二次創作小説(新・総合)

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奇跡の星の日常物語~擬カビ小説~
日時: 2021/03/10 02:42
名前: 麻ふすさん (ID: PLnfHFFW)

どうも、麻ふすさんと申します。
ここでは一般的に「擬カビ」と呼ばれるジャンルの小説を書いていきます。
苦手だなー、と思う人は、即座に閲覧を中止してください。
基本短編をちょくちょく書く形になると思いますが、たまに長編も書くかもしれません。
文章力は皆無なので気をつけてください。
あと私独自の擬カビ設定などもございますので、そちらにもお気をつけください。
これらの小説は全てタブレット端末から投稿しているので、
スマートフォンなどから見ている方は改行の仕方に違和感を感じると思いますが
ご了承下さい。ちょっとずつ修正はしております。

私事ですがツイッターをやってます
@fususan250pskt
擬カビの絵とか描いてたりするので下手くそですが興味がわきましたらどうぞ。
たまに描いた絵に沿った物語を書く時があります。

まだ始めたてなので機能の事で試行錯誤しています。
ぱっと見て変な所があったら「頑張ってるなぁ」と思っててください。

小説更新について
それぞれの世界観を順番に書くわけではなく、その時書きたいと思ったお話を書くので
いとデザが2回連続で更新されたり、いーデザを長らく更新しないなどの事態が起きます。
ご了承下さい。質問があればお気軽にどうぞ。
ちなみに長編でない限り(長編なら〇〇編その1みたいな書き方するので)どこから読み始めても
大丈夫です。

✴閲覧数1300感謝です!


◉目次

擬カビ紹介>>1
大事な設定 更新1>>21
星を見守る女神様>>33

*.いーデザ
またいつもの毎日>>2
広い海>>6
もうひとつの魂達 その1>>10
もうひとつの魂達 その2>>12
もうひとつの魂達 その3>>13
もうひとつの魂達 その4>>15
もうひとつの魂達 その5>>16
もうひとつの魂達 その6>>17
嫌いなやつ>>20
ひとりめの奇跡物質>>23
喧嘩>>29
ハロウィン>>32
積み木>>34
お絵描き>>41
ふたりの魔女>>46
理解>>47
ちぐはぐ侵入作戦>>49

*.ふすデザ
雨の日>>3
鏡の中のお祭り>>14
家計>>19
ふたりめの奇跡物質>>25
>>30
クリスマスのお昼頃>>35
パーティの合間に>>36
バレンタインについて>>39
運命>>40
>>44

*.いとデザ
忘れてはいけない事>>4
異端の暗黒物質 その1>>8
異端の暗黒物質 その2>>9
異端の暗黒物質 その3>>11
さんにんめの奇跡物質>>26
星の戦士>>28
犬猿の道化師と魔術師>>37

*.かかデザ
運命の線路>>5
終着点D-1>>7
料理をしよう>>18
終着点D-2>>24
よにんめの奇跡物質>>27
皆の姐さん>>31
仮面と白いはね>>38
家族一幕>>42
身長>>43
髪の毛>>45
機械の従者>>48
自分勝手>>50

*.失われた世界
もしもの話>>22

いーデザ・お絵描き ( No.41 )
日時: 2019/04/05 00:02
名前: 麻ふすさん (ID: PFFeSaYl)

※ついったらに上げた誕生日絵からちょっと。まぁ24日のやつです。
誕生日絵の構図だけ抜き取ってるからその他はあんまり関係ない。





「うーん……」
「あ、動いちゃ駄目よ。瞬きはいいけれど。痒いところがあれば掻いてもいいわ。
でも元の位置に戻してね」
「は、はぁ……」

そう指示しながらせっせと絵を描いているのはドロシア。絵の具が塗られる
キャンバスの奥に立っているのは、暗黒物質のひとりであるゼロツー。
ドロシアはゼロツーをモデルに絵を描いていて、もうかれこれ2時間
描き続けているのだが、一向に描き終わる気配がない。
つまりゼロツーは2時間立たされている。

「えぇと……ど、ドロシア、そろそろ……ちょっと座っても……いいかな」
「疲れちゃった?」
「うん……」
「んー……あ、じゃああと5分。あと5分お願い出来る?」
「え?あ、分かった……」

意思が弱いゼロツーはそのまま押され5分立ち続けた。

「…………よし、終わったわ!ゼロツー、立たせちゃってごめんなさいね。座って」
「あ、うん、えーっと……」
「そこの本の上でいいわよ。積み重なってるところ。床の上は嫌よね、
埃っぽいし、ここに椅子はないもの」
「いいの?これ、なんか高そう」
「いいの。それに貴方の部下さんももう座ってるし」

立っていた疲れで途中から忘れていたが、ゼロツーの後ろにあった本の上には
ミラクルマターが座っていた。

「あれ?あ、忘れてた……そうだ、ずっといたんだった」
「えぇ……?忘れてもらっちゃ困りますよ」
「ごめんごめん。あんまりにも静かだったし……」
「話しかけると余計疲れそうだったんでね」
「話してくれた方が気が紛れたのに」

そう言いながらゼロツーはぽすん、とミラクルマターの隣に座った。

「……あ、お茶淹れるわね」
「え?あ、いや、そんな気遣って貰わなくても」
「モデルになってくれたし、私欲で2時間近く立たせちゃったんだもの。
お茶……といわず、もっと他のことでもいいのよ」
「えぇ?え、いや大丈夫だってば」

そう?とドロシアは物足りなさそうに言うと、ぱたぱたと部屋を出て行った。
しばらくして隣の部屋からカチャカチャ食器の音が聞こえてくる。

「どーです、モデルやってみて」
「疲れた……っていうか、なんで僕を描こうと思ったのかなぁ」
「描きたかったからじゃないですか?」
「なんで?」
「あー……あのですね、ボクもたまに絵を……まぁかじってるくらいですけど、
だからちょっとだけ分かるんですけどね、絵ってあんまり頭で考えて
描くものじゃない時もあるんですよ」

ミラクルマターは意味の無さそうな手振りを加えながら話した。

「それってどういうこと?」
「だから、んーと、まぁ……こう、ちゃんと描きたいものを決めて、構図を決めて、
描き方も決めてよし!描くぞ!って時と、ぼんやーり、あー、なんか絵描きたいなー、
くらいの時があるんです。こう言っちゃあ失礼ですけど、ドロシアさん、
今日は後者の気分でー……その辺でたまたまゼロツー様を見かけたから
描こうと思ったんじゃないですかね」
「やっぱ僕ってたまたまくらいの価値?」
「でも画家の目に留まったんですから、凄いんじゃあないですか」
「適当だね」

そんな会話をしていると、部屋の外から声がした。直後、扉が少し空き、
その隙間からドロシアが顔を覗かせた。

「ふたりとも、お茶の用意出来たから場所移動しましょ。ここじゃ机もないもの。
ほら、こっちこっち」
「あ、ありがとう」

ドロシアが先に右へ向かったので、ふたりも立ち上がって部屋を出る。

「そういえば、噂によるとドロシアさんの淹れたお茶はすっごい美味しい
らしいですよ」
「そうなの?」
「良かったですね、モデルやったから飲み放題かも。ふふ」
「そんなに飲めないよ……」





(3月24日は64とタチカビの発売記念日で、その時自分で描いた絵からちょっとネタを
貰いました。もう4月入ったけど。だからドロシアさんとミラツーなんていう不
思議な組み合わせなんです。
24日に描いた絵のキャンバスに描かれてる絵は原型になってますけど小説の中では
普通にゼロツーが描かれてる。と思う。)

かかデザ・家族一幕 ( No.42 )
日時: 2020/11/10 02:10
名前: 麻ふすさん (ID: PLnfHFFW)

※このサイトを友人に見られていたことを知り死にたくなりました。
それはそうと今回はほのぼの回でしょうね。最近シリアス書いてない。





「あ゛ぁ゛ーー!!」
「どうしたのよダークゼロちゃん」
「姐さん!!聞いてくださいよ!!」
「そんな怒鳴り立てなくてもちゃぁんと聞いてあげるわよ。で?どうしたの?」

ダーククラフターが優しくなだめると、ダークゼロはまだ落ち着かない様子で、冷蔵庫を指さしてこう言った。

「ないんです!!俺が楽しみにしてたおやつ!!!」


「……そんなくだらない事のために私を呼び出したのか」

ゼロが心底不機嫌そうな顔をして心底不機嫌そうな態度で心底不機嫌そうな声で言う。

「くだらないないわよ〜おやつは大事なんだから」
「仕事中なんだがな……」
「えぇと、つまり私達は……ダークゼロくんのおやつ盗み食いの容疑にかけられてるんだよね?」

ゼロツーが確認すると、ダーククラフターは「そうよ」と言って大きく頷いた。
そして、特に意味もなくバンッと机を叩いて声のトーンを落とし言う。

「無くなったのは今日のおやつに楽しみにしてたチョコレートとプリン、それから4つあったマカロンのうち3つ、ゼリーもだっけ?あとはクッキー少量ね」
「どんだけ食うつもりだったんだ」
「声のトーン落ちるとなんだか男らしくなるね。かっこいいよ!」
「やだぁ、ゼロツーちゃんったら。刑事っぽくしようとしたのよ。うふふふ」

すると、そこに遅れてネクロディアスとダークマインド、ニルも合流した。
ちなみにダークマターとミラクルマターはもうすでにこの場にいる。
がいつも通り何も喋らない。

「クラフターさん……な、なんですか急用って」
「皆集まって……」
「ごはんじゃないの?」
「ご飯じゃないのよね。まぁ、こういうことよ」

ダーククラフターは三人に話を端折って伝えるべきところだけ伝えた。

「……」
「……無くなったのはいつ頃で?」
「あ、諦めた」
「いつなの?ダークゼロちゃん」
「昨日の夜には確実にあったっすよ。寝る前だから……夜の11時くらいっすかね。今日の朝見た時もありました。8時くらいかな」
「あたしがダークゼロちゃんの悲鳴を聞いたのは今日の午後2時よ」
「なんだこの推理もどきは」

困惑するゼロを横目にネクロディアスがまとめる。

「じゃあ8時から2時までの6時間の間に誰かが食べたんですね。食べたのかどうかは定かじゃないけれど」
「どうせニルなんじゃないのか」
「ニルちゃん、最近甘いもの食べないのよ」
「なんでだ?」

ゼロが聞くとダークマインドが答えた。

「この前、ニルを連れてポップスターに出向いたらカービィが「沢山食べないと成長しないよ!」とかなんとか言って大量のお菓子をニルに食べさせ始めたんですよ。それからすっかりトラウマになったっぽくって」
「カービィあいつほんとにロクな事しないな」
「ニルじゃないとすると……ダークマターとミラクルマターは……ないな。確実に」

ダークマターはゼロ、ミラクルマターはゼロツー、と自身の翻訳機の後ろにそれぞれ立ったまま何も言わない二人を見て若干困惑した様子でダークマインドが言う。

「ないぞ。ダークマターは朝起きてから私とずっと一緒にいた」
「ミラも私と一緒にいたよ。朝ご飯食べてたもんね」
「ゼロ様はお菓子を食べないしゼロツー様は真面目だからそんな事しないし、誰が食ったんだろうか」
「ちなみに俺とニルとダークマインドも一緒にいた」
「あたし、悲鳴を聞くまでリムルちゃん達といたわよ」
「なんで皆一緒にいるんすか。俺がぼっちみたいじゃないですか」

ダークゼロの悲痛な叫びを誰もがスルーした後、ゼロが言う。

「そもそも、うちにはニル以外盗み食いする程お菓子に目がない奴はいない。私が一番良く知っている。ニルだってそんな事しない。そうだよな」
「うん!」
「つまりこれは外部の者の犯行だ。よく考えればこんな推理ごっこしなくてもわかる事だった」

本気で時間を無駄にした事に対して落ち込んだらしく、ゼロはがっくりと頭を垂れる。

「無駄足でしたね」
「じゃあ外部の者でお菓子に目がない奴は誰か?」

そうゼロが問いた後、しばらく沈黙が続いてから全員が声を合わせて言った。

「カービィ」


「朝はやく起きちゃったから、暇だし遊びに行こうと思ったんだよ。そしたら誰も出なかったけど鍵は開いてたから入った」
「犯罪だぞ」
「中に入ったら甘い匂いがしたもんでついついね。いやごめんって。慣れない早起きを何故かしたせいでお腹すいてたんだよ」
「空いてない時なんてあるのか?」
「それで?チョコとプリンとゼリーとマカロンとクッキーとケーキとタルトだっけ?」
「増えてる」
「今度返すね。僕は料理とか出来ないからワドルディあたりに作ってもらうけど」
「ほんとロクな事しないな、ほんとに」




(大抵こういうのって書き出しと大体のテーマだけ決めて着地点を全く決めずに書くからいつもオチが良く分からなくなります。かかデザあんこは謎に家族感があって書いてて楽しい。もちろん、謎にシリアスな設定とかあったりもするけど、あんまり出てない)

かかデザ・身長 ( No.43 )
日時: 2020/11/10 02:09
名前: 麻ふすさん (ID: PLnfHFFW)

※かかデザのあんこ達書くの楽しすぎないか?





「………………」

今朝からゼロは真っ赤な単眼をぎらつかせたまま一言も喋らない。椅子に座ったままなにも喋らない。
その横でダークマターは一言も発さずゼロを見つめている。

「……なぁ、あれ」
「?」
「ミラクルマター、あれ、何があったんだ?」

部屋の外から首だけを覗かせたダークマインドが聞くと、ミラクルマターはフォルムチェンジをした。
白い髪が燃えるような赤に変わり、瞳の色もピンクに近かった赤から鮮血の赤に。
ファイアのコピーをベースにしたものだ。以前までは変身は戦闘の意思がなければ出来なかったが、近頃成長したのか好きな時に変身出来るようになった。
今はゼロツーが訳あって不在なので、戦闘時ではないが言葉を使う為に変身する。

「ゼロ様は……今落ち込んでおられるのです」

普段は聞けない凛とした声でミラクルマターが言う。

「落ち込む……?」
「あれは早朝の出来事でした……」


「あー!」

ゼロツーが、ゼロの横に並んでそう叫んだ。

「なんだ……耳元で叫ぶな」
「うふふ、私、いつの間にかゼロの身長抜かしてる!!」


「まじで言ってんのか?」
「私は嘘をつきません」
「いや、知ってるけど……ゼロ様、あれ仮にも俺達のリーダーだよな?ゼロツー様に身長抜かされたぐらいで落ち込むのか……?」
「ダークマインドさん」
「おう」
「貴方は身長が高いので分からないでしょうが……ゼロ様は男性、ゼロツー様は女性でおられます。ましてや立場的にはゼロ様の方が上であります。……身長が低いというのは、ゼロ様の長としてのプライドが傷つくのです。
リーダーだからこそなのです」
「そうなのか……」

ダークマインドは戸惑いながらもゼロに目線を戻す。
まとまらない会議の時もあれぐらいの威圧感を出してくれたらな、と思いつつミラクルマターに再び問う。

「ミラクルマター、お前すんなり変身したけどゼロツー様はどうしたんだ?」
「身長を縮める方法を探しに宇宙の果てまで」
「なんでそんな必死になってるんだよ……」

ゼロツー様は優しいですから、とミラクルマターは言う。

「ゼロ様は男性にしては身長低めだし、ゼロツー様は女性にしては身長高めだもんな……」
「身長が低いと格好がつかないと、泣きわめく寸前でした」
「それは嘘だろ」
「本気です。泣きそうでした」
「意外なところでプライドって崩れるんだな……」
「…………何してるんだ二人とも、家政婦ごっこか?」

廊下を通りかかったネクロディアスが後ろから話しかけてきた。

「ゼロ様を見ている」
「殺人現場か」
「違います」

ミラクルマターが再び同じ説明をネクロディアスにする。
それを聞いたネクロディアスは申し訳なさそうに一言、

「阿呆みたいだ」
「俺も思った」
「実を言うと私も少し」

するとネクロディアスは腕を組んで唸った。

「まぁ、でも……分かるっちゃ分かるよ。俺も……ダークマインドに、途中からどんどん抜かされてさ」
「昔は同じぐらいだったのにな」
「個体差は残酷です」
「もうこれは俺達が全員屈みながら生きるしかないか」
「気使われすぎて逆に病みそうだ」
「難しいなぁ」

そんな会話をしているうちに声が大きくなっていたのか、後半は内容がだだ漏れになっていた。
その為、いつの間にか3人の背後にゼロがいた。

「お前ら」
「うはぁ!?」
「なにさっきからこそこそしてるんだ」
「え!?いやいやもうなんか全然なんもないです」
「なーにが何もない、だ。別に私は………………別に私は、ゼロツーに身長を抜かされてあんなになってた訳じゃあないからな」
「ほんとにですか?」

ミラクラマターは、じゃあ今の沈黙はなんだ、と言いたい顔でそう聞く。

「ほんとだ」

ゼロはわざとらしく咳払いをすると、「この話はもう終わりだ」と言ってしっしっと手をはらった。

「そういえばゼロツーはどこに行ったんだ?」
「今頃宇宙の果てで頭でも打ちながら身長を縮めているのではないでしょうか」
「ゼロツーーー!!!」


「なに皆で深刻そうな顔してるの?」
「いや、お前が身長縮めようと頭を打ち付けてるんじゃないかって……」
「そんなことしないよ……私、ちょっと散歩行ってただけだもん」

そうゼロツーが言ったので、ダークマインドはちらりとミラクルマターを見やる。

「……」
「……」

目をそらされた。
昔はこんなジョークを言う奴じゃなかった。こいつも変わったな、と思いつつ、後で絞めてやろうかとも思う。

「…………あれ?もしかしてゼロ、私に身長抜かされて落ち込んでたの?」
「そ……そんな訳ないだろうが。ちょっと考え事してただけだ。いや、ほんとだぞ」
「そうなんだー」
「……そうだ」





(やばいね。楽しいんだ書くのが。まぁ、次は別の書こうかなって思うけど、
最近シリアス書いてないですね。シリアス書く体力ないです)

ふすデザ・蝶 ( No.44 )
日時: 2019/06/06 00:02
名前: 麻ふすさん (ID: PFFeSaYl)

※久々のシリアス。ふすソウルさん達とバルフレさんのお話。
いつにも増して捏造設定盛り沢山なのでその辺気を付けてください
ほぼずっと地の文です。





草木はある。
花も咲いている。
風だって吹いているし、雨も降る。雪も降る。夜が来て朝が来る。
だけど、そこには「彼ら」しかいない。
草木はあれど、花は咲いていれど、それは形だけのもの。
生きてはいない。動くものはいない。粘土のようなもの。
池には魚は存在せず、花々の周りを舞う蝶もいない。
いや、蝶は……いる。ここに。


今は昼。太陽が雲のあいだから覗き、地上を見渡している。
風はない。木々の青々した葉っぱは揺れない。
草原から続く道の先にある、小さな丘に「彼ら」はいる。
かつて別の者の中に潜み、狂気の魂を揺らし、叫び、嘆き悲しみ、
星の戦士に倒された者。
星の戦士は敵対した者に手を差し伸べ、握りしめ、その者達を救ってきたが、
「彼ら」は救われたとはいえないだろう。
少なくとも、「私」はこの結果が救われたものだとは思いたくない。
急ぐ必要も無いので、周りの景色を眺めゆったり歩きながら丘に向かう。
ここでは生命の時がない。言ってしまえば、死者の住まう世界だ。
「彼ら」はもう生きてはいない。率直に言えば、既に死んだ。
肉体は持っていなかっただろうから死んだというか、魂の消滅だろうか。
まぁ、それはいい。
私は思ったよりも早く丘に着いた。ここの景色は変わり映えしないからだ。
何も変わらない。何も変わってない。
だから私もいつもと変わらず、なにも構えずに「彼ら」の元に向かう。
なぜ、私はこんなことをしているのだろうか。

「…………」

見つけた。ひとり、ふたり……3人だ。
狂った道化師だった魂と、狂った魔術師だった魂と、狂った魔女だった魂。
いつもと変わらず、なにかを話している。
道化師は手折った花を片手に握っている。
ここの植物はいくらちぎっても死なないし枯れない。
元から生きてなんかいないからだ、当たり前だろう。

「あ、バルフレイ」

1人が気付いた。魔術師……名前はマホロアソウル。
道化師がマルクソウルで、魔女がドロシアソウルだ。
本当の名前すらもないから、潜んでいた体の名前を使っているだけ。
……潜んでいるのは、私も同じようなものか。
どうせ呼ぶならナイトまで呼んでほしいな。
マホロアソウルとドロシアソウルは私に気付いたが、
マルクソウルは何も聞こえていないかのように空を見つめている。

「今日は何しに来たの?」

たたた、とこちらに駆け寄ってくる。華奢な体だ、
こんな細い腕、私になら簡単に折れてしまいそうなくらい。
彼女の細いほそい心も、簡単に折れてしまうだろう。
彼女……本体のマホロアの方は男だが、魂のかたちは女だったのだろう。
同じ理由でドロシアソウルも本体は女だがこちらは男だ。

「別に。様子を見に来ただけさ。他の奴らはどうしたんだ?」

確か他にもあと3人いたはずだが。

「みんなどっか出かけちゃったよ。遠くに行くって」
「遠くね」

遠く……この世界に遠い場所なんてあるのだろうか。
遠くに行っても行っても行っても、景色は変わらない気がする。

「ねぇねぇ、これ見て。僕が作ったの。可愛いでしょ?」
「花冠か?」
「うん、綺麗な花を集めたんだ」

この世界には"醜いもの"が存在しないから、どんな花を使っても綺麗になる……
というのを、彼女に告げる趣味は私にはない。
醜いものといえば彼らだけだ。
私が醜くないわけではないが。

「あげる」
「ありがとう」
「すぐ帰っちゃうの?」
「あぁ……今日はちょっと、はやいかな」

要件が済めば遅いも早いもない。
幾度となくここに来るがその要件が済まされたことは無い。

「そうなんだ」
「あ、そうだ、これはお土産」
「これなに?ぬいぐるみさん?」
「このぬいぐるみは何か分かるか?」
「え?うーん……」
「熊さんだよ。こっちは犬」

近づいてきたドロシアソウルがそう優しく教える。
彼はこの狂った世界の中でなら、比較的まともだと言えるだろう。
知識もあるし、常識もある。
ただ、その心が折れてしまわない限りで。

「くまもいぬも……見たことないよ?」
「この辺りにはいないだけだろう」

思わずそう言う。
違う、本当はこんな世界のどこを探してもいない。

「見てみたいなぁ」
「いつかな」

そのいつかは絶対に来ない。

「これもらってもいいの?」
「壊すなよ」
「大丈夫」

マホロアソウルはそう言ってぬいぐるみを手に取る。
最初の頃は5分で布を破いていたが、最近はそんなことはしない。
成長したのか……成長か。

「ありがとう」

さっきから彼女の発する言葉から感情を読み取れない。
怖いほどに静かで、平坦だ。なんの深みもない。

「……さて、じゃあそろそろ行くか」
「もう行っちゃうの?」
「また来るから」

来ないといけない。

「じゃあね」

別れの言葉を聞いて元来た道を戻っていく。
私はバルフレイナイト。極蝶、なんて呼ばれているが……
そんな大したものでは無い。
今は、普段ただの蝶でしかない私が戦士の体に乗り移って動いている。
戦士側に私が操っている時の記憶はない。
蝶である私は、所謂黄泉と現世の橋渡しをしている。
半分生きていて、半分死んでいるようなものだ。
橋渡しなのだから、本来彼らしかいないこの世界にもやって来れる。

死んだことにも気付かず、ただし本能のうちに醜いものを恐れ、
自分達以外が存在しない美しい狂った世界を自分達で作った。
そしてそれに囚われ続けている。
彼らは救われなかった。星の戦士には救えなかった。
それほど細い心だった。触れただけで粉々に砕けてしまうのだ。
ここは彼らの為の監獄。
魂を閉じ込めておく為の監獄。
私の要件とは、彼らにその真実を伝えてこの世界を壊すこと、だ。
真実。
ここには生きているものはいないし、
草花も空も海も風も土も太陽も月も星も何もかもが偽物で、
彼らはもう死んでいて、動物達には絶対に会えなくて。
これを伝えること。彼らに。
趣味はなくともそれは仕事である。
触れただけで壊れる心をさらに上から足で踏みつけるんだ。
無くなるまで。
実際、今の状況は完結ではない。彼らはまだ救われていない。
こんな醜い世界から彼らを解放してあげることこそが……救い。
でも。
でも、彼らを私は救おうとはしていない。
彼らの儚い心を踏み潰すことが、本当に救いか?
私が何を怖がっているのか分からない。
死者は死者だ。なぜ、なぜ今更心が壊れることを怖がる?
伝えるだけだ。文字にして、言葉にして、声にして。
そうすれば、もうこんな世界に来なくていいのに。
そんなだから。
そんなだから、私はいつまでも、この世界に来てしまうのだ。
見ているだけで心が壊れてしまいそうな狂ったこの世界に。
本当に狂っているのは私かもしれない。




(なんか……ね、シリアス書いてなかった反動からか……地の文の勢いが凄いね……
しかもここまで一度も !←を使ってないんですよね。
ということで、本当は真実を伝えなければいけないのに、
自分が心を壊してしまうのが怖いバルフレさんのお話でした。
ほんとにただ単に彼の葛藤でしかないです。一人語り。それでもこんな長くなるのね
いや、もう壊れてるからいくら壊しても何も変わらないのですが。)

かかデザ・髪の毛 ( No.45 )
日時: 2020/11/10 02:07
名前: 麻ふすさん (ID: PLnfHFFW)

※かかマホくんをデザ変したのでそれにまつわるお話をもそもそと。
かかカビくんはわりと男らしかったりします。
そういえば終着点のお話を結構考えてたりするけどなかなか形に出来てません……





これは今からすこし前のお話。
まだ滑稽な魔術師が、悪魔の星の戦士を騙している最中のお話。


魔術師―マホロアは、浅めに被ったフードを邪魔そうにとっぱらって、不機嫌そうな顔でスクリーンを睨んでいた。
暑いのか、手袋を外した白い両手で忙しなくキーボードを叩く。
今カービィ達は冒険に行っており、天駆ける船ローアの中には彼のみ。
ローアの自我プログラムも居るにはいるが、彼の主人がこうも不機嫌な時は外に出てこないだろう。

「ハー……スフィア54%……ランディアを目前にシテ、スフィアの集まりが悪いナァ……」

マホロアは何回かため息をつくと、怒っても仕方が無い、とスクリーンの電源を落とす。

「マァ、カービィ達はボクのタメに頑張ってくれてるシ……ハルカンドラに近づくにツレテ、敵も強くなってたシ……スフィアはアクマでもオマケだもんネェ。
あればイイナァ、くらいのモノだシ」

近くにあった椅子を引き、どかっと乱暴に座る。
その際、恐らく切るのが面倒だから放置しているのであろう長い金髪がはらりと垂れて、そのままマホロアは夢現の状態……にはなれなかった。
先ほど彼が椅子に座ったよりも乱暴にローアのドアが開いた。というのも、あれは自動ドアで衝突の危険性を回避するためにローアが素早く開いたのだが。
入ってきたのはカービィだった。

「マホロアー!」
「アーモウ……なんダヨォ……」
「はい、パーツ」
「ドウモ……」
「……どうした?なんか疲れてる?」
「マァ……大丈夫ダヨォ。……アレ?他の皆ハ?」

カービィの周りを見ても、いつもいる他の3人がいない。

「死ンダ?」
「縁起の悪いこと言うな……って、違う。皆は別の場所で探検してるんだ。僕だけひとりで探索してた」
「ヘェ……」

とりあえずパーツを受け取って、その辺の机に置いておく。船にパーツを組み込むのもかなりの重労働なので後回しにしたようだ。
その間にカービィは、珍しくフードを外したマホロアを見つめていた。

「マホロア、意外と髪長いんだね。僕と同じくらいだ」
「ン?あぁ……切るのがメンドーだから伸ばしてるダケ」
「結構、きみってガサツだよね……」
「切るのもメンドー、長いのもメンドー……どうしたもんか」
「じゃあ、僕みたいに結んじゃえばいいよ」
「結ぶ?それだとフード被った時ジャマなんだよネェ」
「違うって。僕みたいに、って言ったでしょ?」

カービィはそう言うと、ポケットから髪ゴムを取り出した。
「戦闘中に髪ゴムが切れちゃうことがあるからねー」と言いつつ、髪ゴムを手首に付けマホロアの髪の毛を触る。

「ぼさぼさ」
「手入れなんてしてないヨォ」
「ふーん。じゃあ、櫛ある?」
「クシ?ンー……あった……カナ、チョット待っててネェ」

数分後、若干埃を被った櫛を持ってマホロアは戻ってきた。

「ハイ。コレでいいカイ?」
「うん、充分。よーし。じゃあとかすよ」

カービィは櫛を受け取ると、髪をとかすためにマホロアの背面へ。
櫛を髪の毛に入れると、絡みに絡まった髪に引っかかりマホロアの頭ごと下に引っ張られた。

「イッタイ!!痛いんだケド!?チョット!」
「ぼさぼさだから絡まってるんだよ!」
「イーターイー」
「我慢がまん。あんまり動かないでね。ほら、さらさらになった」
「ンー?んー、ウン……」

マホロアは自分の髪の毛を手櫛で確認する。なるほど、確かにさらさらだ。
カービィはその次に、マホロアの正面に回る。そしてとかした髪の毛を前に流すと、何やらマホロアの髪の毛をいじり始めた。

「あれー?うーん、えっと……こうかな、いや」
「なにシテンノ」
「三つ編み」
「三つ編みィ?メンドーだから普通でいいヨォ」
「そう?いやー、正面からだったら三つ編み出来るかなって思ったけどやっぱ駄目だった」
「キミ、毎日ワドルディに結んで貰ってるヨネェ。アレってジブンじゃ出来ないカラだったんダ」

言いつつ、マホロアはまだ試行錯誤しているカービィから髪ゴムを取る。

「あ」
「ボクはジブンでやれるヨォ。ただ結ぶダケなんだカラ」
「えー、三つ編みがいいよ」
「余計ジャマ」

不満そうなカービィを横目にマホロアはシンプルに髪の毛を結ぶ。

「ヨシ。あー、確かに楽だネェ」

外していたフードを再び被り立ち上がると、船の中を少し歩く。

「でしょ?」
「ウン。アリガトネェ」
「どういたしまして……あ、僕はもうそろそろ行くよ。皆と合流しなきゃ」
「ソウカイ。気を付けテ」
「じゃあね」

カービィは手を振ると、船の中から出ていく。
手を振り返していたマホロアだが、カービィの姿が見えなくなると手を降ろした。

「…………ハァ。疲れタ……まぁ、髪の毛は本当に楽ダネ」

さっきまで座っていた椅子にまた腰掛けると、もう一度ため息をつく。

「ンー……カービィ達は……あと、もうちょっとでランディアの所カナァ?」

足を組み、右肘を机に置き、左手で目をこする。

「まだかかるカ……次帰ってくるまで、少し寝てヨウ……フフ、まぁ、疲れてたら良くないシ」





(片方おさげの髪の毛のお話。マホロアくんこれが結構気に入ったみたいでwii事件後もそのヘアスタイルです。
あと個人的に金髪マホロアは絶滅危惧種だと思ってます)


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