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【完結】フレッシュプリキュア!〜過去の恩と因縁と〜
日時: 2016/12/24 22:01
名前: ひのり (ID: uLF5snsy)

皆さんこんにちは!ひのりです!
以前まで春太郎という名前で書いていたのですが、雑談掲示板の方での名前変えたのでこっちでも変えました!
今回は二か月ぶりにフレッシュプリキュアの小説を書いていきたいと思います!
いやぁ、ブッキー可愛いよ。うん、ブッキー可愛い。
ちなみにタイトルはそこまで意味ないです。適当に考えましたw
では、稚拙な文章になると思いますが、温かい目で見てやってください。
それでは、よろしくお願いします。

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Re: フレッシュプリキュア!〜過去の恩と因縁と〜 ( No.23 )
日時: 2016/11/07 21:15
名前: ひのり (ID: uzSa1/Mq)

 児童玄関から出てきた黒髪の女の子は、友達と話しながら正門に向かって歩いてくる。
 視線を一瞬前に向けた時、正門にいる私たちに気付いたようで、その顔をパァァァと輝かせた。

「千香」
「お兄ちゃん!」

 先ほどまで話していた友達を置いて、千香ちゃんは彰君に走り寄り、そのまま抱きついた。
 お兄ちゃん大好きなんだなぁ、と私は少し驚いたが、どうやら千香ちゃんのコレは日常茶飯事らしく、お友達はそれを笑顔で眺めながら「バイバイ千香ちゃん」と声をかけた。
 すると、千香ちゃんもそれに「バイバーイ」と大きく手を振った。

「ホラ、千香。千香が入院していた時にお世話になった、お姉ちゃん達だぞ」
「えっ!?」

 どうやら私たちには気づいていなかったらしく、私たちの姿に気付いた千香ちゃんは、さらに嬉しそうな顔になり、近くにいたラブちゃんに「お姉ちゃん!」と近づいた。

「お久しぶり〜。千香ちゃん」
「お姉ちゃん!あのね、千香ね、今は元気になっていっぱい外で遊んでるんだよ!」
「そうなんだ!それは良かった!」
「うんっ!それもこれも、全部お姉ちゃんとプリキュアのおかげだよ!ありがとう!」

 千香ちゃんの言葉に、私は違和感を抱いた。
 ラブちゃんもそうだったようで、それでもひとまず「どういたしまして〜。プリキュアの皆にも伝えておくね〜」と答えていた。

「千香ちゃんには、私たちがプリキュアだってこと言わなかったの?」

 彰君に小声で聞いてみると、彼は微笑み、小さく頷いた。

「千香にとってのプリキュアってさ、すごい存在で、それこそアニメのヒーローに憧れるような感覚だと思うんだ。それをさ、今更、実は会ったことがあるお姉さん達でした〜なんて言うのは、彼女の夢を壊すみたいで嫌なんだ」

 そこまで考えていたのか、と、私は少し驚いてしまった。
 それに気づいたのか、彼は私を見ると恥ずかしそうに笑って、頬を掻いた。

「ぶっちゃけ、友達と話している時や僕と一緒にいる時より、プリキュアの写真を見ている時や、プリキュアのことを話している時の方が良い笑顔しているんだ」

 その笑顔は、恥ずかしそうというか、照れた印象を受けた。
 いつもは少し凛としている印象があった分、その無邪気な表情は私にとってとても新鮮だった。

「妹思いなんだね。彰君は」

 私が言って見せると、彰君はなぜか耳まで顔を真っ赤にして「そんなことないよ」と言って、目を逸らした。
 なんとなく、その様子が子供みたいで可愛いなぁ、となんとなく考えた。
 彰君って、千香ちゃんの前では素の自分が出るのかな。

「お兄ちゃんってあのお姉ちゃんのことが好きなの?」
「そうだよ〜。それどころかあの二人は両想いで、毎日のようにイチャイチャしてるんだよ〜」
「いちゃいちゃ……りょーおもい?」
「千香ちゃんも大きくなれば分かるよ」
「本当?やったぁ!」

 千香ちゃんとラブちゃんのやり取りに、彰君は我に返ったらしく、「ちょっと桃園さん!」と慌ててラブちゃんを咎めていた。
 それに笑いつつ、ラブちゃんは手を叩いた。

「あま〜い恋も良いけど、やっぱり甘いドーナツの方が私は好き!ってことで!皆でドーナツカフェに行こう!」
「ドーナツカフェってカオルちゃんのドーナツ!?千香あそこのドーナツ大好き!」
「だよねぇ〜!」

 あ……あっという間に仲良くなってる……。
 私含めた4人は、その様子を見て苦笑した。

Re: フレッシュプリキュア!〜過去の恩と因縁と〜 ( No.24 )
日時: 2016/11/24 22:45
名前: ひのり (ID: uzSa1/Mq)

「それでね!今日鬼ごっこで!」
「ほうほう。そんなことが……」

 ……意気投合している……。
 カオルちゃんのドーナツカフェにて、私たちはドーナツを頬張りながら、千香ちゃんとラブちゃんの会話が弾むのを横で見ていた。

「ラブと千香ちゃん、すごく話が合っているわね……」
「千香、山吹さんや蒼乃さんより桃園さんと話したかっただけだったのかな」
「まぁ、プリキュアの色紙とかも言い始めたのはラブちゃんだし……」
「根本的に、精神年齢が近いだけじゃない?」

 せつなちゃんのコメントに、私たちは苦笑した。
 その時、視線を感じたので振り返ると、そこにはラブちゃんや彰君と同じ学校の制服を着た少女がこちらを見ていた。
 吸い込まれるような青い目に、人形のように整った顔立ち。
 目が合った彼女は、何やら不敵に笑うと、踵を返し、去って行った。

「……きさん。山吹さん?」

 その時、名前を呼ばれたので振り返ると、そこでは彰君が心配そうな顔で私を見ていた。

「どうしたの?彰君」
「いや、なんかボーッとしていたみたいだから心配で……。どうかしたの?」

 その言葉に周りを見ると、せつなちゃんや美希ちゃん。雑談で盛り上がっていた千香ちゃんやラブちゃんまでもが、私を見ていた。
 その視線に、私は恥ずかしくなり、縮こまりながらも口を開いた。

「いや……さっき、ラブちゃん達の学校の制服を着た人がこっち見てて、すごく綺麗だったから……つい……」
「私たちの学校の?」

 ラブちゃんの言葉に、私は小さく頷いた。
 その様子に、千香ちゃんが「どうしたの?ラブお姉ちゃん」とラブちゃんの体を揺すった。
 それをラブちゃんがあやしている間に、彰君は顎に手を当てて考える。

「それは……恐らく迷宮さんだな……。しかし、なんでこんなところに……」
「めいみやさん?」

 私が聞くと、しばらく考えた彼は「……いや……なんでもない」と言って首を横に振った。
 まぁ、これ以上は気にするべきではないかもしれない。
 私はそれに頷きつつ、ドーナツを齧った。

「ていうか、一人でここまで来てドーナツ買わなかったの?その子。こんな公園に一人で来ても時間の無駄じゃないかしら」
「いや、割とここは景色も良いし、たまにここで趣味の運動とかをする人もいるから、僕はよく一人で来るよ。桃園さん達を見つけたのも、撮影の一環だし」

 彰君は、そう言って首から提げたカメラを撫でた。
 やっぱり、趣味に没頭してるんだなぁ……と、私はなんとなく考えた。
 その時、突然「ソレヨコーセ」という声と共に、轟音が聴こえた。

「こんな時にソレヨコーセ!?」

 立ち上がったラブちゃんを、千香ちゃんが不安そうに見上げる。
 その頭を優しく撫でると、ラブちゃんは彰君を見た。

「彰君。千香ちゃんを避難させて!」
「お姉ちゃんたちはどうするの?」
「……私たちは、プリキュアに連絡するから!」

 その言葉に、千香ちゃんはしばらく考えた後で、コクッと頷くと、彰君に腕を引かれてどこかに消えていった。
 顔を上げると、蔓状の化け物が少し遠くで暴れているのが見えた。
 ラブちゃんはリンクルンを取り出すと、私たちに声をかけた。

「それじゃあ、変身するよ!美希たん、ブッキー、せつな!」

Re: フレッシュプリキュア!〜過去の恩と因縁と〜 ( No.25 )
日時: 2016/11/25 22:49
名前: ひのり (ID: uLF5snsy)

 ソレヨコーセが暴れている場所に行くと、そこでは見覚えのある銀髪が揺れていた。
 その姿に気付いた私は、息を呑んだ。

「瞬ッ!」

 一番に名前を呼んだのは、ベリーだった。
 その声に、彼はゆっくりとこちらに振り返った。
 その目は、西さん同様黒く濁っていた。

「っ……」
「瞬……?聞いたことない名前だ。我が名はサウラー!ラビリンス最高幹部、メイス様が下僕!」

 西さんのように、まるで、機械にインプットされたような平坦な声で、彼は言った。
 その言葉に、私たちは唇を噛みしめた。

「とにかく……行くよ!皆!」

 ピーチの言葉に私たちは頷き、すぐに二手に分かれた。
 ソレヨコーセの、こちら側から見て右側に私とベリー。左側に、ピーチとパッションだ。
 その時、ベリーがベリーソードを取り出したのが分かった。

「響け!希望のリズム!キュアスティック、ベリーソード!」

 ベリーソードでは浄化は出来ない。
 そのことを知っているソレヨコーセは、問答無用で私たちの方に近づいてくる。
 その時、ベリーはベリーソードを投げ捨てた。

「なにっ……?」
「ベリーソードは囮よ!今よ、パイン!」

 ベリーの言葉に私は頷き、パインフルートシンフォニーを取り出す。

「癒せ、祈りのハーモニー。キュアスティック、パインフルートシンフォニー!」

 そして、それを奏で、必殺技を放とうとした時、突然背後から衝撃を感じた。
 その衝撃で私は倒され、パインフルートシンフォニーが地面を転がる。

「ぅぅ……?」
「ふぅ。メイス様の命令で来てみたが、危ないところだったな」

 それは、西さん……いや、ウェスターだった。
 彼は冷酷な目で倒れ伏す私を見下ろすと、ソレヨコーセに何か合図をする。
 すると、ソレヨコーセは触手を振り上げ、私に打ち付けようとしていた。
 避ける体力の無い私は、それを呆然と眺めていた。

「パッションハリケーン!」

 その時、ソレヨコーセを赤い竜巻が包み込む。
 見ると、それはパッションだった。

「パッション!」
「隼人!瞬!なんでこんなことするの!?」

 パッションの呼びかけに、二人は反応しない。
 ただ、無表情でパッションを見ているだけだった。
 彼女は続ける。

「もう、メビウス様もいない!幸せになるチャンスなのに……なんでそのチャンスを手放そうとするの!?……なんで……」
「ソレヨコーセ」

 サウラーの冷淡な声に、私は視線を上げる。
 そこでは、パッションに触手が振り下ろされようとしていた。
 あまりに唐突な出来事なので、私たち3人は動けない。
 私は咄嗟に目を瞑り、祈った。
 その時、何かが何かにぶつかるような衝撃音が響いた。

「……っ?」

 ゆっくりと目を開くと、そこでは、パッションがソレヨコーセの触手を受け止めていた。

「パッション!」
「たとえ……この言葉が通じなくても、私は、2人の目を覚ませるように……精一杯、頑張るわ!」
「キュアキュアプリプー!」

 いつの間にか近くまで来ていたシフォンちゃんの声を聴いた瞬間、パッションのパッションハープが赤く光る。
 しばらくして、それは、少し形状が変わった武器になる。

「歌え、幸せのラプソディー!パッションハープシンフォニー!」

 そのハープを奏で、彼女はさらに叫ぶ。

「吹き荒れよ、幸せの嵐!プリキュア!ハピネスハリケーン!」

 そして、巨大な竜巻が現れ、ソレヨコーセの一体を包み込み、浄化していった。
 そこに、すでにピーチロッドシンフォニーを取り出したピーチが、必殺技の構えをする。

「悪いの悪いの飛んでいけ!プリキュア!ラブサンシャインフレッシュ!」

 巨大なピンク色のハートがソレヨコーセを包み込み、そちらも浄化する。
 ソレヨコーセを倒せたことに私は安堵したが、パッションは鋭く、サウラーとウェスターの二人を睨むように見る。
 そして、ハープをまた奏でた。

「吹き荒れよ!幸せの嵐!ハピネスハリケーン!」

 問答無用で、二人にハピネスハリケーンを放つ。
 赤い竜巻が迫ってくることで、二人は咄嗟に身構えた。その時、一瞬黒い光がした。
 すると、赤い竜巻は晴れ、そこには一人の少女が立っていた。

「「メイス様!」」

 声を揃えて、彼らは少女を呼ぶ。
 彼女は妖艶で、それでいて冷たい笑みを浮かべ、「危なかったわね」と言った。

「どんどんパワーアップしているみたいね……プリキュア」
「彰君は、絶対に、貴方たちには渡さない」

 ピーチの言葉に、私たちも頷く。
 その様子を見ていたメイスは、微かに目を見開いて、「ふぅん……」と声を漏らした。
 そして、僅かに口角を上げ、笑った。

「そう上手くいくかしら?」

 そう言うと、彼女等は去って行った。

Re: フレッシュプリキュア!〜過去の恩と因縁と〜 ( No.26 )
日時: 2016/11/26 22:46
名前: ひのり (ID: uLF5snsy)

 ソファに座ってソレヨコーセの実を指で弄りながら、私は頭の中で夕方の戦いを反芻する。
 あの時、北乃君はプリキュアと一緒にいなかった。
 今思えば、彼とプリキュアはよく一緒にはいるが、プリキュアの戦いからは離れた場所で見ていることが多い。
 後から助けに来られることを考えれば、プリキュアを倒すのが確定だが、元々は彼をプリキュアから奪うのが目的だ。

「良い事思いついちゃった♪」

 私は一人で呟くと、ソレヨコーセの種を握り締め、服のポケットに突っ込んで立ち上がった。
 ちょうど明日は北乃君と出かける日。この作戦の決行は明日にしよう。
 そう思うと、自分の口角が上がることに気付いた。

−−−

「いやぁ。今日は楽しかった!また遊びたいね、千香ちゃん!」
「うん!」

 すっかり意気投合したラブちゃんと千香ちゃんは、すでに次に遊ぶ予定まで立て始めていた。
 私たちは、そのやり取りに苦笑しつつも、話が変な方向にいかないように横で眺めていた。
 しばらくして、千香ちゃんは兄である彰君の方を見て、「ねぇお兄ちゃん」と声をかける。

「千香、明日もラブお姉ちゃんと一緒に遊びたい!」

 その声に、彰君は困ったように笑った。
 ていうか、すでに千香ちゃんの興味はラブちゃん一筋らしい……『達』が入ってなかったよ、千香ちゃん……。

「明日!?急に言われても……それに、明日は僕も用事あるし……まぁ、桃園さんが千香のこと見てくれるなら話は別だけど」

 彰君の言葉に、ラブちゃんは「私は大丈夫だよ〜」と言ったのが分かった。
 その時、私は彼の発言の中に違和感を抱いた。

「明日用事があるって……どんな用事?」

 私が聞くと、彰君は「えっと……」と困ったような表情で目を逸らした。
 中々言い出さない態度に、私は胸の辺りがムカムカしてくるのが分かった。

「彰君は明日真代ちゃんと出かけるんだよね?」

 前を歩くラブちゃんの言葉に、私は彰君の顔を見た。
 そんな私の態度に、ラブちゃんはなぜか「しまった」と言いたげな表情をした。

「真代ちゃん?」

 私が聞き返すと、彰君は慌てて腕を振って、「違うよ!」と否定した。
 そんな慌てた態度に、私は、まるで何かを誤魔化しているように感じた。
 なんでだろう……胸がさらにムカムカしてくる。
 すると、彼はゆっくりと口を開く。

「出かけるっていうか……迷宮さんが、僕と一緒に出かけたいって……。僕は断ったんだけど、桃園さんが一緒に出かけてくれって。桃園さん達には、いつもお世話になってるし、恩返しになるならって、受けたんだ。迷宮さんには、別に興味ないよ」

 その言葉に、私は無意識に視線をラブちゃんに向けた。
 私の視線に気付いたラブちゃんは、すぐにガクガクと頷いた。

「本当だよ!えっと、真代ちゃんが、彰君と仲良くなりたいみたいで、私、真代ちゃんと友達だから、手伝いたくて!」
「まっ、人のためにそうやって自分から動くのは、ラブらしいけどね〜」

 ずっと黙って様子を見ていた美希ちゃんは、そう言ってラブちゃんの肩に手を置いた。
 その言葉に、せつなちゃんも頷いた。

「そうね。ラブらしいと言えば、ラブらしいわ。それにしても、その迷宮真代って子は、どうして彰君と仲良くなりたいのかしら?」
「そりゃぁ、彰君のことが好きなんじゃない?」

 美希ちゃんの言葉に、一瞬、私の中の時間が止まったような感覚がした。
 彰君は、それに慌てた様子で「そんなの困るよ!」と悲痛な声を漏らした。

「困るって……彰君のことが好きな子って、私の学校じゃ多いよ?ていうか、ほとんどの生徒。まさか、気付いてなかったの?」
「うん……全く気付かなかった……」

 彰君って、モテるんだ……。
 それに気づいた瞬間、ますます胸がムカムカして、ズキズキしてくる。
 私はその感覚に、無意識に自分の胸に手を置き、痛みを押さえようとするが、その程度で収まるようなものではない。
 なんなんだろう?この、感覚は……。

「ん。山吹さん。どうしたの?」

 その時、彰君が、そんな私の方を見て首を傾げてきた。
 その顔、声。全てを見聞きした瞬間、心臓がキュンッと痛くなったのが分かった。
 顔も熱くなり、私はそれを隠すように俯いた。

「な、なんでもない!行こう!」

 誤魔化すように大きな声で言い、私は早歩きで進んでいく。
 なんなんだろう?この感覚……。

「訳分からないよ……」

Re: フレッシュプリキュア!〜過去の恩と因縁と〜 ( No.27 )
日時: 2016/11/27 20:57
名前: ひのり (ID: uLF5snsy)

「……早く着きすぎたかな」

 待ち合わせの場所である駅前で行き交う人を見ながら、私はため息交じりに呟いた。
 今日は土曜日。北乃君と、どこかに出かける約束をしている。
 私は、自分の服装を見直しつつ、何度目かになるため息をついた。
 自分でも驚くほどに……はしゃいでいた。
 好きな異性との外出が、ここまで私に行動力を与えるとは思わなかった。
 まさか、集合時間より三十分も早く着いてしまうなんて。

「……私らしくない」

 ポツリと呟いた時、トントンと、二回、肩を叩かれた。
 振り返ると、そこにはニヤニヤと笑顔を浮かべながら立っている若い男が二人立っていた。

「何ですか?貴方は」
「君、すごい美人だよね。良かったら、俺達と一緒に遊ばない?」

 金髪に、耳にいくつかピアスを付けた男が、そう言って親指を上げた。
 よく見ると、舌にもピアスが付けられており、太陽の光を反射していた。

「すいませんけど、今知り合いと待ち合わせしているので、遠慮しておきます」

 できるだけ失礼がないように断っておく。こういう輩は、怒らせると面倒だ。
 暴力沙汰には、できるだけしたくない。勝てるから怪我の問題はないが、北乃君にはあまり強い女だと思われたくない。
 そんな私の考えを他所に、金髪の男の後ろから、赤い髪の男が「そんなこと言わなくていいじゃん」と茶化すように笑いながら言ってきた。

「もしかして、その知り合いも女?だったら俺達と一緒にダブルデートしようぜ。そういう場所、詳しいからさ」
「いや、私の知り合いは……」
「ごめん。待たせた?」

 どこからか聴こえた声に、私は顔を上げた。
 そこには、私服姿の北乃君が肩で息を切らして立っていた。
 すると、二人の男の目つきが明らかに変わったのが分かった。

「あ゛?知り合いって、男かよ」
「迷宮さん。彼らは知り合い?」
「え?い、いえ……初対面」

 私が答えると、彼は「そっか」と安心した様子で笑った。
 そして私と男の間に立つと、ドスの効いた声を出した。

「どういう用件か分かりませんけど、これ以上彼女の邪魔はしないで下さい」
「なんだテメエ!」

 金髪の男は、北乃君の発言に完全にキレてしまったようで、拳を振り下ろす。
 よく見れば、その手の人差し指には鉄のリングのような、指輪のようなものが嵌められている。

「危ない!」

 私が叫び、咄嗟に助けようと手を伸ばした。
 しかし、彼はその拳を、体を右側に倒すようにしてかわし、右手に拳を作ってアッパーを食らわせる。
 顎を揺らされ、金髪の男はその場に倒れた。

「すごい……」
「迷宮さん!屈んで!」

 彼の言葉に、私は慌ててしゃがんだ。
 すると、頭上を何かが通り過ぎるような、風を切る音と、背後から「ぐはぁっ」という声がした。
 恐る恐る振り返ると、そこでは赤い髪の男が白目をむき、倒れていた。

「ふぅ……大丈夫?怪我とか」

 そう言って私に手を差し出してくる。
 私は、その手をとり、立ち上がった。すると、周りで見ていた人たちから拍手が巻き起こるのが分かった。
 こういうことはよくあるのか、彼は照れたように頭を掻きながら「どうもどうも」と会釈する。

「強いのね……。こういうことは、よくあるの?」
「え?あー……うん。たまに外で活動してると、カツアゲとか、女の子といるとナンパとかくるから、その退治をしたりとか」
「でも、新聞部……よね?わざわざそのために鍛えたの?」
「いや、色々な部の撮影に行くから、その時に、柔道部とか、空手部とか、ボクシング部とか。そのへんの撮影の時についでに習ったんだ」

 その言葉に、私は隣にいる彼の顔を見上げた。
 彼はそれに照れたように笑って、言った。

「争いとかは苦手だけど、人の笑顔を守るために強さが必要ならって、何度か通って色々身に着けたんだ。流石に、桃園さん達には負けちゃうけど……」
「桃園さんって……ラブちゃん?」

 私が聞いてみると、彼は慌てて「いや、今のは!」と慌てた。
 そんなドジな一面が新鮮で、私は笑ってしまった。

「北乃君って、意外とドジだったりして、可愛いんだね。なんか意外」
「そ、そうかな……」
「えぇ。北乃君のそんな一面が見れて、なんだか得した気分」

 私が笑いながらそう言って見せると、彼は「何それ……」と呆れたように笑った。


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