複雑・ファジー小説

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Sky High 新スレに移行しました。
日時: 2015/11/03 22:30
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: 6KsExnZ3)
参照: え、名前負けしてる? そんな馬鹿な。

 銀色の髪を翻し、硝煙漂う戦場を舞う。
 蒼穹の瞳に宿した炎は、敵を焦がす。
 裏切りと絶望の過去を辿って、凄惨な戦いへと身を投じた。


 ——とある『最強』の【傭兵】のお話である。


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ハイ、こんにちこんばんおはようございます。
皆さんご存じ、山下愁です。よろしくお願いします。

さて、複雑ファジー小説板では実に3……あれ4だったかな……忘れましたが、まあそんな感じの小説です。
そんな前提はさておいて。

読者の皆様。上記の4行はご覧いただきましたでしょうか?
ご覧いただきになったようで幸いです。ええ、本当に。ありがとうございます。
「かっこの使い方が変」とか「誰が主人公なのかよく分からん」なんていう言葉は聞こえません。ニュアンスだけ感じてくださればこれ幸い。
ええ、ハイ。ニュアンスは「とんでもなく暗くて凄惨な物語」でありますよ。悲哀・凄惨・残酷がテーマになっている山下愁史上初のほんのちょっと笑えるけど基本的にはダークネスがテーマになっている小説になります。
ので、以下の注意書きを読んでくださいね。


・人が死ぬ情景や、山下愁的なグロ描写(いや露骨なのはやりませんけども)仲間が死ぬ情景など『負の演出が盛りだくさん』になっています。
 閲覧する際はくれぐれも注意してね。
 タイトル負けしてるとか言ったらダメです。なるべく小学生のお子さんは(いやこんなクソみたいな小説読まないだろうけど)閲覧を控えるようにお願いします。

・誤字、脱字は無視してください。山下愁が自分で気づいた場合は、自分で直します。「間違ってますよ!!」とか言っていただけると嬉しいですし、文章で表現がすっげー変だなって思ったところも指摘してくださるとありがたいです。私はぜひともそれを参考にします。
 もちろん、普通にコメントも大歓迎ですよ!! むしろ泣いて喜びます。

・山下愁は社会人であり、この時期になると繁忙期になってしまいます。 なので何が言いたいかって言うと、不定期です。更新は実に不定期になります。つーか遅いです。
 ていうか、自分が満足したら無理やりに終わらせるつもりでいますよ山下愁は。ハイそこ、納得いかない顔をしないでください。あくまで私の妄想を吐き出す場所に使わせてもらうだけです。「帰れ!!」と言わないでください。

・非常に胸糞悪いシーンがあると思いますが、黙って見過ごしてください。山下愁の性格が悪いとか、決してそんなではありません。

・誹謗中傷、無断転載、パクリはおやめください。
 なお、2次創作の場合は自己申告してください。泣いて喜びます。泣いて喜びます。


ふぅ、長いな。
成分としては、バトル120、胸糞50、笑い20、その他40とパーセンテージ限界突破でお送りします。
それではいいですか? 始まりますよ?
ちなみに書き方も結構変わってます。以前、鑑定さんに指摘されて直したのですが、この書き方だと新人賞に応募できゲフンゲフン。

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登場人物紹介>>01

プロローグ>>02

※オリキャラ募集※>>03

ACT:?【新編開始】


ACT:1【最強傭兵】
ACT:2
ACT:3
ACT:4
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お客様 Thank you!!
ツギハギさん様 ディスコ部長様 烈司様 梓咲様 モンブラン博士様


***** ***** *****

同時進行 Sky High-いつか地上の自由を得よ- パロディ

すかい☆はい-いつか地上を笑いで染めよ-

・人間どもよ許してなるものか>>11
 登場人物(ユフィーリア、セレン、アノニマス他)

・君の髪の毛をロックオン>>27
 登場人物(グローリア、リヴィ、ヘスリッヒ他)

・熱中症に気をつけろ>>38
 登場人物(ユフィーリア、グローリア、エデルガルド、ハーゲン他)

・学園すかい☆はい
 登場人物(未定)

※随時更新

***** ***** *****
Special Thanks
・梓咲様よりユフィーリアの絵が届きました>>28

Re: Sky High-いつか地上の自由を得よ- ( No.1 )
日時: 2015/01/18 23:14
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: zCMKRHtr)

※天地戦争の説明
 天地戦争とは、人間が化け物を封印する為に起こした戦争。エクソシスト、巫女、その他色々な霊能力者や軍隊が化け物を封じようとしている。
 化け物たちはそんな人間に抗って、自由を獲得しようとする為に戦っている。
 しかし、そんな化け物たちにごく少数の人間が味方をした。彼らは化け物じみた能力を持ち、人間たちから弾き出された異端児である。



「……アタシに構うな」

 ユフィーリア・エイクトベル/15歳/女
 天地戦争に参加している、人間の少女。傭兵として参加しているので、特別な部隊には所属していない。
 常に最前線で戦い、人間をズバズバと倒しては屍の山を築き上げている。その強さは折り紙つき、敵味方からも軍神的存在として恐れられている。自他ともに認める、最強の傭兵。
 周りと馴れ合おうとせず、冷たい態度ばかりを取るのだが、心を開けばサバサバした姉御肌で自由人な気質を持っている。心を開けば、の問題である。
 高い戦闘能力・運動能力のせいで過去に酷い裏切りに遭ったのだが、そのせいで仲間を信用できずにいる。

 ユフィーリア・エイクトベルの能力【切断術】
 全てのものを切り裂く、『刃』を媒介にした能力。ユフィーリアの任意のものを切り裂くことができる。
 たとえば、彼女の視界に入った全ての人間の首を飛ばしたければズパッと切り飛ばして殺すし、ただ拷問するのには切り離すだけも可能とする。
 武器とする長い刀の空華は相棒である。しゃべるけど。


「フッフッフ、今日こそ仲よくなりたいんだよね!! ユフィーリア——痛い!!」

 グローリア・イーストエンド/23歳/男
 天地戦争に参加している、人間の男。作戦指令班に所属し、多数の化け物・人間を従える司令塔。
 かなり頭がよく、また統率力も高い。能力は完全にサポートタイプなのだが、それを差し引いても彼の頭脳によってある意味化け物たちは助かっている。天才と呼ばれ、称賛されている。
 朗らかで天然、周りを大切にする。おせっかいを焼きすぎて、周りからうざがられることもしばしばある。ユフィーリアと仲よくなりたくて、今絶賛彼女の信頼を得ようと努力中。テンションが異常。
 顔が女顔? え、なに聞こえないんだけど? なに? なんて言ったの? 女顔? 聞こえなーい。

 グローリア・イーストエンドの能力【時空操作】
 時空間を操作する『時計』を媒介にした能力。能力を操るのは、懐中時計を埋め込んだ巨大な大鎌をロッドとして扱う。
 時を止めるのは当たり前、他にも時間を戻す・過去を再生する・空間を捻じ曲げることをやってのける。
 ただしそれぞれには弱点があるのだが、それは作中にも出てくる。


「うーん……犬と猫を操って人の拠点を探ったのはいいんだけどね……報告するのめんどくさ」

 スカイ・エルクラシス/21歳/男
 天地戦争に参加している、人間の男。特務工作班に所属。敵をかく乱させたり、敵を一網打尽にとっちめる。
 賭けごとが大好きで、よく参加していたりするのだが、まあそこはご愛嬌。能力に関しては評価が高い。犬猫鳥などの獣を操り、またドラゴンやユニコーンなどの幻想生物を召喚することも可能とする。
 面倒くさがりであり、たびたび作戦をめんどくさがる。その為に、リヒトが監視で存在している。面倒くさがるけど、最終的にはどうにかする兄貴肌。
 グローリアとは仲がよかったりする。ユフィーリアと仲よくなろうとする彼を止めたり、止めなかったり。

 スカイ・エルクラシスの能力【召喚術】
 名の通り、幻想生物を召喚する能力。犬猫を拍手しただけで呼ぶので、これもある意味召喚術と呼べる。
 多数の獣で人間をかく乱させる。召喚し、従えることもできる。
 でも実際はそれしかできない。召喚術しかできない。


「自分、諦めません!! 勝つまでは!!!」

 リヒト・ユーヴォ・リベリオン/30歳/男
 天地戦争に参加している、竜人族と呼ばれる体に鱗を持ち、竜を始祖とする化け物。銃火器の扱いに長けた男。
 スカイの監視役を担っているが、彼は素晴らしい能力を持っていると常々思っている。銃火器は機関銃の扱いに長けて、後ろよりも前線に出た方が能力を発揮する。ユフィーリアと仲がいい。
 礼儀正しいが、如何せんうるさい。一言一言を腹から声を張り上げるので、秘密は話せない。
 全身白い。アルビノ症を患っているからだとされる。嗜好品の類が好きで、煙管を吸っているのが特徴。


「あっはははははははははははははははははははははははは!!! あー、笑った」

 シズク・ルナーティア/20歳/女
 天地戦争に参加している、人間の女。後方支援部隊に所属。銃火器の扱いに長けた女性である。
 千里を見渡し、彼女の射程範囲はおよそ100キロに及ぶ。千里眼は元々持っていた化け物じみた能力で、本来の能力は他にある。彼女の弾丸は百発百中であり、ユフィーリアも彼女に背中を預けるほど。
 笑い上戸で箸が転がっても笑ってしまう、おかしな女。ただ、仲間を守る時は男前な姿勢を見せる。オンオフの切り替えが素晴らしい。
 巨大なライフルを持っている。それが彼女の相棒である。

 シズク・ルナーティアの能力【転送術】
 地点Aから地点Bへと物質を転送させる能力。シズクはこれを銃弾に応用している。
 射程範囲内に敵がいれば、その方向へ銃弾を撃ち、さらに転送させる。それで百発百中となるのだ。
 しかし、敵を認識した上で、きちんと方向を狙わなければ転送できない。高い集中力と視力が必要となる。


「いやぁよ、ワタシ。戦うのはあんまり好きじゃないわ。リヴィと一緒にいるのがちょうどいいの」

 セレン・ハウンズ/24歳/男
 天地戦争に参加している、人狼族の青年。生活班に所属。人間に化けられる狼の種族であり、耳と尻尾が生えている。
 料理を作るのが好きで、創作料理が得意。ただし身長2メートル。かなり大柄な男である。だが、彼が作り出す料理は評判が高く、ユフィーリアも少しだけ喜んでいる雰囲気である。
 オネエ。完全にオネエ。義理の妹であるリヴィを怖がらせない為の対策として取ったが、自分も気に入ってしまった。可愛いものが好き。
 みんなのオカンと言われているのは内緒である。


「リヴィ、みんなすきっ。がんばれー」

 リヴィ・ハウンズ/6歳/女
 天地戦争に参加している、獣人族の少女。生活班に所属。化け猫というよりケットシーであり、耳と尻尾が生えている。
 セレンの義理の妹であり、家族を亡くしてセレンが殺されそうになっている時にユフィーリアに助けられた。ユフィーリアを唯一「ゆふぃ」と呼べる存在。強固なバリアを張るのが得意であるが、疲れるらしい。
 健気で頑張り屋。だが頑固である。甘えん坊でセレンに引っ付いている。ユフィーリアにも引っ付く。
 化け物たちのアイドル的存在である。


 もしかしたら増えるかも。

Re: Sky High-いつか地上の自由を得よ- ( No.2 )
日時: 2015/02/03 23:14
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: zCMKRHtr)

 銀色の髪を翻し、硝煙漂う戦場を舞う。
 蒼穹の瞳に宿した炎は、敵を焦がす。
 裏切りと絶望の過去を辿って、凄惨な戦いへと身を投じた彼女の名は。

「ユフィーリア!!」

 屍をうず高く積んだ山に、彼女はちょこんと腰かけていた。
 黒い外套は風になびき、下に着込んだ黒の詰襟は血に汚れている個所がある。平たい帽子から流れる銀色の髪もまた、赤く染まっていた。
 帽子の下にある顔は、息を呑むほど整えられている。さながら人形のように怜悧で生気のない印象を与える。長い銀色の睫毛で縁どられた青い双眸は、昏い光を湛えていた。
 ぞっとするほど冷えた青い瞳を、声の方へ向ける。

「こんなところにいたんだ。探したよ」
「……」

 屍の山のふもとに駆け寄ってきたのは、赤い髪の青年だった。
 灰色のロングコートに、血に塗れた軍靴。両手は真っ黒な手袋で覆われている。顔立ちは精悍で、だがどこか頼りなさも入り混じっている。
 少し垂れさがった翡翠色の瞳と、少女の青い双眸がかち合った。すぐに目を逸らしたのは、少女の方だったが。

「……戻ろう。ここにはもう、君の敵はいないよ」
「……」

 赤い髪の青年が声をかければ、少女は無言で応えた。ただ、無視をしたのではなく、きちんと聞いていたようだ。屍の山から飛び降り、相棒である身長を超えるほど長い刀を肩に担いだ。
 少女は青年の脇を通り抜け、戦場へと背を向けた。何も言わぬ少女へ、青年は話しかける。

「またずいぶんと暴れたね」
「……」
「君は一体、どれぐらい殺したの? 敵を殺して殺して、それほど自由になりたいのかい?」
「…………」
「それとも、何か恨みでもあるのかな? 人間に対する恨みみたいなものが——」

 少女はピタリと歩みを止めた。
 彼女の後ろをついていくように歩いていた青年も、少女に合わせて歩を止める。
 くるりと青年へ振り返った少女の瞳は、殺気に満ちていた。その殺気を感じ取った青年は、自然と身構えてしまう。
 近づけば殺される。青年はそう悟った。

「鬱陶しい」

 ここにきて、少女の初めての台詞。鈴の音のように上品で凛としたその声は、青年が邪魔だと告げていた。
 青年は何も言えなかった。何かをしゃべろうとしたが、少女の空気がそれを許さなかった。
 少女は再び歩き出す。今度は青年を置いて、血に濡れた地面を踏みしめて去っていく。
 その場に残された青年は、消えゆく少女の背中をただ見守ることしかできなかった。

Re: Sky High-いつか地上の自由を得よ- ( No.3 )
日時: 2015/01/19 11:57
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: 7WYO6DME)
参照: http://www.kakiko.info/bbs2/index.cgi?mode=view&no=8520

こちらの方からオリキャラを募集しています。
こちらのスレッドにキャラは全てご投稿願います。間違えても、こちらにキャラの投稿はしないようにお願いします。

1人何キャラでもおkです。
皆様のご応募お待ちしております。

Re: Sky High-いつか地上の自由を得よ- ( No.4 )
日時: 2015/01/20 23:38
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: zCMKRHtr)

 殺さないでくれ、と懇願された。
 見逃してくれ、と願われた。
 助けてくれ、と叫ばれた。
 ——だが、どれもユフィーリアは切り捨てた。

(……うるせえなあ)

 カーンカーン、と背後の方で鳴り響く鐘の音を聞きながら、ユフィーリアは屍の山に腰かけていた。
 長い刀にすがりつき、そっと瞳を閉じる。小さな鼓動が聞こえるほど、辺りは静かになる。

「帰ろうよ」

 不意に声がした。
 声が聞こえたと同時に、ユフィーリアは目を開いた。それから屍の山を飛び降りて、物言わぬ屍へ背を向ける。
 さらに声は聞こえてくる。

「お疲れ様」

 その声に、ユフィーリアは淡々とした口調で答えた。

「おう、お前もお疲れ——空華」



 ACT:1 最強傭兵



 遥か昔、人間は全国に蔓延る『化け物』を封印してしまおうと考えた。そして戦争を仕掛けた。
 それが天地戦争と呼ばれる、人間と化け物による大きな戦いである。
 化け物たちは、それはもう怒った。勝手に化け物呼ばわりをして、勝手に封印するなんて冗談ではない。確かに人間に悪影響を及ぼすかもしれないが、人間たちも化け物たちへ悪影響を与えてきたではないか。
 住処である森を侵食し、化け物たちを迫害し、または捕らえて見世物にしたり——それはもう酷い仕打ちをしてきた。姿かたちが醜いだけで他から省こうとしたこともある。

 俺たちだって、自由に生きていいはずだ。
 人間たちをこらしめて、自由を勝ち取れ。

 人間には人間の、化け物には化け物の考え方で以てして、天地戦争は長期化した。
 優劣は五分。どちらが勝つか、分からない。



「あら、ユフィーリア。お帰りなさい」

 化け物たちが待機している拠点へ戻ったユフィーリアを出迎えたのは、人狼族の青年だった。
 こげ茶色の髪に、2メートル以上はありそうな巨大な身長。切れ長の琥珀色の瞳は、弓状に曲げられている。笑みを浮かべる唇の端からは、狼の牙が見えた。頭頂部の狼の耳はピコピコと震え、尻の辺りに狼の尻尾が垂れている。
 セレン・ハウンズ。
 化け物たちの英気を養い、雑務をこなす『生活班』に所属する青年である。見かけによらず手先が器用で、調理部隊(仲間内で勝手に命名)を率いているのだ。

「あらあら、今日も血の臭いがすっごい……疲れたでしょう? これ、おにぎり作ったから食べて。リヴィ、こっちにスープ持ってきて!!」
「…………」

 セレンから手渡された握り飯は2つ。しかも割と大きい。ユフィーリアの手のひらからあふれるぐらいだ。しかも中心部分が赤みを帯びている。
 じっと白と若干の赤が混じった握り飯を見つめながら、ユフィーリアはセレンへ問いかけた。

「……セレン、これ何が入ってるの?」
「人間で『ウーメボシ』っていうのが流行っているんですって。ワタシはダメ、臭いで限界」

 顔をしかめたセレンは、また調理へと戻っていく。スープが満たされた大鍋をぐるぐるとかき混ぜて、器用に握り飯を次々に作成していく。その『ウーメボシ』を含めることも忘れていない。
 聞き覚えのない単語だが、食べてみる価値はありそうだ。握り飯にかぶりついてみれば、独特の酸味が舌いっぱいに広がった。
 どこかで食べたことあるような味だな、とユフィーリアが思考していると、どこからか声が聞こえてきた。

「梅干しじゃね? それってさ」
「あ、それだ」
「ユフィーリア、梅干し食べたことなかったっけ?」
「故郷で食べたけど、久々すぎる。よく覚えてたな、空華」

 そりゃどうも、と声。
 声の発生源は、ユフィーリアが抱える刀である。黒鞘に収められ、ユフィーリアの身長を遥かに超す長大な刀だ。俗に大太刀と呼ばれる代物である。
 その刀の銘は『空華(クウカ)』——ユフィーリアが相棒とするものだ。

「ゆふぃ、ゆふぃ。きょーもおつかれさまっ」
「おう、リヴィ。今日もお疲れさん」

 とてとて、と駆け寄ってきた子供が、スープの入った器をユフィーリアへ手渡した。
 黒髪をツインテールに結った、何とも可愛らしい猫耳の少女である。フリフリのエプロンドレスを翻して、拠点をあちこちに駆け回る。あどけない表情をくるくると変える姿は、年相応の子供である。
 猫耳の少女——リヴィ・ハウンズは「まだがんばるよーっ!」と言って、元気よくどこかへ駆けて行ってしまった。
 その背中を見送って、ユフィーリアは小さく笑う。

「アタシ明日も頑張れるわ」
「ユフィーリア、顔、顔」
「おっといけない」

 キリッと顔を引き締め、スープを一気にあおった。よく煮えた野菜の切れ端がスープと一緒に口に入ってきて、もぐもぐと咀嚼。優しい味で、心が温まる。
 その時だ。
 拠点で食事をしていたユフィーリアの前に、1人の男が立った。

「…………」
「…………」

 黒い髪をポニーテールに結った男である。己をじっと見つめる双眸は、炎の如き燃える赤。顔立ちは可愛らしい——というか、女の子のようである。一瞬背の高い女性かと考えたが、喉仏が出ていたことにより、男だと考え直す。
 はて、こんな男いただろうか。
 スープを飲みながら、ユフィーリアは記憶を探った。だが見つからなかった。当たり前である。普段から最前線に出ずっぱり故に、仲間の顔など見ている暇などない。少なくとも最前線にいない連中は。
 空になった器を水桶の中に放り込み、ユフィーリアは拠点から離れようとした。

「ねえ」

 しかし、男がユフィーリアを引き止めた。
 鬱陶しげにユフィーリアは男を見やる。
 何やら言いたげな男へ冷ややかな視線を送り、ユフィーリアは口を開いた。

「話しかけてくんな」

 それは、拒絶の言葉。
 記憶にないのだから、当然信用はできない。そもそも、ユフィーリアは仲間を信用していない。
 話しかけてくる前に、ユフィーリアは男の前から立ち去った。背後の方が騒がしかったが、彼女には関係のないことだった。


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