二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- GODEATER2—フューチャー・オブ・ブラッド—
- 日時: 2016/04/03 00:43
- 名前: 諸星銀佳 (ID: CN5DwmtD)
こんにちは。諸星です。
もう此処には長いことお世話になっているのですが長続きせず…すべて途中で投げ打ってしまいました。
ですが、最近出会ったゲーム…「GODEATER2」をやって、また書きたくなってしまいました。
なんとか、頑張っていきたいと思いますので、暖かい目で見て頂けたら幸いで御座います。
※本作は「GODEATER2」を基にしたフィクションです。
※ストーリーをクリアしていない方は読まないことを推奨致します。
※ジュリウス×主人公♀の要素を含ませることを考えているので、苦手な方はブラウザバックをお願いします。
—登場人物—
『特殊隊ブラッド』
・神野マキ(カミノマキ)…フェンリル極致化技術開発局ブラッド隊隊長。男勝りな極東出身のゴッドイーター。血の力『喚起』の持ち主。今も、仲間を失ったことは自分の所為だと思っている。
神器:ショートブレード・全ての銃身(ヘアスタイル→3,アクセサリ→なし,共通アクセサリ→13:色2,ヘアカラー→銀,フェイス→8,アイカラー→11,ボイス→10)
・ジュリウス・ヴィスコンティ…ブラッド元隊長。現在は「螺旋の樹」の創造主として一部の市民から信仰の対象となっている。表向きは故人扱いだが、彼の特異点がコアとして樹の内部に存在することは間違いない。しかし詳細は一切不明。
・香月ナナ(コウヅキナナ)…ブラッド所属。マキとは同期。血の力『誘引』の持ち主。明るくて大食い。
・シエル・アランソン…ブラッド隊副隊長。血の力『直覚』の持ち主。冷静で戦術理論へ造詣が深い。
・ギルバート・マクレイン…ブラッド所属。血の力『鼓吹』の持ち主。ブラッドの兄貴分的存在。
・ロミオ・レオーニ…元ブラッド隊員。2074年、サテライト拠点の防衛任務にてKIA(作戦行動中死亡)と認定。仲間とのコミュニケーションのとり方が上手く、フライアや極東では頼りにされていた。
『極東支部ゴッドイーター』
・アリサ・イリーニチナ・アミエーラ
・藤木コウタ(フジキコウタ)
・ソーマ・シックザール
・エリナ・デア=フォーゲルヴァイデ
・台場カノン(ダイバカノン)
・雨宮リンドウ(アマミヤリンドウ)
・真壁ハルオミ(マカベハルオミ)
・エミール・フォン・シュトラスブルク
・キグルミ
『その他の登場人物』
・葦原ユノ(アシハラユノ)
・レア・クラウディウス
・ラケル・クラウディウス
・竹田ヒバリ(タケダヒバリ)
・フラン=フランソワ=フランチェスカ・ド・ブルゴーニュ
・ペイラー・榊(ペイラーサカキ) andmore…。
※極東ゴッドイーター・その他の登場人物については登場しない可能性があります。詳細プロフィールはGODEATER2の公式ホームページをご覧下さい。また、今後オリジナルキャラが登場する可能性があります。
序章 >>3
第一章 夢か現か >>4-9
第二章 決意と覚悟 >>10-17
第三章 忍び寄る悪夢 >>18-30
第四章 束の間の安息 >>31 >>33-39
第五章 変わる世界 >>40-48
番外編 副隊長の見た夢 >>32
- Re: GODEATER2—フューチャー・オブ・ブラッド— ( No.12 )
- 日時: 2015/09/27 15:00
- 名前: 諸星銀佳 (ID: .xQ.zB/T)
ものの数分でコンゴウを無へと還すことに成功したマキ達。
「ひぇー…驚いたな。ブラッドってこんな簡単に終わらせちまうのか?」
まだバレット残量があるよーと感心したように言う。
「いや、今回は…」
結構楽でした、なんて言ったら二人に驚かれるだろう。なんせこの頃は神機の扱い・アラガミとの間の取り方はまだまだ研究段階で、シユウ一体でさえ苦戦していた頃だった。言おうとしていた言葉を飲み込んで、新たな言葉を紡ぐ。
「コウタ隊長がいたからですよ。極東の神機使いはレベルが高いです」
「え、そう?照れちゃうなー!」
時々あどけない表情を見せるのは、今も昔も変わらない。
「でもすげーのな!必殺技!なんか赤い光とか見せてバチーン!ってやっちまうのな!」
血の力を持つものが使える必殺技、ブラッドアーツ。戦いの中で洗練され、理論上は際限なく強くなる。ジュリウスやマキ、シエルが現段階で使える。後にギルやナナも使えるようになるのだが…。
「そうなんすよ!俺も早く使えるようになりたいなー!」
ロミオは、死ぬ直前に発現した。すなわち、使うことなく亡くなっていった。彼の血の力は一体なんだったのだろう。新人の頃に血の力について教えてくれたことを思い出す。あの時、周囲のアラガミが逃げていったとシエルから聞いた。となるとナナとは真逆の力なのかと思う。そして気づいた。
——戻ってきた今なら、彼を救って、血の力に目覚めさせることも出来るかもしれない。
「ふくたいちょー?どうした?」
「え?あ、いや…ちょっと、考え事を…」
『——帰投準備が出来ました。位置情報を送るのでそこでお待ち下さい』
ヒバリから無線が入った。コウタが位置情報を確認し、三人を先導するように歩き始めた。
「おかえりー!お腹空いたよー!早く歓迎会して貰おうよー!」
エントランスではナナが迎えてくれた。
「ナナお前なー」
ヒバリに帰還報告をし、コアや拾ってきた素材をターミナルに収める。そこでマキは異変に気付く。
ターミナルでは戦闘準備や武器強化のほかに、複合コアを作れる。そのコアを武器に使うと今までの武器より強くなり、戦闘を有利に運べるようになる。
「なんで…?」
——極密度複合コアが作れる。
極密度複合コアには100のコストが必要である。コストは、アラガミから手に入ったコアの稀少度で決まるのである。例えば、マガツキュウビのコア・空弧ノ肝。あれはもの凄く手に入りにくいとされている。胸鎧を結合崩壊させれば手に入る筈なのだが、個体毎に持っているものとそうでないものがいる様だ。実際、マキも手に入れたのは片手で数えられる程度——最も、マガツキュウビなどの稀少アラガミが現れることが低いのと、あまり戦いに自ら進んでいかないのもある——。反面、ドレッドパイクのコアは簡単に手に入るものが多いが、コストは低い。だが、異常な変化を遂げた個体だと、珍しいコアが手に入る。
このようにコアの稀少度はアラガミの強さに比例していたり、入手頻度の面もある。つまり、それだけ沢山のアラガミを狩り、部位を結合崩壊させるかコアを捕食しないと作れない。マルドゥークすら倒していない今、何故作れるのか。
「いろいろとおかしいな…」
「どうかしたのか?何がおかしいんだ?」
ジュリウスがいつの間にか横にいて、手元のターミナルを覗いている。本人は至って真面目にターミナルの調子が悪いのかとか、武器が無いのかと聞いてくる。
「え?あ、いや、その、なんでもない!」
——というか顔が近い!
マキの顔がみるみる赤くなる。
「そうか。先程のミッションもそうだったが、疲れているんじゃないのか?突然黙り込んだり、顔から血の気が引いたり…ん?顔が赤いぞ副隊長。熱でも——」
「だ、大丈夫だ!そ、それより隊長、歓迎会。歓迎会行きましょ!皆が待ってる」
ジュリウスの背中をぐいぐいと押す。そのままラウンジへを押し込み、「あとから行く」と言ってその場を後にした。
マキはその場に座り込み、両手で顔を覆う。その時ユノが通りかかり、大分心配された。適当に言い訳を作り納得させ、自室へと駆け込む。通り過ぎる人々が終始驚いていたが気にしない。部屋に入るやいなや、ベッドへ突っ伏す。
「…ジュリウスって、あんなに女への距離感とか分かっていないのか?」
綺麗な肌と長い下まつげ。整った目鼻立ち。まるでビスクドールのような顔が脳裏に焼きついてしまい、ますます赤面する。
マキは顔をバシバシ叩き、顔を洗って心を落ち着かせ、こんなことに現を抜かしていてはいけないと反省した後、部屋へ来たときと同じスピードでラウンジへ急いだ。歓迎会ではジュリウスの挨拶やユノの歌が披露されたのだが、どれもあまり頭に入ってこなかった。
朧げにユノの透き通るような歌声が耳に残っている程度だった。
- Re: GODEATER2—フューチャー・オブ・ブラッド— ( No.13 )
- 日時: 2015/09/27 15:49
- 名前: 諸星銀佳 (ID: .xQ.zB/T)
その後のマキというもの、呆けていることが多くHP危険域突入・アイテム切れなど、普段の彼女からしたらありえないミスが目立った。ミッションに同行したギル、シエル、ナナから問いただされた。
「副隊長、どーしたの?なんか珍しいねー。アイテム切れとか」
「やはり疲れているのですよ。それとも前に負った大怪我の傷が痛みますか?」
「少し休め副隊長。あんなミッションくらい俺らでもできる」
——いや、そういうわけではないのだが…と、内心で呟く。あまりにも情けない。自分の感情程度で命の危機が迫るというのだから。大丈夫と言っても仲間は休めだの、後方支援に回れだの言って来る。心配はありがたいのだが、これでは過保護も良い所だ。確かに本来のこの頃は上手く立ち回れず苦戦したものだが、『今』のマキではありえないものだった。
「手当てはしたのか副隊長」
そこへ、原因を作った本人登場。貴方の所為だジュリウス!などとは言える筈もなく。
「だ、大丈夫だ…アイテム切れと言っても普段より少なく持っていってたからこうなっただけだし、HP危険域なんてしょっちゅうだしな」
まともにジュリウスの顔が見れないマキ。平静を装っているが、目が泳いでいた。
「と、とにかく、次は気をつけるから…みんな、ありがとう」
足早にその場を去る。途中で躓いてこけそうになり、エレベーターの壁に勢いよくぶつかったが、ぶつかる前に扉が閉まってくれたので、誰にも見られずに済んだ。最も、躓くところは見られたかもしれないが。
「冷静になれ!こんなんじゃあいつらをまた危険な目に合わせるだけじゃないか!…ブラッドの副隊長たるもの、私情を持ち込んではいけない!私は何のために此処に来たのかをよく——」
己を叱咤しているその時だった。アナグラに警報が鳴り響く。先程とは打って変わり、一気に引き締まった表情になったマキは部屋を飛び出し、エントランスへと急いだ。すぐさまヒバリへ事情を聞く。
「アラガミ防壁を破られました!サテライト拠点へ侵入します!ですが…先程ブラッドの皆さんはつい先程任務へ向かわれてしまいました…現在、第一部隊も向かっているとのことですが、時間かかかります」
「私だけか…行こう。数と種類は」
「数は把握できていませんが…シユウやサリエルと言った飛行系のアラガミが多数——マキさん!?」
マキは最後まで聞くことなく、出撃ゲートへ向かった。
車を全速力で走らせる。ヒバリからどのあたりなのかを聞くのを忘れたため、悲鳴と砂煙を頼りに向かう。角で思い切りハンドルを切り、横向きに急停止させる。そこにはヒバリから聞いたとおり、飛行系のアラガミが多数いた。穴が開いたアラガミ防壁から続々とアラガミが入ってくる。既に犠牲者も出ているようだ。己の無力さと悔しさをこめた舌打ちを一つしたときだった。
『——マキさん!マキさん!聞こえますか!ヒバリです!』
「聞こえるぞ。どうした」
『現在第一部隊が目的地まであと10キロとの連絡を受けました!耐えてください!すぐに他の神機使いを向かわせます!』
了解、と言い残して無線を切る。目の前のものに集中するためだ。緊急事態の任務ではマキがよくやっている戦法だ。情報はちゃんと聞いてくれとよく怒られるのだが。地面に血まみれで倒れている少女の亡骸を見、その少女を捕食したと思われるシユウへと視線を移した。
「…なぁ、人ってどんな味がするんだ?美味いのか?教えてくれよ」
神機を握りなおし、アラガミとの距離をじりじりと詰める。その際、腰が抜けて動けなくなっている少女の父親らしき人物が視界に入った。
「ご家族、ですか」
男性は頷く。マキは目だけを男性に向ける。
「アナグラへ連れて行ってあげてくれ…何も出来なくてすまない。でも、私が食い止める」
マキは上体低くしたままシユウへ駆け寄る。シユウは低空飛行でマキへ向かってくる。ライジングエッジで斬撃を加えながら攻撃避けつつ、着地と同時にすぐさま踵を返し、横一線。シユウの硬い体を真っ二つにした。
マキの気迫に驚いたのか、暫し男性は動かなかった。しかし、我に返ったのか少女を抱きかかえ、アナグラの方へ姿を消した。近くで悲鳴らしきものは聞こえてこなくなった。聞こえるのは、アラガミの咆哮とマキの戦闘音のみだった。
無駄が無い動作で次々とアラガミを倒していく。地面にはざっと10体もの飛行系アラガミの亡骸が転がっていた。
3体目のシユウがダウンした隙に、ライジングエッジで攻撃をしつつ宙に舞うと、そのまま神縫いを見舞う。シユウは割れるような悲鳴を上げ、力なく崩れた。コアを回収し、すぐさまシユウを援護するかのようにレーザー光線をマキに浴びせていたサリエルへ駆け寄る。が、低空飛行してきたザイゴートに衝突してしまい、民家へ叩きつけられた。
「うぐっ…」
ザイゴートごときで手こずる彼女ではない。すぐに立ち直り、ザイゴートを一瞬で地面へ落とし、サリエルへ向き直る。口から血を吐き捨て神機を構えなおし、走りながら高くジャンプする。ショートブレードしかできない空中移動で一気に間合いを詰める。
「土に還れ!」
一撃でサリエルを真っ二つにした。サリエルはすぐに黒き煙となって消えていく。改めて耳を澄ませたが、サテライト拠点の方からはアラガミの声や人の悲鳴はやはり聞こえてこない。
「終わったか…」
無線を切っていたので何体やったのか分からない。荒い息を整え、無線を入れようとしていたその時だった。
「後ろっ!!!」
声のする方向へ向き直ろうとしたとき、マキは宙を舞った。激しい音ともに瓦礫の中へ落ちる。
「しっかりしろ!大丈夫か!!」
声の主はコウタだった。第一部隊が戻ってきたのだ。
「エリナ!こいつの手当てを頼む!エミールは住民の状況を確認して来い!車使って飛ばせ!」
「了解!」
「騎士たるもの、民を護ることが出来なければならない!!」
エリナがマキへ駆け寄り、エミールは土煙を上げながらサテライトの方へ小さくなっていった。
「遅くなって悪かった。けど、もう平気だぜ。こっからは、俺たちに任せな!」
コウタが歯を見せ笑う。
「傷だらけじゃない…しかもアイテム切れてるし!これ使って!」
エリナはマキへ回復球を渡す。鞄から包帯を取り出し、止血を行う。
血で視界が悪かったが、マキは自分を痛めつけたアラガミを見やる。どうやら開いた穴から入ってきたらしい。目の前のアラガミに集中しすぎて周囲に気を配れていなかったことが迂闊だったと反省する。
コウタの向こう側には、犬のような井出たちだのアラガミがいた。だが、その大きさは犬の比ではなく、足は硬い岩のようなもので覆われている。
「…ガ、ルム…」
「お前は影で隠れてろ!エリナ!行けるか!」
「はい!いい、ここから動いたら絶対駄目だから!」
マキはアラガミの視界に入らない場所へ移された。極東に来たばかりだというのに、ブラッドの威厳を見せるどころか、醜態を晒しているばかりだ。先のミッションでも、今も。己の情にかられ、本質を見失っている。情けなくて堪らない。
『——全員まとめて護ります。この手で。命に代えてでも』
——貴方にそれができるのですか?為すべき時に為すべきことを為せなかった貴方が——
ラケルの声が聞こえたような気がした。マキはそのまま気を失った。
「あっ!」
エリナが神機を手放してしまった。ガルムの攻撃を受け流せなかったようだ。ガルムはエリナを踏みつける。その風圧でエリナは吹っ飛んでしまう。
「エリナ!」
追い打ちをかけるガルムとエリナの間にコウタが駆け寄り、身を挺して彼女を護ろうとする。コウタは覚悟を決め目を瞑った。だが、痛みはなかった。
「…?」
恐る恐る目を開けると、ガルムの足が目の前で止まっていた。足元に何か冷たいものを感じ、視線を移す。血が流れていた。正確には、上から落ちていた。マキがガルムの足へ剣を刺していたのだ。
コウタが視界の隅で捉えていたマキの姿は瓦礫に突っ伏したまま動かなかったはずだ。なのに、あの距離——直線距離で50mだろうか——を一瞬で詰め目の前にいる。睨みつけるマキの瞳は、アラガミのそれだった。コウタは背中に悪寒を感じた。
返り血を浴びるのも気にせず、思い切り剣を引き抜く。目にも留まらぬ速さでガルムの体中に傷が出来る。
錯覚だろうか。そのときコウタは、マキの背に金色の翼が生えているように見えた。
ヒバリが何やら言っていたが、コウタの耳には入らなかった。エリナもコウタの肩から恐る恐る顔を覗かせ、絶句する。
「動いちゃ駄目だって…」
ガルムがダウンした。その時、コウタが我に返る。
「エリナ!Oアンプルくれ!その場に捨てて行っていいから!動けそうだな?すぐに後方支援に回ってくれ!」
「え!?あ…はい!」
その後三人はガルムを見事倒し、エミールも住民の無事を確認し戻ってきた。だがマキは、ガルムに最後の一撃を放つと同時に再び意識を失った。
先程感じた、狂気にも似た強さ。一体何だったのか。コウタの腕の中で目を瞑る彼女からそれは感じられなかった。後にこのことをコウタはこう語った。
——あの時、アラガミ化したのではないかと思った、と。
- Re: GODEATER2—フューチャー・オブ・ブラッド— ( No.14 )
- 日時: 2014/08/25 23:49
- 名前: 諸星銀佳 (ID: JnkKI7QF)
「あ、大丈夫ですか?」
気がつくと、看護生の桐谷ヤエが点滴を取り替えていたところだった。
「すごい量のアラガミをお一人で倒したんですってね。噂はやっぱり嘘じゃなかったんですね、ブラッドはすごいって」
「…た」
ヤエが表情をハテナにしているろ、マキは虚ろな目をして呟いた。
「女の子を…助けられなかった」
血まみれで倒れていた少女を思い出す。
「私は、一体何の為に、神機使いをやっているんだろうな」
マキは手を突き上げ拳を作る。そして、それをそのままベッドに叩きつけた。ヤエが小さく悲鳴を上げる。
「私は…自分の欲に負けたんだ。それで、そんなので動揺して…護るべきものを護れない癖に、皆丸ごと護るとか、大口叩いて…くそっ…私は…無力だッ」
「そんなことはないですよ」
「!?」
喪服のような服を身に纏い、車椅子を押した少女——というには若すぎる女——ラケルがいた。マキは目を丸くしたままで何も言葉を発することが出来なかった。
「私の可愛い子達が大怪我を負ったと聞いたら、いても経ってもいられなくなってしまったのですよ、マキ」
ラケルはその手を傷を負ったマキの頬に置く。
「あまり無理をしたらだめですよ」
ラケルはヤエに退室を促した。病室に二人きりになる。
「最近、無茶をしているようですが…仲間を頼りなさい。貴女は一人じゃないの——」
会話の途中だったが、マキはラケルの手を払う。
「どの面下げてきたんですか…人間の姿をしたアラガミさん」
わが子を心配する母親のような瞳を向けるラケルとは対照的に、今にでも襲い掛かりそうな獰猛な瞳をマキは向ける。彼女にとってラケルは因縁の相手だ。ロミオを死に追いやり、ジュリウスを使って世界を破滅へと導こうとした張本人。出来ることなら止めを刺したいと思っていた。だが、ラケルはアラガミとなったジュリウスに取り込まれ——正確には自ら取り込まれることを望んで——その願いは叶わぬものとなってしまった。
「…どうしたのですか?反抗期ですかね…」
「貴女のやろうとしていることは全て知っていますよ。力ずくでも止めて見せる」
こういう事を言っている自分のほうがよっぽどアラガミなんじゃないかと思ったが、今はそれどころではない。
ラケルはくつくつと笑う。
「面白いことを言うのですね…悪い夢でも見たのでしょう」
「今に証拠を掴んでやる…ロミオも、ジュリウスも、あんたなんかに殺させはしない…」
ラケルが一瞬真顔になる。だがすぐに元の微笑を取り戻す。
「何を言っているのかはよく分かりませんが、きっと出動のし過ぎとアラガミからのダメージで気が動転しているのでしょう。だから私が、アラガミに見えるのでしょうね」
車椅子を回転させ、マキへ背を向ける。
「待てっ…うっ…」
追おうとしたが、傷が痛み、動けなかった。
「物語は、貴女によって始まった。始まりがあれば終わりがある。人が生まれ、死に逝くように…この物語も、いずれ終焉を迎えるのです。最後の晩餐まで、刻一刻と、迫っているのです」
「…終わらせてあげますよ。ストーリーテラーの死で物語はジ・エンドだ」
ラケルは振り向きもせずに言った。
「ふふふ…さて、どうなるのでしょうね。楽しみにしていますよ、マキ」
そう言って、ラケルは姿を消した。
- Re: GODEATER2—フューチャー・オブ・ブラッド— ( No.15 )
- 日時: 2014/08/27 20:59
- 名前: 諸星銀佳 (ID: JnkKI7QF)
暫くすると、病室にコウタとエリナ、エミールが見舞いに来てくれた。
「悪かったな…極東来たばっかりなのにこんなんにさせちまってさ」
「いや…いいんだ。これも仕事のうちさ」
返事をしながらも、別のことを考えていた。
歴史が変わっていないか、と。こんなにもアラガミが突発的に出てくることがあったか。確か、コウタたちといったコンゴウ二体の討伐任務のすぐ後にアラガミ防壁突破など無かった筈だ。アリサに出会ったあの時以来無い…様な気がするのだ。
そして、こうして自分の下へラケルが訪れたことも無い。
考える程頭が痛くなる。それを怪我によるものだと彼らは捉えたようで、マキの体を気遣う言葉をくれた。
「アラガミの巣窟だからな…こういうことは珍しくないんだ。これからもあるかもしれないから、宜しくな。もう無茶すんなよ」
「今はちゃんと休んでなさいよねっ。神機使いはいつでも人手不足なんだから」
「騎士にも休息は必要だ。これをいい機会だと思ってゆっくり休んでくれたまえ」
けれども今は、三人の言うとおりにしようと思った。
「成程。つまり、君が此処、過去に来たという時点で歴史が少し変わっているのではないか、ということだね?」
病室にサカキを呼び出し、疑問を投げかけた。マキは無言で頷く。サカキは腕を組んで考え始めた。頭の中の引き出しから答えを導くように。
「結局、私には何も出来ないのか…危険に巻き込むだけで、何も変わらないのか」
「誰がそんなのこと決めたんだい?」
サカキは相変わらず表情の読み取れない目でマキを見つめる。
「これからの動きで、どうとだって変わっていく。これからのことを知っている君なら…あの二人をいや、皆を、救っていけるさ。一人で戦おうとするんじゃない。仲間を頼りなさい」
そう言ってサカキは席を立つ。そして、去り際に一言残していった。
「私も戦うよ、マキ君」
神機使いの回復は早いもので。一日もしないうちにマキはすっかり元気になった。その途端、シエルとブラッドバレットの検証に行ったり、リンクサポートデバイスの運用テストに行ったりと、元の活躍ぶりを取り戻してきたようだった。一方ラウンジではコウタとロミオがシプレの新曲に酔いしれていた。マキも一緒に見たのだが…二人が熱狂する程の良さは、いまいち分からなかった。
相変わらずの忙しさに少しほっとしたマキ。
「私には、これが一番似合うんだな。きっと」
ムツミが作ってくれた飲み物を口にしながら、そういえば神機使いになる前は何をしていたっけ、と考える。毎日どうやって生活していたのか。思い出そうとしたが、神機使いになってからの方が色々あったので、もう思い出せなかった。思わず苦笑する。
「よぉ、ブラッドの副隊長さん!」
引退した神機使いであるダミアンが話をしにやってきた。彼は相当強かったという話だ。リンクサポートの件について話に来たようだ。
「分かった。リッカの所へ急ごう。ムツミちゃん、ごちそうさま」
「え?もう行くの?」
「私にはこれしかないようだからな」
一気に飲み干し、マキは駆け足でラウンジを後にする。
「元気になってよかった」
ムツミはニコニコしながら後片付けを始める。
「あ、片付けてるところ悪いんだけど、俺にも何か頂戴?」
「はーい!」
- Re: GODEATER2—フューチャー・オブ・ブラッド— ( No.16 )
- 日時: 2014/08/19 13:03
- 名前: 諸星銀佳 (ID: FAB9TxkG)
第一章を加筆・修正しました。
第二章も書き終わり次第しようと思っていますので、よろしくお願い致します。
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