二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- GODEATER2—フューチャー・オブ・ブラッド—
- 日時: 2016/04/03 00:43
- 名前: 諸星銀佳 (ID: CN5DwmtD)
こんにちは。諸星です。
もう此処には長いことお世話になっているのですが長続きせず…すべて途中で投げ打ってしまいました。
ですが、最近出会ったゲーム…「GODEATER2」をやって、また書きたくなってしまいました。
なんとか、頑張っていきたいと思いますので、暖かい目で見て頂けたら幸いで御座います。
※本作は「GODEATER2」を基にしたフィクションです。
※ストーリーをクリアしていない方は読まないことを推奨致します。
※ジュリウス×主人公♀の要素を含ませることを考えているので、苦手な方はブラウザバックをお願いします。
—登場人物—
『特殊隊ブラッド』
・神野マキ(カミノマキ)…フェンリル極致化技術開発局ブラッド隊隊長。男勝りな極東出身のゴッドイーター。血の力『喚起』の持ち主。今も、仲間を失ったことは自分の所為だと思っている。
神器:ショートブレード・全ての銃身(ヘアスタイル→3,アクセサリ→なし,共通アクセサリ→13:色2,ヘアカラー→銀,フェイス→8,アイカラー→11,ボイス→10)
・ジュリウス・ヴィスコンティ…ブラッド元隊長。現在は「螺旋の樹」の創造主として一部の市民から信仰の対象となっている。表向きは故人扱いだが、彼の特異点がコアとして樹の内部に存在することは間違いない。しかし詳細は一切不明。
・香月ナナ(コウヅキナナ)…ブラッド所属。マキとは同期。血の力『誘引』の持ち主。明るくて大食い。
・シエル・アランソン…ブラッド隊副隊長。血の力『直覚』の持ち主。冷静で戦術理論へ造詣が深い。
・ギルバート・マクレイン…ブラッド所属。血の力『鼓吹』の持ち主。ブラッドの兄貴分的存在。
・ロミオ・レオーニ…元ブラッド隊員。2074年、サテライト拠点の防衛任務にてKIA(作戦行動中死亡)と認定。仲間とのコミュニケーションのとり方が上手く、フライアや極東では頼りにされていた。
『極東支部ゴッドイーター』
・アリサ・イリーニチナ・アミエーラ
・藤木コウタ(フジキコウタ)
・ソーマ・シックザール
・エリナ・デア=フォーゲルヴァイデ
・台場カノン(ダイバカノン)
・雨宮リンドウ(アマミヤリンドウ)
・真壁ハルオミ(マカベハルオミ)
・エミール・フォン・シュトラスブルク
・キグルミ
『その他の登場人物』
・葦原ユノ(アシハラユノ)
・レア・クラウディウス
・ラケル・クラウディウス
・竹田ヒバリ(タケダヒバリ)
・フラン=フランソワ=フランチェスカ・ド・ブルゴーニュ
・ペイラー・榊(ペイラーサカキ) andmore…。
※極東ゴッドイーター・その他の登場人物については登場しない可能性があります。詳細プロフィールはGODEATER2の公式ホームページをご覧下さい。また、今後オリジナルキャラが登場する可能性があります。
序章 >>3
第一章 夢か現か >>4-9
第二章 決意と覚悟 >>10-17
第三章 忍び寄る悪夢 >>18-30
第四章 束の間の安息 >>31 >>33-39
第五章 変わる世界 >>40-48
番外編 副隊長の見た夢 >>32
- Re: GODEATER2—フューチャー・オブ・ブラッド— ( No.2 )
- 日時: 2014/06/28 22:04
- 名前: 諸星銀佳 (ID: FAB9TxkG)
話の大まかなことは決めてはいますが、ディティールは現在は未定ですので、『やる』とは断定できません。ごめんなさい…(やるとしたら『番外編』で登場…?)でも、ご要望が多数あればやりたいと思います!
そのときはちゃんと発表いたします!
- Re: GODEATER2—フューチャー・オブ・ブラッド— ( No.3 )
- 日時: 2015/09/22 16:05
- 名前: 諸星銀佳 (ID: .xQ.zB/T)
§序章§
——荒ぶる神々の、新たな神話。
現代からそう遠くない時代。世界は神によって食い荒されていた。2050年代初頭、北欧地域にて旧来の生物の組成とは全く異なる生命体「オラクル細胞」が発見される。その後爆発的に発生・増殖していったオラクル細胞は、地球上のありとあらゆる対象を「捕食」しながら急激な進化を遂げ、凶暴な生命体として多様に分化していった。
このオラクル細胞の集合体からなる脅威を、極東の神話に語られる八百万の神から、人は「アラガミ」と呼んだ。
既存の兵器はアラガミの捕食効果の前に一切無効であり、ヒトは徐々にアラガミにその生息圏を奪われていく。
そんな折、生化学企業「フェンリル」によって、オラクル細胞を埋め込んだ生体兵器「神機」が開発され、それを操る特殊部隊、通称「ゴッドイーター」が編成される。
そして、西暦2074年。人類がアラガミとの一進一退の攻防を続ける中、極東は新たな脅威に晒されていた。
凶悪な新種のアラガミ「感応種」の登場。「赤い雨」、そして人々を犯す謎の病魔「黒蛛病」の発生。
時同じくして新設された特殊隊「ブラッド」——ブラッドは移動要塞「フライア」を拠点にしながら極東に迫る危機に立ち向かうべく活動を始める。
舞台は「螺旋の樹」の発生から数ヵ月後。
ブラッドは、他の物質やオラクルを捕喰せず長期間生きてきた、極めて初期の状態に近い「レトロオラクル細胞」を持つアラガミ「キュウビ」とその変異種「マガツキュウビ」の討伐や、防衛班とのアラガミ掃討作戦など、様々な任務に赴いていた。それも全て終わり、一段落といったところだ。だが、未だにアラガミの脅威が去ったわけではない。ブラッドを含め、ゴッドイーターたちは今もアラガミと戦っていた——。
- Re: GODEATER2—フューチャー・オブ・ブラッド— ( No.4 )
- 日時: 2015/09/22 16:30
- 名前: 諸星銀佳 (ID: .xQ.zB/T)
§第一章 夢か現か§
——もし、過去に戻れたら……と、考えたことはあるだろうか。
人生をやり直して、失敗を無かった事にしたい。先祖に会いに行きたい…色々あるだろう。少なくとも、かつては人が住んでいたであろう廃墟を憂い、佇む少女——神野マキはその考えの持ち主だった。
数ヶ月前。人類は絶滅の危機を迎えようとしていた。人間による人類の終末計画。それは、かつて共に戦っていた仲間が起こしたものだった。
彼女が所属する特殊部隊・ブラッドと、極東の仲間たちの協力のおかげで世界は救われた。だが今も、彼女の手には共に戦った彼——かつての自分の上司で大切な仲間——を貫いた感覚が残ったままだった。
「おーい!帰るぞー!」
「あぁ。今行く」
遠くから元気に声を発するのは、フェンリル極東支部所属で独立支援部隊「クレイドル」の一員かつ第一部隊隊長である藤木コウタだ。彼はとても明るくムードメーカー的存在であり、マキが落ち込んでいる時もよく励ましてくれていたのだ。それゆえ、彼はマキの精神的支えになっている。
「先輩大丈夫?最近出ずっぱりだし、休めてないんじゃないの?」
傍で共にコウタのところへ向かうのは、同じく極東支部第一部隊の神機使い、エリナ・デア=フォーゲルヴァイデだ。彼女は若干14歳にして戦場へ赴いている。少し前までは高飛車な態度を取り、マキのことをあまり快く思っていなかったが、共に戦ううちに心境の変化があったらしい、今では「先輩」と頼りにし、目を見張るほどのスピードで腕を上げている。マキもまた、そんな彼女を頼りにしている。
「神機使いに休みなんてものはないだろう。皆が頑張っているのに私だけ休めるものか。それに、今日の任務はそこまで強敵でもなかった」
「くぅぅぅ〜!さっすがブラッドの隊長さんは言うことが違うねぇ」
着いた先、コウタの元には真壁ハルオミがいた。彼は極東支部第四部隊の隊長で、極東では一、二を争うベテランである。少々ナンパ癖があり、査問会に呼ばれた経歴もあるのだが、彼の過去は意外と重い——この話は後に語ることになるだろう——しかし、そんな過去とは裏腹に彼の周りや話題はいつも賑やかなものだった。
「ハルさん、そうやってお世辞を言っても何もでないですよ」
「いやいやぁ、本音だぞ?いつ見てもあんたの戦い方は参考になるねぇ」
「あいかわらずッスね、ハルさん……お、ヘリが着いたってさ。さっさと帰ろうぜ!」
コウタは皆を先導するように無線で入った場所へ向かう。それに続くように3人もコウタを追った。
「コウタ、ハルオミ、エリナ…無事に帰還した」
「お疲れ様です。このくらいの任務ならあっという間にこなしちゃいますね」
極東のベテランオペレーター、竹田ヒバリが笑顔で出迎える。彼女はまだ20歳だが、既にベテランの域であり、その冷静なオペレーションは神機使いの間でも評判だ。
「そんなことない。皆のおかげだ」
「ふふっ。ゆっくり休んでくださいね」
ヒバリは軽く一礼すると、マキもそれに応える。
報告を終えたマキはラウンジへと向かった。そこには先程ミッションを共にしたハルオミとエリナがいた。
「おう、お疲れさん。一杯やってかない?」
コップを傾けるようなジェスチャーでハルオミは誘う。エリナもまたこっちへ来て、と言わんばかりにブンブンと手を動かす。
「ハルさんの奢りでいいなら」
そう言って二人の間に座った。
「おうよ」
二人と今日の任務の反省会と称しながら、エリナのいつものエミールへの愚痴を聞かされた。ハルオミは部下である誤射姫——台場カノンの事である——の誤射率が最近減ってきたと、少し嬉しそうに話していた。賑やかな反省会になる筈だったが、マキがエリナへ話しかけようとした時に放送が入った。
『ブラッド隊長神野マキさん。至急エントランスに来て下さい』
放送を聞いたマキはグラスの中身を一気に飲み干し立ち上がる。始まったばかりの反省会はお開きになりそうだった。
「悪い…この埋め合わせは必ずする」
そう言い残し、足早にラウンジを去って行った。
「なんだろ。先輩が呼び出されるのはいつものことだけど…気になる」
「俺たちもちょっくら行ってみるか」
二人もマキに倣いグラスを空にし、その後を追った。
「どうした、ヒバリ」
「あ…それがですね、アラガミの大群の反応を確認したらしいのです」
「大群?どれくらいだ」
ヒバリはモニターを慣れた手つきで操作し、アラガミの詳細を割り出してマキに告げる。
「現在確認できるのはオウガテイルが4体とウコンバサラが2体です。しかし、近くにサリエルとコンゴウの反応もあります」
「問題ない。行こう。場所は?」
「それが…」
急にヒバリが黙り込んだ。
「どうした?」
「その、場所なんですが…『螺旋の樹』の周辺なのです」
「螺旋の…樹?」
——螺旋の樹。数ヶ月前の記憶とあの感覚——彼を貫いた感覚——が鮮明に蘇ってくる。
「ジュリウス…」
無意識に呟いていた。
ヒバリは彼女の名を呼ぶ。一回目は反応がなかったが、二回目でマキは我に返り、話を続けるようヒバリに催促した。ヒバリは申し訳なさそうに続けた。
「現在、ミッションに向かえる人が少ないのです。ブラッドの皆さんはまだミッション中ですし、他の神機使いもサテライト拠点防衛任務の応援へ向かってしまっています…先程帰ってきたばかりで申し訳ないのですが…」
宜しいですか、という表情を向ける。「私一人で行こう」そう言おうと思った時。
「私たちも行きます!先輩!」
「エリナ…でもさっき任務に行ったばかりで休んだ方が」
「それはあんたも一緒だろ?『神機使いに休みはない』らしいからな」
「ハルさん…」
「俺も行くぜー」
上の方から声がした。声の主を見やると、その主は階段を下りてきてマキの隣で止まった。
彼は雨宮リンドウ。極東支部最古参のゴッドイーターだ。過去に色々とあったそうだが、それを乗り越え、同じ部隊に所属していた現在の奥さんと結婚。子供がいながらも、第一線で活躍している。
「なんか大変そうだったからなぁ。手伝わない訳には行かないだろ」
「でも、リンドウさん書類が溜まってるってアリサが愚痴ってましたけど」
「あぁ、あんなもん良いんだよ。期限過ぎたって。紙の上の事より人命最優先、だろ?」
本人曰くデスクワークより戦場に赴くほうが性に合っているらしいが、それはそれ、これはこれである。「またアリサに怒られる」と大げさにガクガク震えた。マキはアリサの「ドン引きです」というお決まりのセリフが聞こえた気がした。
「ではブラッド隊長とリンドウさん、ハルさん、エリナさんで緊急任務を受注致します。ご武運を」
「了解」
マキが敬礼すると、三人もそれに続いた。
こうして、螺旋の樹に群がるアラガミ掃討作戦に向かった。
- Re: GODEATER2—フューチャー・オブ・ブラッド— ( No.5 )
- 日時: 2015/09/22 16:47
- 名前: 諸星銀佳 (ID: .xQ.zB/T)
——螺旋の樹。
マキは真っ直ぐとそれを見つめていた。
「先輩…?」
いつの間にか険しい顔をしていたらしい。エリナに心配された。
「あ、あぁ…ごめん。大丈夫だ」
ぽんぽん、と頭を軽く叩く。
「ちょ、子ども扱いしないでよ!」
相変わらずのエリナの言動に思わず微笑む。
「そんじゃ、行くかぁ。隊長さん」
ハルオミの言葉に軽く頷き、オペレーションルームへ無線を入れる。
「こちらブラッド1。これから作戦エリアに突入する。問題はないか」
無線の音が耳を掠めると、ヒバリの声が返ってくる。
『はい。作戦エリア内に問題はありません。張り切っていきましょう!』
「よし、行くぞ!」
リンドウの掛け声で全員が作戦エリアに飛び降りた。
「貫くっ!」
エリナは作戦エリアに降り立つと、すぐさまオウガテイルの相手に取り掛かる。
「先輩!雑魚は任せておいて。ウコンバサラをお願いしますっ!」
「了解。ハルさん、エリナをお願いします」
「あいよー」
ハルオミの了承を得ると、リンドウに目で合図をし、奥へと進む。
作戦エリアは『神機兵保管庫』。大きく開けたところを中心に小さなエリアが二つある。とは言ったものの、他の作戦エリアに比べたらエイジスの次に狭いだろう。ここでの乱戦は非常に危険である。アラガミを分断し、各個撃破するのが得策だろう。
『作戦エリアにアラガミが侵入。侵入地点送ります』
「敵さんのお出ましだぜ!気ィ締めてけよ!」
送られてきた位置情報どおり、左右両方から討伐対象のウコンバサラが出てくる。鰐のような風貌だが、背中にあるタービンがそれとは違うことを物語っている。
「はぁぁぁぁあっ!」
一気に間合いを詰め斬りかかるが、硬い。その為、頭や尻尾の結合崩壊を狙う他はない。だが、そこを狙うと突進や尻尾払いに当たりかねない。故に体の横にへばり付きながら戦うのがベストだ。それと厄介なのは雷撃である。別段苦戦する敵ではないので、倒すことばかりに夢中になっていると、予備動作を見逃して雷撃を受けることもある。十分に注意をしなくてはならない。
マキはウコンバサラの横にしっかりと付きながら斬りかかる。マキの神機はショートブレード。リーチも短く、破砕攻撃は向いていないが、軽さを生かした空中攻撃や、連続攻撃に特化している。
『アラガミに結合崩壊発生!』
「いい感じ!」
雑魚を蹴散らし終えたエリナが援護に入った。ハルオミもリンドウの補佐に入っている。
その後も問題なく進み、無事にミッションが完了した。
『作戦エリア内にアラガミの反応はありません。予定より早く終わりましたね。ですが、近くにアラガミの反応がありますので、早急に帰還することをお勧めします』
「サリエルとコンゴウだな…了解。すぐに戻る」
全員が帰還のヘリを待っていた時だった。無事にミッションを終えてなんとなく和やかムードだった雰囲気を一瞬で打ち砕く出来事が起きる。
『作戦エリアにアラガミが侵入!?来ます!』
「新手!?」
後ろを見ると、来る前にヒバリから注意をしとけと説明を受けていた、サリエルでもコンゴウでもない大型アラガミが姿を現した。
巨大な尾針と盾を持った騎士のような蠍に似たアラガミ。
「ホルグ・カムラン…」
エリナがスピアを構えなおしたとき、右手から咆哮が聞こえた。目を向けると、赤い体毛と岩のような装甲を持った狼のようなアラガミがこちらへ向かってきた。
「ガルムもか!?へへっ…今日は氷のバレットを持ってきてねぇぜ」
ハルオミは冷や汗をかきながら呟く。
「いやいや、まだ来るみたいよ?」
リンドウが左の方を指差す。見ると、鎧のような漆黒の体に邪悪な人間の顔を持った『ディアウス・ピター』も登場。
三方向を囲まれた4人だったが、マキは冷静さを失わなかった。
「大丈夫だ。数的にはこちらが有利だ。焦るな。いつも通りだ」
全員が背中合わせになった時だった。
「…?」
マキの視線の先、壊れた神機兵保管庫。螺旋の樹の方に影が見えた。それは徐々に大きくなり、作戦エリアに降り立った。マキはその姿に思わず息を呑んだ。
「おいヒバリ…こんなに来るなんて聞いてないぞ」
無線でヒバリに文句を言った。だが、応答がない。
「チッ…『感応現象』で無線がやられたか」
「感応…?まさか」
エリナの顔がみるみる蒼くなる。
「あぁ…あの赤い触手、白い体毛。間違いない。『マルドゥーク』だ」
そしてアラガミに四方を囲まれた4人は睨み合いを続ける。
「ははっ、俺らにもヤキが回ったもんだな」
「こんな過酷ミッションだなんて聞いてないけどねぇ…」
「大丈夫、だよね?」
「…いいか3人とも」
マキは目の前のマルドゥークから目を逸らさずに呟く。
「私が閃光弾を使ったら全員で逃げる。流石に大型種4体…うち感応種一体は危険だ。いいな」
閃光弾——スタングレネード——は、僅かな時間だが、アラガミを行動不能にすることができる。活性化していない今ならどのアラガミにも有効に機能するはずだ。てっきり戦うと思っていた3人は目を見開く。だが、何故マキがその作戦を取るのかすぐに理解できた。
遠くからヘリの音がしたからだ。
「チャンスは一度。いいか」
全員が頷く。
マキがカウントダウンを始める。それと同時に各々が戦闘態勢——と見せかけた逃げの姿勢——を取った。
「くらえっっ!!」
気がつくと、マキは仰向けになって寝ていた。それはベッドの上でもソファーの上でもない。土の上でだった。体を動かそうと思ったが、全身に痛みが走る。それでもなんとかうつ伏せになり、かすかに開ける目で状況を把握しようと試みた。血だらけの手に神機は握られていない。視界の先に映るのは、アラガミの群れだった。遠くから戦闘音がする。どうやら離脱に失敗したのだと今になって気付く。
「そ、うか…」
マキはスタングレネードで敵を怯ませ、それを合図に全員で一目散に来た道を逃げようとした。だが、出口から一番遠かったマキが、その出口の一番近いところにいたホルグ・カムランの餌食になった。尻尾でなぎ払われ、元いた場所に押し戻されると、ディアウス・ピターの電撃を諸に喰らう。一瞬動けなくなったところを、マルドゥークは見逃さなかったようだ。右手で思い切りなぎ払われ、エリア外に吹っ飛ばされたようだ。
「それでも、死なない、とは…流石、神機使いと、言った、ところだな…」
もう一度仰向けになろうとするが、どうやらそんな体力も気力も残っていなかったらしい。
「ここまで、か…みんな…ごめ…」
——私はまた、何も護れなかった。仲間を、また失うのか…
フラッシュバックするように、思い出したくない出来事が次々に頭の中を駆け巡る。
「い、や…だ。ジュリウス…」
マキは螺旋の樹の中にいるその人の名前を呼び、縋るように顔を向けた。次第に彼女の周りにはアラガミが集合していく。
「約束、護れなかった…」
涙が零れ、痛む手を螺旋の樹に翳した時だった。
——白い光が、彼女の視界を支配した。
- Re: GODEATER2—フューチャー・オブ・ブラッド— ( No.6 )
- 日時: 2015/09/25 12:56
- 名前: 諸星銀佳 (ID: .xQ.zB/T)
目を開くと、懐かしい風景が目に入った。
——フライアだ…
フェンリル極致化技術開発局、通称「フライア」。その姿は「動く要塞」とも言われる巨大な箱舟のようだったのを覚えている。
——夢を、見ているのか。
フライアは現在運行を中止しており、立ち入ることが出来るのは一週間に一回あるかないかだ。
マキは起き上がろうとした。だが、全身に激痛が走る。
「うっ…」
——ん?今…やたらと自分の声が鮮明だった気が…
気のせいだと決め付け、マキはもう一度起き上がろうとし試みる。今度は何とか起き上がれたが、声を堪えることは出来なかったようだ。
「うっ…うぅ」
気のせいだと言い聞かせ、周りを見渡してみた。フライアの病室だ。それは間違いない。だが、これは夢だと分かる。何故か。先程も言った通り、現在フライアは運航中止中。故に病室も閉鎖されている。使える筈がない。
——そもそも、何故夢を見ているんだ?
マキは自分に起きた事を思い出してみた。
——そうか、私は先のミッションで…病室に運ばれたのか。でも何故アナグラじゃないんだ?
考えれば考えるほど頭が混乱してきた。他の神機使いが病室を使っていて自分はこちらへ仕方なく回されたのだろうと決め付けて、自分自身を納得させる。とりあえず外に出ようと、自分に刺さっている点滴を持って外に出た。
——ミッションで怪我して、フライアの病室にいる夢を見ているのか。そうか。そういうことか。
マキは最近「これは夢」とわかるような夢をよく見ていたのだ。それはある筈も、叶う筈もないことが目の前で繰り広げられているから。例えば——ジュリウスやロミオと戦っている夢。そして「これは夢」と気付くと暫くしないうちに目が覚めるのだ。そのうち目が覚める。そう思った。
マキを乗せたエレベーターはエントランスへ到着した。
「…は?」
そこには、警備員がいつもの倍いた。もう一度言う。フライアは現在運行停止中だ。数人の警備で事足りるはずなのだ。監視すべき人も、モノも何もないのに。マキは痛む体を無理やり引き摺り、ソファーへと腰をかける。徐に上の方を見たときだった。
「…フラン?」
オペレータールームには元フライアのオペレーターにして、現在は極東のオペレーションを担当しているフラン=フランソワ=フランチェスカ・ド・ブルゴーニュがいた。
「なんで…」
「あーっ!副隊長!安静にしてなきゃだめだってばぁ!」
「ふ、副隊長?」
懐かしい呼び方をされ、思わず素っ頓狂な声を上げながら、呼ばれた方へ顔を向けると、エレベーターから見慣れた面々が降りてきた。
「お帰り…ミッション、終わったんだな」
「…何を仰っているのですか副隊長。私たちは一緒にミッションに行ったではないですか」
今は報告を終えたところですよ、とシエル——シエル・アランソンが大真面目な顔をして言った。
「シエルの方こそ…何言ってるんだ?お前たちはすでに朝、ミッションに行ったってヒバリが…大体、なんだ副隊長って。副隊長はシエル、お前——」
「頭でも打ったのか?」
マキの話を遮るようにギル——ギルバート・マクレインはしゃがんでマキに目線を合わせて訝しむ。
「まぁ、この怪我だから頭くらい打ってても無理ないな」
「副隊長、結構吹っ飛んじゃってたからねー。まっさか、ラーヴァナな大群を一人で相手するとは思わなかったからさー」
ナナ——香月ナナも心配そうにマキを見つめる。マキは若干声を震わせ、後ずさりしながら言う。
「ら、ラーヴァナ…?揃いも揃って何言ってるんだ、お前ら…頭が混乱してきた…」
マキは頭を抱え込む。その姿に勘違いしたらしい。ギルは「やっぱりな」と言って若干呆れたように続けた。
「副隊長、安静にしてた方がいい。頭打ったならちょっと心配だ」
「あれ?皆揃ってどうしたんだよ」
エレベーターが開く音と同時に懐かしい声がした。
——そんな、筈は。
「先輩ー。副隊長が病室から出てきちゃったんだよー。病室に連れてってあげてよー」
「お願いしてもいいですか。私たちはまたミッションに行かなくてはならないので——ロミオ」
ニット帽にオーバーオール。服のあちらこちらに缶バッチ。その姿にマキは目を瞠った。
「なんで…」
ロミオ・レオーニ。サテライト拠点の防衛任務にてKIA(作戦行動中死亡)と認定された筈の彼が目の前にいた。
夢というにはあまりにも生々しかった。
「任せとけって!」
「では、お願いします」
「あ、ちょっとま…」
呼び止めようとしたが、ブラッドの面々はそそくさと行ってしまった。伸ばした手は空を掴んだだけだった。
「んだよ副隊長ー。俺だけじゃ不満かぁ?」
「…これは、夢。ロミオが…私の目の前にいるなんて…」
マキが小さく呟き、自身の手をロミオの手に重ねてみた。
「ちょっ、おまっ…」
突然の行動に赤面するロミオ。だが振り払うこともなく、受け容れていた。
「…温かい」
奥からこみ上げてくるものがあった。夢だとしても、彼に会えたのは嬉しかった。
「何で泣くんだよ?俺なんかした!?」
「しただろう!?勝手に逝っちゃって…」
「勝手に殺すなよ!」
「私が止めればよかったんだ…ごめん。夢でも、また会えてよかった、ロミオ…」
さっぱり訳が分からないといった顔をするロミオ。うーんと唸る。
「…副隊長、変な夢でも見たのか?」
「今見てるんだよ、きっと…」
その言葉を聞いて何か思いついたのか、少々悪戯な笑みを浮かべると、マキの頬を抓った。
「いたっ、いたたたたたっ!何するんだ!!」
「夢じゃねーだろ?ちゃんと起きたか?」
確かに、痛かった。古典的なやり方だが、夢かどうかを確認するのにこれよりいい方法は知らない。抓られた頬はヒリヒリと痛む。
痛みも伴う夢。そんなものあるのか。少なくともマキは、体験したことがなかった。
「無理しすぎなんだよ副隊長ー。俺は一緒にミッションに行かなかったけどさ、満身創痍で帰ってきたのを見てビックリしたんだぜ?」
「夢じゃない…?じゃあ、この状況はどうやって説明するんだ?」
「う〜ん…何を言いたいのか俺にはさっぱりわからねぇよー…あ!今馬鹿だなって思ったろ!…まぁ、さ、とりあえず落ち着くまで庭園にでも行ってきなよ」
言われるがままにエレベーターまで連れて行かれ、庭園に着いた。
「じゃあ、俺戻るから。あんまり無理すんなよ?」
ロミオはそう告げると、頭の後ろで手を組んで口笛を吹きながら去っていった。記憶の中に今も鮮明に残る後ろ姿で。
いつもと変わらない景色に内心ほっとする。相変わらず綺麗な場所だと思う。あの事件から、何度かフライアには立ち寄っては此処に来てロミオの墓参りに来ていた。だが、その墓参りの相手であるロミオは自分の目の前に現れた。ある筈の墓石の場所へ目を凝らしてみても、それらしき姿はない。
——もう一度整理しなおそう。
点滴を引き摺り、記憶を辿りながら、歩を進める。すると、木の下に人影が見えた。影はこちらに気付いたみたいで、動き出した。
「もう動いて平気なのか?」
徐々にその影は大きくなって、マキの見慣れた姿へ。
「あまり無理をするな」
貴族を彷彿とさせる服装に整った目鼻立ち。頭頂部で結い上げた金髪。長い下睫毛。
「じゅ…ジュリウス…」
誰よりも会いたいと願った、その人だった。
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