複雑・ファジー小説
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- Sky High 新スレに移行しました。
- 日時: 2015/11/03 22:30
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: 6KsExnZ3)
- 参照: え、名前負けしてる? そんな馬鹿な。
銀色の髪を翻し、硝煙漂う戦場を舞う。
蒼穹の瞳に宿した炎は、敵を焦がす。
裏切りと絶望の過去を辿って、凄惨な戦いへと身を投じた。
——とある『最強』の【傭兵】のお話である。
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ハイ、こんにちこんばんおはようございます。
皆さんご存じ、山下愁です。よろしくお願いします。
さて、複雑ファジー小説板では実に3……あれ4だったかな……忘れましたが、まあそんな感じの小説です。
そんな前提はさておいて。
読者の皆様。上記の4行はご覧いただきましたでしょうか?
ご覧いただきになったようで幸いです。ええ、本当に。ありがとうございます。
「かっこの使い方が変」とか「誰が主人公なのかよく分からん」なんていう言葉は聞こえません。ニュアンスだけ感じてくださればこれ幸い。
ええ、ハイ。ニュアンスは「とんでもなく暗くて凄惨な物語」でありますよ。悲哀・凄惨・残酷がテーマになっている山下愁史上初のほんのちょっと笑えるけど基本的にはダークネスがテーマになっている小説になります。
ので、以下の注意書きを読んでくださいね。
・人が死ぬ情景や、山下愁的なグロ描写(いや露骨なのはやりませんけども)仲間が死ぬ情景など『負の演出が盛りだくさん』になっています。
閲覧する際はくれぐれも注意してね。
タイトル負けしてるとか言ったらダメです。なるべく小学生のお子さんは(いやこんなクソみたいな小説読まないだろうけど)閲覧を控えるようにお願いします。
・誤字、脱字は無視してください。山下愁が自分で気づいた場合は、自分で直します。「間違ってますよ!!」とか言っていただけると嬉しいですし、文章で表現がすっげー変だなって思ったところも指摘してくださるとありがたいです。私はぜひともそれを参考にします。
もちろん、普通にコメントも大歓迎ですよ!! むしろ泣いて喜びます。
・山下愁は社会人であり、この時期になると繁忙期になってしまいます。 なので何が言いたいかって言うと、不定期です。更新は実に不定期になります。つーか遅いです。
ていうか、自分が満足したら無理やりに終わらせるつもりでいますよ山下愁は。ハイそこ、納得いかない顔をしないでください。あくまで私の妄想を吐き出す場所に使わせてもらうだけです。「帰れ!!」と言わないでください。
・非常に胸糞悪いシーンがあると思いますが、黙って見過ごしてください。山下愁の性格が悪いとか、決してそんなではありません。
・誹謗中傷、無断転載、パクリはおやめください。
なお、2次創作の場合は自己申告してください。泣いて喜びます。泣いて喜びます。
ふぅ、長いな。
成分としては、バトル120、胸糞50、笑い20、その他40とパーセンテージ限界突破でお送りします。
それではいいですか? 始まりますよ?
ちなみに書き方も結構変わってます。以前、鑑定さんに指摘されて直したのですが、この書き方だと新人賞に応募できゲフンゲフン。
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登場人物紹介>>01
プロローグ>>02
※オリキャラ募集※>>03
ACT:?【新編開始】
ACT:1【最強傭兵】
ACT:2
ACT:3
ACT:4
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お客様 Thank you!!
ツギハギさん様 ディスコ部長様 烈司様 梓咲様 モンブラン博士様
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同時進行 Sky High-いつか地上の自由を得よ- パロディ
すかい☆はい-いつか地上を笑いで染めよ-
・人間どもよ許してなるものか>>11
登場人物(ユフィーリア、セレン、アノニマス他)
・君の髪の毛をロックオン>>27
登場人物(グローリア、リヴィ、ヘスリッヒ他)
・熱中症に気をつけろ>>38
登場人物(ユフィーリア、グローリア、エデルガルド、ハーゲン他)
・学園すかい☆はい
登場人物(未定)
※随時更新
***** ***** *****
Special Thanks
・梓咲様よりユフィーリアの絵が届きました>>28
- Re: Sky High-いつか地上の自由を得よ- ( No.15 )
- 日時: 2015/02/21 22:32
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: zCMKRHtr)
ディスコ部長様>>
こちらでは初めまして、山下愁です。
レオンちゃんはぜひとも使わせてもらいます。貴重な草人族の上に可愛いじゃないですか(キリッ
ユフィーリアの強さは手持ちのキャラで『最強』を前面に出している故に、チート並みに強くなってます。
だが弱点もあるのでゲフンゲフン
そして敵もまたチート並みに強いので何とも言えゲッホゲッホ
風邪を引きやすい季節ですね!!
今のところ敵は弱い奴ばかりですね。これから手強くしていくつもりです。
ラスボスは主人公と同等レベルの強さにするからもう世界が崩壊してもおかしくないんじゃ((
小説更新頑張ります。ぜひともレオンちゃんの活躍にご期待を!!
- Re: Sky High-いつか地上の自由を得よ- ( No.16 )
- 日時: 2015/02/22 17:09
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: zCMKRHtr)
彼は、人を殺したことがなかった。
この戦争において、彼はいまだ1人も殺していなかった。自分が考えた作戦で敵が死ぬことはあっても、彼自らが手をかけたことはなかった。
肉を引き裂いたこともない。逞しい体を貫いたこともない。温かな血を全身に浴びたこともない。やろうと思えばできることだが、彼は人を殺そうとしなかった。
彼には1つの『伝承』が存在した。
彼は、人を殺せないのだ。
ACT:2 天才軍師
「うわあああああああああああん」
夜の闇に包まれた拠点に、男の悲鳴が響き渡った。
獣人族や人狼族の兵士は「敵襲!?」「何事か!!」と警戒を始めるが、その声が誰のものであるか理解して、警戒態勢を解いた。そしてやれやれと呆れて、就寝準備を始めるのだった。
悲鳴が起きたのは、拠点である砦の最上階——司令官室だった。
小さな部屋には紙が散乱し、その紙には文字や図が書き込まれていた。拠点周辺の地形を描いたものまである。敵の拠点への侵入経路、戦場での有利な戦い方まで細々と書かれたその紙は、どう見ても作戦に使われるものだった。
そんな重要な書類は今、部屋の床に散らばっている。敵に拾われてしまえばおしまいなのだが、この部屋の主にとっては些末なことだった。
それよりも重要な問題があるのだ。
「ユフィーリアが仲よくなってくれないぃぃぃぃぃいいい」
小さな木製の机に頭突きをした男——グローリア・イーストエンドはめそめそと泣いていた。涙と鼻水と涎で、普段は可愛い顔が見事にぐちゃぐちゃである。
重要な問題、それは『ユフィーリア・エイクトベルが仲よくなってくれない』という極めてどうでもいい問題だった。
「どうして仲よくなってくれないのぉぉぉぉ。エデルガルドやアノニマスとは仲よくしゃべってるじゃないかぁぁぁぁあ」
「うるせえな。喚くな喧しい。何時だと思ってやがるンだァオイ?」
突如として、司令官室の扉が叩き壊さん勢いで開いた。壁に扉が激突を果たし、バガンッ!! という轟音と共に跳ね返ってきた。
司令官室に現れた闖入者とは、紙袋を被った男だった。袋には視界確保用の穴が開いており、その穴から覗く鋭い双眸は琥珀色をしている。白いタートルネックとカーキ色のズボンを身につけた彼は、肌を一切露出していない。露出していたとしても、そこは包帯で覆われて、やはり肌の色は見えない。
紙袋の男——ヘスリッヒは中指を高々と突き上げて、グローリアへ怒鳴った。
「男がメソメソメソメソ泣いてんじゃねえぞアァン!? こっちまで女々しくなっちまって『自主規制』しなくなったらどうしてくれんだァ!?」
「ヘスリッヒ、今下ネタはいらない」
「ガチトーンで返してんじゃねえよさっきまで泣いてやがったのはどこのどいつだコラァ!!」
「痛い!! ヘスリッヒ痛いよ!! 僕の頭はボールじゃないんだよ!?」
めそめそと泣くグローリアの頭を鷲掴み、ヘスリッヒは机の表面に彼の顔面を叩きつけた。
メリッと机とグローリアの頭が軋む。グローリアが悲鳴じみた声でヘスリッヒに訴えたが、ヘスリッヒは聞いていなかった。ガンガンガンッ!! と何度もグローリアの顔面を机に叩きつける。
グローリアと机を無理やりキスさせること7回、ヘスリッヒはようやくグローリアの頭を解放した。
「酷いよ……人が打ちひしがれてるってのにさ。慰めの言葉もないの?」
「テメェのお粗末な『自主規制』握ってヨガってろ」
「そっちの慰めじゃないやい。体を慰めたところで心は癒されないよ」
乱暴にグローリアの対面の椅子へ腰を掛けたヘスリッヒは、「ケーッ」と言ってそっぽを向いた。
「つーか、テメェはタフだよなァ。毎日毎日ユフィーリアに突っかかってボコボコにされてヨ。この前なんか首吹っ飛ばされて雨ざらしにされてたじゃねえか。それでもめげずに立ち向かってくってことは、馬鹿なの阿呆なの死ぬのテメェは?」
「ヘスリッヒマジ辛辣。傷ついた心に塩を塗りたくって揉み込んでるよね。確実に料理しようとしてるよね」
「テメェの肉は筋張ってそうでヤだわ、オレ」
「え、何マジで食おうとしてたの僕を? ヘスリッヒ冗談きついよ?」
ヘスリッヒがきたことにより、グローリアの心は幾分か晴れたようだ。かすかに口元には笑みを浮かべている。
グローリアは机の下に転がっていた酒瓶を拾って、ヘスリッヒの前に置いた。
これは何事だ、とでも言うかのように彼の琥珀色の瞳がグローリアを映す。グローリアはその質問に答えるように、にっこりと満面の笑みを浮かべた。
「せっかくきたんだし、飲み明かそうよ!! ラヴェンデル先生には内緒ね!!」
「メンドクセ」
「そんなこと言わないでさーっ!! ほら、ほら!!」
「ヤロー2人で飲むとかマジでナイわー」
小さな司令官室で、男2人の酒盛りが人知れず始まった。
***** ***** *****
「司令官殿は泣いているみたいだねえ」
「泣かせておけ」
拠点の東側にある櫓にて、ユフィーリアとシズクは見張りの番をしていた。
シズクは愛用している銀色の狙撃銃のスコープを覗いて森を見回し、ユフィーリアは櫓の柵に腰かけている。愛刀である空華をしっかり握りしめることも忘れない。
拠点とは真逆の方向を見ているというのに、シズクはグローリアが泣いているところを見たらしい。ケタケタと下品に笑っていた。
ユフィーリアはグローリアが笑っていようが泣いていようが興味がないので、シズクの話は聞き流していた。
その時である。
「どうもー、こんばんはー。ヨタカさんだよー」
夜に紛れる紺色の髪に紺色の翼。前髪が長いせいで瞳は見えない。リヴィよりも少し年上に見えるそばかすの少年が、突如としてユフィーリアの隣に降り立った。
ユフィーリアは一瞬驚いたように目を見開いたが、相手が誰か分かるとため息をついた。
「何かあったか、ミネルバ」
「んー、あったかな? ここから800メートルぐらい進んだところに、見慣れた人を見つけたよ。だからそれを報告しにきたんだ」
「……こんな夜中にくるってことは」
ユフィーリアの脳裏に、女の顔が浮かんだ。
夜間戦闘を得意とする集団。おそらく少年が見た、と言っていたのはその集団のうちの片割れだろう。敵味方問答無用で虐殺を繰り返している、あの狂った女が率いる集団。
ユフィーリアは空華をゆっくりと引き抜いた。シャリン、と涼やかな音を立てて引き抜かれた青白い刀身をじっと眺めて、少年が示した方向へ空華を振った。
空華は静かに空中を引き裂く。横へ空華を振ってから、ユフィーリアは鞘に空華を戻した。
シズクと少年は怪訝そうな表情を浮かべる。
「何したの、エイクトベル?」
「ちょっとな」
ユフィーリアは櫓の柵に背を預けて、空華にすがりついた。そして瞳を閉じる。
少女が休息を取ったと同時に、少年が示した800メートル地点の木々が砕け散り、クレーターを作った。
- Re: Sky High-いつか地上の自由を得よ- ( No.17 )
- 日時: 2015/03/01 23:30
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: XURzUbRL)
朝である。
櫓で寝落ちしたシズクを放置して、ユフィーリアは1人早く拠点へと戻った。朝食を作っている最中なのか、調理部隊の面々がせかせかと忙しなく動き回っている。戦闘要員で起床しているのは、この場においてユフィーリアぐらいだろうか。
遠くの方で筋骨隆々とした男がパン生地をこね、「ッシャー!! コラァーッ!!」などと野太い声を上げている。パン生地に気合でも込めているのか、それはパン生地をこねる彼にしか分からないことである。
「あら、ユフィーリア。おはよう」
大きな鍋を抱えたセレンが、拠点に現れたユフィーリアに挨拶をした。
ユフィーリアも「おはよう」と返す。礼儀は欠かさない。
「まだ朝食ができるまでもう少しかかるのよ。ごめんなさいね」
「平気。顔洗ってくる」
「あら、そう? これタオルね。行ってらっしゃい、気をつけて」
セレンから布を渡され、ユフィーリアはくるりとセレンへ背を向ける。
けもの道を突き進んだ先に、小川があった。朝日を受けて水面は輝き、魚が優雅に泳いでいる姿が見受けられる。
抱えていた空華を地面に突き刺し、ユフィーリアは川べりに膝をついた。透き通る水に手を差し込めば、キンと冷えた温度が手のひらを伝って脳へと届く。
豪快にばしゃばしゃと顔を洗っていると、遠くでパシャンと水を打つ音がした。
「……」
水に濡れた顔を布で拭いながら、ユフィーリアは怪訝な表情を浮かべる。
誰か敵が? ——いや、そういう気配はない。気配に敏感なユフィーリアが、敵を見落とすはずがない。
「ユフィーリア、上流の方だ」
空華の言葉を受けて、ユフィーリアは上流の方へ碧眼を投げた。
人がいた。しかも上半身裸である。程よく筋肉がつけられた逞しい背中からは、相手が『男』であることが分かった。短い黒髪は水に濡れて、キラキラと輝いている。迷彩柄のズボンの裾をたくし上げて、彼はざぶざぶと川の中に入っていった。
その相手を、ユフィーリアは知っていた。化け物軍勢の中にいる、ごくわずかな人間の1人だ。
だからこそ、ユフィーリアは行動をした。空華を手に取って、青い柄を握る。距離を飛び越えて対象を切ることができる彼女だからこそ、できることだ。
「————シッ!!」
短い声と共に、ユフィーリアは空華を抜刀した。青い刃は彼の首を見事に捉え、切り離す。
ぼちゃん、と彼の頭が川に落ち、そのまま下流へと流されていく。驚愕の表情を浮かべたまま流されていく頭を、ユフィーリアは空華を上手く使って川べりまで引き寄せた。
短い髪を掴んで川面から引き上げてやれば、開口一番に怒号を浴びせてきた。
「テメェ!! 背後からいきなり襲ってくるなんて卑怯だろうがぁ!!」
「だったら反応してみろよ。避けるなりなんなりしてみればよかっただろ。それとも、アタシの存在に気づいていなかった、とでも言うんじゃねえだろうな?」
「そっ……そんな、訳ねえだろ……」
彼の鋭い青の瞳が、虚空を彷徨う。
ユフィーリアはそんな彼の頭を、グワッと振り上げた。そう、彼女は投げるつもりらしい。
「せぇーのっ」
「やめろぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおお!! 頼むからやめてくれぇぇぇぇぇぇええ!!」
「うるさっ」
蒼穹へ放たれた絶叫に顔をしかめたユフィーリアは、仕方なく彼の頭をブン投げることを諦めた。
生命というより呼吸の危機を免れた彼は、安堵の息をつく。
「やあ、おはようハーゲン。朝からユフィーリアに首を吹っ飛ばされるなんて、君って奴は不幸だねぇ」
「うるせえ空華。つうか、真面目に切り離されるだけでよかったぜ……。切り殺されたらたまったもんじゃねえ」
「ユフィーリアは優しいね!!」
「優しいか? 朝から首を切り離す女が優しいか?」
ケタケタと楽しそうに笑う空華へ、ハーゲンと呼ばれた男は恨めしげな視線を送る。
「ハーゲン、お前は分かってんのか?」
「あ? 何がだ」
「お前の命は、アタシが今握ってんだぜ?」
「え」
そういえばそうだった。
ハーゲンの頭は現在、ユフィーリア・エイクトベルという傭兵の腕の中にある。少女の白魚のような指は優しくハーゲンの顎を掴み、まるで何か壊れ物を扱うかのように包まれる。
そしてユフィーリアは立ち上がった。普段は戦闘以外に頭の回らないハーゲンであるが、彼女が何をしようとしているのか瞬時に理解した。
「お、おい、おいユフィーリア。話し合おう、話し合おうじゃねえか……なあ?」
「さらば、ハーゲン・フェルゲンハウアー」
「ちょ、おい待て待て待て落とすなよ落とすな落と——ぎゃあああああああああああああ」
ぼちゃん、と。
ハーゲンの頭は川へと落ち、絶叫を森中に響かせながら流されていくのであった。
ちなみにその後、えぐえぐと男泣きをしながらユフィーリアの外套を掴むハーゲンと仏頂面のユフィーリアが揃って拠点へと帰還を果たした。
***** ***** *****
「これから開戦か……ゾクゾクするぜェ、なあ? ユフィーリア?」
「うるさい」
黒髪の女性が、恍惚とした目線を戦場へ送る。その隣に立つユフィーリアに同意を求めてきたが、彼女はバッサリと切り捨てた。
ルーペント・ノーラ・ブランドストレーム。かつて、敵部隊にいた女性である。彼女は1度死んだが、強い執念により再び息を吹き返したのだ。
人間から化け物に生まれ変わった彼女は、こうして化け物軍勢に加わったのである。
「おい、これから戦争が始まるっていうのにのんきに話している場合か? 少しは緊張感を持て」
「うるせえな、ケツメド野郎がよ。緊張感云々言ってる暇があるなら、敵を少しでも多く殺せよ? 私よりも戦果が挙げられなかったらお話にならねえからな——昨日みてえに」
「うぐっ……!?」
ルーペントに戦果を指摘されたエデルガルドは、何も言えずに言葉を詰まらせる。
そんな2人の言葉のやり取りを、ユフィーリアはただ聞き流していた。肩に担いだ空華にすり寄り、そっと瞳を閉じた。
はやる鼓動を鎮め、目を開く。同時に、開戦を告げる鐘の音が蒼穹へと響き渡った。
わらわらと荒野を駆ける、敵の群れ。それを捉えたユフィーリアは、唇を吊り上げた。
「さあ空華、行こうか」
戦場の張りつめた空気へと踏み入れる、小柄な銀髪の少女。
横を駆け抜けていく味方をよそに、少女の斬撃は目の前にやってきた兵士の首を吹き飛ばした。
赤い噴水を眺めて、唇を舌で湿らせる。
「うん、ユフィーリア」
空華の応答を聞きながら、彼女は戦場を蹂躙する。
- Re: Sky High-いつか地上の自由を得よ- ( No.18 )
- 日時: 2015/03/19 22:44
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: XURzUbRL)
- 参照: やっと、仕事が!! 終わった!!!
1人の少年が、戦場へ入った。
少年、というより青年である。見た目が幼い為か、少年に見えなくもない。
藤色という不思議な色をした髪の毛を揺らし、キラキラと希望に満ちた双眸は蒼穹の如き青。顔立ちは整えられているのだが、問題は彼の格好にある。
彼が身につけているのは、ポンチョだった。しかも長い。ものすごく長い。ずるずると引きずってしまっている。
「ふんふんふーん♪」
楽しそうに鼻歌を歌う青年は、ブオンブオンと何かを振り回した。
それは、鎌である。青年の身の丈を超すほど大きな、銀色の鎌。垂直に伸びる歪曲した刃が空を裂き、銀色の弧を描く。
「ふんふんふふーん——アイタ!? だ、誰だ今俺の頭を叩いたのは!!」
突如として頭を叩かれた青年は、後頭部をさすりながら振り返った。
頭を叩いたのは彼の同僚である。所属部隊は違えど、今回の戦争で彼の護衛を任されたのだ。紅蓮の軍服に身を包んだ青年の同僚は、やれやれと肩をすくめた。
「お前のような奴が『梟』部隊だとはなぁ。おかしな話だ」
「う、うるせえな!! いいだろうが!! 俺だって立派な兵士だぞ!!」
頬を膨らませて怒る青年。対して同僚の方は、「ハイハイ」とまるで聞いていない様子である。
「それよりも、だ。ナキ」
「ん? 何だい?」
同僚の真剣な双眸を、真っ直ぐに見つめる青年。カクリと首を傾げ、同僚の言葉を待つ。
視線をあちこちへ彷徨わせた同僚は、パンッと何かを張った。
傘である。真っ黒な傘を開いて装備した同僚は、不思議そうな表情を浮かべる青年へ向かって口を開いた。
「役立たず野郎が戦場に入ってくるんじゃねえよ迷惑なんだよお前に一体何ができるんだ」
あらかじめ用意されていた台詞を、彼の同僚は一息に告げた。
青年は表情を強張らせ、そして見る間に碧眼へ涙をためていく。同時に、空がフッと暗くなった。
暗雲が立ち込め、ポツポツと雨が降り出す。降り出した雨はやがて、ドバッと滝の如く乾いた大地へと降り注ぐ。バケツをひっくり返した雨、と表現することが正しいだろう。
「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああん!!」
青年の絶叫が、豪雨と同時に轟いた。
***** ***** *****
戦況の異変にいち早く気づいたのは、最前線で戦うユフィーリアだった。
悲鳴も断末魔も上げることなく死んだ兵士を放り捨て、そして柳眉を寄せた。ツンと高い鼻を引くつかせ、戦場の臭いを嗅ぐ。
鉄と硝煙——それから。
「……雨の臭いがする」
「え?」
ユフィーリアの言葉に、空華が反応を示した。
その瞬間だ。
ポツン、ポツンと雨の滴がユフィーリアの頬に触れた。冷たい濡れた感覚が皮膚を伝い、脳へと届く。
雨量は徐々に増していき、そして最後にはドバッと多量が降り注いだ。小柄な少女の体に、無数の水滴が襲いかかる。もはや痛いぐらいだ。
「うわあ!! ユフィーリア、急に降ってきたよ!!」
「チッ、どうなってるんだ」
苦々しげに舌打ちをしたユフィーリアは、辺りを見回した。『金糸雀』部隊が雨を発生させる装置でも開発したのか、と踏んだのだ。
しかし、その思惑は打ち砕かれる。
ザアザアと降り注ぐ雨の中、ユフィーリアの碧眼はあるものを映した。霞む視界が捉えたものは、泣いている男。
「あれって、『梟』部隊の!!」
「……」
藤色の髪に、空のような青い瞳からは大粒の涙を流している。整った顔立ちはもはや、涙と鼻水と涎でぐちゃぐちゃに汚れてしまっていた。
身の丈を超える巨大な鎌にすがりつき、子供の如く泣き叫ぶ男。彼の名を、ユフィーリアは知っていた。
「——ナキ」
その名を呼んだと同時に、「ユフィーリア!!」という己の名を呼ぶ声が聞こえてきた。
小柄な猫だった。ただし猫と言っても、それなりに大きい。身長はリヴィと同じぐらいだろう。キジトラの柄をして刀剣を身につけたその猫は、化け物軍勢の召喚士の使い魔だった。
「テオか。どうした」
「撤退命令が出た。グローリアの指示だ、引き返せ」
「撤退だぁ? まだ始まったばかりだろ。阿呆な司令官に付き合う暇なんてない、アタシはまだ戦う」
「奴はタダで転がるような男ではない。曲者揃いの化け物たちを一手に束ねる司令官だ。何か考えがあるのだろう」
猫は凛とした力強い声で、緑色の吊り目で真っ直ぐにユフィーリアを見つめて、もう1度同じことを繰り返した。
「撤退命令が出た。引き返せ」
極小の舌打ちをしたユフィーリアは、空華を肩に担いで戦場を背にする。
未だに泣いている藤色の髪の男——ナキを最後に一瞥してから、猫を引きつれて拠点へと戻るのだった。
- Re: Sky High-いつか地上の自由を得よ- ( No.19 )
- 日時: 2015/03/20 18:56
- 名前: 烈司 (ID: h7rqA5xU)
- 参照: 通りすがりの小説→アニメ化計画者
通りすがったものです。
設定といいキャラといい、非常に奥が深いと思いました。
そこで、アニメ化の計画を持ち込みたいと思ったのですが、
私はアニメ会社のものではなく、有志でアニメ化計画などをやっているものなので、今度機会があれば会社の方に連絡を入れるという計画を立てているのですが、
いろいろな方から今はまだ話数が足りないよというお話を毎度のようにいただくので、しばらくしたらまた参ります。
いろいろわかりづらい文章ですみません。