二次創作小説(新・総合)
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- ケロロ軍曹VS銀魂 次元を超えたコラボ篇 であります
- 日時: 2020/03/21 16:15
- 名前: 若大将 (ID: pakyHNO3)
ケロロ軍曹のキャラ達がなんやかんやで銀魂の世界に飛ばされてしまう物語です。
毎週土曜日と日曜日の間に2話か3話ずつアップする予定です。ですが、諸事情により、1ヶ月程空く場合があるかもしれないので、そこの所はご了承下さい。
注(キャラ崩壊、捏造等か若干あるかもしれません。)
〈大長篇〉
『真選組の赤い悪魔篇』>>17-33
- 第23話 上映前には用を足しとけ であります ( No.27 )
- 日時: 2018/11/11 21:23
- 名前: 若大将 (ID: cbnYew9V)
「…ゲロ?あの塔みたいなのは何でありますか?」
「ん?あれは塔なんかじゃねぇな。ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲じゃねぇか。完成度高けーなオイ。」
「何であんな卑猥な物があんな所にあるんだよ!?一応『ケロロ軍曹』とコラボしてるんですからね!?作者そんなに『ケロロ軍曹』汚したいのかよ!」
『銀魂』内では唯一の常識人な新八は、アレが何を示しているかが見当がついていた。
「おいおい新八ぃ。あれのどこが卑猥なんだよ?どこに卑猥さを感じたんだよ?」
「ほんとマジキモいアル新八。一生話し掛けないで。」
「何で僕バッシング受けなきゃなんないの……?」
「あんなの、今までなかったのになぁ…。…………まさか……!!」
銀時は桂が言っていたことを思い出した。近いうち、久坂が何か企んでいるということを。
「おめぇら!あそこに夏美がいる可能性が高い!」
「ほ、本当ですか!?」
「ああ、ついてこい!」
そう言い、銀時は廃ビルの方へとハンドルを切った。それに続き、他の者達もその方向に曲がった。
「あそこが久坂一派のアジトかもしれねぇ!急ぐぞ!」
「凄いであります銀時殿!さすが伝説の攘夷志士『白夜叉』であります!」
「『元』をつけろ!ていうか、あんま言いふらすなよ。あんま知られたくねぇんだから。」
銀時は嫌そうな顔をしてそう言った。
「にしても、入江兄弟に知られてたなんてなぁ……。そういや十二の奴、百三から聞いたって言ってたな。真選組は俺が白夜叉だって知ってるみてぇだし……。」
「え?ちょっと待って下さい!」
突然、冬樹が話し出した。
「ゲロ?どうしたんでありますか?」
「……銀さん。それはないと思います。」
「……おいおい。そいつはどういうことだ?」
冬樹は手を顎に当てて、考えるような仕草を取った。
「……実は百三さん、十二さんとは、真選組に入隊してから一度も会ってないんです。ですよね、新八さん。」
「えっ、あっうん。仕事で忙しくて、連絡すらも取れなかったと…。それに、隊士達は基本的、屯所に泊まって生活してますから、まず会うことなんて出来ないんです。」
「……それが、どうかしたのか?」
「……僕、元の世界で『銀魂』を読んでいたので、大体のことは分かるんです。銀さんが白夜叉だと知っているのは、銀さんの周りにいる人達と攘夷浪士、そして真選組の人達しかいない、ということも。つまり、一般の人は知らないということ。」
「つまり、何が言いてぇんだ?」
「百三さんが銀さんのことを白夜叉だと知ったのは、真選組に入隊してから。入隊してから十二さんと1つも連絡がとれなかったのに、一般の人である十二さんはどうして銀さんが白夜叉だと知っているんですか!?」
「……………マジかよ…………!!」
「……はい。十二さんが銀さんのことを白夜叉だと知っているには、十二さんが攘夷浪士であることしか条件がないんです!」
「!!!」
一同は驚きを隠せなかった。
「つまり、最初から真選組に内通者なんていなかったんです……。本当の黒幕は……………………………………………入江十二さんである可能性が高いです。」
その頃、廃ビルでは、未だに真選組と久坂一派のにらみ合いが続いていた。かれこれ2時間が経過し、もうすぐ夜明けとなってしまう。
「フフッ……。もうすぐショーの幕開けです……!」
「くそっ……!近藤さん、マジでどうすんだ!?」
土方が焦りの表情を出した。このままでは、ウイルスが発射されて、天人の身が危ない。
「……地球にいる全ての天人に、ウイルス防止のマスクを付けることは考えたが……、とても出来ることじゃねぇ。」
「宇宙船使って天人を避難させるにしても、こんな朝っぱらに、天人全員起きてる訳がねぇ……!」
久坂は全てそのことも計算し、皆が寝静まったときに準備をし、夜明けに実行するようにしたのだろう。
「完全に久坂の手の上で踊らされちまったみてぇですねぃ……。」
「………………久坂。」
突然ギロロが声を発した。
「?」
「………俺を斬れ。その代わり、夏美と山崎は解放しろ。」
「!!?」
ギロロの発言に、一同は驚いた。
「な……何言ってるのギロロ!?やめなさいよ!」
「おやおやおや。一体どうしたのですかぁ?」
「…………すまんな夏美。こんなことに巻き込んで……。俺1人が犠牲になって、物事が収まるのなら、俺は喜んで犠牲になる。」
「何考えてんだギロロ!こうなったのは、局長である俺のせいだ!部下の責任は全て俺の責任だ!だから、切るなら俺の首を切れ!」
そう言い、近藤は刀を地面に置き、その場に座り込んだ。
「こ、近藤さん!!」
「近藤、やめろ!!」
「ほほぅ。これは随分見物ですねぇ……。真選組局長の打ち首とは…。ショーの余興のつもりですか?フフッ……。」
「てめぇ…………!!久坂ぁぁ!!」
「待て総悟!!」
久坂の発言に逆上した沖田は、刀を抜きビルの中へと入ろうとした。しかし、入ろうとした直前、沖田の目の前で横殴りの弾丸の雨が降ってきた。
すんでの所でかわせたが、横を見てみると、銃を持った久坂一派の攘夷浪士が何十人も茂みに隠れていた。
「あなた方が立ち往生している間、私が何もしなかったとでも……?それなりに考えていたんですよ……!」
完全に包囲されて、どうすることも出来なくなった真選組隊士は、全員刀を抜き身構えた。
「フフッ……。無駄だというのに……。武器を全て預からせてもらいますよ……そして、座って両手を挙げてもらいます……。」
言われるがままに、武器を全て地面に置き、両手を挙げてその場に座ると、久坂一派の攘夷浪士は隊士の後頭部に銃口を向けた。
「フフッ……。屈辱ですねぇ。私のような者にこんな風にされるなんて……。でも、所詮は幕府の犬。犬にはとってもお似合いな姿ですよ……!ハハハ…!!」
悔しそうな顔で隊士達は歯を食い縛った。このような光景を見て、夏美は涙を浮かべ、ギロロと山崎も隊士達と同じ様な顔をした。
全ては自分たちがしくじらなければ。
「フフッ……。さあ、局長殿。余興の方を。」
「……………分かった。」
「局長……やめて下さい!!」
「近藤!!早まるな!!」
だが、皆の言うようにはならず、近藤は目を瞑り、首元には刀が添えられた。
「すまねぇな皆。こんな不甲斐ねぇ大将でな。俺がいなくなっても、てめぇらは絶対に曲がるんじゃねぇぞ。どんなに後ろ指差されようが、どんなに蔑まれようが、絶対に自分の信念を貫き通せよ!
ギロロ!お前さんには、たった10日間だったが、随分世話になったよ。お前の的確な指示や戦術のおかげで、真選組の評判は右肩上がりだよ。市民に一切の被害を出さずに事件を解決してくれてあんがとなぁ!」
「ちょっと待て近藤!!おい!!」
「さあ!!切るなら切りな!!俺ぁもうとっくに覚悟できてるぜ!!」
攘夷浪士が刀を振り上げた。そして、思い切り振り下ろし、刃が近藤の首元へと向かっていった。
「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」
「タママインパクトーーーーーーーー!!!!」
何事かと思い、一同は声のする方向へと顔を向けると、黄色い光線のような物がこちらに向かってきた。いや、その光線の先端にも何かがあった。
「ぎぃぃぃぃぃやぁぁぁぁぁ!!!!」
「うおぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
よく見てみたら、光線の先端には、スクーターに乗った2人の男がいた。それは勢いよくビルの屋上に向かっていき、スクーターはそこに着陸した。
そして、その後を追うように、2つの浮遊物が向かっていった。
「な、何事です!?まさか、真選組の援護か!?」
着陸したと同時に、その光線によって立ち込められた煙の向こう側から、声が聞こえてきた。
「いやぁ〜。何とか間に合ったみてぇだなぁ。」
「あやうくショーが始まっちゃう所でしたね。」
そこには、煙で微かにしか見えないが、2つの人影、いや、もう2つ天人の影があった。そして、その4つの影は久坂の方へと近付いてきた。
「一体何のショーが始まるんでありますか?」
「何って……、決まってんだろぉ?」
完全に煙が晴れると、1人の男が木刀を久坂の方へと向けた。
「白い鬼と緑のカエルが極悪攘夷浪士共を成敗するショーだよ。」
- 第24話 加減知らず であります ( No.28 )
- 日時: 2018/12/08 19:38
- 名前: 若大将 (ID: cbnYew9V)
「よぉ。あんたが久坂玄帥か。初めまして……かな?」
銀時は木刀を向けたまま、久坂に近付いてきた。
「真選組の援護…………という訳ではないようですね……。」
「さあ!ギロロと夏美殿を返してもらうであります!」
ケロロは久坂を指差しそう言った。しかし、その割には足はガクガクと小刻みに震えていた。
分かりやすっ、とギロロと夏美は白々しい目でケロロを見た。
「………フフッ……ハハハ…………!そんな程度のことで、私達が怯むとでも……?丁度いい機会です。貴方達にも真選組局長の斬首を見……。」
久坂は真選組の方を向く前に、冷気のようなものを感じ取った。何だと思い、真選組の方を向いてみると、辺り一面が氷漬けになっていて、久坂一派の攘夷浪士全員もろとも氷漬けにされていた。
「!!?」
「凄いアル小雪!一瞬にして全員氷になったアル!」
「驚きました神楽ちゃん?これが小雪忍法です!」
そこには、神楽、定春、タママ、冬樹、桃華、小雪がいた。小雪の忍術により、何とか難を逃れたみたいだ。
「ナイスでござる小雪殿!しかし…………。」
ドロロは何故か言葉を濁らせた。その目線には……。
「真選組の人達まで氷漬けになってるでしょーがぁぁ!その人達味方ですから!!早く元に戻してあげて小雪ちゃん!」
「あ、すいません!今溶かしますね!小雪忍法火遁の術!」
小雪は手から炎を出し、氷を溶かした。しかし、あまりに火力が強すぎたのか……。
「……………!?な、何で俺達裸になってんだぁぁぁぁ!?」
服まで燃えてしまった。
「何してんの小雪ちゃんんん!!?」
「エヘヘ……。すみません。」
しかし、問題はそこだけではなかった。火力が強すぎて、久坂一派の攘夷浪士達も元に戻ってしまったのだ。そして、彼らも服を燃やされていた。
「お前ら……よくもやってくれたな!!真選組もろとも、お前らも斬り捨ててやる!」
攘夷浪士達は、狙いを神楽達に向け、刀を構えた。5人は後退りした。しかし、屋上にいる新八達は、
「パンツ一丁だから何にもシリアス感が伝わらない………。」
「ただ女子中学生襲おうとしてる変態集団にしか見えねぇな………。」
全然違う捉え方で見ていた。
「ここまで俺達を愚弄して、ただで済むと思うなよ!!うぉぉぉぉぉ!!」
一斉に斬りかかって来る、と思ったが、ある一人を除いて、全員地面に倒れ込んでいた。
「!!?……こ、これは……!?」
「それはこっちの台詞でぃ………。ここまで俺の大将を愚弄しといて、ただで済むと思うんじゃねぇぞ……。」
後ろを見てみると、『S』というアルファベットが大量に描かれたパンツを穿いている青年が刀を持って立っていた。
「ヒィ……!!」
たった一人残された攘夷浪士は、完全に激情した沖田に恐れを感じたのか、逃げ出す勇気もなく、その場に立ったまま動けなかった。
容赦なく沖田は彼を斬り、刀に付いた血を拭き取った。
「あーあー。これでまたお前らに借りが出来ちまったなぁ、でも感謝なんかしねぇぞクソチャイナ。」
「んだとコラ!私達がいなかったら今頃お前らは地面に倒れ込んでたんだぞ!」
「でもチャイナ何にもしてねぇだろぉ?それなのに何で感謝しなきゃいけねぇんだぁ?」
「やんのかクソサドコラァ!?」
「そんなに斬られてぇのかクソチャイナ?」
毎度のように、お互いの胸ぐらを掴みながら、また沖田と神楽の口喧嘩が始まった。
「神楽さん落ち着いてください……。」
「総悟いい加減にしろ。」
桃華と土方が仲裁に入るも、収まる気配は全然ない。
「まあまあ、神楽さ」
桃華が神楽に近付いて止めようとしたが、先に神楽の右肘が桃華にぶつかってしまった。
「……………。」
「………あ!桃華ごめんアル!」
「…………おめぇら、やめろってのが聞こえねぇのかーーー!!!」
桃華、いや裏桃華は神楽と沖田の顔面を掴み、投げ飛ばした。
この豹変ぶりに、土方も唖然とするしかなかった。
「え?」
しかも偶然なことに、2人が飛んでいった方向には、夏美達を押さえていた浪士3人がいて、運良く3人にぶつかっていった。そのままの勢いで、神楽と沖田は屋上へと倒れ込んだ。
「わお、なんて偶然。でかしたぞ桃華。」
銀時は裏桃華に向かって親指を立てた。それを返すかのように、裏桃華も親指を立てた。
「おのれ…………!!まさかここまでショーをぶち壊しにしてくれるなんて……!」
これまで不気味な薄ら笑いを浮かべていた久坂だったが、怒りを露にして、刀を抜き取った。
「言っただろぉ?このショーは、白い鬼と緑のカエルが極悪攘夷浪士共を成敗するショー、だって。」
それに対し、銀時は不敵な笑みを浮かべた。
「いいかお前ら。お前らはあれの電源を探せ。どっかにあるはずだ。見つけたら電源を切れ。そしたら俺達の勝ちだ。緑は夏美と赤いのを安全な所に連れていけ。」
「了解であります。」
「あの、すいません。俺もいるんですけど……。」
「ゲロ?」
山崎が自分の存在を指摘したが、ケロロは、『いつからいたんでありますか?』という眼差しで山崎を見た。
「最初からいましたけど!?」
「あー、悪いねジミー君。緑、『ついでに』こいつも連れていってあげて。」
「いや『ついでに』ってどういうことですか!?」
「仕方ないでありますなぁ。『ついでに』でありますよ?」
「………俺そんなに嫌われてたの………?」
「そんなことさせるとでも……?」
いつの間にか、久坂の背後には、無数の浪士達が刀を持って身構えていた。
「数では圧倒的にこちらの方が上………。その気になれば、貴方達なんて秒殺なんで」
「タママインパクトーーーーーーーー!!!!」
言い終わらないうちに、久坂のすぐ後ろを黄色い光線が通っていった。
後ろを振り向くと、さっきまで大量にいた浪士達が、ほんの数十人程になっていた。
「秒殺ですぅ〜〜!!!」
フライングボードに乗ったタママがドスの効いた声で久坂を見下ろし、そう言った。
「ナイスであります、タママ二等!」
「わぁ〜い!軍曹さんに褒められたですぅ〜!」
さっきの声が嘘だったかのように、タママはいつもの可愛らしい声で喜んだ。
「軍曹さん!僕がナッチーとギロロ先輩を連れて行くですぅ!」
「分かったであります!あと『ついでに』……えっと…………、モブ殿もお願いするであります!」
「了解ですぅ!」
「………やっぱ俺、嫌われてる……?名前すら覚えられていないんだけど……。」
泣きながら山崎はそう言った。
「ギロロ先輩、ナッチー、早く乗るですぅ。」
言われる通り、ギロロと夏美はフライングボードに乗った。しかし、
「やっぱり俺嫌われてますよね!?何で俺だけ縄で吊るされてるだけなんですか!?」
タママのフライングボードの下から、一本の縄が吊るされている。そこには、山崎が宙吊り状態で足だけ縛られていた。
「よろしくお願いするであります!」
そう言われ、タママは去っていった。途中、何かと何かがぶつかる音がし、それと同時に男性の悲鳴が聞こえてきたことは、触れないでおこう。
「………せっかくの観客が……。貴方達、覚悟は出来てますよね……?立派な営業妨害ですよ………。その代償はしっかりと払って貰いましょうか……。」
気付いた時にはもう遅かった。久坂が目にも止まらぬ速さでケロロの目の前に立ち、刀を振り下ろそうとしているのに。
「貴方達の命で。」
久坂がそう言うと同時に、刀が上に跳ね上げられた。そして、腹に衝撃が来て、久坂は後ろへと飛ばされた。
「ゲホッ………!!」
「……言ったよなぁ?死ぬかもしれないって。気ぃ抜いてる暇なんかねぇぞ。早く行け。こいつらの相手は俺だ。」
銀時がケロロの前に立ち、木刀を強く握り締め、身構えた。
言われる通りに、新八、ケロロ、ドロロ、そしていつから意識を取り戻したのか、神楽も電源を探しに行った。
「旦那ぁ。俺も忘れないで下せぇよ。」
沖田は起き上がると、あからさまにあくびをした。
「お前さては寝てたな?」
「んな訳ねぇじゃないです…ふぁ〜。」
「沖田君、眠気覚まさせてやろうかぁ?」
「そうですねぃ………、雑魚共がうじゃうじゃいやすねぇ。ちょいとあいつらで眠気覚ましてきやす。」
「いいの?あそこにもっといい眠気覚まし要員がいるけど?」
銀時は久坂の方を指差した。
「あれじゃ、眠気覚ますどころか、また眠っちまいますよ。あれは旦那のでしょ?」
「そうだなぁ。俺も一晩中寝てないから、ここらで眠気覚まさねぇと。」
銀時と沖田は久坂達の方へと歩いて来ると、木刀と刀をそちらに向けた。
「「ちょいと、眠気覚ましに付き合ってくれないかなぁ?」」
(作者・若大将から)
諸事情がありまして、1ヶ月程投稿できませんでした。申し訳ありません。今後このようなことがあるかもしれないので、そこの所はご了承下さい。
ですが、それ以外はいつも通り、1週間に2、3話投稿するので、今後ともよろしくお願いいたします。
- 第25話 真っ赤な魂 であります ( No.29 )
- 日時: 2018/12/09 18:29
- 名前: 若大将 (ID: cbnYew9V)
「私達が眠気覚まし要員ですか………。随分ナメられたものですねぇ……。でも安心して下さい。貴方達をとても深い眠りへと誘ってあげますから……。」
久坂は右腕を上げて手を広げた。それと同時に、後ろにいた浪士達が一斉に銀時と沖田の方へと向かってきた。
「旦那、よろしくお願いしやす。」
「分かってらぁ。」
そう言われ、沖田は浪士達に向かっていき、銀時は久坂がいる所へ飛びかかった。
木刀と刀がぶつかり合う音が響いた。しかし、木刀にしては、あまりにも音が重かった。
「フフッ……。まさか剣を交える時が来るとは思いませんでしたよ、白夜叉。」
「おいおい。最初から俺のこと知ってたのかよ。」
「私の世界では有名人どころの騒ぎではありませんよ…。」
「嬉しいねぇ。知らねぇ間に大御所扱いされてたなんざ。そしてどうだい?これからその大御所にぶっ飛ばされるてめぇの心情は?」
銀時は木刀を振り上げて、久坂の腹にもう一突き入れようとしたが、久坂はそれをひらりとかわし、刀を銀時目掛けて振り下ろした。間一髪、銀時はかわすことが出来たが、久坂は一瞬の隙も見せずに、すかさず銀時に襲い掛かってきた。
「(くそっ………。動きに全然隙がねぇ。こいつ、思ってた以上にやり手だな……。)」
「フフッ……。顔に出てますよ?それが白夜叉の限界ですか?」
煽るように久坂がそう言うと、銀時の肩に刀を突き刺した。
「ぐっ……!」
「フフッ……。ほぉ、貴方はこのような『赤』の持ち主なのですか……。とても綺麗だ。」
久坂は刀に付いた銀時の血を見た。
「てめぇ、血を見て興奮するとは言ってたけど、噂通りのサイコパスだな。」
肩を抑えながら銀時は木刀を握り直した。
「血を見て興奮する?とんでもない。私はただ単に赤色が好きなだけですよ。その中でも、最も『赤』を引き立ててくれるのが、生物の血なんです。それを追い求めていくうちに、『血染めの玄帥』となんて言われるようになりまして。」
「そうかい。だったら俺がその二つ名『血だらけの玄帥』にしてやらぁ。」
そう言い、銀時は久坂の方へと向かい、木刀を振り下ろそうとした。
しかし、そうしようとした直前、足元が突然崩れ出した。気付いた時にはもう遅く、銀時はそのまま落ちていった。
「フフッ……。このビルはかなり老朽化していましてね。さっき貴方がかわした私の一太刀によって、足場がかなり脆くなったのでしょう。」
久坂はぽっかり空いた穴に近づいた。
「そして、ここから先はずっと穴が続いていますからねぇ。重症どころの問題ではないはずなんですが……、そうでもなさそうですね。」
久坂の目線の先には、コンクリートの柱に木刀を突き刺し、何とか命だけは助かった銀時の姿があった。
「あっぶねぇ〜……。」
何とかよじ登り、先程突き刺された右肩を痛そうに抑えた。
「さて……、これからどうするか……。」
近くで、コンクリートが崩れる音が聞こえた。屋上で沖田が激戦を繰り広げているのだろう。
「さすがにあいつはまだ来ねぇだろ。今の内に緑達と合流しねぇと……。」
立ち上がり、下の階へと続く階段を探し始めた。若干右肩に痛みが走るが、数々の死闘を繰り広げてきた銀時にとって、耐えられないものではなかった。
「はぁ……。はぁ……。………!!!」
銀時はとっさに避けた。なぜなら、柱の影から突然、一本の刀が飛び出してきたのだから。
「てめぇ………。いつの間に……。」
柱の影から出て来たのは、そこにはいるはずのない久坂だった。
「簡単なことですよ。」
そう言い、久坂は天井を指差した。そこには、ぽっかりと穴が空いていた。
「成る程ねぇ。さっきの崩れる音はお前が出したのか。お前、頭良いんだな。」
「フフッ……。さあ、続きをしましょうか。」
久坂は身構えると、すぐさま銀時の方に向かってきた。それに対抗するかのように、銀時は久坂の一太刀を木刀で受けた。
「もっと見せて下さいよ、貴方の『赤』を……!」
「へっ!てめぇの黒ずんだ汚ぇ血でも眺めてらぁ!」
再び木刀と刀がぶつかり合う音が響いた。久坂の重い一太刀を銀時が防ぎ、隙あらば銀時が久坂に木刀を叩き突け、それをまた久坂が防ぐ。そのようなことが繰り返された。
両者共々、一切の隙も見せずに、刀を振り下ろし続けた。
よほどの実力者である銀時が、一向に久坂にダメージを与えられないのには、銀時自身も感付いていた。
こいつ、動きが素早過ぎる……!
久坂の動きには、1秒、いや0.1秒も隙がなく、目の前の敵を確実に斬る。そういう思考が、この素早さを引き出しているのだろう。
しかし、それに負けじと銀時もそれに対抗する。
動きが素早い。なら対処方法は1つだけ。それに自分が合わせればいい。
なかなか無茶で賢くはない考え方だが、そうするしか方法が思い付かなかった。
しかし、そうし続ければ当然、体力的にもかなりの負担がのし掛かってくる。さすがに疲労が溜まってきたのか、銀時は少しよろけた。
当然その隙を見逃す訳がなく、久坂は容赦なく銀時の左肩に刀を突き刺した。そしてそのまま、銀時を壁に突き飛ばした。
「がはぁっ……!!」
壁にぶつかった衝撃で、銀時は血を吐き出した。そして、ゆっくりと久坂が近付いてきた。
「やはり貴方の『赤』はとても素晴らしい……!これが白い鬼の『赤』……。とても情熱的で魅力的だ……!もっと、もっと私に見せて下さいよ……!」
久坂は口角を高く上げて、刀を大きく上げて、思い切り振り下ろした。
「…………………!?」
思いもしなかった。まさか、渾身の一太刀を素手で受け止めるなんて、想定外過ぎた。
「……おいおい久坂さんよぉ……。片手で受け止められる程度の一撃で、俺を斬ろうとしたのかぁ?そんなんじゃ、鬼どころか、人間すら斬れねぇんじゃねぇの?よくそんなんで天人斬ること出来たよなぁ……?いや、実際の所、ただ天人の体が脆すぎただけなのかもな。」
「……少し侮っていましたよ……。流石白夜叉。せっかくの機会です。少し話でもしましょうか……。
……何故です?何故貴方は刀を捨てたのです?貴方だって、元々は攘夷浪士。天人共に背いた逆賊。貴方も天人にそれなりの憎しみがあったはずです……!それとも、侍の国を守る、などの綺麗事の為ですか……?そうだとするならば、それは叶わぬ望みですよ。もうこの世界には侍など存在しない。完全に死滅した。せいぜいいるのは、私達のような逆賊と天人共に寝返った薄汚い犬っころですよ……。そして、そうなった原因は何か?そんなのは明白です。天人ですよ。全ては、奴等がこの世界にやって来たことが始まりなんですよ!!
奴等のせいで、何かを失った者達は山のようにいる!家族を殺された、下僕のような扱いをされた!!そんな奴等がどうしてのうのうとこの世界に生きている!?どうして私達は虐げられている!?ここは私達の国だぞ!!!」
「………………。」
「……私はそれが腹立たしくて仕方がない……。何故ですか?何故貴方は……刀を置いたのです……?」
久坂は歯を食い縛った。
「………教え。」
「?」
「……俺はただ、先生の教えに従っただけだよ…。」
それは、まだ地球に天人が襲来していない頃にまで遡る………。
ある所に、桜の木が植えてある一軒家のような所があった。そこには、数十人程の子供達がいた。
そして、その桜の木の上で、刀を持って眠っている1人の子供がいた。
「やっぱりここにいた。おい!」
「寝てないで早く降りてこい!」
その下に、長髪を束ねた男の子と、紫がかった髪をした男の子がいて、寝ている男の子を起こそうとしていた。しかし、一向に起きる気配はない。
「やれやれ……。相変わらずですね。」
後ろから声が聞こえてきた。後ろを振り向くと、薄く灰色がかった長髪の持ち主の男性がこちらに来ていた。
「どれ。私が起こしてあげましょうか。」
そう言い、その男性は木の根元に寄って来ると、右手を広げ、桜の木をビンタするかのように叩いた。
その割には、物凄い衝撃で、上で寝ていた男の子は衝撃によって下に落ちてきた。
「……いってぇ……。何だよいきなり。天変地異でも起きたのかよ……。」
「起きたのは君の方ですよ、銀時。」
「………げ。」
寝ていた少年、銀時は気まずそうな顔をすると、男性にげんこつを喰らわされた。
「全く……。さ、授業を始めますよ。銀時。」
その男性、吉田松陽は、にっこりと笑顔を浮かべた。
- 第26話 赤と銀色 であります ( No.30 )
- 日時: 2018/12/15 23:21
- 名前: 若大将 (ID: cbnYew9V)
ある一室。
そこには、数十人の子供が机の前に座っていた。先程の長髪の子供と、紫がかった髪をした子供もだ。
その前には、吉田松陽がある書物を手に持って、立ちながらその内容を読んでいた。そして、全員その書物を机の上に広げて、それをじっくりと見ていた。ある一人を除いて。
「なあ、あいつどうしたんだ?」
「先生が言うには、木の上で寝ていたら、そのまま落ちて、それで気絶してるんだってさ。」
ある2人の子供は、部屋の隅で、頭からたんこぶを出して白目を向いている銀髪の子供の方を見た。
「安心して下さい。銀時ならすぐ目覚めますよ。」
松陽はにっこりと彼らに向かってそう言った。
実際の所、彼によって喰らわされたげんこつのせいなのだが。
「皆さん。皆さんには、『道』というものがありますか?」
一同はきょとんとした。
それに対し、松陽はフフッと微かに笑った。
「確かに、ただ『道』と言われただけでは分かりませんよね。ですが、それは君達がこれから大人になる時に、とても大切にしなければならないことなのです。
『道』というのは、分かりやすく言うならば……そうですね……、ある目標に辿り着く為にある橋のようなものです。君達はこの先、この松下村塾を出て、自立して、大人になります。そして、己の人生を生きる為に、何かしらの目標を立てます。そして、それを達成する為に行動する。
当たり前のように聞こえるかもしれませんが、私が大事にしてほしいのは、どんなことがあっても、その『道』を踏み外す、後ろを振り向くことをしないことです。
これから先、とても辛いことがあるかもしれません。人間は挫折からは逃れられない生物ですからね。しかし、それでも自分が目指す目標へと辿り着く。地を這ってでも辿り着く。絶対に後ろを振り向かない。踏み外さない。
私も当然、踏み外しそうになったことがあります。ですが……、『君達を立派に育て上げる』という私の目標の為に、その『道』を踏み外さないようにこらえたのです。是非、君達もそうなって欲しい。自分の大義を見失わないで下さい。」
笑顔で松陽は言い終わると、書物を閉じ、懐に入れると、そろそろ昼の時間だ、と言い、部屋を出ていった。
いつから目が覚めていたのだろうか、銀時もその話を聞いていた。
「………訳分かんねぇ……。」
興味無さげな感じで呟くと、また眠りについた。
そして、現在……。
「……教えですか………。貴方にとって、その教えを説いてくれた先生、という人が一番大事なものなのですか……。」
「………まあな。」
「なら、どうして!?どうして天人を憎まない!?奴等は私達にとって大事なものを根こそぎ踏みにじったのですよ!?」
久坂は腕の力を強くした。それと同時に、銀時の左手からさらに血が出てきた。だが、銀時は決して刀を離そうとしなかった。
「……松陽。あん時は意味分かんなかったけど、今ではよぉく理解出来るぜ……。過去を振り向くな。諦めるな。そう言いたかったんだろ?だったらよぉ、回りくどいように言わねぇで、俺みたいな馬鹿にでも分かるように、そう言えばよかったのによぉ。」
銀時はフッと笑うと、久坂の足元を右足で蹴った。久坂がバランスを崩した隙に、銀時は落ちていた木刀を右手で握り締めた。
「おのれ………!」
「久坂。てめぇはつまんねぇ男だよ。いつまでも過去のしがらみに捕らわれやがって…。随分ねちっこい性格だな。そんなんじゃ女にモテねぇぞ?」
左手で鼻をほじりながら銀時はそう言うと、いつの間にか、久坂が自分の背後に回っていたことに瞬時に気付いた。
とっさに木刀でガードしたが、とんでもない位力強く、押し出されそうな感じだった。
「ねちっこい!?ふざけるな!!目の前で家族全員皆殺しにされたことを忘れろとでも言うのか!?やはり、彼の言っていた通りだ!!『銀色の鬼がいつかお前の行く手を阻む。』と彼は言った!!やはりお前はこの場で斬り捨てなければならない!!坂田銀時ィィ!!」
完全に怒り狂った久坂は、とんでもないスピードで刀を振り、銀時を斬ろうとした。
「大義一つないお前なんぞに、私の目標を邪魔されてたまるかぁぁぁぁ!!!」
刀を銀時の心臓に一突きしようとした瞬間、銀時は木刀を横に振った。それと同時に、ガキィンという音がした。
「………!!!」
久坂の刀の刃が、宙を舞った。
「私の刀が…………!!」
「……もうてめぇに、人は斬らせねぇ。これ以上、てめぇに赤色は出させねぇ。
今度は………、てめぇが赤色を出す番だ。」
そう言い終わると同時に、銀時が折った刃が地面に突き刺さった。
「……刀なんぞ無くとも、『赤』を出すことなど容易いのですよぉ!!」
久坂は、銀時から離れて、着物の懐から無数の刃物を銀時に投げ付けた。
しかし、銀時は動じることなく、全て木刀で撃ち落とし、どんどん久坂の方へと歩いて来た。
「言っただろ?もうてめぇに、赤色は出させねぇって。」
「おのれぇ!!なら!!」
今度は、久坂の着物の裾から、鋭い熊手のような物が出て来た。
「これでお前の顔を切り裂く!!」
猛スピードで久坂は銀時の方へと向かって来ると、銀時は微塵も動じることなく、久坂の顔面を木刀で叩き突けた。
「ぐほぁ……!!」
久坂は吹っ飛び、柱に背中を強打した。
「何だ。お前の『赤』、結構綺麗な色してんじゃねぇか。」
「げほぉ…ごほっ…!!」
「久坂。さっき俺に、大義一つない、っつったよな?……ちゃんと俺にもあるよ。
『この世界を守り続ける』っつう、あん時から何にも変わっちゃいねぇ俺の大義。その為の『道』を俺は今歩んでいる。過去に何があろうと、絶対に振り向かねぇ。そんな物なんぞに、俺の目標の邪魔はさせねぇ!俺は、前だけを見続ける!!」
銀時は久坂の前に立つと、木刀を高く上げた。
「後ろばかり振り向いてるてめぇなんぞに、俺の行く手の邪魔はさせねぇぇぇぇぇ!!!」
高く上げた木刀を久坂の顔面にまた叩き突けた。
久坂は壁に激突し、そこから砂埃のような物が立ち込めた。
銀時は息を少し荒くしながら、久坂の方へと向かった。
そこには、壁にめり込み、頭から血を流している久坂の姿があった。
「……気絶してるだけか……。久坂。これを機に、お前も前を見ながら人生を生きようや。後ろばかり見てたって、つまんねぇだろ?」
そう言い残し、銀時はこの場を去った。
ある場所で、一つの人影が、ある装置を操作していた。
「……このまま行けば、やっと願いが叶う……!」
「いいえ、叶いませんよ。」
後ろから声が聞こえてきた。振り向いてみると、誰かがこちらに向かってるくのが分かった。
「だ、誰だ!?」
「……やっぱり。信じたくはありませんでしたけど、全ての黒幕は貴方だったんですね。入江十二さん。」
冬樹は装置を操作していた男、かつ、今回の依頼人である、入江十二の方へと向かって、立ち止まった。
- 第27話 終戦 であります ( No.31 )
- 日時: 2018/12/22 00:03
- 名前: 若大将 (ID: cbnYew9V)
「……………。」
「最初から真選組にスパイなんていなかった。
貴方がここにいることが何よりの証拠ですけど、真選組でも銀さんの知り合いでもない貴方がどうして『白夜叉』を知っているのか。百三さんから聞いたとしても、入隊してから一つも連絡を取っていない貴方がどうして知っているのか。
これらから言えることはただ一つ。貴方が攘夷浪士だということです。」
しばらく沈黙が続いた。
「……まあ、確かに私は久坂一派ですけど、真選組にいない私がどうやって内通するのですか?まさか、勝手な憶測じゃないですよね?」
すると、冬樹はポケットからある物を取り出した。
「土方さんから頂いた物です。これが百三さんの隊服についていたみたいです。そして、これから貴方の指紋が検出されました。」
取り出したのは、チャック付ポリ袋。その中には、超小型盗聴機が入っていた。
「これで真選組のやり取りを聞いていたんですね?もう言い逃れは出来ませんよ。」
「……………はぁ。中学生にしては、かなりの推理力だね。完敗だよ。」
十二はあの装置の電源盤と思われる物から離れて、冬樹の方へと向かってきた。
危険だ。
そう感じ取ったのか、冬樹は後退りした。
「じゃあ、私がわざわざ万事屋に依頼してきたのは……?」
「……疑いの目を完全に真選組に向けさせる為…。」
「正解だよ。君、将来探偵にでもなったら?」
笑みを浮かべて、十二は冬樹の前で立ち止まった。
「……じゃあ、百三さんを内通者に仕立てたのも……!」
「そう、私だよ。」
「どうしてなんですか?実の弟を罠にはめるなんて……!」
「……あいつは……あいつは、この世界を受け入れたんだよ……。他の誰よりも、私よりも天人のことを恨んでいたはずなのに……!
それなのに、あいつはあの時……!」
今から半年前……。
「兄貴。俺、真選組に入隊するよ。」
「……え?」
「俺、分かったんだよ。いつまでも過去を引きずってたら駄目なんだって。ちゃんと前を見て生きていかなきゃいけないんだって。
もうあんな事が増えないように、俺はこの世界を守ることにしたよ。」
「……ああ、そうか……。」
「ふざけてると思いませんか?何がこの世界を守るだ。天人によって腐敗したこんな世界を守るだと!?冗談じゃない!!
いささか失望したよ。だったら…………、これからは私のいい道具として活躍してもらおうと思ってね……。」
十二の目には一切の光がなかった。よほど自分にとって、百三の事が許せなかったのだろう。
「……でも君、ここまで嗅ぎ付けたということは……、もう分かってるよね?」
十二は刀を取り出し、冬樹の首元に刃を近付けた。
「この計画を台無しにする訳にはいかないんだよ。悪いけど、消えてもらうね。」
しかし、冬樹は冷や汗一つかかず、表情を一切変えなかった。
「十二さん。失望したのは僕の方です。いつまでも過去を引きずって、前を見ようとしない貴方に、僕は失望しましたよ。」
その発言に対し、十二は顔を歪めた。
「百三さんは辛いことがあっても、前を見て生きようと心掛けたんですよ。それなのに貴方は、百三さんの未来を潰して、自分の勝手な都合だけで百三さんの邪魔をしたんですよ!
そんな人、絶対に許す訳にはいかない!」
「知ったような口で!!お前に何が分かる!?」
怒り狂った十二は刀を振り上げ、冬樹に斬りかかろうとした。
と、突然爆発音が聞こえてきた。
「な、何だ!?」
爆発音が聞こえた方へ顔を向けると、そこから、ある影がこちらに向かってくるのが分かった。
「冬樹。後は俺達に任せろ。ここまでよく耐えたな。貴様にも、戦士としての素質があるようだな。」
「伍長……。どうして……。」
そこには、バズーカを持ったギロロの姿があった。さらに、その後ろには、いつ服を着たのか、真選組の姿があった。
「どうして?決まってるだろ。この世界の平和を守るのが、真選組の役目。あんな怪我でへこたれていては、務まらん。」
「幕府の犬風情が……。調子に乗るなよ。」
十二の後ろには、数十人の浪士が皆、刀を持ってこちらを睨んでいた。
「さぁて、ギロロ殿。作戦の方はどうする?」
何故か一人だけ、パンツ一丁のまま、隊服の上着を着ている近藤がギロロにそう尋ねた。
小声でギロロは、ちゃんと服着ろ、とツッコんだが、笑みを浮かべて、
「フッ。作戦?悪いが、今において、作戦など必要ないな。」
「じゃあ、どうするつもりなんだ?」
土方がタバコの煙を吐き、ギロロに尋ねた。
すると、ギロロはバズーカから、機関銃へと持ち変えると、銃口を十二達に向けてこう言った。
「……ただ目前の敵を一掃しろ!!一人たりとも逃がすなぁーーー!!」
「おぉーーーー!!!!」
隊士達の叫び声が響いたと同時に、ギロロ達は十二達に向かって走り出した。
「ただの犬っころがぁぁぁぁ!!!」
それに対抗するように、十二ら久坂一派も一斉に走り出した。
「冬樹!今のうちに電源を切れ!」
「分かったよ伍長!」
言われる通り、冬樹は電源盤に向かおうとしたが、その目の前に、浪士が数人立ちはだかった。
「そう簡単に通すか、ぶほぉ!!」
言い終わる前に、浪士の顔面に、木刀がぶつかってきた。
他の浪士も何事だと思う前に、誰かに後ろから殴られたのか、その場に倒れ込んだ。
「何とか間に合いましたね。」
「にしてもお前、結構危なっかしい野郎だな。」
「待たせたであります!冬樹殿!」
銀時、新八、ケロロが何とか間に合ったみたいだ。
「軍曹!銀さん!」
「冬樹君、後は僕達に任せて、早く電源盤に!」
「新八さん、ありがとうございます!」
言われる通り、冬樹はケロロと共に、電源盤の方へと向かった。
「砲撃隊、用意!」
一方、真選組の方では、近藤が指示を出していた。近藤の後ろには、バズーカを構えた隊士達がいた。
「局長、準備完了です!」
「放てぇぇぇ!!」
近藤の合図と共に、バズーカが一斉射撃された。
「お、おい!バズーカだ!逃げろぉぉ!!」
恐れをなしたのか、浪士達はその場から逃げようとしたが、生憎間に合わず、爆発の餌食となった。
「ギロロ殿考案の『砲撃隊』、ここまで効果を成すとは思わなかったよ!流石だよ!」
近藤は腕を組み、そう言った。
「お前達!数で怯むな!進め!」
ギロロは隊士達にそう言ったが、ギロロの後ろに、浪士が刀を振り上げいたのに、ギロロは気付いていなかった。
「覚悟ぉぉ!」
斬ろうとしたが、その前に、一つの斬撃が飛んできて、その浪士は倒れ込んだ。
「戦うのは、拙者の役目でもあるでござる。助太刀致す!」
「ドロロ……。
何でだ。俺はお前達と縁を切ろうとしたんだぞ……。それなのに何で俺を助けようとする……?」
「……友達を助けるのに、理由など無いでござるよ、ギロロ殿。」
そう言い、ドロロはギロロに向けて笑顔を見せた。
「友達……か。」
ギロロは少し下を向き、フッと笑った。
「なら、背中は預けたぞ。ドロロ。」
「同じく。」
そう言い、ギロロとドロロは浪士達に向かった。
「あった!あれが電源盤だよ!」
「ゲロォォ!あと2分しかないであります!」
夜明けまであと2分。急がなくては、ウイルスが発射されてしまう。
「もう少しで辿り着くよ!」
「……ゲロ?」
あと少しで辿り着くと思った矢先、ケロロの頭を誰かが掴んだ。
「お前らなんかに……お前らなんかに……!」
それは、十二だった。
「軍曹!!」
「冬樹殿!早く行くであります!!この、離すであります!」
「お前らなんかに……邪魔されてたまるかぁぁぁぁ!!」
そう叫び、十二はケロロを投げ付けた。
「ゲロォォォォォォ!!」
飛んでいった方向は、丁度電源盤。あの青いレバーを下げれば、電源が落ちるのだが、生憎その隣にある、赤いボタンへとケロロはぶつかった。
「ハハハ……!!私達の勝利だぁぁ!!」
すると、電源盤の横に付いていた、ウイルス発射までのタイマーが、とんでもないスピードで時間が減っていくのが分かった。
「クソッ!!あの野郎!!」
「ハハハ!!久坂さん、私達の勝ちです!!いよいよ、天人がいない世界が再び始まるのです!!再び、侍の国が始まるのです!!
残念ですねぇ。あの赤いボタンを押したからには、もう止める事なんて出来ないんですから!!久坂一派の完全勝利だぁぁぁぁぁ!!」
そう言い、十二は横たわったケロロの頭を再び掴み、外へと放り投げた。
「軍曹!!」
「ゲロォォォォ!!……って、あり?」
完全に皆、落ちたと思っていた。ケロロ自身もそう思っていた。しかし、ケロロは宙に、いや、正式には、宙に浮いている何かによって、落ちずに済んだのだ。
「こ……これって……。」
「………おじさま……。」
「モア殿!?」
「モアちゃん!!」
モアはそっとケロロを地面に下ろすと、
「…誰です?…おじさまをいじめたのは誰です…?」
すると、モアから光が生じた。
一瞬にして、モアの髪は白くなり、服装も変わっていた。そして、宙に浮かんだ。
「え、えぇぇぇぇぇ!?」
「おい!!どういうことだよ!?何であいつあんな風になってんだよ!!?」
ビルから見ていた銀時と新八は驚きを隠せなかった。
「これはマズいでござる!!皆、早くビルから離れるでござる!!」
「悪いことは言わん!!早く離れろ!!」
ギロロとドロロは顔を青くして、皆に早く離れるように促した。
そして、モアがネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング久坂砲の頭上で、動きを止めると、片方には隕石のような、もう片方には三日月のようなものが付いた物、ルシファースピアを両手で掴み、
「何者であろうと、おじさまをいじめる人は、まとめて吹き飛ばします!!」
「ちょっと待つでありますモア殿!!これじゃ、ここにいる全員が吹き飛」
「アンゴル族究極奥義『ハルマゲドン』!!十万分の一!!!」
ケロロの声など届くはずもなく、モアはルシファースピアを久坂砲へと叩き突けた。
その瞬間、廃ビル一面を、白い光が包み込み、大爆発が生じた。
それっきり全員何も分からなくなってしまった。