配する王を従え、魔物の軍を率いて、攻め入ってきた、というのが始まりで、その人間界を支配することを良しと思わなかった神が人間の味方をして、魔族と戦うという話につながり、神は人間のなかから、魔界の東西南北の王に匹敵する力をもつ人間を、4人つくりだし、さらに、その四人に神器という、現世にも残る武器を託し、そして、最後に、その四人の英雄すべての力を足しても届かない、魔族の王は、四英雄、そして、力を貸した神の力により、魔界に封印されて、めでたしめでたし、といったかんじに終わる。王の封印によって、行き場をなくした魔物たちは、魔界に帰るすべを知らずに、人間界にとどまり、繁殖を繰り返して、今に至る。それがだいたい、俺たちが聞かされる、お伽話で、魔物がこの世界にいる原因で、この世界の人のほとんどが知っている、常識だ。
そこに抜けている部分があるっていうのなら、少し、興味深い。
「まず、確認だ。神魔戦争の敵、魔族。その東西南北の王の名前を答えてみな」
「北がバロム、だったかな」
「シエル、正解、んじゃ、南は?はい!レイちゃん!」
「たしか……アモン、でしたっけ?」
「そう、正解。んじゃ、東は?ほい、リヒト」
「……東はリリスだな」
「そう、そして、西はティアマトだ」
確認し終えると、フラムは本のページを一枚めくる。そして
「んじゃ、その東西南北の王、仮に四天王と名付けるか……その四天王に匹敵する力をもって、神が作り出した四英雄の名前はなんだ?」
「四英雄の名前は具体的に教わったことはないかな」
「たしかに……聞いたことないですね」
シエルとレイが頭をひねる。たしかに、敵の名前だけ俺たちはよく聞くのだが、俺たち人間サイドの、英雄の話は聞いたことがない。
「そう、四英雄の名前は、あまりメジャーじゃないんだ。まあ理由はわからないけどな」
フラムはそういうと、もう一枚ページをめくる、そして、そこに書かれていることをつらつらと読み上げる。
「四英雄は、北が光を象徴している。東が氷を象徴していて、南が闇を象徴していて、そして、西が炎を象徴しているとされていて、それぞれが現世に子孫を残し、神に託されし神器を一族代々に受け継いでいるらしい・・・そうだな、まず北の英雄が、リヒト、レイちゃん、お前たちのご先祖様、ライト・タキオンだ」
……ライト・タキオン。過去の大戦で名を残した英雄とされていて、俺たちの母親の家計を延々とたどっていくとたどり着く、俺たちのご先祖様の名前だ。俺はそのことをあまりきにしたこともないし、タキオンの名前をもっているのに弱い、だのなんだのいろいろといわれてきたので、そのご先祖様にあまりいい思いをもっていない。そして、その話からすると、神器が受け継がれている……という話だったが、もしもその話がそのまま1000年間続いているのならば、おそらく……、レイがもつあの武器が、その神器っていうやつなんだろう。だから、俺はさほど反応を示さなかったが
「あれ、でもライト様は、過去の大戦で名を馳せた英雄……」
「そう、その名を残した大戦……それが神魔戦争ってことよ」
- Re: 十字星座の戦士※2話始 ( No.25 )
- 日時: 2014/01/18 17:03
- 名前: Ⅷ ◆O.bUH3mC.E (ID: fZ73J0jw)
「そうだったんですか!」
レイは納得がいった、といった感じで手をうつ。そこで、フラムが思い出したかのように、レイに問いかける。
「そういえば、レイちゃんが使っている剣の名前はたしか……」
「はい?ああ……たしか、タキオン、でしたっけ?」
「そう!それが、タキオン家に伝わる、北の英雄、ライト・タキオンが使っていた神器だ」
そういうと、フラムはまたページをめくる。俺は、俺たちのご先祖様がそんな有名な戦いで名を馳せた英雄だったことに若干驚きが隠せないが、少し不思議に思ったことがあり、フラムに訪ねてみる。
「そういえば、なんで俺たちは、ライト・タキオンっていう存在をしっていて、過去の大戦で名を馳せた英雄だって知っているのに、それが神魔戦争の英雄だったことをしらないんだ?」
フラムが俺の問いに、ふむ、と考え込む。
過去の大戦で名を馳せた英雄、と伝えるよりも、神魔戦争で活躍した英雄と伝えたほうが、ややこしくないと思うし、なによりも、俺たちは神器がどんなルーツで伝わってきた理由もなにもかもをしらなかった。だから、少しだけ不思議だったのだ。
「神が作り出した人間……っていう言い方も少し気になるしな」
「いわれてみればそうだな……神が作り出した人間……なんで、神が力を与えた人間って言い方をしなかったんだろうな?」
フラムはそこで頭の上にはてなマークをつくってしまい、話が進行しそうになかったので、とりあえずこの話は流すことにする。
「ま、いつかわかるだろ。それで?北の英雄が俺たちのご先祖様だったとして、ほかは?」
「おっと、そうだったな……んで、東の氷の英雄が……フロスト・ブランド、弓使いの英雄だ」
「弓使いか……だとすると、子孫は銃使いの戦闘職業でもやってるのかな?」
「ま、だいたいそんな感じだろう。んで、南が、闇の英雄ダーク・レイス、二刀流使いの英雄だな」
「二刀流……本来の剣の型から大きく外れた剣術……きになる」
シエルが二刀流というぶぶんに興味を示す。たしかに……二刀流は、本来の剣の型、戦闘術から大きく外れる、我流の型で、それを極めているものは極希しかいなく、二本もてば二倍強い、という考えで使おうと試している奴らもいたけど、結局それを極めることはできないでいた。だから、正直俺も興味あるが……俺のつかってる武器の重量だと、片手でたしかにもてるが、利き腕じゃない左腕でもて、といわれたら少し無理があるから、俺にはちょっと無理そうだな。
「んで、最後が炎の英雄、フレイム・ボルケーノ、両手剣使いらしいな」
みんな聞いているだけでは物足りなくなったのか、フラムの元により、一緒に本を覗き込む。そこには、英雄のイメージイラストと思わしきものがかかかれていて、今いったフレイム・ボルケーノという英雄は、自身の背丈よりも巨大な剣を、片手で振りかぶっているという、凄まじい姿が写されていて、ダーク・レイスという英雄は、たしかに、二本の剣をもっていて、フロスト・ブランドという英雄は、弓を構え、ライト・タキオンは……
「これ……やっぱり、私のもってる剣と同じです」
と、レイがつぶやくのが聞こえた。そう、そこには、レイが持つ、両手大剣、タキオンと呼ばれている剣とほぼ同じものが、示されていた。
「やっぱレイちゃんはタキオンの剣の継承者だったか……そういえば、なんでリヒトが、そのなんていうんだ?タキオンっていうの?をつかってないんだ?」
その、至極当然くるであろう質問に、俺はただたんたんと返す
「ただ俺が選ばれなかっただけだよ、剣に」
という。それに、シエルとフラムが少しびっくりしたように俺の方を見て
「剣が……人を選ぶ?」
とシエルが
「そうか……じゃーここに記されている継承……って言葉は、剣が選んだタキオン家の人間にのみ……ってことになるのか」
と、フラムがいう。まあ、そういうことなんだろう。間違ってはいない。
「……おっと、話がそれちまったな。こっからが、この話の重大な部分なんだ……」
といって、フラムがまたページをめくる。1ページ、2ページとめくったあとに、フラムは、かなり青ざめた顔をするのがわかる。その理由はよく、わからないが、俺は、そのフラムが覗き込んだページを見て、戦慄する。
ただただ愕然となり、そこに記された記事を見る。フラムも、どこか青ざめた顔で、しかし、合点が言ったかのような声で、こういうのだ。
「御伽噺や、教官たちからの話……そこには、改竄された部分がいくつか有り……ここに記されてる内容は……魔族の王の封印を行ったのは四英雄ではない……という内容だ」
「それだと、私たちの知ってる物語は、かなり別のものになる」
シエルがそういって、信じられない、といった顔をする。レイも同じような思いだったのか、こくこくとうなずく。ふと、俺はその本をどこがだしているのかが気になって、本の表紙を覗き込む。これが有名な人がだした本であったりとかしたなら、信憑性はたしかにあるかもしれないが、名も知らないやつがだした本なら、ただの冗談として捉えられると思って、見る。そこにかかれていた名前は……
「……バウゼン・クラトス……これは……」
- Re: 十字星座の戦士※2話始 ( No.26 )
- 日時: 2014/01/18 17:05
- 名前: Ⅷ ◆O.bUH3mC.E (ID: fZ73J0jw)
……その名前を知らないものは……戦闘職業をやっているもののなかで、知らない人はいない。
今現在、戦闘職業の中でもっとも最強の人間に、神が直接授けると噂されている、最強で、頂点に君臨するにふさわしい称号、『アポカリプス』の称号を不動のものとし、十年前までは機関の頂点の座、最高権力者の名を我がものとし、この世界の秩序を、ルールを、正しい方向にもっていった、最強で、最高だった、この世界の全ての人間の憧れの的に、一時期なった、圧倒的カリスマをもっていた、男の名前。だが……とある事件により最高権力者の名を剥奪され、そして、国家反逆罪の罪に追われ、今現在、国家最高指名手配犯とされ、捕まえれば一生遊んで暮らせるほどの大金を首に掛けられている……男。
世界からの期待を一心にうけ、そして、裏切った、男……。
「発行は……十一年前、か」
「ギルド、『自由の翼』と、バウゼン・クラトスが共同して、機関襲撃テロを起こす、ちょうど一年前……だね」
「なら……これは、この本は、バウゼン・クラトスが、最高権力者の名を語っていた時に出された本で……信憑性は……」
ほぼ、間違いなく、事実。嘘偽りはないと、思える。
「そもそも機関の本部のあの塔は、神魔戦争で、神が、人間側の拠点としてつくったって言われてる……」
「そういった関連の資料が残っていてもおかしくはないですね……」
全員が全員で、その本が、きっと嘘をついていないだろう、と再確認する。そもそも、俺たちの世代は、直接バウゼン・クラトスがした「テロ」の内容についてよくしらないし、なぜわざわざバウゼン・クラトスは機関を内部からではなく外部のギルドの力を借りて潰そうとしたのか、そういった矛盾点がいろいろと見えていて、バウゼン・クラトスという人物をあまり嫌なイメージとしては見れないのだ。
「話を戻すぜ」
といって、フラムがまた、文章を読み上げる。
「では、神は、一体どこの誰とともに、魔族の王を封印したのか、という話につながる。四英雄は、最初のページに記されたお伽話のように、所詮は四天王と同等程度の力しかもたなかった、魔族の王は、その四天王を従えるほどの力をもっていて、四英雄が力をあわせたとしても、その力には到底及ばなかった、と推測されていて、現に、資料には、四英雄は四天王との戦いにより負傷し、力を最大限に活かせる状態ではなかったと、残されている」
「四英雄は、四天王との戦いでほぼすべての力を使い果たしてたってことか」
「そうゆうことだな。それでは、どこの誰が、魔族の王を封印したのか、という話にもどる。神にはすでに、魔族の王に対抗するほどの力の持ち主を作り出す力は残されておらず……、そこで、神が目をつけたのが、四英雄と、人間の間に生まれた……四人の子供たちだった……四人の子供達には、四英雄と同じ、光の力、氷の力、闇の力、炎の力がやどっていて、その子供達に……」
—————目覚めよ
—————目覚めるのだ
頭が、割れるように痛み出す。その文字をみた瞬間から、俺の頭の中で、夢の中の言葉が何度もこだまし始める。夢の中の出来事だと、けして現実ではありなえいだろうと思っていた。
だから、俺は驚愕して、言葉を失ってしまう。
あってはならない夢のあの映像は、現実……決まった未来なのか?
答えろ
と、頭のなかで、俺は思う。どこの誰かにいうまでもなく、俺が勝手に作り出したと思っていた夢の存在、あの光る十字架に問いかける。だが、十字架は答えない。ただ、こういうだけ
—————目覚めるのだ、十字星座の戦士よ
「十字星座の戦士、という名を与え……自身の残るすべての力を子供たちに収束させ……四英雄と、十字星座の戦士達が力を合わせることにより……魔族の王を、封印することに成功する—————」
—————目覚めるのだ、十字星座の戦士達よ
- Re: 十字星座の戦士※修正 ( No.27 )
- 日時: 2014/01/18 17:59
- 名前: Ⅷ ◆O.bUH3mC.E (ID: fZ73J0jw)
「十字星座の戦士……」
「十字星座の戦士だと……?」
シエルと俺が、二人して、同じことをつぶやく。信じられない、といわんばかりに。
フラムも、どこか呆然としたようにその文章を読んでいて、レイだけが、不思議そうな顔で、俺たちのことを見回す。
「あ、あの、どうしました?」
その問に、答えられない。
夢の中の出来事、絶対にありえないであろうと思ったあの出来事、そして、語りかけてくる、十字架の存在。……語られた、十字星座の戦士という、単語……そのすべてが、ここで、いまここで、合致したような気がしたから。
だが、同時にわからないことが生まれる。
その時代に活躍した、もうひとつの英雄……十字星座の戦士達。その存在はまったくもって、今の世の中に伝わっていない。それは、なぜなのか。なぜ、そんな英雄の名前を後世にのこさなかったのか、それも不可解だ。そしてなによりも、なぜ、その歴史の影に潜んでしまった英雄の名前が……俺の、夢で、語られるのか……。
「……いや、なんでもない」
俺は、レイの問に答えるように、そして、夢の中で語られる、その存在から逃げるように、そうつぶやく。シエルも、フラムも、我に返ったかのように、
「なんでもないよ」
「大丈夫大丈夫、ちょっとびっくりしただけさ」
……だが、そのことは今は、おいておこう。今まで、俺は、この夢を見始めた、十年ほどまえから、この夢について、誰にも相談したこなかった。それは、バカバカしいと思っていたためでもあるが……俺は、なによりも、その夢のなかで最後に見る映像……世界の破滅……その事実を誰かに伝えれば、本気に捉えてしまい……平和が……俺の信じてる、今の平和が、壊れてしまう気がするから……だから、やめておいたのだ。
「十字星座の戦士……か、初めて聞いたな」
俺は、不自然にならない程度にそうつぶやく。
「……たしかに、そんな名前は今まで聞いてたお伽話とかでもでてきてなかったしな」
と、フラムがいい、それにシエルがうなずく。
「そうだね……今の全部が、もし事実だったら、私たちの知ってる物語はまるで別物になる……」
「ですね……私も、ここまで大きな違いがあるなんて思ってもみませんでした」
「だな……俺も、この本見るまではそんな別の物語があるなんて知らなかったよ」
シエルと、レイと、フラムがそれぞれに感想をいうが、俺はやはり、十字星座の戦士について、考えてしまう。
……そうだ、十字星座の戦士は、さっきのフラムの言い方からすると……
「もしかしてだが、十字星座の戦士にも、光、氷、闇、炎の、属性の概念が存在しているのか?」
そういうと、フラムが、さきほどのページをみて、ああ、と頷く。
「ああ、十字星座の戦士にも、たしかに四属性が存在しているな」
「そうか……」
四属性……存在している。それは、つまり、夢の中で最後に俺が言われる言葉……十字星座の光の戦士。ならば、ほかにも、氷、闇、炎の属性の戦士が、この世界のどこかにいて……、俺と同じく、世界の破滅の映像を見ているかもしれない。そいつらは、なにを思っているのか、今、なにをしているのか、その破滅に対して、抗おうとしているか……それが、俺は気になった。そして、気になったと同時に、俺は、自分自身で、その破滅に対して、どう向き合うのか、まったく考えてなかったことに、気がつく。
……まあ、それでも、今考えることじゃないな、と俺は勝手に結論づけてしまう。
「まあ、四英雄の子供だし、ね」
と、シエルがいったあとに、フラムが本をとじて、てきとうな方向に投げ飛ばす。
「うっし!!この話はとりあえず終わりだ!!読んでてもこれ以上わかることはないだろうしな!!」
「ま、たしかにな。もっと知りたきゃ機関の資料室にいくか、バウゼン・クラトスに直接尋ねるかしかないだろうな」
各々が、それで話は終わりだ、といわんばかりに話を切り上げるかのように、もといた場所に戻ろうとする。だが……次に、レイが発せられた言葉で、俺は……考えなければならないことに気づかされる逃げてはいられないということに……気がついてしまう。そうだ……その言葉を聞いたときから、どうして俺は……
「もしも……また、十字星座の戦士としての力を託された子供が現れたとき……この世界はどうなってるんでしょうね?」
世界が平和なときには、けして現れない、人間側の最終兵器。その存在が、神に力を託された人間が、また現れるとしたら……そのとき、この世界は、確実に平和ではない。
……そして、俺は、その神に力を託されたかもしれない……十字星座の戦士の一人。
俺は、俺たちは、今を平和だと信じている……ならばどうして……俺は、十字星座の戦士だ、といわれたのか……なにかが———始まろうとしているのか……それとも……夢で見た、あの現象が……もうすぐ……————
「……あの、私、変なこと言いましたか?」
その言葉ではっとする。
……べつに、なにもない、なにもないさ。だから……俺が懸念することも……考える必要もないんだ……いま感じている平和がなくなるなんて……そんなことは、ありえない。
「……いや、なんでもないさ」
そう……思っていても、俺は、ただ、弱々しいそうつぶやくことしか、できなかった。
……そのときの、ふと見えたシエルの顔には……俺と同じ、焦りが、伺えた。