二次創作小説(新・総合)

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≪ポケモン二次創作≫ 最期の足掻き
日時: 2022/06/30 18:24
名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: XsTmunS8)

       
 ご注意
◯死ネタが含まれます。
◯グロ注意
◯これは二次創作です。本家とは一切関係ございません。
◯ポケバは、アニメ方式で表現させて頂きます。
◯誤字脱字、私の語彙力不足での分からない所は、紙ほかの裏の陰謀についてでも、ここのスレでも大丈夫です。





プロローグ

ここは地球。
この星に住む、不思議な不思議な生き物。
──ポケットモンスター 縮めてポケモン
彼らは 空に 海に 大地に…さまざまなところに分布している。

この物語は… この世界の… この星の"裏"で生き残る少年の物語である…






  ──覚悟はできてるんだよね?──






 記憶。

イチ─仕事場─ >>1-11
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ニ─恋バナ─ >>12-13
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
サン─双子─ >>14-24
───────────────
ヨン─リゼ─ >>25-30
───────────────
ゴ─3柱─ >>33-44
───────────────
束の間の刻 >>45
───────────────
ロクーチャーフル・ジーニアの冒険譚ー 
>>48-58
────────────────
ナナー嵐の前の静けさー 
>>61-
────────────────,✒️

   ・・・

『オリキャラ、お客様リスト』

暁の冬さんーリゼ >>20
女剣士さん
――――――――――――――――――

Re: ≪ポケモン二次創作≫ 最期の足掻き ( No.57 )
日時: 2022/06/20 10:08
名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: 4mXaqJWJ)

僕は弱い。名前もない。ずっとレイの後ろをみていたんだ。レイは早くて、強くて僕の憧れだった。いつかレイの横に立てれば。レイを助けられたなら。

『ほら、早く!    フジッ!
      しなよ。 シュウ』

 僕は、2 代目レイのためなら。この命なんて
    3         
 捨てても良かった。

ーーーーーーーーーーー
《フジ》

 脱走は唐突に始まった。僕には知らされてなく、夜中いきなりドクに起こされた。急に脱走って言われてもすんなりと行く訳には行かなかった。脱走するにはリーダーのレイが立ちはだかる。柱全員が束でかかっても勝てっこない。
 しかし僕は弱い。ドクに反抗出来るわけがなく無理やり抱えられ仕事場に連れていかれた。

 この施設の出口は仕事場のガラスドームの天井にある。そして脱走を防ぐため夜にガラスドームは迷路のような壁が現れる。情報屋のドクからそれだけは聞いていた。
 仕事場の道中にはスイ、ダミ、アーボが待っていた。要するに柱が全員集まったのである。けど、問題はレイだ。しかし皆は脱走計画を知っていたような息のあった動きで仕事場に向かった。

 案の定、仕事場に出てきた瞬間レイが待ち構えていた。僕と同じぐらいの背格好で小さい。しかし、堂々と立っており雰囲気は大人……いや、人外のような雰囲気であった。
 ここをどう突破するっていうの……?僕は弱音を心の中で吐いていた。そんな中、レイに手をかけられて死ぬのならいいのかも。みたいな事を考えてる自分もいたのだ。

「スイ、ドク、ダミ、アーボ。そしてフジ。全員揃ったね。」

 レイは僕が思っていた発言と行動とは真反対で僕の頭を撫でた。僕は予想もしなかった出来事に混乱を隠せなかった。

「今回は協力してくれてありがとう。私なんかのために……」

 そう俯くレイの瞳には僕達が微かに映っていた。あれ、昔はくっきり僕達を見ていることがわかって、キラキラとした瞳だったのに、変わってる?当時の僕はその微かな変化を気にかけることはなく、周りの空気に流されて行った。

「まあ、可愛い弟子に頼まれたらね。命をかけるよ。」

 アーボは1柱で、昔レイが施設に来た時レイを救って育て上げた人物でレイとアーボの間には師弟関係が出来ている。今やレイの方が実力は上だが、レイを守れる立場にいるなんて何とも羨ましい限りである。

「私もっ! このメンバーの中で1番レイへの愛は強いわ! このスイ。レイの為なら身も心も心臓も捧げる。」

 水色がかった白髪にパッツンのレイより少し身長が高い3柱のスイが真剣な顔つきでレイに言った。スイは重度のレイコンプレックス……所謂レイコンで、レイに常に引っ付いており、誰かと関わると牙を向く。僕もレイが好きなため正直邪魔である。しかし力の差は覆られなかった。

「僕も、レイのためならこの体絞ってでも助けたいからね。クヒヒヒッ」

 そう不敵な笑みを浮かべるマッドサイエンティストこと、ダミ。4柱である。今はもう生きてはいないが、昔はいつも不敵な笑みを浮かべ、楽しいことなら何でもする人であった。そして、ダミもレイの事が好きであった。

「うん。僕も覚悟はできてる。ユウが心残りだけど……ユウなら、僕の跡をしっかり継いでくれると思うからさ。」

 ダミと同じ髪色のショートヘアでアーボと同じぐらいの身長の青年─2柱であるドクが言った。『自分はもう死ぬ─』と受け取れる発言に僕は疑問を抱かずには居られなかった。因みに、ドクは現在のリーダーである。

「皆……本当に……本当に……ごめん……」

 レイは声を振り絞り最後はもうかすれ声になり言った。すると僕以外がレイに抱きつく。僕は意味が分からなかった。何をしてるんだと疑問で疑問で仕方なかった。
まあ、現時点で1柱のアーボ、2柱のドク、3柱のスイ、4柱のダミ、そしてリーダーのレイ。柱全員とリーダーが揃ったのである。もう仕事人の中で敵になるものは居ない。ならば、すんなりと脱走出来るんじゃないのか?僕はそうワクワクしていた。

「─じゃあ、行こうか。」

 レイはもう何も映らない瞳を前へ向けて言ったのだ。

 最初にたどり着いたの空間はかなり広く、公園ひとつ分ぐらいの大きさであった。しかし、そこには誰もいなくて何も無かった。

「ねぇ、ここは大丈夫なの?」

 僕は怖くなりながら皆に聞いた。するとレイは僕の頭を撫でる。

「ここは本来リーダー、柱が脱走者を足止めする場所なんだけどね。足止めする人がいないから! 」

 そうレイはいつものように元気いっぱいで、キラキラした笑顔を僕に向けて言った。けどさっきからレイの瞳の濁り具合が異常で心配である。
 大きな場所から狭い通路を通っていると、床が無い場所に着いた。細い通路の中、ポケモンのキメラで視力が良い僕やレイでさえこの穴の底は見えなかった。レイぐらいなら穴を軽く飛び越えられそうだが、1柱であるアーボのレベルまで落ちるとどうしても飛び越えられない。それぐらい長い穴が空いてあった。落ちたら……死にはしないだろうけど全身複雑骨折をして誰も助けが来なくて、複雑骨折で苦しみながら数ヶ月苦しんで餓死するだろう。そう考えるだけでゾッとする。

「ねぇ、脱走なんて……辞めようよ……」

「何? ここまで来て怖気付いた?フジ。」

 怖くなった僕はそう皆に言うがいつものようにスイに刺々しい言葉を言われた。『そうじゃないけど…』そう口ごもる当時の僕。気弱で自分の意見すらまともに通せなかったのだ。

「まず第1段階。このレバーを引くと床が現れてて通れる仕組みだ。」

 ダミが壁についていたレバーを指さして言う。でも、そしたらレバーを引いてる人は通れないじゃないか。ここで1人犠牲にするというのか?

「作戦通り。頼むよ。ドク」

 アーボがドクにそう言った。ドクは少し寂しそうな顔をする。そのまま黙ってレバーの手前までくる。

「ちょっと待ってよ! ドクを犠牲にするよの?! そんなの、ダメだよ! ねぇ、ダメだって! そうでしょ! アーボ、レイ! 」

 僕は誰よりも他人のことを考えてるレイと、歳が近く良くドクと仲良くしていたアーボの情に訴えかける。僕達は一人欠けたらそれで終わりだ。ドクを失いたくなんかない。だから、辞めようよ……こんなこと……

「そういう作戦なんだ。」

 いつも不敵な笑みを浮かべているはずのダミが表情を冷たくして僕に言い放った。そんなこと言われても納得できない。そんな顔をするとレイがギリッと歯ぎしりをする。しかしレイはいつものように笑っている。でも、悲しそうで、悔しそうであった。
 鳴呼、この中で1番仲間を犠牲にすることに躊躇っているのはレイなんだ。レイが仲間を犠牲にする程、何かに追い込まれているという事になる。当時は幼く、そんな考えに至らずに『レイの意向ならそうする』と思ってしまった。

「……なあ。ごめん。やっぱり……怖い。」

 ドクは震えた手を必死でレバーにかざそうとする。そりゃ怖いだろう。自分を犠牲にして仲間を脱走させても、その後自分は職員から拷問を受ける。怖くて当然である。

「……ドクはこれ、持ってなかったよね。」

 そういうとレイが頭に巻いていた長タオルをシュルシュルッと解き、ドクの肩にかける。ドクの2柱という立場はあくまで相棒のポリゴン2と、情報屋としての知識量のお陰で成り立っているため、ランキングに乗ることは無かった。そのため、支給品をいつも貰ってる組から服などを貰っていた。だからドクも僕もランキングによく乗っている組が持ってる長タオルを持っていなかった。

「……いい……のか?」

「うん。いつも何枚かは持ち歩いてるしね。
  "お揃い! "」

 レイは満面の笑みでドクに言うと、ドクは顔を真っ赤にして、フッと笑った。そして黙って、レバーを───下げた。

「ぐあぁぁぁぁっ!!」

『バチバチバチバチ』

 するとドクの叫び声と、電流が流れる音がする。えっ、どういうこと?! 何が起こってるの?! 僕は疑問だらけで、その場で立ち尽くしていた。

「何やってるのバカフジ!早く行くよ!」

 するとスイに僕の尻を蹴られ進むよう催促された。僕は嫌々ドクのおかげで作られた床を渡る。

「どういう……ことなの?」

「どうもこうもないよ。ここは誰かがレバーを引いてる時だけ床が現れる。けれど、レバーを引くと高い電流が流れる。僕達が渡切る前にドクがレバーを話したら僕達は穴の中にスっトーンだよ。」

 僕が混乱しながら聞くとダミが平然と答える。じゃあ、早く渡りきらないと……! けれど、まだドクを犠牲にしたことに心残りがある。ダミも、肉親だよね? なんでドクを犠牲にすることに賛成なんてしたんだよ……!
 心の中で不快感がありながらも僕は皆より最後に床を渡り終えた。その瞬間。『ガタッ』という音と主に床が無くなり、最初のように底が見えない程の穴が空いた。
 ドクがレバーから手を話したのだろう。ドクとダミはキメラではなく人間だ。それであそこまで耐えられたのは尊敬に値する。そして、あの電流を浴びて無事ではないだろう。多分……死んでる。
 しかしスイ、アーボ、ダミは何も言わず黙って先に進む。僕は納得がいかなった。もしドクが生きてたとしても、脱走未遂者として捕まり拷問を受けられるんだ。なんで、ドクが……いや今考えるとドクしか居なかったんだ。

 次は迷路のように入り組んだ道を進んでいく。僕は途中で方向感覚がおかしくなったが、レイは次々と正解の道を当て続けズンズン前へ進んでいく。さすがレイだ。素晴らしい勘の持ち主である。現在の僕でさえ、レイの勘には追いつかない。
 迷路が終わるとまた、一番最初の空間のような場所に着いた。最初の空間と違う部分は……

『蜉ゥ縺代※窶ヲ窶ヲ谿コ縺励※』

全身真っ白、個体によって所々皮膚の色が違い、爪、牙、羽が着いている物も居れば人型ですらない白い何かが複数体待ち構えていた。

「なに……これ、誰なの! 」

 僕は恐怖で声が掠れていた。しかし、そんな僕の前にレイが僕を守るように立つ。

「彼らは正規品。俺らのようにかつて自我を"持っていた"まあ、同類みたいな物だよ。」

 正規品─聞いたことがある。
働いてる僕達は人間にポケモンの遺伝子を無理やり組み込んだポケモンキメラの、失敗作。性能が低かったり自我が強かったり人間の遺伝子が強く出ると失敗作となり廃棄か施設で働かされるが正規品は違う。個体値が高く、自我は薄いが思考力がありポケモンの能力が色濃く出ている個体。その個体の自我を物理的に抜き取るのだ。要するに脳みその一部分を抜き取り、命令を受けるための電波を頭に付けられる。
 人間のエゴで生まれた可哀想な生物兵器である。そう。彼らも僕達のように生きているのだ。体が白く、個体によって着いている部位が違うのはベースとなるポケモンが違うのと、動いやすいように必要最低限のものまで削ったらこんなフォルムになるらしい。人間の遺伝子が入ってるはずなのに、完全に化け物である。
 強さも1柱のアーボ程である。それが複数体。これは無理なんじゃないかと一瞬思ったが僕らにはレイがいるのだ。

『蜉ゥ縺代※窶ヲ窶ヲ谿コ縺励※!!!!!!!! 』

 正規品が声とも言えない電波に近い音声を叫びながらレイに襲いかかる。しかしレイは正規品の人中て……急所を1発で当てて次々と正規品を倒していく。ダミもその戦いに参加している。僕も参加したいけどアーボが頑なに僕を行かせようとしない。
 正規品も残り数体になった。

『縺ゅj縺後→縺……』

 そんな切なそうな、嬉しそうな電子音を流し正規品は倒れていく。そして、全部の正規品を倒し終えた後。

「じゃあ、次行こうか! 」

 レイが可愛らしく『頑張るぞ!! 』と体で表した瞬間であった。ダミの後ろから嫌な予感がする。背中がゾクッとした。それを僕よりも先にレイとアーボは感じ取っていたのか2人は叫ぶ。

「「ダミッ! 危ない!! 」」

 かわす時間は十分にあったはずだ。あったはずなのに。ダミは──あえて"それ"を食らった。
 僕が"それ"を認識出来たのはダミの胸を"それ"が刺さった時出会った。シャーペン程細い針。けれど、これは見ただけで分かる。ポケモンが使う毒である。しかも猛毒。

「ダミっ?! 何を……何をしてるの?! 」

 レイは半泣きになりながら針を抜き取り、傷口に口を当てる。僕はそれを見ただけでドキッとしたが、そんな場合ではない。レイは傷口から口で毒を抜き取り、ペッと地面にその毒を吐いていた。アーボはその毒を出した死にかけの正規品を再起不能になるまでぐちゃぐちゃにしていた。

「僕はさ……納得行かなかったんだよ。 」

 ダミの胸がどんどん緑色になっていく。これは腐蝕の毒だ。毒が触れた部分からどんどん肉が腐り、死ぬ。

「これは……フジだけでも……外の世界に脱走させる計画だろう?それに……納得行かなかった。レイ。もういいよ。手遅れだ。」

 ダミは顎まで腐蝕が進んでいる。レイはそれでも諦めたくなかったようだが、ダミの言う通り、手遅れだったため、諦めてしまった。

「まってよ……僕だけでも外の世界にって……どういうこと?」

 僕は震えた声で言った。予想はある程度つく。というか分かっていた。けれど考えたくなかった。思考を放棄していた。

「レイは……フジのことが好きなんだよ。」

 ダミが心底悔しそうに僕のことを見る。僕は衝撃の事実に動揺を隠せなくレイの事を見る。しかし、レイはそれ所では内容で顔をくしゃくしゃにしてダミのことを見ていた。

「なんで……フジだけって……思ったね。嫉妬でこの身が……燃え尽きそうになったよ。だから。僕が……ここで負傷して……足でまといになって……レイだけ脱走させる予定だったんだけど。
 どうやら失敗してしまったようだ。」

「……その気持ちは分かるけどっ! 皆納得してたじゃない! レイの意向ならこの身を捧げるって! 」

 スイがダミの肩を揺さぶろうとする。しかし、肩も腐敗が進んでおり、スイが掴んだ瞬間ボロボロと崩れ落ちてしまった。

「そん……な」

「やめてくれよスイ。痛いじゃないか。」

 ダミは涙を流しながらいつものようにハハハと笑っている。笑い事ではない……

「ごめんね。レイ。足でまといになるつもりだったのに、これじゃあ足でまとい所か計画が台無しだよ。」

 そういうとダミは腐敗が進んでいない方の片腕で鋭く磨いた岩を持ち、それを──


 自分の腹に刺した


 鮮血が飛び散り節々に『ガタッガキッ』と石とダミの骨がぶつかる音がする。

「あ"あ"!う"ぁぉっ!」

 ダミは叫びながらもそれでも手をとめない。腹を切り裂き、骨をぐちゃぐちゃにして、一生懸命『何か』を探しているようであった。腸の破片が飛び散り、胃が床にゴロンと落ちて……
 もう見ていられなかった。今までポケモンの急所を着いて一撃で殺していたため、こんな生々しい光景など見たこともなかった上、人間相手だと余計見たくなかった。

「あったよ……」

 そういうとダミは上半身を起こしていた状態をゴロンと仰向けに寝そべり、コロッと石ナイフが転げ落ちる。僕はチラッとダミを見る。そこには骨も内蔵もぐちゃぐちゃのなか、"何かの部位"だけが綺麗に残っていた。

「ごめんね……レイを……生かしたかったんだ。けど……それっも……もう……無理……らしい。フジ生きろ。」

『フジ生きろ』

 今でもその言葉が頭の中で木霊している。くっついてくっついて離れてなんかくれなくて。何回死にたいと思っても、諦めたいと思っていても諦めさせてくれなくて、終わらせてくれなくて。

「これは……肝臓……だ……」

 その瞬間、腐敗が進み胸部分からダミが2つに分かれた。『肝臓だ』僕は当時意味が分からなかった。けど後々分かることになった。

「……ダミ……何で……」

 レイはもう表情なんてない。ただ無でダミのことを見ていた。ダミはハハッと笑うと垂直に目線を整えた。

「大好きだよ。レイ。」

 その言葉が─ダミの最期の言葉だった。

Re: ≪ポケモン二次創作≫ 最期の足掻き ( No.58 )
日時: 2022/06/21 21:13
名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: 1CRawldg)

レイは両目から塩水を零しながら、顔をぐしゃぐしゃにして、ダミの肝臓が腐敗する前に、持っていた長タオルでダミの肝臓を抜き取った。そして長タオルを袋の代わりにして、持った。
 ダミ"だったもの"はもうただの緑色した人型になっていた。いや、もう人型すら保っていられなかった。血も内蔵も全て乾いた緑色に成り果て、灰のように散り散りになっていた。

「ダ……ミ……ダミっ! 」

 レイはそこで跪きダミの血で汚れた両手を見ながらボロボロと大粒の涙を流していた。アーボは平然とした顔をしているが、スイは恐怖に近い感情で涙を流していた。

「ダミ……ごめん……ごめんなさい……ごめん……なさい……」

 レイはただそれだけ言って嘆いていた。レイにここまで感情込めて謝ってくれるのなら、レイの為に犠牲になるのも良いのかも知れない。そんな場違いなことを当時の僕は考えていて、ダミと同じように、レイだけしか見えなくなってたんだ。

「レイ。嘆いてる暇はない。正規品の援軍が来たら流石の俺でも耐えられないよ。」

 アーボが冷たく言い放つ。レイが泣いてるのにそんなこと言わなくても良いじゃないか。と僕はアーボを睨みつけたが、それ以上にアーボの目が冷たかったため、僕はビビって目を逸らしてしまった。

「そう……だよね。」

 レイはそういうとダミの肝臓が入ったタオルを持ち、歩を進めた。そこではもうレイのカラフルでキラキラしていた瞳はどす黒く濁って、僕のことなんて見えてなかった。

 細長い迷路をレイは迷いもなく淡々と進んでいく。どんどん上へ上がってる気がする。それは間違いではなく、僕にかかっていた圧に近い何かが軽くなっていく気がした。

 そして、また広い空間へ出た。そこにはダミが死んだ空間にいた正規品の数よりも多い数の正規品が立ちはだかっていた。

「……ここが最後の難関だ」

 そういうとアーボは手をボキボキと鳴らし、正規品と戦い始めた。スイも、レイも。どうやら僕を守る隙が無いほど今回の正規品は強いようだ。僕も参戦して一体づつ仕留めていく。
 けど、強い。一撃一撃が重く、普通のポケモンとは全く違う。その正規品は何も喋らず。機械的に何回も僕の弱い部分を突いてくる。必死でかわしてかわして、ようやく一撃を入れられたと思ったら正規品はビクともしない。
 僕じゃ相手にならないのだ。
 すると他の正規品を始末し終えたスイが僕の援助に入る。いや、スイが殆ど倒しているため僕が補助になってしまっている。
 かなりの時間が経った。ダミの時の3倍の時間がかかったが、何とか全員倒せた。

「もう……大丈夫よね。行きましょう」

 スイがそう言った刹那。それは本当に見えない程、気配を感じられないほど自然で早い動きだった。

「がはっ……!」

 アーボの片腕が落とされた。誰に? 何で? 正規品は全て倒したはずだろう。じゃあ誰に?

「緊急の施設依頼が来たと思ったら。ガキが脱走してるだけかよ。」

 僕たちがこの部屋に入った通路からその声は聞こえた。気配も何も感じない。かなりの手練である。その人物は赤茶色のコートフードを被っており、灰色の目に灰色の髪をしていた。

「デット……グレイ! 」

 レイが絶望したようにその人物─デットを見る。傍らには目つきが悪い、施設では見たことも無い程の凶悪そうな、そして強いリザードンが居た。そのリザードンがアーボの片腕を落としたのだろう。誰も気配を察知できなかった上、施設でNo.2に強いアーボの腕を難なく切れた相手だ。弱いわけが無い。今の正規品と戦ったばかりで満身創痍の僕らは敵いっこない。レイもそう悟っていた。ならばどうするか。『アレ』を使うしかないだろう。僕はポケットに入っていた赤い錠剤を手に取ろうとするが……レイに止められる。
 その代わりアーボが赤い錠剤を飲み込む。
 僕達キメラのポケモンの能力を引き出す為の薬である。するとアーボは元々黒かった白目をもっと黒くし、黄色の光がガンガンに光、体も大きくなり肌が紺色になる。アーボは、ガブリアスのキメラである。
 そしてアーボはデットの目の前に地面から鋭い大きな三角柱の岩の柱─ストーンエッジを出現させ、デットとリザードンがこちらへ攻撃できないようにする。

「……ふぅ。ここは俺が足止めするよ……」

 アーボはヘナヘナっと座ると痛そうに俯く。僕も見ただけで腕が痛くなるぐらいその様子はグロかった。

「まって……そしたら、アーボ……は? 」

 レイが掠れた声をしながらアーボに言う。アーボはいつも微笑んでるポーカーフェイスを崩し、レイの頬に手を当てる。

「大きくなったな。チャーフル。」

 チャーフル─それはレイ、2代目レイの本名だったようで後々知ることになった。レイは瞳を凹ませ鼻水をたらし、ぐちゃぐちゃの顔でアーボを見た。

「い"っや"……皆で……なるべく皆で外へ行くって……! 」

 レイががなり声でそう叫ぶとアーボは額に巻いていた長タオルを解き、片腕でレイの頭に付けた。片腕がないためきちんと結べていなかったが、当時のアーボは満足そうであった。

「なんでこんな聖人に育っちゃったかなぁ」

 アーボは笑いながらレイを片腕で抱き寄せる。レイは『あ"あ"ぁ"』と声を抑えながらただ泣くことしか出来ていなかった。僕とスイはレイのような聖人でない。レイ以外はどうでもよかったため、寂しさはあったがレイ程泣かなかった。

「リザードン!ウィングブレード!」

 するとアーボのストーンエッジがデットのリザードンによって砕かれる。

「……レイ! こんな所で会えるとはなぁ! ぶっ殺してやらぁぁっ! 」

 レイ─それは2代目レイであるチャーフルに話しているようには見えなかった。アーボに話しかけていた。これも後々知ったことだが、アーボは1代目レイ─一回目の脱走を成功させた1人であった。当時はピラミッドだったため、怨みを買っていても不思議ではなかった。

「アーボッ……アーボォッ!」

「いいから! いけ! チャーフル! 」

 アーボが響くような声で言った。レイは唇を噛むと先の通路へと走っていった。僕達もレイに続き全力疾走で走った。
 その後、俺が拷問を受けた時はドクしか居なかったため、きっとアーボは死んだのだろう。

 そして、最後の砦に、僕たちはついた。そこにはまた底が見えない穴が空いていた。しかし、匂いが激しかった。アンモニアのような刺激臭である。

「この穴に入れば外に出れる……けど、穴の底には強力な酸が入ってるの。」

 レイがそう言いながらダミの肝臓を取り出し、それに口を付けた。そして、それを。穴の中に投げ捨てた。『ジュワッ』という音がここからでも聞こえ、ダミの肝臓はもう溶けて無くなったのだと分かった。

「その酸をダミの開発した薬でゼリー状にして、通れるようにするのが、私達最後の作戦。ダミも薬を服用して穴の仲に入る予定だったんだけどあのザマだからね。薬の成分が1番濃縮されてる肝臓を取ったのよ。」

 スイがそういうと穴の縁に立った。そして、ポケットから沢山の錠剤を穴に投げ入れた。

「薬? ってそれのこと? 」

「そう。だけどこれだけじゃ足りない。」

 レイもポケットから錠剤を穴の中に投げ入れていく。『ジュワジュワ』と音が聞こえるが、ゼリー状になんてなってないのが分かる。

「じゃあ、どうすれば……」

「薬は、私たち。スイと私よ。ずっと前から薬を服薬して、私達が酸に溶けるとゼリー状になる作せん"っ!」

 レイが淡々と説明していると唐突にレイが何かに刺された。僕はショックが大きすぎて俯いていたが前を見ると、正規品が黄緑色の刃でレイを背中から刺し、貫通させていた。スイは素早く反応してその正規品の頭を足でかっ飛ばす。

「アサシンの正規品……油断してた……」

 レイは腹から血を流しながら、その血を惜しむことなく穴の中に入れていく。きっと血にも薬の効果があるのだろう。そして、いつもならレイはすぐ傷が治る。しかし、今回は治らなかった。

「再生を鈍らせる効果があったのね……でも、やることは変わらないわ。」

 スイがそういうと穴の縁に立つ。レイもだ。

「フジ。私達が薬になって穴の中の酸を無効化させる。だから、私達が入った30秒後に穴へ入って。そしたら外へでれる。」

 レイは清々しい笑顔を浮かべた。なんで、自分の死に際にそんな笑顔を浮かべることができるの?僕は不思議で仕方なかった。そして、─死んで欲しくなかった─

「いや……いやだよ! レイが居ない世界なんていらない! 僕も……僕も一緒にさせてよ……! 」
 
 いつもそうだ。僕は仲間はずれだった。僕以外柱になってて、僕以外は皆ランキングにのってて、僕以外皆レイのように周りの人を救った。僕は無能で何も出来ないから、仲間はずれであったのだ。
 
「……フジはさ。特別なの」

 レイが口を開き出した。僕が……特別? そう心の中でオウム返しする程度しか僕の思考力は残ってなかった。

「いつも朗らかで、私に元気をくれて、慕ってくれて。フジは私の中の特別だったの。恋……なのかな。分からないけど。」

 恋? なにそれ、何を言ってるの? レイ
 当時はそんなことを思っていた。でも、仮にレイが僕に恋をしてくれていたのなら、両思いであった。けれど、それを喜べる精神状態じゃなかった。
 横でスイが不機嫌そうに僕のことを見る。

「私もレイの事が大好きだったのに。フジだけ特別なんて許さないから……! でも、レイがフジだけでも幸せにしたいって言うのよ。」

 スイが涙を流しながら言う。失恋と自分の死。それが一緒に押し寄せて来ていたスイは正気なんて保っていなかったと思う。

「……僕もっ、僕もレイが好き! 大好き! だから……死なないで……」

「フジ! こんなに愛されてるんだから幸せになんなさいよっ! 」

 スイはいつもの口調で僕に刺々しい言葉を投げるが涙で顔がぐちゃぐちゃである。レイはダミの肝臓が入っていたタオルを僕の額に結ぶ。

「今遺せるのはこれだけしかないや。けど、私も使ったものだから、私とダミと思って、使って。」

 僕はただレイを見上げて貰った額のタオルに手を当てる。

『─大好きだったよ。フジ─』

 その言葉を最期に。レイとスイは、穴の中へ







 
 堕 ち て っ た







 僕はその後穴の中に入れなかった。勇気が出なかった。放心状態で、ずっと現実逃避をしていた。すると職員がやってきて僕を拘束、拷問部屋へと案内された。
 そこにはドクもいて、僕らは腕を天井にしばられ宙吊りにされた。そしてデットがやってくる。
 そこからは聞くだけでも恐ろしい拷問が待ち構えていた。リザードンに火で炙られながら、職員のポケモンに内蔵をぐちゃぐちゃにされ、キメラの正規品に目玉をくり抜かれて……それでも俺は再生したためもっとキツい拷問を受けられた。ドクは戦闘能力も知能も高いため俺よりは軽い拷問で受けたが、それでも、生と死の間際をさ迷うような拷問をを受けた。その間に、アーボ、ダミ、レイ、スイの死を知らされた。
 そして、施設へ戻される。もう、脱走なんてしない。したくない。誰も失いたくない。そして、レイ達を裏切ってしまった僕が許せなかった。
 もう何に向かって生きるのかも分からない。死ねない身体故に日々ポケモンを狩るしかない。
 ポケモンを狩り食べて寝て、ポケモン狩り……それを続ける内に自分自身が嫌いになった。殺したいと思った。だから、僕は─いや、俺はフジという名を捨て、レイの名を勝手に受け継ぎ、レイのようになりたい一心でポケモンを狩り続けた。10年ぐらいだろうか。それが続き、今や1柱と周りからもてはやされ、『3代目レイ』と呼ばれるようになった。ドクもリーダーとなり、人が変わった。その影響を受け、ユウも、変わってしまった。

 僕の中 まだ響いてるんだ

 ダミの声が。『フジ生きろ。』
 アーボの声が。『ここは俺が足止めするよ。』
 スイの声が。『幸せになんなさいよっ! 』
 レイの声が。『─大好きだったよ。フジ─』






『貴方の名前はフジ!不死って意味でフジ!幸せになるんだよ!フジっ!』






 そんな、レイの明るくキラキラした声が。




       終

Re: ≪ポケモン二次創作≫ 最期の足掻き ( No.59 )
日時: 2022/06/22 16:43
名前: 謎の女剣士 ◆7W9NT64xD6 (ID: b.1Ikr33)

女剣士です。

……切ないです、うわぁ〜ん!
仲間たちを失った痛み、凄く分かります。
まるで、今回のメインになった子と私の知ってるダイの大冒険の主役・ダイと似ている部分がありますね。

彼もね、アニダイ編で父・バランを失った時のシーンでね…今みたいに憂鬱になっていました。(※アニダイの第60話を参照すると分かりますよ)
だからかも知れないかな、共通点があるのは。
しかし、これからどんな風に立ち上がるのか気になりますね。
これからの展開が、気になります。

それでは、また来ます。

Re: ≪ポケモン二次創作≫ 最期の足掻き ( No.60 )
日時: 2022/06/23 17:57
名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: xXhZ29pq)

>>59

もう最初は2代目達について描こうと思ったんですけど辞めました()
アニダイは見たことないですね…多分共通点があるのはアニダイ関係ないです。
立ち上がる?面白いことを言いますね女剣士さんは。



ここまで来たら堕ちる他無いでしょう……

Re: ≪ポケモン二次創作≫ 最期の足掻き ( No.61 )
日時: 2022/06/30 16:07
名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: XsTmunS8)

ナナー嵐の前の静けさー

「だーかーらぁ!なんでレイはポケモンを一撃で殺すんだ!」

「逆に何故双子は苦しめて殺すんだい?」

 タツナ、ミソウ、レイは同室でいつものように喧嘩をしていた。喧嘩といっても可愛いものでなく、ガチの戦闘が始まったのだ。もう1人、同室のシュウはまたアワアワしながらその様子を見ていた。そうしているうちにレイVS双子がドンパチし始めた。最近双子がレイに対して攻撃的だけど、何かあったのだろうか。うーん、確実に脱走計画のせいだよね。ごめんねレイ。
 そんな呑気な事を思いながら僕はリーダーを呼ぶために図書室へ走った。正直今の僕だったら2人の喧嘩は止められると思う。それぐらいは強くなった。
 けれど今力をレイに見せつけたら計画に支障が出てしまう。仕方ないからいつもリーダーを呼んでるのだ。

「リーダァァァーーー!! またレイとミソウとタツナがぁぁー!!! 」

 僕は叫んで図書室の中に入る。するとリーダーは薄黄色のコートーフードを翻して黒電話で何か電話していた。僕は咄嗟に口を紡ぐ。

「え、あぁ、何でもないっす。そうっすか。これからは施設に帰れないんっすね。了解っす。」

 そんな会話をした後リーダーはガチャンと電話を切った。僕は息を止めてその様子を見ていた。玄人相手ならば呼吸だけでも相手がいることが分かるからだ。といっても、最初に叫んでしまったため意味は無いかもしれない。

「すまん。仕事の話をしていた。また喧嘩か? 」

「そうそう、助けてリーダー! 」

 僕は小説に出てくる爽やかな主人公のような素振りをしてリーダーを見つめた。眉を八の字にして、うるうるとした目で見つめる。こうすれば誰でも落ちる。それは表世界でもそうだった。僕の顔の良さが幸いするのだ。

「はぁ。シュウ、そろそろお前もこちら側だな。」

 リーダーが意味の分からない事を言う。僕はカクンと首を傾けるとリーダーは難しそうな顔をする。

「もう、お前の瞳は淀みきっている。俺らと同じ"裏側"に、もう来てるんだよ」

 僕はそんなことを言われ『ライトノベルの好青年主人公』の顔を辞めた。もう何も顔に出さない。強いて言うなら僕の険悪な何かを抑えることを辞めた。

「気づいてたんだな。」

「口調まで変わるのか。お前の双子…2代目レイが似たような事になってたからな。」

 そういえばリーダーは僕の片割れと深い仲だったね。レイとユウもダミも僕のこの演技を見抜いてるかもしれない。いや、それは無いか。ドクとダミはともかく、レイとユウは僕にゾッコンだからね。気づくはずもない。
 何故なら、
 "チャーフルの演技にも気づかなかったのだから"
 まあ、チャーフルが死んだ今となれば関係ないけど。

「で、リーダー。早くしてくれないと困るんだけど」

「口調までそっくりなのかお前ら双子は」

「何の話?」

「いや、なんでもない。すまないが俺は今から仕事なんだ。」

 リーダーは僕から目を背けながらそう言った。チャーフルも僕のようになっていたのだろうか。流石僕ら双子である。チャーフルも色んな人を魅了していたんだろうな。誇らしい。

「仕事って、ピラミッドの? 」

「そうだ。今大きな仕事が来ていてな……正直、施設にいられるのは今日で最後だ。」

 リーダーが寂しそうに古びたチャーフルの日記を大切そうに持っている。今日で最後って、どういうこと? 何故みんなにその事を伝えないの? リーダーはどうなるの?
 急に衝撃の事実を言われ僕は施設に来た初日のように疑問で膨れ上がった。

「色々聞きたいことがあるんだけど……」

「そうだろうな。最期の仕事だ。遅刻しても文句は言われないだろう。ゆっくり図書室で話すか。」

 リーダーは何か取り憑かれたものが落ちたような顔をして図書室の椅子に座った。僕もリーダーが真正面に居るように座った。リーダーは『はぁぁぁ』と大きなため息を着いてダラーッとした座り方をした。

「もう僕も疲れたよ。威厳あるリーダーなんて、チャーフルみたいにしたんだけどさぁ。無理だよ……」

 するとリーダーとは思えない口調で言い始めた。初めてこの口調……素のリーダーと対面するけど、ユウやダミから話は聞いていたため特に僕は焦る様子は見せなかった。

「俺が素を見せるなら、自分も素を見せようってこと? 相変わらず情に弱いねリーダーは」

 俺ことソレイユ・ジーニアは頬ずえをついてリーダーを見つめる。リーダーは否定が出来ないのか苦い顔をした。

「それで、聞きたいんだけど。今日で最後ってどういうこと? 」

「俺がピラミッドの一兵卒なのは知ってるな」

 僕はその言葉で頬ずえから崩れ落ちそうになった。ピラミッドなのは知っていたが一兵卒なのは聞いてないし知らないし思えない。施設で1番強いリーダーがピラミッドの下っぱなんて考えられないのだ。『世界は広い 』俺は今そう知らしめられた。
 でもそれを言うと話がそれそうなため取り敢えず頷く。

「それで表世界の組織から依頼を申し込まれた。"イッシュ支配"について。そして、その計画もそろそろ大詰めでそこに僕は行かないと行けないん……だけど。これは確実に負け戦だ。」

 またしても俺は目を見開くことになる。情報量が多すぎて追いつけないって。
 まずイッシュ支配って、そんな壮大なことが行われていたことに驚きを隠せない。イッシュ地方─俺が牧場で暮らしていた所の西の西にある地方である。そこの支配をするだなんて……どれほど壮大な組織なのだろうか。
 裏世界だから、表世界だからという理由で組織の大きさは決まらない。図書室の歴史本を読み感じたことだ。その組織がイッシュを支配したのなら、裏世界にも魔の手を伸ばすかもしれない。
 ただ、引っかかるのは"負け戦"という所だ。リーダーがいるというのに負け戦なのは納得が行かない。

「負け戦って? 」

「まあ、表世界の敵が強くてな。力では敵うが、権力と条件が厳しすぎてぶっちゃけ無理なんだ。」

「それと、リーダーが施設に来ることが無い事はなんの関係があるの。」

 俺はかなり真剣な顔でリーダーの事を見る。リーダーは少し寂しそうな顔を見せる。本当にこの人はリーダーなのかと疑いたくなる。情に弱すぎるし、威厳もクソもない。そりゃ演技もしなければやってられないなこりゃ。

「今回の仕事は地方支配という大きな仕事だ。なのにそれをファドゥーである僕に依頼。頭沸いてんのかと思ったよ。まあ、それは置いといて。これは僕にとってピラミッドの昇格に関わる……いや、それ以上の依頼だ。それを失敗したら、分かる? 」

 俺は勘が悪い訳では無い。逆にビンビンに良い方である。勿論分かった。

「首チョンパ……だね。物理的に」

「That's Right……」

 リーダーは僕を指さして勢いよく言ったつもりなのだろうがしおらしすぎて何も言えない。というかこういう所ダミに似ているな。一応リーダーとダミは兄弟だもんね。ダミは死んでるけど。
 まあ、大体のことは分かった。リーダーは大きな仕事を任されるが失敗確定のため、自分が殺されるのも確定。
 というわけである。可哀想だが裏世界とはこういうものなのだなと割り切った。こんなことを割り切れるだなんて、たしかに俺は裏側に堕ちてるかもしれない。

「じゃあ次の質問。何でそれを俺達に伝えなかったのか。俺はともかく、レイやユウには伝えるべきだろ。」

「少しは僕の心配をしてよ……」

「俺が心配した所で変わらないだろ」

 俺があっけらかんと言い放つとリーダーはガックリと肩を落とす。一応俺はチャーフルの双子で顔が同一人物かと思うほどそっくりである。そしてリーダーはチャーフルが好きだった。
 好きな人とそっくりな人に心配されなかったらそりゃあガックリするだろう。

「レイやユウに何故言わないのか……だっけ。2人には心配して欲しくないんだよ。裏世界の繋がりはいつかはあっさりと切られるもの。僕はそれに従ってるだけだよ。」

 リーダーは寂しそうにそう言った。けど、俺はしっかりとリーダーの目を見ていた。それが違うことぐらい、分かった。いや、半分は本当何だろうけど……

「レイ達にトラウマをもう植え付けたく無いとかは? 」

「……シュウに隠し事は出来ないな」

 リーダーがハハハと乾いた笑いをだす。ケラケラと笑うダミと比べたらリーダーは良い人だな。俺はこんな人には慣れそうにないよ。そう考えると聖人だったチャーフルと俺は正反対なのかもしれないな。
 レイ達は前に脱走未遂をして、大切な仲間を数人失った。特にチャーフルを失ったのはリーダー含め施設皆のトラウマだろう。リーダーが死んでもチャーフルほど皆にトラウマは植え付けられないと思うけど、リーダーを傷つけて他の質問を聞けなかったら不味いから言わないでおこう。

「じゃあ、これからリーダーはどうなるの? 」

「僕は死んでなんの記録にも残らないだろうね、強いて言うなら歴代リーダーとして、歴代ピラミッドの一兵卒として名は残りそう……かな。心残りはレイとユウを置いておくことかな」

「あー違う違う。リーダー……ドクの心情なんて興味無いから。施設のリーダー役はどうなるのかって話」

 またしても俺はリーダーを傷つけてしまった。もうリーダーは涙目になっているが質問は返してくれそうなので知ったこっちゃない。

「……リーダーはレイになるだろうな。柱も双子が成り上がりでなるかもしれない。そして、レイは結構強いから俺の代わりのピラミッドになりそうだな」

 俺はその言葉が聞き捨てならなかった。レイがリーダーになる? 冗談じゃない。ピラミッドは聞いた限り基本的に汚れ仕事を受け追う組織だ。そこにレイを入れるだなんて俺が許さない。余計計画を成功させなければならない。

「次は僕から質問だ。シュウ達は脱走計画を企ててるだろう? けど、普通の脱走じゃない……」

 その瞬間。俺の肝が冷えた。脱走計画がリーダーにバレていた。全て筒抜けという訳では無いのだろうが、『普通の脱走じゃない』と言われてる時点でかなりの情報を掴まれてる。流石元情報屋と言うべきか。
 しかし、考えろ、考えるんだソレイユ・ジーニア。それを、分かった上で俺に聞いている。ということはだ、俺たちを捕まえて拷問をするつもりはないという事だ。リーダーの情の弱さに救われたよ。

「俺の口からは何も言えない。」

「僕に弱みを握られているんだよ? 今拷問しても問題はない。」

「それは出来ないんじゃない? 情に弱いリーダーさん。」

「っ……この双子は……」

 リーダーは図星だったのか苦い顔をして俺の事を見る。この双子は、何だい? 何を言われようとも俺らにとっては褒め言葉だね。流石チャーフルだ。
 すると廊下から軽く、早い足音がする。これはリゼだ。

「リーダー! シュウ! 何してるんですか! 本当にレイとタツナとミソウが施設を壊しますよ! 」

 リゼは、はあはあと息を切らしながら俺らにそう言った。僕はいつもの『ライトノベルの好青年主人公』の顔を浮かべる。リーダーもいつもの圧を取り戻す。

「すまない。今行く。」

 そう言ってリーダーは全速力で走り出した。本当にリーダーは凄い。足音なんて全然聞こえないんだもの。僕達もリーダーに続こく。

「リゼ。さっきの話聞いてたでしょ」

「……まぁ」

 僕はニコニコしながらリゼに、言うとリゼは目を逸らす。ダミの部屋といい、今回のことと言い、本当に、リゼは運が悪いね。けど、僕の素を知られようとなんて事ない。計画に支障は出ないのだから。

ーーーーーーーーーーー
《ドク》

 恐ろしかった。本当に恐ろしかった。捧擲 寿という人物は、素を出したとしても心の内を全く開けず、情等虫けら程度に思っている様子で、溢れ出る圧も物凄かった。さっきは俺が居なくなったらレイがピラミッドになると言ったが、下手すればシュウがピラミッドになって、最悪裏の頂点に立つかもしれない。そうならない為の計画となると、ダミは本当に賢い。
 普通じゃない計画。それだけは何となく脱走計画者の行動を見ていたら分かるが、内容はまだ分からない。もし、俺達と似たような計画だったら……
 それが1番良いのかもしれない。まあ、脱走が始まった時には、俺はもう死んでそうだがな。

「お前ら! 仕事人同士の争いは辞めろと言っただろう! 」

 俺はそう言ってレイの襟を掴む。レイは俺を睨みつけながらじたばたするが途中で諦めてしおらしくなる。双子に関しては俺が来た瞬間から何も言わなくなった。
 今回も喧嘩を止められたが、今後の喧嘩は俺が居ないため他の人に任せるしかない。リョクとユウ辺りに頼むか。
 そう思いながら仕事へ向かおうとするが……

「リーダー」

 廊下でレイに呼び止められる。レイの顔を見るのもこれで最後か。せめてフジの頃の顔をまた見たかったが、無理なようだ。せめてレイには、幸せになって欲しいものだな。

「なんだ」

「……リーダー……」

 レイは要件を言わずにただ下斜めを見て唇を噛んでいる。俺はレイの勘の良さを舐めていたかもしれない。これから俺が居なくなることを察してしまったようだ。それでも、それでも。

「明日も、喧嘩したら容赦しないからな」

 俺はそう言った。レイはもう泣かない。レイは感情を表に出さない。そんな奴だっただろう。なんで、今更そんなへしゃがれた顔を俺に見せるんだ。
 俺は何も言わずにレイに背を向けて廊下を歩き始めた。

 まあ、例え負け戦でも。


 最期まで足掻いてやろうか。


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