複雑・ファジー小説

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Sky High 新スレに移行しました。
日時: 2015/11/03 22:30
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: 6KsExnZ3)
参照: え、名前負けしてる? そんな馬鹿な。

 銀色の髪を翻し、硝煙漂う戦場を舞う。
 蒼穹の瞳に宿した炎は、敵を焦がす。
 裏切りと絶望の過去を辿って、凄惨な戦いへと身を投じた。


 ——とある『最強』の【傭兵】のお話である。


***** ***** *****


ハイ、こんにちこんばんおはようございます。
皆さんご存じ、山下愁です。よろしくお願いします。

さて、複雑ファジー小説板では実に3……あれ4だったかな……忘れましたが、まあそんな感じの小説です。
そんな前提はさておいて。

読者の皆様。上記の4行はご覧いただきましたでしょうか?
ご覧いただきになったようで幸いです。ええ、本当に。ありがとうございます。
「かっこの使い方が変」とか「誰が主人公なのかよく分からん」なんていう言葉は聞こえません。ニュアンスだけ感じてくださればこれ幸い。
ええ、ハイ。ニュアンスは「とんでもなく暗くて凄惨な物語」でありますよ。悲哀・凄惨・残酷がテーマになっている山下愁史上初のほんのちょっと笑えるけど基本的にはダークネスがテーマになっている小説になります。
ので、以下の注意書きを読んでくださいね。


・人が死ぬ情景や、山下愁的なグロ描写(いや露骨なのはやりませんけども)仲間が死ぬ情景など『負の演出が盛りだくさん』になっています。
 閲覧する際はくれぐれも注意してね。
 タイトル負けしてるとか言ったらダメです。なるべく小学生のお子さんは(いやこんなクソみたいな小説読まないだろうけど)閲覧を控えるようにお願いします。

・誤字、脱字は無視してください。山下愁が自分で気づいた場合は、自分で直します。「間違ってますよ!!」とか言っていただけると嬉しいですし、文章で表現がすっげー変だなって思ったところも指摘してくださるとありがたいです。私はぜひともそれを参考にします。
 もちろん、普通にコメントも大歓迎ですよ!! むしろ泣いて喜びます。

・山下愁は社会人であり、この時期になると繁忙期になってしまいます。 なので何が言いたいかって言うと、不定期です。更新は実に不定期になります。つーか遅いです。
 ていうか、自分が満足したら無理やりに終わらせるつもりでいますよ山下愁は。ハイそこ、納得いかない顔をしないでください。あくまで私の妄想を吐き出す場所に使わせてもらうだけです。「帰れ!!」と言わないでください。

・非常に胸糞悪いシーンがあると思いますが、黙って見過ごしてください。山下愁の性格が悪いとか、決してそんなではありません。

・誹謗中傷、無断転載、パクリはおやめください。
 なお、2次創作の場合は自己申告してください。泣いて喜びます。泣いて喜びます。


ふぅ、長いな。
成分としては、バトル120、胸糞50、笑い20、その他40とパーセンテージ限界突破でお送りします。
それではいいですか? 始まりますよ?
ちなみに書き方も結構変わってます。以前、鑑定さんに指摘されて直したのですが、この書き方だと新人賞に応募できゲフンゲフン。

***** ***** *****

登場人物紹介>>01

プロローグ>>02

※オリキャラ募集※>>03

ACT:?【新編開始】


ACT:1【最強傭兵】
ACT:2
ACT:3
ACT:4
***** ***** *****

お客様 Thank you!!
ツギハギさん様 ディスコ部長様 烈司様 梓咲様 モンブラン博士様


***** ***** *****

同時進行 Sky High-いつか地上の自由を得よ- パロディ

すかい☆はい-いつか地上を笑いで染めよ-

・人間どもよ許してなるものか>>11
 登場人物(ユフィーリア、セレン、アノニマス他)

・君の髪の毛をロックオン>>27
 登場人物(グローリア、リヴィ、ヘスリッヒ他)

・熱中症に気をつけろ>>38
 登場人物(ユフィーリア、グローリア、エデルガルド、ハーゲン他)

・学園すかい☆はい
 登場人物(未定)

※随時更新

***** ***** *****
Special Thanks
・梓咲様よりユフィーリアの絵が届きました>>28

Re: Sky High-いつか地上の自由を得よ- ( No.25 )
日時: 2015/04/26 01:56
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: XURzUbRL)

 グローリアを先頭にして、ユフィーリアたちは拠点へと続くけもの道をたどっていた。
 がさがさと草木をかき分けて進む中、突如として先頭のグローリアが立ち止まった。列が滞り、後ろに続いていたエデルガルド、ルーペント、アノニマス、ハーゲン、そしてユフィーリアが怪訝な顔をして立ち止まった。

「どうしたんだよ、グローリア」
「しっ」

 ハーゲンの質問に対し、グローリアは人差し指を唇に当てた。
 静かな森の中に、誰かの足音が反響する。がさがさと草木をかき分ける音、時たま落ちている枝を踏みつけるパキッという音、土を踏みしめる音、息遣い——誰かがいることを確かに伝えていた。
 最後尾のユフィーリアは、ゆっくりと空華の柄を握った。長年の傭兵稼業により築いた高い警戒心が、相手を敵だと認識したのだ。
 音に混じってかすかに香ってくる火薬の臭い。間違いなく、相手は武器を持っている。しかもかなり多数の銃火器を装備しているようだ。銃火器ということは第2特務攻撃部隊『燕』の誰かだろうか。

(……いや、どちらにせよ殺すだけだ)

 息を整え、きたる相手を待つ。
 茂みの向こうから現れたら抜刀すると決め、指先に力を込めた。近づいて居合をせずとも、距離を飛ばして切れば問題はない。
 気配は徐々に近づいてきている。がさっと茂みから手が生え、草をかき分けた。
 現れたのは赤い髪の男だった。長身痩躯に迷彩柄の軍服を着て、さらに赤い薄手のコートを羽織っている。右手は生身だが、左手が義手である。鋼の色をした左手でぎこちなく服に付着した葉っぱを払った。

「ジーク君じゃないか。たった1人でどうしたんだい?」
「……グローリア・イーストエンド」

 グローリアは瞳を輝かせて、目の前の男に挨拶をする。
 男——ジークムント・グローテヴォールはグローリアを真っ向から睨みつけたが、睨みが通用しないと判断したのか、フイと翡翠の瞳を逸らした。

「この方向からきたということは、我々の野営地を潰したと」
「うん。ちなみにナキ君は剥製みたく固まっちゃってるよ。生きているし、死んでもいる。もう動かないからね」
「貴様は人間を殺すことができないと聞いたが?」
「彼が願ったんだ。『死にたくない』ってね。最期の願いを叶えてやった僕はとても偉いでしょ?」

 ジークムントとグローリアによる静かな戦いが始まる。にこにこと笑っているグローリアだが、普段からは考えられない警戒の空気が漂っている。ジークムントも同様で、グローリアのことを警戒しているようだ。
 やがて、ジークムントが大きなため息をついた。

「私1人で貴様らを相手するのは少々骨が折れる。部下を引き連れ、戦場で相見えたいものだ」
「そうだね。ここで君を殺すのは少し惜しい。戦場で、僕の考えた作戦に敗れて死んで行ってくれると嬉しいな」
「私を殺せるとでも? 貴様ら烏合の衆に、我々人類が負けるはずないだろう」
「僕たちは」

 グローリアはそこで台詞を切った。深呼吸をしてから、凛とした声で言い放つ。

「僕たちだ。烏合の衆なんかじゃないよ」
「……失言だったな。ここで争っていても無意味だ」

 ジークムントは早々に戦いを放棄し、グローリアの横を通り過ぎた。エデルガルド、ルーペント、アノニマス、ハーゲンと順々に横を通り過ぎ、最後にユフィーリアの横をすり抜けた。
 ハーゲンの隣を通り抜けたまではよかった。
 ユフィーリアの隣に立った瞬間、ジークムントは牙を剥いた。
 コートのポケットから灰色の四角い紙を取り出すジークムント。その紙を右手で握った瞬間、自動拳銃が握られていた。
 黒光りする自動拳銃の銃口をユフィーリアへと向ける。距離はわずか50センチほど、撃てば当たる距離だ。だが、銃声が発されることはなかった。
 ジークムントの首元に、薄青の刃がピタリと当てられている。彼の首の皮が1ミリほど裂かれ、薄く血が滲んでいる。ジークムントが自動拳銃を構えるより前に、ユフィーリアが抜刀をしたのだ。

「……チッ」
「非常に残念だが」

 苦々しげに舌打ちをするジークムントに、ユフィーリアは宣言する。

「お前はアタシに勝てない。絶対にだ」

 一体その自信はどこからくるのだろうか問いかけたい。だが、ユフィーリアのギラギラと輝く青い双眸が『真実である』と語っていた。
 ジークムントは無言で自動拳銃を灰色の紙へと戻した。——否、自動拳銃を折り畳んだのだ。
 生身の右手で折り畳まれた自動拳銃をポケットに戻したところまで確認し、ユフィーリアはようやく空華を納刀する。
 1人の男と1つの集団は、反対方向へと歩き始める。
 その際、ジークムントは最後尾を歩くユフィーリアへ宣言をした。

「貴様は、俺が殺す」

 低く、呪詛のように吐き出された言葉。
 その言葉を聞いたユフィーリアは、一瞬だけ歩みを止めて、それからその声に応えた。

「期待してるぜ」

 かすかに浮かべた笑みと共に、期待の言葉を彼に投げた。
 当然、返ってきた反応は舌打ちだった。




ACT:2 END

Re: Sky High-いつか地上の自由を得よ- ( No.26 )
日時: 2015/05/03 14:31
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: XURzUbRL)

ACT:2 天才軍師 NG集


OKシーン グローリアの部屋にヘスリッヒが乱入する

「うるせえな。喚くな喧しい。何時だと思ってやがるンだァオイ?」

 突如として、司令官室の扉が叩き壊さん勢いで開いた。壁に扉が激突を果たし、バガンッ!! という轟音と共に跳ね返ってきた。
 司令官室に現れた闖入者とは、紙袋を被った男だった。袋には視界確保用の穴が開いており、その穴から覗く鋭い双眸は琥珀色をしている。白いタートルネックとカーキ色のズボンを身につけた彼は、肌を一切露出していない。露出していたとしても、そこは包帯で覆われて、やはり肌の色は見えない。
 紙袋の男——ヘスリッヒは中指を高々と突き上げて、グローリアへ怒鳴った。

「男がメソメソメソメソ泣いてんじゃねえぞアァン!? こっちまで女々しくなっちまって『自主規制』しなくなったらどうしてくれんだァ!?」
「ヘスリッヒ、今下ネタはいらない」
「ガチトーンで返してんじゃねえよさっきまで泣いてやがったのはどこのどいつだコラァ!!」
「痛い!! ヘスリッヒ痛いよ!! 僕の頭はボールじゃないんだよ!?」


NGシーン

「うるせえな。喚くな喧しい。何時だと思って」
「ふぐぉ!!」

 バガンッ!!(←ドアが吹っ飛び、轟音と共に跳ね返ってくる)

「……オイ、何で顔面押さえてうずくまってんだ。誰も『自主規制』してねえだろうが」
「へすりっひ、いま、しもねたいらない」
「あー、そうかオレの顔面にドアがぶち当たってその衝撃がお前にトンだ訳だな。鼻血出てねえか?」
「なみだとまらない」

 思い切りやりすぎてヘスリッヒの顔面にドアがぶつかる。
 しかし衝撃は全て彼が無意識のうちに考えていたグローリアのもとへ転換。鼻血は出てないけど衝撃で涙がまだ止まらない。



OKシーン ヨタカさん初登場シーン

「どうもー、こんばんはー。ヨタカさんだよー」

 夜に紛れる紺色の髪に紺色の翼。前髪が長いせいで瞳は見えない。リヴィよりも少し年上に見えるそばかすの少年が、突如としてユフィーリアの隣に降り立った。
 ユフィーリアは一瞬驚いたように目を見開いたが、相手が誰か分かるとため息をついた。

「何かあったか、ミネルバ」


NGシーン

「どうもー、こんばんはー。ヨタカさんだ————」
「あ」
「ん?」

 シュン、シャキン。
 ひゅー、ぼとっ。(←落下音)

「……ねえ、ユフィーリア。今のミネルバだよね?」
「……つ、つい」
「首と胴体が離れて落ちていったよね? 前回のグローリアの二の舞じゃない?」

 珍しくシズクからのツッコミを受けて反省するユフィーリア。
 ちなみにぶった切られたミネルバ君は面白そうにケタケタ笑っていました(生首)
 その下で見張りをしていたリヒトは思わず叫んだそうです。



OKシーン ハーゲン初登場シーン

「お、おい、おいユフィーリア。話し合おう、話し合おうじゃねえか……なあ?」
「さらば、ハーゲン・フェルゲンハウアー」
「ちょ、おい待て待て待て落とすなよ落とすな落と——ぎゃあああああああああああああ」

 ぼちゃん、と。
 ハーゲンの頭は川へと落ち、絶叫を森中に響かせながら流されていくのであった。


NGシーン

「お、おい、おいユフィーリア。話し合おう、話し合おうじゃねえか……なあ?」
「さらば、ハーゲン・フェルゲンハウ」


 ぴちゃっ。(←鳥の『自主規制』がハーゲンの頭にジャストヒット)


「「「…………」」」

「汚えな」
「おい、おい待てユフィーリアおいコラ待てがぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼ」
「ユフィーリア、それ沈めてるから!! やめてあげて!!」

 頭を洗ってやると言わんばかりにハーゲンの頭を川に沈めるユフィーリア。
 さすがに空華からのストップがかかりました。



OKシーン ナキに悪口を言うシーン


 同僚の真剣な双眸を、真っ直ぐに見つめる青年。カクリと首を傾げ、同僚の言葉を待つ。
 視線をあちこちへ彷徨わせた同僚は、パンッと何かを張った。
 傘である。真っ黒な傘を開いて装備した同僚は、不思議そうな表情を浮かべる青年へ向かって口を開いた。


「役立たず野郎が戦場に入ってくるんじゃねえよ迷惑なんだよお前に一体何ができるんだ」


NGシーン

「役立たず野郎が戦場に入って来るんじゃねえよめいわきゅっ」
「……ねえ、噛んだ?」
「噛んでない」
「噛んだ噛んだ!! わーい噛んだ!!」
「喜ぶなよ畜生。わー、晴天だふざけんなこっちは大雨を降らせたかったのに!!」


 悪口を噛んでナキが喜び、ビバ晴天。
 このあとジークさんに正座させられ怒られます。「何故TAKEを出した」とな。



OKシーン 「僕の私怨の為に働けよ?」

「なあ、お前ら」

 グローリアはふわりと笑んだ。いつも彼が浮かべている笑顔なのに、纏っている雰囲気がどす黒い。
 ヘスリッヒも、ルーペントも、スカイも、リヒトも、化け物たちはみんなして口を噤んだ。今の彼に、何も言えなかった。


「————僕の私怨の為に働けよ」


NGシーン


「————僕の私怨の為に働けよ」

「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああん」
「うぉ!?」
「え、なに!?」
「ぐろーりあがこわいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい」
「……あーぁ」
「あーぁ」
「泣かせたなァグローリア」
「え、僕の責任なの!? てかユフィーリアがめっちゃ冷えた目で見てくるんだけど何で!?」
「アタシよりもそっちを気にしろよ。さらば司令官。お前のことはコンマ5秒は忘れない」
「短くない!? それ非常に短くない!?」
「ワタシの可愛い可愛いリヴィを泣かしたのは——貴様かぁ?」
「ヒィィ!! セレンがめっちゃ怖いいい!!」

 グローリアの台詞にリヴィが号泣。
 全員から攻められた挙句に、化け物軍勢のオカンを怒らせるという最悪の事態を引き起こした(ダメ)司令官。



OKシーン ジークさん、ユフィーリアへ攻撃

 ユフィーリアの隣に立った瞬間、ジークムントは牙を剥いた。
 コートのポケットから灰色の四角い紙を取り出すジークムント。その紙を右手で握った瞬間、自動拳銃が握られていた。
 黒光りする自動拳銃の銃口をユフィーリアへと向ける。距離はわずか50センチほど、撃てば当たる距離だ。だが、銃声が発されることはなかった。


NGシーン

 サッ(←ジークさん、自動拳銃を取り出す)
 スッ(←ユフィーリア、ジークさんの首に空華を突きつける)

「へぶちっ」

 シャキン。

「「あ」」

 ゴロリ(←ジークの首が落ちる音)

「……くしゃみが止まらなかった。悪い」
「貴様が謝るなど……明日は槍でも降るのか」
「いいねその作戦。実行しようか。アルミちゃん辺りに頼めば大量の槍を戦場に降らせてくれるかな?」
「いやそんなこと言ってねえでそいつどうにかしてやれユフィーリア。ジークムント、お前も生首のままでよく冷静でいられるな?」

 ユフィーリアがくしゃみをしたせいで手元が狂い、空華でジークさんの首を切り落とす。
 前回のグローリアの二の舞です。



 ACT:2のNGはここまで!!

Re: Sky High-いつか地上の自由を得よ- ( No.27 )
日時: 2015/09/14 21:56
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: gTez.RDd)
参照: ちなみにユフィーリアが狙われたなかった理由は、命の危機であります。

 イライライライラ。
 イライライライライライライラ。
 ————プチッ。

「うっきゃぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああ!!!」

 紙が乱雑した司令官室にて、グローリア・イーストエンドが絶叫した。艶のある黒髪をガシガシと掻きむしり、天井を仰いで甲高い悲鳴を上げる。
 普段からにこにこしている彼でも、精神の限界は存在する。それが今、訪れたようだ。
 ひとしきり悲鳴を上げた後、ため息と共に言葉を漏らす。

「……髪の毛を弄らせろォ……」

 その声は、普段の彼からは想像もつかないほど低かったという。



 君の髪の毛をロックオン



「……イライラするイライラするイライラするイライラする……」
「うるさいよ、グローリア。隣で呪詛を吐かないでくれるかな、たまったもんじゃないよ」

 拠点とする砦のすぐ近くにあった手近な岩を椅子代わりに腰かけ、グローリアは呪詛を紡ぐ。夕焼けの如き赤い双眸の下には濃い隈が作られ、顔の色も若干悪い。普段から彼の肌は白いのだが、もはや「病気ではないか」と疑ってしまいたくなるほど白い。
 彼のすぐ傍で動物たちに囲まれている赤い毛玉——もとい、スカイ・エルクラシスはうんざりしたような表情を浮かべた。頬にすり寄ってきた白猫に「ジャックスとレンのところへ行ってきて」と命令して、地面へと下ろす。白猫はスカイの命令を受けて、拠点を走り去っていった。
 スカイは現在、人間たちの野営地を捜査している最中である。動物を自在に操り、動物たちが見ているものや聞いているものを共感できる彼ならではの仕事である。

「イライラするならユフィーリアに突っかかってくればいいでしょ。彼女ならまたゴミを見るような目で見てきてぶった切ってくれるよ」
「彼女じゃダメだ」

 スカイの適当な言葉に、グローリアは即座に否定した。
 これにはスカイも驚いた。いつもなら「ユフィーリア、ユフィーリア」とうるさい彼が、件の最強傭兵を切り捨てるとは。
 うつろな赤い双眸は、真っ直ぐにどこかを見つめている。ただじっと。動くことはない。

「彼女なら、彼女ならいいかもしれない」

 グローリアの視線の先にいたのは、リヴィだった。くねくねと訳の分からない踊りを踊っているサリサと共に、くねくねと踊っている。多分彼女はその踊りがどんな意味をするのか分かっていないだろう。

「リヴィ、ちょっと」
「んー? なあに、ぐおーいあ?」

 少し舌足らずな言葉でグローリアの名を呼んだリヴィは、踊りを中断してグローリアのもとへ駆け寄ってくる。ふよふよと黒い猫の尻尾は揺れ、何やら楽しそうだ。
 グローリアはリヴィのツインテールに指を絡めさせて——彼女の髪を結んでいるリボンを同時に解いた。
 バサ、と重力に従って黒髪は真っ直ぐなストレートに戻る。跡もついていない。癖がつかない髪のようだ。
 突如として髪の毛を解かれたリヴィは、ポカンとした表情でグローリアを見上げていた。同じようにスカイも呆気にとられた表情をしている。

「……何してんの、グローリア?」
「リヴィ、お願いがあるんだけど聞いてくれる? いや、髪の毛解いてから言うのもあれなんだけどさ」

 スカイの質問を聞き流したグローリアは、にっこりと笑顔を浮かべた。
 いつものほんわかした笑顔とは程遠い、何やら切羽詰まったような笑みだったが。

「髪の毛弄らせて」



 昼寝から目覚めたヘスリッヒが見たのは、髪の毛を盛りに盛られて身長が高くなったリヴィと、せっせとリヴィの髪の毛を編んでいくグローリアの図だった。なんか変である。
 グローリアの目つきは真剣そのもので、プロ並みの技術でリヴィの髪の毛を盛っていく。手鏡を片手に自分の髪の毛が盛られていく様を見ているリヴィの双眸はキラキラと輝いていた。

「……オイ赤毛玉、コリャ一体何のお祭りだァ? リヴィはいつから娼婦——つうかキャバ嬢になったんだァ?」
「僕のことそう呼んでいたの?」

 いつの間にかグローリアから距離を取っていたスカイは、ヘスリッヒをジロリと睨みつけた。だが、紙袋から見える目線はスカイの方へ向いていない。

「5分前ぐらいかな。グローリアが突然『髪の毛弄らせて』って言い始めて、あんな感じになっちゃった。ああいう筋の仕事に就けばいいんじゃないかな。司令官辞めて」
「…………ついに頭がイカれたか。あの『自主規制』野郎」
「多分ストレスでイカれたんじゃないの? 3徹らしいからね、あいつ」

 だから睡眠は取れって言ったんだけどな、とスカイが小声で付け足した。
 ようやくリヴィの盛り髪は完成したのか、グローリアの手つきが止まった。

「へすりひー!! みてー!! みてー!! リヴィねー、しんちょおっきくなったー!!」
「おおすげえなリヴィ。身長でかくなったなァ」

 とてとてとヘスリッヒへ駆け寄ったリヴィは、自信の身長が高くなったことを全身でアピールする。紫色の双眸は輝き、猫の尻尾は興奮で膨らんでいる。頭上の耳もピコピコとせわしなく動いている。珍しい髪型にしてもらえたのが嬉しいのだろう。
 6歳児のアピールを無下にすることもできないので、ヘスリッヒは下ネタを封印した。理性が働いたのか、はたまた彼女の純粋な空気に当てられて正気に戻ったか。

「あいつまだうずうずしてる。ていうか今度は君を見てるよ、ヘスリッヒ」
「ハァ!? ちょ、やめろコッチ見んな!! 何だその手招き行かねえよ!! だからってくるんじゃねえってふざけんなこの『自主規制』野郎がァ!!」
「ヘスリッヒ、その髪の毛弄らせてぇぇぇぇ」
「やめろぉぉぉぉぉおおおおお」

 珍しくヘスリッヒの悲鳴が、拠点へと響き渡った。







 真っ白な竜人族との鍛錬から戻ったユフィーリアが目にしたのは、リヴィに抱きつかれながらグローリアに髪の毛を結わかれているヘスリッヒの図だった。
 何やら赤い髪に花の飾りがふんだんにあしらわれて、大変メルヘンな髪型に変わったヘスリッヒを見て、ユフィーリアは一言。

「お前、そういう趣味あったの?」
「助けろ馬鹿!!」

 紙袋の下にある琥珀の双眸で睨まれたが、ユフィーリアは無視して拠点の仮眠室へと足を向けたのだった。

Re: Sky High-いつか地上の自由を得よ- ( No.28 )
日時: 2015/05/08 14:21
名前: 梓咲 (ID: /z9KW9Ro)
参照: http://touch.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=50266263

お久しぶりです!
ユフィーリアちゃんを描かせて頂きました(URL先)。別人注意です!
ぼちぼち他のキャラクターさんも描いていきます。
更新、応援しています!

Re: Sky High-いつか地上の自由を得よ- ( No.29 )
日時: 2015/05/10 22:50
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: XURzUbRL)

梓咲様>>


お久しぶりです、山下愁です。
こちらの小説は細々と、そして気まぐれに更新してきました。ACT:2にてすでに1人、しかもグローリアによって殺されてしまいましたが。
ダークネスな小説なのでもうそこは耐えていくしかねえな……と。
そして申し訳ありませんでした。折角投稿してくださったナキ君を、早々にご退場させてしまいました。アノニマス君は絶賛活躍させてもらいます。

さてと……ユフィーリアの絵を拝見させていただきました!!
ありがとうございます、としか言いようがありません。本当にありがとうございます。画面の向こうで頭が上がらない((
最近はゲームに現をぬかし(ちょっと神様をムシャァしてましてね、ええ)行進が停滞していますが、何とか続けていきたいなと。
そして次回はシズクが活躍する予定になゲフンゲフン

このスレ、>>0に載せちゃってもいいですかね? いや載せないでくださいと仰るのであればあとから言ってください。
更新頑張ります。


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