二次創作小説(映像)※倉庫ログ

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GODEATER2—フューチャー・オブ・ブラッド—
日時: 2016/04/03 00:43
名前: 諸星銀佳 (ID: CN5DwmtD)

こんにちは。諸星です。

もう此処には長いことお世話になっているのですが長続きせず…すべて途中で投げ打ってしまいました。
ですが、最近出会ったゲーム…「GODEATER2」をやって、また書きたくなってしまいました。

なんとか、頑張っていきたいと思いますので、暖かい目で見て頂けたら幸いで御座います。

※本作は「GODEATER2」を基にしたフィクションです。
※ストーリーをクリアしていない方は読まないことを推奨致します。
※ジュリウス×主人公♀の要素を含ませることを考えているので、苦手な方はブラウザバックをお願いします。

—登場人物—
『特殊隊ブラッド』
・神野マキ(カミノマキ)…フェンリル極致化技術開発局ブラッド隊隊長。男勝りな極東出身のゴッドイーター。血の力『喚起』の持ち主。今も、仲間を失ったことは自分の所為だと思っている。
神器:ショートブレード・全ての銃身(ヘアスタイル→3,アクセサリ→なし,共通アクセサリ→13:色2,ヘアカラー→銀,フェイス→8,アイカラー→11,ボイス→10)
・ジュリウス・ヴィスコンティ…ブラッド元隊長。現在は「螺旋の樹」の創造主として一部の市民から信仰の対象となっている。表向きは故人扱いだが、彼の特異点がコアとして樹の内部に存在することは間違いない。しかし詳細は一切不明。
・香月ナナ(コウヅキナナ)…ブラッド所属。マキとは同期。血の力『誘引』の持ち主。明るくて大食い。
・シエル・アランソン…ブラッド隊副隊長。血の力『直覚』の持ち主。冷静で戦術理論へ造詣が深い。
・ギルバート・マクレイン…ブラッド所属。血の力『鼓吹』の持ち主。ブラッドの兄貴分的存在。
・ロミオ・レオーニ…元ブラッド隊員。2074年、サテライト拠点の防衛任務にてKIA(作戦行動中死亡)と認定。仲間とのコミュニケーションのとり方が上手く、フライアや極東では頼りにされていた。

『極東支部ゴッドイーター』
・アリサ・イリーニチナ・アミエーラ
・藤木コウタ(フジキコウタ)
・ソーマ・シックザール
・エリナ・デア=フォーゲルヴァイデ
・台場カノン(ダイバカノン)
・雨宮リンドウ(アマミヤリンドウ)
・真壁ハルオミ(マカベハルオミ)
・エミール・フォン・シュトラスブルク
・キグルミ

『その他の登場人物』
・葦原ユノ(アシハラユノ)
・レア・クラウディウス
・ラケル・クラウディウス
・竹田ヒバリ(タケダヒバリ)
・フラン=フランソワ=フランチェスカ・ド・ブルゴーニュ
・ペイラー・榊(ペイラーサカキ) andmore…。

※極東ゴッドイーター・その他の登場人物については登場しない可能性があります。詳細プロフィールはGODEATER2の公式ホームページをご覧下さい。また、今後オリジナルキャラが登場する可能性があります。

序章 >>3
第一章 夢か現か >>4-9
第二章 決意と覚悟 >>10-17
第三章 忍び寄る悪夢 >>18-30
第四章 束の間の安息 >>31 >>33-39 
第五章 変わる世界 >>40-48

番外編 副隊長の見た夢 >>32
 

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Re: GODEATER2—フューチャー・オブ・ブラッド— ( No.32 )
日時: 2015/01/09 22:12
名前: 諸星銀佳 (ID: checJY8/)


§番外編 副隊長の見た夢§

——夢か現か幻か。
よく分からない世界にいると感じるときがある。夢にしてはあまりにも現実味を帯びていたり、夢と分かっても見ている間はそれが現実だと思っていたり。
そんな世界に、私は放りこまれた——

見たことの無い乗り物を全力で動かしている。車にも似たタイヤが前後に一つずつ付き、握っているグリップで進行方向を体重移動で決めたり、車でいうブレーキのような役割を果たしている。マキはその乗り物の後ろに見たことも無い女性——お嬢様というべきか——を乗せていた。顔は朧げでよく見えないが、服装からするとどこかのお金持ち、と言った感じだろうか。
「くそっ、なんて速さなんだっ」
アラガミに食われる前であろう風景がマキの横を通り過ぎていく。建物は林立し、生活感が漂っている。彼女が全力で駆け抜けている道の斜め下には川が流れている。
「撒かないとっ…!」
マキは思い切り曲がり、路地裏に入った。すると、見覚えのある人が立っていた。
「シエル…?」
シエル特に何を言うわけでもなくそこに立っていた。ただ一ついつもと違う点を上げるとすれば、手になにか白い塊を持っていたことだ。マキは止まろうと思ったが、いかんせん追われている身だ。後ろに乗せているお嬢様、を追っ手に渡すわけには行かない。
マキがシエルの前を通り過ぎようとしたときだった。シエルはタイミングよく白い塊を乗り物についた籠に投げ入れた。
「…?」
少し速度を落としつつ、その塊を手に取った。どうやら、紙のようである。くしゃくしゃに丸められていた。広げると、地図のようなものが書き記されている。
——此処に行けということか…?
マキは記された場所に向かうことにした。

追っ手を何とかかわし、一息ついたマキ。
「ここまで来れば…大丈夫…だろ…」
後ろに乗っているお嬢様、にも声をかける。なんとか平気のようだ。マキの横を沢山の人が通りすぎていく。車が行き交い、見たことも無い三色の光が一定時間で点滅を繰り返していく。
アラガミに食われる前の世界はこのような感じだったのかと思いながら、荒くなった呼吸を整えていたときだった。急に悪寒を感じた。
辺りを見回すと、物陰から見覚えのある人物が姿を現した。
帽子を目深に被り、片まで髪を伸ばし、紫をあしらった服を着た「彼」。
「——ギル…!」
ギルバートはこちらに気付き、再び動き出した。彼もまた、マキと同じ乗り物に乗っている。
「くそっ、もう追いついたかっ」
マキは進行方向を急転換させ、来た道を戻っていく——と言っても、先程来た道とは川を挟んだ向こう側だが——。

マキとギルバードはお互いに全力で逃げ、追っていく。時には坂を、時には広場を駆け抜けていった。
だが、差はみるみる縮まっていく。当然だ。まずは女子と男子の差。これだけでも十分大きいのにも関わらず、マキは後ろに見知らぬ女性を乗せている。此処まで逃げてきただけでも奇跡と言うべきだろう。程なくしてマキは捕まった。
「待て…ギルっ!」
荒い息の中でマキは彼を止めようと懇願した。しかし、彼は振り向きもせず、乗せていたお嬢様だけを連れ去っていった。彼女は嫌がっていたが。強引に連れ去られてしまった。
「どうして…ばれた…?姿は…見えなかった筈…」
マキは倒れた乗り物の籠に入った紙を拾い上げた。するとそこにはなにか小さなものが付いていた。
「GPS!?」
普段は、オペレーターが位置情報を確認するためにつけているぐらいだろうか。それ以外では見たことが無い。
「くそっ…くそっ…」
まだ整わない息の中、マキはただ只管に悔しがっていた。

「!?」
目の前にはいつもの天井が広がっていた。息は若干荒い。それが夢だと気付くのに時間はかからなかった。
「夢…か…」
それにしても奇妙な夢だった。なんだかどっと疲れたマキ。今日は特にミッションが無かったのが幸いだ。ゆっくりとラウンジへ向かった。
「遅かったな副隊長」
そこにはムツミから食事を受け取るギルバートの姿があった。彼はマキのげっそりとした顔に何か違和感を覚えた。
「なんかあったのか?」
「いや…少し、変な夢を見ただけだ」
「夢?」
ギルバートの隣に座り、ムツミに軽く何か作ってくれ、とオーダーする。
「どんな夢だったんだ?」
マキはなんだか可笑しくなって一人で笑った。ギルバートはさっぱり分からないといった様子だったが、この後のマキの一言で驚いた彼の顔を彼女は一生忘れないだろう。

「お前を、一瞬嫌いになりかけた夢だよ」

——そんな夢を見たんだ。


※この話は執筆者である私が見た夢を参考に描きました。あやふやな部分もありますが、この夢を見て私が本当に一瞬ギルを嫌いになりかけたのは内緒です。※

Re: GODEATER2—フューチャー・オブ・ブラッド— ( No.33 )
日時: 2015/01/21 21:49
名前: 諸星銀佳 (ID: e7DIAQ8b)


サカキは牢獄に居るマキに新しい本を渡すべくやってきたが、当の本人は寝入っている。本は乱雑に置かれ、食事も摂っていないようだ。
「…マキ君」
サカキは声をかけた。すると布団がもぞもぞっと動き、マキが顔だけを覗かせた。
「神機使いは体調管理が大事だよ」
「…博士」
「なんだい」
いつもよりトーンが落ちた覇気もない声を聞き、サカキは違和感を覚えた。なにか、よからぬ事を考えているのではないかと。
「私は、ブラッドに必要なのか…?」
予想は的中だった。
「当たり前だよ。君が今までブラッドを引っ張ってきてくれたんじゃないか」
「本当に?」
マキは体を起こし、サカキに向き直る。
「私の血の力は『喚起』。戦闘中では一切役に立たない。ブラッド全員が血の力に目覚めた今…私はブラッドに必要なのか?各々の血の力が組み合わされば…無敵だ。どんなやつにも勝てる。ラケルの脅威…今回みたいな事案から護れたらそれで、良いんじゃないのか」
過去に戻って、成すべきことを成し遂げようと奮起して今までやってきた。ラケルから、ジュリウスを助けたい。ロミオを助けたい。これは何よりの願いだ。
しかしそれを実行するということは、螺旋の樹を消滅させるということ。つまり、赤い雨の被害にこれからも苦しみ続けるということ。
それを実行するということは、ラケルが生きている限り、彼女に止めを刺さない限り、今後もブラッドは命を狙われ続けるということだ。
そして、過去を変えるということは未来を変えるということ。マキが残してきた仲間達の身に何も起こらないとは断言できない。

だから、過去も未来も全部まとめて救ってやる、と思っていた。でも結局、一人で出来ることは限られていた——それどころか、何も出来なかった——。
意気消沈としているマキに、サカキはある言葉を授けた。
「護り、護られる」
マキは小首を傾げる。
「君がブラッドや極東の皆を護っているように、君もブラッドや極東の皆に護られていることを忘れてはいけないよ。君が危険な状態になったとき、何度助けてくれた?落ち込んでいるときに何度声をかけてくれた?」
「…数え切れないな」
サカキは微笑んだ。そしてそのままの笑みで続ける。
「互いが互いに足りないところを補う。完全とまではいかないが、それは一人では到底敵わない力を持てる。『仲間』というのも、一つの武器だ。ラケル博士になくて、君にあるもの。それは我々人間が持てる最大の武器だ」
サカキの話にどこか引き込まれる様に目を見開いて聞いていたマキは、我に返って乱雑に置かれたままの本を返し、新しい本を受け取った。
「そうか…一人でやっていたと思っていたことも、あいつらに助けられていたんだな…なんで、気付かなかったんだろ。あいつらに私に頼れと言っておきながら私は…頼ろうとしていなかったんだな」
でも、と続けた。

「暫く、ブラッドから距離を取りたい。」

それは、マキにとって一大決心だった。

Re: GODEATER2—フューチャー・オブ・ブラッド— ( No.34 )
日時: 2015/02/03 22:05
名前: 諸星銀佳 (ID: e7DIAQ8b)


 それからというもの、マキは第一部隊やクレイドル、防衛班といった数々の神機使いたちと共に戦い、力を授けた。使い方に大分慣れてきたところで、いざ本番。まずはコウタ・エリナ・エミールの第一部隊だ。
「っしゃ!宜しく頼むな」
「宜しくお願いします、先輩!」
「正義は、勝つ!」
非常に元気な第一部隊の面々。だんだん心を開いてくれてとても嬉しい。特にエリナ。彼女は始めこそツンケンしていたものだが、次第にマキの実力を認め、慕うようになった。それからと言うもの、成長が著しい。もっと鍛えていけば、かなり優秀な神機使いになるだろうと、マキは思っていた。
コウタはもうベテランだ。言わずもがなである。支援が上手い。リンクバーストをすれば高火力となり、その辺の新型神機使いより上手だ。
エミールは突っ込んでいきがちだが、持ち前の騎士道精神——かどうかは分からない——でめげずに何度も攻撃を叩き込んでいる。
この三人で連携を高めていけば、極東最強と謳われた第一部隊の再来も過言ではないだろう。
「よし…今回の敵はコンゴウだ。私は三人で上手いこと連携できるようサポートに回る。頑張ってくれ」

「「「了解!」」」

4人は出撃ゲートを飛び出した。

マキはスナイパーのステルス状態になりながら高台で指示を出す。
「エリナ!側面に回れ!正面はダウンしてから狙うんだ!」
敵の真正面にいるので被弾をしやすい状態のエリナ。側面に回ることで被弾率を下げる。
「はい先輩!」
「コウタは距離を取り、サポートに回れ。正面から撃て。ダウンしたらオラクルを全部使うつもりでいけ!」
銃形態しかない分、ガードが出来ないので近くに行くことは極めて困難。なるべく距離を取り、隙を突いていくのが最善だろう。二人のミスを補う形で進めていく。
「おっけい!エミール!ダウンしたぞ!叩き込め!」
「騎士道——!」
ダウンするまであまり攻撃を行わない。その為被弾率こそ少ないものの、エリナの負担が増える。
「エミール。普段もそれくらい突っ込んで行け。エリナだけに任せるな!」
その時、無線が入った。
『緊急事態です!想定外のアラガミが作戦エリアに侵入します!』
「ちっ…こんな時に…ヒバリ、何か分かるか」
『ヤクシャです!』
ヤクシャ。耳が良いのでこちらの戦闘音を聞きつけ乱戦になるかもしれない。ここはステルス状態のまま近づき、一人で相手をするしかなかった。
「コウタ!私はヤクシャの相手をしてくる。終わり次第、こちらに合流してくれ」
「了解!」
マキは高台から飛び降り、位置情報の通りの場所へ向かった。

まだ聞きつけていないようだ。一人で辺りを見回している。
——ここは挑発フェロモンを飲んで向こうに生かせないようにするしかないか…
無線でコンゴウがダウンした情報が入る。あと少しなようだ。一気に畳み掛け用としたその時。ヤクシャが戦闘音に気付いた。マキは慌てて銃を乱射する。挑発フェロモンを飲み、敵に狙われやすくする。
「おっと。お前の相手は私だ。行くぞっ」
マキはヤクシャに突っ込んでいった。

無事にミッションも完了し、帰投するだけとなった。
「指示分かりやすかったよ、流石だな!」
「しかもヤクシャ一人で倒しちゃうなんて!私たちが三人がかりでコンゴウ倒してたのにさー」
「しかし、今回の戦いで何か得られた気がする…騎士は常に高みを目指さなくてはな!」
三人がコンゴウを倒し終えマキに合流しようとしたとき、目の前で倒れていくヤクシャを見たのだった。
「いや…今回は調整ミッションだったし、上手くいかないのも無理はない。何回か実践を積んでいけば確実に強くなる。お前たちなら」
「先輩…!」
露骨に嬉しそうにするエリナが可愛らしく、頭を撫でたくなったが、「子ども扱いしないでよ!」と言われるのが目に見えたのでやめておいた。
「しっかし、最近出ずっぱりじゃないのか?この前は防衛班のやつらと連続でミッションに行ってたし、昨日だってアリサと一緒に行ってたろ?大丈夫なのか」
「あぁ。前からこんなもんだ。アリサよりは忙しくないし、防衛班とのミッションの後は丸一日休んだし…あ、半日か」
「無茶して倒れたりしないでよね!」
「はいはい」
そんなこんなで第一部隊とのミッションは終了。あとは実践で経験を積むだけとなった。明日は第四部隊のハルオミとカノンの二人だ。ブラッドアーツ・バレットの実践投入と言うよりはカノンの誤射率ダウンに行くようなものなのだが…。

「なるようになるか…」
マキは溜息を吐いた。

Re: GODEATER2—フューチャー・オブ・ブラッド— ( No.35 )
日時: 2015/02/12 18:06
名前: 諸星銀佳 (ID: e7DIAQ8b)


「本日は、宜しくお願いします!教官先生!」
教官先生、とはマキのことである。以前、カノンのオラクルリザーブ解禁をどうするや否やで関わっていたときに付いた名前だ。
「今日はカノン、お前のためのミッションだと思ってくれ。いいか、よく狙って撃つんだ。射線に人が来たら避ける。ハルさんはブラッドアーツの確認ってことでいいですか」
「おーけい、おーけい!」
ハルオミは実戦経験が豊富なので特に心配する必要はないのだが…カノンの誤射に巻き込まれないかだけが不安要素だ。生傷が絶えない神機使いだが、小型アラガミ掃討任務でもボロボロになって帰ってくるハルオミが一番多い気がするのだ——それもこれもカノンの誤射にあるとは本人の目の前では口が裂けても言えないが——。
「今回のミッションはグボロ・グボロだ。動きはあまり早くないし狙いやすい。それにハルさんのブラッドアーツを確認するのにも最適だと思う…だが、ほぼ二人でやると考えると少し荷が思いと思う…そこで」
マキが急に喋るのを止めたので何かと思ってハルオミとカノンは後ろを振り返った。そこには二人の至近距離でキグルミが立っていた。
「どぉっわ!」
「きゃぁあ!」
驚くのも無理はないと思う。実際マキも若干声を上げそうになった。
「か、影の実力者、キグルミに同行してもらう。彼…?彼女……キグルミのブラッドアーツも確認と言うことで…いいよな?」
キグルミは両手を挙げて肯定した…ように見えた。未だに謎が多く顔も性別も何一つ分かっていない。ヒバリに聞いたが蒼ざめた顔で「ご容赦ください」と言われたほどだ。
「よし…行くぞ」

先と同じくスナイパーを持って行き、ステルス状態になってから高台で文字通りの「高みの見物」をする。
「カノン!まだだ!暫く溜めろ!」
「は、はい!」
衛生兵としては文句無しなのだが、いざ攻撃となるとそうは行かない。誤射をしても他人の所為にし、所謂「トリガーハッピー」状態になって周りが見えなくなってしまうのだ。
「ハルさん!いい感じです!そのままの調子で!」
「いやー!お兄さん褒められると頑張っちゃうよー!」
いちいち口説き口調なので言われたこちらが照れる。だがそれで調子に乗ってしまっては意味がない——と思った矢先、ハルオミが被弾した——。
「キグルミ!カノンの射線上に——」
と注意しようと思ったその時にキグルミがカノンの犠牲者となった。だが、今までのように「射線上に入るなって…私言わなかったっけ!?」と言わなかった。
「ご、ごめんなさい…!」
これだけでも成長と言うべきだろう。彼女だけではない。ハルオミやキグルミもブラッドアーツを使いこなせるようになっていた。今回のミッションで三人の成長を感じたのだった。
「さて…さっさと終わらせるぞ」
マキはステルス状態を解き、自身もグボロ・グボロ討伐に参戦した。

「本日はありがとうございました教官先生!」
「まだまだ改善点はあるが、以前より誤射は大分少なくなったな。この調子で『敵を狙って』、『周りに人が居ないことを確認』し、『十分に距離を取って』撃つんだぞ」
くどい様だが何度も言い聞かせた。
「お疲れさんだ」
「これからもよろしく頼みましたよ、ハルさん…キグルミもな」
この二人は十分に腕があるので問題はないだろう。今後はカノンを中心とし、サポートに回れるようなミッションに定期的に行くように指示をする。
「流石、ブラッドだな」
「いえ…上から目線でなんか申し訳ないです。自分は大して何もしてないのに」
「そんなことないです!教官先生の指示は分かりやすいし、教官先生が合流してからと言うもの、あっと言う間にアラガミが倒せましたし!」
「…ありがとう」
こうやって面と向かって言われるのはもう何回目だろうか。マキは偏食因子の高い適合率とその卓越した戦闘センスで何度も危険なミッションに赴いては無事に帰還してきた。同行する神機使いたちは「貴方のおかげだ」と顔を綻ばせて言ってくる。彼女の周りの神機使いたちは、いつもマキを頼り、慕ってくれている。
だが当の本人は、それに値する人間ではないと思っている。自分ひとりだけの力ではないのに、何故そんなにも褒めるのか。もっと自分を褒めてあげれば良いのに…そう思っている。傍から見ればそれは単なるおごりにしか見えないかもしれない。だが彼女は、沢山のものを身に着けたが、同時にかけがえのないものを失ってきた。大切なもの一つ護れない自分を慕う価値なんてない…常に思っているのだ。特にブラッドの仲間に対しては。
なので彼女は、一旦ブラッドから離れ、極東の神機使いたちと触れ合うことで「自信を取り戻す」戦いに赴いている。

今回は、その「自信を取り戻す」ことが第四部隊とキグルミのおかげでほんの少しだが出来た気がしたのであった。

Re: GODEATER2—フューチャー・オブ・ブラッド— ( No.36 )
日時: 2015/03/02 20:33
名前: 諸星銀佳 (ID: e7DIAQ8b)


本日はクレイドルのメンバーでミッションに赴くことになった。このときはまだキュウビの討伐まで辿り着いておらず、リンドウは不在。現在も元第一部隊の隊長と姉の雨宮ツバキと一緒に各地を回っているらしい。
「と言うわけで、今回は三人でミッションに行こうと思う…」
同行するのは、研究がやっと終わり一段落ついたとのソーマと、昨夜遅くまでレポートをまとめていたアリサだ。
二人の顔色は優れず、目の下にはクマがあって顔はやつれている…用に見える。
「ほ、本当に大丈夫なのか…?アリサ、前みたいに倒れそうだ。無理はするなと言っただろう」
以前、ミッションに行ったときだ。過労が原因で作戦エリアに進入前に倒れてしまったことがあった。無理をするなと忠告したのに、相変わらず全部一人でやろうとしてしまうらしい。
「大丈夫です。サテライトの改善案をまとめたレポートの締め切りが今日の朝までだったので、仕方ないです」
「ソーマも…まだ色々やることがあるんだろ?」
「気にするな…アリサみたいに締め切りはねぇからな。区切りが悪かったからな」
平然を装ってはいるがその顔色では説得力がない。マキはそう思った。
クレイドルは独立支援部隊として各地を飛び回り、サテライトの候補地やキュウビのコアである「レトロオラクル細胞」を用いた技術の研究などを進めている。通常の神機使いとしての仕事だけではなく一般市民と深く関わっている、と言うべきだろうか。
以前——と言っても過去に戻ってくる前からみた「以前」なのだが——、リンドウにクレイドルに来ないかといわれたことがあった。返答はゆっくりで良いと言われたものの、まだあやふやにしていた。共に戦ってみたいと思う反面、ブラッドには思い入れがある…。複雑な心境を整理できずいた。
「——い…おい!」
「!?」
いつの間にか呆けていたらしい。
「お前のほうこそ大丈夫なのか」
「最近、出ずっぱりって聞きますよ?ちゃんと休んでますか」
心配する側が一気にされる側になってしまった。情けないと思いつつも、今日は二人の体調を考慮して任務を取りやめることにした。後で「やっぱり休んでないんですね!休暇申請出してきます!」とか「人の心配する前に自分の心配をすることだな」と言われてしまった。

ラウンジのソファーでくつろいでいたら、隣に誰かが腰掛けた。横を向くとそこにはナナの姿があった。
「副隊長ー!久しぶりー!」
「相変わらずよく食べるな」
「だって、ゴッドイーターは食べるのが仕事でしょー?」
そう言って「おでんパン」を何個も頬張っている。
「ブラッドは…どうだ」
「うん、いつもどーり。ロミオ先輩とギルがよく喧嘩してるけどねー」
そうか、と短く答えると、ナナが思い出したように喋り始めた。
「そういえば、ロミオ先輩の血の力なんだけど…あれ、『離散』じゃないんだって」
「…どういうことだ」
「難しくてよく分からないんだけど…「アラガミのオラクル細胞の活動を停止させる力」って言うのはあってるらしんだー。でも、アラガミたちが捕食にいくようになるわけじゃないんだってー。この前の任務で分かったんだけどね、今は調査中なんだってさ」
要するに「アラガミを離散させる力ではない」ということか。確かに「離散」と言う名前の力はあまりロミオに合っていないと思っていた。血の力はそれぞれの個性に合ったものになっている。逆にロミオは人々を惹きつける魅力がある。マキとナナが入隊したときも、ギルバートが入隊したときも明るく話しかけ、すぐに打ち解けた——ギルバートとはまだ打ち解けていないような気もするが——。
「対話…」
「え?何?」
「いや…なんでもない。話してくれてありがとう。詳しいことが分かったらまた連絡してくれ」
ナナは大きく頷き、去り際には大きく手を振ってきた。マキもそれに答えて振り返す。

マキは少しブラッドが恋しくなった。



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