【〜秋の夜長に〜SS小説大会にご参加いかがですか?】■結果発表!(2016.11.30 管理人更新)集計し精査した結果、壬崎菜音@壬生菜さんの「マッチョ売りな少女」(>>39)が1位となりました!壬崎菜音さん、おめでとうございます〜!今回ご参加くださった皆様、誠にありがとうございます!投票してくださった皆様にも深く御礼申し上げます!次回SS大会にもふるってご参加ください。****************************【日程】■ 第13回(2016年9月3日(土)18:00〜11月26日(土)23:59)※実際には11月27日00:59ごろまで表示されることがあります※小説カキコ全体としては3回目のためまだ仮的な開催です※ルールは随時修正追加予定です※風死様によるスレッド「SS大会」を継続した企画となりますので、回数は第11回からとしました。風死様、ありがとうございます!http://www.kakiko.info/bbs_talk/read.cgi?mode=view&no=10058&word=%e9%a2%a8**************************【第13回 SS小説大会 参加ルール】■目的基本的には平日限定の企画です(投稿は休日に行ってもOKです)夏・冬の小説本大会の合間の息抜きイベントとしてご利用ください■投稿場所毎大会ごとに新スレッドを管理者が作成し、ご参加者方皆で共有使用していきます(※未定)新スレッドは管理者がご用意しますので、ご利用者様方で作成する必要はありません■投票方法スレッド内の各レス(子記事)に投票用ボタンがありますのでそちらをクリックして押していただければOKです⇒投票回数に特に制限は設けませんが、明らかに不当な投票行為があった場合にはカウント無効とし除外します■投稿文字数200文字以上〜1万字前後まで((スペース含む)1記事約4000文字上限×3記事以内)⇒この規定外になりそうな場合はご相談ください(この掲示板内「SS大会専用・連絡相談用スレッド」にて)■投稿ジャンルSS小説、詩、散文、いずれでもOKです。ノンジャンル。お題は当面ありません⇒禁止ジャンルR18系、(一般サイトとして通常許容できないレベルの)具体的な暴力グロ描写、実在人物・法人等を題材にしたもの、二次小説■投稿ニックネーム、作品数1大会中に10を超える、ほぼ差異のない投稿は禁止です。無効投稿とみなし作者様に予告なく管理者削除することがありますニックネームの複数使用は悪気のない限り自由です■発表等 ※予定2016年11月27日(日)12:00(予定)■賞品等1位入賞者には500円分のクオカードを郵便にてお送りします(ただし、管理者宛てメールにて希望依頼される場合にのみ発送します。こちらから住所氏名などをお伺いすることはございませんので、不要な場合は入賞賞品発送依頼をしなければOKです。メールのあて先は mori.kanri@gmail.com あてに、■住所■氏名 をご記入の上小説カキコ管理人あてに送信してください)■その他ご不明な点はこの掲示板内「SS大会専用・連絡相談用スレッド」までお問い合わせくださいhttp://www.kakiko.cc/novel/novel_ss/index.cgi?mode=view&no=10001******************************平日電車やバスなどの移動時間や、ちょっとした待ち時間など。お暇なひとときに短いショートストーリーを描いてみては。どうぞよろしくお願い申し上げます。******************************<ご参加タイトル 一覧> ※敬称略>>1 『宇宙(よぞら)のなかの、おともだち。』 Garnet>>2 『キミの夢』 霊夢>>3 『大切な場所』 レオン>>4 『最後の英雄』 月白鳥>>5 『星空と秘密の気持ち』 霊歌>>6 『夕焼け月夜を君と』 PLUM >>7 『焦がれし子宮』 めー>>8 『知』 茶色のブロック>>9 『儚い少女』 茶色のブロック>>10 『 white lilydie 』 PLUM>>11 『音を通じて』 奈乃香>>12 『月下美人。』 鏡杏>>13 『小さい頃からスキだったの』 ユリ>>14 『折り鶴』 御影>>15 『妄想を続けた結果、こうなりました。』 のあ>>16 『夏の日の物語。』 レオン>>17 『恋するティラミス』 ゼロ>>18 『貴女の望むもの』 奈乃香 >>19 『貧血少女』 PLUM>>20 『ねぇ』 はてなの子 >>21 『記念日には、貴方の言葉。』 はずみ >>22 『君も私も爆発だよ☆』 茶色のブロック>>23 『Reason for the smile』 ユリ >>24 『彼は未来を見る研究をしていた』 葉桜 來夢>>25 『Love me only』 ユリ>>26 『ワタシとアナタ』 はてなの子>>27 『匿名スキル』 とくだ>>28 『アナタだけ』 レオン>>29 『秋の夜長に君を求めて』 蒼衣>>30 『受け継がれる想い。』 レオン>>31 『素直になってもいいですか』 たんぽぽ >>32 『color』 蒼衣>>33 『二度とない日々へ』 深碧>>34 『破られた不可侵条約』 たんぽぽ>>35 『だーれだ』 ろろ>>36 『堕天使』 鏡>>37 『複雑ラブリメンバー』 とくだ>>38 『してはいけない恋……?』 マシャ>>39 『マッチョ売りな少女』 壬崎菜音@壬生菜>>40 『空想森の中で。』 ニンジン×2>>41 >>46 >>49 『あおいろ』(1)(2)(3) &>>42 『星の降る日』 安ちゃん>>43 『この感情は。』 みりぐらむ>>45 『やさいじゅーす』 とくだ>>47 『はづかし』 沖>>48 『Trick or love!』 PLUM>>50 『月が綺麗な夜』 小色>>51 『一番は』 草見 夢>>52 『名前』 草見 夢>>53 『人が死ぬとき』 草見 夢>>54-55 『天使と悪魔と』(1)(2) 草見 夢>>56 『人生最後の現実逃避』 みかん (2016.11.19 更新)
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【level MAX! ニュースキル “匿名スキル”を 手に入れた!】・・はぁ?俺は新しく配信されていたオンラインゲーム「RPGproject!(略してアルプロ)」で、“一日かけて”レベルを上限まで上げた。どうやらまだレベルMAXになったのは俺だけみたいで、この“匿名スキル”のことは、俺しか知らない形になっている。このゲームは、モンスターを倒し、レベルが5ずつ上がる度に、新たなスキルが手に入ることになっていた。種類は全50種類。異常なほどスキルが多い。(例えば、「主人公スキル」、「ファッションスキル」、「アニマルスキル」、「登山スキル」ect・・)名称:玄人オンラインゲームプレイヤー【とーすけ】の俺もこんな事例は初めてだ・・という話は置いといて。 何このスキル?まさかこのスキルを考えた人が「匿名希望」だったから?それとも使ってみてからのお楽しみ☆とか?・・謎が深まるばかりである。考えてみてもダメだから、使ってみた方が早いか!(正論)俺はさっそく使用してみた。・・しかし何の変化も起こらない。と思いきや・・「とーすけ(君はとても、大事な人生の一日を今日も無駄にしたね。明日もそうだったら・・・ア カ ウ ン ト 削 除しちゃうぞ☆」・・―――これで“匿名スキル”が消滅した。そして・・【GAME over!】俺は正気を失った。「気 持 ち 悪 っ!」と同時に、「就活しよ・・」という気持ちが芽生えた。俺は二度とオンラインゲームに手を出さなかった。後にアルプロは、「ニート殺し鬼畜ゲーム」と名が付いた。―――そして俺は無事に、仕事を見つけました。 【えんど。】
「・・・珍しいな。新入りがそんなストラップつけて来るなんて」 「そ、そうですか?ていうか新入りじゃないです!!私の名前は桜木茜です!!」「うんうん。珍しいなんでなんで?」 それは金色でスカイブルーの瞳の……可愛いライオンのストラップ。「もう、はぁ。何でもいいじゃないですか!!部長には関係ないことです・・・。」「教えろよ〜。もしかしたらアイデアが!!」 「いやです!」 「教えろ!」「いや!」 「お願いアカネ?」 「うっ・・・不意打ちはひどいですよ…」 不意打ちの名前呼びは、心臓に悪い。ドクドク煩くなった胸。「ね?お願い」 「分かりましたから・・・これは…あ・・・に・・・てた・・・か・・・」 ゴニョゴニョと口ごもってしまうのは……「聞こえない!!もっと大きな声で!!」 「だから、あなたに似てたから・・・!!」 「えっと・・・ありがとう?」 「うぅ、だから言いたくなかったのに・・・」 頬を赤くして俯いてしまう。アナタに顔を見せないように。こんなにも心を乱すのはアナタだけ……アナタしかいないんです…
「残念ですが、事故の影響でこの子の記憶は…」私が目覚めたのは病室だった。医師の言葉に泣き崩れる両親。その時の私は状況を理解することはできなかった。◆◆◆◆◆季節は秋。今日は澄み渡る青空の下清々しい朝を迎える…はずだったのに。朝からうるさいあいつの声で私の気分は台無しになった。「おはよー!今日の調子はどう?俺はね…」「鬱陶しい!!」朝から私に張り付いてくるそいつを突き飛ばす。といっても、男女の体格差があるので張り付いてくるのを剥がすといった感じだが。朝から私につきまとうこいつ。名前など私は覚えようともしていない。どうやら私の知り合いらしいが、そんなの覚えているはずがない。…私は二年前事故にあい、記憶のほとんどが無くなってしまったらしい。覚えているのは家族だけ。それ以外覚えていない。「今日は満月なんだって。」「ふーん」「蛍が飛び交う中で見る満月って綺麗だろうな〜」「うんうん。」といった感じでいつものように話を聞き流していると、「じゃあ今日見に行こうよ!」と言われたのに対して、「はいはい」と返事をしてしまった。「!!じゃあ、今日の夜いつもの“あの場所”でね!」と手を振りながらそいつが離れていく。「ちょっと待って!あの場所ってどこよ!」しまった。行く気もないのに聞き返してしまった。「川で蛍が飛び交う綺麗なところ!」と叫ばれるが、そんなところ知らない。まあいいや。行く気もないし。ようやく一人になれたはずなのに、何故だか今日は胸騒ぎがしていた。◆◆◆◆◆家にかえってベッドに転がりこんだ私は浅い眠りにつき、こんな夢を見ていた。河原に小さい子供が二人いる。「とうまー!とうまー!こっちだよー!」小さい女の子が叫んでいる。「こっちだよ。見て見て!こんなに蛍がたくさんいるよ!」「わー!きれーい!!」「ねえ、もうちょっと大人になったらまたここに来ようよ!」「いいよ!絶対に来ようね!」二人の子供は仲良く座りながら蛍を眺めている。空には満月が浮かんでいた。◆◆◆◆◆そこで夢が覚めた。私は身体中汗でぐっしょりで、今見ていた夢を思い出す。いつもなら夢の1つや2つぐらいすぐに忘れてしまうのに。夢が覚めてもなお、男の子の声が私の頭の中でぐるぐると回っている。そこで、私の中で何かが噛み合った。その瞬間私は玄関を飛び出して走り出す。私が、私が最初学校に行った時にあいつが言った言葉__。(俺、神楽坂 斗真って言うんだ。)かぐらざか とうま。とうま。あの女の子が叫んでいた言葉は…あの子が小さい時の私だとしたら…私は走る。あの場所に向けて。何故だか身体が覚えている。自分でも怖くなるくらい。でも、今はそんなことどうでもいい。走っていても頭の中に流れ込んでくる君の声。まるで走馬灯みたいに。〈僕たちが高校生ぐらいになったらまた行こうよ。その時にはこう言うから、“あの場所で”って。〉(今日の夜いつもの“あの場所”で!)なんで、なんで今まで忘れてたんだろう。君がなんで私から離れなかったのか。初めて会う人のふりをして、私に話かけるのがどれだけ辛かったか。「…あのバカ!!」走る。ただただ走る。息が苦しくて、苦しくて。でも、君に向ける感謝の気持ちを考えればどうと言うこともない。最初私は記憶がなくて、世界の中でひとり取り残されたような気持ちになっていた。苦しかった。寂しかった。誰が誰だかわかんない。みんなの記憶の中にあるものが私にはない。思い出話なんて私にとっては1つの凶器で。…自殺だって、考えた。暗闇の中に取り残されて。光のない場所を一人でさまよっていたような感覚だったから。みんな明るく接してくれてたのはわかる。けど、それが暗闇の中で光になることはなかった。こんな私の気持ちなんて、記憶がある人にはわからない!…そう勝手に決めつけて。みんなに冷たく当たって。そしたらみんな私から離れていく。…でも。一人だけ離れて行かなかった。…君だけは。それが理解できなくて。冷たく当たった。誰よりも。それでも君は私から離れて行かなかった。ただただ私に明るく話しかけてくる。そのことに私がどれだけ救われたか。子供の時は泣き虫で、弱くて、私の後ろにひっついてた。なのにあんなに明るく接して……私のために?「…そんなのわかるわけないじゃんっ…!」涙で前が見えなくなる。でも走る。君を求めて。秋の静けさを感じられる河原に一人たたずむ君。私は君を見つけると、息を切らして、膝に手をついた。君が振り向く。君は少しびっくりしたような表情を見せると、「どうしたの?そんな汗だくになって。」と言いながら、私に優しく微笑みかける。その声が、顔が…あまりにも懐かしくて。私は君に抱きつく。秋の夜長に君を求めて。
甘くて、苦い。それが、最初の感想だった。初めて飲んだ、砂糖とミルクたっぷりのコーヒー。大人には届かないけど、真似をしたくて…。パパやママみたいに余裕ぶって飲んでたけれど、だんだん苦さの方が強くなって、、そんな風に懐かしむ事が出来るぐらい時が経って、今はもうおばあちゃん。昔に比べれば砂糖の数もミルクの数も格段に減ったけれど…、砂糖とミルクたっぷりのこのコーヒーは思いでの味。そして、孫に受け継がれている味。「♪……おいしいね!でもなんか苦いよぉ……。うぇぇ」「だから茜にはまだ早いって言ったろう?コレはね、ばぁばがばぁばのお母さんに…」「えっ?ばぁばのお母さん?てっことは!あかねのひいおばあちゃんだ!わぁ!」「ふふ、こらこら飛び跳ねないの……そうだね。私も茜ぐらいの頃お母さんにだだこねて、作ってもらったんだよ……」「…ばぁば?泣いてるの?何か悲しいことあったの……?」「…うんにゃ。悲しくはないさ…ただね?ばぁばは…茜が大好きって事さ…」「うん!茜もばぁば大好き!」「茜、茜に大切な人が出来たら…このコーヒーを飲ませておやり…ばぁばとの約束。」「うんっ!約束!」あかねーと呼ぶ声がする。またいつもの日常で、懐かしい夢を見ていた。一昨年亡くなった、祖母の夢。「…ばぁば?あのね、ばぁばにひ孫ができたんだよ?約束通り…あの人にも、この子にも、あのコーヒー飲ませるね?約束だから…」お腹をさすりながら私は言う。私は伝えていく。この想いを……。
退屈な午後の授業。高校2年生の有坂まことの視線は左斜め前の席に座る、椎名あやかに注がれていた。他の生徒のほとんどが寝ている様な中で真面目にノートをとっている。肩にかかるくらいの黒髪と長いまつ毛。あやかはクラスでも1.2を争うような美少女だった。ふと振り返ったあやかの目とまことの目が合う。驚いたまことは目をそらそうとした。ーーー変な奴だと思われる。しかし、まことの予想を裏切り、あやかはにっこり微笑んで、再び前を向きノートを取り始めた。ーーーあぁやっぱり素敵な人だ。まことはあやかのことが好きだった。恋に落ちたきっかけは些細なことで、あやかが普通にまことに話しかけて来たからだった。普通。それがまことには嬉しかった。高校に入ってから、あることがきっかけで友達はおろか、話しかけてくる人さえほとんどいないような状態だった。そんななか、普通に話しかけてくれる存在。それがあやかだった。その話の内容もただの連絡事項なんかじゃない、クラス会にまことも参加しないか?というようなお誘いだった。その誘いは断ってしまったが、その後もあやかは何かとまことに話しかけてくれた。あやかに対してまことの心がゆっくりと開いていくのも仕方のないことだった。そして、そのまま恋に落ちてしまうことも……。ある夜、まことはあやかに告白しようと決心した。嫌われるかもしてない、でももしかしたら……、その少しの可能性に賭けたくなったのだ。それくらいにまことの恋心は大きく膨れ上がっていた。翌日の放課後、まことは勇気を振り絞ってあやかを呼び出した。「どうしたの? 有坂さん」「あの、ボク……っ!」***やっぱりダメだった。あやかの答えはまことの想像していたもの、そのものだった。「ごめんね、有坂さん。私、‘‘女の子”とは付き合えない」その時、あやかがどんな顔をしていたのかは見ていなかった。見ていなくてよかったと思う。見ていたら、いまはもっと惨めな気持ちになっていただろう。帰り道、夕日が綺麗な土手を歩きながら、まことはつぶやいた。「バカみたいだ。なんでボクはいつもこうなんだろう……。わかっていたはずなのに……」あぁ、君に出会わなければボクは幸せだったのかな。
秋を感じさせる冷たい風が吹き抜ける。そんな中、僕は一人学校の屋上に佇んでいた。すると、誰かが話しかけてきた。「こんにちは。」「…こんにちは。」曖昧な態度で僕は返す。だって僕には君が見えないから。僕は聞く。「君は誰?」「…さあ。誰だろうね。」「君には僕が見えているの?」「もちろん。君には見えてないんでしょう?」「うん。なんでわかるの?」「わかるさ。今の君には見えないはずだから。」「ふーん。…なんか不思議だね。」「僕からしたら、見えない人の話に答える君の方が不思議だよ。」クスクスと見えない君が笑う。…それもそうか。「…さっき“今は見えない”って言ったよね?それならいつか僕にも君が見えるようになるの?」「見えるさ。君が“あるもの”を取り戻したらね。」「あるもの?」「…そう。君が捨てたもの。」「僕が…?」「そうだな…少しヒントをあげよう。じゃあ、君笑ってみて。」「…え?」「じゃあ怒ってみて。」「…えっと…」なぜだろう。そんなことを急に言われて、僕は行動に移すことができなかった。普通ならできるはずなのに…。「できないだろう?それが答えだよ。君が捨てたもの。」「…感情?」「そう。君は笑うことも、怒ることも、泣くことも忘れてしまった。だからこんなところにいるんだろう?」「…。」「君は考えるべきだと思う。今どうすればいいか。」「僕が…?」「君には色がないんだ。自分を表す色が。君は真っ白だ。」「僕の色?真っ白だといけないの?」「少なくとも、君に僕は見えないよ。」「僕はどうすればいいの?」「簡単さ。君自身が君に色をつければ良い。」「…つまり感情を表せってこと?」「そう。君は今、どんな気持ち?」…えっと、僕の気持ち…。ここ最近は何も考えずに塞ぎこんでた。自分がなんでこんなことになっているのかわからないまま…。あれ?そういえばなんでそんなことするようになったんだっけ?ーそうだ。僕は…その瞬間、目から涙が溢れでてきた。「…やっと君に色がついたね。」僕の両親が数週間前に亡くなった。事故死だった。僕をおばあちゃんの家まで迎えにくる途中だった。僕が一人でおばあちゃんの家にきていなければ…こんなことにはならなかった。僕はその時から部屋に引きこもるようになった。「悲しい時には泣いて良いんだ。無理矢理我慢しなくたって。」僕は泣きながら君に問う。「…ねえ、今僕は何色?」「…そうだな。青色かな。とても悲しい…でも、暗くない。例えるなら、ちょうどこの青空みたいな感じかな。」「…ずいぶんと爽やかなんだね。」「まあ、君が感情を取り戻したある意味おめでたい日だからね。それよりどうだい?今なら君に僕が見えるんじゃないか?」そうだ。本当に見えるようになったのか確認しなくては。涙で濡れた目をこすり、顔を上げた。「そうか…君は…」ー“未来の僕”だ。僕が見上げた先には正真正銘「僕」がいた。「…どうやら見えたみたいだね。それなら僕はそろそろ行かないと。未来の自分が見えるなんて、見えない誰かと話すよりもっと奇妙なオカルト現象だろ?」「…ああ。そうだな。」そう言って君は僕の前から消えた。最後に見せた笑顔が自分の顔のはずなのにとても印象に残っていた。
わたしがいなくても幸せな人へわたしが大好きな人その名を思うだけで涙が出る人幸せを何より願う人誰よりも会いたい人美しくない姿を見せたくない人必ず来世でも出会いたい人出会えてよかったと思う人破滅でも悔いはないあなたの人生の栄光がすべてほんの束の間でも幸せだった全然タイプでもないしけなしていたのも知っている私を落として人のよいしょに使ったことも知っている事実ひどく私はダメな人間あなたに言い返す言葉もなにもない一般的な感性のない私でも駅に迎えに来てくれた夜のことコートのはためきあなたのまごころ罪悪感や処理心や帳尻あわせだとしても覚えている感謝しているあなたを独り占めできたわずかな瞬間わたしにとっては宝物大事で全てで大好きで
【破られた不可侵条約】「ここから先は私の領域だから、坂井くんは絶対にこっちにこないでください」月に一度ある席替えでとなりになった女、真島ゆうこは大真面目な顔でそう言った。そして自分のカバンから可愛いネコのマスキングテープを取り出すと、先ほど指でなぞられた国境にそうように貼り付けた。坂井けんと真島ゆうこの通う、この私立朝日学園高等学校の机は、長机である。一応三人用となっているこの机に二人で向かう。仲のいい者と一緒になれば、真ん中に共用スペースなるものを作り、お菓子を置いて駄弁ったりなどができ、楽しいが、逆に嫌いな者や無神経なやつと隣になると大変だ。消しカスが飛んできたり、自分のスペースが物凄く狭くなったり……。 けんは今まで、この机に特に不満はなかった。嫌いな奴と一緒になることはあっても、それなりにうまくやっていた。しかし、まさか……。「こんなことするやつがいるなんてな……」部活終わりの放課後、机に貼られたテープを見る。 ゆうこはクラスでも目立たない大人しい女子だった。長い黒髪を二本の三つ編みにしておろし、黒縁メガネをかけて、いつも俯いて本を読んでいるようなやつだ。そんなやつにこんなことをされるなんて、けんは予想もしていなかった。なぜならけんは交友関係も広く、明るいし、顔もよかった。けんを嫌うやつなんて殆どいなかったのだ。しかし、そんなけんを疎ましく思うやつが存在した。しかも地味な女子。「こんな国境作られたらさぁ……」「破りたくなるもんだよね」 そう呟くと、けんはネコのマスキングテープを豪快に剥がした。***翌日、長机には昨日剥がしたハズのマスキングテープが張り直されていた。隣の席に座る真島ゆうこはいつも通り本を読んでいる。「ねぇねぇ真島さん。このテープのことなんだけどさ」けんは机の上のテープに手を乗せて話しかけた。「……手」真島ゆうこはこちらをチラリと見るともう一度本に視線を落として、そう言った。「手? なんのこと?」「手が入ってます……そのテープより先は私の領域ですから」今度はこちらを一度も見ずに一気に言い放った。「ああ、ごめん……」こりゃあダメだな。そう思ったけんは大人しく席に着いた。 それからというもの、何度かこの国境を越えようとけんは試みたが、全て失敗に終わった。*** そんなこんなでもう直ぐ一ヶ月が経つ。一ヶ月経てば再び席替えをすることになる。そうすればこの席とともに、ゆうことも、国境ともおさらばだ。けんはそう思ったが、なんだかスッキリしない。なぜこいつはこんなにも俺を避けるのか? けんは分からないままだった。こいつが今まで他の男子と一緒の席になって、こんな国境を作っていたのを見たことはなかった。 国境を破ることなんて忘れてしまえばいい。諦めればいい。頭ではそう思っても諦められなかった。 けんはゆうこに夢中になっていたのだ。*** 31日の放課後。今日でこの席は最後だ。となりにはいつも通り無表情で読書をするゆうこがいた。 なにも変わらない。一ヶ月ずっと。変わったのはけんだけだ。 とうとう教室には誰もいなくなった。残るのはけんとゆうこの二人だけだ。 「なぁ……」声をかけるとゆうこはゆっくりとけんの方を見上げた。「なに?」凛とした声。 ビッ! 机の上の、テープを勢いよく剥がす。 それと同時にゆうこの手首を掴んで引き上げ、抱きよせた。 ガタンという音とともに椅子が倒れる。 「ちょっと……っ!!」ゆうこが抵抗するようにけんの目を睨みつけるように見た。その途端、ゆうこはけんの真剣な瞳に引き込まれる。 けんの口がゆっくりと開く。 「俺、お前のこと……!」二人の国境が破られた瞬間だった。
「だーれだ」 僕の目を誰かがふさいで楽しそうにそう言ってくる。 僕は、誰だろうね。と笑ってみた。すると目をふさいできた人はつまんなさそうに私だよ。と言ってきた。「君だったのか、誰かと思ったよ」 僕はまた笑う。 すると目をふさいできた人はつまんなさそうに私だったよ。と言ってきた。 そして、こうも言ってきた。「また、明日もするから」 僕は、うん。と頷いて見せた。 そして次の日。「だーれだ」 僕の目を誰かがふさいで楽しそうにそう言ってきた。 僕は、誰だろうねと笑ってみる。 また、目をふさいできた人は詰まんなさそうに自分の正体をばらしてくれた。 そして、僕は笑う。 次の日も、そのまた次の日も。笑った。 そして、目をふさいできた人はつまらなそうに、言うのだ。「また明日」
堕天使は、言ってしまえば天使の中で最もクズな存在だろう。私たち天使は主様に仕え、主様を愛す。ただそれだけでいいのだ。 それなのに別のヒトを愛すなど、あってはならない事。毎日のように天界にいる天使の中で噂になる。「今日はあの天使が堕天した」「昨日は誰々が堕天した」天使は天界での仕事以外にも下界―、俗にいう人間界での仕事もある。だからそこでヒトと会い、恋に落ち堕天する。今まではそんな天使たちは馬鹿だ、と思っていた。「恋なんて馬鹿馬鹿しい。我々天使は生みの親である主様のために働けばよいのだ」私は噂話をする、ほかの天使たちを見ながらそう小さくつぶやいた。それが、数か月前の話。私がまだ【天使】だったころの話。今は、自分で馬鹿馬鹿しいと思っていた恋に落ち堕天した、愚かな堕天使。背中には天使を象徴する白い羽の代わりに、堕天使を象徴する、真っ黒な羽が生えている。