複雑・ファジー小説
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- レイヴン【三話・因果】※作者トリップ変更
- 日時: 2016/02/25 09:38
- 名前: Ⅷ ◆WlOcYALNMA (ID: HAhG.g1E)
久しぶりに小説が書きたい衝動にかられたので気ままに執筆していきたいと思います。よろしくおねがいします。
作者が投稿したあとに見返してみておかしいと思った点を随時調整していきますが、物語の流れが大幅に変わることはないので読みすすめたところは流して読んでも問題ありません。
作者は自由気ままに執筆していきます。気が向いたら是非、読んでいってみてください。
作者はあまり想像力豊かではなく、また、自身の作った設定上でしか物語を描けないという不器用極まりない人間ですので、オリキャラ募集などは基本致しません。ご了承お願いします。
更新速度は不定期です。1日1回を目安としていますが、一日に2回、3回という日もあれば、都合により何日か時間を空けるときもございますのでご理解の程お願いします。
作者は絵を描くことが好きなので、希にキャラクター絵などを載せていくことがあります。それを見ていただくことでキャラクターの容姿をより正確に表現し、みなさまと共感したいと思っております。
※最近あまり小説を書く時間を確保できなかったために、カキコにおとずれる機会も減り、自分のトリップを忘れてしまったので変更させていただきました。
時間をおおきくあけてしまったためにストーリーの構成を忘れかけてしまっているので、時間があるときに読み返し、再び執筆していきたいと思います。
※目次 ※(★が小説の本文 ●が補足など)
★プロローグ>>1
●用語紹介>>2 ※2/1微調整
●主要キャラクター紹介(随時公開)>>3 ※2/3新規公開
★第一話 正義とは >>4 >>5 >>6 >>7 >>8
>>10 >>11 >>12 >>13>>18
>>19 >>20 >>21 >>22 >>23
>>25 >>26 >>27 >>28
★第二話 仮面の表 >>29 >>30 >>31 >>32 >>33
>>34 >>35 >>37 >>38 >>39
>>40 >>41 >>42 >>43 >>44
★第三話 因果 >>45 >>46 >>47 >>48 >>49 >>50
>>51 >>52
●キャラクターイラスト >>9 >>24 >>36
- Re: レイヴン ( No.3 )
- 日時: 2015/02/23 04:36
- 名前: Ⅷ ◆WlOcYALNMA (ID: 3TttADoD)
主要キャラクター(随時公開)
主人公
片桐刃(かたぎり じん)
20歳
性別男
身長175
体重68
人工【アビリティ】
【レイヴン】・対【アビリティ】第37部隊所属
空間操作能力者
『灰色の髪と、その髪の色と同じ色をした瞳が特徴。口調が乱暴でめんどくさがり。タバコをよく吸うが妹の前では吸えない。すぐに舌打ちをしてめんどくさそうに髪をかくくせがある。【アビリティ】の特徴である部位は右目が灰色ではなく赤色をしているというものだが、普段は目立つからとカラコンで隠している。』
※キャラクターイラスト>>24
片桐蓮(かたぎり れん)
14歳
性別女
身長143
体重37
初期【アビリティ】
【レイヴン】・対【アビリティ】第37部隊所属
重力操作能力者
元デュアル【アビリティ】
『灰色の髪と、その髪の色と同じ色をした瞳が特徴。眠たげにしている瞳は感情があまり宿っておらず、いつもボーっとしている。たよりない印象があるがめんどくさがりの兄の面倒をみているといったところから以外としっかりしている。【アビリティ】の特徴である部位は左目が灰色ではなく赤色をしているというものだが、普段は目立つからとカラコンで隠している。』
※キャラクターイラスト>>36
新城結衣(しんじょう ゆい)
19歳
性別女
身長158
体重46
【レイヴン】・対【アビリティ】第37部隊司令官
人間
『黒髪のポニーテールで、赤い眼鏡をかけており、どこか才女のような雰囲気をもつ刃たちの上司。蓮にたいして過剰な愛情をそそぎ、兄にある刃にたいしては辛辣な言葉ばかりをかけるが仲が悪いわけではない。あまり胸がないことを気にしている。』
稲生千璃(いのう せんり)
23歳
性別女
身長165
体重50
【レイヴン】・対【アビリティ】第37部隊医療班
人間
『??』
高坂勇気(こうさか ゆうき)
17歳
性別男
身長172
体重62
【レイヴン】・対【アビリティ】第37部隊所属
硬化能力者
『馴れ馴れしさと図々しさでは【レイヴン】の中で右に出るものはいないと言われる程の男。自分優先でよく報告を後回しにする。普段は馬鹿だが真面目な話や戦いの際は驚異的な集中力を発揮するため自身の【力】の使い方を完全に把握していて尚且つ相手に見合った戦闘スタイルで戦える柔軟性を秘めている。部位は両手の甲が銀色になっており、鋼のように硬くなっているが、普段は手袋をして隠している。』
霜月美波(しもつき みなみ)
14歳
性別女
身長140
体重35
【レイヴン】・対【アビリティ】第37部隊所属
地形操作能力者
『【アビリティ】としてかなりめずらしい【力】の持ち主。気が弱く、人の顔色ばかりをうかがう生真面目な少女。物事を素直に信じてしまうためにとてもあぶなっかしい。戦いの際もいかに相手のことを傷つけないようにするかをいつも考えているため戦闘向きではないので【力】を存分に発揮することができていない。そのかわりに持ち前の優しさで、勇気と美波のペアは【レイヴン】でダントツに野良【アビリティ】を改心させ収容所に送っている数が多い。部位は右足の指先からくるぶしまでにかけてが褐色に変色しているが、普段から靴下で隠れているため目立たない』
敵
世界を滅ぼす者(本名不明)
??
性別男
身長180
体重70
?【アビリティ】
?
空間操作能力者?
詳細不明
???
??
性別男
身長???
体重??
?【アビリティ】
?
?
詳細不明
その他随時公開
- Re: レイヴン ( No.4 )
- 日時: 2014/12/18 13:51
- 名前: Ⅷ ◆WlOcYALNMA (ID: f4MEHqWX)
第一話
正義とは
人は、【アビリティ】という存在を、例外なく忌み嫌う。
それがたとえ自分たちを守ってくれる存在であったとしても、たとえそれが、古い親友であったとしても、恋人であったとしても、自らの子供であったとしても、親であったとしても……【アビリティ】という存在になった瞬間から、その人の世界は、簡単に崩れ去る。
【アビリティ】となり、忌み嫌われ、信じていた人に裏切られ、世界に拒絶され、どうしてその【アビリティ】となった人が、理性を保っていられるだろうか、どうして精神に異常を来さないと思うだろうか。
【力】を持ってしまったものは、自信を否定した者を憎む。自信を拒絶した社会を憎む。なにもかもを手に入れてしまった【力】で、秩序を簡単に崩壊させる。
誰だって、自分は【アビリティ】にはなりたくないだろうと思うだろう。【アビリティ】になった瞬間に、周囲の人間。家族、友達、恋人。なにもかもに忌み嫌われ、恐怖を覚えられてしまうのだから。
だから人は、【アビリティ】となった人間をみて、自分は絶対にこうならない。自分は【アビリティ】となってしまった人間と関わりなど一切なかったことにしようと、拒絶してしまうのだ。それが、【アビリティ】となった人間を苦しめ、犯罪に走らせてしまう原因だとわかっていながらも、それを繰り返してしまうのだ。
犯罪に走った【アビリティ】を止めることは、警察にも、軍隊でも、止めることはできない。【アビリティ】の【力】が強ければ強いほどなすすべはなくなり、ただただ破壊を待つだけとなってしまう。
そこで、人々は、【アビリティ】を自らで生み出し、自らの手で管理することを計画する。
レイヴンプロジェクト、と言われ。【アビリティ】になった人間に必ず現れる、変化した身体のどこかの皮膚、筋肉、骨、その変化したもの自体を移植することによって、人工てきに【アビリティ】を作る計画だった。
その計画は、成功に終わった。たった5%という成功率という名の絶望的な数値を残して。
そして、【アビリティ】の中にも、犯罪に手を染めず、ただひたすらに居場所を求めている【アビリティ】がいることがいることに気がついた人々は、その【アビリティ】を、首輪という装置で拘束し、居場所を与えるというもののかわりに、犯罪を犯し続ける【アビリティ】を殺せという条件を突きつけ……数千の【アビリティ】が、それに賛同し、居場所を獲得した。
それがほんの十年前に完成した『レイヴン』という組織の実態だった。
【レイヴン】は、対【アビリティ】犯罪専門組織として世界に存在を示し、居場所を失っても、人を傷つけることを、犯罪に走ることを嫌った【アビリティ】が集う場所となった。そこには当然……レイヴン計画により作り出された、自ら人々の忌み嫌われる存在となった【アビリティ】も、存在している。
「【アビリティ】という存在は、人々の畏怖の対象となって数十年、今まで散々あばれまわってきた【アビリティ】たちは【レイヴン】の存在でようやく少しずつ落ち着いてきて、我々人類が、安堵の息を付ける日も近くなってきている———」
巨大なショッピングモールの外の中央モニターに映し出された、小太りの福そうな顔をした中年の男が、うれしそうに、そんなことを語っているのを、灰色の髪をした青年がふと見上げる。
東京の【レイヴン】基地の近くにある、大きなそのショッピングモールは、各地から人が集まるほどにものが充実していて、その隣には遊園地があり、人工の池があり、夜景も綺麗だとかいった、とんでもないデートスポットの昼を過ぎたこの時間帯、人々が行き交う野外の通路の中心で、青年は一人でだるそうに口に銜えたタバコを、周りの迷惑をまったく気にすることなくふかしながら歩いていた。
身長は175センチほどで、中肉中背といった印象をうける身体つきと、若干歳より若く見える顔立ちと、それに似合わない鋭い目つきが特徴で、夏まっさかりだというのに、その青年は黒いスーツを身にまとい、やはり暑いのかシャツのボタンは第二ボタンまで外されている。
その青年の周りには人がいなかった。違う。人が、意図的にその少年をひと目みて、避けているのだ。それは、タバコを道のど真ん中でふかしていることもあるだろうが、中には恐怖を感じているもの、中には怒りを覚えているものもいた。
青年の首には、【レイヴン】に所属している【アビリティ】である証明・・・黒い、生地の薄い首輪が付けられていた。
青年はまるでそんな人々の目になれているかのように髪をごりごりとかき、一度舌打ちだけすると、キョロキョロと周囲を見回す。
「ったく、どこにいきやがった」
乱暴な口調でそうつぶやくが、その口調にはどこか優しげな雰囲気が宿っていることは、近しい者でしかしらない事実だが、青年は極めて不機嫌そうな顔をしていた。
単純に、はぐれたのだ。こんな人のおおい場所で、こんなカップルや家族連ればかりがいるよりにもよってこんな場所で、青年は、自身の仕事のパートナーとはぐれてしまっていた。
周囲を見回すように首を回すと、青年の首元に気が付いた人たちが皆顔を背ける。我関せずと言わんばかりに。青年はそれをさもどうでもいいかのように無視しつつ、また、同じく自分と同じように避けて通られている、または集団に囲まれているかのどちらかの状態に陥っているであろうところを探す。すると、それは意外と近い場所で騒ぎになっていることにきがついた。
「チッ」
青年は、モニターのでかい音のせいで気がつかなかったと言わんばかりにモニターの中でしゃべる小太りの中年男を睨みつけると、その騒ぎの場所に走る。
人は自然と青年から距離を取るために邪魔になるものはなく、すぐにその場所にたどり着くと、その場所には、見慣れた仕事のパートナー、兼妹であるその少女が、男たちに囲まれてなにやら因縁をつけられている最中だった。
青年と同じ髪の色をしていて、目元まである前髪と、背中に届くほどの長さがあり、後ろ髪は綺麗に整えられているがところどころ寝癖のような跡が付いているのが残念だといえる。眠たげにしている灰色の瞳はあまり感情を宿しておらず、口元は無表情に引き締められている。身なりは青年と同じようなスーツと黒のタイトスカート、黒いタイツに包まれた足は細く、黒のパンプスは少女の小柄な身体にはあまりにあっていなく、若干不自然な身なりをしていたが、顔立ちが整っているので、愛嬌があるといえばそう見えるだろう。
身長だいたい140程度の小柄の少女は、青年よりも体格のいい男たち数人に囲まれていて、誰も、それをかわいそうだといった目で見ているものは一人もいなかった。そう、人々がその少女に向けている目は
(ざまあみろ)
だろう、と青年は一人で考えながらも、めんどくさいことになったなとまた舌打ちをする。
- Re: レイヴン【第一話執筆開始】 ( No.5 )
- 日時: 2014/12/18 13:52
- 名前: Ⅷ ◆WlOcYALNMA (ID: f4MEHqWX)
「【アビリティ】のくせになまいきに外なんて歩いてんじゃねぇよくそが!!」
男たちのうち一人がそう叫んで、少女の体格に似合わないスーツ、その中に着ているシャツの胸ぐらを思い切り掴み上げ、持ち上げる。それでも少女は無表情を崩さず、怯えた表情ひとつ見せない。
それを見てもやはり周囲の人間は誰も助けようとしない。それはまあ、少女の首元に巻きついているもの……青年と同じ黒い首輪。【アビリティ】である証明。【レイヴン】の対【アビリティ】犯罪専門組織に所属している証がそうさせているからだ。
青年は、口元に加えていたタバコをとり、少女の胸ぐらをつかんでいる男の後頭部にむかって燃えている方が当たるように投げる。髪がこげる音とともに男が驚いたように少女を離し、後ろに振り向く。周囲にいた人々も、騒ぎに見入っていたせいでまさか助けに入る奴なんていないだろうと思い込んでいたからこそ、驚いた顔をして青年をみた。
まさか、もう一人【アビリティ】がいるなんておもわなかった。といわんばかりの顔をしている人々をみて青年は吹き出しそうになりながら、男の胸ぐらを少女にしていたかのように持ち上げる。
「なにすんだてめぇ!!」
ほかの男たちが突然現れた青年にむかって拳を振り上げる。青年は、持ち上げた男を力を込めて向かってくる男たちに投げつける。どこにそんな力があるのか、男は簡単に飛んでいき、男たちをなぎ倒していく。その光景をみながら、青年はズボンのポケットから四角い箱をとりだし、そのなかから再びたばこを銜え、もう片方のポケットからライターをとりだし火をつける。それとどうじに、今まで我関せずだった周囲の人たちが悲鳴を上げて始めた。
「【アビリティ】の分際で……調子に乗ってんじゃねぇぞ!!」
男たちのグループの一人が、ポケットからナイフを取り出したことに気が付いた人々が悲鳴をあげるなか、男が青年にむかって一直線に近づいていく。青年はたばこを一度ふかし、そちらを一度だけ見ると、舌打ちを一度して、自身の間合いに男がはいったと思った瞬間、片足を思い切り跳ね上げ、男の下半身を蹴り上げた。
「ッッッッッッ!!!」
男は突然の激痛に顔を醜く歪め、ナイフを振り落とし、地面に白目を向いて倒れる。青年はボリボリと後頭部を一度かくと、たばこをもう一度ふかし、めんどくさそうに少女のほうに歩み寄る。
「おう、大丈夫かよ、蓮」
蓮と呼ばれた少女は、青年のことを感情のあまりこもらない瞳で睨むと、加えているタバコをジャンプして奪い取ると地面に叩きつけ、やはり少女には似合わない黒のパンプスの踵でごりごりと火を消してしまった。
「刃兄さん・・・タバコはやめるって前にもいってましたよね」
「そうだったか?」
刃と呼ばれた青年……片桐刃は、すっとぼけたようにそういうと、さっき火つけたばっかだろうがと、舌打ちをするが、片桐蓮。刃の妹であり、仕事のパートナーである少女に再び睨みつけられ、なにもいえなくなってしまった。
「まったく……」
蓮は、乱れた衣服を整えると、勝手に一人で歩いて行ってしまう。刃は、そのあとを追いかけるようについていきつつも、周囲の人間と、倒れた男たちを見回す。
周囲の人間は、刃の人間離れした怪力に驚いて声がでなくなっていた。それはまあしかたがないことだといえる。【アビリティ】とはいっても、一般人の運動能力を超越することはほぼないといえる。これは個人差が出ることが多く、【アビリティ】となった瞬間に運動神経なども比較的向上するものもいれば、そうでないものもいるのだ。
その事実は公表されていないので、人々はそのことをしらない。知らないからこそ、【レイヴン】の首輪に拘束されている【アビリティ】に手をだしてくる輩も絶えないのだが、余計な不安を人々に与えるわけにはいかないので、【レイヴン】本部のほうも少し混乱している、というのがこの怪力の正体だ。
もちろん運動能力が向上した【アビリティ】たちには厳重にその力を抑えろと、有事の際でしか使うことを認めないと言われているが、さっきのはまあ有事っちゃ有事だろ、と一人頷いて、またポケットからタバコをとりだそうとして、蓮が立ち止まっていることに気が付いた。
少しあるいてでたそこは、広場というか、休憩スペースというか、あまり人のいない場所だった。どちらかといえぱ若者より老夫婦のような人たちが好んで居座りそうな場所の入口近くで、蓮は刃に向き直る。
「ごめんなさい」
と、一言呟いて頭を下げる。刃は、ポケットで今まさにタバコをとりだそうとしていた手をぬき、蓮の頭に手をおいて、撫でる。
「あんまし心配させんなよ」
「……うん」
刃の一言には、重みがある。
その言葉の意味は、妹に対しての意味、仕事のパートナーとしての意味、そして……【アビリティ】に対しての意味も込められていることを、蓮は知っている。だから、なにも言わずに、素直に刃のいうことを聞き入れるのだ。
刃がてきとうに近くの自販機から甘めのコーヒーを二本買い、それを蓮に渡す。蓮はなにもいわずにそれをうけとり、プルタブをあけ、少しだけ口につけ、それを確認した刃が、プルタブをあげて、話はじめる。
「【レイヴン】としての捜査はまあ二人から四人でのチーム制で行うってことは知ってるよな?」
蓮がなにも言わずに頷くと、刃は続ける。
- Re: レイヴン【第一話執筆開始】 ( No.6 )
- 日時: 2014/12/18 14:02
- 名前: Ⅷ ◆WlOcYALNMA (ID: f4MEHqWX)
「まあそれはさっきみたいな【アビリティ】狩りみたいなのを防ぐ意味合いがでかいからな。とくにお前みたいなちっこいのは狙われやすいんだから気をつけろ」
「うん」
蓮はけして新人というわけではないのだが、どこか気が抜けているぶふんがおおい、と上司からも多々言われているため、刃は念入りのそのあたりを注意してから、一度コーヒーを口につけた後に、再び話はじめる。
「んでまあ、なんでかこんなくそみてぇなところに潜伏した【アビリティ】犯罪者……危険度Aランクの発火能力者さんを探し出さなきゃならないんだが……はぐれてる間にめぼしいやつはいたか?」
「いえ……」
申し訳なさそうに蓮が俯く。おそらく刃とはぐれてすぐにあのさわぎになってしまったのだろうなとおもい、頭を軽く叩いてやり、ポケットのなかでくしゃくしゃになっているであろう、その【アビリティ】の顔写真をとりだす。
監視カメラにバッチリとうつってはいるものの、監視カメラの荒い画質をさらに引き伸ばした写真のために、正確な特徴が掴めないが、伸びきった髪は不潔感が漂い、目元が隠れていてよく見えず、口元は無精ひげがはえているところから、典型的な変異【アビリティ】といえる。おそらく、【アビリティ】となった瞬間周囲に見捨てられ、社会に見捨てられ、路頭に迷ってしまったタイプだろう。レイヴンに入るというてもあっただろうが、レイヴンに入れば完全に自分が【アビリティ】だと認めてしまい、そして、一生その名から逃れられないんだというストレスから暴走、犯罪へ・・・まあ一般的な【アビリティ】犯罪を犯してしまうタイプと一緒だろうと刃は一人納得しながらポケットに再びしまう。
「まあこんだけ不潔そうな顔してんなら人目みりゃ一発だろ」
「刃兄さん。あまり人を悪くいうのは感心しない」
「チッ」
「舌打ちも禁止」
「……チッ」
刃はぼりぼりと頭をかき、飲み干したコーヒーの缶をゴミ箱に放る。自販機のとなりにあるベンチに腰掛け、上を見上げる。運がいいことに、この広場のベンチの上には屋根が設けられており、夏真っ盛りの直射日光をさけられてはいるが、あついことには代わりがなかった。
袖で額の汗を拭い、シャツのボタンをもうひとつあける。それをみた蓮が、感情のこもらない瞳で刃のことを睨む。
「仕事中ぐらいちゃんとしてください」
「んなこと言ったってよ……お前のカッコみてるこっちも暑くなってくんだよ。ちょっとは着崩せ。もしくは一枚脱げ」
「レディに対して失礼ですよ刃兄さん」
文句を言う刃のとなりに座った蓮は、当然というか、暑かったらしく、ポケットからセンスをとりだし、自身を仰ぐ。それを恨めしそうにみながら刃は、これからどうするか、と考える。
「こんなくそみたいに人が多くてクソみたいに広いところで探すのはかなりだるいな」
「そうですね」
「でも、そうだな。こんな人が多い場所だったら、自然と人通りの少ないような場所に潜伏するのがベストなんじゃないか?」
「それも一理あります。【アビリティ】である以上、どこかしらに目印があるはずですから、それを隠しながら人ごみに紛れることは難しいですし」
蓮は、スーツのポケットからこのショッピングモールの案内図をとりだすと、それを広げる。【レイヴン】という組織は、東京のはずれのギガフロート……つまりは海上都市計画を中止して、そこに【アビリティ】収容施設と、【レイヴン】に所属している【アビリティ】を住まわせる居住区と、それを管理する組織のお偉いさんがたが指令をだす司令塔と、【アビリティ】の研究をするための研究施設が設けられている。それは、東京湾に浮かんでおり、橋で江戸川区に隣接している。江戸川区のその橋の近くには遊園地と一体化し、とんでもないデートスポットと化したショッピングモールがある。その面積は相等広く、江戸川区の三分の一を占めていると言われている。時代が変わるにつれこういった大きな施設は、【アビリティ】の驚異にさらされやすいといった影響で減ってきたのだが、ここは、【レイヴン】がすぐ近くにあるからといった理由でとんでもなく広く、危機感が薄い場所なのだ。だからこそ、潜伏するにはもってこいで、そして、犯罪を、騒ぎを起こすのにも、もってこいだと言えるだろう。
かと言って、こういった人が多い場所では潜伏する場所が限られてくる。【アビリティ】特有の身体のどこかに変化した部分が目立てば目立つほど、騒ぎになり、【レイヴン】へと通報がはいるからだ。
【レイヴン】の調査は基本、民間人、警察、政府のどこかからの依頼が多くの割合を占めている。今回のケースも、夜中の警備の時に監視カメラに写りこんだ男の容姿が、【アビリティ】になり立てで、行き場を失い、不潔そうな見た目だったために【アビリティ】が侵入していると通報があったのだ。それだけで【アビリティ】と判断されるのもかわいそうではあるが、警備員の目撃情報もあり、ちゃんと部位も確認できていると言われれば、【レイヴン】が動かないという理由はなかった。
「にしたってよ、なんでここは臨時休業とかしねえんだろうな」
「急な臨時休業をすると【アビリティ】が不審がっていなくなってしまうからですよ」
蓮がすこしかなしげにそういう。それをみた刃は、人が【レイヴン】に求めている存在意義を思い返す。
【レイヴン】という組織は、人々にとって、たしかになければならない存在となっているのはたしかだろうが、【レイヴン】という組織が人々に歓迎されているわけではけしてなかった。性格にいうならば、【レイヴン】に所属する【アビリティ】という存在が、だが。
だからこそ、さっきのように、【レイヴン】の【アビリティ】とわかっていても、わかっているからこそ、難癖をつけてくるようなやつがいて、周囲の人間も、それをただただおもしろそうに傍観しているだけなのだ。
【レイヴン】に求められるのは、【アビリティ】の完全排除。つまり殺害……ただそれだけであって————けして、同じ世界で息を吸うことではないのだ。
刃は一度舌打ちすると、気分を紛らわそうとすこし明るげな声をだしていう。
「かといってこんな人が多いんじゃよ……捜査する気も失せるってもんだ」
「……そうですね」
すこしの風もなく、蓮が仰ぐ扇子の風邪だけでは物足りなく感じた刃は立ち上がり、額ににじみ出る汗を再び袖で拭い、ポケットに手を突っ込みながら
「ま、発火能力者様がただでさえ【力】のせいで熱いだろうにこんなくそ暑い外にいるとは思えねえ。とっととモールのなかに入っちまおうぜ」
と言うとともに、蓮も立ち上がる。悲しげな顔を拭えない。これから、自分たちが、何を求められていて、何をするのかがわかっているからこそ、蓮の普段はあまり感情が宿らない瞳は悲しげにふせられる。
刃はそんな蓮の表情が耐え切れず、歩きだす。自分たちがこれからなにをしなければいけないのか、何をするのか。どんな理由をならべたところで、どんな理屈があったとしても……やることは、
『人殺しと、何一つ変わらないから』
- Re: レイヴン【第一話執筆開始】※微調整 ( No.7 )
- 日時: 2014/12/18 16:58
- 名前: Ⅷ ◆WlOcYALNMA (ID: f4MEHqWX)
人が多くいるこの場所で、人通りが少ない場所というのはかぎられてくる。
それは、あまり人気のない場所のトイレが基本で、警備員に一度聞いた限りの情報だと、トイレにはいったきり【アビリティ】がでてきた様子はない、ということだったが、どうしてか捜査を攪乱するかのように、どこのトイレか、とまでは警備員は一度も口にしていなかったな、と刃は思う。だから念のため最初に野外に設置されているトイレなども探していたのだがただ無駄に時間を過ごしただけだったらしい。
このショッピングモールの構造は、東西南北……つまり東に1、西に1、南に1、北に1エリアごとにわかれていて、エリアごとにたくさんのテナント……つまり店がたくさんある、といった形式で、かくエリアごとにはトイレが最低でも3つ以上はあるというのが、蓮がもっていた案内図を見た限りだとわかる。
十字架のような形をした建物なために、クロスショッピングモールと名付けられているこのショッピングモールは、東西南北のエリアは、連絡通路で渡り歩くことが可能だが、反対側のエリアにいこうとすれば、真ん中にある広場に一度でなければならない。
そのため、もっとも人口の密度が高いとすれば、その広場だといえる。
待ち合わせに利用するものもいれば、買い物につかれ休憩するものもいる。談笑するものもいれば、ただただ涼んでいるだけのやつもちらほらとみえるなと思いながら、刃はすっかりと冷房で冷え、まだすこし残る汗をぬぐいあらかじめ蓮から受け取っていた案内図をひろげる。
だが、案内図をみていても、人が少ないエリアというのはわからない。うんざりとした顔で案内図をしまい、あまりの人のおおさに頭をかきながら舌打ちする。
「刃兄さん。舌打ちはやめてください」
蓮に静止されるが、刃はめんどくさそうにため息をつくだけだった。
捜査、といっても、【レイヴン】に、依頼側が完全に情報を提示するケースは少ない。それは、【レイヴン】という組織を・・・いや、【レイヴン】が派遣してくる【アビリティ】たちに信頼がないからだろう。もしそいつらが目撃した【アビリティ】と手を組んだりしたら……なんていう余計な考えからか、捜査自体に協力的になれないのだ。その気持ちはわかるし、人間の、未知なる【力】への恐怖心が並外れたものではないのは、刃達も理解しているが
「情報がなきゃいつまでたってもお前らの敷地に【アビリティ】を野放しにしておくようなもんだろうが。くそ」
刃はむしゃくしゃしながらあたりを見回す。ちょうどここは中央の広場なので、どこのエリアに行こうとしてもいける場所だ。行き交う人々のなかには、次どこにいくか相談しているカップルとかもちらほらといる。
それをみた刃が、なにかを思いついたのか、蓮の耳元に顔を近づけ、耳打ちをする。その刃のあまりの突拍子もない発現に蓮のあまり感情を宿さない瞳がすこし見開かれて、驚いた顔をする。
「刃兄さんっ、あまり目立つようなことは——」
「だーいじょうぶだって。ま、見とけよ」
そういいながら刃はある一方にむかって歩きだす。刃を静止しながらも、さきほどのようにはぐれてしまってはもともこもないので蓮もしぶしぶとついていく。その二人が目指す先には、ひと組のカップルがベンチにすわって、さきほど刃が見ていたのと同じ案内図をみながら談笑している最中のところだった。
「なあ、あんたら」
「え?」
突然声をかけられたカップルが、案内図をしまい、顔をこちらにむける。好青年といった風貌の男と、遊んでそうな容姿をした女が並んでいる姿に刃は若干おもしろいな、とおもいながらも、自分の首元を、正確には、首元に巻き付いている首輪を指さして言う。
「【レイヴン】所属の【アビリティ】だ。捜査にすこし協力してくんないか?」
カップルの顔が、一瞬で恐怖にひきつる。だが、【レイヴン】の【アビリティ】なら強くでても反撃なんてしてこないだろうと男のほうがおもったのか、立ち上がり、刃の顔を睨みながら、若干震える声で言う。
「【アビリティ】がなんのよう?」
「そ、そうよ、【アビリティ】のくせに話しかけてこないでよね」
女も、それにつられるかのように強気に出る。後ろで蓮が心配そうに刃をみているのを感じとりながら、刃は髪をかき、舌打ちを一度する。
「今言わなかったか。捜査に協力してくんねえか?」
「なんで僕たちが【アビリティ】なんかに……」
「まあいいじゃねえか。な?とりあえず座れよ」
刃が男の肩に手を伸ばし、男を無理やり椅子に座らせる。男のほうは、刃にさわられたことが腹にきたのか、イライラとした口調でいう。
「だいたい【アビリティ】でなんでこんなところにいるんだよ……ここの警備員は何やってんだ」
「ちょっと!!あんた、たけくんにさわんないでよ!」
刃のほうも、自分から言い出したこと……つまり、そこらへんにいるやつらに話を聞いて回っちまおうぜ、という、本当に突拍子もなさすぎることをなんで実行しようとしたのか、とだんだんとイライラし始める。
ポケットからたばこをとりだそうとして、蓮が近くにいることを思い出しそれをやめると、座らせた、たけくんとよばれた男に目線をあわせ、思い切り睨みつける。
「そのお前がいう警備員様が、俺たちをここに呼んでんだよ……ここまで言って理解できねえか?」
男の顔が今度こそ恐怖に染まっていくのが分かる。女のほうは、刃がなにを言っているのかわかっていないふうで、まだ刃にかみつこうとしたが、男の、異常に染まった恐怖を感じ取り、黙り込んでしまう。
「別に俺だって好き好んでこんなクソみたいに人がいるところには来たくなかったし居たくもねえ。だが【獲物】がどこにいそうかも検討がつかないとおちおち帰れもしない。どっか人通りが少ない場所……その付近の便所なんかでもいい。【獲物】が潜伏できそうな場所がこのショッピングモールにあるとしたら、どこだと思う?」