【〜秋の夜長に〜SS小説大会にご参加いかがですか?】■結果発表!(2016.11.30 管理人更新)集計し精査した結果、壬崎菜音@壬生菜さんの「マッチョ売りな少女」(>>39)が1位となりました!壬崎菜音さん、おめでとうございます〜!今回ご参加くださった皆様、誠にありがとうございます!投票してくださった皆様にも深く御礼申し上げます!次回SS大会にもふるってご参加ください。****************************【日程】■ 第13回(2016年9月3日(土)18:00〜11月26日(土)23:59)※実際には11月27日00:59ごろまで表示されることがあります※小説カキコ全体としては3回目のためまだ仮的な開催です※ルールは随時修正追加予定です※風死様によるスレッド「SS大会」を継続した企画となりますので、回数は第11回からとしました。風死様、ありがとうございます!http://www.kakiko.info/bbs_talk/read.cgi?mode=view&no=10058&word=%e9%a2%a8**************************【第13回 SS小説大会 参加ルール】■目的基本的には平日限定の企画です(投稿は休日に行ってもOKです)夏・冬の小説本大会の合間の息抜きイベントとしてご利用ください■投稿場所毎大会ごとに新スレッドを管理者が作成し、ご参加者方皆で共有使用していきます(※未定)新スレッドは管理者がご用意しますので、ご利用者様方で作成する必要はありません■投票方法スレッド内の各レス(子記事)に投票用ボタンがありますのでそちらをクリックして押していただければOKです⇒投票回数に特に制限は設けませんが、明らかに不当な投票行為があった場合にはカウント無効とし除外します■投稿文字数200文字以上〜1万字前後まで((スペース含む)1記事約4000文字上限×3記事以内)⇒この規定外になりそうな場合はご相談ください(この掲示板内「SS大会専用・連絡相談用スレッド」にて)■投稿ジャンルSS小説、詩、散文、いずれでもOKです。ノンジャンル。お題は当面ありません⇒禁止ジャンルR18系、(一般サイトとして通常許容できないレベルの)具体的な暴力グロ描写、実在人物・法人等を題材にしたもの、二次小説■投稿ニックネーム、作品数1大会中に10を超える、ほぼ差異のない投稿は禁止です。無効投稿とみなし作者様に予告なく管理者削除することがありますニックネームの複数使用は悪気のない限り自由です■発表等 ※予定2016年11月27日(日)12:00(予定)■賞品等1位入賞者には500円分のクオカードを郵便にてお送りします(ただし、管理者宛てメールにて希望依頼される場合にのみ発送します。こちらから住所氏名などをお伺いすることはございませんので、不要な場合は入賞賞品発送依頼をしなければOKです。メールのあて先は mori.kanri@gmail.com あてに、■住所■氏名 をご記入の上小説カキコ管理人あてに送信してください)■その他ご不明な点はこの掲示板内「SS大会専用・連絡相談用スレッド」までお問い合わせくださいhttp://www.kakiko.cc/novel/novel_ss/index.cgi?mode=view&no=10001******************************平日電車やバスなどの移動時間や、ちょっとした待ち時間など。お暇なひとときに短いショートストーリーを描いてみては。どうぞよろしくお願い申し上げます。******************************<ご参加タイトル 一覧> ※敬称略>>1 『宇宙(よぞら)のなかの、おともだち。』 Garnet>>2 『キミの夢』 霊夢>>3 『大切な場所』 レオン>>4 『最後の英雄』 月白鳥>>5 『星空と秘密の気持ち』 霊歌>>6 『夕焼け月夜を君と』 PLUM >>7 『焦がれし子宮』 めー>>8 『知』 茶色のブロック>>9 『儚い少女』 茶色のブロック>>10 『 white lilydie 』 PLUM>>11 『音を通じて』 奈乃香>>12 『月下美人。』 鏡杏>>13 『小さい頃からスキだったの』 ユリ>>14 『折り鶴』 御影>>15 『妄想を続けた結果、こうなりました。』 のあ>>16 『夏の日の物語。』 レオン>>17 『恋するティラミス』 ゼロ>>18 『貴女の望むもの』 奈乃香 >>19 『貧血少女』 PLUM>>20 『ねぇ』 はてなの子 >>21 『記念日には、貴方の言葉。』 はずみ >>22 『君も私も爆発だよ☆』 茶色のブロック>>23 『Reason for the smile』 ユリ >>24 『彼は未来を見る研究をしていた』 葉桜 來夢>>25 『Love me only』 ユリ>>26 『ワタシとアナタ』 はてなの子>>27 『匿名スキル』 とくだ>>28 『アナタだけ』 レオン>>29 『秋の夜長に君を求めて』 蒼衣>>30 『受け継がれる想い。』 レオン>>31 『素直になってもいいですか』 たんぽぽ >>32 『color』 蒼衣>>33 『二度とない日々へ』 深碧>>34 『破られた不可侵条約』 たんぽぽ>>35 『だーれだ』 ろろ>>36 『堕天使』 鏡>>37 『複雑ラブリメンバー』 とくだ>>38 『してはいけない恋……?』 マシャ>>39 『マッチョ売りな少女』 壬崎菜音@壬生菜>>40 『空想森の中で。』 ニンジン×2>>41 >>46 >>49 『あおいろ』(1)(2)(3) &>>42 『星の降る日』 安ちゃん>>43 『この感情は。』 みりぐらむ>>45 『やさいじゅーす』 とくだ>>47 『はづかし』 沖>>48 『Trick or love!』 PLUM>>50 『月が綺麗な夜』 小色>>51 『一番は』 草見 夢>>52 『名前』 草見 夢>>53 『人が死ぬとき』 草見 夢>>54-55 『天使と悪魔と』(1)(2) 草見 夢>>56 『人生最後の現実逃避』 みかん (2016.11.19 更新)
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私は聞いたことがある。ハロウィーンの都市伝説「恋の黒魔法」を。トリック・オア・ラブと言った魔女は、好きな男子に魔女に恋する魔法をかけられてしまうといった内容だ。その魔女が、年々世界中で100人ずつ増える傾向にある。私もその一人だ。普段から男子に好かれているわけでもない。むしろ嫌われているほうだ。なので男子の心をつかめるのは、今日という日だけ。私の・・私が誕生日の次に幸せな一日。10月31日・・ハロウィーンがやってくる。男子を・・心からめちゃくちゃにしてやりたい。そんな気持ちが感情の奥に芽生えていた。
あたしは見ていた。その名前を見ていた。あらがき おうとひらがなで書かれた名札を見ていた。***「何でって…変な質問ね…?というか、央、有栖と…知り合いなの?」「知り合いっていうか…」なんと言ったらいいものかわからずに、深琴の方に視線を送る。しかし深琴は黙って優雅に微笑むだけ。あの頃から深琴はそうだ。大事なことは何ひとつ語らず、こちらが察するしかない。突然いなくなったあの時も、大切なことは何も言ってくれなかった。「有栖」「何ですか?」彩葉が深琴を呼んだ。そこで俺は最初の疑問に戻る。「…お前らは?知り合いなのか」「知り合いも何も、有栖は私の家の使用人で…私の専属の召使い、といったところかしら…」衝撃が走った。彩葉は深琴に向き直り、続けた。「有栖、あなたは央とどんな関係なの?出会ったのはいつかしら」「…ふふ、まあいいでしょう。中学の頃の級友ですよ。もっとも…私は彼のこと好きでしたけど」「………はっぇ?」あまりにさらっとした突然の告白に、素っ頓狂な声が出た。「折角だから、昔話をしましょう。央くん、あなたをどん底に陥れたのは誰ですか?」「えっ…?」突然の質問に戸惑いつつも、答える。「彩葉…だな」「そう、そうです。私は反宮家の使用人として小さい頃から住み込ませてもらってました。家が貧乏だったので、ね。央くんの話は彩葉様から聞いてました。好きな人が出来た、って」「……………」「まあお話を聞いているうちに、彩葉様が普通とはかなり違うアプローチをされていることは明白になりましたが…まあそこで、私は貴方に興味を持ったわけです、央くん」「……あの、何で敬語?」「へっ?」考えてみれば、なぜ深琴が俺に敬語なのか。昔は普通にタメ口だったし、俺の方が偉くなったとかいうわけでもないし…。深琴は言う。「それは…」「…それは?」「………もういいか、言うよ。あのね、あたしの中で貴方は最悪な思い出なの、わかる?」「えっ?」「貴方の純粋さはあたしにとっての毒。貴方が病んで辛そうにしているから支えようと思って、ずっとそばにいてあげたじゃない。なのに貴方は、貴方が見てたのはたったひとり。貴方が思っていたのは彩葉様だけ。貴方は彩葉様とのことを悪い思い出として扱っていたしそれは間違ってない、けど、それは…それは、貴方が、消してしまいたい思い出ではなかった」弾丸のように並べ立てられる言葉に圧倒され、思わず後ずさる。だが深琴は止まらない。「貴方はやたらと青色のものを持っていたし、貴方は晴天の日に必ず海辺に行っていた。その後吐き気を催そうが何だろうが絶対ね。それから、なにより、貴方は」一息。「貴方は、あの紙切れを捨てたくなかったんでしょう?」紙切れ。「あらがき おう」 「そみや いろは」ひらがなで書かれた文字は、まだ彩葉が酷いいじめっ子になる前に俺にくれたものだった。「…耐えられなくなった。ただそれだけ。あたしはこんなに貴方を支えているのに、貴方が外に出られるまで一緒にいてあげたのに、貴方が見ているのはあたしじゃなかったもの。…中学を卒業した後、貴方の前からいなくなったのはそのせい」………何も言うべきじゃないと思った。全てその通りなのだ。まったく。何かを言えはしないのだ。俺は、言えない。「…有栖」口を開いたのは彩葉だった。「ならどうして私の召使いであり続けたの」「金の為ですよ。当たり前でしょう」「違うわ」断言し、彩葉は深琴の方を向いた。「ならどうして、ここまで私を支えてくれたの」「………」「ならどうして、ろくにひとりで動けない私の世話なんかやってくれたの?」「………だっ…から、金の…」「それだったら、何も私の専属でなくても、使用人の仕事なんて他にいくらでもあるわ」「……………」「有栖。…本当は、もしかしたらまた、央に会えるかもしれないって…その希望を完全には捨てきれなかったから、私の召使いだったんじゃないの?」「っ…!」深琴は息を呑む。目を見張り、顔を強張らせる。「結局あなたも央と同じよ。好きな人に自分を傷つけられて、一旦離れるのだけど、どうしても忘れられない…そうでしょ」「……………」「央に手紙を書いたらどうかって、私に言い続けたのはあなたよ」…初めて知った。俺ばっかり片思いしてて、俺ばっかり深琴に頼りきりで、深琴が俺に愛想尽かしたのだとずっと思ってた。が、考えてみれば頭の片隅になぜかずっと彩葉がいたわけだし、頼りきっていたとはいえ最終的に自分で外に出られるようになったわけだし、考えれば考えるほど深琴に言われたのが正しい。………。「…私」彩葉が言う。「今は自分の目の色が好きなの。…央が褒めてくれたから。有栖と引き合わせてくれたから。本当のことを知れたから」「…彩葉様」「だから。…有栖…あなたも青色を好きになってよ。今までの本当のことを知って、それでも良かったって、そう思って」「………」深琴は俯いた。俯き、口を真一文字に結び、両の手の拳を握りしめ…最後に、頷いた。彩葉はそれに満足そうに頷き返した。深琴はしばらく俯いていたが、やがて何かを吹っ切るように顔を上げ…俺を見て、また優雅な、静かな、あの笑顔を見せてくれた。そして彩葉がこちらを向いて言う。「…ああ、本当はもうひとつ、言いたいこと…あったの」「何?」「改めて、ね。………。」「あなたが好きです」「…ああ…そうかよ…」どこまでも広がる碧い海に、どこまでも続く蒼い空にーーーどこまでも深い、目の青さ。忌み嫌ってきたあおいろを好きになれた、夏。END
月が綺麗な夜には、素敵な出会いが運命を巡り待つという。 「この部屋、空き部屋だから適当に使って寝て。詳しいことは、とにかく明日、明日。」 大学生なりたての俺が、おんぼろアパートで猫を拾って飼っていたのがばれた。当然のように猫のごとく捨てられて、行く当てもなく猫を抱えてさまよっていた深夜。涙目になってトボトボしていた俺を見つけて、拾ってくれた女神。 「あ、あのっ…その…俺、猫いて…その、」 「あー?猫?あんたも猫も大して変わんないでしょ。とにかく明日だってば。今何時か知ってる?酒飲み直すんだから若者は…ほら、これあげるから寝ること。」 自分が羽織っていた毛布を取って、俺の頭にかぶせた。柔らかくて、どこかぬくもりを感じる。 「あ、ありがとうございますっ!おやすみなさいっ!」 深く一礼して、眠気のせいか崩れるようにして部屋に倒れこむ。もらった毛布と抱き抱えてる猫とで、体が暖かい。微かなお酒の匂いと、花のような女の人のいい匂いが混ざって酔いそうに心地がいい。 …すごく綺麗な人だったな。もし、さっきのは全て幻で狸に化かされているのだとしても許せてしまうくらいに…。「いつまで寝てんの。」 頭上で声が響く。目を開くと、知らない女の人と目がぱっちり合う。 「あの…。…?」 「あんた昨日のこと忘れてんの?ほら、あんた昨日夜遅くに〈月光荘〉の真ん前でトボトボふらついてて…私たまたま外で酒飲んでたから、あんた拾って…思い出した?」 「あっ!その、昨日はありがとうございました!この毛布もっ!」 「ん、それあげる。あんたなんも持ってないんでしょ。それないと凍死するし。〈月光荘〉から死人出すわけにはいかないし。」 「え、俺あの部屋使ってもいいんですか!?」 「使っていいも何も、昨日しっかり寝ただろーが。一回寝たら、とりあえずそこに住んでみるのが〈月光荘〉のルール。」 「そんな…ありがとうございます!俺と付き合ってください!」 まだ名前も知らないけれど。完全に恋におちた。俺はこの人のことが好きだ。 「あんた馬鹿じゃないの?ほら、〈月光荘〉の説明するから中入って。」…結局、告白の件は相手にしてもらえなかった。まぁ、まだ名前も知らなかったししょうがないか。まだアタックチャンスはある。大丈夫。 彼女の名前は、芳川 東(よしかわ あずま)さん。名前も美しい。年齢は詳しくは教えてくれなかったけど、お酒が飲めるってことは20歳以上…見かけ的には23歳くらいかな。この若さで〈月光荘〉の管理人さんを務めている。 俺、十牧 あき(とまき あき)は〈月光荘〉の管理人さんに恋をした。 長くて黒い艶やかな降ろした髪に、儚げな瞳。薄紅色の唇から紡がれる声…ひとつひとつ全てが愛しい。大雑把だけど優しい性格。猫も許可してくれたし、名前もつけてくれた。麦、という。(東さんは麦とつけた後、ビールぅと呟いていた。)心からいい人なんだと思う。もう、全てに惹かれる。 東さんは、どうすれば俺を好きになってくれるんだろう。 俺が〈月光荘〉に拾われてから、今日でまるまる一年だ。期待されるのは俺と東さんの進展だが、残念ながら何も無い。 お隣の部屋の者としては、夕飯を分け合いっこしたり、麦の世話を一緒にしたりと仲良くなれたけど、恋愛的なことではまるで相手にされなかった。 帰りのちょうど会える時間をねらって帰ったり、夕飯は東さんの好きな肉じゃがをよく作ったり、健気な努力は毎日してるのに全く実らない毎日だった。 俺は手が触れるだけでドキドキしてるというのに。 だから今日が勝負!俺と東さんが出会った日に、東さんを振り向かせてみせる! 大学には電車で通っている。それほど遠くもなく、近くもない距離だ。朝は東さんに会えないから、いつも通り帰りに会って話そう。それで、少しでもいいから俺のこと意識してもらえるように…。 「あっ、東さん!お帰りなさいです。」 「おぉ、あきか。お帰り。」 買い物帰りの東さん…超絶可愛いです!「今日で一年だな…。あきが〈月光荘〉に来てから。」 …!東さん覚えててくれたんですか!? 「あ、東さんに俺が初めて出会って恋をした日です。教えてください…東さんは、俺のことどう思ってるんですか?」 あぁー、勢いで聞いちゃったー!答えなんて…分かりきってるのに。空しくなるだけなのに。 「…あきは、いい奴だと思うよ。肉じゃがも上手いしな。」 俺の目を見て、ふはっと笑う。ずるいよ、東さん。そんな笑顔をしてたら責められるわけがない。 「そういうことじゃなくって…!」 「今日の夕食は?」 「…肉じゃがです。」 「まじ、ビンゴじゃん。食べに行ってもいい?」 たまに肉じゃがの日は東さんは俺の部屋に来て食べる。それは、仲良しの証拠であり、俺が男として見られていない証拠でもある。 それでも。…それでも好きなんだよ。 「もちろんですっ。じゃあすぐに作るので、また後で!」 「うん。楽しみにしてる。」 東さんへの愛情を込められるだけ込めて、肉じゃがを作る。隠し味は愛情ってやつだ。 今日はダメでも、いつか。いつか本当に東さんに伝わる日を夢みて。 「ふはー!飲んだ飲んだぁ…。ふあぁ…。あぁ、麦寝ちゃったじゃん。あき、眠くないの?」 「ふぇ?ぜんじぇん眠く…にゃいです…よぉ。」 「寝たな…。ったく、寒いんだから風邪ひくっつの…って、この毛布まだ使ってるのか…。」 あきは…あきは、私のことを好きだと言った。そして、その好きの感情は恋であるとも幾度となく言われた。 …このままではいけない。 私もはっきりすべきなのだろうか。 きっと鈍いあきは気づかないんだろう。 私の頬の紅さが酒のせいだけではないことを。手が触れるだけでドキドキしてしまっていることを。帰り道にあきと会えて胸が飛び跳ねていることを。 寒い、寒い秋の、月が綺麗な夜。あきに出会えて本当に良かった。恋を忘れた私は、最初は気持ちの正体にさえ気づけなかったんだ。 教えてくれたのは、あき。 頑張り屋なあきだから、つい頑張ってなんて言っちゃうけど本当はあんまり無理すんなって思ってる。 純粋な気持ちを言葉にすることほど難しいことはない。あきの、まっすぐなところにきっと惹かれたんだ。 できることなら、いつでも隣にいて欲しくて…どこにも行って欲しくなくて、私のことだけを想っていて欲しい、なんて。こんなにみっともないくらい私の中で想いが膨らむ前に、どうにかできなかったのかな。 月が綺麗な夜に、あきに出会えた喜びを。きっとね、昨日も今日もこれからも、あきのことを一番想ってるのは私なんだよ。 「好きだよ、あき。」 気持ち良さそうな寝息を立てるあきに小さく呟く。 私もあきの隣で眠ることにするよ。それで、目が覚めたら。 きっと伝えるから。 あなたのことが、たまらなく好きだって。 end.
人間は身勝手だ皆の一番になりたがるくせに、皆を一番にはしてやれない僕には友達がたくさんいるある日、友達が「一番仲が良いのはだれ?」と聞いてきた僕は答えられなかった何故かって?僕には友達がたくさんいるけれど、僕を一番に思ってくれる人がいなかったからだ僕の友達はそれぞれ、僕じゃない「誰か」を一番に思っていたから「ねえ…君の一番は誰?」画面の向こうの君に問う「もしも…僕の一番を君にしたら、君は僕を一番にしてくれる?」「ごめん…冗談だよ」でも、嘘じゃない僕は何人もの友達に嫌われてもいいたった一人さえいれば僕を一番にしてくれる人がいれば僕の一番をあげるから…だから…だから…「誰か僕を一番にしてください」
僕の名前は草見夢え?女の子みたいだって?まあそう言わないでよ僕はこの名前を気に入ってるし名前にはちゃんと意味があるんだからもちろん君の名前にもじゃあ僕の名前の由来は何か君に一つヒントをあげようもし、誰かが「君の好きな花は何?」と聞いてきたら僕は間違いなくこの名の由来である花の名前を答えるであろう
人は二度死ぬらしい一度目は肉体的に死ぬとき二度目は人々から忘れ去られたとき教科書や本などに載っている者たちには二度目の死はないのだろうじゃあ僕は?僕は特に有名でもないし、大きな何かを成し遂げたわけでもないきっと簡単に忘れ去られてしまうだろうきっとすぐに二度目の死を迎えることになるだろうきっと君にも忘れ去られてしまうだろうそんなことはわかりきっていることだけれどでもね僕は君にこの蒼く小さい花を君に捧げる淡い想いを添えてこんなのはただの悪あがきなのかもしれないただのわがままかもしれないけど君にこの花の名前を教えるこの花の名前は勿忘草
この目まぐるしく動く現代社会には、この世の者たちに混じってなにくわぬ顔をしながら生きている奴らがいる。この世の者ではない者、つまりあの世の者たちである。そしてこの僕、朝霧優(あさぎり ゆう)も例外ではないのである。********************************単刀直入に言えば、僕は悪魔だ。僕は人間に紛れ込むため、普段は角も尻尾も真っ黒な羽もしまい、血のように紅い目も黒くしている。目の色を自由に変えられるようになるまでいささか時間はかかったが、今ではもう朝飯前なのだ。それから僕は更に人間らしくなるため、高校に通っている。実際の年齢は人間の寿命の何倍もあるのだが、容姿的に十代後半に見えるので高校へ行くことにしたのだ。もはや一見すればただの男子高校生である。そんなある日のことだった。ちょうど僕がバイトを終えて帰っているときだ。僕は路地でそいつにあった。*********************************「何してんの?」僕は路地で毛布にくるまってガタガタと震えているそいつに向かって声をかけた。応答はない。「ねえ?迷子なの?」また声をかけてみたが、応答は一向に返ってこない。僕はイラッとして毛布を掴み、思いっきりひっぱった。するとそこにはとても美しい僕と見た目が同じくらいの少年がいた。さらさらとした白い髪、蒼く美しい目、そして背中には僕とは正反対の真っ白い羽が生えていた。…天使だ。瞬時に理解した。僕が呆気にとられていると「な…何ですか?俺の羽を取ろうとしているんですか?」天使が涙目になって聞いてきた。「いらないし、取らない。」僕は言った。「だから僕のマンションすぐ近くだからちょっと来てくんない?」このとき僕はどんな顔をしていただろうか?それこそ悪魔の微笑みを浮かべていたと思う
朝霧優 自宅にてねえ皆さん、確かに僕は家に来てくれと言いましたけど…こんな一人暮らしの男の家にのこのこと一人で上がりますかね?コイツがバカなんでしょうか。それとも天使ってのは皆世間の大バカ野郎ばっかなんでしょうか。まあ、考えるのも無駄か。僕は大きくため息をついて天使にお茶を出す。そして、僕は一呼吸おいてから質問した。「ねえ、本当に君って天使なの?」「はい。そうですが?」…そんな簡単に言っていいもんなんだ…。もはやツッコミをいれる気力もない。「じゃあさ、何であんなとこにいたの?」天使は、しばらく黙っていたがぽつりぽつりと話始めた。「実は俺、数日前に天界から落っこちちゃったんです。あ、でも万が一落っこちたとしてもいつもなら飛んで天界の扉からまた天界には戻れるんですよ。でも…。」「でも?」「ここ数日、天界の扉が開かなかったんですよ。で、結局数日間何も食べていなくて…飛ぶ力もなくなって…で、うずくまっていたらあなたに会ったってわけです。」…天界の扉が開いてなかっただって?あそこはいつも開いているはずなのにな…。後でサタンにでも問い詰めるか。「じゃあ君は、今どうしたい?」「帰れることなら、天界に帰りたいですけど…どうしてですか?」天使はキョトンとした顔で聞いてきた。「じゃあ、教えてあげる。」そういって僕は笑いながら、もとの姿に戻った。「僕は朝霧優。悪魔だ。」天使は呆気にとられた顔で僕の姿を見てきた。よっぽど珍しいのだろうか。「ねえ、僕と契約しない?もちろん悪魔の契約だ。君の願いを三つ叶えてあげよう。何でもいいよ。天界にも帰れるようにしてあげる。その代わり、君が死んだとき君の魂を僕に頂戴?」この質問は僕がよくしている質問だ。人間はよく、欲望にまみれた願いをしてきた。金が欲しいだの、若くて美人な奥さんが欲しいだの、色々な事を要求してきた。もちろん僕はすべて叶えたし、魂をもらってきた。貰った(奪い取った?)魂は皆小瓶に一個一個保管している。別に食べてもいいのだが、魂の色は皆それぞれ違い、とても美しいので、僕はコレクションしている。そして気になったのだ。コイツはどんな願いを願うのか。コイツの魂の色はどんな色をしているのか。「じゃあ…。」天使がしばらく間をおいてから口を開いた。「俺と…友達になってください!」……はあ?「え?君、天界に帰りたいって…」「帰りたいですけど!それよりもあなたと友達になりたいんです!」…やっぱりコイツはバカだった。僕はまた大きなため息をついて言った。「いいよ。それが君の願いならば。」「ところで、君の名前はなんていうの?」そういえば聞き忘れていた。「北条…北条奏(ほくじょう かなで)」「これからよろしくね!優!」奏はそう言って僕の手をとり、満面の笑みをこちらに向けてきた。…温かい。僕は少しはにかみながら言った。「よろしくね、奏。」こうして、悪魔と天使との奇妙な生活が始まったのだった。To be continued
「もうすぐ,私しんじゃうんだよね。」まいが呟いた。「まぁやりのこしたことなんかないけどねー。」「…そっか。」 まいは日常を過ごしたこの部屋で死ぬ。僕も数え切れないほどここに来た。まいの病気は重い病気で,もう手の施しようがないそうだ。「どうせしぬなら家でしにたい。」と言ったのはまいだった。「あー…でもまだいきてたいかなー。」まいは窓の外を見て,残念そうに言う。「もっと学校行きたかったしー。もっときみと話したかったかもー。」ベッドに寝たまま,まいは窓の外の行きたい場所を指さした。「…それでね,そこですきなこといっぱいしてねー。」まいは照れくさそうに「あはっ」と笑った。「…うわー,やりのこしたこといっぱいあるー。」両手を頬に当ててまいは「ぜんげんてっかいねー」と言ってくしゃっと笑った。「ねぇ,なんでさ…」つい声に出してしまった。「なーに。」聞いてしまったからにはまいは「なんでもない」で済むタイプではない。「…なんでそんなに暢気なの。」「…」…あー,そうか別に暢気にしてるわけじゃないんだ。「なんでそんなに笑ってられるの。」「あー現実逃避だよ。だってしぬのこわいもん。」「うん。そう言うと思ってた。」本当は分かってなかったなかったけど。冗談のつもりで,まいを笑わせたくて。「なにそれ。」まいは呆れたように笑うと,そのまま目を閉じてゆっくりと,「これは現実逃避なんだよ。あしたがありそうでしょ…」少し間が空いて,僕は怖くなった。「…まい。」喉の奥の方が渇いて,まいの体温を確かめたくて,まいの手に触れる。そしたらまいは僕の手をゆっくりと握った。そして小さくて,でも僕にはしっかりと聞こえる声で,「きみと話してたらさ,あしたがありそうでしょう。」まいはそう言った。 ―あはっ「どうしたの,まい。」―いやきせきだね。また話せるなんて。「何言ってるんだよ。さっきまで話してたじゃないか。」―そうだけどさー。とフェンス越しにまいは笑った。靴を脱いで,なんとかフェンスを乗り越えると,びゅうっと強い風が吹いた。さすがに屋上で強風に吹かれると怖い。そんな僕の手を体温も感触もないまいの手が握る。まいは何か言っていたが,僕にはもう聞こえなかった。「現実逃避だ。」まいの手を僕は強く握って。「まいと話せたら,明日がありそうじゃないか。」『せーのっ』残されたのは一足のスニーカーだけだった。
日本は江戸、安泰の都市。 紅葉が山々を飾り、町をも彩るこの季節____「また、ですね……」 とある有力な武家の末娘、日向。ため息をついた彼女が縁側で広げたのは、一通の文であった。 艶やかな黒髪、大きな愛らしい瞳。雪のように白い肌。容姿端麗な彼女は、まだ十四でありながら、求婚してくる武家や商家の男が後を絶たないと言われている。 それを断り続け、ゆったりと過ごしていた日向だが、最近、何やら悩み事がある様子である。その種は、今まさに手にしている文にあった。「これで十九通目ですよ、全く」 桃色の頬を若干膨らませ、文を読み進める。読んでいる所に応じて、表情も少しずつ変わるのが可愛らしいところである。内容は、季節の話、下町の話、近況など多岐に及ぶ。文字はお世辞にも綺麗とは言いがたいが、一生懸命、心を込めて書いたのが伝わってくる、不思議な文字であった。 恋文は、何度も何度も届いたことがある。内容はほぼ同じ。日向の心を動かす物は一通として無かった。しかし、この文は何かが違った。明確に恋している、とは書かれていない。たわいないが、何故か彼女の心惹かれる話ばかり。しかも、送り主が下町の人間とはとても珍しい。生まれてからほとんど屋敷を出歩いたことの無い、箱入り娘の日向は、下町に出てみたいと常々思っていた。こうやって話を聞くだけでも心踊る。 日向は、口では全くもう、と言いながら、内心では文を楽しみにしているのだ。 やがて、日向は文を読み終わった。目の荒い和紙をたたみ、しばらくぼうっとする。(……誰が、これを書いているのだろう) 送り主の名は、いつも書かれていない。どんな人間なのか、謎である。ただ、日向は平凡な日常をその人の力で抜け出し、そして感謝していた。 (会いたい) 十通目の文が来たとき、そう、彼女は思った。直接顔を合わせ、話をしたい。感謝していると、伝えたい。例えどんな人でも。それから日向は、名も顔も分からない人物に次第に惹かれていった。文が届くたび、胸が焦がれるような思いを味わう。とても苦しかった。今も、上の空でいるように見えるが、彼女の心の奥底は疼いていた。「……よし……!」やがて日向は、何かを決意した表情で立ち上がる。障子を開けて、自分の座敷へと入っていく。その頬は紅く染まっていた。今夜から始まる、特別の作戦を心に秘め、文を大切に漆塗りの箱に仕舞う。ただ、大切な人に会うため。