二次創作小説(映像)※倉庫ログ

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SNS的(非)日常観察日誌2
日時: 2017/09/28 00:00
名前: 抜間さん (ID: z/hwH3to)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode=view&no=28385

初めまして又はこんにちは、抜間さんです。新しい「SNS的(非)日常観察日誌」に来てくださりありがとうございます。初代スレッドが満スレになったのでこの二代目スレに突入しましたが、初代同様相変わらずマイペースにやっていきますので今後ともよろしくお願いします。
なお、初代スレには参照のURLから飛ぶことができますので、初見の方や過去作を見返したいという方はそちらをぜひどうぞー。


更新日:9月27日


〈もくじ〉

キャラプロフィール >>1

【長文】
・『サバイバルとカオスとバカは紙一重』

・『わすれなぐさ』
Ⅰ:偶然は運命の始まり >>39-45
Ⅱ:束の間の平和 >>50-55
Ⅲ:錆色の雨 >>71-79

【短文】
特に意味のなさすぎる日常小ネタ >>2-7
初代スレからのサルベーシ集 >>18-21
寺坂竜馬殺人事件 >>59-61
スカッとする(はずだった)話 >>86-94
「I love you」の伝え方 >>125-129
イナギャラで銀魂パロ >>155-157
バグズパニック!(前編) >>164-169 ←NEW!

【SNSラジオ】(不定期更新)
※第1回〜第10回は初代スレ参照
第11回 >>138-141

【その他】
突発質問コーナー① >>115-116


〈タグ〉
スマブラ 暗殺教室 パズドラ イナズマイレブンGO 蒼い世界の中心で スマブラ四天王 クロスオーバー ギャグ カオス コラボ 裸族 NL オリジナル設定満載 キャラ崩壊要注意

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わすれなぐさ ( No.71 )
日時: 2016/11/13 17:50
名前: 抜間さん (ID: z/hwH3to)

長らくお待たせしました、タイムトラベル長編の続きになります。今回は四日目パートとなりますが、ストーリーの都合上このパートの途中では、過激(に頑張ってしたつもり)な死に表現やがっつりシリアス展開がありますので、読む際はあらかじめSAN値を回復してからにすることをお勧めします。
あとどうでもいいことですがこのごろツイッターに再燃しました。呟く内容はもっぱらパズドラ事情とかSB69事情とかアホな妄想とか落書きとか、後はついったで繋がった琴葉姫さんやたけジアンさんと色々お話もしてたり。

抜間さん「こんなやつの妄想やネタに便乗してくださるお二人マジいい人すぎる件。いつも絡みありがとうございます(土下座)」
ルフレ「それはよかったな。とりあえず、調子にのり過ぎてお二人に迷惑かけることだけはやめろよ?」
抜間さん「わかってるよー。ついったで起きるトラブルは何かと洒落にならないからね。とりま、本編どうぞー」





フェイ「ワンダバ!まだゼルダさんの居場所はわからないの!?」
ワンダバ「無茶を言うな!!ただでさえ時空は広いんだ!特定にはもう少し時間がかかるぞ!!」



ゼルダが過去のハイラルに迷い込みオリヴィエ夫妻の元に滞在しているその頃、現代では未来人組による必死の捜索活動が行われていた。過去のハイラルと現代共に事故が発生してから既に4日が経過しているが、今もなお捜索状況はなかなか進展しないようであり、ワンダバは勿論普段はあまり感情を荒らげないフェイにも珍しく焦りの表情が見られる。

フェイ「もしものためにブレスレットを持たせたのは正解だったけど、こんなに電波を探すのに時間がかかるなんて…トーブの事故よりはマシとはいえ、これじゃあSNS団のみんなにこのことがバレるのも時間の問題だよ…」
ワンダバ「それに、落とされた時代によっては彼女の命すら危ぶまれる…平和な時代ならともかく、それこそ戦争になど巻き込まれたりしたら…」

何かあった時のためにゼルダにブレスレットを持たせていたので、電波さえ一度キャッチしてしまえば救助自体は容易なのだが、如何せん今回のタイムジャンプで飛ぶことになる時代をゼルダから聞き出す前にあの事故が起きてしまったので、電波をキャッチするしない以前に、彼女がいる時代そのものを特定するのにもかなりの時間を要しているのが現状であった。
なお、補足すると今回のトラブルはSNS団メンバーには一切伏せており、現在は彼女がいなくなった件についても「難しい依頼を受けているため、片が付くまでは連絡がとれないがひとまずは無事だから安心してほしい」と嘘をついてある。嘘をつくのは心苦しいが、如何せん今回起きたのは時空絡みのトラブルであるため、その道のド素人当然のSNS団が騒いだところでむしろ余計にトラブルを生み出しかねないから、ここは黙っておいたほうが得策だろうとアルノ博士がフェイに助言をしたのだ(ただし、作者と両手には流石に事情を話してある。勿論口外無用状態)。


ワンダバ「うーむ…どの時代に行ったかがわからないから尚更探すのも手間がかかる…。やはり、しらみ潰しは効率が悪すぎるな…お?」
アルノ「…ふむ、おかしいのう。これは一体どういうことじゃろうな?」

と、ワンダバがモニターとにらみ合いをしていると、キャラバンの様子を見ていたアルノ博士がスパナ片手に首を傾げながら中から出てきた。すぐさまワンダバが博士に駆け寄る。


ワンダバ「博士、何か分かったのか?」
アルノ「ワンダバ。お主の話じゃと、タイムジャンプ中にいきなりハンドルがきかなくなったとのことじゃったな?」
ワンダバ「ああ。まるで、ハンドルが凍り付いたみたいにうんともすんとも言わなくなって…。おそらくは、キャラバンの故障が原因だろう」
アルノ「わしもさっき、そう思ってハンドルを試しにいじってみたんじゃ。そうしたら…」






ワンダバ「…はぁ!!?キャラバンのどこにも異常は見られない!!?」
フェイ「嘘!?だって、あれだけガチガチに固かったのに……?」
アルノ「ふむ、ハンドルは勿論、エンジンもブースターもコンピュータも扉もぜーんぶチェックしてみたが、至って問題点なしじゃったわ」



何と、制御不能になっていたはずのハンドルどころか、キャラバンそのものにも全く問題点なと見当たらなかったというではないか。これにはワンダバだけでなく、間近でキャラバンの異常を目撃、体験したフェイも驚きのあまり開いた口が塞がらない。

フェイ「そんな……それは一体どういう…?だって、確かに…」
アルノ「ふむ……。お主らの言葉を疑うわけではないが、本当にハンドルに異常があったのかのう?」
ワンダバ「そんなはずはない!!確かにあの時動かなくなったのだ!!うーむ、ますますわけがわからなくなってきた…;」
アルノ「こればかりはわしにもわからぬ。何か、見えない力でも働いていたのではないか?」
ワンダバ「そんなオカルトかつ非科学的なオチがあってたまるか!というか、貴方にそんなオカルト理論を立てたらこっちが反応に困るではないか!!;」

突然制御不能となったキャラバンの謎、未だに見つからないゼルダの手がかり、連日行われる捜索活動によりフェイとワンダバに容赦なくのしかかる疲労……。フェイは未だあれこれと言い合うワンダバと博士を横目に、ラボに備え付けの休憩スペースで疲れ切った目と頭を休めようとコンピュータを手動操作からオートモードに切り替えた。それからすたすたとモニターから離れ、どかっと膝から落ちるようにしてソファーに座り込む。


フェイ「……この分だと今日もゼルダさんの救助は無理そうかな?はぁ、もう僕も混乱してきちゃった…センサーをオートサーチモードに切り替えてっと…ちょっと休もうっと;」



チャリ



フェイ「ん?……あ、そうだ。これ…無くさないようにしなきゃ」


ソファーに座ったとき、ふと金属がぶつかる音がした。隣を見ると、ゼルダがアーティファクトとして持参したペンダントが置いてあったので、借り物を壊してはいけないとそっと手に取り、ソファーからテーブルに移し変えた。持ち主の帰りを待ち続けるペンダントは壊れないようにと白いハンカチでそっと包んであり、じっと見ていると錆色の金属が真っ白い布にくるまれているその姿が、まるで死装束を纏った骸のようにも思えてくる。


フェイ「……そういえば、結局あの後トラブルがあったから、このペンダントのこと聞きそびれちゃったなぁ…ゼルダさん、無事だといいんだけど…」


フェイは、時を止めたかのように硬く錆び付いたその表面を指先でそっと撫で、天井を仰いだ。


感想まだ

わすれなぐさ ( No.72 )
日時: 2016/11/13 17:51
名前: 抜間さん (ID: z/hwH3to)







ゼルダ「マーテルさん、遅いですね……まあ、女性ですし名のある騎士団長の奥方様ですから、身だしなみには気をつけなければですしね」



さて、所と時代が変わってここは過去のハイラル。屋敷に滞在して4日目の昼過ぎとなるこの日は、マーテルから「城下街の工房にちょっとした用事があるのだが、せっかくだから街を一緒に見て回らないか」というお誘いを受けたため、二人で城下街に行くことになっていた。
ゼルダは外出の準備をしているマーテルをリビングでぼんやりと待っているのだが、当の貴婦人は支度に時間がかかっているらしく、なかなか自室から出てこない。暇をもて甘したゼルダは、部屋を意味も無くウロウロしてみたり本棚の本を眺めてみたり窓から空を眺めてみたりして時間を持て余す。


ゼルダ「もう少し待っていましょうか……あら?このゆりかごはもしかして?」

すると、ソファの上にここ数日ですっかりお馴染みとなったゆりかごがちょこんと置いてあるのを見つけた。ゆりかごの中をそーっと覗きこむと中には案の定ゆりかごの主である赤ん坊がおり、ここ数日で顔を覚えてくれたのか、ゼルダを見るなり紅葉のような手をのばしてあうあうと笑いかけてくれた。

ゼルダ「ふふ、こんにちはリンク?」
子リンク「あぅー!ぶ!」
ゼルダ「かわいい…それに、とても柔らかくていいにおいもします♪」
子リンク「うー」

愛くるしい仕草と笑顔に思わず笑みをこぼし、ソファに座って赤ん坊をそっと抱っこしてみた。腕の中に収まった赤ん坊は、ゼルダがいつも身を委ねて甘える彼の鍛え抜かれた逞しい身体とは違い、少しでも力をこめたら壊れてしまいそうなくらいに柔らかくてすべすべしている。そのお人形のような恋人をぎゅーと抱きしめると、自分は本当に過去の世界にいるのだと強く実感させられる。




『いいですかゼルダさん……。過去を変えれば未来も変わる…すなわち、過去を変えるということは、それは僕達が生きるこの時代や、あなたやあなたの周りの方々の存在すらも危ぶまれることになってしまいます。だからどうか、過去に飛んだとしてもその時代の流れに無闇に干渉することだけは避けてください』




ふと、物思いにふけるゼルダの脳裏に4日前のタイムトラベル出発前に真剣な眼差しでそう語りかけてきたフェイの姿と言葉が甦った。
過去が変われば、未来も大なり小なり何らかの変化が生じてしまい、その変化は時に取り返しのつかない過ちや哀しみを生むことになる…。その言葉が持つ重みも責任も、ゼルダは時オカでの経験から痛いほどよくわかっているし、今思えばフェイにも「クロノ・ストーン」編で自身や仲間の存在を過去への干渉によって抹消されかけたという過去があった。あの言葉はそんな彼なりの、ゼルダに対する精一杯の気遣いだったのだろう。だからゼルダもフェイの言葉も真剣に受け取り、過去のハイラルに飛んでも下手に干渉しないでいるつもりだった。



ゼルダ(干渉しない、つもりだったのに…運命とは皮肉なものですね。まさか、この時代に飛ばされて最初にマーテルさんに会うなんて…)



……しかし、そう思っていた矢先にあの事故に巻き込まれてしまい時空の渦に飲み込まれ、その結果、ハイラルの歴史に絶大な影響を与えた「勇者の血族」…それも、自身の恋人及びその両親との邂逅を果たすというとんでもない状況に立たされてしまったのだ。この偶然の神様による皮肉きわまりない悪戯は、ハイラルの王女にとってはまさに運命的な出会いであると同時に、一歩間違えればハイラルの歴史を大きく歪めてしまうであろう大変危険なものでもあった。
オリヴィエ夫妻の協力無しには助けを待てないために、歴史に影響のない程度の些細な変化はまあ避けられない。だが、夫妻に自分が関わることで大きく歴史が歪むことや新たな分岐点…「インタラプト」が発生することだけはなんとしてでも避けなくてはならない。そんなことが起こってしまってはハイラルの歴史どころか最悪、自分や自分が知る人々の存在すら危ぶまれてしまうことだろう。


だからこそゼルダはこの4日間、オリヴィエやマーテルの運命をいたずらにねじ曲げないためにも極力「特に代わり映えのない普通の少女」として二人と振る舞ってきたのだ。現に、これまでのゼルダの様子を振り替えってもらえれば分かると思うが、夫妻から誘われる形で屋敷にお世話になったり交流を交わしたりするなどして「その流れに乗る」ことは度々あっても、ゼルダ自身からあれこれ持ちかけて夫妻を必要以上に動かし、「新たに流れを生む」ことは一切していない。きっともとの時代に帰るまでその振る舞いは変わらないだろうし、たとえ今いる時代でどんな過酷なことがあろうとも、不用意に手を出すことだけは絶対にしないと固く誓っている。

だが、それでも…



ゼルダ(…でも…それでも、せめて赤ん坊の貴方とのこの一時を私だけの秘密の思い出にすることくらい、バチは当たりませんよね…?)



ゼルダは、ちいさな額に顔をそっと近づける。そして…。




ちゅっ




子リンク「うー?」
ゼルダ「ふふっ、我ながら私って、ずるい女の子ですね。…ねぇリンク、知っているかしら?そう遠くはないいつかの遠い未来。そこで貴方は私と再開し、恋人として結ばれることになるのを…。貴方はびっくりするくらいに強くかっこよくなって、私の心を全て持っていって、そのうち私を貴方なしでは生きられないくらいにしまうんですよ?」
子リンク「あうー?」
ゼルダ「……くす、そうですよね、そんなことを言っても赤ん坊なんですからそんなの今はわかりませんよね///」


照れたようにほんのりと頬を染めながら、腕の中で首をかしげる「恋人」に優しく語りかける。その未来への約束ともとれるささやきは誰に聞かれることもなく、幼い額に落とされたちいさなリップ音と共に空間に溶けていった。





パタパタパタ……



マーテル「シークー、どこかしら?待たせてごめんなさい……あら?」
ゼルダ「よしよし、いい子ですねリンクは♪」
子リンク「うー!」

やがて、奥の部屋から外出の準備を終えたマーテルが小走りでゼルダを探してリビングに入って来た。しかし、ゼルダはマーテルに気づかないようで相変わらず赤ん坊のリンクを抱っこし続けている。暖かな春の日差しに身を委ねるようにとろけた笑みをリンクに向けながら、美しい硝子細工を扱うような手つきでちいさな頬をなでるゼルダの横顔に、マーテルは思わず目を奪われた。

マーテル「…シークが、リンクをあやしてくれたのね?なんて優しい表情なのかしら。でも、あの顔…どうしてかしら、どこかで見覚えがあるような……?」

いつだったか、あの顔と同じような顔を私は、どこかで見たような気がする。彼女が自分達家族のもとに来るよりも…いや、リンクが生まれるよりもずっと前だっただろうか…。そう、確かあの顔は……





ゼルダ「…あ、マーテルさん。もう準備は大丈夫ですか?」
マーテル「…!ええ…大丈夫よ。ごめんなさいねシーク、リンクをあやしてもらっちゃって」



と、そうしてもやもやと考えているうちにゼルダの方がマーテルに気がついたようだ。 マーテルは後で考えればいいかなとひとまず気持ちを切り替え、ゼルダから赤ん坊を受け取った。

わすれなぐさ ( No.73 )
日時: 2016/11/13 17:54
名前: 抜間さん (ID: z/hwH3to)



ゼルダ「いえ、私が好きでやったことですからお気遣いなく。あのー、今日も彼を一緒に連れていくのですか?」
マーテル「ううん、今日は結構歩く予定だからリンクはお留守番ね。えっと……あ、ちょうどよかったわ。メイ、リオ!」

どうやら今日はリンクは連れていかずに女二人でのお出かけになるらしく、そのまま受け取った赤ん坊をそっとゆりかごに戻してから布団をかける。それからたまたま近くを通りかかったメイリオ姉妹を呼び寄せると、双子は主の呼びかけにすぐに反応し、小走りで近づいてきて主にぺこりとお辞儀をした。

メイ「はい、奥様。お呼びでしょうか?」
マーテル「私達は少し出掛けてくるから、お留守番とリンクのことを頼めるかしら?2、3時間くらいで戻る予定だからよろしくね?」
メイ「はい、いってらっしゃいませ奥様!」
リオ「坊っちゃんのことは私達に任せて、どうぞごゆっくり!」
マーテル「じゃあ、いってくるわね二人とも。リンク、ママはちょっとだけお出かけしてくるからいい子でお留守番しててねー?…さあ、行きましょうシーク」
ゼルダ「はい、マーテルさん」


中にいる赤ん坊ごとゆりかごを双子メイドに託すと、マーテルはゆりかごの中のわが子に笑顔で話しかけてからゼルダの手をひき、そのまま屋敷を後にした。






ゼルダ「それにしてもメイさんとリオさん、子守を任されたというのになんだか嬉しそうでしたね?」
マーテル「お世話を任されたのが二重の意味で嬉しかったんじゃないかしら?でも、赤ん坊の力って本当に偉大よねぇ〜。家族はおろか赤の他人でも容赦なくメロメロにして、なんでも言うことを聞かせるしもべにしちゃうんだから。」

そうぼやきながら頬に手を当てて困ったように笑うマーテル。だが、言葉とは裏腹にその表情は満更でもなさそうだ。実際、メイリオ姉妹はマーテルのいう通り子守を任されたことを全く苦に思っていないようで、門をくぐった後すぐに屋敷内から響いてきた「お前たち、坊っちゃんにデレデレしてる暇があるならさっさと働きなさーーーい!!」というサテラの怒鳴り声に思わず二人して吹き出すことになったほどである。
まあそんな蛇足はさておき、現在二人は屋敷が建つ貴族街の歩道を、市街地目指して歩いている。というのも、マーテルは現在いる貴族街から少し離れた市街地に用事があるため、まずは用事を済ませてからそのまま市街地の中に繰り出そうということになったのだ。


ゼルダ「でも、こんなことを聞くのもなんですが、あのお二人に赤ん坊の子守りをお任せして大丈夫なのですか?お二人とも見たところ私よりもお若いですし、あの年頃の子って母親ではない人に対して人見知りをするのでは?」
マーテル「ふふ、確かに若いしそう思うのも無理はないわね。大丈夫、あれでも二人は1年くらい前から屋敷のメイドとして仕えてくれてるのよ。それにリンクが生まれた瞬間からずっとお世話してきてくれたから、リンクもなついているみたいでね…あの子達にとってリンクは弟みたいなものなのかも」
ゼルダ「そうだったんですか…なら安心ですね。あの、メイさんとリオさんってどういった経緯でお屋敷に来たのですか?」
マーテル「メイとリオが屋敷に来た経緯…ねぇ…うーん…どう説明したらいいかしら……」
ゼルダ「…?」

あの若さでメイドを務めているのだ、きっとどこかの家から奉公にやってきているのだろうと思いながらゼルダはマーテルに訪ねる。だが、そんなゼルダの予想とは反してマーテルは困ったように頬に手をあてながらうーんと考えこんでしまった。

ゼルダ「あの、答えられなかったら流していただいても…」
マーテル「ううん、違うの。何て答えたものかしらね…二人は1年前にオリヴィエが一時的に保護したらしいんだけど、それまでどこで何をしていたのかは実は私もよくは知らないの」
ゼルダ「え!そ、そうなんですか!?」
マーテル「なんかね、あの子達は過去のことをあまり話したがらないの。オリヴィエはさすがに事情を知ってはいるみたいだけど、本人達の気持ちを考えてあまり口外しないようにしているから、私もサテラもそれを汲み取って深く首を突っ込むことはしてないわね。人間誰しも、忘れ去りたい過去の一つや二つはあるものだしね?」
ゼルダ「…そうですよね。このご時世ですし、二人の過去に何か事情があっても何らおかしくないのかも…」
マーテル「そう。だから私、そんな二人を助けたくて、いくあてがないのならいっそ屋敷に二人をメイドとして受け入れて、みんなで一から色んなことを教えていこうってオリヴィエとサテラを説得したの。…とはいえ、二人は屋敷に来るまではろくに家事もしてこなかったみたいで、上手くいかないことも度々あったわ。オリヴィエとサテラは自分達の職務もあったし、私はお腹が大きくなっていて、度々崩れる体調やら子育ての準備やらでいっぱいいっぱいだったから、二人のことをなかなか気にかけてあげられなくて…あの時は悪いことしちゃったなーって今でも思うわ」

まあ無理もないだろうな、とゼルダは内心ひとりごちる。事実、この時代はハイラル王国どころか王家が治めていたハイリア人の領土国の治安自体もあまりよろしくなかったのだから、彼女らにも何かしらの事情があったことは想像に難くないだろう。しかも屋敷の人員を考えても、ハイラルの騎士を束ねる騎士団長と、胎内に子を宿した若い女性と、広い屋敷の雑務を一人でこなしている老人というなんとも多忙極まりない面子なのだ。きっと当時は屋敷もメイリオ姉妹も相当バタバタしていたにちがいない。


マーテル「でも、右も左もなんにも分からない状態で相当大変だったはずなのに、あの子達は妊娠中だった私の身体をよく気遣ってくれてね…慣れない手つきで薄かったり濃かったりする紅茶を入れてくれたり、庭のお花をつんで不格好な生け花をつくっては部屋に飾って気持ちを和らげようとしてくれたり、迷子になりながら図書館まで妊娠関連の本を借りてきてくれたりと色んなことをしてくれたわ。まあ正直言ってしまうと、それまでろくに家事したことがなかっただけあってかなり不格好な有様だったから、見ていて逆にハラハラさせられることもあったわね。ふふっ、今となってはどれもこれもいい思い出だわ」
ゼルダ「それはそれは…。でも、家事をしたことがなくても、わからないなりにメイさんもリオさんも一生懸命だったのですね」
マーテル「ええ、そのとおりね。どんなに家事が出来なくても、私や周りを気遣おうとするあの子達の優しい心は伝わってきたし、その心が心身共にバランスを崩していた私にとっては何より嬉しかった。それで私は、自分も二人を支えてその強い気持ちに答えてあげたいって思ったの。幸いにも二人が来て少したった頃には私の体調や子育ての準備は段々と落ち着いてきたから、その分二人に家事や礼儀作法を教えていって、同時に本人達も自身も努力も重ねていって…そうしていくうちに、二人ともどんどん成長していって、今ではすっかり屋敷に欠かせない存在になったの。私も、それが誇らしくてしょうがないのよ」
ゼルダ「メイさんもリオさんも、相当の苦労を重ねたからこそ今のお二人があるのですね。それに、マーテルさんもお優しいんですね…素性がわからない方を疑いもせずに受け入れて、そこまでしてさしあげるなんて」
マーテル「ふふっ、優しいなんてそんな大袈裟なものじゃないわ?私はね、ただ単にとんでもなくお人好しでわがままなだけ。結局は、自分がしたいからあの子達のことも受け入れて、貴女のこともこうして連れ回しているんだもの」

我ながらどうかしているわね私って、とやや自嘲を込めた笑みで呟くマーテル。きっと彼女自身、自分のそのお人好しさが時にトラブルを招きかねないものだということは痛いくらいにわかっているのだろうことはその表情から伺える。それでもゼルダには、たとえお人好しだろうがわがままだろうが、マーテルがくれる無条件の優しさはとても心地がよかった。

ゼルダ「…それでも、マーテルさんのその心に私は命を救われました。それに私、貴女に出会えて沢山お世話になって、しかもこんなによくしてもらえて…マーテルさんといると、すごく楽しいです」

この言葉は紛れもなくゼルダの本心であり、きっと双子の家政婦も同じ気持ちでマーテルに仕えているのだろう。


感想まだ。オリキャラの設定も割りと細かめに考えていますが、詳しいことはこれからちょっとずつ出していくつもり。

わすれなぐさ ( No.74 )
日時: 2016/11/13 18:17
名前: 抜間さん (ID: z/hwH3to)

マーテル「あら、なかなかにうれしいことを言ってくれるじゃない?たとえお世辞でもオバサン嬉しいわぁ♪」
ゼルダ「お、お世辞でこんなこと言えませんよ!私は本気で…あとマーテルさんは言うほどオバサンっていう歳でもないでしょう!?」
マーテル「ふふ、冗談冗談。ありがとうシーク、私も貴女と過ごしているとすごく楽しいわ。…さあ、この話はひとまず終わり!目的地に着いたわよ」



話に夢中で気がつかなかったが、二人はだいぶ長い距離を歩いていたらしい。指差された先を見れば、少し古めかしくも小洒落た雰囲気の店が建っており、マーテルが扉を押し開けると扉に付いた銀のベルが「チリンチリン」と綺麗な音を立てて客人をもてなす。すると、店の主人と思しき作業着を着た男性が店の奥からひょっこりと顔を出し、二人を笑顔で出迎えてくれた。

主人「いらっしゃい……おや奥さん、今日は可愛らしいお嬢さんを連れてどのようなご用事で?」
マーテル「頼んでいたものの修理が完了してると手紙をいただいたものだから、早速取りに来たの。これ、注文書ね」
主人「では、しばしお待ちを…えっと、確かこの引き出しに…」

主人はマーテルから注文書を受け取ってその内容を確認すると、店の奥に行きガサゴソと棚の引き出しを開けて目的のものを探しだした。どうやらこの店は金物細工…特に、生活雑貨やアクセサリー類の販売や修理をする店のようであり、棚にところ狭しと並べられた時計や銀食器などの美しい金物細工が日にあたってきらきらと光り、見る物を引き付けてやまない美しさを放っている。その金物細工の一つ一つにハイリア語で刻まれた名前にゼルダは見覚えがあった。確か、同じ名前がハイラル城にある多くの金物類や功績を上げた者に褒美として与えられる品々にも刻まれていたはずだ。

ゼルダ(この方は、この時代からハイラル城とも縁があったのですね……いつ見ても見事な細工で惚れ惚れします)
主人「あったあった、これだこれだ。……はいはいお待たせしやした。蓋の歪みはバッチリ修理、ついでに割れた硝子もサービスで取り替えておきやしたぜ」
マーテル「まあ、ありがとう。ふふ、商売上手ですこと♪」
主人「いやいや奥さんにはご贔屓にしてもらってやすからね。じゃあ、お代は100ルピーね。……はい、確かに受け取りやしたよ」
ゼルダ「…マーテルさん、何かの修理を頼んでいたのですか?」
マーテル「ええ。リンクが生まれた時にオリヴィエとお揃いで作ったもので、私の大切な宝物なの。いつも肌身離さす身に付けているのだけれど、恥ずかしい話数日前にうっかり落として蓋が歪んでしまったから、ここで修理を頼んでいたのよ」
ゼルダ「そうなのですか。そんなに大切なものなら、ちょっと見てみたいですね…」
マーテル「ふふ、内緒よ♪でもそうね、シークにならそのうち見せてあげないこともないわ」

ゼルダが店内に飾られている小物類に思わず目を奪われているうちに、店の奥から戻ってきた主人が小箱を差し出した。後ろ姿で見ただけなのではっきり見たわけではないので断言は出来ないが、どうやら金で出来た装飾品か何かのようだ。マーテルは小箱の中身を手に取って主人にお代の入った袋を渡すと、受け取ったものを懐に大切にしまい込む。




マーテル「さあシーク、行きましょう?」
主人「まいどありー…あ、そういえば奥さん。今日広場で何かが起きるって噂なんだけど、何か知らないかい?あるいは、旦那に何か聞いてるとか…」
マーテル「…?いいえ、知らないわ。オリヴィエからもそんなことを聞かされていないし…どうして?」


と、マーテルがシークの手を引いて店を出ようとした時、主人が二人を呼び止めてそんなことを聞いてきた。藪から棒にわいて出た話にマーテルはキョトンとし、いいえと首を横に振る。

主人「あっしはこの歳だし店も一人で切り盛りしてるからこっからろくに出られないんだけど、街が妙にしーんとしてるからなーんか奇妙だなーって思ってよ…。あっしの考えすぎかもしれないけど、もし何か起きるようなら十分気をつけなよ?2日前も街で盗賊が出て盗みを働いたっちゅう噂だし、この頃はいつにもまして物騒になってきてるからさ…」
マーテル「…言われてみれば、数日前と比べてちょっと人が少ないわね…」
ゼルダ「それに、どうしてこんな街中に兵士が…?」
マーテル「気になるわね…外に出てみましょう。それじゃあ、お邪魔したわね…貴方もどうか気をつけて」
主人「ああ。奥さんこそ気をつけてな…」

窓から外の様子を伺えば、確かにあらゆる店や住宅が立ち並ぶ街にしてはやけに人通りが少なく、しかも不思議なことに街のあちらこちらにはいつもなら街に配置されないはずの兵士達の姿もあった。この異常に、さすがに街見物どころじゃなさそうだと勘づいた二人は、心配そうに眉を潜める主人に見送られながら店の外へ出た。

ゼルダ「こんなに大きい街なのに、人の気配が感じられませんね…あの、ここってゴーストタウン…なんてことはないですよね…?」
マーテル「そんなはずないわ。この街は貴族街以上に多くの人が住んでいるはずよ…どうしてかしら…嫌な予感がするわね」
ゼルダ「事情をあそこにいる兵士達に伺ってみますか?」

空気や音が遮断された店内からでは分からなかったが、街は人が極端に少ないだけでなく生活による雑音や人の声もなく、生き物の気配も感じられない。時折枯れ葉を巻き込みながら吹く風の音と、何も言わずにただ棒立ちするだけの兵士の姿があるだけの風景が二人の胸をざわざわさせる。


マーテル「あの、ちょっとよろしいかしら?この先に何かあるのかしら」
兵士A「ん?何なんだお前達。この先では……ってお、お前は…いや、貴女様は!!?もしやマーテル様か!?」
兵士B「お…オリヴィエ様の奥方様が!!?どうしてここに!!?」
マーテル「少し野暮用でね。私のことを知っているということは、オリヴィエの部下かしら?…それで、どうして街に貴方達兵士がいるのかしら?」
兵士A「…お言葉ではありますが、貴女様はこの先は知らないほうがよろしいかと思われます…。街の人々も、あれを見に行っているか、のちに起こりかねない報復を恐れて気配を押し殺しているかのどちらかです。ですからどうかマーテル様もお引き取りください。貴女様まで巻き込まれたりしたら…」
マーテル「いいえ、あの人の妻だからこそ、私にはこれから起こることを知らなくてはならないわ。いいからお通しなさい」
兵士A「うぐ…なりません!!」

おそらくはオリヴィエの部下か何かだろうか、マーテルを見るなり一気に動揺しだす兵士達。どうやら彼女にはあまり知られたく内容らしく、なんとかこの先には通すまいと説得するが、マーテルも意思が強く一歩も引こうとしない。

兵士B「貴女様にあんなものを…あんな見るに耐えないものを見せる訳には…!ち、違う!!俺は反対したんだ!!でも国王はんなこと知ったこっちゃねぇんだよ!!」
マーテル「見るに…」
ゼルダ「耐えないもの…?」
兵士A「いえ、なんでもないです!…おい、それ以上言うのは止めろ!あの方にはあの方なりの考えがあるはずだ…そうでなければ…!」
兵士B「はぁ?あんな残虐なことをしようとしといて国王なりの考えがあるって一体どんな考えだよ!!奴らはそれ相応のことをしたのは分かるが、だからってあんな人目につく広場で公開処刑なんざ正気の沙汰とは思えねぇ!んなことしたら確実に奴らは怒り狂うぞ!!」
兵士A「ば、馬鹿!お前口を滑らせすぎだ!それ以上言ったら…!!」




マーテル「……しょ、けい……?今、何て言ったの…?」




兵士達が言い争う最中で口にした、いっそ決定的なまでの「処刑」という単語を聡明な貴婦人が聞き逃すわけがなかった。しまった、と兵士がはっとして冷や汗を垂らしながら口を抑えるが時すでに遅し。マーテルは兵士の一瞬の隙をついて広場に向かって一目散に駆け出してしまったではないか!

わすれなぐさ ( No.75 )
日時: 2016/11/13 18:00
名前: 抜間さん (ID: z/hwH3to)



兵士B「あっ、マーテル様!お待ちを!!」
兵士A「おい、持ち場を離れるな!オリヴィエ様には悪いが、ここは諦めるしかねぇよ…!!」
ゼルダ「処刑をするって………一体、何が起ころうとしているのですか…」

兵士は慌てて追いかけようとしたが、迂闊に持ち場を離れる訳にはいかないのでそうもいかず、歯がゆそうにその場に立ちすくむ。ゼルダはせめて現状をちゃんと理解したいと、目の前で唖然としたままの兵士にずいっと詰め寄って有無を言わさぬ剣幕で問い詰めた。


ゼルダ「…あの、これから処刑が起こるというのは本当なのですよね?それで、一体どこで、誰が処刑されるというのですか?まさか、オリヴィエさんということはないですよね?」
兵士A「な…無礼者!!そんなわけないだろう!!城の者は兵士や召使いも含めてみんなあの方を尊敬しているんだ、仮にあの方が処刑されたらそれこそ城中でクーデター騒ぎになる!!」
ゼルダ「それじゃあ一体誰が殺されるというのですか?」
兵士B「ちっ…いちいち誰が教えるかって「いいから言いなさい」うっ!うぐぅ………わーったわーった!!言う!言うよ−!どうせ知れ渡ることなんだし…だから、頼むからそんな王妃様みたいなおっかない面をやめてくれ!!今からこの先にある広場で公開処刑が執行される!殺されるのはゲルド族の女達だよ!!!」
ゼルダ「ゲルド族が…?一体どうして…何か理由があるはずですよね?」
兵士B「理由も何も、2日前に貴族街の大臣宅から盗みを働いたんだよあのアマ共は…!このご時世にわざわざ自分から王国に喧嘩を売りに行くなんざバカな奴らだよ!!」
ゼルダ「貴族街での盗み…ゲルド族…2日前……」



半ば脅しに近い説得をして兵士から聞き出したそれらのワードの一つ一つに、ゼルダの背筋には嫌な悪寒が走る。あまり考えたくはないが、そんな意思などお構いなしに彼女の聡明な頭脳は、既に最悪な答えを弾き出そうとしていた。




『ゲルド族の奴らは、時々ああして人目をしのんで街にやってきては頭の悪い金持ちのハイリア人から金品を巻き上げてるんだ。今回も大方、どこかの汚い成金野郎からでも盗みを働いたんじゃないか?』



『あっしの考えすぎかもしれないけど、もし何か起きるようなら十分気をつけなよ?2日前も街で盗賊が出て盗みを働いたっちゅう噂だし、この頃はいつにもまして物騒になってきてるからさ…』



『理由も何も、2日前に貴族街の大臣宅から盗みを働いたんだよあのアマ共は…!このご時世にバカな奴らだよ!!』



オリヴィエと屋敷の窓際で交わした会話と、先ほどの金物屋の主人の口にした警告とがぐるぐると目まぐるしく駆けめぐる。確か、金物屋の主人は2日前に街で盗賊が出て盗みを働いたと言っていた。 そして、オリヴィエとあの会話をしたのは今から2日前の貴族街にあるお屋敷にいる時であり、しかもその会話のきっかけとなったのは…。



ゼルダ「…まさか……今から処刑されようとしているゲルド族って……!!?」







執行人「聞け、我らが同胞達よ!!!この女共は2日前に国王の片腕と誉れ高い大臣の屋敷に侵入し、盗みを働くという神をも恐れぬ愚行を犯した!!これを反逆と呼ばずに何と呼ぶのか!!!」



広場に設置された処刑台の上に立つ処刑執行人が、集まった群衆にそう高らかに呼びかける。全身黒づくめの衣装で顔からつま先までを覆い、手にした斧槍を振りかざして高らかに叫ぶ執行人の姿はさながら死神のようだ。


執行人「この愚行はハイラルを一つにし、より強大な国として他の国々の侵攻よりこの大地を守らんとするハイラル王家及びその同盟諸国に対する反逆に他ならない。…よって、これよりハイラル王家とこの世界を築きしいにしえの神々の名の下、ゲルド族の処刑を執行する!!」
観衆「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!」
若い男「変なご託はいい!そんな奴らさっさとやっちまえー!!!」
商人の男「ゲルド族なんざはなっから信用ならねぇんだよ!苦労して手に入れた品物を好き勝手に盗みを繰り返しやがって!!」
執行人「さあ兵士達、その女共をギロチンに固定せよ!」
ゲルド族「…………」
マーテル「……酷い有様ね……」

処刑台の真ん中には錆びたギロチンが三台鎮座しており、今か今かと愚かな罪人の首を跳ね飛ばす時を待っている。高らかに処刑執行を宣言する執行人の傍らでは鎖に繋がれて兵士達に取り押さえられたゲルド族の少女が3人、憎しみに満ちた目つきで広場を埋め尽くすくらいに集まった群衆達を見下していた。いつもなら人々の笑い声が飛び交う広場には今、一切の笑い声も穏やかな空気もない。そのかわりあるのは、ゲルド族の少女に浴びせられる聞くに堪えない罵詈雑言…。


兵士「さあ、さっさと首を差し出せ!」
ゲルド族A「くっ!気安く触るなハイリアの犬が!!」
ゼルダ「はぁはぁ…マーテルさん…!ここにいらっしゃいましたか…」

執行人が斧槍を振りかざして兵士に命じると、兵士は暴れる少女達を抑えつけ、首を乱暴にギロチンにあてがい始める。そこへゼルダが息を切らしながらやってきた。

マーテル「シーク…置いていってごめんなさい、とっさに身体が動いてしまったものだから」
ゼルダ「あの、これは…」
マーテル「見ての通りよ。どうやら、2日前に盗みを働いたゲルド族が運悪く捕まってしまったみたい」
ゼルダ「…やはり、あの時の方々だったのですか…」
マーテル「シーク、知っているの?」

怪訝そうに問うマーテルに、ゼルダは2日前にオリヴィエと共にゲルト族が盗みに入った際の騒ぎを見たこと、それからまさに今処刑されようとしているのが件のゲルト族だろうということをマーテルに説明した。


マーテル「…そういうことだったのね。それに、街中に普段はいないはずの兵士達が沢山いるのも、この騒ぎに便乗して悪さをする者達を迅速に取り締まれるようにするためだとしたら説明がつくわ。だからオリヴィエがいきなり城に呼ばれたのね…街や城の警備の指揮をとらせ、いざという時にも対応できるようにするために!」
ゼルダ「おそらくは、そうでしょう。…でも、あまりにも展開がうまく運びすぎてるというか…都合が良すぎませんか?だって、それだけのことをしておきながら。しかも全員が易々と捕まってしまうなんて…」
マーテル「ええ…何よりも相手はガノンドロフが率いるというあのゲルド族、この処刑そのものにも何か裏がありそうね。だけど、今それを言ってもきっと焼け石に水…下手したら私達の方が首をはね飛ばされるわ」
ゼルダ「そんな…!!」

ゼルダが思わず声を荒らげるが、二人の背後ではマーテルの言葉を証明するように若い女が「でも、こんなことして本当にいいのかな……」と戸惑いを口にした矢先に、傍らにいた中年女性に「何言ってんの!あいつらにはそれがお似合いなんだから!!」と怒鳴り散らされていた。ゲルド族を公開処刑することに疑問や恐れを抱く人はいるにはいるのだが、そのまともな少数意見は大多数の過激な罵詈雑言にかき消されているのだ。 このあまりにも狂い果てた空気の中では、マーテルもゼルダも苦虫を噛みつぶしたような顔で処刑に立ち会うことしか許されなかった…。


執行人「さあ、いよいよ貴様らの首が飛ぶ時が来た。せめてもの情けだ…遺言があるならば最後にまとめて済ませておくことだな?」
マーテル「シーク、先に屋敷に戻った方がいいわ。今から起こることはきっと、貴女には辛いものになるから」
ゼルダ「…いいえ、私もここにいます。何も出来ないのならせめて、最後まで見届けさせてください…」
マーテル「………」


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