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標的43 消去 末梢 初期化 delete
心臓が音を鳴らすと同時に寿命は削られていく。どうしようもない不安に襲われるが、慣れた。
ただ、記憶を無くすと言っても一人ずつやるのは骨が折れる。どうすればいいのかな。なんて考えてしまう。
でも、別れの言葉を贈りたい人だっている。さようならと言いたい人もいる。その人たちだけでもちゃんと自分の口から言わないといけないと思う。
「あ、もしもし、京子ちゃん?今大丈夫?会って話したい事があるんだ。来てくれないかな?花ちゃんもいるなら一緒だと嬉しいかな・・・」
外で待つ。来るのを、自分で決めた事に対して拒みそうになる感情を抑えつけて。
そして、京子ちゃん達はやって来た。
「綾乃ちゃん、どうしたの?急に」
不思議そうに聞いてくる京子ちゃんの声でより一層苦しくなる。
忘れてと言うのが辛くなる。
「あの・・・ね、私行かなきゃいけない所があって、並盛を離れなきゃいけないんだよね…」
それを言うのもやっとで・・・息をするのが困難になっていく。
「嘘!?それって何時!?」
花ちゃんの驚いている声が遠くで聞こえる。
「明後日」
短く答えると、「もう直ぐじゃん」と、また驚いている声を漏らしていた。
「また・・・会えるよね?」
嗚呼、京子ちゃん今それを言わないで。息が出来なくなってんだ。
「もう、此処には戻れない。もう絶対、生きている限り逢えないと思う」
やっと言えた事はそれだった。傷付いたような顔をしている二人を見るとまた、息が詰まっていく。
「なんで・・・・・・?」
「事情があって、此処にはもういれない」
苦しい
「事情って何よ?それくらい言いなさいよ!!」
「言えない」
辛い
「何で、言えないの・・・・・・?」
「なんでも、」
泣きたい
「何よそれ!!もう私たちはどうでもいいって事!?」
「そんな事言ってんじゃない!!!」
あ、叫んでしまった。
「居たいに決まってんでしょ!!大好きに決まってんでしょ!!でも、でも…、此処には居られなくなってんだよ・・・」
すぅっと息として怒鳴るように言った。
「時間が・・・、時間が無いんだよ!!!!!!」
予定では叫ばない筈だったんだよなぁ・・・
狂っちゃたじゃん。
「だから、今のうちにお別れを言おうと思ったんだ・・・。」
今、私は笑えていますか?涙は流れていませんか?
「なんで呼んだかって言ったらね・・・お願いが・・・あっ…たからなん・・・だ」
あれ?何これ?苦しい、気持ち悪い、視界が捻じれて見える。言葉が続かない。
色彩が見えない。黒く、黒く染まっていく。
もう・・・、私限界なのかな・・・
「ゴメン・・・・・・・・・ね」
そう言うのがやっとで、強制的に意識が体から手放されていった。