二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- GODEATER2—フューチャー・オブ・ブラッド—
- 日時: 2016/04/03 00:43
- 名前: 諸星銀佳 (ID: CN5DwmtD)
こんにちは。諸星です。
もう此処には長いことお世話になっているのですが長続きせず…すべて途中で投げ打ってしまいました。
ですが、最近出会ったゲーム…「GODEATER2」をやって、また書きたくなってしまいました。
なんとか、頑張っていきたいと思いますので、暖かい目で見て頂けたら幸いで御座います。
※本作は「GODEATER2」を基にしたフィクションです。
※ストーリーをクリアしていない方は読まないことを推奨致します。
※ジュリウス×主人公♀の要素を含ませることを考えているので、苦手な方はブラウザバックをお願いします。
—登場人物—
『特殊隊ブラッド』
・神野マキ(カミノマキ)…フェンリル極致化技術開発局ブラッド隊隊長。男勝りな極東出身のゴッドイーター。血の力『喚起』の持ち主。今も、仲間を失ったことは自分の所為だと思っている。
神器:ショートブレード・全ての銃身(ヘアスタイル→3,アクセサリ→なし,共通アクセサリ→13:色2,ヘアカラー→銀,フェイス→8,アイカラー→11,ボイス→10)
・ジュリウス・ヴィスコンティ…ブラッド元隊長。現在は「螺旋の樹」の創造主として一部の市民から信仰の対象となっている。表向きは故人扱いだが、彼の特異点がコアとして樹の内部に存在することは間違いない。しかし詳細は一切不明。
・香月ナナ(コウヅキナナ)…ブラッド所属。マキとは同期。血の力『誘引』の持ち主。明るくて大食い。
・シエル・アランソン…ブラッド隊副隊長。血の力『直覚』の持ち主。冷静で戦術理論へ造詣が深い。
・ギルバート・マクレイン…ブラッド所属。血の力『鼓吹』の持ち主。ブラッドの兄貴分的存在。
・ロミオ・レオーニ…元ブラッド隊員。2074年、サテライト拠点の防衛任務にてKIA(作戦行動中死亡)と認定。仲間とのコミュニケーションのとり方が上手く、フライアや極東では頼りにされていた。
『極東支部ゴッドイーター』
・アリサ・イリーニチナ・アミエーラ
・藤木コウタ(フジキコウタ)
・ソーマ・シックザール
・エリナ・デア=フォーゲルヴァイデ
・台場カノン(ダイバカノン)
・雨宮リンドウ(アマミヤリンドウ)
・真壁ハルオミ(マカベハルオミ)
・エミール・フォン・シュトラスブルク
・キグルミ
『その他の登場人物』
・葦原ユノ(アシハラユノ)
・レア・クラウディウス
・ラケル・クラウディウス
・竹田ヒバリ(タケダヒバリ)
・フラン=フランソワ=フランチェスカ・ド・ブルゴーニュ
・ペイラー・榊(ペイラーサカキ) andmore…。
※極東ゴッドイーター・その他の登場人物については登場しない可能性があります。詳細プロフィールはGODEATER2の公式ホームページをご覧下さい。また、今後オリジナルキャラが登場する可能性があります。
序章 >>3
第一章 夢か現か >>4-9
第二章 決意と覚悟 >>10-17
第三章 忍び寄る悪夢 >>18-30
第四章 束の間の安息 >>31 >>33-39
第五章 変わる世界 >>40-48
番外編 副隊長の見た夢 >>32
- Re: GODEATER2—フューチャー・オブ・ブラッド— ( No.27 )
- 日時: 2014/11/02 21:34
- 名前: 諸星銀佳 (ID: JnkKI7QF)
結局、ミッションはロミオと二人で行くことになった。二人だけだったのでなかなか辛いものがあったが、無事にクリアできた。
「くぅー……はー、今日もよく働いたなー!にしても、副隊長はやっぱ冴えてるよなー!副隊長と組むと、すげぇ動きやすくってさ」
そうやって言われるとやはり嬉しいものがあった。二人だったから指示が通りやすかったというのもあるが、自分の責務を全うできているようで何よりだと思う。
ロミオがふと、顔を逸らし、空を見上げ「考えてたんだけどさ」と話を再開する。
どうやれば上手く戦えるのか、役に立てるのか。彼なりに考えて立ち回っていたらしい。それで、ギルバートやナナの真似をしたりしていたのだと。
——この話を聞くと、胸が痛い…
あの時、もう少し早くロミオの闇に気付いてあげていれば、あんな悲劇を呼ぶことは無かっただろう、と。
「副隊長?」
いつの間にか呆けていたらしい。ロミオの話をしっかり聞いていなかった。話を続けるようにマキは促した。
「俺、ブラッドのみんなに会えて、本当によかったよ……ありがとな。これからも宜しくな、副隊長!へへっ」
明るく微笑むロミオの姿にマキも勇気をつけられていた。
ミッション終了後、ヘリの中でロミオが話しかけてきた。
「なぁ、副隊長、聞きたいことがあるんだけどさ」
マキはロミオをゆっくりと見やった。
「ジュリウスも、副隊長も最近なんか変だよ。なんかあったのか?」
ドキッとした。ロミオはあの事件以降、人間観察——と言うより人の立ち回りをよく見ている、と言った方が良いか——をするようになった。それゆえ、仲間の些細な変化を見逃さないようになった。
例えば、シエル。彼女は悩んでいる素振りをあまり人に見せない。だが、ロミオはすぐに気付く。顔色の変化やどことなく呆けている様子を見逃さず、声をかける。シエルだけではないが、彼の行動に少なからず助けられている人がいるのだ。
——よく見ているな。
とは、言わずに、マキはこう返した。
「何故…そう思う」
「副隊長がフライアに行ってから、なーんかジュリウスがこそこそやってたみたいなんだけどさ、手伝おうかーとか言っても平気だ、しか言わねぇし、副隊長も大怪我した日からなんか…怯えてるっていうか、なんていうか…変」
あの時から気付いていたのか。
確かに、タイムスリップしてきたのに戸惑った。ジュリウスとロミオが目の前にいることに戸惑った。あまりにも同じことの繰り返し過ぎて戸惑った——また、二人を失う気がして、怖かった。
見栄張ってそんな素振りは見せていないはずだった。だが、ずっと共に戦場を駆け抜けてきた仲間だ。そのくらいの変化はすぐに気付くのだろう。
「それは……気のせいだ」
「は?」
ロミオの優しさが辛い。自分のことを心配してくれているのだろう。だが、これはもう自己満足で動いている。心配されるようなことではなかった——このあとどうなるかは見当も付かないが。
「でも…ありがとう、ロミオ。私は、大丈夫、大丈夫だから。ごめん」
「な、何で謝るんだよ」
「優しいな、お前…」
「っ…」
急に照れるロミオが愛しかった。だが、ジュリウスに抱いた思いとは明らかに違うことにも気付いた。
——最低だな、私。
二人の帰還後、早速神機兵の運用テストに赴いた。結果は上々で、早速運用と行くらしい。サテライト拠点付近で赤い雨が多量に降ることが確認された、降る前に住民たちを移動させつつ、付近のアラガミを討伐しなければならないとのことだ。ブラッドと極東の神機使い総動員で行う大規模なものらしい。
遂に来た、このときが。思い出すだけで自分の無力さと、ラケルへの疑念が沸々と湧いてくるだけだ。ロミオの殉職への関与があるのか、今の時点では断定できない。ただ、クジョウとのあの会話を聞く限り、今後の展開は大方予想が付く。
——なんとしても、ロミオを救う。ジュリウスを救う。
気持ちが早まっているみたいだ。冷静にならなくてはならない。まずは、サカキのところに行き、今後の展開の詳細を話し、自分がどう動くかを伝えなければならなかった。
役員区画に行く前、ロミオがエレベーターに乗り込むところを見た。少々気になったので後を付いて行く。どうやらユノの部屋に行ったようだ。気付かれぬよう、聞き耳を立ててみた。
「ユ、ユノさん!あ……あの、一つ、お願いがあるんですけど……俺、ブラッドのメンバーにさ、今まで散々助けてもらったのに何一つ恩返しらしいことできてなくて……だから、その……この作戦が終わったら……ブラッドのために一曲だけ歌ってほしいんだ」
マキは息を呑んだ。
『——ロミオさんとの約束……こんな形で……果たすことになるなんてね』
あの時のユノの言葉は、そういう意味だったのか。涙が頬を伝った。
「ええ…いいですよ」
「ほ、本当!?」
「当然じゃないですかその代わり、一つだけ約束してください。必ず、全員生きて帰ってくること……いいですか?」
「了解!ありがとう、俺……超楽しみにしてるよ!」
ロミオが嬉々としてこちらに向かってくる足音が聞こえた。
「ふふっ、あいつらびっくりするだろーなぁ!よっし!頑張るぞ!」
その言葉を、隣の自室に逃げ込んで息を殺して聞いていた。
「…ロミオ」
今度こそ、死なせない。誰にももう辛い思いなんかさせない。目の前で失わせたりしない。
絶対に、私が護る。必ず、この手で——。
- Re: GODEATER2—フューチャー・オブ・ブラッド— ( No.28 )
- 日時: 2014/11/10 23:19
- 名前: 諸星銀佳 (ID: JnkKI7QF)
今回のミッションは、ブラッドが2つに分かれて行動する。マキ・ジュリウス・ロミオの三人はサテライト付近のアラガミを一掃する。シユウ・クアトリガ・ヴァジュラなど、大型アラガミを任された。
あのときこそ苦戦したが、今のマキには相手にならない。クアトリガを一瞬で倒すと、すぐさまシユウにかかる。ジュリウスとロミオは、あっと言う間に倒されてしまったクアトリガを見て唖然としていたが、マキに喝を入れられ、目の前のヴァジュラに集中することにした。
無事にミッションを終え、拠点まで戻った三人。もう一班もあと一体まで迫った。だが、赤い雨が近づいてきている。極東の神機使いの班も住民の護送が終わりそうだった。あとは神機兵に任せるとのこと。
——さて、此処からが本題だ。
心臓の鼓動が早くなる。
——落ち着け、サカキ博士との作戦を思い出せ…。
『アイテムの活用…ですか』
サカキが走り書きしたメモに目を通す。
『そうだよ。君の話によれば、ロミオ君は以前遭遇したアラガミと戦うことになる。赤い雨の中での戦闘は極めて危険だ』
メモの内容はこうだ。
シェルター付近をギルバートに任せ、ジュリウスの後を追う。二人が戦闘を行う前にスタングレネードで離脱。アラガミをサテライト拠点から引き離し、十分な距離を取り次第ホールドトラップと偽装フェロモンの薬を注入したアラガミ細胞を設置する。
『そして、最後はロミオ君次第、というところかな』
『ロミオ…次第?』
『その戦いの後、周囲のアラガミが離れていったそうじゃないか。君たちが持っている『血の力』…これが目覚めたんだろう。これに賭ける』
頭の中で反復する。住民を移動している最中、マキはロミオに話しかけた。どことなくそわそわしているロミオは突然話しかけられたことで、若干肩を震わせた。
「一人じゃないからな」
「え?あ…おう」
このときの言葉を、彼はまだ理解できていなかった。
遂にその時はやってきた。
神機兵が活動を停止した。ロミオが駆け出す。その後を追い、ジュリウスも飛び出していった。ジュリウスに此処で食い止めろといわれたマキも、彼にバレぬ様、防護服を手に取ろうとした。
「おい!副隊長!ジュリウスの話を聞いていなかったのか!?」
ギルバートが肩に手をかけ止める。マキはその手を優しく下ろす。
「行かせてくれ…安心しろ、無茶はしない」
「シエルのときにも行ったよな!?取り返しの付かないことになる前にやめて——」
「取り返しの付かないことになる前に行くんだ」
ギルバートの言葉を遮るように言った。
「お前なら、一人で此処を護れるよな?ギル」
彼の苦々しい顔を見て、罪悪感でいっぱいになったが、今は人命最優先で動かなければならない。
「…後で覚えておけ」
そう言って、彼は神機を取りにシェルター内部に消えていった。マキはその姿を見送ると、防護服に身を包み、車を走らせた。
ロミオが走っていると、後ろから轟音が聞こえてきた。振り返ると、ガルムの姿があった。踏まれそうになったところを紙一重で避けたが、すぐそこにガルムは来ていた。ロミオが動けないでいるところに、ジュリウスが助太刀に入る。息つく暇も無く、白いアラガミがガルムを引き連れ、こちらを睨んでくる。白いアラガミは咆哮を上げると、こちらに向かってきた。それに対抗するように二人も向かっていく。斬りかかろうとしたが不意にジャンプをし、右足で薙ぎ払う——
その時、二人の目の前が光に包まれた。
「…?」
目の前の無数の大型アラガミが動きを止める。
「二人とも!!」
声の先には、見慣れた車の姿があった。そこには見慣れた女が乗っていた。
「早くしろ!」
呆気にとられ、暫く動けずに居た二人。だが、マキの怒号にただならぬものを感じ、車に飛び乗った。マキは車を急旋回させ、北の集落から離れていく。アクセル全開で飛ばす車でジュリウスが叫んだ。
「何故来た!ギルと護れと言っただろう!」
「いいから黙って私の言うことを聞けこの馬鹿野郎共!」
マキの口調は女らしいとは言えないが、此処まで辛辣な言葉を聞いたとことが無かった。
「後ろから来てる!銃撃で対処し、ギリギリまで引きつけろ!」
言われるがまま、二人は銃を向ける。ジュリウスが怯ませ、ロミオがダメージを与える。二人の活躍で、一体のガルムが地に伏せた。
——後もう数キロ離したところで実行する!
「…あら?」
フライアの自室でラケルは首を傾げていた。
「生贄が…捧げられていない…?」
手元のモニターで原因を探る。そして、その答えが分かると、ラケルは不気味に笑う。
「ふふっ…面白いことを…してくれますね…」
「しっかり捕まってろよ!」
思い切りハンドルを切り、マキがアラガミの正面を取るような態勢になると、ホールドトラップを二つ配置。見事に引っかかった。その隙にマキは車を飛び降り、近くの岩の陰に偽装フェロモンを仕込んだアラガミ細胞を投げ入れる。地に落ちる姿を見届けることなく車へと走り出し、来た道を全速力で戻っていった。
その手際に、二人は呆気にとられた。
「警戒を怠るな、二人共」
そんな二人に釘を刺すかのように、マキが前を見据えながら叫んだ。
「なぁ…副隊長」
ロミオが恐る恐る言う。
「どうして…なんで」
少しの間だけ後ろを振り向き、微笑んだ。何か言おうとしたようだが、その表情は一瞬で変わる。
「ジュリウス!運転を代われ!」
ジュリウスはいまいち状況が飲み込めていないようだが、言われるがまま運転を代わる。でもそれは何故なのかすぐに分かった。後ろから轟音が聞こえてきた。アイテムの効果が切れた様だ。音と匂いでこちらを追ってきたらしい。ロミオが神機を構える。マキも同様に構え、ロミオの肩に手を置いた。
「あとはお前に賭かっているんだ、ロミオ」
「え、俺?」
「爺ちゃんと婆ちゃんを救いたいなら…できる。お前は優しいから、自分の為じゃなく、人の為に力を発揮する。大丈夫…」
「一人じゃないからな」
ロミオは目を見開いた。今になって、先程のマキの言葉の意味が分かった気がした。あの時と同じ、自分は独りで飛び出して行った。
仲間に置いていかれた気がして自棄になった。独りで戦おうとした。出来もしない癖に。だが、仲間は自分を見捨てずに探してくれた。共に戦ってくれた。
——俺は、一人じゃない。
マキが銃撃で応戦していたが、弾切れになってしまった。それを良いことに二体のアラガミがマキ達を襲う。
「あぁぁぁっ!!」
ロミオがマキの前に立ちはだかり、銃形態の神機を剣形態に直す。
「いっけぇぇ!!」
横一閃。ただ斬っただけではなかった。軌跡は赤い光を身に纏い、二体のアラガミの足を切断した。そして、そのアラガミは、突然立ちどまり各々違う方向へ駆け出していった。
ロミオは肩で息をし、片膝を付く。
「これがお前の力だ、ロミオ。作戦成功だ。お前のお陰だな」
- Re: GODEATER2—フューチャー・オブ・ブラッド— ( No.29 )
- 日時: 2014/12/05 11:51
- 名前: 諸星銀佳 (ID: kQNjeZt9)
「大丈夫そうですね。はい、終わりましたよ」
一夜明け、ラボラトリで黒蛛病の検査をしてもらったマキ達三人。三人とも陰性で事なきを得た。だが、上層部からは三人の勝手な行動に懲罰処分となりそうだったが、神機兵の突然の停止及びサテライト住民の救助が加味され、不問となった。
「それにしても、なんで急に止まったんだろうな、神機兵」
ロミオが頭の後ろで手を組みながら考えていた。
「そうだ。それについて聞きたいことがあったんだった。悪い、二人とも。先に行っていてくれ」
「どこに行く副隊長」
ジュリウスに止められたが、気にせずサカキの元へ向かった。
「これで、準備は出来ました」
マキは盗聴器に録音した内容を聞かせ、今回起こった事件を詳細に話した。
「覚悟は出来ています」
「…もう、後戻りは出来ないと思ってくれよ」
「…はい」
二人は部屋を後にしようとしたときだった。部屋の外にはジュリウスがいた。
「どこに行くといっただろう、副隊長」
「見れば分かると思います、サカキ博士の部屋です。これから用事があるので博士と一緒に外に出てきます」
マキが歩みを進めようとしたときだった。ジュリウスは彼女の行く手を遮るように立ちはだかる。
「一人で、何をしようとしている。何を抱えているんだ」
「前にも言いました…今は、待ってくれって。あと少し…なんだ」
ジュリウスが追い討ちをかけようとしたとき、サカキがそれを制した。そしてそのまま二人はその場を去っていった。
「…」
エレベーターの中でマキは小さく震えていた。サカキは優しく声をかける。
「怖かっただろう…辛いだろう」
マキは頷いた。ジュリウスが怖いのではない。『ジュリウスがまたいなくなってしまいそうで怖い』のだ。彼を巻き込めば、ラケルはまた必ず何か仕掛けてくるだろう。自分の単独行動にしておけば、彼やロミオに目が向くことは無い。自分を潰す為に対策を練ってくるはずだ。なんせ最高の頭脳と持つと言われている科学者だ。自分の知識と技でどれだけ耐えられるか。
無論、自分が死ぬつもりも、誰かを死なせるつもりも無い。
「優しいから…ジュリウスは。ロミオも。その優しさが、怖い。自分のことは二の次だから、また、死んでしまいそうで。どこかに行きそうで
。嫌なんだ…傍にいて欲しいんだ。ずっと…」
「……彼が、好きかい?」
マキは小さく頷いた。
「好きじゃなきゃ…過去にまで来てこんなこと…しません…」
彼女の頬に涙が伝った。
扉をノックする音。部屋の中から入室を促す声が返ってくる。正装をしたマキとサカキはラケルの目の前に立つ。
「マキ…昨日はご苦労様でした。貴方の行動には驚かされてばかりです…今後も楽しみですね」
「どうも」
ぶっきらぼうに返答する。そしてそのまま俯く。
「サカキ博士…今日は、どういったご用件で?」
「まぁ、今回は付き添いみたいなものです。本命は、こっちですから」
マキを指す。ラケルが首をかしげる。マキは机の上に音も立てずに盗聴器を置いた。顔をあげ、ラケルを見つめる。
「本日は、貴方に伺いたいことがあります。お聞かせ願いますか」
その瞳は絶対零度の冷たさを放っていたが、反面怒りに満ちあふれているようにも見えた。常人が見れば声も出なくなるような眼差しだった。文字通り、人を殺せる瞳をしていた。
- Re: GODEATER2—フューチャー・オブ・ブラッド— ( No.30 )
- 日時: 2014/12/28 19:04
- 名前: 諸星銀佳 (ID: checJY8/)
マキがことの全てを話そうとしたときだった。扉が開く音がした。振り返ると、ロミオの姿があった。
「ロミオ…?なんで」
「なんでって…ラケル博士に呼ばれて」
ラケルのほうを見返すと。優しく微笑んでいるように見えたが、今のマキにはただの冷笑にしか見えない。
「ロミオ…おめでとう、血の力が覚醒しましたね…貴方の力は…アラガミのオラクル細胞の活動を停止させる力…アラガミに囲まれても仲間が危機に陥れば、アラガミたちを後退する…」
「成程…つまり、『アラガミを強制的に散開させる力』ということか」
サカキもこれは興味深いとばかりに顎に手を当て思案する。マキはラケルに気付かれないように盗聴器を回収する。このどさくさに紛れてラケルに処分されるかもしれない——そう思ったからだ。
「えぇ…『離散』とでと言いましょうか」
「アラガミを…『離散』させる力…」
「聴力の良いアラガミを相手しているとすぐに集まってきてしまいますが…ロミオ、貴方の血の力で乱戦を避けられるようになるかもしれませんね…」
ロミオは満面の笑みを浮かべた。これでやっと皆の役に立てる、とでも言いたげな。
——まずい、ラケルのペースだ。なんとしてもこの証拠で査問会に訴えてやるんだ…
沸々と湧き上がる怒りをコントロールし、反撃のチャンスを伺う。
「ところで、なんで副隊長はこんなところにいるんだよ」
「ちょうどいい。ロミオも聞いていけ。知らないほうが良かったかも知れないが…私たちの生命に関わることだ。聞く覚悟があるなら…残れ」
ロミオはその場を動かなかった。顔色は蒼く、額には得体の知れない恐怖から来る汗が浮かび、体は硬直し、いかにも緊張状態だったが残る覚悟を決めたようだった。
「…話を戻します。ラケル博士。貴方のやろうとしたことは非人道的だ。これを聞いて下さい」
盗聴器から音声が流れ始めた。その内容を聞いていたロミオはまだ理解ができないというような表情だ。終了音がなるとマキは畳み掛けた。
「貴方は神機兵の生体制御装置をクジョウの自律制御装置の役に立つと言ってデータを渡した。そして、それを自分ではなくクジョウ博士が作ったことにして欲しいと言った。普通に聞いただけでは何も罪にはならない…しかし、問題はその後。昨日起こったことだ。その貴方が作った生体制御装置が故障し、神機兵が止まった。これによりサテライト住民の避難が赤い雨の中、神機使いが行うことになった。そして、逃げ遅れた住民を助けようとしたジュリウスとロミオを…命の危機に晒した…!!」
「え…?」
ロミオの顔が先程より蒼ざめていった。
「な、何が言いたいんだよ…訳が分からねぇ…」
その声は震え、瞳には涙を浮かべていた。その姿にひどく心が痛んだが、マキはラケルを問い詰めるのを止めなかった。
「貴方は、裏で神機兵を操っていた。ロミオを殺し、自分の『計画』を実行するために…しかも、自分が起こした罪を人に着せた…?許されるとでも思っているのか…?貴方がやったことは人として最低の行為だ!」
ラケルは俯き、何も言わないままだった。感情の高ぶりを抑えきれなくなったマキに代わり、サカキが続けた。
「貴方の体はオラクル細胞の暴走で制御が利かなくなってきているんでしょう?知らないうちに人間を辞めていたんですね」
「ふふ…面白いことを仰るのですね…貴方がたは…一体、私の何を知っているというのですか?」
口調はいつもと変わらないが、凄みが増している。どんな屈強な戦士でも言葉を失いそうだ。
平静を取り戻したマキがラケルに最後の一押しをする。
「この件は、査問委員会に提出します…言葉巧みに人を巻き込んで全世界がアンタの味方になったとしても、私だけはアンタを絶対に許さない…!」
ラケルは冷笑をマキに浴びせた。しかしマキは見ることをせず、部屋を後にしようとする。
「行くぞロミオ。お前の力についても全員に話す必要がある」
「え?ちょ、待てよ副隊長!」
マキの後を追うようにロミオも部屋を後にした。
「まだまだ子供のようだ。大人に対する礼儀と言うものを知らないね」
サカキは盗聴器を回収し、ラケルに向き直る。
「貴方のその頭脳を…別のところで使って欲しかったものだ」
そう言い残し部屋を後にした。独りになった部屋でラケルは黙ったままだった。
翌日、ラケルの処分が決まった。だが、その頭脳とレアの必死の訴え、またロミオを殺そうとした動機が不十分であることからフライア追放処分を免れ、1年の懲罰房生活の後、厳しい管理体制の下での研究を余儀なくされたとのことだった。
その報は瞬く間に全支部へと届いた。多くの人が残念がっている中、ただ一人、マキは拳を握り締めていた。
- Re: GODEATER2—フューチャー・オブ・ブラッド— ( No.31 )
- 日時: 2015/01/07 12:43
- 名前: 諸星銀佳 (ID: checJY8/)
§第四章 束の間の安息§
「何故ですか!納得できません!」
マキは早々にサカキの部屋へ言った。
「無理も無い…だが、向こうの言い分も正しいだろう?ロミオ君が命の危険に晒されたのは確かだが、それは彼が飛び出していったからだろう」
「しかし、それは神機兵が止まったから仕方なくだ!止まっていなかったらロミオはそんな風にしなかっただろう。すなわち、その責任はラケルにある…」
「マキ君」
彼女の言葉を遮るようにサカキが言葉を被せ、首を横に振った。
「一年だ。それまでに今以上にラケル博士に対抗できるだけの知恵と力を手に入れなさい。協力は惜しまないからね」
黙り込むしかなかった。
ラウンジに行くと、ロミオの血の力覚醒を祝うための食事が所狭しと並んでいた。
「あ、ブラッドの副隊長さん!探してたんだよ!ムツミ、頑張りすぎちゃったみたい!沢山あるから冷めないうちに食べてね」
ニコニコとムツミが食事を勧めてきた。マキは軽く返事をし、人が少ない窓際の席へと腰掛けた。辺りを見回すと、ロミオを中心に賑やかな会食となっている。第一部隊やクレイドルも一緒だ。
視界の隅に人影が映った。テーブルの上に取り分けた食事とグラスを置いた。
「お疲れ様でした」
シエルだった。
事の一切をシエルに話すと、彼女は驚きこそ見せたが慌てる様子は無かった。
「そうなんですか…君が大変なときに何も出来なくて…ごめんなさい」
「シエルは何もしていない。私たちが不在の間、ブラッドを護ってくれてありがとう」
「いえ…」
気まずそうに、下を向くシエル。
「まぁ…暫くまた任せることになるな」
「どういう…事でしょうか」
「またというか、いつもシエルに任せてるか…いや、うん…言いにくいんだけどな。私は数日懲罰房処分だ。心配するな。博士とは離れたところだ…盗聴したんだ。妥当な処分だ。何日になるかは分からないが…臨時の副隊長として、宜しく頼む」
シエルは悲しげな表情を浮かべた。申し訳なくなって頭を軽く叩く。なんとか話題を切り替えようと、彼女が運んできた食事を口に運びながら考える。そしてやっと出た話題がこうだった。
「ロミオも血の力が覚醒したことだし、より戦局が優位になったな。お前たちの力を合わせれば、無敵だな」
「君も…必要です」
それ以上会話が続けられなくなって——実際には続けたら彼女を傷つけると思って——、マキは食事を掻き込んだ。ごちそうさま、と彼女に告げてその場を去った。
程なくしてマキは懲罰房に入った。その間はマキが頼んでいた戦術理論の本をサカキに運んでもらい、熟読した。難しかったが、今まで経験してきた戦場の風景を思い出しそれに当て嵌めて考えていくと納得できた。また筋力が衰えないように筋トレをしたりもした。
それと同時に、彼女は考えていた。
『お前たちの力を合わせれば、無敵だな』
そう言った自分。ジュリウスの「統制」——味方をバースト状態にし、チームの攻撃力上昇を図る——。シエルの「直覚」——敵情報をいち早く伝えるだけでなく、分断している仲間の敵情報をも知れる——。ギルバートの「鼓吹」——一時的に攻撃力上昇——。これにジュリウスの力が加わればどうだろう。圧倒的な力になる。また、ナナの「誘引」——自分を犠牲にする代わりに他のメンバーの攻撃力と防御力上昇——。そんなナナが危なくなったら、ロミオの「離散」だ。
それに比べて自分の力は「喚起」——戦闘中に効果はないものの、他の神機使いと親しみあううちに相手の潜在能力を覚醒させるという能力——。血の力が覚醒しているブラッドに必要な力だろうか。いずれ第一部隊やクレイドル、防衛班の面々に力を授けて欲しい、という名目で使うぐらいだ。今まで彼らの血の力の覚醒を助けてきたとはいえ、戦闘中はなんら使えない力だ。
「私は…ブラッドに、必要なんだろうか…」
そう思っていたから、シエルに「君も必要」と言われた後に言葉を続けられなかった。
皆を護る。そう思っていたのに、もう、必要ないのかもしれない。ラケルから護れればいいのかもしれない。
考えれば考えるほどやるせなくなって、マキは全てを投げ出して布団にもぐった。
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