二次創作小説（映像）※倉庫ログ
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- 【進撃の巨人 ペトラ・ラル】貴方に心臓を捧げます。
- 日時： 2015/07/05 22:52
- 名前： 諸星 銀佳 （ID: .xQ.zB/T）
※リヴァイ×ペトラが嫌いな人は読まないことをお勧めします※
※腐ではないです。※
進撃の巨人の非公式小説です。
アニメ見て…大好きなペトラさんが…(/_;)それを見つめる兵長が…(/_;)もう辛くて辛くて。
『二人には幸せになって欲しかった。なら、私が二人を幸せにする!!』
と言う事で、兵長に密かに思いを寄せるペトラ視点で書いていきます。
必ず幸せにするから!!
§登場人物§
ペトラ・ラル…調査兵団所属。特別作戦（リヴァイ）班の紅一点。謙虚で仲間思い。オルオとは幼馴染だがあまり良く思っていない。リヴァイに密かに恋心を抱いている。
オルオ・ボザド…調査兵団所属。ペトラと同じく特別作戦班にスカウトされる。この班に入ってから口調がリヴァイっぽい。ペトラ曰く「似てない」。だが、実力は確かだ。
エルド・ジン…調査兵団所属。ペトラたちの先輩に当たるが、同期で主席。リヴァイ班のリーダー的存在。
グンタ・シュルツ…調査兵団所属。寡黙で真面目な兵士。リヴァイ班の仲裁役。
リヴァイ…調査兵団所属。小柄だが、「人類最強の戦士」と呼ばれ、1人で一個旅団相当の戦力があるとも噂されているほどの戦闘力がある。無愛想だが仲間思いで部下からの信頼も厚い。
ハンジ・ゾエ…調査兵団所属。戦闘力も高いが、巨人を別の方面から研究している。少々マッドサイエンティスト気味。
クララ・ベラルダ…調査兵団所属。ペトラと同室の同期。クセっ毛の金髪・碧眼の美女だが、口が悪くサバサバしている。
カウツ…ペトラの班長。普段は眠そうな顔をしているが、立体機動の扱いに長けた20代後半の男性。茶色の髪を短く切り揃え、今にも寝てしまいそうなベージュの瞳をしている。
とりあえずこんな感じで進めていきます。宜しくお願いします。
序章 >>01
第1章 兵士とは >>02-11
第2章 生き残った者の責務 >>13-15，>>18-21，>>24-30
第3章 このままであれば >>31-33，>>36-43
第4章 仇討ち >>44-46，>>49
- Re: 【進撃の巨人 ペトラ・ラル】貴方に心臓を捧げます。 ( No.52 )
- 日時： 2016/03/30 22:44
- 名前： 諸星銀佳 （ID: CN5DwmtD）
【第五章 命を背負って】
847年も半ばが過ぎたころ。先遣隊として活躍した4人は班長に昇進した。各々が部下を率い、責任を負う。
エルド・ジンの部隊は兵士同士のバランスの取れた班となっていた。各々の長所を生かした戦略をエルドが展開していき、思う存分暴れられると、兵士たちからの人望が厚い。
グンタ・シュルツの部隊は堅実な戦い方で兵士に負担をかけない戦い方を進めていた。表立った戦績はこれと言って無かったが、着実に討伐・討伐補佐数を増やしていっていた。
オルオ・ボサドの部隊は立体起動に長けたものが集まった。その為討伐・討伐補佐数が他の班に比べて頭一つ抜けていた。ただ毎回負傷者が多いという課題もあった。
一方、ぺトラ・ラルの部隊はというと。
主にオルオの班にくっついていくというスタイルを取っていた。いや、取らされていた。それが何故なのかはなんとなく予想はついていたが、口には出さなかった。班員からの不満も漏れていたが、上からの命令だからとだけ告げ、オルオ班の補佐に入っていた。
第32回壁外調査中。遂に班員の不満が爆発した。
「班長！私たちはいつまでこうしていればいいのですか！？」
「そうですよ！俺たちだってもう戦えます！前線に出て戦いましょう！？」
「班長、貴女は選ばれた人だったんでしょ？知ってますよ。直々に命令されて巨人を討伐した戦績を持ってるって…このままでいいんですか！班長は、それで満足なんですか！？」
「私は満足よ。不満を持っているのは貴方たちだけ。死にたくなかったら私の命令に従いなさい」
一喝すると静かになった。今回の壁外調査の目的はウォール・マリアへの拠点を作ること。巨人の行動パターンを何年にもわたり調査し、今回その結果から安全な場所を割り出し、徐々に人類の領地を取り戻していく作戦だ。今はその拠点で補給を済ませたのち、帰還するところだ。
「でも班長」
浅黒い肌に黒い短髪、緑色の目をしたヴァイツェン・フォルクが怒りを堪えられないかのように強く当たる。
「そうやって怯えたままでいいんですか！？優れた力がありながらそれを使わないなんて、宝の持ち腐れです！俺たちは戦えます！行きましょう！」
「…」
「無言を貫くんですね。じゃあ好きにさせてもらいます」
「待ちなさい！」
ヴァイツェンは制止を無視して班員を連れて前線へと飛んで行ってしまった。ガスの補給途中だったぺトラは追えるはずもなく。
「くそっ…私だって、班長になったんだからその名に恥じない戦いをしたいに決まってるでしょ…でも、でも勇敢に戦うことだけが全てじゃない。生きて帰ってなんぼなのよ…命あっての物種なんだから…」
「ぺトラ！さっきは助かったぜ…ってあれ？おい、お前班員どうした」
そこへオルオたちの班がやってきた。相変わらず無茶をしている様だ。
「あんたにかまってる暇はないの！って言いたいところだけど、今は力を貸して。班員が命令を無視して前線に行ってしまったの。一緒に止めてほしい」
「遂に不満爆発したか…お前は悪くないんだけどな…仕方ねぇ！おいお前たち！聞いたか！緊急任務だ。馬鹿どもを連れ戻せ！」
オルオの号令で一斉に飛び立った。
確かに憧れた班長だ。それが今は何となく苦痛で。光には影がついていることを改めて思い知った。
「死なないで」
ぺトラは小さく呟いた。
- Re: 【進撃の巨人 ペトラ・ラル】貴方に心臓を捧げます。 ( No.53 )
- 日時： 2016/03/30 22:42
- 名前： 諸星銀佳 （ID: CN5DwmtD）
「オルオに…くっついていけ…？」
上官たちから言われたことはあまりにも衝撃的だった。
話があると言われて呼び出された。要は班長には昇格。だが、その班を率いて戦うことは出来ないとのことだ。
「オルオ・ボサドと君の連携には目を見張るものがある。是非とも活用したいんだ…あぁ、君の働きには大いに感謝しているし、評価もしている。だが、班長と言っても前線に立つことが役目じゃない。班員の命を繋ぎ留め、強さを昇華させていくこともまた班長の仕事だ」
「私が女だからですか。女だから前線には立たせてもらえないと」
「ぺトラ・ラル」
「私も戦えます。見くびらないでもらえますか。先遣隊としての任務を全うし、それなりに討伐・討伐補佐数を稼いでいるつもりです」
分かっていたのだ。以前より自分が戦えていないことが。
カウツや班員、先遣隊のメンバーの死を間近で見た。クララたち戦士としての死も見た。死が一つではないことを知った。
命の重さ。命が簡単に散っていくこの残酷な世界を目の当たりにして、刃を振るう手が重いのを感じていた。
生きてさえいれば何でもできる。戦士として死んでしまっても、生きてさえいれば何度だってやり直せる。違う生き方も選べる。逃げても良い。恥などではない。
——生きてさえいれば…。
「おい、聞こえなかったか。お前の働きを評価しているが、前線に立つことが全てじゃねぇって言ってるんだ」
「遠回しにはお前は戦えないって言われたように思えたのですが」
「…じゃあこの際はっきり言わせてもらう」
長い机の端から端をゆっくりと歩き、ぺトラの近くまで来る。
「お前は前線では戦えない」
分かっていたけれど、他人から改めて言われると流石に辛い。
「同期たちが班を持ってるのにお前だけ持たないのはおかしい。だが今のお前に戦う力はない。生きて帰ることで精一杯だ。本来なら左遷すべきだろうが、生憎調査兵団は万年人員不足だ。上位10名に入った兵士を手放すのも惜しいからな」
「そこで応急処置をしてこの形を取らせてもらったという訳だ。理解してもらえたかな」
「……分かりました」
「よろしい。下がってくれ」
ただでさえ小さい背中が、一層小さく見えた。
「お前が一人の人間に固執するのも珍しいな、リヴァイ」
「どっかの誰かさんの影響かもな。だが肩入れするつもりはねぇ」
「どうかな。私には十分肩入れしているように見えるが」
背中を向けたままのリヴァイから殺気立っているのがひしひしと伝わってくる。
「怒らないでくれ。私は応援しているよ、リヴァイ」
「クソ野郎が」
扉を思いきり閉めて立ち去って行った。一人残された部屋で、エルヴィンは小さく笑った。
- Re: 【進撃の巨人 ペトラ・ラル】貴方に心臓を捧げます。 ( No.54 )
- 日時： 2016/03/30 22:41
- 名前： 諸星銀佳 （ID: CN5DwmtD）
分かっているつもりだった。本当につもりだった。
生きていくことの難しさ。常に死と隣り合わせ。死の恐怖を知ってしまった今の自分は戦えない。自分一人が助かれば良い、という一班員の考えではなくなった。他人の命を背負うことがこんなにも辛いことだとは思わなかった。
感情のない大きな顔がこちらを見るたび、握る刃が震える。その手を放しそうになる。逃げ出したくなる。死にたくないと思う。生きた心地がしないのだ。
恐怖を殺し、持ち得る全ての力を駆使して巨人を倒した時、初めて生きている、それがどれだけ幸せなことなのかを知れた。
生きてほしい。世界を拓いていくのはいつだって若い者たちだ。これからの世代にこそ、この残酷な世界を変えていける。自分はその大切な若い者たちの芽を摘んではいけない。育んで、花咲かせないといけない。
自分が、そうしてもらったように。
「あいつらか！？」
オルオが示す先に巨人と応戦する自分の班員が見えた。オルオを追い抜かし、戦場へと飛び込んでいく。
「や…やめてくれ…」
そこには巨人に掴まれて身動きの取れないヴァイツェンがいた。
「嫌だ…死にたくない…」
生臭い息と巨大な口が迫る。助けを求めようと叫ぼうとした時、目の前を何かが通り過ぎた。水蒸気を上げながらヴァイツェンは地上へ落ちた。一瞬何が起こったか分からなかったが、上を見ると半身をひねり、うなじを削いだ人の姿があった。
「は…班長…」
轟音を上げ、巨人が倒れた。その上には返り血まみれのぺトラがいた。彼女は静かに歩み寄る。
「いつまで巨人に掴まれてるつもり」
ボロボロになったブレードを落とし、替え刃を付けた。
「は、班長…俺…」
周りで立ちすくんでいた班員たちもぺトラの元に集まってきた。そこへオルオの班も合流する。
「誰が、戦えるって？」
自分でもびっくりするくらいの低い声だった。空気が凍る。見たこともない彼女の姿に誰もがゾッとした。
「死に急ぎたいの？」
「い…いえ…」
「……馬鹿は死なないと治らないって思ってた」
それ以上何も言わずにオルオの元へ踵を返す。手間を取らせてごめん。本隊に合流しようと告げた。
何もなかったかのようにオルオ班・ぺトラ班はその場を後にした。
壁外調査は目的通り拠点を増やすことに成功し、調査兵団は大きな損害を出すことなく帰還した。
その晩、ぺトラの部屋を訪ねる人の姿があった。ヴァイツェンをはじめとするぺトラの班員だった。彼女は何も言わずに招き入れ、お茶を差し出した。
「今日は…ありがとうございました…」
「…」
「すみませんでした…もう班長の指示を無視するような軽率な行動はしません」
「……馬鹿は死なないと治らないって思ってた」
今日言われたことをもう一度言われ、やるせない表情になるヴァイツェン。思わず下向く。
「でも、治ったみたいね」
こっぴどく叱られると思ってたが、意外にも優しい言葉をかけられた。顔を上げると、ぺトラが少し申し訳なさそうな顔をしていた。
「私がこの位置につけられたのは、貴方たち、自分ならできると思っている人たちに現実を叩きつける役目なの」
酷いことを言うようだけどね、と付け足す。実は、あの後リヴァイに真実を聞いていたのだった。
『これは…？』
リヴァイから手渡されたのは今回調査兵団に入ってきた人間のリストだった。何名かの抜粋のようだ。よく見れば自分の班員の名前が全員入っている。
『お前の班には、自意識過剰な奴らを入れさせてもらった』
『じっ…！？』
驚きを隠せない。班員を思い浮かべてもそんな風には思えなかった。気づかいのできる子。真面目な子。友達が多い子…・
『沢山の死を間近で見てきたお前には、こいつらに現実を叩きつけてやってほしい。死に急ぎ野郎共に教えてやってくれお前にしかできない役目だ』
『それはつまり…自分は戦えると思っている子たちの教育、ですか？』
『まぁそういうことだ』
先程あんな言われ方をされショックを受けてるとでも思ったのだろうか——実際ショックだったのだが——。私にしかできない役目、と言ってフォローしてくれているのだ。部下想いの優しい人。自分が思っていたリヴァイ像と違い、少し嬉しくなった。
『おいなんで笑う』
『ありがとうございます。慰めてくれてるんですよね。大丈夫です。実際にリヴァイ兵長が仰った通り、今の私は前線では戦えません』
笑顔を向けるが、どことなく悲しげだった。
『もう誰も、失いたくないですから』
『……そうだな』
『あっ、空気重くしちゃってごめんなさい。分かりました。この子たちの性根を叩きなおして見せますから！』
雰囲気を変えるように元気よく敬礼する。リストを返し失礼します、と言い残してきた。
「貴方たちは実力はある。でもそれを過信しすぎて死んでしまう可能性があった。現に…死にそうになった」
また俯く班員たち。返す言葉が見つからない。
「分かってほしかったの。生きていることがどんなに大変なのか。一つしかない命よ。大切にして。だから私はこのスタイルを変える気は無い。基本はオルオの班について行って補佐する。倒すのはせいぜい打ち漏らし位。それが気に食わないなら異動届を私が出してきてあげる。どうする？」
誰も、何も言わなかった。その後の文句はない？の一言に全員頷いた。
「分かった。今日はお疲れさま。早く寝て明日の訓練に備えて」
「「「はい！！」」」
彼女たちは大きな戦果を挙げることは殆どなかった。だが、彼女たちの補佐は的確だった。班長ぺトラは臆病だと罵られることもあった。それを力に変えて奮闘した。班員たちもそれに応えるように彼女を支えた。
その結果、ぺトラ班は最も生存率が高い班となったのである。
- Re: 【進撃の巨人 ペトラ・ラル】貴方に心臓を捧げます。 ( No.55 )
- 日時： 2016/06/02 22:11
- 名前： 諸星銀佳 （ID: CN5DwmtD）
調査兵団の人事異動はなかなか激しい。
無論、そうならざるを得ない。
毎回の壁外調査で何名もの尊い命が失われていく。班員の補充の為に班を合体。人員不足で解体。そんなことはよくある訳であった。
「が、合体？」
「あぁ」
エルヴィンから告げられた言葉はあまりにも唐突すぎて理解に時間がかかってしまった。
「ついこの間班を編成されたばかりのような気がするのですが…」
「先の壁外調査である班が壊滅的になってしまってね。このままでは活動できないと判断し、ぺトラ、君の班に補充という形になった」
この間と言ってももう3ヵ月も前だ、と言われ驚きを隠せない。ここに入ってからというもの、あまりにもいろいろなことが起きすぎて時間の流れが分からなくなってくる。
「君の負担が増えてしまうが…良いかな？」
「は、はっ！」
全てを見通されるような眼差しを向けられ敬礼がいつもより委縮する。だがその眼差しもほんの一瞬だった。
「では、宜しく頼むよ」
肩をポンポンと軽く叩き、部屋を後にした。一人呆然と敬礼したまま立ち尽くすぺトラ。そしてぼそりと呟いた。
「……なんで私なんだろう」
「ほぉ…ぺトラも一気に大所帯だなぁ」
「そんな言うほどじゃないよ。3人入ってくるだけだよ」
食堂で鉢合わせたグンタに話を持ち掛けた。少々不安な面を愚痴ってたのだ。グンタの班は堅実な戦い方をする為、オルオの班のような戦績は残してないものの、負傷者は前線に立つ班なのにも関わらず圧倒的に少ない。戦績を残してないと言いつつ、確実にぺトラの班よりはあるのだが。
「お前なら大丈夫だろ。同期の班長の中でも戦場の怖さというものを一番知っているんだから」
「それって臆病って事じゃない」
「死ぬのが怖くない奴なんていないだろ？ある意味臆病ってのも大切なんだと思うけどなぁ。それが結果的に最も生存率が高い班、ぺトラ班なんだろ？」
「それは今の人数だから回せてるだけで…」
あぁだこうだという彼女に痺れを切らしたのか、グンタが先程よりも少々大きな声で言う。
「お前は自分に自信を持った方が良いな。オルオみたいに持ちすぎなのも考え物だが、持たなさすぎなのも良くないぞ」
胸張れよ、と喝を入れられた。グンタの班はどうやら会議があるらしく、先に帰ってしまった。
自分が優秀だなんて思ったことはない。目の前で襲われてる人を足がすくんで助けられなかったことなんか数えきれない程あるのだから。だが、そうやって誰かが認めてくれているということは、それなりに頑張れているという事なのかもしれない。
ぺトラは勢いよく立ち上がり、いつもより胸を張ってみた。まず形から入ろうと思ったのだ。
勢いあまって飲み水をこぼし、慌てて拭いている姿はとてもそんな風には見えなかったのだが。
- Re: 【進撃の巨人 ペトラ・ラル】貴方に心臓を捧げます。 ( No.56 )
- 日時： 2016/09/06 01:19
- 名前： 諸星銀佳 （ID: CN5DwmtD）
ぺトラの班が再編成されてから数か月が過ぎた。もうすぐ一年が終わろうとしている。848年を迎える少し前。調査兵団の第33回壁外調査が行われようとしていた。この壁外調査を迎える前まで新ペトラ班はみっちりと訓練を行ってきた。古参——というほどでもないが——も新参もぺトラを筆頭に力を蓄えていた。
その矢先の出来事だ。
「…もう一度仰って頂いても宜しいですか？」
ぺトラは自分に告げられている事実を飲み込むことが出来なかった。
「だから、次の壁外調査で俺と同行しろと言っている」
そう、次の壁外調査でリヴァイに同行するように命令されたのだ。
「す、すみません…」
「何故謝る」
「いや…命令を一度で聞けずに…同じことを二度も言わせてしまって…正直、信じられなくて」
「お前の実力は先遣隊の時に実証済みだ。こちらとしても頼みたい」
『頼みたい』、その言葉がペトラの頭の中を駆け巡る。
憧れの人に信用されている。
必要とされている。
それだけで、天にも昇りそうだ。頑張ってきた甲斐があったというものだ。
「何をにやけている」
「す、すみません」
「だから、何故謝る」
「あ、すみま…」
どうもこの人の前ではオルオの時のような調子は出ないようだ。せめて、憧れの、リヴァイの前で位、しっかりとした兵士でいたかった。と少ししょげていた時だった。
「フッ…」
——今、ちょっと笑った…？
これでもかという程まばたきをしてみた。が、書類に向かうリヴァイの表情に笑みは見られない。いつもの少し仏頂面だ。
——気のせいかな…
「話を戻す。次の壁外調査で俺に同行し、奇行種を討伐する。前回の調査で気になる事案が出てきたらしくてな。それを確認しに行く。三日後だ」
確認しておけと書類を渡された。ぺトラは敬礼をし、リヴァイの部屋を後にした。
「…」
第33回壁外調査の概要はこうだ。
前回の第32回壁外調査中、巨大樹の森を調査中、休憩中の一人の兵士が奇妙な「声」を聞いたという。仲間の叫び声じゃないかと思ったその兵士は巨大樹の森の奥へと向かった。だがそこにいたのは兵士ではなく一体の巨人だったというのだ。単独行動を禁じられていた班だったためその兵士はすぐにその場を去ったのだという。これがもし「巨人から発されたもの」だとしたら今後の調査が進展する可能性があるとして、急遽壁外調査を行うことにした。前回の調査で大きな成果を上げられず上からまた言われているとの事。なんとしても成果を上げたいらしい。奇行種の可能性もあるとして、リヴァイを筆頭に班を形成してほしいとのことだった。それで招集されたのがペトラとその声らしきものを聞いた兵士を含む4名だった。
「——なお招集された兵士の班員はこの調査中、全員巨大樹の森の警戒に配置する…か」
はじめは嬉しかったが、ぺトラとしてはやっと始動できる新しい班の初陣が『警戒』になってしまった事は少し残念だった。
「そんな事言ってられないわね。皆に伝えておかなきゃ」
書類を閉じ、眠りについた。
その夜、彼女は夢を見た。クララと亡くなったカウツ班の兵士たちが前を急いで飛んでいる。必死に追いつこうとしてもその差は縮まるどころか広がるばかりだった。遂に視界に捉えられなくなったとき、ガスが切れて地面に落ちてしまった。痛む体を引きずり、前へと進む。そこへ、誰かがやってきた。樹の上から声がした。見上げてみると太陽の逆光で顔が窺えないが、助けに来てくれたらしい。颯爽と彼女の体を持ち上げた。ありがとうございます、そう告げて顔を見ようとした時に目が覚めた。
何の暗示なのか、誰だったのかが気になりすぎて、その日班員に伝えるのを忘れてしまい、先輩兵士に文句を言われてしまった。
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