複雑・ファジー小説
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- 十字星座の戦士※お知らせ
- 日時: 2014/02/03 23:07
- 名前: Ⅷ ◆O.bUH3mC.E (ID: mL1C6Q.W)
〜prologue〜 【決まった未来、変えられる未来】
……声が、聞こえる。
その声は、これが初めてではない、過去、何度も何度も、同じタイミングで現れて、同じ言葉を残していく。
———目覚めよ
と。
声は、何かを促しているようだが、その意味までは、理解することができない。
何もない空間、闇に包まれた、不安を司る、そんな場所に誘われ、その声の主は、現れる。
夢と言われている空間。それは、本人意識ははっきりとしないものだが、この空間では、それにとらわれていない。体を動かしている感覚もあれば、聞こえる声を、『声』だと認識できるぐらい、意識もはっきりとしている。しかし、そこが夢だというということも、なぜだかわかってしまう。そんな場所。
いや……夢、ということにしなければ、この事象の説明がつかないから、かってにそう思っているだけで、本当はもっと別物の可能性もあるのだが。
その声は、いつも同じことを繰り返すだけ。声の主は、三度目の呼びかけで、その姿を表すということは、過去この空間にきているため、はっきりとわかっている。
———目覚めるのだ
目覚めよ……その意味は、まるでわからない。だけども、その声には、どこか焦るような響きが有り、自然と自身の心が不安に駆られるのを感じる。その時必ず、自分はこういうのだ
……どう言う意味だ
と。
意識もしっかりとしている、体の自由もきく、だが、この声は、自分の意識しないうちに、勝手に発せられる。
このことにも、もう慣れた。
けども、その声は、その言葉を無視して、さらに言葉を紡ぐ。
———十字星座の光よ
その瞬間、闇に包まれた空間に、ひとつの光が生まれる。
手のひらサイズに収まりそうなほどの光は、十字架のような形をしていて、それが、まばゆいばかりの光を放つ。
それが、声の正体。
そうだという証拠もなければ、声が自身の正体を明かしたわけでもない、しかし、なぜだか……俺には、わかってしまう。
声に、その光の正体に従うべきだと、俺の体は勝手に進みだし、その光に手を伸ばそうとする。
いくら抗っても、いくら意識がはっきりとしていても、勝手に体は動きだし、やがてその光に手が届く。
———世界はやがて、終焉を迎える。
俺の手に包まれた十字架は、さらに声を発する。脳に直接語りかけてくるかのように。
———おまえの力が、おまえに託された力が、必要だ
その瞬間に、手のひらに包まり、光をかすかに漏らしていただけの十字架が、闇を照らさんばかりに、強烈に光りだす。
……そして、闇が払われた、その先には……荒れ退んだ世界が広がっていた。
世界の中心には、人の形をした、なにかが立っている、その周りには……無数の人が、積み重ねられるようにして……死んでいた。
その世界は異様だった、その空間は異常だった。世界の中心に、一体の人の形をしたなにかが立ち……その周りには、誰ひとりとして、生きている者はいなかった。
人の形をしたなにかは笑っている。甲高い、悲鳴のような声をあげて、周りに積み重ねられるようにして、死んでいる人間を、蹴り飛ばし、また笑う。
あるものは、心臓を貫かれていた。あるものは、首がなくなっていた。またあるものは、人の形すら、していなかった。
無数に転がる死体、死体……笑う、人の形をしたなにか。
空は紅く染まり、人々が住んでいたであろう街は、背景の中、炎に包まれている。
ここで、俺が思わず、つぶやく
……なんなんだ……これは……
この世界が、現実でないことを、俺は知っている。こんな大量殺人、街の一つが炎上してしまうようなことが起きれば、当然、知らされているはずだからだ。
けれど……俺の脳のどこか……俺の心のどこかで、これは「現実ではない」と、「起こり得るはずがない」と、楽観視はできず……再び聞こえる声に、問う。
———因果律を捻じ曲げ、やがてすべてを滅ぼす『狂神』が、生まれる
……これは、絶対に、起こることなのか?
声は答えない。
……絶対に起こるはずが、ないよな?
そう、俺が言ったとき……背景に広がる世界の中で……、人の形をしたなにかに、挑む人の姿が、目に映る。
それは、肩までかかる、元は白であったであろう髪を、赤い血で染めた、15、6歳の少年だった。
少年は、武器をとり、人のかたちしたなにかに挑む。しかし、人のかたちをしたなにかは、その少年を笑いながら……
殺す
心臓を、手で一突き。人の力とは思えない力で貫き……少年を蹴り飛ばす。
その時、吹き飛ばされた少年の顔……それは、何度この世界に来ても、何度違うと思っても、覆ることはない……
そう……その少年の顔は……姿は、間違いなく……
俺自身、そのものだった———
その光景が流れた後、笑い声とともに、その世界は、崩れ去る。ガラスが砕け散ると同じときのように、音をたてて、その世界に終幕を下す。
これが……夢の終わりの合図。
その合図が現れた時、俺は、ただただ、問う
……あれは、なんなんだ
……こんなことが、起きるはずないよな?
……あの「人」は、なんだ?
……どうして、俺があそこにいる?
その質問に、十字架は答えない。
やがて、世界が終わりを告げる———
その時……十字架は……決まってこう、囁く
———破滅を止めたければ……目覚めるのだ……十字星座の光の戦士よ
———————————————————————————————————
はじめまして、Ⅷという者です。ゆっくり小説を書いていきたいと思いますのでよろしくお願いします。
※お知らせ
(現在進行形で、3話を執筆(入力)中のため、更新が追いついてしまった際には、しばらくの間更新を停止し、ある程度まで進めたところで再び更新させます)
(メインキャラクターの顔のイメージ画up予定)
prologue >>0
一章【正義の影、悪の希望】
1話 【Peace(平和)】
>>2 >>3 >>4 >>5
>>8 >>11 >>12 >>13
>>14 >>15 >>16 >>17
>>20 >>21 >>22 >>23
2話 【Lie(嘘)】
>>24 >>25 >>26 >>27
>>28 >>29
3話 【Collapse(崩壊)】
>>30 >>31 >>32 >>33
>>34 >>35 >>36 >>37
>>39 >>40 >>41 >>42
>>43
4話 【Warrior of the cross constellation(十字星座の戦士)】
(3話終わり次第)
キャラクターイメージイラスト(>>38)
キャラクター設定
主人公
リヒト・タキオン
性別/男
年齢/16歳
身長/170
体重/60
十字星座の光の戦士
戦闘職業『白迅剣士』
初期使用武器『片刃直剣/ロングブレード』
性格/物事に対して、つまらなさそうに見つめ、人との交流をあまり好まない。だが、一部の人間、昔馴染みの人たちとは、仲が良い。昔はあまりひねくれた性格ではなかったのだが、『夢』を見るようになり始めてから、性格がゆがみ始める。光というよりも、闇のような心を持つ少年
ヒロイン
シエル・グランツ
性別/女
年齢/16歳
身長/150
体重/41
?
戦闘職業『黒迅剣士』
初期使用武器『細剣/ルビアス・レイピア』
性格 リヒトの幼馴染であり、おせっかいな性格。リヒトが戦闘職業を始めるのをきっかけに、誰かを守るという責任感とともに、自身も戦闘職業を始める。とても責任感が強く、仲間を大切にしている。口数が少なく、いつも眠たげにボーっとしているのが特徴の、優しい心を持つ少女
メインキャラクター (今現在の暫定的な設定)(物語のネタバレになる要素は?と表記する)
フラム・ヴァルカン
性別/男
年齢17歳
身長/174
体重/67
?
戦闘職業『炎明騎士』
初期使用武器『片手大剣・フレイムタン』
性格 同じく、リヒトの幼馴染。熱い心を持ち、人のため世のために活躍したがる、目立ちたがり屋。性格もお気楽で、軽い。しかし、人を守るため、大切な人を自らの手で守るべく、戦闘職業を始める。炎のように暖かい心をもつ少年
??
性別/女
年齢/??歳
身長/??
体重/??
?
戦闘職業『??』
初期使用武器『??』
性格/?
レイ・タキオン
性別/女
年齢/15歳
身長/148
体重/40
タキオンの継承者
戦闘職業『白迅剣士』
初期使用武器『長剣・タキオン』
性格/ 弱気で、いつも兄であるリヒトの後ろに隠れている、内気なタイプ。しかし、困っている人を放っておけない、心にやさしさと、儚さを宿した少女。
1000年前の戦争により、英雄『タキオン』が使ったといわれている、『長剣・タキオン』に認められし少女。
ルイン・?
性別/男
年齢/??歳
身長/??
体重/??
??
戦闘職業『??』
初期使用武器『??』『??』
性格/?
??
性別/??
年齢/??歳
身長/??
体/??
??
戦闘職業『??』
初期使用武器『??』
性格/?
バウゼン・クラトス
性別/男
年齢/??歳
身長??
体重??
??
戦闘職業『アポカリプス』
初期使用武器『??』
性格/?
- Re: 十字星座の戦士 ( No.18 )
- 日時: 2014/01/15 22:02
- 名前: 霞 紗羅 (ID: R3roQ1XX)
初めまして、霞 紗羅(かすみ さら)と言います。
題名が気になってきて見ましたが、すごく面白かったです!
登場人物の思考とか、戦闘中の描写とかがかっこよくて読みやすかったので、一気に読めました。
更新待ってます!
- Re: 十字星座の戦士※一時的更新速度上昇 ( No.19 )
- 日時: 2014/01/15 22:23
- 名前: Ⅷ ◆O.bUH3mC.E (ID: wzVEqeM3)
霞 紗羅氏
コメントありがとうございます。
描写にはあまり自信がなかったのですが、お褒めいただき、とても嬉しいです。
更新頑張ります。
- Re: 十字星座の戦士※一時的更新速度上昇 ( No.20 )
- 日時: 2014/01/18 16:49
- 名前: Ⅷ ◆O.bUH3mC.E (ID: fZ73J0jw)
「しぶとい」
「お、おまえは……し、しつこいな」
正直、間一髪で躱したので、俺の突進の勢いはなくなり、地面に手をついて息を整える。あ、危なかった……
「けど、そろそろ終わりにする」
シエルも流石に、少しだけ息を切らしているが、体力の限界はまだそうだ。さすが、俺たちの代の主席といえる。
「『シャドウソード』」
シエルがそういうと、再び剣が、黒く染まる。だが、そこからシエルは行動に移さない。……あれは……
「くそっ……持続技かよ」
「正解……っ!!」
俺は立ち上がり、シエルは俺にむかって一気に跳躍する。持続技は、その技ひとつ、で様々な攻撃を繰り出すことのできる、上級中の上級の技だ。ただ……それの弱点は、ほかの技をその持続されている間使えないということと、上級以上の攻撃をすることができないということ……そして、これは人によって弱点かそうでないかはわかれるが……すべて自身でモーションをおこして使わなければならないので、個人の技の技術ではなく、剣術のスキルに、頼られるということだ。
シエルは、この技をあまり好まない。自分が戦うために学んだスキルは、型に頼る、技中心のスタイルだからだ。でも、そんなシエルが、技ではなく、自分の剣術に頼って勝負を挑んできたってことは……おそらく……俺に合わせて、だろう。俺が戦うために学んだスキル……学ばないで戦う力……自由型に、合わせたのだろう。
だったら……ここが、本当の、勝負の時だ
「いくぞ!!シエル!!」
「……」
シエルが斜め下に剣を振る。俺は斜め下から、斜め上に切り上げ、剣と剣がぶつかり合う。持続技によってシエルの剣は強化されていて、俺の剣のほうが重量が上なのに、弾き飛ばすことができず、互いに力任せに相手を押す。
しかし、シエルが力を抜いたと思うと、俺の剣は宙を空振り、シエルは一度後ろに跳躍すると、そこで二度剣を振る。それによって黒い鎌鼬が2つ生まれ、俺を襲う。
それを俺は剣を思い切り振り、ひとつを消し、二度目はしゃがんでかわす。シエルはそれを狙い、再び俺に肉迫し、剣を振り下ろす。それを俺はまた下方から剣を切り上げ、受け止める。
「……ふっ!!」
シエルが一度息をはくと同時に、今度は力を込める。その力は、俺が上に持ち上げる力よりも強いことがわかった俺は、即座に剣をシエルの剣からはなし、後ろに転がる。
「はっ!!」
だが、俺が起上るのをまたずにシエルは剣を地面に突き刺す。すると再び、2m弱の黒い剣が地面から俺にむかって順に生えてくる。———はやいっ
とっさに俺は剣を盾替わりに前に横に構え、俺の眼前から現れた黒い剣を、なんとか防ぐが、その衝撃で後ろに後ずさりする。
ピシッ……という嫌な音が聞こえる。とみると、俺の剣の刃溢れが、朝見たときよりもひどくなっていることに気づく。……無理させすぎたか……
顔をあげると、シエルが再び俺に迫っているのがわかる……くそ……やっぱシエルは強い。俺が得意とする接近戦でも引けを取らず、むしろ俺を押している。遠距離戦でも、技で俺を圧倒し、俺の接近すら許さない。さらに、俺のコンボもすべて楽々と防ぎきる。正直、同い年とは思えないほどの、熟練ぶりだ。だけど……俺は……まけ……たくない!!
別にもう、力とか、信じるものだとか、そんなのは、今となっては、こいつと戦う過程にすぎない……そうだ……俺は、ただ、自分の理想を、自分のプライドのために……負けたくないんだよ!!男としてな!!
シエルはもう、俺の目の前にいる。次にやつはどんな行動をとる?技をつかう?それともそのまま接近戦で勝負を付ける?読め。読むんだ。相手の考えの先を。
俺がとった行動は……
「『光炎剣』!!」
「っ!?」
シエルが剣を横凪に、俺の剣を弾き飛ばすために振る。その瞬間を狙って俺は、剣に白い炎を宿らせ、それをシエルの剣にぶつける。
白い炎がシエルの剣を飲み込む。だが、黒く塗りつぶされたシエルの剣は、熱を通さず、また、俺が狙った、剣の暑さで相手が手を離すという作戦がきかないこともわかる。だから……最後はやっぱり、力と力で、決着をつけようじゃないか!!
しゃがんだ状態でシエルの剣を受け止めている俺、立ったままの状態で俺のことをおすシエル。状況は最悪、そしてさらに、シエルの剣があたっているところから、刃溢れが悪化し、ボロボロと欠片が落ちていく。くそ……こんなことなら磨いどくべきだったな……と頭のなかでぼやくと同時に、俺の剣は真ん中から二つに折れ、訓練は、シエルの勝利として幕を下ろした。
—————————その二人の戦いが終わるそのときまで、白いローブを着た男は……不気味に笑いながら、見つめ続けていた。
- Re: 十字星座の戦士※一時的更新速度上昇 ( No.21 )
- 日時: 2014/01/18 16:52
- 名前: Ⅷ ◆O.bUH3mC.E (ID: fZ73J0jw)
「あー……負けた……か」
戦い終わったあと、俺は地面に寝転がり、そう、つぶやく。
正直、勝てると思って戦ったけど、まあ、俺が付け焼刃程度の技術を身につけた程度で、こいつに勝てるわけがないと薄々気がついていた。
ただ、失望されたくなかった。前のように。ただ、認めて欲しかった。俺は、そのために戦うことを望んだ。けど……負けた……か。
「勝負あり!!シエル・グランツ!!」
フラムがそう掛け声をかけると同時に、シエルは鞘に剣を収める。殺気がなくなり、いつもの頼りなげな、ぼんやりとした雰囲気に戻るのがわかる。
「お兄さん、大丈夫ですか?」
レイが俺にかけよって、俺の顔を覗き込む。それに俺は苦笑いしながら
「体は大丈夫だけど……」
心はだいぶボロボロだけどな、と心のなかでつぶやき、俺はシエルのほうを見る。
シエルは、俺のことをぼんやりとした眠たげな瞳で見下ろしていたが、俺のとなりに歩いてきて、体育座りをする。
「リヒト」
そう静かにつぶやく
「……なんだよ」
俺はぶっきらぼうに言い返す。……また絶望されるんだろうな、と、また失望されるんだろうな……と。そう思ったから。
けど、シエルから放たれた言葉はいがいなものだった。
「……リヒトは、もっと強くなれるよ」
小さく笑いながら、シエルが俺の手に触れる。それだけで、その言葉だけで、俺は、どこか救われた気持ちになるのがわかる。
「リヒトのいう、守るための力……自分を守ることで、自分がいることによって守れる存在を守る……どこか矛盾していてめちゃくちゃだと思ったけど、私も、少しだけ、信じてみるよ」
「……そうか」
そういって、俺も少しだけ笑う。シエルの言葉で、俺が今までやってきたことが、報われた気がしたから、努力が無駄ではなかったと思えたから。
「しっかし……リヒト、お前、前とは比べ物にならないぐらい強くなったよなー」
フラムが腕を組みながらそういう。
「お兄さんは昔から強いですよ」
「その昔の強かった時よりも、さらに強くなったってことだよー」
レイが少しむくれながらいうのを、フラムがあやすようにそう言う。
「昔のリヒトはたしかにひどかった」
シエルがうんうん、と頷きながらフラムの言葉に肯定する
「そ、そんなにひどかったか?」
「うん」
「ま、まあたしかにひどかったな……」
ガックリ、と頭を垂れるが、たしかにそうだったな、と思い返し、また落ち込む。
「前から成長してなかったら、流石に私も、リヒトと戦う気はおきなかったから、ね」
シエルが少しおこったようにそう言う。……たしかに、前の俺のままだったら、こいつは戦うどころか、話しすらできなかっただろう……
「いつまでも弱いままじゃ……俺の理想に届かないから、な」
そういって俺は空に手を伸ばす。
平和な日常のなかに、戦いという言葉が加わった。そんな中で、シエル、フラム、レイは、強くあろうとして、強さを身に宿した。俺も……その仲間に、はいれただろうか。
「このあと、どうします?」
レイがそういうと、フラムが
「昼飯もまだだろ?うちくるか?」
という。
正直、技の連発、コンボの使用、無理な回避をしたあとで、ものすごく疲れている。自分の家でぐったり寝るのもいいが……
- Re: 十字星座の戦士※一時的更新速度上昇 ( No.22 )
- 日時: 2014/01/18 16:55
- 名前: Ⅷ ◆O.bUH3mC.E (ID: fZ73J0jw)
「……んじゃ、久しぶりにおばさんの料理でもごちそうになるかな」
そういって、体をおこす。
「フラムのお母さんの料理はおいしいから、ね」
シエルも、眠たげな瞳を輝かせながらそう言う。
「フラムさんの家、久しぶりですね!!」
レイがはしゃぎながらそういい、フラムが
「よーし!!んじゃちょっくら休憩したらいくかー」
という。
ふと思い出し、俺はあたりを見回す。そういえば、教官と、機関の兵士らしきやつが見ていたと思ったんだが……どちらの姿も、もう元いた場所にはなかった。……教官は俺たちに一声かけてくれてもいいと思うんだが……まあいいか。
「にしても……」
ため息をつきながら、まだ右手に握られたままだった、真ん中から折れた相棒をみる。次に、飛ばされた真ん中より先のそれを見る。俺が、戦闘職業になってから、ずっと戦い続けてきた相棒の成れの果てがこれか……。
「修理費いくらになんだよ……」
と愚痴ると、シエルが若干申し訳なさそうに
「修理費は私がだすよ、私がこわしたんだし」
「いや、流石にそこまでしてもらわなくてもいいよ」
そもそも壊れた原因は俺にあるしな……まあそこはいわないでおくけど。
俺は折れた先端を拾い、鞘の奥につっこみ、もっていたほうも鞘にしまう。格好はつかないが、まあこれでいいか。
「にしても……リヒト、お前その剣、いつからつかってんだ?」
フラムがふと思い出したように言う。そういえば、とレイも考える。シエルは黙って俺のことをみて、そうだな……
「俺が戦闘職業にはいってから一度も変えてないな」
という。
そうだ、一度も、俺はこの剣を手放したことはない。シエルも、それを知っている。
レイは忘れてしまったいるようだが、あの時も、……俺が、戦うことを決意したあの時からも、一度も変わっていない。
空を、晴れ渡った空を、俺は見る。あの時とは違う、平和の空を、平和の空気を、俺は感じる。それに釣られて、シエルも空を見上げる。その瞬間、あの時の映像が、流れる。
俺の意思とは関係なしに、俺の瞳に焼きついてるかと言わんばかりに、流れ出す—————
————————あたりに飛び散る、夥しい量の……血……そして……目の前に無残に転がる……2つの、人の姿———————
「……くそっ」
「……」
俺は一瞬流れたその映像に、顔をしかめ、舌打ちをする。シエルも、苦々しい顔をしている。……おそらく、シエルも同じく、思い出したのだろう。
「?……どしたよ」
突然顔をしかめた俺たちを怪訝そうにフラムが尋ねる。レイは、俺たちの表情から、なにかを察したらしく、沈黙する。
あのときのことは……みんなでいるときは思い出さないようにしてたんだがな……と、俺は頭をかき、ため息をひとつつく。
「いや、なんでもない、ただ教官にしごかれた昔をおもいだしただけだ」
といってごまかす。
あのことは話てもいいことはないし、黙っておくのが一番だ。というか、話てなにかが変わるとは思えないから、な。
「あー……たしかに、お前に一番世話焼いてたからなあ・・・教官は」
「リヒトはぐーたらだからね」
さっきの表情と一片して、にこにことシエルが笑う。それにつられて俺も笑い、本当に教官にしごかれた日を思い出し、また苦い顔をする
「あれは本当に地獄だったな……」
「教官、家にまで来てお兄さんのこと説教してましたからね」
と、レイまで苦々しい顔をする。
教官もいい人なんだが……
「熱いよなぁ、あの教官」
と、フラムが笑いながら言う。
「いい思い出だね」
それにつられて、俺たちは、笑う。
いつか、あの時の決着をつける日が来るだろう。いつか、戦わなければならない日が来るだろう。だが……それは、ずっと先だと信じて……俺は、今の平和を、噛み締めていたい、とこの時、思うのだった。