二次創作小説(映像)※倉庫ログ

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GODEATER2—フューチャー・オブ・ブラッド—
日時: 2016/04/03 00:43
名前: 諸星銀佳 (ID: CN5DwmtD)

こんにちは。諸星です。

もう此処には長いことお世話になっているのですが長続きせず…すべて途中で投げ打ってしまいました。
ですが、最近出会ったゲーム…「GODEATER2」をやって、また書きたくなってしまいました。

なんとか、頑張っていきたいと思いますので、暖かい目で見て頂けたら幸いで御座います。

※本作は「GODEATER2」を基にしたフィクションです。
※ストーリーをクリアしていない方は読まないことを推奨致します。
※ジュリウス×主人公♀の要素を含ませることを考えているので、苦手な方はブラウザバックをお願いします。

—登場人物—
『特殊隊ブラッド』
・神野マキ(カミノマキ)…フェンリル極致化技術開発局ブラッド隊隊長。男勝りな極東出身のゴッドイーター。血の力『喚起』の持ち主。今も、仲間を失ったことは自分の所為だと思っている。
神器:ショートブレード・全ての銃身(ヘアスタイル→3,アクセサリ→なし,共通アクセサリ→13:色2,ヘアカラー→銀,フェイス→8,アイカラー→11,ボイス→10)
・ジュリウス・ヴィスコンティ…ブラッド元隊長。現在は「螺旋の樹」の創造主として一部の市民から信仰の対象となっている。表向きは故人扱いだが、彼の特異点がコアとして樹の内部に存在することは間違いない。しかし詳細は一切不明。
・香月ナナ(コウヅキナナ)…ブラッド所属。マキとは同期。血の力『誘引』の持ち主。明るくて大食い。
・シエル・アランソン…ブラッド隊副隊長。血の力『直覚』の持ち主。冷静で戦術理論へ造詣が深い。
・ギルバート・マクレイン…ブラッド所属。血の力『鼓吹』の持ち主。ブラッドの兄貴分的存在。
・ロミオ・レオーニ…元ブラッド隊員。2074年、サテライト拠点の防衛任務にてKIA(作戦行動中死亡)と認定。仲間とのコミュニケーションのとり方が上手く、フライアや極東では頼りにされていた。

『極東支部ゴッドイーター』
・アリサ・イリーニチナ・アミエーラ
・藤木コウタ(フジキコウタ)
・ソーマ・シックザール
・エリナ・デア=フォーゲルヴァイデ
・台場カノン(ダイバカノン)
・雨宮リンドウ(アマミヤリンドウ)
・真壁ハルオミ(マカベハルオミ)
・エミール・フォン・シュトラスブルク
・キグルミ

『その他の登場人物』
・葦原ユノ(アシハラユノ)
・レア・クラウディウス
・ラケル・クラウディウス
・竹田ヒバリ(タケダヒバリ)
・フラン=フランソワ=フランチェスカ・ド・ブルゴーニュ
・ペイラー・榊(ペイラーサカキ) andmore…。

※極東ゴッドイーター・その他の登場人物については登場しない可能性があります。詳細プロフィールはGODEATER2の公式ホームページをご覧下さい。また、今後オリジナルキャラが登場する可能性があります。

序章 >>3
第一章 夢か現か >>4-9
第二章 決意と覚悟 >>10-17
第三章 忍び寄る悪夢 >>18-30
第四章 束の間の安息 >>31 >>33-39 
第五章 変わる世界 >>40-48

番外編 副隊長の見た夢 >>32
 

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Re: GODEATER2—フューチャー・オブ・ブラッド— ( No.22 )
日時: 2014/09/18 18:01
名前: 諸星銀佳 (ID: JnkKI7QF)


だいぶ遅くなったけど…

GODEATER2 RAGEBURST発売決定おめでとうございます!
そして、GODEATERアニメ化、おめでとうございます!

ゲームの方はジュリウスが帰ってきそうな雰囲気でとても嬉しいです。
アニメの方はあのFateZeroを作っている会社が製作するんだそうです。アクションシーンに期待です。

この小説も、ゲームとはまた違った方向で楽しんで頂けたらと思います。全力で書き進めてまいりたいと思いますので、今後とも応援の程、よろしくお願い致します。

Re: GODEATER2—フューチャー・オブ・ブラッド— ( No.23 )
日時: 2014/09/20 21:59
名前: 諸星銀佳 (ID: JnkKI7QF)

ミッションの受注をすると、マキのみがラケルから一時フライアへの帰還命令が下された。どんな内容で呼び戻されるかは覚えている。人の為に動いたつもりが、まさか仲間を殺す羽目になるとはあの時の自分は思ってもいなかったが。しかし今回は、ラケルの指示の下動きつつ、神機兵が止まってしまった原因を突き止めることが出来る。見つかってしまえば殺されてしまう——かも知れないが。
つまり、ハイリスク・ハイリターンと言う訳だ。
鮮やかな手つきでミッションをこなし、共に戦った仲間と別れ一人フライアへと足を運ぶ。その様子を、遠くからジュリウスが一人見つめていた。
「隊長、どうかしましたか」
シエルが心配そうに声を掛けた。なんでもないと告げ、仲間を先導するかのように足早にヘリへと向かいながら、先程のやり取りを思い出していた。

「——彼女の状況を逐一伝えて欲しい?」
ヒバリは驚きを隠せないといった表情だ。
「そういうと色々語弊があるんですが…」
ジュリウスはマキが何かを隠していると踏み、ヒバリに協力を仰いだ。彼女は、一人だけフライアに呼び出された為暫くアナグラには戻ってこない。すなわち、彼女が何をしようとしているのかを知るには、フライアにいる誰かにも協力をしてもらわないといけない。そこで、ヒバリの出番なのだ。
「フランさんにも…ですか?」
「私情で回線を使うのは申し訳ないと思うのですが…ここ最近の副隊長はどこかおかしい。我々に何も言わずに一人で何かをしようとしています。本来は一人でやるべきなのでしょうが、生憎彼女はフライアに行ってしまった。極東支部預かりとなっている我々がフライアに特別な用も無く立ち入るのは困難…そこで、ヒバリさんの力をお借りして、フランにもこのことを伝えて頂きたいのです。フランが副隊長の様子を知れる唯一の鍵…ですから」
ヒバリは最初は浮ついた感情で頼んだことなのかと思った。タツミやハルオミといった所謂「たらし」——タツミがたらしとは少々言いすぎかも知れないが、少なくともヒバリはそう思う——ならば、こんなことをしてもおかしくないと思った。だが、目の前にいるジュリウスはそんな人には見えなかった。いかにも真面目な隊長タイプ。仲間のことを第一に思っている。そんな彼の真摯な態度に惹かれた。
「分かりました。ご協力します。回線はいつものとは違うもので行いますので、本部にはばれないと思います」
微笑ながら言った。
「ありがとうございます。では早速なのですが——」

「おかえりなさい……急に呼びつけて、ごめんなさいね。さっそく本題に入りましょう」
その頃、マキはフライアに到着していた。呼び出された内容は神機兵の運用を軌道に乗せること。その為にクジョウ博士の手伝いをして欲しいとの事だった。以前、神機兵の運用テストで背部に大きな損傷を負ったのだ。それ以来、運用テストは行っていない。
気乗りはしないが、これも彼らを救うためだ。二つ返事をし、部屋を後にした。
サリエル種のアラガミ細胞を取りに行くことになったマキは、一人ターミナルで戦闘準備を行っていた。その時、オペレーションルームから何やら会話が聞こえてくる。今は誰もミッション受注はしていないはずだ。何をしているのか耳を澄ませてみたが、こちらまでは聞こえない。マキはどうせ関係の無いこと、と諦めた。
「——マキさんの様子を伝えろ、ですか」
フランがマキの視線に気付き、小声で話し始めた。こんなことを頼んでくるとは思ってもいなかったが、通常の回線で入ってこなかったので業務連絡ではないと思っていた。予想は見事的中したようだ。
『ブラッド隊長直々のお願いです。よろしくお願いできますか』
話を一通り聞いたフランはどこか悪戯な表情をマキに向ける。
「それは気になりますね…分かりました。協力致します」

マキは淡々とミッションをこなしていく。仲間にはいつもと変わらない態度で接していたが、腹の中では何を考えているのかは分からなかった。ジュリウスはなるべくマキのミッションに同行し、何か掴めないものかと探っていた。
「副隊長」
「隊長…お疲れ様です」
表情はやはり何も変わらない。いつものマキだ。
「フライアで一人…何をしているんだ」
「あぁ…なんか神機兵の運用に向けての準備を頼まれました。その為にはアラガミ細胞が必要なんだそうです。あんなことがあってもまだ運用しようだなんて…馬鹿げてますけどね」
帰投準備を行いつつ、目的のものが手に入ったことを確認している。
「なら…俺も協力——」
「それは大丈夫です」
ジュリウスの言葉を遮るように言った。手伝ってくれるのは嬉しいが、自分がやっていることがバレてしまう危険がある。それだけは何としても避けたかった。
「それに、ブラッドが今簡単にフライアには入れない。頼まれたのは私だ。一人でも平気ですよ。ミッションには皆と行っているし、フランもいるし…寂しくないです」
こんなのすぐに終わらせるから、と笑顔を向けた。止めようと思ったが、そそくさと一人でフライア行きのヘリに乗ってしまった。

「今回も何も分からず仕舞い…か」
ジュリウスも神機を片付け、仲間の下へと向かった。

Re: GODEATER2—フューチャー・オブ・ブラッド— ( No.24 )
日時: 2014/09/29 21:49
名前: 諸星銀佳 (ID: JnkKI7QF)


その後もマキはラケルに言われたとおり、素材を集め続けた。ひたすら淡々と。暫くすると、マキはラケルから手紙を受け取った。
「クジョウ博士に渡していただけないでしょうか」

これだ。これなのだ。この手紙の所為なのだ。きっと。もともと神機兵の運用を持ちかけたのはラケルたちだった。その話が急にクジョウになっておかしいとは思っていたのだが。
「でも、人の手紙を相手よりも先に勝手に読むのは…」
気が引けたので、とりあえず渡してみることにした。ロビーに到着すると、手すりにその身を預けるようにしているクジョウがいた。彼のほうから声をかけてきた。
「いやー、ありがとう!貴方の協力のおかげで研究がはかどりましてねぇ!」
なんだか嬉しそうに話しているが、神機兵には元から全く興味が無い。それに、話している内容も殆ど理解できない。聞き流していた。だが、気になることがいくつかあったので、この際聞いてみることにした。
「なぜ無人タイプの神機兵を?」
待ってましたと言わんばかりに嬉々として話し始めた。長いのでまとめると——無人であれば死人は出ない、ということらしい。
——無人であったが故に死人が出たんだがな…マキはそんなことを思っていた。勿論、おくびにも出さず。変わらぬ体を装い、次の質問をする。
「レア博士と仲が悪いんですか?」
以前、口論になっているところを見たことがある。ラケルには信頼を寄せているようだが、レアにはそんな印象がなかった。クジョウは今度は予想外の質問だというような顔をして、少々言葉を詰まらせながら答える。——レアと対立する気はないが、立場上どうしてもそういう関係になってしまう、だそうだ。
——言い訳だな。マキは素直に思った。小声ではあったが確かに言っているのを聞いたからだ。

「レア博士の政治能力の高さには舌を巻きますよ……なのに、昔の戦車と変わらない設計思想の有人型開発に何を手間取っているのか……その辺が、限界なのですかねぇ。グレム局長の目はごまかせても、私の目はごまかせませんよ……」

と。マキは個人的な偏見で研究者にあまりさばさばした性格の持ち主はいないと思っている。クジョウはその典型であると思う。彼は一つのことにしつこくて、自分の方が良いと胸を張っている、と勝手に決め付ける。
バレない程度に小さくため息をついて最後の質問に移った。
「ブラッドについてどう思いますか?」
ラケルが手塩にかけて育てた「研究成果」である自分たちのことはどう思うのか。ラケルのことが恐らく好きであろう彼は、絶対にラケルの研究に対しては文句を言わないはずだ。どんな上辺の感想が出るのか、正直気になる。
案の定、ものの一番に褒め言葉が出た。また、レアのことは散々に言っていたのにも関わらず、ラケルのことはべた褒めである。その言葉を聞いて、思ったことが一つ。
——この弱みを、ラケルは利用した…とは考えられないだろうか。
一度同じ経験をしているので内容はなんとなく覚えている。話を熱心に聴くことよりも、その言葉の裏に隠れている真実を読み取ることが今なら出来る。
頭の中で今後の予定を組み立てていく。「あっ」と小さく声を出したかと思えば、本来の目的を忘れていた。手紙を渡すことである。クジョウは気が動転しているようだ。なんせ「思い人」からの手紙だから。暫くぶつぶつと何か呟いていたが、そこまで聞こうとは思わない。マキは本部より発注されていたミッションへ足を運んだ。

マキの背中を見送ると、フランはヒバリへ無線を入れる。
「ジュリウス隊長へ、お願いします」
画面の向こうのヒバリは小さく頷くと、フェードアウトして行った。暫くすると、ジュリウスがモニターに映る。
「隊長、マキさんがクジョウ博士となにか喋っていたようです。クジョウ博士の声は大きかったので大体把握できましたが、マキさんが何を質問したかは分かりません」
『分かった。聞こえた部分だけで良い。話してくれ』
フランは記憶をたどるように話している。ジュリウスはその内容から巻きの質問内容を仮定する。そして、何故そのようなことを聞くのかを考えていた。
『あ、あの…真剣に考えているところ申し訳ないのですが』
ヒバリが申し訳なさそうに言う。
『新型同士の『感応現象』を利用してマキさんが何をしているのか知ることは出来ないのでしょうか…』
一瞬の沈黙が流れる。ジュリウスは「その手があったか」というような顔をしたが、すぐに思い直したのか、いつもの表情に戻った。
『だが、それだと俺たちがやっていることも副隊長にひけらかしてしまうだろう。それでは意味が無い』
「では、今後もこのような形をとるということで宜しいですか?」
『あぁ、頼む』

小声でのやり取りを終え、フランは小さく溜息を吐いた。
「ジュリウス隊長もマキさんも回りくどいですねぇ。この際、私が仲介したほうが良いですかね…」
妙な笑みを浮かべ、オペレーター業務に戻っていった。

Re: GODEATER2—フューチャー・オブ・ブラッド— ( No.25 )
日時: 2014/10/08 00:56
名前: 諸星銀佳 (ID: JnkKI7QF)


マキがミッションを終え、帰路に着いている頃。フライアのラケルの研究室にクジョウが呼ばれていた。どうやらラケルが直々に呼び出したようである。何故呼び出したのかを問うと、ラケルはクジョウをお膳立てする。
「お見せしたいものがあるので、できれば、こちらの方にいらしていただけます?」
言われるがまま、ラケルの近くへ寄るクジョウ。パソコンのモニターを覗き込んだクジョウは驚きを隠せないといった表情を浮かべた。
「ハッ……これはっ!?神機兵の生体制御装置……?」
「さすがは、クジョウさんですわ!貴方が進めている自律制御装置のお役に立てればと思って……これも……」
「これは…私が追い求めていた答えそのもの……これは、ブラッドの偏食因子に何か関係が……?」
ラケルはその通りだという。ブラッドによる感応現象の教導効果と極東で得られた研究での成果だとか。
その時、ラケルが突然クジョウに手を重ねる。
「クジョウさん、これらの研究を引き継いでいただけますか?」
「引き継ぐも何も……こちらとしては願ったりかなったり……いや、しかし……」
そこで言葉を止めると、促すようにラケルはクジョウの言葉の最後を復唱する。クジョウは、ラケルの姉であるレアと自分は対立する立場にいるのに、何故自分に協力するのか、疑問に思ったようである。
「そんな野暮なことを……答えなければいけないのですか?」
ラケルはゆっくりと顔を背ける。クジョウは何か勘違いしたかのように慌てていた。ならば、とラケルは続ける。
「一つだけ条件があります。私ではなく、貴方が開発したことにしておいてください。優れた技術は必ず世に出るべきです、でも……姉はたった一人残された肉親……できることなら嫌われたくありません」
申し訳ない、と最後に付け加えた。悲劇に少女のように声を震わせて言うラケルにクジョウも何かを感じ取ったようで、自分で良いなら、とラケルの条件を飲んだ。

「…」
その一部始終を、マキは見た。いや、正確には「聴き終えた」だろう。クジョウに手紙を渡したあの後、一瞬の隙をみてクジョウの白衣のポケットに小型の盗聴器を仕掛けておいた。実際に見ていないので、どんなことがデータとして出力されたのかとか、ラケルがクジョウに何をしたかまでは分からないが、大方、自分に対する行為を利用したのであろう。要するに「色仕掛け」である。
「やっぱりな」
ラケルは自分が作った生体制御装置の権限をクジョウに譲り、自分は裏で神機兵を操っていたのだ。神機兵が動かなくなったことでアラガミへの供物…「生贄」を作る。そして、赤い雨で「王」を完成へ大きく導く。神機兵が動かなくなって死人が出たとしても、その反発は権限を持っているクジョウへと向かう。自分はただ平然と悲しみを装っていれば良い。
怒りがこみ上げてきた。
——でも、これで材料は揃った。あとはあの日に二人を救い出して、ラケルに神機兵が動かなくなったわけを問いただせば良いという訳だ。

ミッションから戻ったマキの一番初めに目に入ってきたのはクジョウだった。嬉々とした表情を浮かべている。だが、どうしてそんな表情をしているのかはこちらはすでに把握済みだ。聞く必要は無い。クジョウの横を通り過ぎ、フランの元へ行く。ロミオが来ているとのことだ。もう極東に戻っていいらしい。フランだけをここに残しておくのは忍びない気もするが、マキとしてはこんなところにいるのはもう散々だ。人を道具としか思っていない連中ばかりで、人間性の欠片も感じない。うんざりしていたところだ。——とは思ったものの、警備員や他の従業員たちは嫌いではないのだが——また、あの家族のような温かさのある場所へ戻れるのは凄く嬉しい。階段を駆け下り、ロミオの元へ向かった。
だが、マキの足はすぐに止まってしまった。本来の流れでは、此処にきたのはロミオだけであった。しかし、その場にもう一人マキを迎えに来た者がいる。

「ジュリ…ウス…」
マキを待っている彼の表情は、どこか暗いものであった。


Re: GODEATER2—フューチャー・オブ・ブラッド— ( No.26 )
日時: 2014/10/23 20:38
名前: 諸星銀佳 (ID: JnkKI7QF)

明るく出迎えるロミオとは対照的にこちらを見つめるジュリウス。マキはゆっくりと歩を進めた。
「作戦行動に移る前に話がある。ロミオ、少し時間をくれないか」
「俺は別にいいけど?終わったら連絡してくれよ!久々のフライアだし、ちょっと回ってくる!」
「お、おい…」
そう言ってロミオはエレベーターの中に消えていった。
ジュリウスと二人になったマキ。暫く沈黙が続く。その様子をフランも遠くから見ていたかったが、無線が入ったので仕方なく業務に戻った。
「まぁ座れ」
言われるがまま、アーカイブの前に座る。
「まずは、お疲れ様」
マキは無言で頷く。
「今回、ラケル博士の依頼で神機兵の運用装置のためのアラガミ細胞の回収に行っていたそうだが——それだけか」
ジュリウスは姿勢を正し、真剣な面持ちで言う。
「単刀直入に聞こう——裏で、一人で何をしていた」
——この人には何もかもお見通し、って訳か。
にしても、そこまで怪しい素振りを見せた記憶は無かったが、なんせ過去にタイムスリップしてきているのだ。困惑が未だに隠せていないのかも知れない。マキは恐る恐るジュリウスの顔を見る。何一つ表情を変えない冷徹な顔は、見るものを一瞬で固まらせるような雰囲気だったが、瞳の奥には、どこか寂しげなものを感じる。まるで——どうして頼ってくれないんだ、と言わんばかりに。
マキはその顔をあげられぬままジュリウスに告げる。
「今は…お話できません」
普段のマキらしからぬ小さな声だった。彼女の声は普通の大きさでもよく通る声をしているが、今のはジュリウスだけにしか聞こえぬようなか細い声だった。
「お願いです…もう少しなんだ…ただでさえ禁忌を犯しているんだ。今、貴方に迷惑をかけられない…頼む」
その時、ジュリウスにはマキがいつもより小さく見えた。
過去に戻って、未来を変える。それは本来の時の流れを変えること。すなわち、元居た世界が実在するか分からなくなるということだ。ジュリウスが命がけで護ってくれた世界を、自分が壊してしまうかもしれない。
そんなこと、言える筈もなかった。
「そうか。でも、いつか…その時が来たら、必ず話してくれ」
マキは小さく頷いた。ジュリウスは彼女を励ますかのように肩を軽く叩いた。足音が徐々に遠くなっていく。
「なんにも変わってねーなー!フライア!あ、ジュリウス!副隊長!もういい…ってあれ?副隊長、ジュリウスは?」
「…帰ったよ」
若干声が震えていた。自分でも何故だか分からない。ロミオにバレたかと思ったが、その心配は無かった。
「そっか。まぁ、いいや。副隊長いいよな?ミッション!」
「あぁ」
その時やっと顔をあげることができた。無理やり笑みを作ったが変だと思われなかったか心配だ。

——あぁ、そうか、やっぱり。
気付いてしまった——いや、改めて思った。
平等に接しなければならないと分かっていても、もう、無理そうだ。彼だけが特別になってしまった。だから一緒に居たいと願う。迷惑かけまいと思う。
「ごめん…ロミオ。お前も一緒に救いに来たのに」
誰にも気付かれないように小さく呟く。
「私は——」

ジュリウスが、好きだ。


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