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【完結】フレッシュプリキュア!〜過去の恩と因縁と〜
日時: 2016/12/24 22:01
名前: ひのり (ID: uLF5snsy)

皆さんこんにちは!ひのりです!
以前まで春太郎という名前で書いていたのですが、雑談掲示板の方での名前変えたのでこっちでも変えました!
今回は二か月ぶりにフレッシュプリキュアの小説を書いていきたいと思います!
いやぁ、ブッキー可愛いよ。うん、ブッキー可愛い。
ちなみにタイトルはそこまで意味ないです。適当に考えましたw
では、稚拙な文章になると思いますが、温かい目で見てやってください。
それでは、よろしくお願いします。

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Re: フレッシュプリキュア!〜過去の恩と因縁と〜 ( No.8 )
日時: 2016/10/22 20:09
名前: ひのり (ID: YVCR41Yb)

「そういえば、せつなは寝泊りってどうするの?」

 帰る時になり、私はなんとなくせつなに聞いてみた。
 彼女は困ったように笑い、「実は、ちゃんと決めてないの」と恥ずかしそうに言った。

「最初にアパートとかの部屋を適当に借りる予定だったんだけど、そしたらタルトやシフォンに会って」
「ワイらは、長老がまだラビリンスの邪悪な気配が残ってるって言うから来たんや!そいでこっちの世界に来た瞬間シフォンが泣きだして、パッションはんに会ったらすぐにピーチはんたちが襲われているのを察知して、瞬間移動までここまで来たんや」
「焦って隼人や瞬はつい忘れちゃったの。もうそろそろ来るハズなんだけど……遅いわね」

 せつなの心配そうな声に、私たちも辺りを見渡す。
 確かに、隼人も瞬もいない。
 それどころか、来る気配すらない。

「一刻を争うと思ったから瞬間移動で来たけど、距離的に歩いてもニ十分くらいで来れる距離よ」
「なんか、その……ごめんなさい。僕のせいで」

 ずっと黙って聞いていた彰君が、やがてすまなそうに頭を下げた。
 それに、私はすぐに「いやいやそういうの良いから!」と言っておく。

「結局彰君いなくても、他の何かがナケサケーベにされてただろうしね〜」
「でも……」
「私とあなたは初対面だけど、ラブ達はきっと気にしてないわ。そうでしょ?」

 せつなの言葉に、ブッキーと美希たんも頷く。
 それを見て、彰君の顔に安堵の表情が浮かぶ。

「でもせつな。寝泊りできる場所が無いのは問題じゃない?瞬も隼人も子供じゃないし、危険なことは無いと思うけど……事故にあったって可能性もあるし、流石に貴方一人で部屋借りたりとかは無理よね」
「そうね……どうにかしないと」
「じゃあさじゃあさ!また私の家に泊まればいーじゃん!」

 私の提案に、せつなが「その手があったか」といった表情をした。

「良いんじゃない?瞬や隼人の消息が掴めるまでなら、ラブの両親なら快く了承するでしょ」
「うん。二ヶ月前まではしばらく居候していたくらいだし、今回のは短期になるハズだから、良いと思うよ」
「まだ決まったわけじゃないけれど……そうね」

 美希たんとブッキーの言葉に、せつなはコクッと頷いた。

「それにしても、あの二人はどこに行ったんだろうね〜」

 私の疑問に、全員が首を傾げた。

−−−

 元々ウェスター達に与えていた館があった場所に着くと、それは、ラビリンスの本拠地と同じように、何もない平地になっていた。

「まぁ、私が折角与えた館も無くしてしまったの?」
「すいません……」
「ハァ。プリキュアね。まぁ良いわ。ノーザの実験室的なのが異空間にあったハズだから、それをベースに館を構築してっと……」

 力を込めて異空間からノーザの部屋を持ってくると、私はそれにさらに力を込めて大きくしていく。
 やがて、ドーム状で、周りをノーザのソレワターセの触手のようなものに囲まれた館が出来上がった。
 まぁこんなものかと思いつつ、二人に目を向ける。

「さぁ、今日からここが私たちの家よ」
「「ありがたき幸せ……」」

 服従は良いんだけど、少し堅苦しいかな、と思う。まぁ気にしないけど。
 私はそれを軽く無視しつつ、館に向かった。

Re: フレッシュプリキュア!〜過去の恩と因縁と〜 ( No.9 )
日時: 2016/10/23 15:12
名前: ひのり (ID: YVCR41Yb)

 翌日、私が学校に行くと生徒玄関を出た所にある掲示板に人だかりができていた。
 私に気付いた一人の生徒が「あっ、桃園さんだ」と言うと、他の皆も私を見て声をあげた。

「なっ、何?」
「ずるいよラブちゃん!北乃君に写真撮ってもらえるなんて!」

 混乱する私の元に、クラスメイトであり友達の一人である恵美がそう言って私の手を掴んでくる。
 何が何だか分からない内に人ごみの中に詰め込まれるように引っ張られ、やがて掲示板が見える場所に行く。
 そこには、大きく私たちがダンスしている写真があり、でかでかと『街で見つけたダンスガール!一生懸命幸せゲット!』と、見出しが書かれていた。

「これ……昨日の……」
「ただでさえ北乃君に写真撮ってもらえるなんて貴重なのに、部活もしてないラブちゃんが……どういうこと!?」

 恵美怖いよ鬼気迫ってるよ!
 私は軽く距離を取りつつ、昨日ダンスの練習をしていたらたまたま彰君に出会って写真を撮られたことを話した。
 すると、いつのまにか近くで盗み聞きしていた女子達から歓声が上がる。

 彰君はモテる。とにかくモテる。
 理由は、言っていけばキリがない。
 まずは顔。とにかくイケメンで、アイドルや子役にいそうなくらいのレベルだ。
 そして、そんなにイケメンでありながらナルシストになったりしない気さくな性格で、何事にも真面目に取り組む姿勢や、誰にでも当たり前のように優しく親切にできるところが、またポイントが高い。

 そして、そんな彼が新聞部の部長として、よく校内新聞で部活に取り組んでいる生徒の写真を撮ったりしているのだ。
 昨日の彼の発言などから考えると、恐らく部活をしている人たちの笑顔を残していきたい、って理由なんだろうけど、写真を撮る時に近くで彰君を見れることや、その後での写真の使用許可などで話せることから、写真を撮られたいと思う女子は少なくないのだ。

 でも、そうなると彼にとって私たちの笑顔は写真に残す価値があったってことなのかな。
 大輔達が写ってない辺り、少々気になるけど。

 とりあえず、私は女子からの言及を逃れつつ、教室に向かった。
 そこでは、男子が十数人ほどと、騒ぎを知らない話題の主が自分の席でスヤスヤと眠っていた。
 彼は私の席の前の席なので、私が自分の席に向かうと必然的に彼の席の横を通ることになる。
 そして、そんな時に彼がちょうど起きたようで、私を見て「あ、桃園さん」と声をかけてきた。

「見てくれた?僕の新聞。昨日徹夜で頑張って仕上げたんだ〜」
「へぇ……そう」
「あれ、もしかして写真気に入らなかった?一番綺麗な分を選んだハズなのに……昨日助けてもらったお礼に頑張って速く作ったり朝早くから来たり頑張ったけど、やっぱり少し手抜きになっていたかな?作業の後半の方の記憶ほとんど残ってなくて……」
「いや、写真も新聞もとても良かったから!」

 弁解する彰君を、私は慌てて止める。
 写真は、むしろ鏡で自分を見た時よりも美人になっていたし、新聞だってとても良かったと思う。
 というか、彰君の新聞を罵る人間なんていない。
 彼のカメラや文章の才能はずば抜けていて、一度学校にプロのカメラマンが文化祭などの記念撮影で雇われてきたときに校内新聞を見た時には、写真をとても高く評価していたくらいだ。
 とはいえ、好みも人それぞれだとは思うが、それでも彼の写真を表だって批判する勇者はこの学校にはいない。

「じゃあ、なんで?」
「なんでって、何が?」
「桃園さんの顔、今すごく疲れてるっていうか、あまり嬉しくなさそう。僕の新聞が原因だったら、嫌だからさ……」

 そう言って目を伏せる彼は子犬のようで、この教室に他に女子がいたらキャーキャー声を出すくらいだろう。
 私は少し迷った後で、女子達に彰君に写真を撮ってもらったことで羨まれたことを話した。
 すると、彰君は顔面蒼白になり(大袈裟だと思われるかもしれないけど、実際顔が真っ青だった)、すぐに立ち上がって頭を下げた。

「ごめん!僕のせいで迷惑かけて!すぐにその子達に注意してくるから……」
「いや、本当にもう大丈夫だから!注意したらむしろ面倒になるだけだし、私も全然気にしてないよ!」
「本当に……?」
「うん」
「……そっか」

 安心した様子で彼はホッと息をつくと、席に着く。
 焦った……彼は真面目すぎるというか、たまに極端になるのが残念な感じがあるかなぁ。
 私はその後で二言三言交わした後で席に着き、荷物の整理をする。
 しばらくすると少しずつ女子達も入って来て、チャイムが鳴る頃には全員揃っていた。

「今日も全員いるな。それじゃあ、今日は転校生が来てくれたぞ」

 朝のHRを終えた先生は、笑顔を浮かべながらそう言った。
 それに、周りは「転校生?」「この中途半端な時期にか」とざわついた。
 先生はそんな中で「入ってきなさい」と教室の扉の向こうに声をかけた。
 すると扉は開き、黒い髪の少女が教室に入ってくる。

「今日からみんなと一緒に勉強する」
「迷宮 真代です。皆さん、よろしくお願いします」

Re: フレッシュプリキュア!〜過去の恩と因縁と〜 ( No.10 )
日時: 2016/10/23 17:01
名前: ひのり (ID: YVCR41Yb)

 黒い長髪を後ろで一つにまとめ、真っ青な綺麗な瞳をした、人形のように綺麗な顔をした少女が、前に立っていた。
 そんな彼女は口元に笑みを浮かべ、クラスの皆の顔を見渡す。
 目が合った男子は顔を赤くし、目を煌かせた。

「迷宮 真代です。皆さん、よろしくお願いします」

 その挨拶に、主に男子が元気よく返事をした。
 その後で聞いた話では、迷宮って書いてめいみやって読むんだって。珍しい苗字だなぁ。
 そんな迷宮さんは、一番後ろの窓際の席になった。

 休憩時間になると、迷宮さんの周りには人だかりができていた。

「すごぉい!髪サラサラしてるね〜」「大人しくて大和撫子みたい」「どこの町から来たの?」「部活は?」

 質問攻めにされているけど、大丈夫なのかな?
 っていうか、本当は私も質問とかしてみたいけど、他の皆のパワーが凄すぎて中に入れない!
 その時、迷宮さんは立ち上がり、一つの席に近づく。
 それはなんと、彰君の席だった。

「あなた……名前は何て言うの?」

 透き通るような綺麗な、凛とした声で聞かれた彰君は、先ほどからずっと続けていたらしいカメラの手入れを止めずに「北乃 彰」と端的に答えた。
 その態度に迷宮さんは不快に思ったらしく、眉をピクッと動かした。
 私は慌ててそこに近づき、フォローを入れた。

「彰君は好きなものに没頭するタイプで!その……こういう態度も悪気があってするわけじゃ……」
「そうなの。まぁ、良いわ。ところであなたは確か……」

 一瞬笑みを浮かべた迷宮さんは、私を見てすぐに眉を潜める。
 その行為に、私は自分が自己紹介をしていなかったことを思い出したので、すぐに名乗ることにした。

「私は桃園ラブ!ラブは、片仮名で、ラブって書くの!」
「フフッ、可愛らしい名前ね。私は……って、さっき言ったわね。よろしくね、ラブちゃん」
「あ……うん!よろしくね!真代ちゃん!」

 名前で呼ばれたことから、私もすぐに彼女のことを名前で呼び、握手をした。
 その時の彼女の手は、とても暖かった。

−−−

「私の目標は、この間私を助けた少年をプリキュアから奪うことよ」

 私はそう言いながら、鉢植えから生えた黒い木の葉に指を当てた。
 そしてそこに力を込めると、枝の先に丸い塊ができ、やがてそれは土に落下した。
 私はそれを手に取り、ウェスターに渡した。

「これを使って、プリキュアを倒してちょうだい。きっと彼女たちでもこれには勝てない」
「仰せのままに」
「フフッ。行きなさい」

 私が笑いかけると、ウェスターは頷き、館を出て行った。
 それを見送りつつ、私はスイッチオーバーをして、着ていた服を脱ぎ公立四葉中学校の制服を着る。

「それじゃあ、私は学校に行って情報を集めてくるから、お留守番よろしくね。サウラー」
「かしこまりました」

 私はその返事を聞くと、館を出て、中学校とやらに向かった。

Re: フレッシュプリキュア!〜過去の恩と因縁と〜 ( No.11 )
日時: 2016/10/23 21:31
名前: ひのり (ID: YVCR41Yb)

 給食が終わった後の五時間目の授業である数学は、私を睡魔と戦わせるには十分な理由だった。
 流石にこの眠気には敵わない……仕方なく、私は教科書を見ている風に立てながらうつ伏せになって眠ろうとした、その時だった。
 地響きと共に轟音が聴こえたのは。

「なんだ!?」

 窓際の席に座っていた男子の一人がそう言って立ち上がるのと同時に、ほとんどの生徒が窓に駆け寄った。
 私も見ようと、人を掛け分けたり背伸びをしたりして、なんとか人の隙間から音の正体を発見した。
 それは、ソレワターセによく似た化け物だった。

「まさか、メイスが……ッ!」
「ラブちゃん?」

 私の呟きに反応した真代ちゃんは、不思議そうに首を傾げた。
 そうか。私がプリキュアであることを、彼女は知らないんだ。
 とはいえ、説明している時間はない。
 私は人ごみを抜け出し、廊下を走って、階段まで行く。
 駆け下りながらリンクルンで変身して、二回の踊り場の窓を開けて飛び降りた。

「遅かったな、プリキュア」

 その時、どこからか声がした。それは、不思議なことに男だった。
 私はその声の主を見て、目を見開いた。

「貴方は……隼人!?」

 それは、行方不明になっていた隼人だったのだ。
 いや、正確には、彼の格好は、ラビリンスにいた頃のウェスターの服装になっていたが。

「隼人?知らない名だな」

 彼はそういうと、自分の胸に手を当てて叫んだ。

「我が名はウェスター。ラビリンス最高幹部。メイス様が下僕!」
「なっ……それって、どういう……?」

 私が混乱していた時、突如ソレワターセ(?)の触手が私を襲った。
 私は咄嗟にそれを避け、一気に距離を詰めながらキュアスティック、ピーチロッドを出す。

「悪いの悪いの飛んでいけ!プリキュア!ラブサンシャインフレッシュ!」

 叫びながら、光り輝くロッドでハートを描き、それを化け物にぶつける。
 しかし、当たり前というべきか、無傷だった。

「くっ……」
「貴様の力が効くわけないだろう!メイス様の力の分身である、このソレヨコーセが!」

 それ渡せから、それよこせ?
 確か、ノーザがソレワターセを出したときは、シフォンを奪う時。

「まさか、貴方たち、またシフォンを!?」
「ん?フン、そんなわけがないだろう。俺たちが狙っているのは……」
「キュアピーチ!」

 その時、どこからかキュアパッションの声がした。
 顔を上げるのと同時に、パッションが化け物の体を蹴りぬいた。

「おぉ……」
「はぁぁッ!」

 そのままもう一撃喰らわせ、パッションハープを出し、ハピネスハリケーンを繰り出すが、やはりソレヨコーセとやらには全く効かなかった。
 私の前に着地したパッションは、「待たせたわね!」と言った。

「でもなんで?」
「クローバーボックスに反応があったのよ。学校に行ってないし、家で暇してるだけだったから、すぐに駆けつけてきたの」

 なんか……自宅警備員みたいな生活してるんだな、せつなって。

「それで、今タルトとシフォンが美希とブッキーを呼んでいるわ。二人は学校が違うから、来るには時間がかかるだろうけど」
「じゃあ、二人が来るまで持ちこたえよう!」
「えぇ。精一杯頑張るわ!」

 二人でそう言いあった時、突然、ソレヨコーセの触手が襲ってくる。
 私は咄嗟にそれを横に跳んでかわし、すぐにピーチロッドを構える。

「ラブサンシャインフレッシュ!」

 すぐにハートを飛ばし、そこにパッションのハピネスハリケーンが加わって赤とピンク色の巨大なハートが出来上がる。
 しかし、すぐに弾かれ、触手で吹き飛ばされる。
 勢いがあまりにも強く、私の体は学校の壁にぶち当たり、私を中心にクレーターのようなものができる。
 すると、胴体を触手で絡められ、持ち上げられる。

「くっ……離してよッ!」

 私は何度も触手を殴るが、びくともしない。
 むしろ、殴る度に強くなっていくような感覚までする。
 息まで苦しくなり、いよいよ意識まで手放しそうになった時だった。

「ダブルプリキュアパンチ!」

 聴き覚えのある声がして、私は目を開いた。
 そこには、ソレヨコーセを殴るベリーとパインの姿があった。

「ベリー!パイン!」
「待たせたわね、ピーチ」
「ううん……ありがとう!」

 私の言葉に、二人も笑った。
 そしてパッションに目を向けると、彼女はクローバーボックスを取り出した。

「さぁ、行くよ!プリキュアフォーメーション!レディ、Go!」

 私の掛け声と同時に全員で走り出し、ラッキークローバー・グランドフィナーレを放つ。
 しかし、それは無情にも……弾かれた。

Re: フレッシュプリキュア!〜過去の恩と因縁と〜 ( No.12 )
日時: 2016/10/24 20:28
名前: ひのり (ID: YVCR41Yb)

 一番強いハズであろう四人技を弾かれ、プリキュアの顔は明らかに青ざめ、狼狽した。
 そのまま、化け物の蔓?によって吹き飛ばされ、地面に倒れた。

「一体、どうすればいいんだ……?」

 僕は机の上に置いたままのカメラを見た。
 このカメラは、プリキュアが守ってくれたもの。
 今まで僕は、このカメラを使って人の笑顔を広めることが、正しいと思っていた。
 それで、皆が喜ぶと思っていた。

 でも、それはプリキュアがこの世界の平和を守っていたからなんだ。
 僕には力なんて無い。あの、プリキュアの戦いを撮ったところで、何も変わらない。
 カメラじゃ、僕じゃ、人の笑顔は守れない……ッ!

「北乃君……?」

 誰かが僕を呼ぶ声がした。
 しかし、そんなことはどうでもいいんだ。
 僕を、僕の大切なものを守ってくれた人に、僕は何もできないのか?
 この安全な教室で、指を咥えて見ていることしかできない、のか?

「北乃君?」

 嫌だ。そんなの、嫌だ!
 プリキュアが負けたら、結局僕等だって、何かされてしまうんだ。
 それなら、僕だって。
 僕だって……戦いたい!

「うおおおおおおッ!」

 僕は叫び、教室の窓を飛び出した。
 3階から飛び降り、なんとか下にあった植込みの中に飛び込み、骨折だけは避ける。
 多少擦り傷はできたが、そんなことは気にしていられない。
 僕はそこから走って外の落ち葉掃除のための竹箒を一本取り、数度振って構えた。
 アドレナリンのおかげか、傷も痛くない。いける!

「おい!化け物!彼女たちを攻撃するくらいなら、先に僕を倒せ!」

 僕はそう叫びつつ、箒を構えた。
 啖呵を切ったのは良いものの、足はガクガク震えるし、歯はカチカチと音を立てた。
 でも、そんな時、小さい頃に父さんが教えてくれたことを思い出した。

『もしも命の危機に陥った時に、父さんは、自分が死ぬことと、カメラに入った人の笑顔を失うこと。どちらが嫌なのかを考えるんだ』
『え?普通は自分が死ぬ方が怖いんじゃないの?』
『ははっ。そりゃぁ、彰からすればそうかもしれないな。でも、父さんからすれば、人の笑顔を失うことの方が怖い。そう思うと、不思議と、力が湧いてきて、どんな状況でも覆してしまうものなのさ』

 今なら分かる。
 僕は死ぬことよりも何よりも、皆の笑顔を失うことの方が怖い。
 それなら、たとえこの命を捨ててでも、僕は皆の笑顔を守りたい!

「ほう?目標の方から来てくれるとは、探す手間が省けた」

 その時、化け物の近くに立つ男は、そう言ってニヤリと笑った。
 その言葉に、僕は、胸の中に氷の塊を落とされたような気分になった。

「えっ……それって、どういう……」
「まさか……メイスの狙いは彰君!?」
「でも、なんで……」

 プリキュアの会話も聞こえず、僕は構えた箒を落とした。
 今、プリキュアが苦しんでいるのも、こんな化け物がここに来ているのも、全て僕のせい?
 僕がいたから、彼女たちは、怪我して……。

「危ない!」

 その時、僕の体は誰かによって突き飛ばされた。
 数秒後に、僕がいた場所に化け物の蔓のようなものが刺さる音が聴こえた。
 黄色のフワフワした陰に、僕の目は見開く。

「キュア……パイン……?」
「彰君は悪くないよ?それに、彰君が守ってくれようとした時、嬉しかった。ありがとう」

 そう言ってニコッと笑った彼女の顔に、ドクンッと僕の胸から鼓動音が鳴り響いた。

「彰ッ!」

 その時、僕のことを心配したのか、同じクラスの大輔君が駆け寄って来て、僕の腕を掴んだ。
 そのまま引っ張られ、校舎の壁近くまで連れていかれると、彼は僕の肩に手を置いて「大丈夫か?」と聞いてきた。

「大丈夫だけど……あの4人はまだ戦ってる。僕だけ安全な場所で見ているだけなんて……」
「お前が行ってもやられるだけだろ。それに、アイツらは一度全ての世界を救ったすげぇ奴等なんだ。今更お前一人守れないような弱い奴等じゃないさ」


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