二次創作小説(新・総合)
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- 奇跡の星の日常物語~擬カビ小説~
- 日時: 2021/03/10 02:42
- 名前: 麻ふすさん (ID: PLnfHFFW)
どうも、麻ふすさんと申します。
ここでは一般的に「擬カビ」と呼ばれるジャンルの小説を書いていきます。
苦手だなー、と思う人は、即座に閲覧を中止してください。
基本短編をちょくちょく書く形になると思いますが、たまに長編も書くかもしれません。
文章力は皆無なので気をつけてください。
あと私独自の擬カビ設定などもございますので、そちらにもお気をつけください。
これらの小説は全てタブレット端末から投稿しているので、
スマートフォンなどから見ている方は改行の仕方に違和感を感じると思いますが
ご了承下さい。ちょっとずつ修正はしております。
私事ですがツイッターをやってます
@fususan250pskt
擬カビの絵とか描いてたりするので下手くそですが興味がわきましたらどうぞ。
たまに描いた絵に沿った物語を書く時があります。
まだ始めたてなので機能の事で試行錯誤しています。
ぱっと見て変な所があったら「頑張ってるなぁ」と思っててください。
小説更新について
それぞれの世界観を順番に書くわけではなく、その時書きたいと思ったお話を書くので
いとデザが2回連続で更新されたり、いーデザを長らく更新しないなどの事態が起きます。
ご了承下さい。質問があればお気軽にどうぞ。
ちなみに長編でない限り(長編なら〇〇編その1みたいな書き方するので)どこから読み始めても
大丈夫です。
✴閲覧数1300感謝です!
◉目次
擬カビ紹介>>1
大事な設定 更新1>>21
星を見守る女神様>>33
*.いーデザ
またいつもの毎日>>2
広い海>>6
もうひとつの魂達 その1>>10
もうひとつの魂達 その2>>12
もうひとつの魂達 その3>>13
もうひとつの魂達 その4>>15
もうひとつの魂達 その5>>16
もうひとつの魂達 その6>>17
嫌いなやつ>>20
ひとりめの奇跡物質>>23
喧嘩>>29
ハロウィン>>32
積み木>>34
お絵描き>>41
ふたりの魔女>>46
理解>>47
ちぐはぐ侵入作戦>>49
*.ふすデザ
雨の日>>3
鏡の中のお祭り>>14
家計>>19
ふたりめの奇跡物質>>25
秋>>30
クリスマスのお昼頃>>35
パーティの合間に>>36
バレンタインについて>>39
運命>>40
蝶>>44
*.いとデザ
忘れてはいけない事>>4
異端の暗黒物質 その1>>8
異端の暗黒物質 その2>>9
異端の暗黒物質 その3>>11
さんにんめの奇跡物質>>26
星の戦士>>28
犬猿の道化師と魔術師>>37
*.かかデザ
運命の線路>>5
終着点D-1>>7
料理をしよう>>18
終着点D-2>>24
よにんめの奇跡物質>>27
皆の姐さん>>31
仮面と白いはね>>38
家族一幕>>42
身長>>43
髪の毛>>45
機械の従者>>48
自分勝手>>50
*.失われた世界
もしもの話>>22
- いーデザ・ふたりの魔女 ( No.46 )
- 日時: 2020/11/08 00:19
- 名前: 麻ふすさん (ID: PLnfHFFW)
※お久しぶりです暇になったので書けました
いードロシアさんとドロソさんのお話。
っていうかいーデザ単体でいったらドロシアさん続投
連日雨模様が続いている。
途絶えない雨によって、森の土は水が足りていない絵の具のようにぐちゃぐちゃだった。
「水が溢れてるのに水が足りないのね」
ふと後ろから声をかけられて、私は振り返る。
水色の長髪に、見ただけで魔女と分かる格好。ドロシア。
私の魂……いいや、私が彼女の魂。
ある事が起きるまでは私はずっと彼女といたから、彼女には私の考えている事など手に取るように分かるだろう。
「最近ずっと雨ばっかり。洗濯物も干せないし、うーん、そろそろ晴れてくれないかしらねぇ」
「雨……嫌い?」
「いいえ。逆よ。私が嫌いといったところで雨は止まないわ。
それに、結構好きなの。雨の風景を描くのはね」
ドロシアは私と同じように窓の外を眺めながらそう言う。私は彼女の魂であるはずなのに、私は絵が上手くはない。
「違うわよ。貴女と私は、同じだけど違う人。貴女は貴女なの」
雨は降り止む素振りも見せず、ただひたすらに地面へと落ちていく。雨の届かないこの家の軒下で、小鳥が数羽雨宿りをしていた。
しばらく外を見ているうちにドロシアが紅茶を入れてくれた。彼女が入れる紅茶はとても美味しい。
「今日はいつもより暖かめ。最近冷えてきたし、風邪引かないようにね」
「うん」
「雨が止んだらお出かけしましょう。そうね、あ、だんだん木々が紅葉してきたの。
紅葉狩りしない?」
「絵も描くの?」
「えぇ、でもまず貴女と楽しんでから」
雨は止んだ。だいたい5日は降り続いていただろうか。木の葉にはまだ滴があり、久々に顔を出した太陽に照らされきらきらと輝いている。
「さ、出かけましょ。ここから西の辺りの紅葉が毎年綺麗なの」
道中は5日前と比べてだいぶ変わっていた。じめじめしていたからか、あまり美味しそうじゃない色の茸が生えていたり、花は萎んでいたり、外の香りも雨の残り香が少し漂っている。5日前は、たしか、秋桜の匂いがした。
「貴女、足元は大丈夫?ほとんど乾いてるけど、まだぬかるんでるところもあるし」
「大丈夫。こういう道は慣れてる」
私は元々魂だけの存在で、今の体も不安定。所々が絵の具のように滴る体。
実際、絵の具で造られているのかもしれない。
「んー、あ、ほらほらここ。どう?綺麗でしょ」
見上げると、目の前に赤い紅葉がひらひら落ちてきた。びっくりして、少し後ずさる。
赤、黄色、ちょっと中間の橙。生い茂る木々の間からもれる木漏れ日が、葉っぱ達を輝かせる。
あぁ、私も、あんな風に輝けたらな、と。
少しだけ思ってから、ドロシアに目をやった。
「ん?なぁに?」
「え?あ、いや……」
彼女の目を覗くと、まるで全て分かられてしまいそうだからゆっくりと目を逸らす。
私と同じ目の色。
「ふふ。クッキー持ってきたの。食べる?」
「……うん」
私は本当なら、こうして自由に外に出ることも許されない存在。
それを、彼女は、優しく接してくれる。私を1人の生きている者として見てくれる。
だから、もう幸せなのだと。
これ以上の事を望むのは、まだ、もっと先だと。
(卑屈に考えがちなドロソさんですが、ドロシアさんは彼女のこと、もっとポジティブに考えたらいいのにな、と思ってます。
なんか風景描写多いね……次はもっとはやめのスパンで書きたいです)
- いーデザ・理解 ( No.47 )
- 日時: 2020/01/19 22:54
- 名前: 麻ふすさん (ID: PFFeSaYl)
※いーギャラさんとマルソのお話。
特になんでもないお話。
夕暮れ時の丘の上。
「やあ」
沈み行く夕陽を眺めていると、奥の見えない笑顔でマルクソウルが声をかけてきた。
「何してるの?ギャラ」
ギャラクティックナイトは長いから、と彼は私の事をそう略して呼ぶ。
「いや、…………」
別に、と小さい声で言う。まだこの星の言語に慣れていないから、
あまり表現を使えない。
「ただ、日を」
「日……夕陽ね。何か思うところでもあるのかい?」
特にないので、首を横に振る。
「そっか」
彼は私の横に座る。よく見ると、手には小さい石のようなものが握られていた。
宝石……陽の光を受けて淡く輝いている。
「それは?」
「あぁ、これ?これはさっき……」
宝石を親指で弾いて、上に飛ばす。重力に従い落ちてきた宝石を、
手のひらで受け止める。
「ジュエルに貰ったんだけど」
ジュエルはワムバムジュエルのこと。私たちは色々あってよくつるむ仲になっている。
「いるかい?」
「え?」
「僕にはどうにもね、価値があるとされるものの価値が分からないんだ」
価値は……希少なものや、人々の心を動かせるものに高く付けられるものだ、
と言いたいが、上手く言えない。
今度この星の言語の勉強をしたい。
「えぇと……その、価値は、人の……人にとっての……」
「とっての?」
「人を、豊かにするもの……かな」
「財的に?」
「感情的にも」
感情的、という言葉を聞いて彼は少し肩を落とす。
「そんなら分かるはずもないか」
「……」
彼は自分に感情はないというが、私にはそう見えない。
少し不思議で雲よりも掴めない性格だけど、私にはひとりの人に見える。
私も彼も、人と言うにはあまりにもかけ離れているが……。
「綺麗、だとは思える?」
「綺麗?分からない。見方によれば、人はどんなものでも綺麗に見えるものだけど」
夕陽に宝石をかざし、そう言う。
「宝石も、自然も、人も……僕はそうは思わない。思えない。
けれども群衆から”醜い”とされるものにも美しさを見出す者もいる」
「醜い?」
「虫……とかかな。虫はどうだろうか。あとは絵」
「絵……」
絵。醜い絵は見たことはない。
「絵は……心を映すもの」
「じゃあ醜い絵を描ける人は醜い心を持つか、醜いものを見てきた人だ」
「でもそれに美しさを見出す人もいる?」
「そうだね」
彼は理解の難しそうな顔をしている。
彼には分からないのだろう。人の思う美しさと醜さが。
彼はなんでも知っているようで、誰もが知っていることを知らない。
知ることが出来ない。
「はぁ、難しい」
宝石を、私に差し出す。
「じゃあ、やっぱり僕にはこれを必要なものにすることは出来ない。
プレゼントしてくれたジュエルには悪いけどね」
「いいの?」
「いいよ。君は分かるんだよね?美しさが」
「分かることには……」
いつの間にか夕陽は半分以上も地平線に食べられていた。
地上の明るさも消えていく。
「……」
私は宝石を受け取り、今日の陽にかざす。
「……貰っとく」
「うん」
「君の話は難しい」
「そうかい?じゃあもっと勉強しないとね」
空に星たちが見えてくる。地上から失われた光をまた与えて。
「人の心を知りたい?」
「知りたくない。知ったところで僕は僕。救いようのない狂った魂」
「……」
「人の心は人だけが知っていればいいんだよ。それは人のものだから」
「私……は」
陽の光は消え、頼りない星と月の光で照らされる。
「理解者にはなれない?」
「ならない方がいい。理解は恐ろしい。知っていることは、
その人に新しい価値観を見せてしまう。知らないことよりも、ほんの少し恐ろしい」
「でも、知ることは大事」
「そうだね。知らなければ、何も出来ない」
彼は目を閉じる。星は己を魅せてくる。
「……」
「考え過ぎた?ふふ、こんな話、本気にしないで大丈夫。知りたければ知ればいい。
理解者にだってなったっていい」
また、奥の見えない、感情も見えない笑顔で彼は言う。
少しだけ、彼を知れた気がした。
私は、彼の理解者になれるだろうか。
(書いてる本人もよく分からないね。
前回からめっちゃ間空きました。すいません)
- かかデザ・機械の従者 ( No.48 )
- 日時: 2020/11/10 02:05
- 名前: 麻ふすさん (ID: PLnfHFFW)
※お久しぶりです(予定調和)かかマルとノヴァのお話。
本を読む。
近くの本棚から一冊を取り出し、椅子に座り机の上で広げる。
また見たことない本だった。
ポップスターに移り住む際に、森に捨てられていた廃洋館を見つけた。
丁度良いと思い掃除して今も住んでいるが、ここは洋館というよりも図書館だ。
住み始めてかなり経つが、未だにここにあった本を読み切れていない。
今回の本は……遠い星の、王様の話らしい。
ぱらぱらと頁をめくる。本を読む速度は早い方だと自負している。
前に誰かから「そんなに早く読んで内容を理解出来ているのか」とか、
そんな事を聞かれた記憶があるけど。
誰に聞かれたかは覚えてないけど。理解はしてるつもり。
「…………」
コトッ、と机に何かが置かれた。陶器の音。
ふたつ。ひとつはコップ。もうひとつはポット。中身は紅茶。淹れたてで、湯気があがる。
背後に誰かが立った。そいつは何を言うでもなく、ただただ僕の後ろに立つ。
紅茶に手を付けないでいると、視線を感じた。
見られている……飲むから。分かったから。
紅茶に手を伸ばし、ちら、とそいつを見る。
そいつは目を閉じていて、微動だにしない。
比喩でもなんでもなく、微動だにしない。
呼吸をしていないから、肩も動いていない。
そいつは機械だからだ。
『お味ハどうでショウカ』
人間でいう口を開き、機械チックな声で問いかけてくる。
「普通」
『………………』
目を開いて見つめてくる。僕と似たような紫色の目。
目……というか、カメラレンズのような光沢。
「…………美味しいです」
半ば無理やり言わされたが、こう言わないと諦めない。
そいつは、ノヴァは満足した様子でまた目を閉じた。
ギャラクティック・ノヴァ。銀河の果てにいる、機械仕掛けの大彗星。
まあ、何故こいつが僕の家にいるかというと。
あの月と太陽の喧嘩事件以降、正確に言えば暴走の後だけど……
とにかく、ノヴァの本体は、人型の端末を何故かこちらに寄越した。
それはそれは迷惑だが、あの図体でポップスターにまた来られたら大変なことになる。
端末であるだけましだと思いたい。
見た目は確かに人間だった。でも何故か女の姿をしていた。
そいつは頼んでもいないのに身の回りの世話をしてきた。
身の回りの世話くらい自分で出来るから、と言っても聞かず。
食事の味付けや紅茶の温度は指示通りに調整するのに、何をやるかだけはなぜか聞かず。
何回か破壊したがすぐに次の機体が送られてきた。
いつだったか、質問してみたこともあった。
「なんで僕の世話をするんだよ」
『アナタを世話しろ、との本体ノ命令デス』
「なんで女なんだ?」
『アナタが男性であるノデ、女性の方が良いダロウとイウ本体の思考によるモノデス』
「…………」
『ワタシは今四体目デス』
「聞いてないが」
住み着いて世話をするだけならまだ、まだいいが、いつの間にかこいつは
洋館の一室を改造し自分の部屋にしていた。入ってみると意外と女性らしかった。
いや、それはどうでもいい。
まあ僕も勝手に住んでいるし、そこはあまり攻められないけど……。
いやしかしとにかく邪魔だ、すごく邪魔だ。本を読んでいれば今みたいに背後に立たれる。
機械であろうと気配はあるから気が散る。
寝ていれば時折様子を見に来られる。機械のくせに歩いてもがちゃがちゃ音はならないが、
何が悲しくて寝顔を覗かれなければいけないのか……。
もう一度ノヴァの方を見てみる。相変わらず目は閉じられていた。
紅茶を飲んでみると、目を開いてこちらを見ていた。
機械で従者なのに我が強すぎるだろ。
「なあ」
『なんでショウカ』
「……」
従者か……色々考えてきたが、こいつはおそらく監視目的でここにいるのだろう。
あれだけ大きい事件を起こし、挙句魂の暴走までした僕を放っておく方がおかしい。
本来ならこの星を追い出されて当然。あのお人好しのせいでまだここにいるけど。
本当の意味で従者でないのなら、この強引な態度にも理由が付けられるというもの。
「……いや、なんでも」
直接聞くのは野暮……というか、まだ早いだろうか。
そんなことを考えていると、ノヴァはどこかから茶菓子を取り出して言った。
『アナタがマチガイを再びスルのナラ、ワタシはアナタを』
その言葉の途中で、コト、と机に茶菓子の入った皿が置かれる。
『……マア、楽しみニしておいてクダサイ』
「なんだそれ……僕がまたあんなことするって言いたいのサ?」
『どうでショウカ。アナタはどう思いますカ?』
「……そっちこそ、もしその時が来るんなら、どんなことをするか楽しみにしておけよ」
そう返して、僕は本に目を戻した。あぁ、別のこと考えてたせいで内容を全然見ていなかった。
どこまで読んだかな……。
『25ページ4行目、上から5文字デス』
「…………はい、ありがと」
(今回は珍しくストーリー性のありそうな絵を描いたのでそれに基づいて書きました。
余談ですがマホロアもウェイター姿のようなローアを従者に持っているので、
対のようななんというか、そういう立ち位置になってます)
- いーデザ・ちぐはぐ侵入作戦 ( No.49 )
- 日時: 2020/11/07 14:27
- 名前: 麻ふすさん (ID: PLnfHFFW)
※いードロッチェとダゼロのお話。
豪華な屋敷の前にある、小さな森の影で佇むひとりの男性がいた。
赤いシルクハットにマント、青みがかった灰色の髪の毛を三つ編みでまとめている。
彼こそは盗賊団の長、ドロッチェなのだが。
彼のそばにいるはずの仲間達の姿が見えない。
ドロッチェは、その仲間のひとりであるドクが作った高性能双眼鏡に目を通し、屋敷を見ながら独り言を呟いた。
「ふむ、豪華なわりに警備は薄いな。玄関にも見張り一人立っていない。しかし設備は泥棒を退けるには十分なものだが……まあ、俺にかかれば警報装置が鳴ることはない」
高性能なだけあってずっと見ていると目が疲れるのか、ドロッチェは双眼鏡を外して目を抑えた。
「しかし、俺としたことが……今日に合わせて作戦を立てていたのに、間違えて仲間達に休暇を与えてきてしまった……ドクも、ストロンもスピンも、チューリン達も今頃バカンスを楽しんでいるのだろう……」
少し遠い目をしてから、また屋敷に目を向ける。
「ひとりでも行けなくはないがな。いやしかし、チューリン達の調査がないとこんなに不安になるのか……せめてひとり手伝いがいれば」
「いるよ!」
「おぉ、いるのか。じゃあ少し様子を見……」
違和感を感じてから声がした方を見ると、ドロッチェの胸より下あたりの身長のなにかがぴょんぴょんと跳ねていた。
「はいはい!自分が様子見てくるよ!」
「ちょっと待て」
「はい?」
「お前……な、なんでここにいるんだ!?」
屋敷に向かおうとするそれの肩をドロッチェがしっかりと捕まえた。
「なんでって、ダークゼロはいつでもどこでも会えるのが売りだからね」
「なんだそれ初めて聞いたんだが……ってそんなことはどうでもいい、なんで俺の近くにいるんだ」
「え?だからいつでも」
「それはもういいからちゃんとした理由をだな?」
ダークゼロと自分で名乗った幼い少女___に、見える人の形をした者は、ぱっちりとした目を輝かせながら言った。
「ドロッチェがひとりで寂しそうにしてたから、じゃあ、自分が一緒にいてあげようと思って!」
「そんな可愛げに言っても許さないぞ。いつからいたんだ?」
「うーん、さっき!」
「曖昧だな……とりあえず邪魔だからあっち行ってくれ、本当に」
そう言うと彼はそっぽを向いた。ドロッチェに突き放されて少しむっとしたダークゼロが、食い入るようにドロッチェの前に出て、身振り手振り慌ただしくしながら言った。
「で、でも自分!誰にも見つからずに様子見に行けるよ!」
「はぁ……?」
「自分の体はほぼ霧なので。どこにでも入っていけるもんね」
「そうか。ご苦労なことだ」
「あっあっ、だからね!ドロッチェの役に……立てると〜、思うんだな……」
必死に説明をする彼女を見て少し可哀想になってきたのか、ドロッチェは虫が悪そうな顔をしてダークゼロをなだめた。
「分かったわかった……お前が役に立つのは分かったから」
「じゃあ手伝ってもいい?」
「なんでそこまで手伝いたいのかは分からないな……言っておくが、これは一応犯罪だぞ?」
「暗黒物質にこの星の法は適用されないのです」
「確かにそれは……一理あるな」
少しだけ感心したドロッチェはダークゼロに指示をする。
「よし、手伝ってくれるなら使ってやろう。まず、あそこに機械があるのが見えるだろうか」
「んー、見えるよ。ちっちゃいやつ?」
「そうだ。あれが監視カメラ。で、それよりも少し小さい機械がセンサーだ。あいつらの範囲に入ったら失敗」
「なるほど」
「だからお前には、あれの目が届かない場所を探してほしい」
ダークゼロは内容を把握した様子で頷いた。
「了解です!では行ってまいります」
たたたたっ、と走っていくダークゼロの体が次第に霧状になり、暗闇に溶け込んだ。
「行ったか……しかしあいつ、本当に口調がばらばらだな。喋るのが下手くそなんだろうか」
ダークゼロが帰ってくるまでの間、ドロッチェはまた仲間達に思いを馳せる。
「バカンス……ネクロディアス関連の事件を思い出すな。あの辺りもリゾート地といえばそうなんだろう。そういえばここ最近、また破神やらなんやらの一件で俺も繰り出されて休みがなかったんだった。俺も今度羽を伸ばしにリゾート地にでも行こうかな……」
楽しく有意義である休暇を思い描いていると、甲高い声で現実に引き戻された。
「調べてきたよ!」
「声がでかい」
「はっ、ごめんなさい……あ、それでね、あそこ!」
「うん、なんだ?」
「えぇと、二階にでっかい窓があるの。裏手」
「裏手か……そっちに回ってから詳しい説明をしてくれ」
「はいはーい!」
森を歩いて裏手に回ったふたりは、再び高性能双眼鏡を覗いた。
「あの窓か?」
「うん。あの下はねー、カメラもセンサーも届いてないみたいだよ」
「ならあそこから侵入するか。ご苦労だったな」
「えへへ〜」
ドロッチェが侵入の用意をしている間も、ダークゼロはずっとそばにいた。
「なんでまだいるんだ」
「お手伝いは最後までやらないとお金を貰えないってミラクルマターが言ってました」
「分け前を貰うつもりなのかこいつ。がめついな」
まあ、確かに手伝ってもらったし妥当か、と思いつつ準備を終えたドロッチェはダークゼロに言った。
「よし、なら最後まで付き合ってもらうぞ。俺が侵入する前に屋敷の中に入って警備の状況を教えてくれ」
ダークゼロは元気に頷く。
「警備がいないようならもう安心だ。二階のあの位置から侵入すれば目当ての宝がある場所に行くまでに警報装置はない」
「なんでわかるのー?」
「チューリン達の事前調査だ。休暇前にそこの仕事だけはしてくれていたのでな」
ドロッチェは地図を広げてダークゼロに渡した。彼女はそれを見ながら首を傾げる。
「どうやって見るのかよく分かりませんけど大体分かったよ!」
「大体分かったならそれでいい」
彼は地図を回収して懐に入れる。
「よし、じゃあ作戦決行だ!」
「おー!」
全く物音をたてずに難なく塀を登り、あっという間に大きい窓の下までやってきたドロッチェ。そこでふたりは一度息をつき囁き声で会話をし始めた。
「てぎわ?がいいね」
「何年こんなのをやってると思ってるんだ」
「え?ドロッチェって……意外とおじさんなの?」
「おじ……」
相変わらず振り回されているが、ここで気を抜いてはいけない。そう思って首を振る。
「ダークゼロ、窓から中に入って鍵を開けてくれ。音はたてるなよ?」
「了解!」
再び霧になってしばらくすると、微かに聞こえるカチッという音がした。その後窓が開け放たれる。
「開いたよ〜」
「なら窓から離れてくれ」
ドロッチェが鉤爪を投げて窓に引っ掛け、素早く音を立てずに登っていく。
窓から中に入ると、そこは人の気配のしない倉庫であった。懐から地図を取り出して照らし合わせる。
「ふむ、倉庫……調査通りだ。ではダークゼロ、部屋の外の様子を」
「おっけー、ふむふむ……なるほど!誰もいないよ」
「実に不用心な屋敷だな、ここは。装置を整えれば安心とでも思ったのか」
「みんな寝ちゃってるんだよ」
扉を開けて目的の部屋まで歩く。いやに静かで廊下も電気が殆どついておらず心許ないほどだったが、程なくして部屋の前に辿り着いた。
「ついにここまで誰とも遭遇しなかった……」
「はやく開けよーよ〜」
「そうだな。ゆっくりと……」
部屋の中は特にこれといった特徴はない、ただの寝室といった感じだった。
もっと豪華なものがくると思っていたのに、と言わんばかりにダークゼロは首を傾げる。
その様子を見てドロッチェが説明した。
「本当に大切なものっていうのはな、他の誰かに"これが大切なものです"とは言わない。誰にも教えずに隠しておくものなんだ」
「じゃあここにあるの?大切なもの」
「あぁ、ある……っとほら、これだ」
ドロッチェが部屋にあった水槽の中から取り出したのは、小石ほどの大きさの宝石だった。
「水槽の中の小石としてカモフラージュしてたんだ。これが、今日のお目当て」
「ちっちゃい。こんなのが本当にすごいお宝なの?」
「あぁ。見た目は小さいが実は宇宙単位で見ても希少なもので……星ひとつは買える値が付くって噂もあるくらいだ」
「えー!すごい!!」
「ただ……ふむ、これは恐らく偽物だな」
そう言うとドロッチェは宝石を元の場所に戻した。
「希少な上に非常によく似た宝石があってな。多くの金持ちが本物だと勘違いして大切に保管しているらしい」
「わあ……なんかこう、悲しいですね、それ」
「悲しい……か、確かにそうかもな」
来た時と同じルートで屋敷から脱出すると、ドロッチェは懐から地図ではなく煌びやかなブレスレットを取り出した。
「それは?」
「侵入ついでに盗ってきた。これをやるよ」
「え、ほんとにいいの?」
「あぁ、なんやかんや役に立ってくれたしな。給料だとでも思ってくれ」
「やったぁ〜!!ありがと、ドロッチェ!」
後日。
ドロッチェは休暇から帰ってきた仲間達と先日の出来事について話し合っていた。
「じゃあ結局偽物だったんじゃな」
「今回はハズレだった。次の標的はここだ。また調査をお願いする」
ドロッチェが頼むとチューリン達が一斉に動き出した。
「でも、よくひとりで……いやふたりで?行けましたね」
「団長の腕があっても難しそうなところじゃったからのう」
「ん、そうか?警備がひとりもいなくてやりやすかったが……」
「ひとりも!?」
スピンが驚いて飛び跳ねたので、ドロッチェも釣られて少し飛び跳ねた。
「な、なんだいきなり……」
「いやあそこの屋敷、事前調査では警備が厚くて少し調査が不十分だったんすよ!?」
「なんだと?」
ドロッチェはその時の様子を思い出した。
あの時は……警備どころか、住民すらもいないんじゃないかというくらいに静まり返っていた。
それにダークゼロが、「みんな寝ちゃった」と言っていたが……もしや。
「まさかな……」
「どうしたんすか?」
「いいや、なんでもない」
時間は少し戻り、ドロッチェと別れ暗黒物質の住処へと戻ってきたダークゼロ。
「あ、お前どこ行ってたんだよ」
ミラクルマターが彼女の姿を見るなり近寄ってくる。
「お手伝いしてたの」
「お手伝い?」
「うん!なんてことないんだけどね。霧になって、色んな人を眠らせただけだから!」
「人を眠らせるお手伝いをしてた?それ、なんかの比喩とかじゃないよな?」
「えっ!?そんなんじゃないよ!ゴカイしないで!みんな今頃起きてるから!」
(前回更新が5月とかいってヒェッってなりました。久々に書いたら筆が乗ってちょっと長くなりましたね。
先日参ドロ誕だったので描きました。)
- かかデザ・自分勝手 ( No.50 )
- 日時: 2021/03/10 02:41
- 名前: 麻ふすさん (ID: PLnfHFFW)
かかマホロアとソウルのお話。久々にシリアスを書きたくなった心の産物。時系列的にはWiiからちょっとあとくらい。
普通に前回更新が昨年でビビり散らかしました。
黒く、染まる手を見た。
指とも爪とも分からぬ尖った指先に、まるで血の気も感じられない肌、血管なども見えるはずもなく___その禍々しい手と自らの体は繋がっておらず。王冠に狂わされながら、どこかへ消えてしまった腕がまだあるかのように感じる。それでも、ソレは自分の思うままに動き。
ああ、いや……自分の、意思ではない。とっくに自分の意思などというものは瓦解していて、今ここにあるのはただ消滅を待つだけの哀れなる魂で。
そう、自分は狂っていて、意思などあってないようなもので、そのはずなのに。
口の中の異物感を顕著に感じる。決して離さまいと増していく王冠の締めつけの痛みを感じる。穢れに染まり死んでいく自らの体の軋む音が聞こえる。声が聞こえる。叫び声。はっきりと。
ボクの声が。彼の声が。誰かの_____
はっ、と目を覚まして飛び起きた。
"あの日"以来、不定期にこんな夢を見る。
あぁ、なんてリアルでおぞましい夢なのだろうか。けれど、強く否定は出来そうになかった。あれはどうしようもないほどに……自分が望んでいた自らのカタチだったような気がして。
この夢を見た朝は決まって寝覚めが悪い。少しふらつく足取りで鏡の前へと座る。鏡に映る顔は不機嫌に縁取られていた。じっと顔を見つめていると、酷く……酷く醜く見えてくる。気のせいではなくて、本当にそうなのかもしれないが。
いつまでも気が滅入るような鏡を見つめていても仕方がない、と顔を洗って髪を整えた。
幾分かは見ていられるようになっただろうか?
そうまたぼんやりしていると、今自分のいる場所……天駆ける船ローアに訪問者が来たようだった。
外と繋がる扉の前に立ち、それを開けると、そこにはカービィがいた。顔を出すと落ち着かない様子で、それでもへにゃりと笑ってみせてきた。
「ご、ごめんこんな朝早くに。ちょっといいかな?」
「い、いいケド……どうシタノ?」
「うん、少しね」
カービィをローアの中に迎え入れる。無口なこの船のAIはカービィが来たのを察知して、もうすでに茶菓子の用意を終えていた。
ホログラムでつくられた召使いはこちらに向けて一礼すると、泡のように消えた。
「ソレデ……なに?キミがこんなコトするくらいダカラ、何か深刻なコトでも起キタ?」
「深刻……って程でもないけど。今日変な夢を見て」
夢。
自分も今日嫌な夢を見たが、それ以上にカービィという存在に夢はつきものだという。話に聞く限り、夢の泉の事件を解決したりしているし……。
などと考えていると、困った様子でカービィがこちらを見ていた。
「大丈夫?」
「エ?ウン、全然。で、どんなユメだったノ?」
「キミの夢なんだけど」
「……ボクの?」
少し嫌な予感がして顔をしかめる。
もしも自分と同じ夢を見ていたのなら。
「キミが___暗くて顔も姿もよく見えなかったし、細かい事は覚えてないけど___必死に、必死にもがいて、ぐちゃぐちゃになっていって」
「……」
「それで、何かをしようとしてたんだ。えぇと……あまりにも悲しい夢だった、でもどこかで見た事のある光景だった。きっとあれは___」
カービィは言いかけて、眉をひそめてそこで言葉を切った。しかめっ面の自分に気を遣ったのだろうか。
「……マァ、あながち……間違いではないカナ」
「っていうと?」
「ボクも似たようなユメを見タ。アァ、ウン、殆ど覚えてないケド」
本当は全部覚えてるけど。
「キミが言いたいコトはこれダロ?『アレはアノ時のマホロア』……ダッテ」
「あの……」
「バカなボクがクラウンに喰われてバケモノになってた時。キミとボクが見た夢の中のボクも"ソイツ"だろうネ」
「じゃあ、夢の中のキミはなにをしようとしてたのかな」
自分ではよく分からない。自分はあの時何を考え、何をしようとして、何になろうとしていたか。助けを求めていたような気がする。感覚などない手を誰かに取って欲しくて、広げていた気がする。あぁ、どうしようもないと、嘆いては壊していた気がする。
……と、そんな事はカービィに言えるはずもなく。
「……分からないケド。マアとにかく、ソレはただのユメ。ボクはもう"アイツ"じゃナイ」
「そう……だね、ちょっと嫌な夢だったから、心配で来たんだけど」
「ボクが?まさか。モウ大丈夫」
そう言うと、カービィは安堵したような表情でこちらを見、また質問をしてきた。
「……せっかくだし、ちゃんと聞きたいことがある。あの時のキミ……マホロアソウルについて、詳しく教えてほしいんだ。アレは一体なんなの?」
「何か、ネェ。……そうダネェ、"アイツ"……いや、アレは、ボクの……本当のカタチ、だと思うヨォ」
あれを自分だと思いたくなくて、ずっと他人のように"アイツ"と呼んでいた。けれどもあれはどうしようもないほどに自分だった、ずっとひた隠しにしていて、誰にも見せたくなかった自分で。
「思うってことは、マホロアもよく分かってないってこと?」
「実際、ソウルという事象が何故起キテ、何もカモ狂わせテ壊していくノカ、ボクにも分かってナイ。けれど、あれはボク」
あれは全てを嗤い。全てを憎み。全てに恐怖し。全てを壊さんとする。ボクの本質。
「…………マア、ボクの自論でも話しておこうカナ。思うニ、ソウルっていうノハココロの本質が誇張されタリ、肥大化したモノだと思うヨォ」
「大袈裟にしてるってこと?」
「ソウ。ボクだってアノ狂気がボクの本質そのものだとハ思いたくないヨォ。でもアレの元はボク。だからキミの言う通リ。大袈裟にシテ狂ったってワケ。モチロン、原因なんざ分カラナイ」
「なる……ほど」
分かっているような分かっていないような表情を浮かべながらカービィが頷く。
理解力はないけど、感覚的には分かっているのだろう。カービィはそういう奴だ。
「ボク以外にもソウルになった人、いるんデショ?ボクがキミに話せるのはコノ位。知りたいナラ、後は他の人に聞いてヨネ」
「分かった。ありがとうね、ごめん、時間取らせて」
「いいヨォ。帰りニ気を付けてネ」
手を付けていなかった茶菓子を持ち帰り、カービィはローアを去って行った。
皿は返せと今度言わないと……。
自室に戻り、椅子に座ってからふと思った。
ああ。
きっとこれからも、ボクは同じ夢を見るのだろう。
ボクの本質、ココロのなかのボクは、いつまでも誰にも手を差し伸べられないまま、深く深く沈んで、静かに待ち続けるのだろう。
ボクという自我が、再び壊れる時を。
悔しいことにそんなことは二度とない、とは言いきれない。
しばらくぼーっとしていた。もしそうなったら、彼はまた自分を助けてくれるだろうか?
……自分勝手だろうな、これ。
自壊することを理解していながら、それをどうにかしようとするのではなく誰かに助けを求めるなんて。彼は別にボクだけの戦士ではない。彼は、宇宙の為に戦っている。
あの時のボクも、彼にとっては通過点に過ぎない。
そう思うと寂しくなって、そんなことを感じる自分が少し可笑しかった。
ホントに自分勝手な奴だ、ボクは。
(かかデザのソウルの解釈を少しお見せしました。思ったより長くなりました。
マホロアに限らずドロシアやマルク、セクトニアも同じようなものです。自分の本質を大袈裟にして狂わせたものがソウル……という具合。ただまあニルと星の夢はイレギュラーでしょうかね……)