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【完結】フレッシュプリキュア!〜過去の恩と因縁と〜
日時: 2016/12/24 22:01
名前: ひのり (ID: uLF5snsy)

皆さんこんにちは!ひのりです!
以前まで春太郎という名前で書いていたのですが、雑談掲示板の方での名前変えたのでこっちでも変えました!
今回は二か月ぶりにフレッシュプリキュアの小説を書いていきたいと思います!
いやぁ、ブッキー可愛いよ。うん、ブッキー可愛い。
ちなみにタイトルはそこまで意味ないです。適当に考えましたw
では、稚拙な文章になると思いますが、温かい目で見てやってください。
それでは、よろしくお願いします。

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Re: フレッシュプリキュア!〜過去の恩と因縁と〜 ( No.33 )
日時: 2016/12/05 22:48
名前: ひのり (ID: uLF5snsy)

「……って、わああ!もう千香ちゃんとの約束の時間過ぎてる!」

 変身を解いたラブちゃんは、そう言うと鞄を持ち直し、「それじゃ!」と私たちに挨拶をして走り去っていく。
 それを見送った後、美希ちゃんとせつなちゃんが、私に目を向けた。

「二人とも、どうしたの?」
「行きたいんでしょ?彰君の元に」
「なっ……」

 言葉を詰まらせた私を見て、二人はクスッと笑った。

「ブッキーって意外と分かりやすいわよねぇ?」
「そ、そんなことはっ……」
「行ってくれば?行きたいなら、行けばいいじゃない」

 せつなちゃんの言葉に、私は一瞬迷った。
 彰君が、もし迷宮さん?とのデートを楽しんでいたら悪いと。
 しかし、彼が、私以外の女の子と、それも、知らない子と仲良く話しているのを想像した瞬間、胸がズキッと痛んだ。
 顔を上げると、二人は微笑んでいた。

「……私、行ってくる」

 そう言い残しながら、私は公園の出入り口に向かった。
 走って行くと、彰君と、迷宮さんって子が、仲良く話しているのが見えた。

「っ……」

 私は咄嗟に木の背後に隠れ、ソッとその様子を伺った。

「———……った……………とが……………———」
「———…………かけ…………だったん………———」

 残念ながら、私がいる場所からは、二人の話している内容は聞き取れない。
 しかし、二人ともどこか楽しそうで、さらに胸の痛みが酷くなるような感覚を覚えた。
 その時、迷宮さんと、目が合った。
 吸い込まれるような、ゾッとするほど、真っ青な目。
 それから目を逸らすことができなくて、私は、彼女を見つめたまま固まってしまう。

「っ……」

 すると、彼女は、突然目を押さえ、逸らした。すると、心配した様子で、彰君が肩を掴む。
 まるで、恋人同士でキスをするかのような手つきで、迷宮さんの頬に手を添え、顔を覗き込む。
 バクバクと心臓が音を立て、脳裏から、見るな、と警告が流される。
 しかし、まるで石にでもなってしまったかのように、私の体は動かず、その光景を見つめてしまう。
 そして、二人の顔が……重なる。

「あ……」

 私は絶句し、その場に立ち尽くす。
 やがて、二人の顔は離れ、「ありがとう」「どういたしまして」と笑顔でやり取りしているのが見えた。
 その光景が見ていられず、私は踵を返し、その場を走り去る。

「あっ、ブッキー……」

 走った先にいた美希ちゃんが、私を呼ぶ。
 それを見て、私は立ち止まる。

「美希ちゃん……」
「ブッキー……どうしたの?彰君は……」

 その名前を聴いた瞬間、私は徐々に目の奥が熱くなり、喉の奥が痛くなるような感覚を覚えた。
 やがて、視界が霞み、頬を何かが伝った。

「美希ちゃん……私、失恋したかもしれない……」
「……」
「彰君と、迷宮さん、が……キス、してた……かも……」
「……」
「どうしよう……私……」

 嗚咽を零しながら言った時、ポフッと頭に手を置かれた。
 見ると、美希ちゃんが少しだけ微笑んだ。

「まずは落ち着きなさいよ。ゆっくり、話してみて?」

 その言葉に、私は小さく頷き、事の顛末を話した。

Re: フレッシュプリキュア!〜過去の恩と因縁と〜 ( No.34 )
日時: 2016/12/08 22:07
名前: ひのり (ID: uLF5snsy)

「———……っていうことがあって……」

 説明を終えた私が言うと、美希ちゃんは、息を少しついて、「なるほどねぇ……」と言った。
 それから、しばらく静寂が訪れる。
 涙はひとまず止まったが、油断したら、また流れ出してしまいそうなので、唇を噛みしめて耐える。

「……それってさ、ブッキーは、きちんと彰君と迷宮さん?の唇が重なっているのを、ちゃんと見たの?」
「えっ……?」

 その言葉に、私は記憶を探ってみる。
 ……確かに、ちゃんと見ていなかったような気がする。

「……見てない。顔が重なったのは、見たけど、唇までは……」
「それなら、もしかしたら、キスしてなかったかもしれないわよ?」
「……ッ!」

 その言葉に、私は立ち上がった。
 すると、美希ちゃんはクスッと笑った。

「行ってきなさいよ。彰君の元に。それで、自分の気持ちを、伝えてきなさい」
「……美希ちゃん」
「もしフラれたら、ここで待ってるから。ね?」
「……ありがとう」

 私はそう言って頭を下げた。
すると、「そういうのいいから」と呆れたような言葉が聴こえたので、私は顔を上げた。

「でも、気持ちが楽になったのは確実だよ。流石、希望のプリキュア」
「……希望?」
「え?だって、よく名乗りに入ってるじゃない。ブルーのハートは希望の印、とか、響け、希望のリズム、とか」
「あ、あれは、リンクルンの力で、勝手に喋ってるだけで……」
「そうかもしれない。でも、私にとっては、美希ちゃんは完璧な、希望の戦士だよ」

 私が言うと、美希ちゃんは驚いた様子で顔を上げた。
 それに、私は笑顔を浮かべて見せると、すぐに地面を蹴り、彰君の元に向かった。

−−−

 公園の出入り口の方には彰君がいなかったので、公園内を探してみると、カオルちゃんのドーナツカフェで迷宮さんと仲良くドーナツを食べているところだった。
 私はそこに近づき、「彰君」と彼の名前を呼んだ。

「や、山吹さん……ッ!?どうしたの……?」
「ちょっと。彰君に話したいことがあって……。できれば、二人に、なりたいなって……」

 私の言葉に、迷宮さんの眉が、ピクリと動く。
 しかし、それに彰君は気付かない様子で、「僕に……?」と不思議そうに首を傾げた。

「うん……。良い、かな?」
「僕は構わないけど……ちょっと、席を外しても良いかな?」

 そう言って、迷宮さんの方に顔を向けた。
 彼女は、私の顔を見つめたまま、「えぇ。構わないわ」と頷いた。
 冷淡な言葉だったけれど、不思議と、今は気にならない。
 私は、彰君を連れて、人目のつかない場所に行く。

「……彰君と、あの子は、どういう関係なの?」

 その言葉は、不思議と、零れるように口から出た。
 後悔はしていない。私は真っ直ぐ彼の目を見つめ、再度問う。

「迷宮さんのことを……どう思っているの?」

 彰君は、しばらくキョトンとした表情をした後で、「クラスメイト」とだけ、答えた。

「最近転校してきたばかりだし、今日以外、ほとんど話したこともない」
「……そっか。じゃあ、例えば、キスとかするような関係じゃない?」
「そんなわけないよ。僕は、好きな人しかしないし」

 その言葉に、心の中の重たい何かが、スッとなくなったような感覚があった。
 大丈夫。覚悟は、できた。今なら、言える。

「ていうか、急にそんなこと聞いて、一体どうし……」
「私は!」

 彼の言葉を遮るように、私は声を張った。
 激しい鼓動を、胸に手を当てる形で押さえながら、続ける。

「私は……出会った時から、ずっと……」

「彰君のことが好きです」

Re: フレッシュプリキュア!〜過去の恩と因縁と〜 ( No.35 )
日時: 2016/12/09 23:21
名前: ひのり (ID: uLF5snsy)

「私は……出会った時から、ずっと……彰君のことが好きです」

 声は……震えていた。
 服の裾を握り締め、私は俯いた。
 短いような、長いような。永遠に続くように思われたその時間は、やがて、彰君が小さく口を開いたのを感じることで、途絶える。

「……山吹さん……顔、上げて……」

 掠れたような微かな声に、私はゆっくりと顔を上げる。
 そして、息を呑んだ。

「な……ッ!」

 彰君の顔は、耳まで、真っ赤になっていた。
 それは、リンゴや、トマトを彷彿とさせる。

「ぼ、僕、も……山吹さんの、ことが……好き」

 その言葉は、どこか尻すぼみで。それでも、ハッキリとしていた。

「それって……?」
「だ、だから!僕も山吹さんのことが、好き!」
「それは分かってるから……」

 恐らく、かなり緊張しているんだろう。
 彼は、しばらく視線を彷徨わせ、やがて、真っ直ぐ私を見つめた。

「僕と……付き合ってください」
「……はいっ!」

 嬉しすぎて涙が溢れそうになった。
 しかし、それをどうにか堪え、私は一度頷いた。
 その時、彰君の背後に、こちらを見つめる青い目を見つけた。

「め……ッ!?」

 名前を呼びそうになった時、突如、彼女の姿が変化したことに気付いた。
 髪は銀に染まり、服は黒を基調としたものに変わる。
 次の瞬間、彼女の手に黒い光が纏うのが分かった。

「彰君ッ!危ないッ!」

 私は、咄嗟に彰君の体を突き飛ばし、同時に変身した。
 次の瞬間、体に黒い光がぶつかる。

「キャァッ!」

 私は傷だらけになって転がり、やがて、地面の上で止まった。
 顔を上げると、メイスが、蔑む目で、私を見下ろしていた。

「私には……彼しかいないのよ……私から、彼を奪わないで……」
「グッ……」
「山吹さんッ!」

 彰君の言葉に、私は咄嗟に立ち上がろうとした。
 しかし、傷が痛み、すぐに膝をつく。
 その時、目の前にメイスの手が現れる。

「これで終わりよ、キュアパ……」
「プリキュア!エスポワールシャワーフレーッシュ!」

 聞き覚えのある声に、私は視線を向けようとした。
 その時、メイスが黒い光を打ち、何かの光と相殺したのが見えた。
 煙が巻き起こり、視界が塞がれる。
 それでも、どうにか立ち上がり、バックステップの要領で距離を取った。
 やがて、視界は晴れ、対峙するメイスとベリーの姿を見つけた。

「フン。唯一強化武器を持っていない貴様が、私に敵うとでも?」
「確かに、あたしは、ベリーソードシンフォニーは持っていない……」

 ベリーはそう言って、ベリーソードを見つめる。
 やがて、それを握り直すと、まっすぐメイスを見た。

「でも、あたしは誰かの希望になりたい!あたしは!完璧な希望を!諦めない!」
「キュアキュアプリプー!」

 その時、いつの間にいたのか、シフォンちゃんが嬉しそうな声をあげた。
 それと同時に、キュアベリーの体を光が包み込み、やがて、ベリーソードの形状が変わる。

「響け!希望のリズム!キュアスティック、ベリーソード!」
「ベリーソードが無くてもっていう発言今すぐ取り消すべきじゃない?」

 メイスは、どちらかというと呆れた様子で言うと、すぐにニヤリと笑い、構える。

「プリキュア!エスポワールシャワーフレーッシュ!」

 そこに、ベリーが必殺技を叩き込む。私は、それを見つつ立ち上がった。
 ベリーがメイスを引き付けている間に、彰君を避難させなくちゃ。
 そんな思いから、私は、地面を蹴るようにして、駆けた。

「彰君ッ!」
「やま……キュアパイン!あぶな……ッ!」

 彰君の注意が聴こえた瞬間、体に強い衝撃を受けた。
 私は転がり、うつ伏せの状態で止まる。
 見ると、それは、ソレヨコーセだった。

「油断大敵ってやつね。キュアパイン」
「なん……ッ!?」

 声が上手く出ない。
 視線を上げると、メイスが冷たい笑みを浮かべて立っていた。
 よく見ると、キュアベリーが、遠くに倒れているのが分かった。

「べ、りぃ……」
「これでトドメよ。さようなら。キュアパイン」

 そう言って、手に黒い光の球を作るメイス。
 私は、それに死を覚悟し、目を瞑った。
 走馬燈でも見えるかと思ったが、思い浮かぶのは、短い期間での彰君との思い出ばかり。

「山吹さんッ!」

 ……しかし、死は訪れなかった。
 ゆっくりと瞼を開くと、そこには、彰君の顔があった。

「彰……君……?」

 名前を呼ぶが、返事はない。
 彼は、私の目を見ると、微かに笑みを浮かべ、その場に倒れ込んだ。
 よく見ると、背中の部分の服が破け、火傷のような、かなりの重傷を負っているのが分かった。

「彰君……?彰君ッ!」

 私は必死に名前を呼び、彼の体を揺する。
 すると、彼は辛そうに私の目を見て、ニコッ、と、笑った。

「山吹さんの笑顔は……すごく、輝いているんだ……そんな、君の笑顔を守れて……嬉しいよ……」
「ッ……なんて誤算だ……。まぁ良い。ソレヨコーセ。北乃君を連れてきて」

 メイスの命令に、ソレヨコーセは頷き、彰君の体を軽々と抱える。
 私は、それを止めようとするが、体が言うことを効かず、ただ、その場で醜くのたうち回るだけだった。
 だから、咄嗟に私は変身を解除し立ち上がると、すぐに走ってそれを追いかけようとした。
 しかし、あと少しで手が届きそうなところで、彼等の姿は消えた。

「そんな……ッ!」
「ブッキー……」

 その時、変身を解いた美希ちゃんが、心配そうな顔をして私の隣に立った。
 私はそれを見つつ、その場に膝をついた。

「彰君が……彰君がぁ……ッ!」

 気付けば溢れていた涙は、止まらなかった。

Re: フレッシュプリキュア!〜過去の恩と因縁と〜 ( No.36 )
日時: 2016/12/11 21:49
名前: ひのり (ID: uLF5snsy)

「……ん?」

 瞼を開くと、そこには床や壁が蔦で覆われた部屋が広がっていた。
 しばらく寝ぼけていたが、やがて、キュアパインを庇ってメイスの攻撃を受けたこと。そして、そのまま自分が攫われてしまったことを思い出した。

「……ってことは、ここは、メイスの本拠地ってことか?」

 独り言を呟きながら、ひとまず腕を動かそうとした。
 しかし、体はびくともしない。
 まさかと思い体を見てみると、僕の両手足、胴体、首が、蔦でしっかりと固定されていた。
 かなり強力なもので、体は一ミリも動かすことが出来ない。
 ギリギリ部屋全体を見渡せる程度、か……。

「あら、目が覚めたようね」

 その時、扉が開き、誰かが入ってくるのが見えた。
 入ってきた誰かの姿を見た瞬間、僕の目は見開かれる。

「迷宮さん……?」

 僕に名前を呼ばれた彼女は、こちらを見て、冷たく笑う。
 笑顔は好きだが、この笑顔はどうにも、好きになれない。
 僕は、小さく唇を噛んだ。

「なんで君が……?」
「なんだ、ここまでやっても気付かないんだ。意外と鈍感なんだねぇ」

 クスクスと笑いながら言う彼女に、僕は冷や汗を流した。
 嫌な予感がする……。しかし、僕は視線を外すことは出来なかった。

「鈍感な君に、教えてあげる。私の正体」

 彼女は、そう言うと胸の前で、両手の拳を合わせた。
 その体勢に、僕の中で、嫌な結論が出る。

「やめっ……」
「スイッチ……オーバー」

 腕を広げ、彼女はニヤリと笑った。
 銀に染まった髪、黒い衣装。そして、胸元で輝く青いダイヤ。

「メイス……?」
「えぇ、そうよ。北乃君。私は、君に近づくために、こうして変装していたの」
「なんで、そこまで……」

 つい、本音を零すと、彼女はしばらくキョトンとした。
 しかし、やがて、ニヤリとした笑みを浮かべると、口を開く。

「貴方が好きだから」

「……へ?」

 間抜けな声が、口から零れた。
 僕が、好きだから?だから、わざわざこんなことをしたと言うのか?
 彼女は僕の目の前まで来ると、頬に手を添えた。

「ねぇ。私のこと、好きだって言ってくれたら、この蔦外してあげる。悪くない条件でしょう?」
「ッ……嫌だ!」

 僕は、咄嗟に首を横に振ろうとした。
 しかし、蔦で固定されているせいで、首元からギシギシと音がしただけだった。

「……そっか。本当は、こんな力づくなことはしたくなかったんだけど」

 独り言のように呟く彼女を不思議に思った時、彼女の手元に青いダイヤが見えた。
 一体何だろうと不思議に思った時、それが胸に当てられる。

「ッ!?ああああああああああああああああああああああああッ!」

 直後、頭の中に何か、嫌なものが入ってくるのが分かった。
 それは、僕の記憶や、思考などを、次々に消し去って行く。
 父さん。母さん。千香。桃園さん。青乃さん。東さん。クラスの皆。学校の皆。近所の人たち。
 大切な人の記憶が、次々に、消えていく。

「や……め……」

 ……いや、こんな人たち知らない。誰だろう、この人たち?
 見知らぬ人の顔が、脳裏に浮かんでは、消えていく。
 なんだろう。この不安感。恐怖感。
 知らない人の顔なのに、漠然とした恐怖が、心を掠める。
 やがて、その記憶を消す手は、記憶の奥深く。大切な、『彼女』へと伸びた。
 それに気付いた瞬間、僕は恐怖した。

「やめ……ろ……それ、だけは……」

 力を振り絞って、なんとか声を出す。
 嫌だ。やめてくれ。その記憶だけは!

「へぇ?その状態でまだ抵抗できるんだ。面白い」

 目の前に立つ少女は、そう言うと微かに笑みを浮かべた。
 しかし、どんなに僕が否定しても、その手は彼女の記憶を消すことを止めない。
 もう、自分の名前すら思い出せない。でも、せめて、彼女の記憶だけは!
 ……しかし、それすらもう、思い出せなくなっていく。
 優しい声。一番好きな笑顔。それらが、剥がれ落ちていく。
 思い出せるのは、彼女との、思い出だけ。

「やめろ……」

 しかし、黒い手が、それすらも剥ぎ取っていく。
 元々少なかった記憶は、一つ一つ、簡単に消えていく。

「やめ、ろぉッ!」

 嫌だ。忘れたくない。
 嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だい……———。

−−−

「ぁ……」

 小さく、息を吐くように声を発した後、彼はガクンと項垂れた。
 流石に、少し強引すぎたかな?でも、時間かけるとキュアパインとかが助けに来る可能性あったし。
 そんなことを考えながら、私は指をパチンと鳴らした。
 すると、彼の手足などを固定していた蔦が外れ、彼はその場に倒れ込む。
 それを抱き止め、私はその場に正座をして、その膝の上に彼の頭を置く。俗に言う、膝枕というものだ。

 今、彼の頭の中は空っぽ。何も覚えておらず、何も考えない、人形。
 そこに、私が付けたナケサケーベの種から、新たに心を分け与えている。
 次に目覚める時には、私に忠実な下僕となっていることだろう。

「君が悪いのよ?私を、ここまで本気にさせて。でも、キュアパインを好きになっちゃったから」

 そう言いながら、私は彼の頬を撫でた。
 彼は、安らかな寝顔のまま、微かに寝息を立てている。
 体は完全に脱力した様子で、彼の全てを私が握っているという独占感が襲う。

「今は、ゆっくりお休みなさい。次に目が覚めた時にはもう、私の事しか、考えられない」

 そう言ってから、私は彼の頬に口づけをした。

Re: フレッシュプリキュア!〜過去の恩と因縁と〜 ( No.37 )
日時: 2016/12/11 22:25
名前: ひのり (ID: uLF5snsy)

「彰君が……連れていかれた!?」

 ラブちゃんの言葉に、私は頷いた。
 何を言えばいいのか分からず、私はそのまま俯いた。

「ごめんなさい……あたしのせいね。さっきもメイスに襲われたのだから、これ以上一人にしたらいけないって、分かっていたのに……」
「美希ちゃんだけのせいじゃないよ!」

 私は、慌てて否定した。
 その後で、すぐに補足する。

「私は、迷宮さんがメイスに変身するのを、近くで見ていたんだもん……それに、彰君は私を庇って怪我したんだよ?悪いのは、美希ちゃんだけじゃない」
「……でもっ」
「とにかく、今は彰君を助けに行くことが大切でしょ」

 せつなちゃんの言葉に、私たちは黙った。
 そこで、私は、遠くのテーブルでドーナツを食べている千香ちゃんに目を向けた。

「とりあえず、千香ちゃんを家に送らないといけないんじゃないかな?」

 私が聞くと、ラブちゃんは「そっか!」と言い、立ち上がった。
 そして、千香ちゃんの方に行くので、私たちもそれに続いた。

「ラブお姉ちゃん。お兄ちゃんはどこ?」

 ラブちゃんに気付いた千香ちゃんは、不安そうな声色でそう聞いた。
 それに、ラブちゃんは「うッ」と言葉を詰まらせる。
 そこに、せつなちゃんが慌ててフォローを入れる。

「千香ちゃんのお兄ちゃんは、ちょっと急用で、学校のお友達の家に行ってるみたい。今日は、泊まるって」
「そんなの嘘!だって、今日は一緒にご飯作る約束してたし、お兄ちゃんがいなかったら、家には千香しかいないんだよ?」
「え?」

 千香ちゃんの口から発せられた言葉に、私はつい聞き返した。
 それに、千香ちゃんはさらに続ける。

「お母さんは仕事だし、お父さんは死んじゃっていないもん。お兄ちゃんは、千香を一人になんて、しないもん。ねぇ!お兄ちゃんに何かあったの?」

 ……家族事情なんて、知らなかった。
 流石に、家に千香ちゃんを一人にするわけにはいかない。
 ……どうしようか。

「……じゃあ、私がご飯作ろうか?」

 気付いたら、そんな言葉が口から出ていた。
 それを聞いた三人が、驚いた様子で私を見た。

「本当?」
「うん。簡単なものなら、作れるし。家事も一通りはできるしね」
「でも、ブッキー……」
「……彰君は、私を庇ったせいで連れていかれた。だったら、その尻拭いは、私がするべきだと思う」

 私の言葉に、皆、複雑そうな表情を浮かべた。
 美希ちゃんは、「だったらあたしも……」と、言いたげな表情だ。
 だから、私は先に言葉を続ける。

「お願い。私が、やりたいことなの」
「……分かった。その代わり、何かあったら連絡すること。良い?」

 美希ちゃんの言葉に、私は大きく頷いた。


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