勇者→魔王=\(^o^)/

作者/とろわ ◆DEbEYLffgo

Lv.22 相違「世界同士でも色々変わる」


ギルベルトは困惑し、落胆し、何も言えなくなった。







フォンシエがミレイユと別れ、部屋に戻るとギルベルトが貧乏ゆすりをしながら椅子にドカリと座っていた。
「何やってたんだよ下僕。俺様を待たせるなんていい度胸してんじゃねえかこのks」
全力で「お前が言うな」と言いたかったがそれを飲み込み、フォンシエはすまないと言って薄く笑った。
「あれか、高血圧の人間がやる朝の徘徊ってやつか」
「そんな事はしていない! というか徘徊って何だ徘徊って、せめて散歩にしろ! というか高血圧の人間そんなことやってねーよ!」
「はいはいうっせ。アーアーツッコミ冴エテテカッコイイー」
「……ッッ」
正直今すぐ近くの花瓶手にとってギルベルトの顔面にぶつけたかったがなんとかこらえた。

「――で、実際は何やってたんだよ」
ギルベルトは気だるそうにそう言うと、フォンシエは先程の事をギルベルトに伝えた。
「……へー、お前この俺様に何も言わずに独断で行動してたのかよ」
「まあ、そりゃ悪かったかもしれないが。どちらにせよ、伝えたところで俺に行かせてただろ」
「ま、そうなるんじゃねえのか多分」
そう言いながら、ゆっくりと立ち上がるギルベルト。
「まあ、今回の事は許してやろう。……んじゃ、日が暮れる前にさっさと行くぞ下僕」
「はいはい、承知しましたっと」







シアオン大広場、噴水前。
イスト第二の都市とだけあってか、街は華やかでいて賑やかであった。
しかし、フォンシエは少し寂しそうな顔をしていた。

「なんか、前来た時よりも寂しくなってるな。……やっぱり、誘拐事件が影響しているんだな」
フォンシエが目を細めながらそう呟くと、背後から呑気な声が聞こえてきた。
「お、すげ。武器売ってら」
「早速話聞いてねえし……。ってか、お前の目的は鍛冶屋なんだろ。道草してると日が暮れちまうぜ」
「別にいいだろ。鍛冶屋は逃げないんだからよ」
「まあ、そうなんだけどさ」
まあ、初めてなんだから別にいいか。と思ったフォンシエは、そんなギルベルトの様子を見守ることにした。








「ふへーっ、やっとついたぜ」
何度も道草しながら、なんとか鍛冶屋までたどり着いた二人。
ギルベルトはうっすらと額に滲んだ汗を払い、看板を見つめる。
その様子を、フォンシエは微笑ましそうな表情で見ていた。
「しっかし、なんでまた鍛冶屋なんか……」
「いや、俺様の世界には無かった……っつか、そんなもん必要無かったから現在はねえってところか。まあそんなもんだからよ」
「へえ、じゃあどうやって自分の身を守るんだよ」
「発想の転換だ。そんなもんいらねぇぐらい平和な国なんだよ、日本っつーところは。モンスターもでねーし、なんせ皆武器なんて常日頃持ち歩いちゃいねーっつの」
フォンシエは目を見開いた。
「そんな平和な世界があるのか。羨ましいよ、こっちなんか戦争なんて日常茶判事だし、モンスターの被害を受けて多くの人々が死んじまうからな」
「ケッ、そんなのはどこ行ったって変わんねーよks。日本は平和だけど、他の国はドンパチやってたりするし、人類がバンバン生まれたせいで環境破壊寸前だぜ」
「……それはまた、何とも言い難い話だな」


「あのー、そこのお二方っ。店の前でそんなドロリンチックな話題を広げないでくれないかな。そんな事してたらお客さんが逃げちゃうよ」
と、突然扉を開く音と同時に、元気そうな少年の声が響く。
恐らく、この店のお手伝いとかなのだろうと二人は思った。
――しかし、なぜか眼帯を着用しているが。

「ああ、すまないね」
フォンシエはそう苦笑して端に避けるが、ギルベルトは腕組みをしながらふてぶてしい態度でそこに突っ立っているままであった。
「あり、中々気難しそうな人だね」
「あたりめーだろ。俺様はここに用があって来た客人様なんだ」
「そりゃ理由にはならないだろう」
フォンシエがそう言いかけた途端、少年はそれを制止させる。
「いやいや、別にボクは気にしていないからおっけーだよ。ささっ、お客さん。中にどうぞっ」
少年はにこにこと笑いながら、二人の客人を招き入れた。







「……って、あれ?」
ギルベルトは入った途端、妙な違和感を覚える。
そこには、入った三人以外の人の気配がなかったのだ。
「なんだよ、ここの店の主人いねーんじゃねえか」
ギルベルトは心底残念そうな顔でそうつぶやく。
すると、少年はむすりと頬を膨らませ、そうしてギルベルトの目の前に立った。

「失礼しちゃうなあ、キミキミ。このボクがこの鍛冶屋『イフリータ』の主人なんだよ」




「「……へ?」」