複雑・ファジー小説

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十字星座の戦士※お知らせ
日時: 2014/02/03 23:07
名前: Ⅷ ◆O.bUH3mC.E (ID: mL1C6Q.W)

〜prologue〜  【決まった未来、変えられる未来】





……声が、聞こえる。
その声は、これが初めてではない、過去、何度も何度も、同じタイミングで現れて、同じ言葉を残していく。

———目覚めよ

と。
声は、何かを促しているようだが、その意味までは、理解することができない。
何もない空間、闇に包まれた、不安を司る、そんな場所に誘われ、その声の主は、現れる。
夢と言われている空間。それは、本人意識ははっきりとしないものだが、この空間では、それにとらわれていない。体を動かしている感覚もあれば、聞こえる声を、『声』だと認識できるぐらい、意識もはっきりとしている。しかし、そこが夢だというということも、なぜだかわかってしまう。そんな場所。
いや……夢、ということにしなければ、この事象の説明がつかないから、かってにそう思っているだけで、本当はもっと別物の可能性もあるのだが。
その声は、いつも同じことを繰り返すだけ。声の主は、三度目の呼びかけで、その姿を表すということは、過去この空間にきているため、はっきりとわかっている。

———目覚めるのだ

目覚めよ……その意味は、まるでわからない。だけども、その声には、どこか焦るような響きが有り、自然と自身の心が不安に駆られるのを感じる。その時必ず、自分はこういうのだ

……どう言う意味だ

と。
意識もしっかりとしている、体の自由もきく、だが、この声は、自分の意識しないうちに、勝手に発せられる。
このことにも、もう慣れた。
けども、その声は、その言葉を無視して、さらに言葉を紡ぐ。

———十字星座の光よ

その瞬間、闇に包まれた空間に、ひとつの光が生まれる。
手のひらサイズに収まりそうなほどの光は、十字架のような形をしていて、それが、まばゆいばかりの光を放つ。
それが、声の正体。
そうだという証拠もなければ、声が自身の正体を明かしたわけでもない、しかし、なぜだか……俺には、わかってしまう。
声に、その光の正体に従うべきだと、俺の体は勝手に進みだし、その光に手を伸ばそうとする。
いくら抗っても、いくら意識がはっきりとしていても、勝手に体は動きだし、やがてその光に手が届く。

———世界はやがて、終焉を迎える。

俺の手に包まれた十字架は、さらに声を発する。脳に直接語りかけてくるかのように。

———おまえの力が、おまえに託された力が、必要だ

その瞬間に、手のひらに包まり、光をかすかに漏らしていただけの十字架が、闇を照らさんばかりに、強烈に光りだす。
……そして、闇が払われた、その先には……荒れ退んだ世界が広がっていた。
世界の中心には、人の形をした、なにかが立っている、その周りには……無数の人が、積み重ねられるようにして……死んでいた。
その世界は異様だった、その空間は異常だった。世界の中心に、一体の人の形をしたなにかが立ち……その周りには、誰ひとりとして、生きている者はいなかった。
人の形をしたなにかは笑っている。甲高い、悲鳴のような声をあげて、周りに積み重ねられるようにして、死んでいる人間を、蹴り飛ばし、また笑う。
あるものは、心臓を貫かれていた。あるものは、首がなくなっていた。またあるものは、人の形すら、していなかった。
無数に転がる死体、死体……笑う、人の形をしたなにか。
空は紅く染まり、人々が住んでいたであろう街は、背景の中、炎に包まれている。
ここで、俺が思わず、つぶやく

……なんなんだ……これは……

この世界が、現実でないことを、俺は知っている。こんな大量殺人、街の一つが炎上してしまうようなことが起きれば、当然、知らされているはずだからだ。
けれど……俺の脳のどこか……俺の心のどこかで、これは「現実ではない」と、「起こり得るはずがない」と、楽観視はできず……再び聞こえる声に、問う。

———因果律を捻じ曲げ、やがてすべてを滅ぼす『狂神』が、生まれる

……これは、絶対に、起こることなのか?

声は答えない。

……絶対に起こるはずが、ないよな?

そう、俺が言ったとき……背景に広がる世界の中で……、人の形をしたなにかに、挑む人の姿が、目に映る。
それは、肩までかかる、元は白であったであろう髪を、赤い血で染めた、15、6歳の少年だった。
少年は、武器をとり、人のかたちしたなにかに挑む。しかし、人のかたちをしたなにかは、その少年を笑いながら……

殺す

心臓を、手で一突き。人の力とは思えない力で貫き……少年を蹴り飛ばす。
その時、吹き飛ばされた少年の顔……それは、何度この世界に来ても、何度違うと思っても、覆ることはない……
そう……その少年の顔は……姿は、間違いなく……

俺自身、そのものだった———

その光景が流れた後、笑い声とともに、その世界は、崩れ去る。ガラスが砕け散ると同じときのように、音をたてて、その世界に終幕を下す。
これが……夢の終わりの合図。
その合図が現れた時、俺は、ただただ、問う

……あれは、なんなんだ

……こんなことが、起きるはずないよな?

……あの「人」は、なんだ?

……どうして、俺があそこにいる?

その質問に、十字架は答えない。
やがて、世界が終わりを告げる———
その時……十字架は……決まってこう、囁く

———破滅を止めたければ……目覚めるのだ……十字星座の光の戦士よ




———————————————————————————————————



はじめまして、Ⅷという者です。ゆっくり小説を書いていきたいと思いますのでよろしくお願いします。







※お知らせ
(現在進行形で、3話を執筆(入力)中のため、更新が追いついてしまった際には、しばらくの間更新を停止し、ある程度まで進めたところで再び更新させます)


(メインキャラクターの顔のイメージ画up予定)







prologue >>0

一章【正義の影、悪の希望】
1話 【Peace(平和)】
 >>2 >>3 >>4 >>5
 >>8 >>11 >>12 >>13
 >>14 >>15 >>16 >>17
 >>20 >>21 >>22 >>23
2話 【Lie(嘘)】
 >>24 >>25 >>26 >>27
 >>28 >>29
3話 【Collapse(崩壊)】
 >>30 >>31 >>32 >>33
>>34 >>35 >>36 >>37
>>39 >>40 >>41 >>42
>>43



4話 【Warrior of the cross constellation(十字星座の戦士)】
(3話終わり次第)




キャラクターイメージイラスト(>>38)






キャラクター設定


主人公
リヒト・タキオン 
性別/男
年齢/16歳
身長/170
体重/60
十字星座の光の戦士
戦闘職業『白迅剣士』
初期使用武器『片刃直剣/ロングブレード』
性格/物事に対して、つまらなさそうに見つめ、人との交流をあまり好まない。だが、一部の人間、昔馴染みの人たちとは、仲が良い。昔はあまりひねくれた性格ではなかったのだが、『夢』を見るようになり始めてから、性格がゆがみ始める。光というよりも、闇のような心を持つ少年



ヒロイン
シエル・グランツ 
性別/女
年齢/16歳
身長/150
体重/41
?
戦闘職業『黒迅剣士』
初期使用武器『細剣/ルビアス・レイピア』
性格 リヒトの幼馴染であり、おせっかいな性格。リヒトが戦闘職業を始めるのをきっかけに、誰かを守るという責任感とともに、自身も戦闘職業を始める。とても責任感が強く、仲間を大切にしている。口数が少なく、いつも眠たげにボーっとしているのが特徴の、優しい心を持つ少女




メインキャラクター   (今現在の暫定的な設定)(物語のネタバレになる要素は?と表記する)


フラム・ヴァルカン
性別/男
年齢17歳
身長/174
体重/67
?
戦闘職業『炎明騎士』
初期使用武器『片手大剣・フレイムタン』
性格 同じく、リヒトの幼馴染。熱い心を持ち、人のため世のために活躍したがる、目立ちたがり屋。性格もお気楽で、軽い。しかし、人を守るため、大切な人を自らの手で守るべく、戦闘職業を始める。炎のように暖かい心をもつ少年



??
性別/女
年齢/??歳
身長/??
体重/??
?
戦闘職業『??』
初期使用武器『??』
性格/?


レイ・タキオン
性別/女
年齢/15歳
身長/148
体重/40
タキオンの継承者
戦闘職業『白迅剣士』
初期使用武器『長剣・タキオン』
性格/  弱気で、いつも兄であるリヒトの後ろに隠れている、内気なタイプ。しかし、困っている人を放っておけない、心にやさしさと、儚さを宿した少女。
1000年前の戦争により、英雄『タキオン』が使ったといわれている、『長剣・タキオン』に認められし少女。



ルイン・?
性別/男
年齢/??歳
身長/??
体重/??
??
戦闘職業『??』
初期使用武器『??』『??』
性格/?



??
性別/??
年齢/??歳
身長/??
体/??
??
戦闘職業『??』
初期使用武器『??』
性格/?


バウゼン・クラトス
性別/男
年齢/??歳
身長??
体重??
??
戦闘職業『アポカリプス』
初期使用武器『??』
性格/?

Re: 十字星座の戦士 ( No.13 )
日時: 2014/01/18 16:35
名前: Ⅷ ◆O.bUH3mC.E (ID: fZ73J0jw)

……子供たちの遊ぶ姿がちらりと見える。それを楽しげに、親たちが眺めている姿も、見える。
街一番広いと言われているこの公園の広場にある噴水のまえで、ひとり佇む少女がいる。
太陽の光をうけて、薄い紫色をした髪が、映えて見える。
その姿を見たものは、幻想的だ、とすらつぶやくほどに、少女のその佇まいは美しかった。
150センチそこそこの身長、華奢な体つき、白い肌。腰までかかる長い髪。眠たげな瞳をどこにむけてるかはわからず、口を少しだらしなくあけている。腕を組、足を交差させてたっている少女の腰には、細剣と呼ばれるたぐいの武器が吊るされていた。
その少女のことを、この街で知らないものはいないだろう。若くして教官を倒せるほどの実力をもち、機関とよばれる世界の実験をにぎっている組織から派遣された兵士ですら、その実力を認めるほどの、幼い剣士。
14歳にして教官クラスの実力を誇り、そして、数多くの魔物を討伐し、街に貢献してきた。そう、この少女こそが、シエル・グランツ……リヒト・タキオンの幼馴染であり、ライバルであり……超えなければいけない壁であった。
俺は、公園の入口から、シエルがいることを確認すると、もう一度気合を入れ直す。
……気合を入れ直すのはいいのだが、シエルの雰囲気を見ていると、どうもこれから戦うっていう感じの雰囲気をだしていない。というか、だらけきっている感じがする。眠たそうだし、口もポカンとあいてるし、キョロキョロとあたりを見回してるし、とてもその姿からは、この街で有名な剣士様とは思えない感じだった。
でも、あんなんでも、あいつの実力は俺が一番わかっている。だから、俺は気合を入れる。

「あれ、お兄さん、もうついてたんですか?」

気合を入れ直そうとしたところに、後ろから突然声をかけられたので、やむなく中止することにする。
しかめっ面でその声がした方向を見ると、そこには、俺よりもあとに家をでたレイと……もうひとり

「おーうリヒト、気合はいってっかー?」

と、若干軽い感じで声をかけてくる男がいた。
そいつをみて、俺はニヤリ、と少し不気味な感じに笑い

「フラム……おまえも物好きなやつだな」

といってやる。
フラム・ヴァルカン。シエルと同じく、俺たちの幼馴染であり、やはりこいつも同業の人間だ。
シエルよりも付き合いは短いものの、どうもうまがあうらしく、昔からよく遊んできたのを今でも覚えているし、戦闘職業になってからも、その付き合いはいまだ健在である。……まあ、腐れ縁ともいうが。
称号はたしか、俺たちと同じく中の上位にあたる、【炎明騎士】というやつで、こいつも実力もそれからわかるように、相当なものだが、シエルと並んだ同世代のため、そこまで目立つことはなく、また、俺のようにふざけたやつではなかったので、悪い意味でも有名になることはなかった、まあたいしてとりえもないやつだ。
だが、仲間からの信頼は厚いらしい。俺もコイツのことは信頼できるし、シエルも、レイも、こいつの明るい人柄や、信念に基づいた行動にはいつも、ついていこうと思える、俺たちのリーダーてきな存在だった。

「なぁに、落ちこぼれだったお前があのシエルとやろうってんだ、これほど面白いことはないしな!!」

そういうと、俺の背中をバシバシと叩く。

「やめろって……、ていうか、そういってるおまえはあいつと戦う気はないのか?俺からしたらお前たちが戦うほうが面白いって思うがな」

「あ、私もシエルさんとフラムさんの戦うとこは見てみたいです」

俺の意見に賛同しながらレイもそういう。それにフラムは少し照れながら、噴水のまえでボーッとしているシエルのことをみて

「ま、いずれあいつとは戦うさ。俺の実力を認めてもらって、機関に推薦書とかだしてもらえるかもしれないからな!」

という。
そういえば、こいつの夢は機関に入って、人のためにできることをする……だったっけな。
世界の実権をにぎり、世界を統べる、正義の組織……この世界が均衡を保っているのは全て機関のおかげで、この世界が平和で有り続けるのも、機関のおかげ……そう、信じている人はたしかに多いし、あながち間違ってもいないしな。
まあ、平和かどうかはべつとして、機関という存在が表にでているだけで、多くのちっぽけな犯罪者はその戦う気力を失って、犯罪を未然に防ぐことはできるから、まあそう言う意味での平和ってことだろうな。
でもたしか……機関の実権を狙い、機関という存在を潰そうとしている、犯罪者組織っていわれてる集団があるのをちらっと耳にしたことがあったが……まあいいか。

「お前があいつに勝てたら出してもらえるだろうな」

俺はフラムの言葉を適当に流して、公園に入る。シエルの位置からだとこちら側の入口は死角になっていて俺たちがまだ来ているかわかってないみたいなので、俺はちょっとした悪戯を思いつく。

「でさー、まえの討伐演習の時にさー……」

「機関の人って……」

後ろのほうでフラムとレイがなにか話していたが、俺は少し駆け足になりながら、シエルに近づいていく。
シエルは緊張した時でなければ、いつもボーッとしている。基本マイペースで、ねむたげだ。だが、誰よりも使命感が強く、そして誰よりも強くあろうとする心をもっている。だが、そんな剣士様も……
不意打ちには、弱い。
俺は駆け足気味だったが、すぐに速度を上げる。俺のもてる最高の速度で地を駆け、そのままシエルに接近しながら、剣を引き抜き、鞘をあさっての方向になげすてながら、思いっきり振りかぶる。
シエルのかおがハッと何かに気がついたように辺りを見回す。腰の剣に手をあてながら、警戒を始める。やはり、察知はするか……だがシエルのすぐ近くまで迫ったところで、ようやくシエルが俺のことを認識する。シエルは眠たげな表情のまま、少しだけ驚いたように、俺のことを見つめる。俺はそれをおかまいなしに、剣をシエルにむかって容赦なく振り下ろす。
……だが、俺の剣がシエルを捉えることはなく。地面を思い切り叩きつけただけの結果に終わってしまった。

「……リヒト、不意打ちはずるいと思う」

さきほどの位置から五歩ほどさがった、俺の剣の範囲外にいつのまにか移動していたシエルは、俺のことをジト目で見つめる。

「よう、随分と早いな、シエル」

そして俺は何事もなかったかのように剣を担ぎ、シエルにむかって手を振る。

「……はぁ」

シエルはあきれて物も言えないと言わんばかりにため息をする。

「今のがもし私にあたってたらどうするつもりだった?」

非難するかのように俺を攻めるが、あっさりかわしてるんだから問題ないだろ、と思う。あと俺も当てる気はなかったしな。ただ驚かそうと思っただけだ。

「悪かった悪かった。ただ驚かそうと思っただけだ」

「ものには限度ってものがある」

「うっ」

シエルが強かに俺を言葉責めする。まあ、俺とシエルの関係は昔からこんなかんじだ。
俺がシエルにちょっかいをかけて、シエルがそれをあしらう。また、それの逆もある。昔から、そんな関係は、かわっていない。

「リヒト……いまのはさすがに男らしくなくないか?」

Re: 十字星座の戦士 ( No.14 )
日時: 2014/01/18 16:37
名前: Ⅷ ◆O.bUH3mC.E (ID: fZ73J0jw)

「シエルさん、大丈夫ですか?」

俺がシエルの非難をうけていると、後ろから、俺が投げ捨てた鞘を拾ってきたのか、その鞘をもったフラムと、後ろからついてきたレイがそういう。
シエルは、二人の顔をみたあと、

「これで全員揃ったかな」

と首をかしげながら俺に聞く。

「余計な見物客を呼んでなきゃ、これで全員だな」

と俺が周りを見回しながらそう返す。
その言葉に、シエルはやはり、どこか眠たげな表情のまま、なにかを思い出したかのように言う。

「そういえば……誰が噂をながしたかはしらないけど、機関の警備隊の人と、教官がひとり見に来るって言ってたような……」

そういいつつ、シエルはジトッとした目でフラムを見る。フラムはあさっての方向をみながら口笛をふいていた。……余計な見物客を用意してくれやがったな、こいつ。
非難の目を俺がむけると、さすがにフラムをいたたまれなくなったのか頭をぼりぼりとかくが、レイがフォローにはいる。

「でも、教官と、機関の人がくるなら、いいチャンスかもしれませんよ?」

という。それに一瞬、なにをいっているのか俺は理解ができなかったが、フラムがレイの言葉に反応して、いきなり元気になる。

「そうだぞ!!これはいいチャンスになる!!たとえばリヒト、お前は教官に今までの努力の成果を見てもらって、お前の本当の実力を認識してもらういい機会だ。そして、シエル。お前は———」

「———機関の人に認めてもらうチャンス、そしてあわよくば中央の機関に推薦証を送ってもらう……みたいな感じを期待してるの?」

フラムが元気よくいってたのを、途中でさえぎってシエルがそういう。それにフラムはああ、と頷きながら

「そうすれば、天下の機関にはいれるし、その才能をもっともっと活かせる舞台に飛び立てるんだ」

フラムはどこか夢見心地で語る。あいつは昔から正義のヒーローになるんだとかいちいちうるさいやつだったが、あいつの正義のヒーローの対象は、今では機関、ということらしいな。
世間一般からしても機関は正義の組織であり、この世界の秩序だ。誰がそれを疑うだろうか。誰がそれを信じないだろうか。だから、俺もたしかに、そんな組織にはいれるチャンスがあるのなら、逃したくはない、と思う。だが、シエルはどこか浮かない感じに

「べつに私は、力をひけらかしたいわけじゃないから、そうゆうのには興味がないんだ」

そこで自嘲ぎみにシエルは笑い、フラムは少しだけ考えるように唸る。

「ま、人それぞれさ」

と、俺がてきとうに流す。
シエルの性格上、あいつは見える範囲全てのものを守りたい、自らの力が届く範囲のものを、守りたい。という思いがある。確実に助けられるもの、もしかしたら助けられるもの、二つに一つの選択肢が出現した場合、シエルはどちらも助ける、という選択肢を見出すようなタイプだ。そういったところから、機関という大きな組織が、傾向として取る、助けられるものだけ助け、助けられないと判断したものは切り捨てるという考え方は、好きではないのだろう。
まあ、ときにはそういった切り捨ても大切なことは、シエルも頭では理解しているし、機関がまちがっているとは思っていないだろう。俺たちは、なんだかんだでいって、機関がつくった法律、制定、規則などにとらわれている、いわば機関という秩序に生かされているような存在だ。だから、機関が間違っているとは、これっぽっちも思ってないのもたしかで、実際シエルも悩んでるはずだ。

「実際、シエルの実力は機関の兵士様の折り紙付きだしな。それに機関にはいったからって力をひけらかすわけでもない。機関にはいったとして、今までと変わらずこの街にとどまり、警備隊を務めるっていうのも選択肢としてはある。まあ、あんまり深く考えるなよ」

と、俺はシエルの頭をポンポンと軽く叩く。それにシエルはくすぐったそうに目を細め、少しだけ笑顔になる

「それに、機関の警備隊の人から確実に推薦書がでるってわけでもないですしね」

レイがそういうと、そらそうだ、とフラムが笑い、俺たちもそれに釣られて笑う。
緊張感のない、平和な時間だ。
魔物が街に侵入した時のような緊張感、平和がぶちこわされていくのかと思う恐怖感の一切ない、平和な時間。
俺は、こういった時間が、好きだ。
そんな時間も……確実に、終わりを告げる時が来る。

「そろそろ、やる?」

と、一通り笑い終えたあと、シエルが俺に首をかしげながらそう言う。
俺はその一言に、ドクン、と心臓が跳ね上がるのを感じ取った。
そうだ。俺は、俺たちは、遊びに来たわけではない。
そう……俺とシエルは、自分の信念をぶつけるために、戦いに来たのだ。

Re: 十字星座の戦士 ( No.15 )
日時: 2014/01/18 16:38
名前: Ⅷ ◆O.bUH3mC.E (ID: fZ73J0jw)

俺はもう一度あたりを見回す。すると、公園の隅っこの方で、こちらには声をかけてこなかったが、俺たち三人のめんどうをよくみていた教官が、こちらをみているのがわかる。久しぶりに見たが、元気そうでなによりだ。
そして、その反対側の隅っこには……機関の、警備隊が、ひとり。
機関の制服である、真ん中に十字架の刺繍がされた白いローブを着ていて、静かにこちらを見つめている。どこか値踏みするかのような視線に感じて、俺は一瞬舌打ちしそうになるが、あえてなにも言わずに、俺はシエルから距離をとる。
フラムとレイが、噴水の縁までより、俺とシエルは、噴水を真ん中に、対峙する。

「俺はいつでもいいぞ」

俺がそういうと、シエルが腰にかけられていた、細剣……たしか名称は、ルビアス・レイピアっていったか、オーダーメイドの一品らしい。

「私も、大丈夫」

しずかに、シエルがそう告げる。
手をだらんとさせて、どこか眠たそうな表情のままそういう彼女はちょっと危うい。だが、あれが彼女の戦闘スタイルだ。型に囚われたガッチガチなものを、少しだけ自分流にアレンジしたのが、彼女の戦闘スタイル。まあ、ガッチガチに型を習っていて、それをそのままアレンジもなしにつかってしまうと、誰もが誰も同じになってしまうから、そこで少しだけアレンジを加えて、我流の型を作るのだ。我流型は、ある程度までは型が定まっているが、戦闘に入る前の構え、技の連携、などはアレンジすることが可能だ。さらに、我流型は、技を多彩に覚えることが可能であり、さまざまな連携技を披露してくるので、俺みたいないい加減な自由型の人間からしたら、やはり厄介だ。
自由型はありとあらゆる状況に対応できるために、いっさい型というのを教わらずにやる、完全な我流型ではあるが、やはり、自分流を極めすぎているので、技を覚えにくい。そのためか、つかえる連携などもかぎられる。俺が朝やってたようなあれがいい例だ。同じ系統の技を組み合わせるのもいいが、やはりひとひねり欲しいところだ。……ま、俺がいい加減にやってなければこんなことで困りはしなかったんだろうがな。

「んじゃ、合図は俺がやるぜー」

と、そういいながらフラムが少しだけまえにでる。俺は鞘から剣を引き抜き、再び適当な方向に投げ捨てる。鞘からだした俺の刀身は、やはり少しだけ刃こぼれが目立つ。だが……いままでずっと、こいつとともに戦ってきたんだ……今日も、乗り切れるはずだ。

「では……戦闘方法は自由、ただし、相手に直接的な攻撃は不可とする、模擬戦闘訓練を開始する。勝敗有りの制定で、先に相手の武器をはじく、または壊すかしたほうが勝ち……それでは」

シエルが、グッと、体に力を入れるのがわかる。俺は体から力をぬき、シエルの動きを読む。
型にとらわれるものは体に力をいれるからすぐわかる。自由型のやつも、力をいれないからすぐにわかる。それが、今俺たちのことを見ている教官から発せられた言葉だ……まさに、その言葉の写鏡のように、俺たちは行動をとっている……そして———

「よし……はじめっ!!」

フラムが元気よく腕を振り上げて合図をだす
さあ————俺が信じる力を、見せてやる。

Re: 十字星座の戦士 ( No.16 )
日時: 2014/01/18 16:42
名前: Ⅷ ◆O.bUH3mC.E (ID: fZ73J0jw)

合図とともに、シエルが一気に間合いを詰めてくる。常人では出せない速度で一気に迫ったシエルは、剣を突きさすかのごとく、俺を突く。
俺は、その突きを自身の剣でいなして、下にはじく。シエルは一度間合いを取ろうと後ろに跳躍しようとするが、……逃がさない。
俺は相手の剣をはじいたと同時に生まれた隙をつくかのように、シエルにむかって、一度、横一閃に剣を振り抜く。

「ふっ!!」

掛け声とともに、シエルが後ろに向かってバク転をして、俺の一撃を華麗にかわす。シエルの強さ、とは、速さ……そして、順応力にある。どんな相手でも、初めて戦った相手でもそうでなくても、相手の特徴を一瞬にして把握し、次の相手の手を読み、一歩、二歩先の手で攻めてくる。そんな感じだ。だから……俺は、そのシエルの先をいかなければ、勝つことはできない。今、俺に求められているのは……シエルの三歩先を行く戦い方だ!

「『魔光刃』!!」

俺は剣を地面に叩きつける。叩きつけると同時に生まれた衝撃を利用し、大気中に漂うマナの力を利用して、光の衝撃波を生む。その衝撃波はシエルにむかってはなたれ……

「甘いね」

とシエルはそういって、軽々とその衝撃波を、横に跳躍してかわす

「ちっ」

俺は舌打ちをして、シエルから少し間合いをとるために後ろに跳躍しようとする、だが、次の瞬間にシエルは俺のの眼前まで迫っていて、俺は一瞬あっけにとられ、かたまってしまう。
そこを、シエルがのがすはずもなかった。

「『殺迅』」

そう、しずかにシエルが囁くのがわかった。……技の発動には魔法の詠唱と同じく、技名の確認、が必要だ、だから、シエルがその名前を口にしたってことは……技が発動するってことで……
頭のなかで一瞬でその事実を整理した俺は、とっさに自身を守るために剣を縦に構える。シエルはその俺の構えた剣にむかって、銀色だった刀身が、黒い刃に包み込まれ、肥大化したその剣で、突きをいれる。

「うおぉっ!?」

剣と剣がぶつかりあい、金属がこすれるいやな音がしたと思ったら、俺はシエルの技の衝撃で、だいたい二十メートルほどか、吹き飛ばされる。
吹き飛ばされている途中に耐性を立て直し、なんとか地面に着地したものの、シエルはもう、次の攻撃を決めるために、目の前に迫っていた。

(相変わらず速い……!)

おそらく、あいつは一気に勝負を決める気……だったら、おそらく……連続技で勝負をしかけてくるはずだ……だったら……

「考えが顔に出てる」

その言葉に俺はハッとして顔をあげると同時に、腹を鋭い衝撃が襲うのがわかる。シエルは俺の予想と違い、おもいきり俺の腹に蹴りをいれてきた。さきのように吹き飛ばされはしなかったものの、もろにはいってしまったようで、俺は地面に手をついてむせかえる。

「これで終わり」

シエルはそういうと、俺が姿勢を保つために地面にさした剣をはじくために、剣を横一閃に振りかざす。だが———

「甘いのは……お前だ!!」

俺はそう叫び、しゃがんだ状態から無理な体制でバク転をすることによってその攻撃をかわし、戦いを続行させる。
この戦いは、相手に剣でのダメージを与えることを反則とする、対人訓練用の模擬戦闘だ。だから、シエルはいつもどおりの力で戦うことはできないし、俺もその条件は同じだ。だが、俺は、シエルが女の子だからって思って、体術を遠慮なんかしていたら確実に先に負けるのは俺だし、体術でもシエルに敵うとは思えない。だったら……

「勝負にでるまでだ!!」

俺は剣を一度振り、気合を入れ直す。そして、次の瞬間

「うおおおぉぉ!!」

俺はシエルにむかって突進する。

「っ!!……『殺迅』!!」

シエルが俺のその突進に反応して、「技」をつかう。……そうだ、お前は技に頼ればいい、技にたよって、お前の信じる力を貫くがいいさ……でも俺も……自分の信じる力を、貫くまでだがな!!

「ぬおおぉぉ!!」

シエルがさきほどと同じく、黒い影のような刃につつまれた剣を、一直線に突き出す。俺はそれを、斜め下から切り上げ、弾く。

「……くっ」

さすがにそれだけではシエルは剣をはなさない。だが、体は大きくのけぞる。俺はそのがら空きになった胴に、空いている左腕で、思い切り拳を叩き込む。

「……ふっ!!」

だが、シエルはそれを読んでいたみたいで、弾き飛ばされた反動を使って後ろに跳躍する。だが、俺は着地してから、行動させる隙をつくらせるわけにはいかない。勝負は……ここできめさせてもらう。

「いくぞシエル!!『魔光刃』!!」

俺はさきと同じく、剣を地面に叩きつけ、光の衝撃波をはなつ。だが、俺はこんどはそこで止まらない。

「『魔光連弾』!!」

次に俺は剣を前に突き出す。剣の先端に光の弾ができあがる。俺はそれを確認せずに、まずは下方に、次は上方に切り上げる。それによって半月状の光の鎌鼬が生まれ、それがシエルにむかって放たれる。……まだだ!!

「『魔光十連打』!!」

その掛け声と同時に光が剣に宿る。俺はそれを決まった手順もなしに、ただ十回、剣で空を切る。それによって、さきと同じ光の半月状の鎌鼬が生まれ、それがシエルを襲う。ここまでかかった時間は、公園で試しぶりをしていた時の、半分以下だ。

Re: 十字星座の戦士 ( No.17 )
日時: 2014/01/18 16:46
名前: Ⅷ ◆O.bUH3mC.E (ID: fZ73J0jw)

「……はやい!!」

シエルの驚愕の声が聞こえると同時に、シエルが動く気配がわかる。だが、俺はそれを確認している暇はない。これだけではシエルを圧倒することはできない。……だから

「『十字剣・光』!!」

再び、剣に光が宿る。俺はそれを縦に一度、横に一度きることにより、十字型の鎌鼬を生み出し、それが再び、シエルにむかって放たれる。

「くっ……『紫電』!!」

俺のコンボがすべて放たれる。シエルは最初の一撃を剣で弾き飛ばし、次に技を発動する。
シエルの剣に紫色の雷のようなものが宿ると、シエルは剣を斜め下に振る。それと同時に剣から雷が放たれて、俺の二度目の技を打ち消す。

「『ダークネススラッシュ』!!」

シエルの剣に、闇の力が宿る。シエルの剣は、その闇が形をとり、巨大化し、闇の巨剣と化す。それをシエルが横一閃になぎ払うことによって、俺の十連打はすべて消し飛び、さらに、最後の十字も消し飛ばす。

「……ぐっ!?」

コンボを決めたあとの俺は、コンボを決めたあとに、マナの一斉消化により発生する虚脱感に襲われていて、それを見ているだけだったが……やはり、シエルは強い。
コンボをするまでもなく、俺の攻撃をあっさりと消し飛ばすあたり、力の差は歴然だ。……今ので正直、終わるかと思ってたが……まだか。

「リヒト……あなたの力は、あなたがいってた「守る力」は、この程度なの?」

シエルが、残念そうな声をだす。その声には、聞き覚えがあった。
その声を聞かないために俺は戦ってきた。その声を聞きたくないから、俺は強くあろうと思った。だから……

「いいや……まだだ」

といって、虚脱感をぬぐい去り、俺は再び剣を構える。
たかだか一度、コンボを破られた程度で弱気になってどうする……俺は、なんのために、戦ってきたと思ってんだ。まだまだ、やれるはずだ!!

「そう……なら、私もそろそろ本気、だすね」

シエルがそういうと、眠たげな目に、殺気が宿るのがわかる。表情は変わらないのに、雰囲気が、挙動が、すべてが一気に変わる。それは、シエルが本気をだしたという証で、今まで本気でなかったという証だ。

「お前がその気なら……俺もマジになってやるよ」

正直、俺には迷いがあった。
いくらシエルが強いとはいえ、友達を、傷つけてしまうということに、迷いがあった。だけど、シエルはそんなことを気にしないだろう。そんなことを気にせず、俺のことを負かしにかかるだろう。傷つけても……自身の信じる力のために、俺を屈服させようとするだろう。だったら……それもその迷いを、今、捨て去るんだ。じゃないと……怪我だけではすまされないかもしれないからな。
俺は腕をだらん、とさげる。力を抜き、相手の動きに集中する。シエルも、剣をかまえ、俺のことをまっすぐに見据える。さながら、訓練が始まる前の状況に似ているが、二人を包む雰囲気は、大きく変わっていた。
次の瞬間、俺たちは……同時に、動きだす

「『魔神閃光刃』!!」

「『ダークネススラッシュ』!!」

俺の剣に、光がやどり、それが巨大化する。さきほどのシエルと同じように。シエルも、さきほどと同じく、闇の巨剣を作り出し、俺たちは一斉に振る。巨大な光と闇の鎌鼬が生まれ、互にぶつかり、相殺される。俺たちは、それを確認せず

「うおおおおお!!」

俺はシエルにむかってふたたび突進する。シエルは、次の技を発動するべく、構える。

「『ダークネススラッシャー』!!」

シエルがそういうと同時に、剣を地面に突き刺す。次の瞬間、シエルの目の前の地面から俺にむかって、だいたい2m弱の、闇の剣が列をなしながら突き出てくる。

「うおっ!?」

俺は目の前までせまったそれを、なんとか横に軌道を変えてかわす。だが、

「『ブラッディープリズム』っ」

シエルが横なぎに剣をふる。それが合図となり、俺の目の前に、拳サイズの、黒い結晶があらわれる。それは走っている俺に並行しながらついてきて……シエルが剣を地面につきさしたのを合図に、爆発する。

「うおおおぉぉぉ!!」

俺は、それでも止まらない。剣を盾の代わりにして、爆発したと同時に襲いかかる結晶の欠片を防ぎ、爆発の衝撃は、気合で耐える。

「っ!?『十字剣・闇』!!」

シエルが黒く塗りつぶされた剣で、宙を二回切る。それにより巨大な十字の鎌鼬が生まれて、俺にむかって飛んでくる。
たしか……自分で使う技の派生系、別の型だから、この一撃がどれくらいかわかる。……おそらく、剣で受け止めたら、文字通り十字型に斬られるだろう。だったら———

「『光炎剣』!!」

俺の剣を白い炎が包み込む。俺はそれを上段から斜め下方に斬る。それにあわせて俺の剣に宿った白い炎は肥大化して、シエルの黒い十字に迫る。白い炎によって前方は見えなくなり、軽い目くらまし状態になってしまうが……シエルの黒い十字架が俺の炎を切り裂き、霧散させる。だが、俺にその十字が届くことはなかった。


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