二次創作小説(映像)※倉庫ログ

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GODEATER2—フューチャー・オブ・ブラッド—
日時: 2016/04/03 00:43
名前: 諸星銀佳 (ID: CN5DwmtD)

こんにちは。諸星です。

もう此処には長いことお世話になっているのですが長続きせず…すべて途中で投げ打ってしまいました。
ですが、最近出会ったゲーム…「GODEATER2」をやって、また書きたくなってしまいました。

なんとか、頑張っていきたいと思いますので、暖かい目で見て頂けたら幸いで御座います。

※本作は「GODEATER2」を基にしたフィクションです。
※ストーリーをクリアしていない方は読まないことを推奨致します。
※ジュリウス×主人公♀の要素を含ませることを考えているので、苦手な方はブラウザバックをお願いします。

—登場人物—
『特殊隊ブラッド』
・神野マキ(カミノマキ)…フェンリル極致化技術開発局ブラッド隊隊長。男勝りな極東出身のゴッドイーター。血の力『喚起』の持ち主。今も、仲間を失ったことは自分の所為だと思っている。
神器:ショートブレード・全ての銃身(ヘアスタイル→3,アクセサリ→なし,共通アクセサリ→13:色2,ヘアカラー→銀,フェイス→8,アイカラー→11,ボイス→10)
・ジュリウス・ヴィスコンティ…ブラッド元隊長。現在は「螺旋の樹」の創造主として一部の市民から信仰の対象となっている。表向きは故人扱いだが、彼の特異点がコアとして樹の内部に存在することは間違いない。しかし詳細は一切不明。
・香月ナナ(コウヅキナナ)…ブラッド所属。マキとは同期。血の力『誘引』の持ち主。明るくて大食い。
・シエル・アランソン…ブラッド隊副隊長。血の力『直覚』の持ち主。冷静で戦術理論へ造詣が深い。
・ギルバート・マクレイン…ブラッド所属。血の力『鼓吹』の持ち主。ブラッドの兄貴分的存在。
・ロミオ・レオーニ…元ブラッド隊員。2074年、サテライト拠点の防衛任務にてKIA(作戦行動中死亡)と認定。仲間とのコミュニケーションのとり方が上手く、フライアや極東では頼りにされていた。

『極東支部ゴッドイーター』
・アリサ・イリーニチナ・アミエーラ
・藤木コウタ(フジキコウタ)
・ソーマ・シックザール
・エリナ・デア=フォーゲルヴァイデ
・台場カノン(ダイバカノン)
・雨宮リンドウ(アマミヤリンドウ)
・真壁ハルオミ(マカベハルオミ)
・エミール・フォン・シュトラスブルク
・キグルミ

『その他の登場人物』
・葦原ユノ(アシハラユノ)
・レア・クラウディウス
・ラケル・クラウディウス
・竹田ヒバリ(タケダヒバリ)
・フラン=フランソワ=フランチェスカ・ド・ブルゴーニュ
・ペイラー・榊(ペイラーサカキ) andmore…。

※極東ゴッドイーター・その他の登場人物については登場しない可能性があります。詳細プロフィールはGODEATER2の公式ホームページをご覧下さい。また、今後オリジナルキャラが登場する可能性があります。

序章 >>3
第一章 夢か現か >>4-9
第二章 決意と覚悟 >>10-17
第三章 忍び寄る悪夢 >>18-30
第四章 束の間の安息 >>31 >>33-39 
第五章 変わる世界 >>40-48

番外編 副隊長の見た夢 >>32
 

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Re: GODEATER2—フューチャー・オブ・ブラッド— ( No.17 )
日時: 2014/08/20 22:15
名前: 諸星銀佳 (ID: FAB9TxkG)

リッカとのミッションを終え、ギルバートに呼び出されていたことを思い出したマキ。彼を呼びに行き、すっかり変わり果てた極東の地図を眺めていた。
「おお!ギルじゃないか!」
聞き覚えのある声がした。
「ハル……さん?」
「ハルさ」
マキは言いかけて口を押さえた。二人に怪訝そうな顔で見られたが、ハルオミは気にせずに続ける。
「極東に来てんなら、言ってくれりゃいいのに」
「いや……ここにいるって、知らなかったッスよ」
二人の昔話を聞きながら、どっと出た冷や汗をマキは服の袖で拭う。
——危ない…初対面の人間が名前なんか知っていたら絶対に怪しまれるところだった…
その際は、なんとかして言い訳しようと思っていたが。
「ああ、紹介する、真壁ハルオミさん。グラスゴー支部で、一緒にチームを組んでいた…ハルさん、今所属しているブラッドの副隊長です」
「ああ!ブラッドかー!うっすら聞いた。なんかすごいんだってな、よく知らないけどさ。俺は——」
ハルオミの自己紹介やカノンのことなど、もうとうに知っている。話は軽く聞き流していた。相変わらずのセクハラ発言は——聞いてないことにした。
「ギルが何かやらかしたときは、遠慮なく言ってくれ。斜に構えてるコイツの扱い、俺は相当プロだぜ?」
元いた時代と全く変わらないやり取りをして、ハルオミはその場を去った。

その後も任務を淡々とこなしていくマキ達。着実に皆力をつけていっている。
アナグラへ戻る車の中。マキが運転し、ギルバートが助手席に乗り、後ろではシエルとナナがなにやら楽しそうに話していた。
この大きさなら二人には聞こえないだろうと思い、マキはギルバートに話しかける。
「ギル…」
それはいつもより若干小さめの声。豪快な音を鳴らしながら、土煙を上げて走る車では無論、聞こえなかった。別段、深い理由があって話しかけた訳ではない。ただ、どこか寂しげに遠くを見つめるギルバートが気にかかっただけだ。
会話は諦め、運転に集中する。そして、これからのことを少し考えていた。
——ロミオが色々と焦りを感じ始めるまでは、普通に任務をこなす。考えるのはその後だ。
「生きろよ…」
先程より小さな声で言った筈だが、ギルバートはそれに気付いたようだ。彼は小さく笑った。

任務を終え、報告をしている最中、ギルバートとハルオミがラウンジへ入っていくのが見えた。マキは扉の前で聞き耳を立てた。ところどころ聞き取れない部分はあるが、ハルオミが色々ギルバートのことについて聞いているのは分かる。
『——お前んとこの副隊長!アイツ、面白そうなヤツだな』
『——柔らかい感じがして、不思議な奴です。いつだって前向きで……』
そんな会話が聞こえてきた。マキは思わず照れる。ミッションへ行こうとしていたコウタに怪しまれたが、気にせず続けた。
『——人から好かれて、何でもかんでも、すぐに背負っちまう……』
『——それでつい、一度説教じみたことをしてしまいました』
あれはそういう意味があったのかと悟る。赤い雨の中、神機兵に乗ってシエルを助けに行ったことだ。だが別段怒ってはいない。自分を心配して言ってくれたことだから、むしろ感謝さえ覚える。
『——結局、どこまでも前向きで、キラッキラしてて……そのくせ、すごい頑なで、ちっともこっちの言うこと聞きゃしないんだ……』
ハルオミは恐らく妻であったケイトさんのことを言っているのだろう。だが、その彼女はマキに似ているらしい。「頑な」「言うこと聞かない」は図星であり、ドキっとした。二人の気持ちは、元いた時代では聞けなかったことなので、ちょっと嬉しい反面、自分のことをそう思っていると言ってほしかったと思う。
——ま、女にこんなこと面と向かって言えるような奴じゃないよな。ハルさんは分からないけど。

『——いい奴ほど早く逝っちまうってのは……何でなんだろうなぁ』

ハルオミのその言葉にマキは背中に何かが走ったような感覚を覚えた。
そのとおりだ。助けてもらったおじいさんとおばあさんの身を案じて赤い雨の中を飛び出し、突然出てきた感応種からジュリウスを護るべく、命を投げ打ったロミオ。そして、もうそんな思いをしなくていいようにとラケルの駒となり、世界を破滅へ導こうとしたが、最後は仲間やサテライトの住民を思い、赤い雨を止めたジュリウス。

人の為に動いた人が、この世界では消えていく。そう思った。
では自分はどうだろうかと、改めて考える。人の為に動いたことは——ない。自分の為に動いた結果が人の為になった、と言う感じだ。
「ほんと、何でなんだろうな…」

二人の会話が終わり、マキもラウンジへ足を踏みいれる。すれ違ったギルがやはり寂しそうな顔をしていたのを見逃さなかった。やるせない気持ちになりながら、一番奥のサテライト拠点が見える椅子に座る。
「よう、副隊長さん」
声をかけられた。声の主はハルオミだった。そういえば、あの時もこうした話しかけられた気がする。グラスゴー支部の昔話だ。いつも通りもミッションで突然あのルフス・カリギュラが現れ、ギルバートがケイトさんを介錯しなければならなくなったこと。
どことなく重苦しい空気が流れる。
「お前さんはずいぶん聞き上手だな……そんな真剣な表情されると、ついベラベラと話しちまう」
今日は楽しかった、と無理に笑いその場を去るハルオミ。彼やギルバートの気持ちは、「今」の自分なら、痛いほど分かる。
「けど…私は、お前たちのために戻って来た訳じゃないんだ…ごめん、ギル、ハルさん」
結局自己満足で動いている自分に腹が立ってきた。
「だから無駄に死なないで、こうして生きているんだろうな…」

その後、エイジスで赤いカリギュラを目撃したとの情報を受け捜索したところ、少し離れた廃棄母艦にそれは現れ、マキ、ギルバード、ハルオミの三人で討伐に向かった。そこでギルバートは血の力に目覚めた。標的も無事討伐し、ギルバートとハルオミは過去に一応の踏ん切りをつけることが出来た。彼らから漂っていた哀愁は、もうどこにもなかった。



Re: GODEATER2—フューチャー・オブ・ブラッド— ( No.18 )
日時: 2014/08/24 22:11
名前: 諸星銀佳 (ID: JnkKI7QF)

§第三章 忍び寄る悪夢§

ギルバートが血の力に目覚めてすぐ、紆余曲折を経たが、ナナも血の力に目覚めた。あとはロミオのみとなった。
ブラッドは覚醒したナナの力を使って戦術を立ててみようという話になり、一度フライアに戻って作戦会議をしていた時だった。
オープンチャンネルに救援要請が入った。感応種が出たとのことだ。
感応種。特殊な偏食場を出し、神機を使えなくするアラガミ。また、他のアラガミを活性化させたり、神機使いにまで作用を及ぼしたりもする。ブラッドは動けるものの、他の神機使いたちは成す術がないのだ。そうとなれば自分たちが赴くしかない。
「ブラッド、出るぞ!」
ジュリウスの一声で一同は戦場へ向かった。

今回の討伐対象はイェン・ツィーという感応種だ。自身の感応能力により周囲のアラガミの攻撃目標を一人の神機使いに集中させ、集中攻撃を仕掛けてくる。攻撃対象となった神機使いは、イェン・ツィーを怯ませることで集中攻撃を免れることが出来る。が、戦術マニュアルには「守備に徹すること」を推奨している。また、周囲のオラクル細胞を瞬時に集合させ、下僕であるチョウワンというアラガミを召還する。このチョウワンと言うアラガミは、とても脆いコアで出来ているため、倒すとすぐに黒い煙となって消えていく。
「厄介だな…」
ジュリウスが呟いた。
「焦るな。アイツはシユウ種だが、シユウやその堕天と比べると剣が入りやすい。それに弱点特性が多いのも討伐しやすい。高いところから一気に降りてくる攻撃だけが少々厄介だ。気をつけろ…はっ」
——しまった!今回が初討伐だった!こんなことを言ったら怪しまれる!
マキは恐る恐る今回のミッションに同行させたジュリウス、ナナ、シエルをみやる。
「副隊長…」
「な、なんだシエル」
「以前、どこかで戦ったのですか?」
痛いところを突かれた。
「ま、まぁ気にするな。今は倒すことが先決。行くぞ」
どうにか丸く——は、ないかもしれないが——収めることが出来た。

討伐後、一人の神機使いと出会う。
「あの……貴方たちは?」
銀髪に赤い帽子。青い目をした美少女。
「フェンリル極東支部、アリサ・イリーニチナ・アミエーラです」
「アリ——」
そこで手を押さえる。一体何度同じことをするのか。アリサは少し不思議そうな顔をするが、じっとこちらを見つめてくる。
「ん?私の部下が何か?」
ジュリウスがその視線に気付いたのか、アリサに問いかけた。
「いえ!ただ、少し知っている人と似ていたような気がしたので……」
「そうですか」
帰投準備が整ったため、一同はその場を後にする。アリサは立ち尽くしたままだった。マキは声をかけようと思ったが、のちにアナグラで会うことを思い出し、皆に続いた。
その後アリサとも再会し、感応種討伐を手伝うことを約束した。

ラウンジへ向かうと、ナナとロミオが熱心に会話している。今度の任務についてのことらしい。いつになくやる気ナロミオにナナは少々違和感を覚えているようだ。マキはいつものように「焦るな」と言うが、ロミオは大丈夫の一点張り。不安を覚えながらも、ミッションに同行させた。その不安が当たったのか、前に出すぎてHPが危険域に突入することが多かった。そのことをギルバートに指摘されたが、素直に受け止めているような口ぶりとは思えなかった。
「……俺だって、ブラッドだからな」
マキはロミオが何か言ったように見えたが、内容までは聞こえなかった。
次のミッションでも同じことが続いた。何とか討伐できたものの、ほめられたものではなかった。
「いやー、楽勝楽勝!もうブラッドに敵無しって感じ!……ん?何、この空気」
いつもの様に頭の後ろで手を組みながら歩くロミオ。いつもとは違う雰囲気に歩みを止めた。そのタイミングで、ナナは恐る恐る聞いた。
「先輩、なんか最近おかしくない?」
「え?……いやいや、そんなことないよー!だってさージュリウスがいなくたって生還率100%でしょ?これは明らかに、ブラッドとしての実力だよ!あ、もちろん副隊長の指示もいい感じだよ!」
——この時から違和感を感じてはいた。なんで、気付いてあげられなかったんだ…。
ロミオは明るく振舞い続ける。
「おい、ロミオ……さっきのミッション何なんだよ……全然なってねぇ」
ギルバートの言うとおりだった。言い方はきついが、ロミオの身を案じていた。
「あんま固いこと言うなよ、ギルちゃーん。頼れる後輩もいるわけだし、もっとこう、余裕を持ってさー」
痺れを切らしたのか、ギルバートは思っていることを口にしてしまう。
「余裕と油断は違うだろ……後輩に抜かれまくって——」
追い討ちをかけるようにやる気が無い、だったら止めろと言われる。その言葉を聞いて、ロミオの顔つきが変わった。
「ギル、取り消せよ」
ギルバートは何のことだが分からないといった表情を浮かべる。その瞬間、ロミオが殴りつけた。当然、彼は怒った。ナナは困惑の表情を浮かべる。マキはただ、静かに見つめていた。
「お前になんか、分かるわけないんだよ!後から来たやつに抜かれまくってるのなんか俺が一番分かってんだよ!それでも、何か出来ることは無いかって……俺は、必死で探してるんだ!俺には、お前やシエルのような経験はないし……ナナみたいに開き直れるほど大物でもない……ましてやコイツみたいに」
そう言ってマキの方を指差す。こうなることは分かってはいたが、いざやられるとドキッとする。
「さっさと血の力に目覚めて怪物みたいなジュリウスと肩を並べるなん——」
「そんなことはない」
突然マキが口を挟む。一瞬の静寂が訪れた。自分でも、無意識で呟いていたのだ。
「謙遜してんのかよ…いいよな、力があるやつの言葉は違うよな」
「何を言ってもそう思われて仕方ない…この後起こることが何か分かっているから、自分の無力さがよく分かる。幾ら周りが褒めちぎろうが何しようが、大切なものが護れなかったら、力も何もないんだ」
何を言っているのか分からないといった表情を浮かべる一同。だが、ロミオはマキの話を聞こうとしなかった。自分は役立たずでどこにも居場所なんか無い、と言い残し、その場を走り去った。

Re: GODEATER2—フューチャー・オブ・ブラッド— ( No.19 )
日時: 2014/08/31 00:27
名前: 諸星銀佳 (ID: JnkKI7QF)

ラウンジへ戻ると、ブラッドの面々は表情を落としていた。
「ロミオは……ずっと一人で悩んでいたんですね。それを隠して……明るく振舞って……居場所の確認を急ぎましょう。おそらく、そんな遠くまでは行っていないでしょうから」
「ロミオ先輩と……もっと、ちゃんと話しておけば良かったな……」
「ったく……ロミオの奴、神機も持たずに……早くとっ捕まえてやらねぇとな」
こんな時に自分がしっかりしなければいけないのだが、やはりいつも傍にいる人がいなくなるというのは落ち着かない。こうなると分かっていても、だ。
ロミオのことは調査班に任せ、自分たちは残っている任務を行うことにした。

任務から帰ると、待っていたシエルがなんだかそわそわしてやってきた。
ここから程近いサテライト拠点でロミオの目撃情報があったとのこと。ただ、迎えに行こうにも赤い雨の発生で近くにいけずにいる。偏食因子のリミットも近い。
神機使いは、神機から捕食されないよう、常に偏食因子を投与しなければならない。効果が切れるとアラガミ化してしまう。
「急がないとな」
マキは溜まっていた任務を素早く片して行った。

その頃ロミオは、雨宿りをさせてくれた老夫婦の家でブラッドの話をしていた。
「——神機使いたちのリーダーみたいな部隊なんだよ」
ロミオは自慢話でもするように続ける。
「俺、ジュリウスの次にブラッドに入って……あ、ジュリウスっていうのが隊長なんだけどね、スゴイやつでさ」
そこで少し切り、若干声のトーンを落とす。
「後から来たヤツ……今はそいつ副隊長やってるんだけど結構そいつもスゴイ奴でさ。正直、副隊長になれなかったのは悔しかったけど……そいつ、いいヤツだから、ちゃんと支えようと思ってさ。で、その後も——」
まだブラッドが今の体制になってから日も浅いが、昔話でもするように話す。
皆が溶け込めるように、無愛想なジュリウスの代わりに頑張ったこと。ギルバートと上手くいかないこと。
「ロミオ、お前さんはもう少し、胸を張ったほうがいいなあ」
爺さんが今までの事を聞いてポツリと言う。
「……うん、わかってるんだ、俺……自分に自信が無いってこと。でもさ、どうしようもなくて……」
自分を卑下するような発言ばかりするロミオに、爺さんが言った。
「お前さんは……人や友達が大好きなんだな。それは、本当に胸を張っていいことだ。人は群れないと生きていけない、弱い生き物だ。だから、人の顔色をうかがって当たり前なんだ」
「でも、俺……!逃げ出して……」
「休むのと、逃げるのは違うでしょ」
そういって婆さんがロミオの右手に手を重ねた。
「ロミオちゃんが戦ってくれているおかげで戦えない人が、助けてもらってるんだよ。少しぐらい、ここで休んだっていいでしょ?何なら、ウチの子になる?」
二人の温かい言葉に、ロミオは泣くことしか出来なかった。

一夜明けて赤乱雲も消え去り、綺麗な青空が広がっていた。
「ありがとう……俺、戻らなきゃ」
「ああ…戻るといい。お前さんの居場所に、な」
「また、遊びにおいで」
すると、爺さんは笑いながら続ける。
「そうだなぁ。神機使いが家にいると、安心だからなあ」
ロミオも思わず笑い出す。釣られるようにして婆さんも笑い始めた。
「あのさ、サテライト拠点か……極東支部にでもさ……爺ちゃん達、引っ越さない?本部に直接申請すれば、何とか通ると思うんだ。俺、親戚も肉親もいないし……だから」
二人が住んでいたのは、サテライトから少し離れたところの少しボロボロの家だったのだ。二人を思って言った言葉だった。爺さんはロミを野言葉を遮るように言う。
「わしらがここに居るのはな、その席を若い者に譲りたいからだ」
「ありがとう……でもね、それはロミオちゃんの未来のお嫁さんのために、とっておきなさいね」
その時だった。突然、地面が揺れる。
「これは……アラガミ」
ロミオは廃墟と化したビル郡を見つめながら呟いた。

その揺れを、極東支部でも観測していた。

Re: GODEATER2—フューチャー・オブ・ブラッド— ( No.20 )
日時: 2014/09/04 00:07
名前: 諸星銀佳 (ID: JnkKI7QF)


ミッションから帰ると、ラウンジがなんだか慌しかった。訳を聞くと、ロミオから連絡があったとのこと。ガルムに遭遇したらしい。
彼が飛び出してからだいぶ時間が経っている。偏食因子が切れる。時間が無い。
ブラッドは彼の神機を抱え、外へ飛び出した。

「神機持ってきてくれて…助けに来てくれて…ありがとう」
ロミオが走りながら申し訳なさそうに言った。
「説教は後にする。まずは仕事だ…」
「ギルが一番そわそわしてたくせにー。ロミオ先輩、私はチキン5ピースで許してあげるから!」
「俺、後でちゃんと謝るから…皆、力貸してくれ!爺ちゃん…じゃなくて非戦闘員はサテライト拠点に避難してもらった!アラガミを近づけないように、ここで倒すよ!」
ロミオの瞳にはいつにも増して力に満ちていた。
「了解!」
「了解だ」
マキはその光景に微笑んだ。
「よし、始めるぞ」

無事にミッションが終わり、ロミオの偏食因子も投与し終えた後、ロミオが俯きながら謝ろうとした。すると、ギルバートが拳でロミオの頭を軽くつつく。
「お前の休暇届は勝手に出しといた。これは貸しだ……もう二度とするなよ……今日は、いい動きだった。この調子で頼む」
どこか照れくさそうに背を向けながら、片手を挙げて行った。
「へへー、ギル、ずっとロミオ先輩のこと気にしてたんだよ。言い過ぎた、って。さ、帰ろ!ロミオ先輩がいないと、皆無口だから、やりづらくてー」
ナナがにこにこしながら言う。ロミオは涙を流した。だがすぐに袖でふき取り、ナナに負けじと笑顔を向ける。
「そうだなー!よっし、元気よく帰ろう!」
その言葉にマキとナナが頷き、すでに遠くに行ってしまったギルバートを追うように歩き出す。
「あ、そうだ!帰ったら例の約束、よろしくねー!」
「例の約束?なんだっけ?」
わざとぼけるようににやっとする。ナナも同じようにとぼける。
「えー!約束したじゃん!チキン8ピースだよ!」
「こっそり増やすなよ!5ピースだったろ!」
「やっぱり覚えてたんじゃーん!」
一歩下がったところからマキはそのやり取りを見つめていた。その表情は、どこか子供を見守る母親のようだった。
ギルバートが待っていてくれたようだ。早くしろと催促する。
「まあ、間を取って7ピースってのはどうかな」
「ナナだけに?」
「先輩……それはちょっと……」
ナナに哀れむような目で見られ、頭を掻くロミオ。マキはどんまい、と肩を叩いた。
「ごめん……」
こうして、またブラッド全員でミッションに行ける。

だが、アナグラに着くとまたあの恐怖が近づいているのだと思い知る。皆のロミオの帰還を喜ぶ表情とは裏腹に、マキの顔はどこか曇っていた。
その時だった。マキはヒバリに呼ばれる。内容は「ラケルが来ている」だった。マキの表情が寂しげなものから冷酷で凍てついたものに変わる。ヒバリが少々恐怖を覚えたくらいだ。それほどの変貌だった。
マキは言われたとおりラケルの元へ向かった。
彼女がエレベーターに消えるまでの一部始終を、ジュリウスは横目で見ていた。ジュリウスはマキがエレベーターに乗り込んですぐ、ヒバリに伺った。
「ヒバリさん、副隊長…なんかおかしくないですか」
「え?あ、そうですね…ミッションでのミスが一時期とても目立っていたときもありましたし、最近はどこか怯えたような…寂しそうな表情をするときがあります。あ、さっきも『ラケル博士』と言った途端、表情が変わりました」
「ラケル…博士?」
何故彼女がその言葉で表情を変えたのかは分からない。だが、一つ分かることがあった。
「副隊長は…何か隠している…」
「え?」
「ヒバリさん、お願いがあります。宜しいでしょうか」

これも隊長の務めだと思い、彼はヒバリに協力を仰いだ。
そんなことを知るはずも無いマキは、ラケルの前までたどり着いていた。




Re: GODEATER2—フューチャー・オブ・ブラッド— ( No.21 )
日時: 2014/09/10 21:28
名前: 諸星銀佳 (ID: JnkKI7QF)


マキは指示通り、ラボラトリへ向かう。病室にはラケルが待っていた。サカキの元へ連れて行って欲しいとのことだ。この間歯向かった事など覚えていないような接し方で逆に不快感を覚えたが、断る理由など無い。彼女を案内することにした。
支部長室の前まで案内すると、そこで待っているように言われた。言われるがまま待つ。そこへ、見慣れた姿が。
「ん?サカキのおっさんは来客中か?その腕輪……噂のブラッド、ってやつか……サカキのおっさんに何の用だ?」
褐色の肌に白い髪。深海のような碧い瞳。弱冠12歳にして神機使いになったソーマ・シックザールだ。
「ラケル博士の付添です」
もう同じミスはしない。間違えて名前を呼ぶことは無かった。
「あのおっさん、フライアまで巻き込むつもりか……」
壁に寄りかかり呆れ顔で言った。とりあえず『この時代では』初対面なので極東の人かどうか問うた。ソーマがその問いかけに答えようとしたとき、扉が開く音がした。
 支部長室から出てきたラケルと、彼女に視線を移したソーマが暫しお互いを見やる。
「……お知り合い?」
「いや、今さっき、な」
ソーマが同意を求めてきた。マキは無言で頷く。
「貴方……シックザール前支部長の……?」
そう問いかけられたソーマはその通りだと、軽く自己紹介をする。ラケルは会釈をし、彼に倣って自己紹介を始めた。
「……ご挨拶が遅れて申し訳ありません。貴方のお父様にお世話になったラケル・クラウディウスと申します。是非、一度お会いしてお礼を申し上げたいと……」
「ああ、礼なら直接、本人にお願いしたいな。いずれあの世で直接会える……」
ソーマは一瞬険しい顔をした。だがその後、「冗談だ」と言った。
彼の父であるヨハネス・フォン・シックザールは、人類の救済を称し、クーデターを起こしたのだ。そして、自らを犠牲にして世界を破滅へ導こうとしたのだ。
ラケルは顔を伏せ、少し笑った。
「ずいぶんとキツい冗談をおっしゃる方ですね……もしかして、それが原因で」
そして、顔をあげた。
「お相手に月まで逃げられてしまったのですか?」
長い沈黙が続いた。

『シオ』というアラガミの少女がいたという話を以前コウタから聞いたことがあった。彼女はソーマにとても懐いていて、ソーマもまた彼女に色々な事を教えたとか。だが、彼の父のクーデターで彼女はその身を犠牲にしたという。終末捕食を月まで運び、世界を救った。そして、少女が月に行く前、彼女に懇願されて、ソーマは核を摘出されて抜け殻となった彼女の体を捕喰した。それゆえにもともと彼の黒かった神機が白くなったらしい。「あいつを変えたのはシオなんだ」と、コウタが言っていたのを思い出す。

ソーマの過去を抉る様な発言をしたラケル。マキは思わず手を上げそうになったが、ぐっと堪える。
「冗談です」
微笑みながら言った。
「あんたはどうも他人な気がしないな……俺と同じで、混ざって壊れた匂いがする」
マキはその言葉にはっとした。ソーマが一瞬マキの方を見たが、彼女は気付いていない。
「フフッ、光栄ですわ……そろそろ失礼致します」
マキは黙ってラケルに付いていく。すれ違い際に、ソーマがマキに言う。
「お前はどことなく、俺のダチに似た匂いがする……いい神機使いになってくれ、じゃあな」

ラケルと別れた後、自室へ向かった。ベッドに体を放り投げる。

『——あんたはどうも他人な気がしないな……俺と同じで、混ざって壊れた匂いがする』

「このときに…気付くべきだった」

ソーマは、体内に偏食因子を有しており、自分で生成することが出来る。それは、彼の母親が自分を犠牲にして人体実験を行った結果だそうだ。その為、他の神機使いよりも高い戦闘能力を誇る。また、以前ユノの故郷である「ネモス・ディアナ」で感応種が出たとき、アリサの神機は偏食場パルスの影響で動かなかったが、彼の神機はかろうじて動かすことが出来たらしい。それもこれも、彼の体内にある偏食因子のおかげなのだった。
そして「同じ匂いがする」ラケルも、体内に偏食因子を有している。ソーマと同じ「P73偏食因子」を。幼少時に致命傷を負ったのだが、それを投与し、回復したという。だが、それと同時に無口だった彼女が口を開くようになったが、すでにその偏食因子の重大な副作用により、その思考は非人道的なものに変貌していた。
つまり「アラガミ」になっていたのだ。

マキは気付くべきだったと自分で言ったものの、あの頃の自分はソーマの過去を全く知らなかった。だが、二人の異様な雰囲気はなんと無く感じていた。それを怪しいと思うべきだったのだ。
——でも、今ならまだ、間に合う。彼女はそう思った。

「同じ過ちは、二度としない」


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