【〜秋の夜長に〜SS小説大会にご参加いかがですか?】■結果発表!(2016.11.30 管理人更新)集計し精査した結果、壬崎菜音@壬生菜さんの「マッチョ売りな少女」(>>39)が1位となりました!壬崎菜音さん、おめでとうございます〜!今回ご参加くださった皆様、誠にありがとうございます!投票してくださった皆様にも深く御礼申し上げます!次回SS大会にもふるってご参加ください。****************************【日程】■ 第13回(2016年9月3日(土)18:00〜11月26日(土)23:59)※実際には11月27日00:59ごろまで表示されることがあります※小説カキコ全体としては3回目のためまだ仮的な開催です※ルールは随時修正追加予定です※風死様によるスレッド「SS大会」を継続した企画となりますので、回数は第11回からとしました。風死様、ありがとうございます!http://www.kakiko.info/bbs_talk/read.cgi?mode=view&no=10058&word=%e9%a2%a8**************************【第13回 SS小説大会 参加ルール】■目的基本的には平日限定の企画です(投稿は休日に行ってもOKです)夏・冬の小説本大会の合間の息抜きイベントとしてご利用ください■投稿場所毎大会ごとに新スレッドを管理者が作成し、ご参加者方皆で共有使用していきます(※未定)新スレッドは管理者がご用意しますので、ご利用者様方で作成する必要はありません■投票方法スレッド内の各レス(子記事)に投票用ボタンがありますのでそちらをクリックして押していただければOKです⇒投票回数に特に制限は設けませんが、明らかに不当な投票行為があった場合にはカウント無効とし除外します■投稿文字数200文字以上〜1万字前後まで((スペース含む)1記事約4000文字上限×3記事以内)⇒この規定外になりそうな場合はご相談ください(この掲示板内「SS大会専用・連絡相談用スレッド」にて)■投稿ジャンルSS小説、詩、散文、いずれでもOKです。ノンジャンル。お題は当面ありません⇒禁止ジャンルR18系、(一般サイトとして通常許容できないレベルの)具体的な暴力グロ描写、実在人物・法人等を題材にしたもの、二次小説■投稿ニックネーム、作品数1大会中に10を超える、ほぼ差異のない投稿は禁止です。無効投稿とみなし作者様に予告なく管理者削除することがありますニックネームの複数使用は悪気のない限り自由です■発表等 ※予定2016年11月27日(日)12:00(予定)■賞品等1位入賞者には500円分のクオカードを郵便にてお送りします(ただし、管理者宛てメールにて希望依頼される場合にのみ発送します。こちらから住所氏名などをお伺いすることはございませんので、不要な場合は入賞賞品発送依頼をしなければOKです。メールのあて先は mori.kanri@gmail.com あてに、■住所■氏名 をご記入の上小説カキコ管理人あてに送信してください)■その他ご不明な点はこの掲示板内「SS大会専用・連絡相談用スレッド」までお問い合わせくださいhttp://www.kakiko.cc/novel/novel_ss/index.cgi?mode=view&no=10001******************************平日電車やバスなどの移動時間や、ちょっとした待ち時間など。お暇なひとときに短いショートストーリーを描いてみては。どうぞよろしくお願い申し上げます。******************************<ご参加タイトル 一覧> ※敬称略>>1 『宇宙(よぞら)のなかの、おともだち。』 Garnet>>2 『キミの夢』 霊夢>>3 『大切な場所』 レオン>>4 『最後の英雄』 月白鳥>>5 『星空と秘密の気持ち』 霊歌>>6 『夕焼け月夜を君と』 PLUM >>7 『焦がれし子宮』 めー>>8 『知』 茶色のブロック>>9 『儚い少女』 茶色のブロック>>10 『 white lilydie 』 PLUM>>11 『音を通じて』 奈乃香>>12 『月下美人。』 鏡杏>>13 『小さい頃からスキだったの』 ユリ>>14 『折り鶴』 御影>>15 『妄想を続けた結果、こうなりました。』 のあ>>16 『夏の日の物語。』 レオン>>17 『恋するティラミス』 ゼロ>>18 『貴女の望むもの』 奈乃香 >>19 『貧血少女』 PLUM>>20 『ねぇ』 はてなの子 >>21 『記念日には、貴方の言葉。』 はずみ >>22 『君も私も爆発だよ☆』 茶色のブロック>>23 『Reason for the smile』 ユリ >>24 『彼は未来を見る研究をしていた』 葉桜 來夢>>25 『Love me only』 ユリ>>26 『ワタシとアナタ』 はてなの子>>27 『匿名スキル』 とくだ>>28 『アナタだけ』 レオン>>29 『秋の夜長に君を求めて』 蒼衣>>30 『受け継がれる想い。』 レオン>>31 『素直になってもいいですか』 たんぽぽ >>32 『color』 蒼衣>>33 『二度とない日々へ』 深碧>>34 『破られた不可侵条約』 たんぽぽ>>35 『だーれだ』 ろろ>>36 『堕天使』 鏡>>37 『複雑ラブリメンバー』 とくだ>>38 『してはいけない恋……?』 マシャ>>39 『マッチョ売りな少女』 壬崎菜音@壬生菜>>40 『空想森の中で。』 ニンジン×2>>41 >>46 >>49 『あおいろ』(1)(2)(3) &>>42 『星の降る日』 安ちゃん>>43 『この感情は。』 みりぐらむ>>45 『やさいじゅーす』 とくだ>>47 『はづかし』 沖>>48 『Trick or love!』 PLUM>>50 『月が綺麗な夜』 小色>>51 『一番は』 草見 夢>>52 『名前』 草見 夢>>53 『人が死ぬとき』 草見 夢>>54-55 『天使と悪魔と』(1)(2) 草見 夢>>56 『人生最後の現実逃避』 みかん (2016.11.19 更新)
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私は今、恋をしている。・・・多分。でも気になり始めたのは、今から半年以上前のこと。いきなり同じクラスの女子から、「沙希に告白したいんだって」と、急に違うクラスの男子が呼び出しが来て、でもそのクラスに行ってみると、教室に入っていってしまった。恥ずかしかったのだろう。そして今片思いしている男子が、その彼だ。彼は住んでいる地区からして家はかなり近くて、あの日からもちょくちょくすれ違うようになった。それだけではない。小学生の友達が偶然彼と仲がよくて、少しケンカになった時も、「沙希をいじめんな!」とか言われた。正直言ってキュンとしてしまった。そんな彼とは、今年クラスメイトになった。でも関係といえば、ちょっと話すくらいの関係だ。もう好きじゃないのかなぁ・・と思ってしまった。時々顔とか目が合ってしまうけど。友達からも、「沙希、3学期くらいからおかしくなってない?w」と言われた。そうだ。「恋」が私を狂わせはじめたのか―――・・・・・でもはっきり思えば恋って分からない。まだまだ中学校生活は残っている。だからこの「恋」を、しっかりと実らせていきたい。 ―――複雑な思い出とともに。【END and LOVE continue・・・】
わた……俺は……恋をした。それはしてはいけない恋……相手は同い歳の15歳で俺の幼馴染みで一番仲が良い親友だ。ここだけならなにがいけないの?と思うかも知れない……だが相手は……男だ。だが聞いてくれ、俺はノ…ゲイじゃない。男はあいつにしか興味はない。絶対だ。あいつ以外の男に恋する事はない!ちなみに俺があいつに恋したのは数ヵ月前。丁度、あいつが女装をし始めた頃……。男の娘になって間もない頃……〜数ヵ月前〜「なーなー、この女装似合う?!」「じょっ…女装?!…なんでそんな事を…」「俺ってさ、女っぽいって言われるだろ?だから女装してみたんだよー、似合うか?」似合うかどうか…かなり似合っている…髪は長く綺麗な金髪。俺は分かってるが普通に見れば地毛と勘違いしても可笑しくないほど自然。顔は化粧をしてるのか…まさに可憐な少女…。元々中性的な顔だったが今はもう女の子にしか見えない位な顔立ち。こいつはチビだったが今はその小さい身長が可愛さを引き立てている…。男と言われても誰も信じないだろう…。「に、似合ってるんじゃないか?」「にししし、俺ってかわいい?」「か、かわいいな……」「ほんとか!、俺かわいいかー、お前さー、もしかして俺に惚れたか?」なにを言ってるんだこいつ…俺が男にほ、惚れる訳……あるんだよな……「ほほほほ、惚れる訳ないだろ!」「図星か!他のレズやノンケも俺に惚れるかなー…」「女っぽいって言われたからじゃなくてからかいたくて女装してるだろ、お前。」「そうだよ?他に女装する意味ある?」「…………お前の性格からしたら他の可能性はないな。」「だろー、んじゃ…俺、他のやつの所行ってくる!桜、じゃあなー」「おう!またなー…」なんであんなにかわいいんだよ……俺は…男には恋しない……。女が好きだ…。いくら女装でどんなにかわいくても…俺は……俺は……俺は……レズだ、女にしか興味はねえ!〜現在に戻る〜と言うわけで……俺は(自分にとって)してはいけない恋をした……ここまでの文章を見てる奴等は私が男だと勘違いしてただろうか。小泉 桜それが私の名前。レズで正真正銘のJKだ。
「マッチョ、マッチョを買っていただけませんか?」 数十人のマッチョを引き連れた一人の少女が、なにやら危ない言葉を行き交う住人達へと投げかけました。 マッチョ売ります。 住人達は突然の人身売買宣言に、目を丸くして少女を見つめました。 「マッチョ、活きの良いマッチョはいりませんか? 煮てよし焼いてよし、いざとなったらボディガードだって出来ちゃう素敵なマッチョはいりませんか?」 人々の驚きの目も気にせず、小さな女の子はテカテカと光るマッチョを売るために必死に言葉を続けます。 貧しさから履くものが何もなく、赤くなった足をすり合わせながらも頑張ってマッチョを売ろうとしているのです。 寒い寒い町の中、身体からほこほこと湯気を立ち上らせるマッチョ達。どこか暑苦しさを感じさせながらも少女はマッチョの良さをアピールしました。 「すり潰せばお薬にもなるマッチョ、マッチョはいりませんか?」 そんな少女の言葉に、一人の男が小さく悲鳴をあげました。 どこからどうみても人間だというのに、あれをすり潰すと女の子は言ったのです。そんな恐ろしすぎる光景を想像して、思わず悲鳴をあげてしまいました。 その男の小さな恐怖は、訳の分からない現状に混乱していた人々を現実へと連れ戻し、今取るべき行動を取らせます。 すなわち、逃げるということ。 様々な悲鳴をあげながら、住人達は自分達の家や宿へと逃げていってしまいます。 そしてわずかの間に石造りの通りには、少女と大量のマッチョ以外、誰もいなくなってしまいました。 少女はあどげない顔に疑問の表情を浮かべ、小首を傾げ呟きました。 「おかしいわ……こんなに素敵に育ったマッチョなのに、なんでみんな逃げてしまうの?」 少女は不思議でたまらなかったのです。こんなに素敵で愛らしいマッチョなら、みんな大喜びで買ってくれると思っていたというのに、買ってもらえるどころかみんなして逃げていったのですから。 と、少女はパンッと手を打ち鳴らし、顔を輝かせました。 「そうだわ! マッチョの良さをもっとアピールすれば、きっと町のみんなもわかってくれるはずよっ!」 少女はこう考えたのです。 マッチョはこの町では珍しくて、分からないものだからみんな怖がったんだ。それなら、マッチョって良いものなんだとわかってもらえれば、きっと買ってくれるはずよっ! と、そう思いました。 当たってはいますが、微妙にズレているのは気のせいでしょう。 しかしそういったことに気がついていない少女は、スカートをくるりとひるがえし、マッチョ達へと身体を向け、言いました。 「さぁみんなっ!」 女の子がにこりと笑いかけると、静かにしていたマッチョ達は待っていましたとばかりに嬉しそうに動き出しました。 「フンハッ」 「フンムッ」 彼女が思いついた名案。それはポージングです。 思い思いのポーズをとりながら、マッチョ達は実に楽しそうにその肉体美を披露していくのですが、誰かが出てくることはありません。 少女は再びマッチョ達へと言葉を投げかけました。 「もっと、もっとよ! もっと汗を迸らせるのっ!」 住民達に余すことなくマッチョの素晴らしさを伝えるべく、彼女はマッチョ達をより激しく、暑苦しくさせていくのです。 「さぁこれでどうっ!?」 と、少女は通りを挟む建物を見やり、逃げ込んだ住民が出てくるのを待ちました。 しかし、誰も出てきません。 幼い女の子は唇を噛み締め、うなだれました。 「そんな……これじゃあお家に帰れないわ……」 ちゃんとマッチョ達を全部売ってくると母に約束していた少女は、目尻に涙を浮かべながら途方に暮れてしまいます。 こんな事なら、後で一緒にいきましょうと言っていた母の言うことを聞いておくべきだったと後悔していたのです。 ああ、今頃町の人たちは温かいご飯を食べているんだろうな。そう考えると、今すぐ家に帰りたくなる彼女ですが、そうしたらきっと母は怒るかもしれない。それでも やはり売らなければと決心した彼女は、ある場所へと向かうことにします。 「あそこなら……。そうよ、あそこならきっと買ってくれるわっ」 彼女の見つめる先、そこにあるのは――この街の主である貴族の住まうお城でした。 貴族様ならお金も一杯もっているし、きっと買ってくれるに違いない。ああ、なんて名案なのかしら。貧乏人共にこんな可愛いマッチョを売るなんて、そもそもの間違いだったんだわ。 そう思いながら、ステップを踏みながらお城へと向かうのでした。 女の子が城へと着くと、真っ先に門番の兵士が声をかけてきました。 「お嬢ちゃん。どうしたんだい? こんな寒い日に、何も履かずにいるだなんて……お母さんとはぐれてしまったのかい?」 身につけた鎧と男の身長よりも少しばかり長い槍を手に、不思議そうな、それでいてとても心配そうな顔をしています。 そんな彼に、少女は首を横にふりました。 心なしか口元が引きつっている兵士へ、少女はお願いをすることにします。 「どうかマッチョを、マッチョを買ってくれませんか?」 「まっちょ……まっちょって、あのマッチョかい? キミの後ろにいる」 男は彼女の後ろにいるホカホカと湯気を立ち上らせている暑苦しい何かを指差しながら訪ねました。冬だというのにブリーフ一枚で突っ立っている奇妙な筋肉男達、しかし男にとって問題なのは、そこではありませんでした。気にはなっても、職務に忠実である彼はあえてそこをスルーするのです。 「……それは、誰かに頼まれたのかな?」 門番は穏やかに微笑みながら、少女に説明を求めた。 「いいえ、自分で売りに来ました」 「……キミは、この領内で奴隷の売買が禁止されているというのを知っているかね?」 男の穏やかだった表情がにわかに変わっていきます。 無表情。それが男の今の表情でした。 たとえ相手が子供であろうとも、破ってはいけない決まりというものがあります。それを罰するのが彼ら兵士の役目の一つあり、少女は今、決まりを破ろうとしているからでしょう。 「はい、知っています。ですが、それがどうかしたのですか?」 彼女は首をかしげながら男に問いました。 その言葉を聴き、兵士はさらに表情を変えていきます。 眉をつり上げ、手にした槍を強く握りしめ、強い口調で問い返しました。 「では、なぜ奴隷を売ろうとする! こんな寒空の下、ブリーフ一丁は可哀想だとは思わないのか! この領を守る一兵士として見過ごすことは出来ん! なんだか全然寒そうじゃないとか、むしろ暑苦しいとか思うが、見過ごすことは出来んのだッ!」 男は心底怒っていると、少女にもすぐにわかりました。 でもそれは誤解なのです。彼女はそれに気付くと、事実を分かりやすく告げました。ただし彼女の基準で、ですが。 「違います! 奴隷じゃなくてマッチョです!」 「奴隷だろう! 細かく言えばマッチョな奴隷だろう!」 「違います! マッチョな奴隷じゃなくてただのマッチョです!」 「いやだから、奴隷だろう?」 「マッチョです!」 奴隷だ。いやいやマッチョだ。そんなよくわからない言い争いがしばし続き、ついには兵士の方が根負けしてしまいました。 「わかった。それはマッチョだ。ああ、マッチョさ。でもなお嬢ちゃん、この領では人を売るのは禁止されてるんだ。わかるよね」 疲れ果てた顔をした男は、少女に言い聞かせるように優しい声色で語りかけます。 「人……? いえ、人ではなくマッチョです」 「もうやだこの展開」 門番は既に涙目でした。 もうこの女の子、頑固すぎて付き合ってられない。そう思ったものの、かといって人を売るのを黙認するわけにもいかず、この際牢屋にぶち込んでしまおうかと考えていたりします。 しかし、目の前の彼女が言うには、マッチョに人権は無いらしい。なんと恐ろしいことを考えるのだろうか。筋肉をつけただけで人であることを否定されるだなんて……男の背筋は冬よりもなお寒い物が走りました。 「わかった。人ではなくマッチョなんだな」 「いえ、マッチョですけど、植物なんです」 少女の言葉に、男は首を傾げます。 植物? 植物というと、あの草や木のことだ。自分の足で立って歩く植物なぞ、見た事も聞いた事もない。 「いやいや、こんな愉快な植物などあってたまるものか」 「いえいえ、植物なんです。ほら」 そういって、女の子はマッチョの履いていたブリーフをおもむろにずり下げました。 そこには、確かに彼女の言うとおりに植物である証拠があるではありませんか。 ムキムキな肉体にはとても似合わない、白くて可憐な小さな花が咲いているのです。 「まさか本当に植物だとでもいうのか……いやたしかに、これは紛れも無く花。そしてそれがマッチョの身体から生えている、と……」 マッチョの股間に生える花をまじまじと男が見つめると、マッチョは頬を赤くして恥ずかしがっているようでした。あまりにもおぞましい光景に、男は素早く謎の筋肉植物から離れると、少女へ疑問を投げました。 「もしかして、このマッチョな部分は根っこなのかい?」 「はい、根っこです。この子達はちょっと成長しすぎちゃってマッチョになってしまったので、とても家の中において置けません。それで売りにきたのです」 「ははぁ、確かに数十人のマッチョが家の中にいては、寒くはないだろうが狭すぎるだろうなぁ……よしわかった。領主様にお伝えしよう。ここで待っていなさい」 「はいっ、ありがとうございますっ」 その後、温かいスープと、靴を持った兵士が笑顔で朗報を持って戻ってきました。 ようやく、少女はマッチョを売ることができたのでした。 その後、その領は戦乱の渦に巻き込まれてしまうのですが、彼女が売ったマッチョ達はその堅牢なる肉体をおしげもなく披露し、領を守るための立役者となったのは余談です。 その活躍ぶりは「動く城」と呼ばれ、敵方の城の中でマッチョ達が味方の周りを囲んで作った筋肉の城に立てこもったり、マッチョが横一列に並び、「迫る肉壁」と後に恐れられた突撃を行ったりと、守ってよし攻めてよしの万能ぶりを発揮したのでした。 そしてマッチョは戦うだけが能ではない。怪我をした兵士にマッチョが迸る汗――通称肉汁――を飲ませると、たちまち痛みを感じなくなることも大変喜ばれたのです。 マッチョ。正式名称をマンドラゴラと言いますが、結局その名前が広まることもなく、ただ彼らはマッチョと呼ばれ、マッチョであることに誇りを持ち続けたのでした。 これは筋肉を愛する者達が集う国、大マッチョ帝国が建国される5年前の話。 そして世界がマッチョに包まれる、10年前のお話……。
小さな小屋の中で、少女が手紙を風船に括り付け、窓から空に飛ばした。―――――――――――――物心ついたときには、私は森の中にいた。両親の顔は全く覚えていない。知っていることと言えば、私の名はフローラで、十三歳だと言う事。私は毎日森の中を駆け回り、動物たちと遊んでいる。それ以外にも、ジャムを作ったり、ドレスを作ったり、トリートメントを作ったり、ふくろうに現況を教わったり(数学は嫌だ)。毎日が、充実している。―もしこの記録帳を見た方が私のお母さんだったら、私をお探しにならないでね。だって私は、今の生活で満足だもの。空気が汚い都会で暮らすより、とってもいい。金髪の長い髪をブラシで溶かすときに髪の毛が絡まるまどろっこしさよりも、都会で暮らす方が嫌だ。ねえ、もしこの手紙を見たのが人間の方だったら、是非こちらにいらっしゃってね。ミュール森のクルミ湖あたりに住んでますから、声をかけて頂戴な。世界で一番の場所と言ったら、ここですから。――――――――――――――フローラ・ミラーという札がかかった病院の個室には、いつもその母親がいて、看護師と医師が出入りしている。少女が植物状態になってから、十二年。母親は大声で叫びながら少女の名を呼び続けている。涙も枯れ声も枯れ、年をとっても母親は気にしない。少女の手を、握りしめ続けた。少女には、点滴やチューブやら、色々体につながっていた。動いていないから、筋肉もなくなり、ただ、目をつぶっているだけの少女。そんな少女が、夢の中で学び、走り回っていると知ったら、母親の事を覚えていないと知ったら……母親は、いったいどう思うのだろうか。「さようならね、お母さん。もう一生会えないでしょうね。」ぱたり、どこかで窓が閉まる音がした。――少女はそれからもずっと眠り続けている。母親も、すっかり老衰し、眠ることが多くなってしまった。もう五十だ。普通だったらまだ元気だろうけど、ろくに食事も食べず、ほとんど眠らない日々が続いたら、当然こうなるだろう。フローラも大きくなり、少女とは呼べなくなった。フローラは今も空想森の中で暮らしているのだろうか。
あなたが好きです。「………はぁ」俗に言うラブレターというやつだ。それを今俺は読んでいる。普通ならば飛び上がって喜ぶのが道理だ。それも、これまで生きてきた十数年のうちで一度も彼女のいなかった俺だ。神様から贈り物が来たくらいに嬉しいはずだ。いや嬉しいとかいうレベルじゃないはずだ。お気付きだろうが、俺はこのラブレターを見てもちっとも嬉しくない。もう一度、最初から文を読んでみた。***新垣 央 様突然のことで、申し訳ありません。ですがどうしてもこの想いをお伝えしたく、こんな手紙を書かせていただきました。端的にお伝えします。私はあなたが好きです。ずっと前から、好きでした。あなたの姿を見るたびに、高鳴る胸をどうしても抑えられず、ずっと苦しい思いをしてきました。あなたが笑う顔を見るたびに、時間が止まったような錯覚に陥り、いつまでもその顔を見ていたいと思ってしまいます。初めてあなたに出会ったのは、本当に雲ひとつない晴天の日でした。海辺で座って、どこまでも広がる水平線をただ眺めていました。あなたは言っていましたよね?「青いね」と。海と空が見えれば、青いと言うのは当たり前かもしれません。ですがあなたは、海も空も見てはいませんでした。あなたはただ、一点を見て、青いと言いました。私の目です。そして続けて言いました。「綺麗な青だね」と。これまで私は、青い目をバカにされたことしかなくて、綺麗だなんて言ってもらったことは無かったんです。日本人らしくもないこの目を、私は嫌っていました。こんな目、将来はカラーコンタクトを入れるか何かして、絶対黒くしてやるんだって。けれどあなたは言いました。綺麗だと言いました。その瞬間、私は恋に落ちたのです。もう一度、改めて言わせていただきます。あなたが好きです。***送り主の名前を再度確かめる。何度見ても変わらない名前がそこにある。送り主の名は…***あなたの顔を思い浮かべるたび、心が苦しくてたまらない。あなたの声を思い出すたび、身体が震わされて仕方ない。会えない時間が長くなるほど、会いたい気持ちばかり大きくなって、どうしようもない。この感情を何と言うのか、私は知らなかった。知らなかったから、知りたかった。知りたかったけど知る術はなかったから、自分で考えるしかなかった。その結果、私は酷い勘違いをした。「返事」来ると良いな、なんて言う資格はなくて。それでも私はーーー「あなたが好きです」***送り主の名は。「…反宮…彩葉……!」言いたくもないはずのその名を、しかし何故か口にせずにはいられない。彩葉。反宮、彩葉。7年前のあの日、小4の夏に海辺で出会った欧米からの転校生。海の碧さに空の蒼さが重なって、彼女の目の青さが俺に鮮烈すぎるほどの印象を与えた、あの可憐な美少女。そして彼女は。俺を再起不能の鬱状態に堕とした、史上最悪の苛めっ子ーーーその彼女が、俺を好き?「うッ…!!」吐き気がする。急いでトイレに駆け込んで汚物を吐き出す。…ふざけるな。だったら何であの時、俺を貶めた?蔑み見下し蹴り落として嬲り殺したのは何故だ?それとも、これもまた何かの《悪戯》の予兆なのか?「うっ、ぐ、うゥぅ」吐き気が止まらない。痙攣しそうなほどの震えもする。視界がぼやける。意識を手放したくなる。けれど込み上げてくるモノを吐き出す作業が止められない。苦しい。辛い。痛い。怖い。苦しい、痛い、怖い、辛い、嫌だ、助けて、お願い助けて!出てきたのは涙?汗も混じっている気がする。それとも俺の頭上だけ雨でも降っているのか。そう錯覚するほどに、滴り落ちる体液の量が半端じゃない。もはや胃の中のものが何も無くなったのか、それが出てくるのは止まった。だが吐き気は止まらない。その場に倒れ伏せ、蹲り、苦しさも辛さも一緒に流すようにして、そのまま俺は意識を手放した。***「…返事」手紙を出してから1週間。返事が来るなど予想もしてなかった。「早く、読まなきゃ…」
ザーーーある雨の日のこと、私があの人と出会ったのは…。ポタ…ポタ…雨の雫が音を立てて落ちる。「あー、雨降ってきちゃった!羽留奈、お父さんに傘を届けてきて」「えー分かったよー…」本当は行きたくないが、渋々頷く。「行ってきまーす」傘を2本持ってドアを開ける。(わぁ!寒っ!!)こんな中傘を届けるのは少し気が重いが、小走りで歩道を駆け抜ける。私は駅前の本屋さんで本を買うことにした。「どの本が良いかな〜♪」鼻歌を歌いながら本を眺めていると、1冊だけ気になった本があった。☆星の作り方☆何だろうと思いながらもレジに並ぶ。(立ち読みはダメだもんね。)中を開くと星の形らしき型が、並んでいた。その型を丁寧に剥がす。ピカア眩しい光が広がった。「え…?」目の前には、きらびやかな少年と複数の妖精たちが空を飛んでいる。本もいつの間にか手元から消えていた。「貴方は…誰ですか?」問いかけてみたが答えは返ってこない。ただ、何かを待っているような、そんな目をしていた。それから何秒後だろうか…ゴツゴツした物が空から降ってきた。「コ…金平糖!?」それの正体は金平糖だった。それと同時に少年の口も開いた。「今日は… 星が降る日… なんだ。」服も髪もグショグショだけど、心だけは鼓動が高鳴っていた。金平糖を手にとって口にいれる。ふわあ一瞬にして甘さが広がる。(いつもの星も、こんなに甘かったらなあ…)羽留菜は本当に心からそう思った。羽留菜はその日ケーキを買ってもらったとか。「星が降る日」それは100年に一度と無い金平糖が降る日。それを目にした者は幸せになるとか、ないとか。
長い睫毛が僅かに震えて、伏せられるとき。俺は何とも言えない感情に駆られる。この気持ちは…どう表現したらいいのか。脳髄が焼き切れそうに、甘く苦しく蕩けていく。初めてだった。相手の全てを奪いたいと思ったのは。…この感情が何を意味するのかは、分からない。自分に分かるのは、襲い来る激情に飲まれてはいけないということだけ。自分の中の『正解』を見出だせずに、必死で押さえつけることだけを考える。なのに、視線はこいつに縫い止められたまま、動かない。さら、と零れ落ちる艶やかな黒髪。透き通るような肌。華奢な体躯。少し強く抱き締めたら途端に壊れてしまいそうだ。…決して女の子のように柔らかいわけではないけれど、どこに触れても痺れるような快感を覚える。それと同時に、激しい衝動が身体中を駆け巡る。思わず喉が鳴る。めちゃくちゃにしてやりたい。閉じ込めて誰の目にも触れさせたくない。危険な衝動が、目の前を真っ暗にさせる。その儚さを汚してみたい。今すぐに。手が、届く距離ーーーーーー刹那、長い睫毛が、僅かに開く。黒い感情に支配された手が止まり、やがてだらんと下ろされる。求めてやまない妖しく煌めく漆黒の瞳が、ゆっくりと自分を捉えていく。憂いのある、虚ろげな瞳が光を取り戻す光景は、いっそ背徳的だった。紅に染まる唇が、何かを紡ぎ出そうと少しずつ開いていく。あぁ…その甘く掠れた声で。俺を、呼んでくれ。「ーーーーーー遊」この感情は、恋に似ている。
―――今日も優しい朝がやってきた。霜が朝日に照らされ輝く。星たちもその相図でぽつぽつ消えていく。冷たい空気に温かい息が吹き込まれる。動物たちも目を覚まし始める。起きてけだるい髪の毛を手でわしゃわしゃ掻く。ごくごくごくごく。私は「やさいじゅーす」を飲んで一日が始まる。
「…現れるな、ですって」くすくすと笑いながら手紙を読み上げ終わった使用人に膨れっ面を向ける。その私の顔が面白かったのか、使用人の有栖は一瞬きょとんとした顔をして、またお淑やかに笑い出した。…現れるな、か。「無理もないわ」「…あら、珍しいですね。いつも自信満々で自意識過剰なほど堂々としている貴女らしくもない」「ええ…そうね。私は自意識過剰の非道い人間だわ」「ふふ、そうでしたそうでした」こちらが深刻なテンションだというのに、有栖は優雅に静かに笑っている。いつものことだけれど。手紙の内容は凄惨だ。当たり前だけど、撥ね付けるような内容しか書かれてなかった。しかし、現れるなと言われたからといって引き下がれない。「有栖」キッと鋭い目で有栖を呼ぶ。「…何ですか?」何を言われるかなどわかっているくせに、有栖はまたくすくすと笑って、わざわざ用件を訊いてくる。「外に出たいわ」***暑い陽射し。どこまでも蒼い空。そういえば奴と出逢ったのもこんな真夏の日だったか。俺が引きこもりになったのは実に3年間と少しで、やっと外に出られたのは中学の友達のお陰によるところが大きい。中学校なんかロクに行ってなかったのに、そいつだけは俺と話してくれた。俺を見てくれた。反宮なんかと違って、凄く優しい女子だ。名前は…深琴。…そういえば、俺ってあいつのこと好きだったっけ。そう思うと、「友達」ではない…か。今あいつ何してんのかな。高校はどこに行ってるんだろう。確か家が貧乏とか言ってたから、バイトしてるかもしれない。中学を出てから引っ越したとかで、携帯も持ってなかったあいつとはお別れになってしまった。………。「っと、コンビニ、コンビニ」こんな暑い日はアイスを食べるに限る。歩いて5分のコンビニでお気に入りを買うつもりだ。これで一昨日の手紙のことも忘れてしまおう。…返事を書いて出したのは昨日だから、今日にはもうあいつの家に着いてるか。一昨日、手紙を読んだ俺は、トイレでブツを吐いた後意識を失った。それを母さんに見つかって ベッドに寝かされたらしい。その翌日、感情に任せるまま、返事の手紙を書いた。勢いだけで書き殴ったせいか、そこまで気持ち悪くなったりはしなかったのが嬉しいところだ。もう現れるなと書いたのだし、これでまた平穏が訪れるだろう。目の前まで迫っていた角を右に曲がる。「…あら、見つけたわ」曲がった先に見えた少女は、あの最悪の転校生ーーー「ッッッ!!!!?」そこで俺が後ろを向いて猛ダッシュしなかったのは、考えてみればおかしなことだった。本当はぐるりと身体を回転させてすぐ逃げたかった。俺がそうしなかったのは。俺がそうしなかったのは…「ええ、見つけましたね」深琴。有栖 深琴。何でだ。何で深琴がここにいる。何で深琴が、反宮と一緒にいる?「久しぶりね、央」反宮にそう声を掛けられても、何も返せない。深琴しか見えてない。深琴をじっと見る俺に、当の本人は、「………ふふっ」優美にくすくすと笑って、ぱちんと片目を閉じた。それは深琴がよくやっていたおまじないだった。「ーーーーー!!」瞬間、俺の中の何かがボッと音を立てて燃える。「み…こ、と…っ」回らない呂律で名を呼ぶ。それでも深琴は微笑むばかり。優雅に静かに笑っているばかり。そして何かを言う代わりに、反宮を前にやった。反宮の、車椅子を、少し前に押した。「…そみや…?」「ええ、央」車椅子。車椅子に深く腰掛け、薄手のブランケットを膝に掛けた、目の前の弱々しく儚げな美少女は、記憶の中の勝気で傲慢なあの美少女ではなかった。「おう」と俺の名を呼ぶ声も、あのキツく張った声じゃない。ふんわり弱くて消えそうな声だ。そんなにも弱い声なのに、反宮はこちらに何かを訴えるように喋る。「聞いて、央。聞いた後で忘れてもいい、聞いて。私がどういう思いだったか。私がどうしてあんなことしたのか。それからの私がどんなだったか」それから語り始めた。あの日何を思っていたか。***私は弱い人間だった。うちはお金持ちで、欧米の方にずっと住んでて、私は何でも優遇されるようなお嬢様だった。けれど知ってた、私はこの青い目のせいで疎まれてること。私のお父さんは黒い目。私のお母さんは少し茶色い目。先祖代々、純系の日本人ばかりの反宮家だ。なんで青い目の子供が生まれるのか、そんなの答えはひとつしかない。お父さんは豪遊が好きな人だった。お母さん以外の女の人がいたって不思議じゃない。ずっと誰にも距離を置かれて生きてきた。でも出会ったの。日本に初めて来たあの日、海辺であなたと。青い目のこと、綺麗なんて言ってくれたのはあなたが初めて。衝撃だった。なのに、恋した私の行動ときたら、何よりも最悪だった。《悪戯》と称する嫌がらせを毎日行い、あなたをモノにした感じがして優越感に浸ってた。どんどんエスカレートして、酷い虐めになった。…言い訳する気はないけど、お父さんもそうだった。金があるから女の人はお父さんに逆らえない。ひどい事しても何も言わない。その征服感が好きだと何も悪びれずに言っていた。今考えると最低の行為。大好きな人に大嫌いと言わしめる最悪のこと。あなたからの手紙、読んだよ。あなたが言うこと、全て正解だと思う。私が間違ってて、あなたが合ってる。…あのね、私はあなたを失ったときに、かなり心を病んだ。私が車椅子なのはそのせい。心も体もぶっ壊れちゃったみたい。今じゃ有栖がいないとどうにもならないの。ねえ。許してほしいなんて図々しいことは言わない。けれど、伝わったかな。…最後に。今まで、本当に…ごめんなさい。***「っ…」声にならない声が出る。詰まる所、反宮が俺を好きなのは本当で、反宮も苦しい思いをしたのだ。…がりがりに痩せた身体が物語っている。俺もそうなったのだから、わかる。許す気はない。許す気があっても、許せる気がしない。けれど理解はできる。嫌というほどわかる。俺だって、最初は反宮に惚れたのだ。可愛くて綺麗で、あの日俺が目の色を綺麗だと言ったら、泣いて喜んでくれた女の子。もちろん俺だって好きだった。あんな仕打ちの前は。だから、裏切られたような気持ちだったし、好きな相手が突然いなくなったような感覚だったから、それはわかる。「…いいよ別に」「ぇっ…」自分の口から出た言葉に、反宮は驚いたようだった。「もう、お前の事は…彩葉のことは、いい」そう言うと、数瞬ぽかんとしていた彩葉は、ふわっと泣きそうな顔で笑った。次の問題は。「なぁ、彩葉…」「な、何、央」「…有栖って、どうしてそこにいるんだ」
ここらで見ない顔だ、ほれ、顔を見せてみなされ。おやおや、随分汚れとるの。あの水で清めてき。*さく、さくと黒い土を踏みしめ、茂る青を刈る。日照りは容赦なくわたくしを射すが、かまわない。ふよふよと、豊かな地に生い茂る若葉は、大切な作物の栄養までうばいとる、ゆえに刈らねばならない。つやつやと光るなすびの照りにほう、とため息をつきながら、「わたしも、もっとこんなきれいになりたい」となんとなしに口に出す。うしろから、声が聞こえた。「ほれ、そろそろ」朱色の盆の上では、あぶらげで包んだおむすびに、その上に昆布がのって、湯気を立てている。「わあい、いただきます」まったく、考えもなしに頬張った後に、上を見上げてしまって、少し恥ずかしかった。白く美しい狩衣がゆらめき、中の赤いさし色が見える。わたくしがあまりにもとぼけた顔をしているものだから、おかしくなったのか、ほほ笑むところを見て、それでまた恥ずかしくなって、またおむすびにかぶりついた。こんさまだ。「ワ子はやっぱり、おかしいねえ」「すいません」