二次創作小説(新・総合)

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≪ポケモン二次創作≫ 最期の足掻き
日時: 2022/09/25 20:51
名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: Btri0/Fl)

       
 ご注意
◯死ネタが含まれます。
◯グロ注意
◯これは二次創作です。本家とは一切関係ございません。
◯ポケバは、アニメ方式で表現させて頂きます。
◯誤字脱字、私の語彙力不足での分からない所は、紙ほかの裏の陰謀についてでも、ここのスレでも大丈夫です。





プロローグ

ここは地球。
この星に住む、不思議な不思議な生き物。
──ポケットモンスター 縮めてポケモン
彼らは 空に 海に 大地に…さまざまなところに分布している。

この物語は… この世界の… この星の"裏"で生き残る少年の物語である…






  ──覚悟はできてるんだよね?──






 【記憶】

イチ─仕事場─ >>1-11
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ニ─恋バナ─ >>12-13
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
サン─双子─ >>14-24
───────────────
ヨン─リゼ─ >>25-30
───────────────
ゴ─3柱─ >>33-44
───────────────
束の間の刻 >>45
───────────────
ロクーチャーフル・ジーニアの英雄譚ー 
>>48-58
────────────────
ナナー嵐の前の静けさー 
>>61-65
────────────────
ハチークズレハジメルー
>>66-
────────────────
番外編 腐れ縁のユウとレイ、リウとフジ
>>63
────────────────

   ・・・

『オリキャラ、お客様リスト』

暁の冬さんーリゼ >>20
女剣士さん
――――――――――――――――――

Re: ≪ポケモン二次創作≫ 最期の足掻き ( No.66 )
日時: 2022/08/09 19:39
名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: 8ZwPSH9J)

ハチークズレハジメルー

「さて、シュウ君。リョクを殺すと言っても相手は3柱だ。今の状態じゃ敵わないだろう」

 ダミが腕組みをして僕こと、シュウに向いて言う。そりゃあ僕でもリョクに敵わないことは分かっているが、何かダミに策があるのだろう。

「敵わないって、ならどうすんだ」

「シュウが死んだらお前の責任」

 双子がいつもより鋭い声でダミを非難する。しかし、ダミは表情1つ変えない。

「シュウは負けないし、死なない。仮に勝負に負けたとしても、シュウが一声レイを呼んだら来てくれるだろうし」

 レイの扱いがかなり雑になっている気がする。まあ、リーダー不在の今、レイが施設で1番強いから頼るならレイだろうけど……

「今のシュウなら勝てない……特訓でもするんですか?」

「リゼ君良い質問っ! 特訓もいいけど、残念ながらそんな時間は無い。」

「ならダミ。どうするつもりだい? シュウの相棒のモココに何かしら頼むと言うのかい?」

 ユウが何も思いつかないようで腕組みをしてダミをジトッと見る。

「あっ、もうデンリュウに進化してるよ」

「そうか……えっ、祝ったりしなかったのかい?」

 僕が言うと、ユウは少し驚いたように僕のことを見る。リゼも双子も忘れてたというような表情をする。

「そういえばデンリュウに進化したなら祝わないと行けないな」

「えっ、祝うって、タツナどういうこと?」

 僕が素直に聞く。以前モココに進化した時は忙しくて結局声もかけられてない。最近デンリュウは仕事の道具になってる気がする。

「相棒が最終進化を遂げた時、ここまで生きていけたって事で祝い事をするんだよ。1回だけ仕事中に仕事場にある食料を集めて騒ぐんだ。」

 ユウが言うと僕はデンリュウの事を思い浮かべた。基本この施設ではポケモンは相棒という立ち位置で、ペットという感じがしない。お互い利用し合ってる感じである。そして、仕事人の殆どはキメラの為、1部にポケモンと話せる人物も存在する。
 そのため、それぞれ相棒に悟られないように来ている。
 リゼのサーナイトは例外である。
 それでも、相棒を想った祝い事があるなんて意外だ。まあ、いつもの流れ的に2代目が作ったのだろう。さすがチャーフルである。
 確かに、前デンリュウと仕事をしていた時、デンリュウが寂しそうな目で僕を見ていた。

「そう……だね。別にそんなことはしなくていいかな」

 僕はあっけらかんと言い放った。ユウとダミは意外そうな顔をして、リゼは何も言わなかった。というかいつも無表情の為何考えてるか分からない。双子は凄く顔が歪んだ。

「相棒が進化したんだぞ。……祝わないのか?」

「うん。だってそこまでデンリュウの事想ってないし、それよりチャーフルとレイの方が大事だよ」

 ミソウが困惑した表情で僕の服の裾を掴む。その手を僕は包み込み笑顔で言った。ミソウは余計表情が歪んだ。

「おめでたい事だぞ? 祝った方がデンリュウも喜ぶだろ」

「デンリュウを喜ばせる労力を使うなら脱走に全振りするよ」

 タツナも少し困ったような表情をして僕に言うが、思ってることをそのまま僕は吐いた。双子は困惑してお互いの顔を見ていた。

「……初めの方はもっとデンリュウの事を想って無かったかい?」

「あはは。あんなん邪魔でしかないよ」

 ダミがこちらを伺うように言うが、僕はそれを笑って跳ね除けた。
 勿論、施設に来る前はメリープと楽しくしていたけど、それは表世界のポケモンバトルに使ってスムーズに生きていけるようにするためであって、施設に来て仕事をするようになったら要らない。
 確かに、最初の方はかなりメリープに助けられたが今となっては僕の方が強いため足でまといでしかない。

「……シュウって、表世界出身だよね」

「そうだよ? え、どうしたの?」

「適応力が高い……と言うべきなのか」

 ダミが僕に質問をしたため、僕はそのまま思ってることを吐いた。その後ボソッと考えたがら呟く。質問の意図が分からないが、まあ問題は無いだろう。

「……そうか。ダミ話の続きを頼む」

 ユウはさっきからの少し真剣な顔を崩し、いつもの不敵な笑みに戻った。ダミは口を1文字に結んだ後、話を続けた。双子は少し困惑しているが、知ったことではない。

「そう……だね。シュウがリョクを殺すのは不可能では無い。けれど、経験の差が多すぎるんだ。ならどうするか─」

 ダミがそこで少し黙る。僕達は1粒汗を流しながらダミを見つめる。ダミは気分がいいのか、腕組みをして少し足を開き腰を曲げ、カッコイイ格好をする。

「そう力で『ゴリ押し』だよ」

 呆れた。これだけ溜めといてそれかよ。
 おっと、ダメだ、今僕が癇癪を起こす訳には行かない。が、ジト目でダミの事を見ていた。

「ゴリ押しって……脳筋では無いのですから」

 リゼが僕たちが思ってることをそのまんま代弁してくれる。その通りである。まず3柱相手にゴリ押し出来るならば最初から困ってないのだ。

「ゴリ押しか……まあ1番現実的な方法ではあるのかな」

 ユウは少し考える素振りをしながら言った。
 正気か?僕は自分の目を疑った。

「そんな顔をしないでくれ。まず、戦いで重要なのは思考力と力と防御だ。思考力は経験の差から縮められないと思っていいだろう。防御もあちらの方が硬い。となると、力でゴリ押すしかないだろう。力さえ相手より高ければ思考力も防御もねじ伏せて……まあ倒せる。
 けれど、本来ならば長い年月を掛けて手に入れる代物だ。現実的ではあるが、それと同時に非現実的だ」

 ユウが冷静に説明する。僕が勝つための筋道はゴリ押し……しかし、それを実現するのは非現実的。
 ならどうしろと言うのだ?

「という訳で、シュウを強化しようと思うんだよね」

 ダミが隣の様々な薬や実験薬が置いてある部屋に行く。僕達は数十秒黙っていると、ダミが何かを取ってくる。小さい細長い、ライターと同じぐらいの大きさの木箱だ。

「ロリース……? シュウにロリースをさせるのか?!」

 ユウが焦り混じりに言う。ダミはニコニコしながら頷く。
 ロリース、それは素となったポケモンの力を引き出す。所謂キメラ専用ドーピング剤みたいなものである。力が倍増し、ポケモンの技まで使えるようになる。その代わり寿命が縮んでしまう物だ。
 この際寿命なんてどうでもいいが、ロリースをするのは少し不安である。

「ロリースをさせる……というと少し違うかもしれないね」

「どっ、どういうことだ?」

 タツナがダミに聞く。するとダミは所々にヒビが入って、今にも崩壊寸前ですと言わんばかりのボロボロの黒板を持ってくる。

「まず、2代目のロリースを見たことはあるかい? ユウ君!」

「えっ?! み、見たことはないけど……」

「ああ。僕もだ。恐らく外の仕事でもロリースは使ってないだろう。それは何故か?! はいリゼ君!」

「えっ、え?! それは……えっと……体の負担が通常より大きいとか?」

「ブブー! 残念! 正解はロリースする必要がないからだよ」

 その言葉に僕達は疑問しか浮かばなかった。ロリースする必要がない? ならその薬は? なぜする必要がないのか?
 答えを探るより、疑問が出てくる量の方が多かった。

「まず、大前提として、君達の場合のキメラは遺伝子を組み替えられたポケモンと人間の素を組み合わせて作られている。そのため生まれながらにポケモンの力を持ち合わせているが、それを発揮できないだけ。
 ドーピング剤は、君達の遺伝子一つ一つの底にあるポケモンの遺伝子を無理やり引っ張り出している。要するに一時的に遺伝子の形を変えているんだ」

 ダミがボロボロの黒板に遺伝子の形や図を書いていく。字は汚いが図が綺麗である。それにしても、何故ここに住んでいるダミがそんなことを知っているのだろうか。この下にある研究所の資料を見たのだろうか。

「けれど、シュウと2代目は違う。キメラとキメラの子供だ。2人は自然界にとっても、僕ら人間にとってもかなりイレギュラーな存在だ」

 ダミがチョークを僕に向けてそう言った。自然界にとって、イレギュラーな存在は分かる。キメラも人工的に生まれたため自然界のイレギュラー的存在だろう。しかし、人工的にイレギュラーとは、どういうことだ?

「人間にとってもイレギュラーなのですか? 人間の手によって生まれたのでしょう?」

 リゼが首を傾げながらダミに言う。

「君達。施設で奴隷同士の子を見たことはあるかい?」

 そう言われた時、僕は首を横に振った。僕は入ってきて日が浅いから見たことがないのはたまたま見かけてないだけかもしれない。
 しかし、ユウもリゼも双子も首を横にふった。

「そうだろう。それは何故か。理由は単純明快。ただキメラは子を作れないだけだ」

『ッ?!』

 一同が声にならない声を出す。子を作れないなら奴隷同士の子が居ないのは分かるが、なら僕とチャーフルはどうやって生まれてきたのだ?
 父も母もポケモンのキメラであるし、さっきダミも僕とチャーフルはキメラ同士の子であると明言していた。

「子というのは、親の遺伝子が同じか、限りなく近くないと出来ない。1%でも遺伝子が違うと、子なんて出来ないんだ。君たちキメラは一人一人産まれる前に遺伝子が、組み替えられているが皆一緒に組み替えられてるわけじゃない。遺伝子にも個人差がある。
 だから通常は出来るはずが無いんだ」

「でも、僕はここにいるし、母さんも父さんもキメラだよね?」

「それはシュウの母。No.9802が特別なんだ。君の母はなんのキメラだい?」

「えっと、ミュウツー……」

「ミュウツーとは、なんのポケモンだい?」

「えっと、伝説の……言い伝えられてるポケモン?」

 僕はダミが何を言いたいのかさっぱり分からないため回答を迷走しながら答える。しかし、ダミの表情は変わらないため僕の回答は外れていることが分かる。

「まあ、それも間違いではないんだけど。
 ミュウツーはミュウと言うポケモンから作られたミュウのクローンだ。まあ人工ポケモンだよ」

 ダミがミュウと思われしき小さな可愛らしいポケモンを描き、矢印で下にミュウツーを描いた。
 ってことはだ?ミュウというポケモンから作られたクローンであるミュウツーを使ってキメラである母を作り、母と父が僕達を産んだってこと?  えぇ?!
 僕達の起源がかなり繋がっている事に驚いてしまった。

「そして、ミュウは研究者に取っては抜いてはならない特色がある。それは『全てのポケモンの遺伝子を持っている』と言われている事だよ」

 全ての……遺伝子。
 あぁ。そういうことか。ようやくダミの言いたいことが分かった。

「だからこそ、ミュウは様々なポケモンに化けたり、全ての技を覚えられる。そのクローンであるミュウツーを素に産まれたのがNo.9802だ。ミュウからの過程で変化はあるかもしれないが、No.9802は全ての生物の遺伝子を持っていただろう。それでシュウ達を産めた……というのが仮説だ。しかし、キメラは子を産めないのが常識だから、誰もそんなことは予測してなかった。あと、純粋にNo.556……アーボとの遺伝子が近かったと言うのもあるかもしれないけどね。
 だからこそ、シュウ達は予測されなかった子。イレギュラー的存在なんだ」

 僕はそう言われてもイマイチ ピンと来ない。チャーフルが特別な存在なのは分かる。特別だ。チャーフルができるこは全てできる僕も特別なのは分かるがチャーフルほどではない。しかし、それは実力的な面である。神秘的な面で特別と言われてもピンと来ない。

「イレギュラー的存在だからこそ、研究者も僕も君達の生態を把握できてないし、研究者はシュウの生態を把握する事より大事なことがある。
 だから、僕なりに2代目と実験をしていたんだ。ロリース剤はそれの副産物だよ。キメラの子はポケモンの遺伝子が濃い。だからこそ、ロリース剤無しでもロリースができるんだ。」

「えっ?!」

「あ、ごめんね。天才の僕でも何故ポケモンの遺伝子が濃いかは時間がなくて研究しきれなくって……」

「そういうことで驚いたんじゃないよ?!」

 ダミは天才と自負している自分の顔に手を当て困ったような顔をするが、僕はそれを一刀両断にした。

「ロリースが、ノーリスクってことは寿命が縮まらないってことか?」

「ロリース剤も要らないってことは好きな時に……ロリースできるのか?!」

 双子が驚きながらダミに詰め寄る。ダミは苦笑いしながら双子を落ち着かせる。

「サンプルが少ないから2代目がそうだっただけで、シュウも同じことができるかは分からないけど。キメラの子は腕を動かす程度の感覚でロリースができるんだよ。しかも任意で」

「でも、僕そんなこと出来たことないよ?」

「シュウ。自分の足の親指と中指をくっつけてみて」

「えっえ?」

「いいから」

 ダミがそういうと僕は一生懸命足の指に力を入れた。付けそうで付けられない。感覚がどんどん複雑になっていき何をやってるのか分からなくなってきた。

「感覚が分からないだろう?」

「当たり前じゃないか……」

 ダミはニコニコ笑いながらいうと、僕は負けた気がしながらも出来ないと認めた。

「まあ、出来ないのは感覚が掴めないからだ。腕を動かす時も、歩くもきも『〇〇をする』なんていちいち思わないで無意識でやってるだろう? それと同じでロリースも、感覚を掴めれば体を動かす感覚でロリースができるんだ。そして、感覚を掴むために、このロリース剤を使う。
 無理やりポケモンの遺伝子を引っ張りださなくても、そこら辺に散らかっている遺伝子を集めるだけだから体の負担もないからノーリスクだよ」

 そう言われダミにロリース剤を渡された。僕は木箱を振るとカラッコロと乾いた高い音がする。そんなに入ってる訳では無いようだ。

「今夜はずっと僕の部屋で特訓をしてもらうよシュウ君」

 ダミはとても楽しそうな笑顔で僕に言った。

「……シュウとレイと俺らって部屋同じだけど。どうやってレイを誤魔化すんだ?」

 タツナの言葉に、僕もダミも固まる。部屋が違えば大丈夫だろうが、同じのため僕がいなかったらレイは僕を探すだろう。

「なら、私の部屋に居ることにしよう。私とシュウだけじゃ色んな意味でレイが心配するだろうから、リゼも来るといい」

「それもっと心配されません?」

 ユウが自分の胸を叩き、リゼに言うとリゼは不安がっている。そうなると僕がユウとリゼとやましいことをしてるように見えてしまうんだけど……
 せめて男にして欲しいが僕の知り合いに男はタツナとリーダーとレイしか居ない。
 仕方ないからそういうことにしておこう……

「うん。お願い」

 僕がそういうとユウとリゼは黙って頷いた。そして、今日の話し合いは終わり、ユウとリゼとタツナとミソウは部屋に戻ってしまった。

 ─そして、僕の地獄の1晩が幕を開けた。

Re: ≪ポケモン二次創作≫ 最期の足掻き ( No.67 )
日時: 2022/08/24 21:35
名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: 10J78vWC)

僕とダミ以外が外に出ると、僕は改めてダミの方を見た。ダミは腕を組んで顔のニヤニヤを必死で抑えている。
 その様子が不気味すぎて鳥肌が立ってしまった。

「じゃあ、こっち来て」

 ダミが奥の薬や道具が置いてある部屋に入って手招きをする。ずっとダミに入らないように言われていた部屋のため少し躊躇いながら入る。
 
 中はツンとした刺激臭がして、窓際にはフラフコにカラフルな液体が入っている。壁際には小さい引き出しが沢山着いている巨大な棚に、所々何かの草や木の実がはみ出している。
 そこまでは良かった。危険だけれど、まさに実験室のようでワクワクした。
 問題はその奥にある細長い、リーダーぐらいの身長の流さの台と、拘束器具がついている鉄の椅子である。血がべっとりと着いてたり、床には人体の1部が落ちている。
 あからさまに危険な実験をしましたと分かる様子だ。

「はい、ここ座って〜」

 ダミが人体の欠片を広いながら、血がびっとりとついた鉄の椅子に誘導する。
 僕は座れるわけがなくただその様子を見て棒立ちをしていた。

「座るわけないじゃないか……」

「なんでだい?」

「あからさまに危険な実験をしました見たいな椅子に座れるわけないじゃないかっ?!」

 少しづつ、この特訓が危険なんじゃ無いかと思えてきた。最悪死にそうになったら逃げようかな……

「大丈夫大丈夫死にはしないから」

「怪我とかしない?」

 僕は疑いの目をダミに向ける。ダミは何も言わずにニコッと笑い、10秒ほど間を開ける。
 なんだろうこの不自然な間は。

「とにかく座ろうか」

「否定してよっ!」

「大丈夫大丈夫君次第だから」

「余計不安なんだけどっ!」

 ダミはあははと愉快そうに笑うが、こっちは怖すぎて必死で座ることを拒否している。こんなことをしても時間の無駄だということは分かるが、どうしても座りたくない。
 その気持ちを察したのかダミは少し考える素振りをする。

「この血とか人体の1部ってさ、全部2代目の物なんだよね」

「何してるんだいダミ?早くしてよ」

 僕は素早い行動で鉄の椅子に座っていた。ダミは僕が立っていた所に目を向けており、僕が居ないと知るのは僕が声をかけた後だった。
 急いでダミが僕の方を向く。

「……え、もしかしてシスコン?」

「ん?」

「いえ、なんでもないです」

 ダミがちょっと引き気味に声をかけるが、僕は笑ってその空気を吹き飛ばす。その顔を見てダミは顔を背けて素早く何かの準備をする。
 さっきのダミの威勢は一気にどこかへ行ってしまったようで、少しざまぁみろと思ってしまった。
 
 数分経つとダミは様々な道具を持ってきた。何かのベルトに鉄……多分拘束器具であろう。あと、注射器に先程のロリース剤だ。それと、なんか危なそうな鉈、猟で使うような猟銃、細い腕ぐらい太い針。
 凄く物騒である。本当に僕死なないよね?

「そんな不安そうな顔をしないでよ」

 ダミが笑いながら素早く僕を拘束器具で椅子に固定し始める。その動きが素早く、慣れてることがすぐに分かった。
 ただ、僕だって施設仕事場の端くれだ。これぐらいの器具では僕を固定できない。
 そう思い力を入れてみるが、何故かビクともしない。焦って全力で力を入れてみても全く動かなかった。
 これではいざと言う時に逃げられない。

「あぁ、無理無理。それ2代目も壊せたことないから」

「どういう仕組みっ?!」

 ダミは僕を拘束し始めてから凄くウキウキして、さっきの威勢をすっかり取り戻している。
 2代目レイは世界一強いと言っても過言では無いのだ。彼女が壊せない物が世界に存在するのかと驚いてしまった。

「繊維を特殊な編み方で作ったり、形を変えただけだよ。力の向け方によってはひ弱い人間でも壊せるけど……」

 僕はその言葉で様々な方向に力を入れてみるが、ガチャガチャと音がするだけで全く外れない。
 ダミはその様子を見てゲラゲラと笑い始める。

「無理だってぇ〜」

 ダミは僕をからかうのを心の底から楽しそうにしていた。めちゃくちゃ悔しい。

「さて、冗談は辞めて、そろそろ始めようか」

 ダミの顔が急に引き締まり、それと共に部屋の雰囲気がガラッと変わる。
 この顔を見ると、リーダーの弟だなと分かる。ロボットだけど。
 
 ◇◇◇

 「うああぁぁぁっっ!」

 部屋中に僕の空気を切り裂くような悲鳴が響いた。その声は沸騰した時に鳴るやかんの音に近く、自分で叫んでおいて鼓膜が破れそうだ。
 しかし、それと同じぐらいの違和感が僕の腕にあった。

「うるさっ」

 ダミはロボットだからなのか、少し怯むが僕ほどでは無いようだ。しかし、それ以外の景色は何も見えなかった。ブラックアウトに近い状況である。

「気絶しないでよ、これからが本番なんだから。あっ、意識しちゃだめだよ」

 そう言ってダミはロリース剤を取り出す。"意識してはいけない"その意味を僕はすぐに分かったが、意識したら気絶してしまいそうなため、何も考えない事にした。

 するとダミが無理やり僕の口の中に錠剤を押し込んだ。別に錠剤は大きくもないため水はないが普通に飲み込む。
 飲み込んでも特に何も体に異常は起こらなかった。

「もういいよ、自分の腕を見て」

 僕はそう言われてもあまり見たくなかった。けれど、時間が経つにつれどんどん意識させられてきたため、左腕に目線をうつした。

「あっ、あぁ…ああぁっっ!」

 さっきの声とは違う。僕の地声とがなり声が混ざった汚い声が辺りに響き渡る。
 僕の目線の先には綺麗に切り取られた腕があった。血が大量にでてきて、指も手もない。
 そこでようやく痛みがやってきた。腕の中に溶岩を無慈悲に流し込まれているような熱さと激痛。
 そんなのに耐えられるわけがなく、身体全体で暴れた。

「おーちついて。大丈夫大丈夫。ゆっくり呼吸をして」

「ハッ、ハッ、ハッハッ」

 僕は必死に呼吸を整える……といってもしゃっくりのように荒い呼吸が止まらない。
 目頭から大粒のいくつもの涙が頬をつたう。
 嫌だ!助けて!お願いだから!
 ずっとずっとそんなことを思っている。
 何でもするからこの痛みから解放して!

 そんな気持ちで必死にダミに目で訴えるが、ダミはずっと僕を冷たい目で見ている。

「2代目ならできたんだけど」

 その言葉に、僕の頭は急激に冷やされる。
 勿論腕の痛みは変わらないが、そんなの意識の外へと放りだされた。
 呼吸も整っていき、視界も開けてきた。

「いいね。それで、自分の腕を生やす感覚を掴もうか」

 自分の腕を生やす感覚。聞けば意味がわからない。腕を生やすことなんて普通は出来ないのだから。
 しかし、僕は自然とその感覚を想像することが出来た。まあ、別に感覚なんてどうでも良いんだろう。自分で考えた、思い込んだ感覚=腕が生えると体に錯覚させれば良いのだから。
 
 グニュッ

 肉を揉みこんだ時のような音、ハンバーグを捏ねている音と言った方がわかりやすいだろうか。
 そんな気持ちが悪い音が僕の腕からしたと思うと、僕の左腕はいつの間にか生えていた。普通に手も動かせ、切れた跡もない。完全回復である。

「……今すぐ回復しろなんて言ってないんだけど」

 ダミは呆れながら僕の方を見る。
 ここからダミは僕に丁寧に教えて腕をゆっくり生やすつもりだったのだろうが、僕はそれを一瞬で成し遂げてしまった。

「2代目でさえ数時間かかったのになぁ……」

「そりゃ、僕はチャーフルの双子の兄だからね」

「……君の2代目への思いの入れ具合は想像以上で驚異に思うよ」

「それはどうも」

 僕はチャーフルを越えられたことと、ダミに一泡吹かせられたような気がして満面の笑みをダミに向けた。
 ダミは冷や汗をかき、口元が歪んでいた。

Re: ≪ポケモン二次創作≫ 最期の足掻き ( No.68 )
日時: 2022/09/25 13:31
名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: pD6zOaMa)

少々休載させて頂いてるベリーです。

小説大会2022・夏二次創作掲示板……金……賞?
あ、銅賞でなく?金賞……? と驚愕しております。
投票してくださった方々本当にありがとうございます。
ポケモン二次創作が賞に載るの何年ぶりだ? 最後はガオケレナ様だった気がしなくもないぞ?と思い振り返ると3年ぶりでした。
これをポケモン二次創作と言っていいのかはかなり怪しいですが受賞ありがとうございます。

Re: ≪ポケモン二次創作≫ 最期の足掻き ( No.69 )
日時: 2022/09/28 21:11
名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: 5VUvCs/q)

《リゼ》

 私は3柱…この施設で4番目に強いユウの部屋に今夜泊まることになりました。
 始めはレイを説得することを不安に思っていましたが、レイはあっさりOKしてくれました。しかし、ユウと出会った時と言いレイの物分りが良すぎて不気味です。何か企んでるのでしょうか?

「いやー、ベットが1つしかなくてすまないね」

 ユウが2人は余裕で寝れるほどの大きさのベットを整えながらそう言いました。ユウの部屋は私の部屋と比べるとかなり大きく本棚が何個も立ち並んでいます。しかも、その全ては正規の本というより、メモ帳や日記帳に見えるのです。

「さあ、寝ようかリゼ君」

 ユウがベッドにゴロンと寝転がると腕を頭に組んで目を閉じ始めた。
 私もユウの横にそっと横になりました。もちろん警戒は怠りません。今夜はきっと警戒してばかりで寝れないでしょう。相手は3柱なのだから。

「リゼはレイのことどう思う?」

 唐突にユウが聞いてきました。恋バナの様な話の切り方ですがそうでないことは明白でした。

「純粋に強さと立場には憧れます。1柱ならリーダー以外敵無しですから」

 私は素直に答えた。別に相手が情報屋だから、三柱だからといってこれほどの情報はお互いなんの得にもならないと踏んだからです。

「まぁ、そうだねぇ。そのレイの過去。知りたくない?」

 ユウがこちらに顔を傾けてニヤッと笑いました。レイの過去を知れば弱みになって身を守る手段となるかも知れない。逆に弱みを握ったことを知られて狙われるかも知れないが。

「はい。知りたいです」

 そう言った瞬間ユウは不気味な笑みを浮かべました。何か、いけないことをしてしまったような、そんな不安が襲いました。

 ◇◇◇

「─でその時フジが泣き叫んでレイにすがりついてて、滑稽だったよ」

「そうですか」

 フジの話はかなり長く、そして有益な情報でした。最初の不安とは裏腹にあのレイの滑稽な姿に笑いが止まりません。実際に笑ってはいませんし、心の中も笑っているようには感じられませんが。

「と、まあかなり長話をしてしまったね。フジというのはそういうヤツなんだよ」
「とても参考になりました」

 私は素っ気なく返事をした。この情報でどうレイの優位に立ちましょうか……
 早速この情報を有効に使おうと私は考え始めました。

「というわけでリゼ君。はい」

 するとユウが私に手を差し伸べてきました。どういうことか分からず、私は首を傾げます。

「対価だよ、たーいーか。タダで情報貰えると思わないでよね?」
「なっ、ハメましたね!」
「それは否定しないけど、何の疑いもなく私から情報を聞いたリゼの甘さもあると思うけどなぁ」

 ユウはケラケラと私を嘲笑いながら言った。
 どうしましょう……急に私の立ち位置が危うくなりました。逃げる? ダメです。情報屋から逃げられるはずがありません。ならば……

「その、対価は何を払えば良いのでしょう……」
「情報の対価は基本情報だ」
「残念ながら私はそんな有力な情報は持ち合わせておらず……」
「あるよ」
「……というと?」
「キミの記憶だ」

 ユウは私に顔面を近づけ、人差し指で私の額をコンコンと軽く突きます。
 イマイチ理解が出来ない状態ですが、ユウが言うのならば私の記憶には何か大切な、重大な情報があるのでしょう。
 と言っても些細なことなら忘れてしまってるかも知れません。しかし、死んでも思い出さないとユウに何されるか分かりません。

「ははは。そんなに身構えなくても大丈夫だよ。まず、リゼは何時、施設に来た?」
「何時……と言われても」
「あー、うん。そうだねぇ。二代目が生きていた時に、君はここへいたかい?」
「……多分」

 私はユウの質問に言葉を濁した。別に隠してるわけじゃないのです。けれど、二回目脱走時のことを思い出そうとしても、記憶が無いのです。
 なにか、霧がかかったような感覚で……まるで生まれた時の記憶を思い出そうとするような無謀な感覚を覚えます。

「多分って?」
「そこら辺に関してはユウの方が詳しいのでは?」

 ユウは『まあね』と瞳を閉じてベットから立ち。そして本棚のを探り始める。
 その時に思ったのが、全く隙がない。動き方も筋肉を最小限に使っていて足音もしなければ気配もしない。まるでリーダーのように。

「んーぁー。どこだっけぇ? あったあった」

 ユウが本棚から1冊の本を取り出します。本……というか日記でしょうか。この部屋に来た時から思っていたのですが、結構濃い血の匂いがします。
 そして、ユウが黄ばんだ古い紙をめくっている所々に赤い部分と黒い部分が見えます。
 私が怪訝そうに見ていると……

「あー、これ? インクもそんなにある訳じゃないからさ。切れたら血を使ってるんだよね。ドロドロだし筆が乗らないし放置したらカサカサになるから好きじゃないんだけど……んー、ここら辺だったよ・う・な……」

 ユウは一切こちらを見ずに答えました。私だって伊達にランキングに乗っていません。動きも最小限でユウを警戒してるはずなのに、何も見ずに私の心情を悟られました。
 三柱で最弱。実力もそこまで無いと仕事人の間では言われていますが、全くそんなことないということを体感できます。きっとレイとリョクが強いのでしょう。

「『被検体ヌメルゴン No.16 通称リゼ』
 8歳に施設へ入れられる。そこから仕事人一斉狂い期を生き抜いた人物。発見当初……あー、私がリゼを認知し始めた時の事ね? は、既に精神は壊れており感情の起伏も少ない。共に行動しているサーナイトもリゼの命令に従っている。私が知っているリゼの情報はこれで全部だ」

 私がヌメルゴンのキメラなのは知っていましたが……8歳に施設に入れられたことや『仕事人一斉狂い期』等初耳なこともあります。

「……結構ご存知なんですね」
「逆だよ。私が把握している仕事人の中で君の情報は極端に少なければ、違和感が多い」

 極端に……少ない? これででしょうか? 確かにシュウと見た時の二代目や三代目の資料と比べれば少ないですが……私は特に何かしたつもりは無いのでこれが私の全てだと思います。

「思考放棄は致命的だよ〜 まずだ、『被検体』これはなんだい?」
「ヒケンタイ……」

 ユウが日記片手に私の前に立って質問をしてくる。私も何かあれば逃げれるように体を起こしてベットに座ります。
 ヒケンタイ……なんの言葉でしょうか。コミュニケーションは取れるとしてもそんなに詳しい言葉を私は知りません。

「基本的に私達キメラは『失敗作』と呼ばれる。けど、君は『被検体』と書かれている。なんの意図があるのかは分からないが、基本的に実験に使う人や物を指す。表世界では人権とやらが厳しいようで、『実験体』という表現を和らげた言葉として使われるようだね」

 ユウがペラペラと意味のわからない言葉を発します。いえ、言葉は分かるのですがいかんせん内容が全く頭に入ってきません。

「要するに、君は私達キメラとは違う存在ということだ」
「なるほど……?」

理解していない私を、察してユウがまとめてくれますが、結局分からずじまいです。私が他の仕事人と違う存在……? 特にそんなことを思ったことがありませんが……
 
「これは私の推測に過ぎないが……八歳に施設へやってくるのはかなり遅い。そして、君は被検体だ。私達を生物とも思っていない研究員は『実験体』という言葉を使わず『被検体』と表している」
「結局ユウは何が言いたいのですか。簡潔に、数文字にまとめて私にもわかるように説明してください」

 さっきから訳分からない言葉を並べられて早く結論を聞きたい私はユウにそう言いました。
 するとユウは急に真面目な顔になって私に言う。




 ─君は、元々は人間だったんじゃないか? それも表世界の─

               」

Re: ≪ポケモン二次創作≫ 最期の足掻き ( No.70 )
日時: 2022/11/03 09:26
名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: 4mXaqJWJ)

《リゼ》

 施設には気づいた頃からサーナイトと居ました。自分がどこから来たのか、どうやって生まれたのか、施設前の記憶は無いのですが、たまに夢を見るのです。

 私と同じ髪色、瞳の子供と広くどこか安心する部屋にいるのです。そこで楽しくポケモンと戯れ、見たこともない美味しそうな食べ物を食べて、面白い映像を見て笑い合う。
 不思議なことが多いのに、とても楽しく虚しく懐かしい夢。
 それを壊すのはいつも同じ人でした。私達よりも大きな体で髪と目の色は私と同じ。派手な服を着た人物が暴言を吐くのです。
 内容は分かりませんし、夢なので音は聞こえません。なのに、内容を聞いてる気がして毎回心が折れそうになります。
 そして、その大きな人が複数のポケモンを繰り出して私たちはーー

 ◇◇◇

「そこで毎回夢が終わります。きっと私は死んだのでしょう」

 私はユウの部屋で質問を受けながら思い当たることを話していました。ユウはノートに私の言葉をメモしながらなにか考え事をしています。

「その夢って施設の話かい?」
「施設では無いと思います。とても清潔な場所でしたので……」

 するとユウがノートを閉じて『わかった』と一言呟きました。何が分かったのでしょうか。私は首を傾げます。

「君の大体の出生。推測の域を出ないがね。知りたい?」
「いえ、別に」
「だよねぇ〜」

 ユウは私の返事が予想通りだったのか目を閉じて天井を見つめます。今更出生を知ったって何も意味はありません。レイ達と同じ試験管ベイビーでも、施設の外で生まれたとしても、それを知っても私は何もしないのですから。

「まっ、私が施設から出られるようになったら勝手に調べるからさ」
「出れるんですか?」
「もしもの話だよ。リーダーに勝てないのに外は出れない」

 ユウはハハハと乾いた笑い声を出します。私はどちらでもいいです。どうせ死ぬのですから。どうせ、私は何も残せずに消えるのですからーー

 ◇◇◇
《シュウ》

「シュウ!」

 ダミの部屋に泊まった次の日の仕事場。僕はレイと極力会わないようにデンリュウと仕事場を走り回っていた。
 すると、ミソウの声がする。

「あ、タツナ、ミソウ! よくここが分かったね!」

 タツナとミソウ、キュウコンの二体が鳥のように軽く飛んで来たため驚きながら言った。
 リョクと会うかもしれないからあまりタツナとミソウには会いたくないのだけれど……

「シュウ。リョクを殺すって本気か?」
「うん。大丈夫。ダミに鍛えて貰ったから!」

 タツナが焦るように言うが僕は笑顔で返事をする。それでもタツナは不安そうな顔だった。
 無理もない。リョクは三柱で、僕とリゼが束になっても勝てなかったユウよりも強いのだから。でも、デンリュウとならきっと……

「シュウ。報告だ。レイがシュウを必死で探している」
「えっ、ええ?! 大丈夫なの?!」

 ミソウの淡々とした報告を聞いて僕は焦ったように声を上げる。予想はできていたけれど、思ったよりレイの反応が早い。

「ユウが誘導するらしい。つってもいつまでもつか分からんが」
「なら心配ないね! 二人共危ないから離れててよ」

 タツナの報告を聞いた後に僕は離れるよう二人にいう。二人は傷ついたような顔をしながら僕を見る。
 二人共ごめんね?
 
「……ああ。あと一つ。俺らは他の場所を探したがリョクは居なかった。多分、この辺りに居るはずだ」
「そっか、ありがとう」

 僕が言った後にタツナは唇を少し噛み、ミソウを無理やり引っ張って去っていってしまった。僕はその背中を見ながら隣のデンリュウに話しかける。

「ねぇデンリュウ。僕達昔からずっと一緒にいたよね」
「デン!」
 
 僕が話しかけるとデンリュウは嬉しそうに返事を返す。僕はデンリュウの方を向いて笑顔を作った。

「もし僕が危なくなったらさ、死んでも守ろうとしてくれるかな? デンリュウなら……」
「デンデン!」

 僕が不安そうな顔で言うとデンリュウは決意を固めた様子で僕と目を合わせ、手を繋ぐ。僕ははにかみながら『ありがとう』と呟いた。
 本当にデンリュウは昔からいい相棒だ。本当に、本当に ーー都合がいい

 ジャリッ

 微かな、本当に微かな砂利の音がする。遠くで少し地面をすった程度の微かな音が。

「来た」

 僕はそう言ってその場からジャンプをして離れると目の前を物凄いスピードで誰かが通り過ぎた。『ビュンッ』という風切り音が聞こえその場を離れていなかったら危なかったと感じる。

「ホウチャク シュウ。お前だな」

 僕の目の前を通り過ぎた正体が呟く。緑色のおカッパの髪に頬は何かを縫ったような跡がある。レイ程の身長で筋肉が見えるため力強い事が離れていても分かる。

「うん。僕がシュウだけど……誰、かな?」

 僕はとぼけたようにリョクに聞いた。リョクはゆっくりと立ち上がりこちらを見下すような姿勢をとる。

「自分はリョク。二柱だ」
「二柱って……施設で三番目に強い?! どうしてそんな人が……」

 僕はまるで今リョクの存在を知ったような口調で言う。リョクはイラついたような顔でこちらを見る。

「邪魔だから、消しに来た」
「邪魔って……僕何もやってないよ!」

 まるでライトノベルの好青年主人公のように、必死な顔を作りリョクを見つめる。こんなのは、長年やってきたため朝飯前だ。

「いい加減にその演技をやめろ。不快だ」
「演技って……そんなっ」
「や め ろ」

 リョクの顔のシワが増え、唸るような声を上げた。
 今まで誰にも見破られなかったのに、何故演技がバレた? まず僕とリョクは今が初対面だ。こんな早くに見破れるはずもない。リーダーから聞いたのか? いや、リーダーがリョクと接触する時間なんてあったか? ならリゼが……

「こっち向けよ偽物」

 気づかないうちに目の前にリョクが居り、殴る構えをしていた。さすがにこれには僕も驚きバックステップで急いでかわす。
 リョクが拳を振り上げ、目の前を通過する。

「あぶっ……!」

 僕は声を漏らしてリョクを見る。大層ご立腹の表情だ。
 何故僕が邪魔なのか、何故僕を消すのか。本来なら疑問が出るんだけど。
 何となく、理由を僕は分かっていた。

「僕も君が邪魔なんだよね。お互い自分勝手に他人を引っ張るなんて……似た者同士だね!」
「偽物と同じにするな!」

 僕は皮肉を込めてリョクに言うとリョクは心底不快そうに、辺りに木霊する声で怒鳴った。
 全く……三柱って仲良いか悪いか分からないね。

 ◇◇◇
《リョク》

 二発ほどの攻撃がかわされた……?
 ホウチャク シュウーー偽物は焦っている顔はすれど心の底から焦っているようにはとても見えなかった。
 けれど、数打ちゃ当たるだろう。

 自分は偽物を追いかけて顔面目掛けて拳を放つ。スピードこそレイと同じだが、力は自分の方が上なのだ。これを喰らえばタダでは済まされない。
 しかし、偽物は紙一重で自分の攻撃をギリギリでかわし続ける。当たりそうで当たらない。まるで偽物がワザとギリギリで交わしていると思ってしまう。
 いや、ワザとかわわしている! ワザとかわして相手の攻撃を誘い体力を減らす…… これは二代目レイがやっていた戦法で、現在のレイもよくやっている。

「クソっ」

 自分は攻撃しても無駄だと悟り距離を置いた。どうすれば当たる? 愚直に攻撃していても当たらないのは分かるがだからといって自分は搦手を考えるのが苦手だ。
 それに体力を奪われればデンリュウに殺されかねない。

「ロリース……するの?」

 偽物が呟いた。顔を上げると微笑んでいる少年とデンリュウが居る。
 ロリースなんて人生で一度もやったことがないし、薬だけで力が増すなんて信じられない。けれど、ユウが実際出来ているのだ。そして、ロリースをすると寿命が縮む。
 スイさんが居ないこんな所に未練なんて無いが、何故自分がフジ……いや、レイの為に寿命を縮めなければならないのだ。
 ふざけるな。自分はそこまでしてレイを守りたい訳じゃないし執着もしていない。

「やっぱり。するよね……」

 偽物が緊迫した声で呟いた。その時自分はいつの間にかポケットに入れていた薬を口に入れていた。
 何故? そんなこと、考える必要もない。
 全身がマグマのように熱くなり意識が飛びそうで、目の前がぐにゃぐにゃと変形し始める。
 心臓の音が激しくなり喉から飛び出そうだった。痛いし苦しいし熱い。何が起きている?

◇◇◇
《シュウ》

 リョクがロリース剤を口にすると突然苦しみ出してしゃがんだ。

「えっ、なんで……」

 僕は思わず呟く。だってユウのロリースは薬を飲んだ瞬間身体能力が上がり余裕の笑みで動き始めたのだ。何故リョクは苦しんでいる?
 すると、リョクの体が変化し始めた。肌の色が濃くなり褐色に、体は大きくなりゴリラのように、体の所々に草葉のようなものが生える。

「ゴリランダーか……」

 くさタイプのゴリランダーというポケモンが居る。リョクの姿はそのまんまゴリランダーだった。人間の姿の原型はあるが、やはりゴリランダーの印象の方が強い。
 リョクはゴリランダーのキメラであることが分かる。

「グアアアアッ!」

 リョクが雄叫びをあげる。その迫力は全身に電気が走ったのではないかという錯覚に陥るほど凄まじいものだった。
 するとゴリランダーーー間違えた。リョクの周りを葉が囲い嵐のような風が巻き起こる。
 その葉と風が勢いよく僕達の方向へ飛んできたのだ。リーフストームという技である。もうただのポケモンだ。

「デンリュウそっち!」

 僕が指示を出すとデンリュウは右方向へ走り出した。僕は左方向へと走り出す。二手に別れればま普通は迷いによって隙が生まれるのだが……

「ア゙ア゙ア゙!」

 リョクは迷わず僕の方へ走ってきた。何となく予測が出来ていたためかわそうとするのだが、リョクのスピードが先程よりも早かった。

「あがっ……!」

 腹に肉が口から零れ落ちるのではないかと思うほどの衝撃が走り思わず口から音が出た。
 僕はリョクの攻撃をかわしきれなかった。リョクが大きな手のひらを腹に思いっきり当て僕を吹っ飛ばす。それは『ダメ押し』というポケモンよ技に酷似していた。
 しかし、僕達は二手に分かれている。片方に集中された方が僕たちにとって都合がいい。

「十万ボルト」

 僕が呟いた後、目の前のリョクが肉眼でも見える真っ黄色の電撃に包まれた。リョクの体が震えその場で動きを停止したため僕はなるべく距離をとる。
 こんなに力が強いだなんて思わなかった。油断した。

「デンリュウ下がって」

 そろそろリョクが攻撃をしてくる。根拠はないただの勘だが、何故か僕はその勘を信頼してデンリュウに指示を出した。
 僕の勘は当たり、デンリュウが離れた瞬間にリョクが鉄のような巨大な腕を振るいデンリュウに当てようとする。デンリュウは予め避けようとしていたため当たることはなかった。

「本当にゴリランダーだね。原型はどこいった?」
「グアァ! ッア゙ア゙ア゙!」

 僕は煽るような口調で言うが、リョクは僕の言葉が届いていないように叫び始めた。
 言葉は喋らないし戦闘が野生のポケモンとほぼ同じだし。ーーもしかして自我を失っている?

「ぁぁぁッ!」

 僕はその時思考に意識を集中させていてリョクの様子をしっかりと見ていなかった。
 痛みの前に視界情報が頭の中に入る。
 リーフストームが最小化されたような技が僕の片腕を直撃し、鮮やかな緑の葉と不健康そうな血が宙を舞う。
 腕がちぎれた……と言う割には何故か指の感覚が中途半端にある。何が起きたか全く理解が出来ない所で激痛が全身を襲う。
 爆発するほどの熱さ、肉に冷たい空気が当たる痛み。

 リョクはまたリーフストームを打つために僕の方を向いて構えている。痛すぎて僕にはとてもかわしきれそうにない。

 『ーーもし僕が危なくなったらさ、死んでも守ろうとしてくれるかな?』

 僕は十万ボルトを打ちリョクの方を見て警戒しているデンリュウの方へ走り、それと同時にリョクからリーフストームが放たれる。
 早くしなければリーフストームに当たって死ぬ!
 早く、早く早く……
 そんな焦燥感に終われ限界まで足の筋肉を動かしてスライドするようにデンリュウの背中に滑り込んだ。
 僕はあまり体が大きくないため、すっぽりとハマることができた。

「……でんっ」

 何が起きているのか理解出来ていない事が分かるデンリュウの一言。リーフストームが僕らの目の前に迫っている。
 デンリュウでもこのリーフストームを受けて無事なわけが無い。普通のリーフストームなら死なないのだが、このリーフストームはリョクが力のリミッターを外して馬鹿みたいな威力を誇り、僕の腕を負傷させるほど強い。
 無事なわけが無い――高確率でデンリュウでも死に至る物だ

「ありがとう!」

 僕がそういった瞬間、笑いながらも涙を浮かべ嬉しいのか悲しいのかよく分からない表情をしたデンリュウが、声一つださず無抵抗にリーフストームを受けて吹っ飛んだ。
 
 デンリュウが盾になってくれたお陰でゆっくりと傷を意識することができる。
 腕は半分肉が抉れた状態で骨が折れていた。正直ちぎれていた方が回復し慣れていたためえぐれるぐらいならちぎれて欲しかったが、この状況で腕がちぎれた際の痛みに耐えられるかも分からない。
 起きてない事を考えても仕方がない。僕は抉れた肉が治り、骨が繋がるように意識した。火事場の馬鹿力にでも頼らなければそんなすぐに腕は完治しないが時間があれば傷は治る。
 チャーフルは腕がちぎれたら一秒も経たずに再生させていたそうだ。化け物だ。

「よし、回復した」

 僕の頭にはデンリュウが乗っかっている。体温はない。心音もない。脈もない。
 死んだとすぐ分かるが特に気にしなかった。"元々"利用するために捕まえていたのだから問題は無いのだ。
 しかし、リョクとの交戦で戦力の一部を無くしたのは惜しい。まあ命には変えられない。

「こっちも真面目にしなきゃ殺られる……」

 僕は気を引き締めてリョクの方を見る。冗談みたいな馬鹿力だけれど頭は良くないし自我もない。
 まあ要するに脳筋だ。何かしら搦手を使ったらいけるのだがデンリュウが死んだ今、良い搦手が見つからない。
 いや、一つある。搦手と言えるほど複雑なものでは無い。しかし、今のリョクの脳筋っぷりなら引っかかりそうな気がする。

「ぐぅ……っぇ!」

 ポケモンと人間のキメラ。だからといって強い訳ではなく、体力の上昇ぐらいしか恩恵を得られない。
 元となったポケモンの種類と、ポケモンとの結合率によっては再生能力が高かったり、ポケモンの技のようなものを出せたりするが、力自体はポケモンに早々及ばない。
 なら何故仕事人は強いのか。
 まずは頭脳。仕事人はポケモンの急所、弱点、交戦時の立ち回りや筋肉の使い方など交戦中に様々なことに思考を巡らせる。
 しかし、それだけではポケモンには及ばない。もう一つはこの環境だ。生きるか死ぬかの狭間を常に行き来しており有り得ない程の力を得やすい。
 そして最後に、弱い者は死んでゆくため自然と強い者が残る。ふるいにかけられているのだ。
 しかし、僕にはもう一つある。キメラの子供。ポケモンの性質も多少は受け継いでおり、技を使える。
 僕は思いついた搦手をするためのストレッチ兼、攻撃として"それ"を放った。
 
 部屋の扉ぐらいの高さの太い岩がリョクの真下の地面から一つ生えてくる。
 しかし、リョクは察知していたのかそれを避けていた。

 ポケモンの技と比べるととても強い物ではないが、僕は技を使える。『ストーンエッジ』といういわタイプの技だ。
 一本しか岩は生やせないしストーンエッジしか使えないし威力はそんなに無いという完全にポケモンの劣化だが無いよりはマシである。

 そして、今のでちゃんと僕は技もどきを放てる事が分かった。これなら、これならいける……!
 灰色の空の元、ソレイユ・ジーニアは笑った。


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