二次創作小説(新・総合)
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- ケロロ軍曹VS銀魂 次元を超えたコラボ篇 であります
- 日時: 2020/03/21 16:15
- 名前: 若大将 (ID: pakyHNO3)
ケロロ軍曹のキャラ達がなんやかんやで銀魂の世界に飛ばされてしまう物語です。
毎週土曜日と日曜日の間に2話か3話ずつアップする予定です。ですが、諸事情により、1ヶ月程空く場合があるかもしれないので、そこの所はご了承下さい。
注(キャラ崩壊、捏造等か若干あるかもしれません。)
〈大長篇〉
『真選組の赤い悪魔篇』>>17-33
- 第6話 女の喧嘩ほど怖い物はない であります ( No.7 )
- 日時: 2018/07/01 21:19
- 名前: 若大将 (ID: gMmcUgGG)
「銀ちゃん、夏美1人で行かせて大丈夫アルか?」
「確かに、ちょっと心配だな。ゆっくりしといてとは言われたけど、年頃の女がこんな夜に出歩くとな……。神楽、ちょっと様子見に行ってくれ。」
「おうよ!もし夏美に手出す変態がいたら、私がボコボコにしてやるヨ!定春、行くアルよ!」
そう言うと、神楽は定春と共に万事屋を出ていった。
「(……何もなきゃ、いいんだけどな……。)」
新八は、家に着くと、勢いよく扉を開けた。
「姉上!」
「あら新ちゃん。おかえりなさい。」
そこには、にこやかに料理をしている新八の姉・志村妙がいた。
「丁度よかったわ。今夕食を作ってるの。よかったら、新ちゃんもどう?」
「い、いえ……僕は銀さんの所で食べて来ました……。」
お妙の横には、得体の知れないこの世の物とは思えないドス黒い物質が皿の上に。お妙は、料理の腕が壊滅的で、何を作るにしても、暗黒物質と呼ばれる異物になってしまう。その上、本人はその事を全く自覚していない。だから、新八は嘘をつかざるを得ないのだ。こんな物食べたら、間違いなくあの世行きになってしまう。
「ん?ちょっと待って下さい。新ちゃんも、って……他にも誰かいるんですか?」
「あ、そうそう!電話で言ってた天人と女の子なんだけど、さっき目が覚めたのよ。それで、その天人が、お腹すいたって言ったから、私がご飯を食べさせてあげて」
お妙が言い終わらないうちに、新八は猛スピードで走っていった。
「ちょ、ちょっと!どうしたの!?」
「(まずいまずいまずい!頼む!まだ食べていないことを祈る!)」
新八は、ある一室にたどり着くと、勢いよく襖を開けた。そこには、横になって苦しんでいる天人1匹と、それを心配している女の子1人がいた。
「タマちゃん!しっかりして!」
「タ……タマァ……。」
「(遅かったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!)」
どうやら、電話の天人と女の子は、タママ二等兵と西澤桃華のことだったようだ。
「大丈夫ですか!?しっかり!」
「あ。あなたは……?」
「この家の者です!まさか、あれを食べたんですか!?」
机の上には、大量のダークマターが並べられていた。
「いえ…、私は食べていません。だけど、タマちゃんが……。」
「タマァ……、息苦しいですぅ……。」
「立てますか!?トイレに行って吐き出しましょう!」
新八は、タママをトイレに連れていった。
「あの……、タマちゃんは大丈夫なんでしょうか?」
「……多分。」
その瞬間、突然桃華が新八に襲い掛かった。新八は何が起きたのかよく分からず、そのまま床に倒れてた。
「ちょっ、ちょっと!一体どうしたんですか!?」
そう言うと、新八は桃華に胸ぐらを掴まれた。
「多分ってどーゆーことだ!?てめぇ!このままタマ公が助からなかったら、ただじゃおかねぇからな!」
「(えぇぇ!どうしちゃったの!?この子さっきと全く様子が違うんですけどぉぉぉぉ!)」
実は、桃華は普段はおっとりしているけど、キレるとバイオレンスな「裏桃華」へと豹変してしまうのだ。いわゆる二重人格なのである。
「お、落ち着いて下さい!心配なのは分かりますけど!」
「けど何なんだ!?あぁ!?」
「(怖すぎるぅぅ!)」
「新ちゃん、どうしたの?」
お妙が気になって、様子を見にやって来た。
「あ、姉上……。(まずい!今来られたら……!)」
お妙が部屋を見たら、急に動きが止まった。そして、
「おい。どーゆーつもりか知らねぇけど、うちの
弟に何してんだコラ?」
「んだと?この俺とやんのか?」
「上等だよ。まだ年頃のガキが随分いい度胸しやがって。弟に殴りかかろうとしたんだ。それ位の覚悟はできてんだろうな?」
「こっちの台詞だよ。よくもタマ公にあんな物食わせてくれたな!」
志村家は完全に修羅場となってしまった。
新八はただお妙と桃華の争いをただ呆然と見ているしか、できることがなかった。もし止めに入ったら、あの2人に間違いなく殺される。一体どうすれば……。
「ふぅーー。吐き出したら何かすっきりしたですぅ。」
トイレの方からタママの声が聞こえた。どうやらダークマターを吐き出して、何とか助かったみたいだ。
「(ふぅ。何とか助かったみたいだ。よかったよかった、じゃねぇぇぇぇ!今来られたらヤバい!)」
しかし、新八の願いは届かず、タママはその修羅場を目撃してしまった。
「タマァ!?ど、どうしたんですかぁ!?一体何があったんですかぁ!」
状況が全く理解できないタママ。と、その前に一匹のハエが横切り、タママの顔に止まった。
と、その瞬間、
「うだるぞぬっしゃーーーーー!!!!タママインパクトーーーーーーー!!!」
タママの口から、光線が出てきた。それは、他の3人を巻き込み、天井を破って空の彼方へと消えていった。
何が起きたのか全く分からなかった。
巻き込まれたお妙、桃華、新八はアフロになって、倒れていた。
「い、一体何が………。」
「……ん?タマァ!な、何があったんですかぁ!?モモッチ!しっかりするですぅ!」
お前がやったんだろ。
「う、うん……、あれ?タマちゃん?もう大丈夫なの?」
「吐き出したら、すっかり元気になったですぅ!」
「よかった!私、タマちゃんがずっとあのままだったら、どうしようかと……!」
桃華は泣きながら、タママに抱き付いた。
「モモッチ、心配かけてごめんですぅ。」
「それはそうと、お妙さん。先程はごめんなさい。あのようなことを言ってしまって……。」
「いいのよ。私の方こそごめんね。」
何はともあれ、仲直りできてよかった。
「すいません。お名前の方は?あ、僕は志村新八です。こちらが、僕の姉の志村妙です。」
「よろしくね。」
「僕はタママ!タママ二等兵ですぅ!」
「私は西澤桃華です。よろしくお願いいたします。」
「あの、もしかしたら、あなた達は、ケロロさん達と一緒に、異次元から来た人達ですか?」
「軍曹さんを知ってるんですかぁ!?」
「え、はい。あと、冬樹くんと夏美ちゃんとトキキ君も……。」
「冬樹くんを知ってるんですね!?よかった……。」
「今、万事屋でケロロさん達と一緒にいます。もしよかったら、今から一緒に行きませんか?」
「はい、ぜひ!」
「軍曹さんが無事でよかったですぅ!(あの女はいないみたいですぅ!ざまあみろですぅ!)」
「あの、新ちゃん。全然話が伝わって来ないんだけど……。」
「実はですね………。」
新八はお妙に今まであったことを全て話した。
「…………つまり、タママくんと桃華ちゃんも、その人達と一緒にここに来たってこと……?」
「そういうことです。」
「なかなか面白そうじゃない。私、あの子達気に入ったわ。しばらくここでかくまってあげましょう。」
「か、かくまう!?ここでですか!?」
「あら、何かまずかった?」
「(まずいどころの問題じゃねぇよ!食事どうするんだよ!まさか、またあれを食べさせるつもりなのかよ!)」
「新ちゃん。じゃあこのまま野放しにしておくの?」
「い、いや……。そういう訳じゃ……。(そうだ!僕が作ればいいんだ!)」
「あ、あのーー。いいですけど……、その代わり、料理は僕に任せて下さい!」
「えっ?どうして?……まさか……!」
「ち、違うんです!ただ、もう僕も16歳ですから、ある程度の料理はできといた方がいいのかなって思って……。」
「ふふっ。何だ。確かにそうかもね。いいわよ。」
「(ふぅーー。何とか納得させたぞ……。)」
「卵焼きなら得意だから、いつか教えてあげるわ。」
「い、いえ!大丈夫ですよ!卵焼きはもう作れるんで!」
新八はそう言い首を横に振ると、タママから、新八を呼ぶ声が玄関から聞こえた。
「パッチー!軍曹さんは今どこにいるんですかぁ?」
「(僕のこと、パッチーって呼んでるんだ……。)ちょっと待ってて、支度が終わったら案内します!」
新八は、荷支度を整えて、玄関の方へと向かった。
「さあ、行きましょう。」
「わーい!軍曹さんに会えるですぅ!」
「冬樹くん……。(よっしゃー!このまま冬樹くんと一緒に……!)」
「気をつけてねー!」
新八達が万事屋の所へ行った後、お妙はあることに気づいた。
………天井どうしよう?
お妙が見つめる先には、タママによって壊され、穴から綺麗な夜空が広がっている天井があった。
- 第7話 夜道は危険だから一人で出歩くな であります ( No.8 )
- 日時: 2018/08/06 13:16
- 名前: 若大将 (ID: gMmcUgGG)
志村家で、大騒動が起こっていた間、夏美は、食品がびっしりと詰まったビニール袋を重そうに持ちながらスーパーから出てきた。
「ちょっと買いすぎちゃったかなぁ。」
時刻は、7時半を過ぎており、普通ならば、もう夕食を済ましていた時間帯だった。
「ちょっと急がないと。」
夏美が、少し歩くスピードを早めたと同時に、すぐ近くから爆発音が聞こえてきた。
「えぇぇ!ちょっと!一体何なのよ!」
夏美は驚いて、腰を抜かしてしまった。近くにいた住民たちもびっくりし………………ていなかった。
皆、何事もなかったかのようにその爆発には見向きもしていなかった。
不思議に思った夏美は、そこにいた1人の住民に声をかけた。
「あの……、すいません。」
「ん?どうしたんだ、お嬢ちゃん?」
「さっきの爆発って一体……。」
「あぁ。あれね。真選組の人たちのだよ。」
「驚かなかったんですか?あんな凄い爆発音だったのに。」
「いやね、もう日常茶飯事だから、慣れちまったよ。」
「に、日常茶飯事……なんですか……。」
言葉も出なかった。
こんなことが毎日のように?私達……、とんでもないところに来ちゃったんじゃ……。
夏美は、その住民に礼をして、その場を去ると、今度は突然、1台のパトカーが曲がり角から飛び出して来た。
「キャア!」
夏美は、尻餅をついてしまった。そのせいか、ビニール袋から食品が出て来てしまった。
「あーあー、土方さん何やってんですか。善良な市民に怪我させちまったじゃないですかぃ。」
「お前の運転が荒いからだろーが。俺何にもしてねぇよ。」
パトカーから、2人の男が出てきた。1人は、タバコを口に咥えたまま、瞳孔が開きっぱなしの目でこちらを見ており、もう1人は、亜麻色の髪の若い爽やかなマスクの男だった。
「怪我はねぇか?」
瞳孔が開いた目で夏美を見ながら、男は手を差し出した。彼こそ、武装警察『真選組』の、「鬼の副長」と恐れられている土方十四郎である。
「土方さん、まず謝罪するのが先じゃないですかぃ?」
土方の横で、嫌みっぽく話しかける彼こそ、『真選組』一番隊隊長である、沖田総悟だ。
「あ……はい……、ありがとうございます。」
夏美は土方の手を握り、立ち上がると、散らばった食品を、ビニール袋に戻した。
「悪いことしたな。何しろ、急いでたもんで。」
「うわ、出たよ。そうやってすぐ言い訳して、責任逃れする奴。だから土方は土方なんだよ。」
「姉ちゃん。怪我させた代償に、こいつのこと好きなだけ訴えてこい。」
「元はといえば、あんたが急げ急げっつうから、こっちはその通りに急いだだけでしょーが。どう考えても責任はあんたにある断崖から落ちて◯ね土方。」
「確かに急げとは言ったが、なにも200km以上も出して急げとは言ってねーよ。お前の運転の荒さが原因だ瓦礫の下敷きになって◯ね沖田。」
「◯ね土方。」
「◯ね沖田。」
夏美は、2人のいがみ合いをただ呆然と見ているだけしかできなかった。1回だけアニメで、この2人のいがみ合いを見たことがあり、まんまだなと夏美は思っていた。
ようやく、2人の口喧嘩が終わると、土方は、1枚の紙を出してきた。それには、指名手配犯の顔写真が載せられていた。
「姉ちゃん。近くでこの男を見なかったか?」
整った顔をしており、何より特徴的なのは、綺麗な黒髪のロングヘアー。とてもと言っていいほど、指名手配犯の顔とは思えない顔立ちだった。
「い、いえ……見てません。」
「そうか。ありがとな。おい総悟。まだ近くにいるかもしれねぇ。手当たり次第探すぞ。」
「あいよー。絶対見つけてやるぜ、桂。」
そう言うと、2人はパトカーに乗り込み、その指名手配犯を探すために去っていった。
「ほんと、今日は色々なことがあって疲れたわ。早く万事屋に戻ってゆっくり休みましょ。」
そう言い、夏美は荷物を持ち、万事屋へと戻ろうとすると、後ろから誰かの気配を感じた。
こっちを見ている。
振り向かなくても分かった。夏美の肌に鳥肌がたった。
逃げなきゃ。
そう思ってはいるが、足がすくんで言うことを聞いてくれない。それどころか、後ろから足音が近付いてきている。
1人……?いや、3人いる!
夏美はもう恐怖でどうすることも出来なかった。後ろから夏美に向かって手が伸びてきた。手が夏美の肩に触れようとしたその時、
「夏美に何しようとしてんだゴラァァァァァ!!」
突然、何者かが後ろにいる者にドロップキックをくらわせた。それは勢いよく壁に吹っ飛ばされていった。
「か、神楽ちゃん!?」
「夏美!無事アルか!?何もされてないアルか?」
心配で様子を見に来た神楽が助けに来たようだ。
「うん、私は大丈夫よ。それより……」
「おいコラ。夏美に手出すってことは、このかぶき町の女王・神楽様の怒りを買うことと同じなんだぞ。それなりの覚悟はできてんだろーなぁ!」
神楽は、恐ろしい形相で3つの人影の方へと近付いていった。そして、殴りかかろうとしたその時、
「待て待てリーダー!俺だ!」
「えっ?……ってヅラ!お前何やってるアルか!?」
「ヅラじゃない、桂だ。いきなりドロップキックするなんて、俺が一体何をしたというんだ?」
「えっ……あなたって……!あの手配書の!」
その男は、先程夏美が見た手配書に載っていた写真の男とほぼ一緒だった。
「俺はこの女子に礼をしようとしただけだ。それなのにリーダーがいきなり……!」
「夏美、ヅラに何かしてあげたアルか?」
「え……特に何も……。」
「先程は真選組を遠のかせてくれてありがとう。奴らが周辺にいたから身動きがとれなかったんだ。たが、彼女が見事に真選組を遠のかせてくれた。その礼をしようとしたのだ。」
「あ……。そうだったんですか!私、てっきり何かされるのかと……。」
「誤解させるようなことしちゃってごめんね、夏美ちゃん。」
聞き覚えのある声がした。声のする方へと体を向けると、そこには623がいた。
「623さん!無事だったんですね!」
「夏美ちゃんこそ。無事でよかったよ。」
「昼間、路地裏を歩いていたら、そこに彼が倒れていたのだ。しばらくの間、俺が世話を見ようと思って、ついてこさせたのだ。だが、無事に仲間が見つかって何よりだ。あ、あと自己紹介が遅れたな。俺は桂。桂小太郎だ。」
「それより夏美!お腹減ったアルー!早く万事屋に戻るアルよ!」
「そうだったね。今頃、ボケガエルや銀さんもお腹すいてると思うし。」
「お前たち、万事屋に向かう途中なのか?」
「は、はい。そうですけど。」
「丁度良かった。俺も銀時に用がある。共に行っても構わぬか?」
「いいですけど……銀さんとお知り合いですか?」
「一言で言うと………仲間だ。」
その仲間というのが友達という意味なのか、夏美にはよく分からなかった。
「ほら、お前たちも行くぞ。」
「……一ついいですか?」
夏美は桂に尋ねた。
「………その白い奴、何ですか?」
夏美は、桂の後ろにいる白い変な生物を指差した。
「白い奴じゃない、エリザベスだ。」
「エリザベス………ですか……。」
エリザベスは、プラカードを取り出した。そこには、「夏美さん、よろしく」と書かれていた。
「どうだ?結構可愛いだろ??」
「そ……そ、そうですねぇ……。(何か、謎な部分が多すぎる……。リアクションしづらい……。)」
「おーい!早くするアルーー!」
神楽が少し離れた所で手を振っている。
「今行くわー!」
夏美ちゃん、色々あったけど、623さんと再会できてよかったね。……ですが私、1つ気になることが……。
「今思ったアルけど……、あの623って奴とヅラの声、めちゃくちゃそっくりアル。」
「それ、私もそう思ったわ。」
- 第8話 食事は大勢で食べる方が美味しい であります ( No.9 )
- 日時: 2018/09/09 23:27
- 名前: 若大将 (ID: gMmcUgGG)
さて、タママ二等兵、桃華ちゃん、623さんは、揃って万事屋へと向かっていたのですが……。
「あっ!ナッチーと623さんもいるですぅ!」
「あら、タママ!桃華ちゃんも無事だったのね!」
「夏美さんもご無事で何よりです。(やっと冬樹君に会えるぜぇ!)」
「あれ、桂さんじゃないですか。何か用ですか?」
「おや、新八君。丁度銀時に用があるの」
桂が言い終わらないうちに、万事屋からものすごい音がした。何事かと思い、一同は万事屋へと駆け込むと、そこには、とんでもない光景が広がっていた。
「いだだだだだだだ!離すでありますトキキ!」
「駄目だよトキキ君!軍曹困ってるじゃん!」
「あぁぁぁぁぁぁ!!このガキ、知らねぇ間に俺のイチゴ牛乳全部飲みやがったぁぁぁ!!」
そこには、見るからに、トキキが好き勝手に暴れまわった形跡があり、そこら中がボロボロになっていた。
その光景に、一同はほぼドン引き状態だった。
「てめぇ……、食い物の恨みは恐ろしいってこと、証明してやらぁぁぁぁ!!」
怒りに狂った銀時はそう叫びながら、トキキに向かって木刀を振りかざした。
「ちょっとぉぉぉぉ!何やってんだあんたぁ!!」
新八は銀時を思い切りビンタすると、銀時はソファへと顔から着地した。
「何やってんですかあんたら!ちょっと僕たちがいなくなったからって!」
「ボケガエル!冬樹!準備しといてねって言ったでしょ!」
「ち、違うんだよ姉ちゃん!」
「全部トキキがやったことであります!我輩たち3人は被害者であります!トキキ!謝るであります!」
ケロロはトキキの方へと顔を向けたが、疲れたのか、トキキは寝てしまっていた。
これには、さすがのケロロと銀時も我慢ができなくなり、
「銀時殿、少しこいつに教育というものを……。」
「教えてやらねぇとなぁぁぁぁ!!!」
2人は寝ているトキキに向かって襲い掛かった。
「「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!くたばりやがれぇぇぇぇぇぇ!!!」」
と、その瞬間、新八と夏美がケロロと銀時の前に現れ、
「「大人げないにも程があるだろぉがぁぁぁぁぁ!!!」」
と叫び、2人の顎に強烈な一撃をくらわせた。
2人は勢いよく天井に吹っ飛ばされ、顔だけ天井に突き刺さったまま宙吊りになっていた。
そして、新八と夏美は、何事もなかったかのように、
「「さ、夕飯作りましょうか。」」
と軽い感じで夕飯の準備に取りかかった。
他の一同は、その様子を呆然と見ていた。
何だ、この匂いは……?それに……この音は?
何かの音と匂いが、銀時の意識を戻らせた。目が覚めると、そこは天井裏だった。どうやら突き刺さったままの状態みたいだ。
「んーー!抜けねぇぇぇぇ!」
「あ、銀ちゃん目が覚めたみたいアルよ。」
「あ、軍曹さんも目が覚めたみたいですぅ。」
銀時のすぐ横で、ケロロも何とか抜け出そうともがいている。
そして、何とか抜け出せて、勢いよく床に落ちてきた。
「いてて……。何で誰も助けてくれなかったんでありましょ……?」
「それより、何だよこの食欲そそるこの匂いは……!!」
銀時は鼻の穴を大きくして、その匂いの素を辿った。そこには、テーブルに沢山何かが並べられてちた。
「あ、やっと起きてきたわね。遅いわよ。」
「いやおめぇらが俺らにアッパーくらわせたからだろーが。」
「それよりも、できましたよ。夕飯が。」
「こ……こりは……。」
テーブルの上には、人数分のチャーハンと卵スープとサラダが並べられていた。どうやら、銀時の目を覚まさせた音はチャーハンを炒める音で、匂いはそのチャーハンの匂いだったのだろう。
「おいおいおい。俺は夢でも見てんのか?こんなちゃんとした夕飯……久々だよ……!」
「早く席につくネ!チャーハンが冷めるアル!」
神楽がそう急かすと、銀時とケロロは空いてる席についた。
この料理を見たからなのか、普段は死んだ魚の目をしている銀時の目が、異常な位に輝いていて、神楽は目を充血させながら、よだれを垂らしていた。さらに新八も、鼻息を荒くして、目をこれでもかと言うくらい見開いていた。
「それじゃ、食べましょうか!せーの!」
「「「「「「いただきまーす!!!」」」」」
「ううっ……。うめぇ…。うめぇよぉ……。」
「なみだがどばりまじぇんんん……。」
「何アルか!この味は!?これは神からの祝福なのか!?」
銀時、新八、神楽は涙を流しながら口いっぱいにチャーハンを入れ込んだ。
「何だよこれぇ……。母親が出所したばかりの息子の為に作った味噌汁並にうめぇよぉ……!」
「あんだいずじゅっじょじだんべずがぁぁぁ!(あんたいつ出所したんですかぁぁぁ!)」
泣いているせいか、新八のツッコミも切れが悪く、何を言ってるか分からない。
「泣く位私のチャーハンが美味しいの……?」
3人を見て、夏美は少しキョトンとしている。
「無理もない。俺の知ってる限り、この3人は1ヶ月近く、パンの耳をおかずにして過ごしてきた。」
「パンの耳がおかず!!?」
「何か切なくなってきたですぅ……。」
ケロロは驚きを隠せず、タママは哀れみを感じていた。
生きるために精一杯なんだなぁ、と。
「でもこのチャーハン凄いね!すごくパラパラしてる!」
「そ、そうですかぁ623さん……?」
夏美は623にチャーハンを絶賛されたからなのか、少し顔を赤らめて、照れ臭そうに言った。
「そうなんだよぉ……。家庭のチャーハンあるあるの、ベチャっとした感じが全くねぇんだよぉ……!」
「ごべがまだじょぐびょぐをどどぐんべづよぉ!(これがまた食欲をそそるんですよぉ!)」
「夏美様ぁぁぁぁ!私に清きもう一杯を!」
神楽は夏美に空になったお椀を差し出した。
「そんなかしこまらなくても、お代わりならいっぱいあるからね。好きなだけ食べていいわよ、神楽ちゃん。」
「あ、ありがたき幸せぇぇ!」
「(私って……、何かの神様?)」
「げぷぅ……。」
「5日位は何も食べなくてもいいかも……。」
「満足満足……。」
よほど美味しかったのか、銀時、新八、神楽の腹は、まるで妊娠したかのように膨らんでいた。
「あんだけあったチャーハンを全部食べるなんて……。」
「よほどひもじい思いをされていたんですね……。」
冬樹と桃華は、銀時達の食べるスピードに呆気に取られていたため、ほとんど食べれていなかった。
「それにしても、タママ二等!無事で何よりであります!」
「それはこっちの台詞ですぅ!僕、軍曹さんに何かあったらどうしようかとずっと心配だったんですよぉ!」
「タママ二等……!そんなに我輩のことを……!」
「軍曹さん……!」
「……あ、そういや、モア殿達とは会ったでありますか?」
「えっ……い、いやぁ、会ってないですぅ……。(ぬぅぅぅ!せっかくのいいムードだったのにぃ!よりによってあの女のことを思い出すなんてぇぇぇ!でも、そう聞いてきたということは、誰もあの女の居場所を知らないということですねぇ?これはチャンスですぅ……。知らない間に僕と軍曹さんの仲がよくなって、軍曹さんがあの女のことをどうでもよくなるようにすれば……!グフフフフ……!)」
タママからドス黒いオーラが湧き出ているのを、どうしたの?という顔で一同はタママを見つめていた。
「それより桂さん。銀さんに用があるって言ってましたよね?」
「あぁ?ヅラが俺に用だぁ?」
「ヅラじゃない桂だ。そのことならもう大丈夫だ。今さっき解決した。用は済んだから、俺たちはもう帰るとするよ。」
何か不審に思った銀時は、その答えが早く退散しなければということがすぐに分かった。
「おいヅラ。……てめぇまさか、その用って、俺にタダ飯食わせてもらおうとすることか?」
銀時の推理が当たったのか、桂とエリザベスの動きがピクリと止まった。そして、ゆっくりと顔を銀時の方へと向けると、
「銀時………………ごめんね(*⌒3⌒*)」
そう可愛らしくウインクすると、猛スピードで逃げていった。
「あっ!待ちやがれ!」
銀時は木刀を片手に外に飛び出していった。そして、桂とエリザベスを追い掛けていった。
「何食わぬ顔で人ん家上がり込んで何食わぬ顔で飯食ってんだ!この指名手配犯!」
「実は今、俺も金銭問題で少々な!だか、あのチャーハンなかなか美味だったぞ!銀時、いつかかつての攘夷仲間と共にチャーハンでも作らんか!?」
「あ、もしもし。3丁目に桂小太郎発見しました。至急捕まえて下さい。」
「ちょっと銀時ぃぃぃぃぃ!?」
「あばよ。攘夷浪士かつ食い逃げ犯。」
銀時の背後から、無数のパトカーが走ってきた。
「土方さん、やっと見つけやしたぜぃ!」
「今日こそ年貢の納め時だぁ!!桂!!」
沖田は、バズーカを取り出し桂目掛けて発射した。桂はスレスレで避けると、エリザベスの上に乗っかり、
「さあエリザベス!全力疾走だぁ!」
と叫び、先の方向へと指を差した。
エリザベスは「ラジャー!」と書かれたプラカードを取り出し、全速力で走った。
夜の江戸の町に響き渡るパトカーのサイレンと爆発音。それから逃げるロン毛と謎の生物。江戸の町は、年がら年中賑やかだぜぃ!
「え?何でナレーターさん江戸っ子口調なんであります?」
「いやー、せっかく銀魂が舞台だから、ちょっと私のキャラもそれに合わせてみようかなーなんて!」
- 第9話 仕事はするよりも見つけるのが大変 であります ( No.10 )
- 日時: 2018/08/06 10:19
- 名前: 若大将 (ID: gMmcUgGG)
前話まではなんやかんやで大騒ぎだったけどよぉ、今度はもっと大騒ぎになるかもしれねぇぜぇ!てやんでぃ!
ケ「やっぱり何か違和感があるであります。」
ナ「えっ!?個人的にもこのキャラ結構気に入ってるんですけど!?」
銀「いやそーゆーのいいからさぁ、普通にやってくんない?ナレーターのキャラとかどーでもいいから。」
ナ「えぇぇぇぇぇ!?………ひどい。」
前話から一夜明けて、ケロロ達はある3つの問題に直面していた。
「まだ全員揃ってねぇじゃん!!」
そう、今までタママ、桃華、623の安否は確認できたが、まだ安否が確認できていない者は半分位いる。そして、
「仮に全員揃ったとしても……、」
「安全に帰れるかすごく不安!」
仮に他の5人が揃っても、トキキに帰る気がなければ、ずっと元の世界には戻れない。それに、まだトキキについては、情報が少なすぎる。まだこの状態ですぐに帰るのは、少し危険が伴う。そして、
「お金どーしよー!!」
只今の所持金、ケロロ、冬樹、夏美合わせて171円。こんなはした金でどう過ごせばいいのか。しかし、その問題は意外にも早く解決した。
「働きゃあいいじゃん。」
「働けばお金は稼げるネ。」
その問題の答えは極めて単純なことだった。そう、働けばいい。
「いや確かにそうだけど……、私達まだ中学生ですよ。さすがにまだ雇ってくれる所なんてありませんよ。」
そこへ、タママと桃華が万事屋へ遊びに来た。どうやら、万事屋に居候させてもらうのは、銀時に断られたみたいだった。
「せっかく軍曹さんと2人きりになれるチャンスだったのにーーーー!!」
「あの天パが、食費がこれ以上嵩むのはもうごめんだ、とか言いやがったせいでぇーー!せっかくの冬樹君との2人きりの時間が………。」
そのため、若干テンションは低めである。
「どうしちゃったの2人共……。」
「あ、そうだ。ワンチャンババアの所なら……。よし、お前ら、ついてこい。」
銀時は、何を思い出したのか、皆を外へと連れ出し、『万事屋銀ちゃん』の真下にある、『スナックお登勢』という店へと皆を連れ込んだ。
「おーい。ババアいるかーーー?」
銀時がそう言いながら戸を開けると、そこは飲み屋で、カウンターの向こうの棚には、何十種類もの酒が飾られている。そして、そのカウンターには、老婆がいた。おそらく、あれが銀時が言ってたババアなのだろう。
「何だい?家賃でも払いに来たのかい?」
「そんな訳ねぇだろ。今日はちっと交渉しに来ただけだ。お前ら、入ってこい。」
「……何だいその子供たちと蛙みたいな天人は?」
「蛙じゃないであります!ケロロ軍曹であります!」
「僕はタママ二等兵ですぅ!」
「どうも、日向冬樹です。」
「日向夏美です。」
「に、西澤桃華です。」
5人共、それぞれ自己紹介を終えると、カウンターの奥から人影が2つ出てきた。
「たま、キャサリン。もう掃除は終わったのかい?」
「アンナノニ1分モ使ワスンジャネェヨ!」
「はい。私が1分足らずで全て掃除を終わらせました。キャサリン様は何もしていません。」
「何サラット言ッテクレテンダヨ!」
「キャサリン、あんた買い出し行ってきな。」
ババアこと、このスナックのママのお登勢は、猫耳のついたブサイクなオバサンのキャサリンに、メモ用紙を手渡した。そこには、おびただしい数の品物が書かれていた。
「これ全部買い終わるまで、帰ってくるんじゃないよ。」
「フザケンジャネェヨババア!私ノ金ガ尽キチマウダローガ!」
「だったらあんたお得意の盗みで盗ってくれば?」
「ソノ手ガアッタ!行ッテキマース!」
キャサリンは、勢いよく店から出ていった。
「お登勢様、大丈夫なのですか?本当に盗みかねませんよ?」
「大丈夫だよ。ああ見えてあいつ、結構金持ってるから。大袈裟に言ってただけだよ。」
「そうなのですか?」
見た目は綺麗な女性だけど、実は機械であるたまは、抑揚の無い声で不安そうにお登勢に問いかけた。
「んで、銀時。交渉ってのはどういう交渉だい?家賃の帳消しなんて受け付けないからね。」
お登勢はタバコを吸いながら、銀時のいる前の席に座った。
「いやね、この子達ちっと金銭面がヤバいみたいでさぁ、ここで働かせてくれねぇかなー、っていう交渉なんだけども。」
「お断りだよ。」
「はぁ!?何でだよ!?」
「だってあんた、まずこの子達とその天人2人、どっから集めて来たのよ?まずそこが不思議よ。まずちゃんとした経緯を説明してちょうだい。」
銀時はめんどくさそうな顔をして舌打ちした。だが、説明しなくては雇ってもらえなさそうだから、渋々説明を始めた。
「かくかくしかじか……………ってなわけだ。」
「………にわかには信じられない話だねぇ。その子供の天人はどこにいるのさ?」
「今上で寝てる。昨日馬鹿みたいに騒いだからお疲れモードなんだとよ。」
「そう……まぁ、確かに人手は多い方がいいからねぇ。………分かった。ここでしばらく働きな。」
「ほ、本当にいいんですか!?」
「ただし!条件がある。」
「条件?」
「ここはスナックだ。野郎の従業員は一切受け付けないよ。」
「……ということは、」
「我輩達ここで働けないんでありますかぁ!?」
「えぇぇぇぇぇ!?そんなぁ……。せっかくお金貯めるチャンスだったのにぃ……。残念ですぅ。」
ケロロとタママは残念がっていた。それは冬樹も同じだった。
「じゃあ……僕らどうすれば?」
「……たま、そろそろ帰ってくるんじゃないのかい?」
「そうですね。もうすぐ30分になりますね。」
「帰ってくるって、何がだよ?」
「実はね、昨日店を開こうと思ったら、ソファの上に可愛らしい子が倒れててね。その子、気前も良くて、仕事もできるのよ。もうすぐに気に入ったから、しばらくここで働かせてやることにしたのよ。そうだよ。あの子もあんた達と同じで、別世界から来たみたいなのよ。」
その瞬間、店の戸が開き、外から女の子が入ってきた。
「おー、随分早かったねぇ。」
その女の子は、金髪で、一見ギャルをイメージするような格好だった。もちろん、ケロロ達はその女の子に見覚えがあった。
「モア殿ーーー!」
「モアちゃん!」
「あ!おじさま!皆さん!」
どうやら、モアは『万事屋銀ちゃん』のすぐ下、『スナックお登勢』の所にいたみたいだ。
「モアちゃん!無事だったのね!」
「夏美さんも、冬樹さんも!皆さんご無事で何よりです!てゆーか、平穏無事?」
「何だい、あんたらの知り合いだったのかい。」
「まさかこんなすぐ近くにいたなんてな。」
「いやー、モア殿!無事で良かったでありま」
ケロロが言い終わらないうちに、モアはケロロへと抱き付いてきた。
「ちょっ……モア殿…、力強いでありますよ…。」
「私、おじさまのことが心配で心配で……!おじさまに何かあったらどうしようかと思うと、一睡もできなくて……。てゆーか、睡眠不足?」
「一睡もしないでまで我輩のことを……。ありがとうであります。」
この微笑ましい光景を見て、嫉妬の念を燃やす者が1人……。
「(あの泥棒猫めぇ!言ってること、僕が昨日軍曹さんに言ったこととほぼ同じじゃねぇか!まさかこんなすぐ近くにいるとは……、誤算だったですぅ。あぁ妬ましい……。あぁ羨ましい……。あぁ憎たらしい……!)」
「……昨日見たのよりさらにドス黒くなってるアル。」
「これオーラというより、もうただの闇だな。」
「どんどんドス黒くなってますよ、銀さん。」
万事屋3人は、ケロロとモアの微笑ましいシーンより、タママのドス黒いオーラ、いやタママの闇の方に視線が行ってしまっていた。
「てな訳で、確か……、夏美と桃華とモアの3人はここで働いてもらうからね。あんまり満足する金は出せないけどね。」
「いえいえ。そんなことありません。」
「働かせてくれるだけでも感謝してます。」
「しばらくよろしくお願いします。」
「やめなよ3人共。あたしは堅苦しいのは嫌いなんだよ。もっとリラックスしな。仕事の時は、キャサリンかたまが呼んでくるから、そしたら、しっかり働いてもらうからね。」
「はい!」
「それじゃ、早速だけど……」
いやー、夏美ちゃん達、ちゃんと仕事に就けて良かったですね!しかし、軍曹達はというと………。
「銀時さん、僕たちはどこで働くんですかぁ?」
「どこって……ここしかねぇだろ。」
「ここって……。」
銀時が指差す方向には、戸しかなかった。
「戸しかないでありますよ?」
「緑、おたまじゃくし、アホ毛。お前らはしばらくここ、『万事屋銀ちゃん』で世話になるぜぇ!!」
「「うそぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」」
なんと!まさかの万事屋で働くことになったケロロ軍曹、タママ二等兵、日向冬樹君!これから先、どうなっちゃうの!?何やらとんでもないことが起きそうです…………。
新「ていうか、江戸っ子口調やめたんですね。」
ナ「……どうでもいいみたいです……。」
新「…………。(戸惑い)」
- 第10話 影が薄いのは悪い事ばかりではない であります ( No.11 )
- 日時: 2018/08/06 12:16
- 名前: 若大将 (ID: gMmcUgGG)
ケロロ軍曹達が『万事屋銀ちゃん』で働くことになったその翌日、『万事屋銀ちゃん』はある人の泣き声で響き渡っていた。
「……………………。」
「……………………。」
「……………………。」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁあぁ!!!」
一同が皆黙って、ただひとり泣き叫ぶ男を見ていた。
「ぐすっ……ひぐっ………うわぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁあぁ!!!」
その男は、約1時間前にここに来てから、ずっと泣き叫んでいる。だが、誰も励ましたり、理由を聞かないでいる。ただその泣き叫ぶ男を傍観しているだけだった。
痺れを切らしたのか、桃華が、いや正式には裏桃華が泣き叫ぶ男の胸ぐらを掴んだ。
「てめぇ!!わーわー泣いてねぇで俺達にここに来た理由位言えよ!!」
「お、落ち着くであります桃華殿!」
「乱暴は駄目ですぅ!」
ケロロとタママは必死で桃華を止めるも、銀時は豹変した桃華に口をあんぐり開けていた。
「え……。あの……あいつ、西澤桃華で、いいんだよね?」
「僕も最初は驚きました。どうやら桃華ちゃん、二重人格みたいです。」
「本当にいるんだな……二重人格って。」
「おいそこのお前ら!!」
裏桃華は突然、銀時と新八を指差した。
「「はっ、はいーーー!」」
びっくりしたのか、2人共声が裏返った状態で返事した。そして、裏桃華が2人の方へと近付いてきた。
「これ、もしかしたら俺達、殴られるパターン?(小声)」
「……可能性はあるかもしれません……!(小声)」
裏桃華が2人の前に立ち止まった。2人は唾を飲んだ。そして、いつでも殴られるように歯を食い縛った。
「……………依頼、だってよ。」
「「…………………(何だよそれぇ……!)」」
2人は一気に脱力感に見舞われた。そして、その場にヘナヘナと腰を落とした。
「それで、依頼って何よ?」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁあぁ!!!」
「だからもう泣くなっつってんだろーがぁ!」
「ぐすっ……すびばぜん……。私、ショックでショックで……!」
「ショックだぁ?一体何があったんだよ?」
「……実は一昨日、ある天人が現れてから、若がその天人ばかりに話してくるんですよ……!しかも、本来若の補佐的存在である、この東条歩が若の剣術の稽古の相手をするのですが、あいつが現れてからはいつも若はそいつとばかり……!昨日もそうでしたよ!昨日は、さすがに腹が立ってその天人に、決闘を申し込みました!」
「それで、勝ったんですか?」
「……大敗致し申した………。それから、若は私には一切目を合わせる事もなく、まるでいないかのような扱いになっていったんですよ!どうしてこうなってしまったのか?……それもこれも全部あのクソ天人のせいだと!奴さえ現れなければ……奴さえ現れなければぁぁぁぁ!!!………そして、貴殿らにご依頼申す。どうかあの天人を、排除してく」
「帰れ。」
銀時は東条を玄関から蹴り飛ばして追い出した。しかし、東条は諦めておらず、
「銀時殿!ちゃんと話を聞いて下され!」
「それ、ほとんどお前の私情じゃねぇか。自分で何とかしろ。その天人も排除したいなら、どうぞ御勝手に。」
「この依頼がただの私情!?何を言ってるんですか!?柳生家における私の立場が危ういのですよ!最近は、他の柳生四天王からも避けられてるように見えるし!敏木斎様もそうです!一体、私が何をしたというのですか!!?」
「それあれじゃねぇの?ただ単に嫌われてんだよ。」
「何で!?私、特に何もしてませんよ!?」
「いや、そういうんじゃなくて……、生理的に受け付けない感じの奴だよ。」
「…………………………。」
急に東条が黙り込んだ。今の銀時の一言がかなり重くのし掛かったのか、それから東条は、小声で話し始めた。
「銀時殿……。依頼を変更し…ます。」
「えっ?依頼を変更?」
「私が本当に嫌われているのか、確かめて下さい……………。」
か細い声で東条はそう依頼した。
中では、銀時とケロロがどうするか相談していた。
「さすがにかわいそうであります!ここは是非とも協力するべきであります!」
「俺あんまり私情の為に何かするの嫌なんだけど。気が進まねぇよ。」
すると、東条はまたか細い声で何か言った。かすかにだが、何か言っていることには間違いない。だが、それはケロロには聞こえなかった。
「え…?な、何て言ってるんでありますか銀時殿?」
と、突然銀時が立ち上がり、玄関の扉を開けて、完全にやつれてしまった東条の肩を掴み、
「……依頼、承りました。」
「ちょっ、銀時殿!?さっきと明らかに態度が違うんでありますけど……。一体、東条殿は何て言ったんであります………か?」
ケロロは見てしまった。銀時の口角が凄く上がっていることに。そして、目が明らかに笑っていなかったことに。
そしてケロロは察した。これは………、金に目がくらんだ者の顔だということを。
「銀時殿……。」
「どうしたぁ?緑ぃ。」
「…………………そういうことでありますなぁーーー!もったいぶらないでよぉーー!」
「……こんな美味しい話…………、もったいぶるに決まってんだろぉーーー!」
「だよねぇーーーーー!!」
外から2人の下衆な笑い声が響き渡った。
「………一体何してるアルか?あのアホ共。」
こうして、東条の依頼を承った『万事屋銀ちゃん』は、柳生家へとやって来た。
「……神楽ちゃん、何か今日の銀さんやけにやる気入ってない?」
「ほんとネ。何かキモいアル。何かケロロもだし。」
「あの2人、絶対何か企んでるよね……?」
「それに、東条さんの依頼も何で引き受けたんだろう?」
「妙にボケガエルもやる気だし……。」
新八、神楽、夏美、冬樹、タママ、桃華は間違いなく銀時とケロロが何か企んでると疑っている。6人の前をルンルンとスキップしながら階段を上がっている2人は、口角が上がっていて、目が笑っていなかった。完全に金に目がくらんでしまったようだ。
「ところで東条さん。その天人って、どんな感じの天人なんです?」
「それ!私もそれ思ってた!」
「奴は、かなりの戦闘能力の持ち主で、体が小さいせいか、その分素早さが増しているんです。その姿はまるで忍者の様!さらに一丁前に、忍者の様に語尾に『ござる』までつけるから、まぁ腹が立って腹が立って………!!っていうか、ちょうど貴殿らのような蛙みたいなフォルムですよ!!」
そう言うと、東条はケロロとタママを指差した。もうこれだけの条件の中、その天人が何者なのか大体目星はついていた。
「姉ちゃん……それって……!」
「もしかして……!」
「間違いありませんね!」
「…………………誰でしたっけ?」
そのタママの発言と同時に、冬樹、夏美、桃華はこけそうになった。
何で分かんないの!!?
「タマ公コラ!何でわかんねぇんだよ!?」
「あんた、さすがにそれは最低よ!!」
「ドロロだよ!ドロロ!!」
「…………あっ!!!ドロロ先輩!!いやぁー、あの人影が薄いから、ついつい存在を……って、皆?」
タママが目にしたのは、新八、神楽、東条も含む、6人の冷ややかな眼差しだった。
「……貴方、今までそのドロロって人の存在消してたのかよ……。」
「……マジで最低アルな………。」
「あんたら…………、本当に仲間なんですか……?」
タママは戸惑いが隠せなかった。でも、1つだけ言えるのは……、
僕、今すごくドロロ先輩に対して失礼なことした……。そして、1人のケロン人としてどうかと思われてる……。
ドロロ兵長、不憫過ぎます……。
皆は、どんなに影が薄い友達でも、存在を忘れてはいけませんよ………。
「ひどいよぉーーーーー!!!!」